【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、超高速近距離無線伝送技術等の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
C.P.Lee et al.,A Highly Linear Direct-Conversion Transmit Mixer Transconductance Stage with Local Oscillation Feedthrough and I/Q Imbalance Cancellation Scheme,Solid-State Circuits Conference, 2006. ISSCC 2006. Digest of Technical Papers. IEEE International,IEEE,2006年,pp.1450-1459
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(各実施形態の内容に至る経緯)
先ず、本開示に係る送信装置の各実施形態を説明する前に、各実施形態の内容に至る経緯について
図4〜
図6を参照して説明する。
図4は、従来の送信装置20の回路構成の一例を示す図である(特許文献1参照)。
【0018】
図4に示す送信装置20は、電力増幅回路21と、方向性結合器22と、送信出力検波回路23と、温度制御回路24とを含む。温度制御回路24は、信号発生回路31と、A/D変換器32と、メモリ33と、変換表34と、演算回路35と、送信出力制御回路36とを含む。
【0019】
電力増幅回路21は、入力された高周波信号(RF信号)を増幅する。電力増幅回路21が増幅したRF信号は、不図示の送信アンテナを介して送信され、更に、方向性結合器22により取り出されて送信出力検波回路23に入力される。送信出力検波回路23は、方向性結合器22により取り出されたRF信号を検波して検波結果をA/D変換器32に出力する。温度制御回路24は、送信出力検波回路23の検波出力を基に、温度補償値を得て電力増幅回路21を制御することで、送信信号の規定電力を得る。
【0020】
図4に示す送信装置20は、TDMA送信機であって、バースト信号停止時には、信号発生回路31から測定信号を送信出力検波回路23に出力し、送信出力検波回路23の検波出力をA/D変換器32を経てメモリ33に保存する。送信装置20は、予め登録されている変換表34を基に演算回路35において温度補正値を求める。
【0021】
更に、送信装置20は、バースト信号送信時に、送信出力検波回路23の検波出力をA/D変換器32において数値化し、バースト信号停止時に求められた温度補正値を用いて補正し補償検波値を得て、送信出力制御回路36において補償検波値を用いて電力増幅回路21を制御する。これにより、送信装置20は、温度補償部品を用いずに補償検波値が得られ、周囲温度の変動に拘わらず、一定の送信出力(電力)が得られる。
【0022】
図5は、従来の送信装置40の回路構成の他の一例を示す図である(非特許文献1参照)。
図5に示す送信装置40は、可変利得増幅器41a,41bと、変調器42と、電力増幅回路43と、方向性結合器44と、検波回路45と、制御回路46とを含む。
【0023】
可変利得増幅器41aは、制御回路46が生成した制御信号に応じて利得を変更し、入力されたベースバンドのI信号(周波数FBB_I)を増幅して変調器42に出力する。可変利得増幅器41bは、制御回路46が生成した制御信号に応じて利得を変更し、入力されたベースバンドのQ信号(周波数FBB_Q)を増幅して変調器42に出力する。なお、
図5では、図面の複雑化を避けるために、制御回路46から可変利得増幅器41aへの矢印の図示を省略している。
【0024】
変調器42は、可変利得増幅器41aが増幅したベースバンドのI信号と、可変利得増幅器41bが増幅したベースバンドのQ信号と、ローカル信号(周波数FLO)とが入力され、ベースバンドのIQ信号を用いてローカル信号を直交変調することで、高周波送信信号を生成して電力増幅回路43に出力する。
【0025】
電力増幅回路43は、変調器42が生成した高周波送信信号を増幅する。電力増幅回路43が増幅した高周波送信信号は、不図示の送信アンテナを介して送信され、更に、方向性結合器44により取り出されて検波回路45に入力される。検波回路45は、方向性結合器44により取り出された高周波送信信号を検波して検波結果を制御回路46に出力する。
【0026】
制御回路46は、検波回路45の検波結果を基に、ベースバンドのIQ信号の振幅及び位相のバランスとIQ信号のDCオフセットとを調整するための制御信号を生成して可変利得増幅器41a,41bに出力する。これにより、
図5に示す送信装置40は、高周波送信信号に生じるキャリアリーク及びイメージリークを低減できる。
【0027】
ここで、
図5に示す変調器42に入力されるベースバンドのIQ信号の振幅及び位相のアンバランスとIQ信号のDCオフセットとがあると、送信信号の変調精度特性が劣化する。
【0028】
具体的には、IQ信号に振幅誤差又は位相誤差があると、IQ信号の振幅又は位相にアンバランスが生じてしまい、変調器42が生成した高周波送信信号にイメージリークが生じる。また、IQ信号にDCオフセットがあると、変調器42が生成した高周波送信信号にキャリアリークが生じる。このため、送信信号の変調精度特性が劣化する。
【0029】
そこで、
図5に示す送信装置50では、制御回路46は、電力増幅回路43が増幅した高周波送信信号の検波結果を基に、ベースバンドのIQ信号の振幅及び位相とDCオフセットとを調整することで、高周波送信信号に生じるキャリアリーク及びイメージリークを低減する。
【0030】
制御回路46におけるベースバンドのIQ信号の振幅及び位相とDCオフセットとの調整について、
図6を参照して説明する。
図6(A)は、変調器42の出力としての高周波送信信号のパワースペクトルを示す図である。
図6(B)は、検波回路45として二乗検波回路を用いた場合の出力信号のパワースペクトルを示す図である。
【0031】
例えば位相が90度異なる2つのトーン信号のI信号(周波数FBB_I),Q信号(周波数FBB_Q)が変調器42に入力された場合には、周波数(FLO+FBB)に変調波としての高周波送信信号が現れる(
図6(A)参照)。更に、トーン信号のIQ信号のDCオフセットにより生じるキャリアリークが周波数FLOに現れ、トーン信号のIQ信号の振幅及び位相のアンバランスにより生じるイメージリークが周波数(FLO−FBB)に現れる(
図6(A)参照)。
【0032】
検波回路45として二乗検波回路を用いた場合、周波数FBBのパワースペクトルはキャリアリークのレベルを表す(
図6(B)参照)。また、周波数2FBBのパワースペクトルは、イメージリークのレベルを表す。更に、DC成分(周波数0)のパワースペクトルと周波数2FTXのパワースペクトルも現れている(
図6(B)参照)。なお、周波数FTXは
図6(A)に示す周波数「FLO+FBB」である。
【0033】
制御回路46は、検波回路45の検波結果、即ち
図6(B)に示す周波数FBBのパワースペクトルのレベルが最小となるように、トーン信号のIQ信号のDCオフセットを調整するための制御信号を生成する。これにより、送信装置40は、高周波送信信号に生じるキャリアリークのレベルを低減でき、変調精度特性を改善できる。
【0034】
また、制御回路46は、検波回路45の検波結果、即ち
図6(B)に示す周波数2FBBのパワースペクトルのレベルが最小となるように、トーン信号のIQ信号の位相及び振幅のバランスを調整するための制御信号を生成する。これにより、送信装置40は、高周波送信信号に生じるイメージリークのレベルを低減でき、変調精度特性を改善できる。
【0035】
特許文献1及び非特許文献1では、無線LAN(Local Area Network)において用いられる送信装置の例が説明されているが、例えば60GHz帯のミリ波を用いた広帯域無線通信に適用する場合にも、同様に、高周波送信信号の電力制御と、ベースバンドのIQ信号の振幅及び位相のバランスとIQ信号のDCオフセットを調整する必要がある。
【0036】
更に、
図4又は
図5に示す送信装置の構成を60GHz帯のミリ波を用いた広帯域無線通信に適用する場合には、方向性結合器と検波回路との間の接続における高周波送信信号のロスを最小化する必要がある。
【0037】
例えばベースバンドのIQ信号の振幅及び位相、DCオフセットを調整する場合でも、60GHzのミリ波を用いた無線通信は広帯域となるので、ベースバンド信号の周波数も数100MHzと高く設定する必要がある。このため、
図5に示す制御回路46は検波回路45の検波結果を基に数100MHzのIQ信号のバランスを調整するので、送信装置の消費電力が増加する。
【0038】
そこで、以下の実施形態では、キャリアリーク及びイメージリークを抑制し、更に、高周波送信信号の電力を一定に制御する送信装置の例を説明する。
【0039】
(本実施形態の説明)
図1は、本実施形態の送信装置TXの回路構成の一例を示す図である。
図1に示す送信装置TXは、I/Q信号発生回路1と、変調器2と、電力増幅器(PA:Power Amplifier)3と、送信アンテナAntと、方向性結合器4と、伝送線路5と、二乗検波回路6と、増幅器7と、LPF(Low Pass Filter)8と、A/D変換器9と、制御回路10と、コンデンサ11と、可変利得増幅器12と、A/D変換器13と、制御回路14とを含む。
【0040】
I/Q信号発生回路1は、ベースバンドの同相信号(I信号)とベースバンドの直交信号(Q信号)を生成して変調器2に出力する。また、I/Q信号発生回路1は、後述する各制御回路10,14が生成した制御信号に応じて、ベースバンドの同相信号(I信号)とベースバンドの直交信号(Q信号)を生成する。
【0041】
変調器2は、例えば直交変調器であり、I/Q信号発生回路1が生成したベースバンドのIQ信号と局所発振器(不図示)が生成した局所発振信号(ローカル信号:周波数FLO)とが入力され、ローカル信号を、ベースバンドのIQ信号を用いて直交変調する。変調器2は、直交変調によって生成した高周波(例えば60GHz帯のミリ波帯)の送信信号を電力増幅器3に出力する。
【0042】
電力増幅器3は、変調器2が生成した高周波送信信号を増幅して送信アンテナAntに出力する。電力増幅器3が増幅した高周波送信信号は、一部の高周波送信信号が結合器としての方向性結合器4によって抽出され、伝送線路5を介して、二乗検波回路6に入力される。即ち、伝送線路5は、方向性結合器4が抽出した(取り出した)高周波送信信号を二乗検波回路6に伝送する。
【0043】
検波回路としての二乗検波回路6は、伝送線路5を介して伝送された高周波送信信号を二乗検波し、直流(DC)成分及び交流(AC)成分を含む二乗検波出力信号を、増幅器7とコンデンサ11とに出力する。
【0044】
即ち、本実施形態では、二乗検波回路6の二乗検波出力信号は2系統に分岐され、一方は増幅器7を含む第1の調整回路(後述参照)に入力され、他方はコンデンサ11を含む第2の調整回路(後述参照)に入力される。なお、二乗検波回路6の回路構成については、
図3を参照して後述する。
【0045】
増幅器7は、二乗検波回路6の二乗検波出力信号を増幅してLPF8に出力する。なお、増幅器7の回路構成については、
図3を参照して後述する。
【0046】
フィルタとしてのLPF8は、増幅器7が増幅した二乗検波出力信号から高周波の交流成分を遮断して低周波(周波数0)の直流成分を抽出してA/D変換器9に出力する。
【0047】
A/D変換器9は、LPF8の出力信号をサンプリング周波数Fs1によってA/D変換し、A/D変換出力としての直流成分のデジタル値を制御回路10に出力する。なお、A/D変換器9のサンプリング周波数Fs1は、A/D変換器13のサンプリング周波数Fs2より低い。
【0048】
制御回路10は、A/D変換器9におけるA/D変換出力としての直流成分のデジタル値に応じて、ベースバンドのIQ信号の振幅を所望値に調整するための制御信号S1を生成してI/Q信号発生回路1に出力する。
【0049】
これにより、I/Q信号発生回路1は、制御回路10が生成した制御信号S1に応じて、ベースバンドのIQ信号の振幅を所望値に調整できる。従って、本実施形態の送信装置TXは、高周波送信信号に生じるキャリアリークを低減できる。
【0050】
コンデンサ11は、二乗検波回路6の二乗検波出力信号から低周波(周波数0)の直流成分を遮断して高周波の交流成分を抽出して可変利得増幅器12に出力する。
【0051】
可変利得増幅器12は、出力信号と入力信号との比を表す利得を利得制御信号S3に応じて可変し、利得制御信号S3に応じた利得によって、コンデンサ11が抽出した交流成分の二乗検波出力信号を増幅してA/D変換器13に出力する。なお、利得制御信号S3は、
図1に示す送信装置TXの外部から入力されても良いし、例えば制御回路14によって生成されて制御回路14から入力されても良い。
【0052】
A/D変換器13は、可変利得増幅器12が増幅した二乗検波出力信号をサンプリング周波数Fs2によってA/D変換し、A/D変換出力としての交流成分のデジタル値を制御回路14に出力する。なお、A/D変換器13のサンプリング周波数Fs2は、A/D変換器9のサンプリング周波数Fs1より高い。
【0053】
制御回路14は、A/D変換器13におけるA/D変換出力としての交流成分のデジタル値に応じて、ベースバンドのIQ信号の振幅及び位相のバランスを調整し、更にIQ信号のDCオフセットを低減するための制御信号S2を生成してI/Q信号発生回路1に出力する。
【0054】
これにより、I/Q信号発生回路1は、制御回路14が生成した制御信号S2に応じて、ベースバンドのIQ信号の振幅及び位相のバランスを調整でき、更に、IQ信号のDCオフセットを低減できる。従って、本実施形態の送信装置TXは、高周波送信信号に生じるイメージリークを低減できる。
【0055】
本実施形態の送信装置TXは、二乗検波回路6と、増幅器7と、LPF8と、A/D変換器9と制御回路10とを含む第1の調整回路(
図1の点線参照)において、変調器2が生成した高周波送信信号の電力を調整する。また、送信装置TXは、二乗検波回路6と、コンデンサ11と、可変利得増幅器12と、A/D変換器13と、制御回路14とを含む第2の調整回路(
図1の一点鎖線参照)において、I/Q信号発生回路1が生成するIQ信号の振幅及び位相のバランスとDCオフセットとを調整する。
【0056】
なお、第1の調整回路及び第2の調整回路における調整動作は、二乗検波回路6の二乗検波出力信号の直流成分及び交流成分の異なるIQ信号が用いられるので、異なるタイミングにおいて実行される。
【0057】
例えば、第1の調整回路がベースバンドのIQ信号の振幅を所望値に調整した後、第2の調整回路がベースバンドのIQ信号の振幅及び位相のバランスとDCオフセットとを調整する。又は、第2の調整回路がベースバンドのIQ信号の振幅及び位相のバランスとDCオフセットとを調整した後、第1の調整回路がベースバンドのIQ信号の振幅を所望値に調整する。
【0058】
また、本実施形態の送信装置TXでは、第2の調整回路がI/Q信号発生回路1が生成するIQ信号の振幅及び位相のバランスとDCオフセットとを調整する場合に、二乗信号が用いられるので、電力増幅器3が増幅した高周波送信信号の検波回路として二乗検波回路6が用いられる。
【0059】
これにより、送信装置TXは、方向性結合器4と伝送線路5と二乗検波回路6とを、二乗検波出力信号を第1の調整回路及び第2の調整回路に入力させるためのパスとして共用でき、第1の調整回路及び第2の調整回路にそれぞれ入力させるための回路部品を設けることなく、高周波送信信号の伝送ロスを最小化できる。
【0060】
また、二乗検波回路6の二乗検波出力信号は2系統に分岐されるが、60GHzの周波数成分は二乗検波回路6において抑圧される(
図3参照)。このため、二乗検波回路6の二乗検波出力信号の分岐による伝送ロスの影響は少ない。
【0061】
また、二乗検波回路6の後段には、第1の調整回路用の信号経路と第2の調整回路用の信号経路とが設けられているので、2つのA/D変換器9,13の各サンプリング周波数を同一とせずに個別に設定でき、不要な消費電力の増加を回避できる。
【0062】
次に、送信装置TXにおける高周波送信信号の電力の調整動作について、
図2を参照して説明する。
図2(A)は、電力増幅器3が増幅した高周波送信信号のパワースペクトルを示す図である。
図2(B)は、二乗検波回路6の二乗検波出力信号のパワースペクトルを示す図である。
【0063】
図2(A)に示すパワースペクトルの高周波送信信号(周波数FTX)が二乗検波回路6において二乗検波されると、二乗検波出力信号は、直流成分(周波数0)と、高周波送信信号の2倍の周波数成分(周波数2FTX)とが現れる(
図2(B)参照)。
【0064】
厳密には、二乗検波回路6における二乗検波出力信号は、直流成分(周波数0)と、高周波送信信号の2倍の周波数成分(周波数2FTX)以外に、更に、ベースバンドの周波数FBBの周波数成分と、2FBBの周波数成分とが現れる(
図6(B)参照)。
【0065】
送信装置TXにおける高周波送信信号の電力の調整動作時では、IQ信号は無信号となる、即ちベースバンドのIQ信号の周波数は0(ゼロ)と考えることができる。従って、
図2(B)では、ベースバンドの周波数FBBが例えば0(ゼロ)である場合のパワースペクトルが図示されている。
【0066】
LPF8は、2倍の周波数成分の高周波送信信号を抑圧し、直流成分の二乗検波出力信号をA/D変換器9に出力する。A/D変換器9は、直流成分の二乗検波出力信号をA/D変換する。
【0067】
これにより、A/D変換器9には直流成分の二乗検波出力信号が入力されるので、A/D変換器9のサンプリング周波数Fs1を十分に低くでき、A/D変換器9の消費電力の低減が可能となる。
【0068】
制御回路10は、A/D変換器9におけるA/D変換出力としての直流成分のデジタル値に応じて、制御回路10に入力される直流成分のデジタル値を最小化するようにベースバンドのIQ信号の振幅を調整するための制御信号S1を生成してI/Q信号発生回路1に出力する。これにより、制御回路10は、送信装置TXの周囲温度が変動した場合に高周波送信信号の電力が所望値から変動しても、高周波送信信号の電力を一定の所望値に制御できる。
【0069】
次に、送信装置TXにおけるベースバンドのIQ信号の振幅及び位相のバランスとDCオフセットとの調整動作について、
図6(B)を参照して説明する。周波数FBB(例えば数100MHz)であって位相が90度異なるトーン信号FBB_I,FBB_QがI/Q信号発生回路1から変調器2に入力された場合、二乗検波回路6の二乗検波出力信号は、
図6(B)に示す各周波数成分の信号が現れる。
【0070】
コンデンサ11は二乗検波出力信号の直流(DC)成分を除去又は抑圧するので、周波数FBBの信号成分と周波数2FBBの信号成分とが可変利得増幅器12に入力される。つまり、可変利得増幅器12に入力される信号は周波数0から数100MHzまでの広帯域ではない。これにより、可変利得増幅器12の周波数特性を広帯域に設計する必要が無くなる。
【0071】
A/D変換器13は、数100MHzの信号をA/D変換するので、サンプリング周波数Fs2がサンプリング周波数Fs1より高くなって消費電力が増加するが、例えば入力ビット数を少なく設定することで、消費電力の増加は最低限に留めることができる。この場合、A/D変換器13のダイナミックレンジが狭くなるので、A/D変換器13の前段に設けられた可変利得増幅器12は、A/D変換器13のダイナミックレンジに応じて、入力された信号の振幅を最適化する。これにより、二乗検波回路6の検波レンジが等価的に広くなる。
【0072】
制御回路14は、A/D変換器13におけるA/D変換出力としての交流成分のデジタル値の成分を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)することで周波数軸上のパワースペクトルを算出する。制御回路14は、算出された周波数FBBのパワースペクトルを最小化するように、周波数FBB_I,FBB_Qの各トーン信号のDCオフセットを調整する。これにより、制御回路14は、高周波送信信号に生じるキャリアリークのレベルを低減できる。
【0073】
更に、制御回路14は、高速フーリエ変換の結果、算出された周波数2FBBのパワースペクトルを最小化するように、周波数FBB_I,FBB_Qの各トーン信号の振幅及び位相のバランスを調整する。これにより、制御回路14は、高周波送信信号に生じるイメージリークのレベルを低減できる。
【0074】
図3は、本実施形態の二乗検波回路6と増幅器7との回路構成の一例を示す図である。
図3に示す二乗検波回路6は、コンデンサ60と、伝送線路61と、バイアス回路62と、ソース接地トランジスタ63と、伝送線路64と、抵抗65と、コンデンサ66とを含む。また、
図3に示す増幅器7は、ソース接地トランジスタ70と、抵抗71,72とを含む。
【0075】
伝送線路5から二乗検波回路6に入力された高周波送信信号は、コンデンサ60及びT分岐の伝送線路61を介して、ソース接地トランジスタ63のゲート端子に入力される。ソース接地トランジスタ63のDCゲートバイアスは、バイアス回路62から供給されて、T分岐の伝送線路61を介して、ソース接地トランジスタ63のゲート端子に印加される。なお、バイアス回路62は、ソース接地トランジスタ63に二乗検波させるためのDCゲートバイアス電圧を、ソース接地トランジスタ63のゲート端子に供給する。
【0076】
ソース接地トランジスタ63は、ドレイン端子がT分岐の伝送線路64に接続され、バイアス回路62から供給されたDCゲートバイアスに従って、二乗検波素子として動作する。
【0077】
伝送線路64の一端は、ソース接地トランジスタ63によって二乗検波された二乗検波出力信号のレベル調整用の抵抗65を介して電源Vccに接続され、伝送線路64の一端から二乗検波出力信号が出力される。
【0078】
一方、伝送線路64の他端は、コンデンサ66を介して、高周波信号がAC的に接地される。即ち、接地容量素子としてのコンデンサ66は、ソース接地トランジスタ63によって二乗検波された二乗検波出力信号のうち高域の特定周波数(例えば60GHz)の信号を遮断又は抑圧する。なお、ソース接地トランジスタ63のドレイン端子には、二乗検波回路6に入力された高周波送信信号と同じ周波数成分(例えば60GHz帯)の信号が位相反転して出力されるが、コンデンサ66により遮断又は抑圧される。
【0079】
コンデンサ66の容量値は、ソース接地トランジスタ63によって二乗検波された二乗検波出力信号のうち高域の特定周波数(例えば60GHz)の信号が遮断又は抑圧可能なように予め定められた既定値である。これにより、二乗検波回路6の二乗検波出力信号から高周波(例えば60GHz帯)の信号が抑圧可能となる。
【0080】
二乗検波回路6の二乗検波出力信号はコンデンサ11と増幅器7とに分岐される。増幅器7に入力された二乗検波出力信号は、ソース接地トランジスタ70のゲート端子に入力される。ソース接地トランジスタ70のドレイン端子は、抵抗71を介してゲート端子に接続され、ソース接地トランジスタによって増幅された信号のレベル調整用の抵抗72を介して電源Vccに接続される。ソース接地トランジスタ70は、増幅器7の出力信号をドレイン端子からLPF8に出力する。
【0081】
更に、増幅器7は、ソース接地トランジスタ70のゲート端子とドレイン端子との間を抵抗71によって負帰還させることで、増幅器7としての利得を低く設定できる。例えば、増幅器7の利得を1に設定できる。
【0082】
ここで、増幅器7の後段に接続されるA/D変換器9のダイナミックレンジは既定値(例えば1V)であるため、増幅器7の利得が大きい場合にはA/D変換器9に入力される信号レベルが大きくなってしまう。A/D変換器9のダイナミックレンジ外はデジタル変換できないので、等価的に二乗検波回路6の検波レンジが狭くなる。
【0083】
しかし、本実施形態では、増幅器7の利得を低く設定できるので、A/D変換器9に入力される信号レベルが大きくならず、A/D変換器9のダイナミックレンジを有効に使えるため、二乗検波回路6の検波レンジを等価的に拡大できる。
【0084】
以上により、本実施形態の送信装置TXは、第1の調整回路において、高周波送信信号が入力された二乗検波回路6の二乗検波出力信号の直流成分を抽出し、直流成分に対するA/D変換器9のA/D変換出力に応じて、ベースバンドのIQ信号の振幅を所望値に調整する。
【0085】
更に、送信装置TXは、第2の調整回路において、高周波送信信号が入力された二乗検波回路6の二乗検波出力信号の交流成分を抽出し、交流成分に対するA/D変換器13のA/D変換出力に応じて、ベースバンドのIQ信号の振幅及び位相のバランスとDCオフセットとを調整する。
【0086】
これにより、送信装置TXは、キャリアリーク及びイメージリークの各信号レベルを抑制(低減)できるので変調器2における送信信号の変調精度特性を改善でき、更に、高周波送信信号の電力を一定に制御できる。
【0087】
以上、図面を参照して各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。