【実施例】
【0026】
他に言及のない限り、すべての試薬はウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co)から得られたか若しくは入手可能であり、又は既知の方法によって合成されてもよい。
【0027】
膜の調製
次の実施例の各々で使用されたアイオノマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)及びFSO2−CF2CF2CF2CF2−O−CF=CF2(コモノマーA)のコポリマーである。コモノマーAは、本明細書に参考として組み込まれた米国特許出願第10/322,254号及び第10/322,226号に開示された手順に従って製造された。重合は、米国特許出願第10/325,278号に開示されたような水性乳化重合により行われた。当量(EW)は1000(0.001モル/gのイオン交換容量)であった。アイオノマーは、70:30のnプロパノール/水中に22.3%固体を含有するキャステイング溶液中に提供された。キャスティング溶液は、1ppm未満の濃度で鉄を含有した。膜は、10.2cm(4インチ)のマルチプルクリアランスアプリケータ(カタログ番号PAR−5357、メリーランド州コロンビア(Columbia)のBYK−ガードナー(BYK-Gardner))の0.0508cm(0.020インチ)ギャップを使用して、分散液を窓ガラスの上に手塗り工法(hand-spread technique)によりキャストすることによって製造された。膜フィルムは周囲空気中で15分間乾燥され、その後80℃の空気乾燥器の中で10分間乾燥され、その後200℃の空気乾燥器の中で15分間加熱された。
【0028】
過酸化物浸漬試験
実施例の幾つかにおいて製造された過フッ素化されたアイオノマー膜の酸化安定性が、次のように試験された。0.03〜0.06gの重量の膜のサンプルが、注意深く秤量され、次いでガラス瓶中の過酸化水素溶液(1Mの開始濃度)50gの中に浸漬された。瓶は封止され、及びオーブンの中に90〜95℃で5日間設置された。5日間の浸漬期間の後、サンプルは溶液から取り出され、脱イオン水ですすがれ、室温で少なくとも3時間乾燥され、及び秤量された。未修正の重量喪失値が計算された。0日目と5日目との間の周囲相対湿度の変化に起因し得る浸漬前後の重量差を調節するために、各膜サンプルのばらの1枚1枚(過酸化物に暴露していない)が、浸漬期間の最初と最後に秤量された。修正された重量喪失の読みに到達するために、浸漬後に残留する未修正の重量分率について(浸漬されたサンプルについて)計算された数字が、浸漬されていない膜の1枚1枚について「残留する」重量分率によって最初に割られた。後の処理は、相対湿度の変化に起因する重量変化の効果が、浸漬されたサンプルについて測定された重量喪失に及ぼすその逸脱効果において乗法的であると仮定している。
【0029】
酸含有量測定
イオンのセリウムの添加により調製されたアイオノマー膜の酸含有量を決定するために滴定が行われた。各滴定について、およそ0.05gのアイオノマーフィルムの注意深く秤量されたサンプルが、0.1MのNaCl溶液の100mLに添加された。0.05MのNaOH溶液がサンプル溶液に、ビュレットを使用してゆっくりと添加され、及びpHメーターを使用して終点が決定された。酸を中和するために必要なNaOHの量が、膜の酸含有量として解釈された。
【0030】
MEAの製作
活性面積の50cm
2を有する燃料電池膜電極組立体(MEA)が次のように調製された。触媒分散液が、本明細書に参考として組み込まれたPCT国際公開特許WO2002/061,871に記載された方法に従って調製された。触媒コーティングされた膜を調製するために、アノード及びカソード層が、同じ参考文献PCT国際公開特許WO2002/061,871に記載されたデカール転写法に従って膜に塗布された。PTFE処理されたカーボンペーパーのガス拡散層及びポリテトラフルオロエチレン/ガラス複合体ガスケットが、CCMにカーバー・プレス(Carver Press)(フレッド・カーバー社(Fred Carver Co.)、インディアナ州ウォバシュ(Wabash))の中で、13.4kNの力で132℃で10分間プレスすることにより塗布された。
【0031】
MEA寿命試験
MEAは、ガス流量、圧力、相対湿度、及び電流又は電圧の独立制御装置を有する試験ステーション(フューエルセル・テクノロジーズ(Fuel Cell Technologies)、ニューメキシコ州アルバカーキ(Albuquerque))において試験された。試験の備品は、クワッド−サーペンタイン(quad-serpentine)流動フィールドを有するグラファイトの電流コレクター・プレートを備えた。MEAは、アノードの超過気圧で90℃において亜飽和状態下のH
2/空気で操作された。MEAは、多様な電流密度値の強制による加速負荷サイクル寿命試験を受けた。各負荷サイクル後、電池の開路電圧(OCV)が測定され及び記録された。こうした試験プロトコルについての一般的な現象は、OCVが単調にではあるが、減衰速度(decay rate)にはっきりした「屈曲部分」又は顕著な増加を有して減衰することである。減衰速度が増加する時点が、MEAの寿命として解釈され得る。代替として、下限閾電圧値が、MEAの寿命の終了を示すために選択され得る。動作燃料電池の流出水中のフッ化物イオンの発生速度もまた、イオンクロマトグラフィーにより測定された。より高いフッ化物発生速度は、フルオロポリマー膜のより急速な劣化を示す。
【0032】
比較実施例1C
キャスティング分散液が、硝酸鉄として添加された追加の鉄(ポリマー重量基準で500ppm)を含んだことを除いて、以上に提示された詳細に従って対照膜が調製された。0.081gの硝酸第二鉄(Fe(NO
3)
3−9H
2O、(製品番号I110−500、ニュージャージー州フェアローン(Fair Lawn)のフィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific))が、99gの22.7重量%アイオノマーキャスティング分散液に、24時間攪拌しながら添加された。鉄塩が溶解し、透明なキャスティング分散液を与えた。膜が、以上に与えられた手順に従ってキャストされた。表1は、この膜についての過酸化物浸漬試験及び酸含有量測定結果の記録を示す。2つのサンプルが製造され、及び報告された結果は両サンプルの平均である。
【0033】
(実施例2〜4)
実施例1Cに従って調製された10gのキャスティング分散液のアリコートが、酸化セリウム(CeO
2、ニュージャージー州、クランベリー(Cranbury)のローディア・エレクトロニクス・アンド・キャタリシス(Rhodia Electronics and Catalysis)から販売名「ポリッシング・オパライン(Polishing Opaline)」として市販されている)、粒径0.5〜1.0ミクロンの様々な量と更に組み合わされ、及び24時間攪拌された。膜が、以上に与えられた手順に従ってキャストされた。表1は、これらの膜についての過酸化物浸漬試験及び酸含有量測定結果の記録を示す。実施例2、3、及び4の各々について2つのサンプルが作られ、及び報告された結果は両サンプルの平均である。
【0034】
【表1】
【0035】
酸化セリウムの添加は、パーフルオロ化アイオノマーの重量喪失を一貫して低減し、より高度の酸化安定性を示した。
【0036】
比較実施例5C
キャスティング分散液が、硝酸鉄として添加された追加の鉄(500ppm)を含んだことを除いて、以上に提示された詳細に従って対照膜が調製された。0.081gの硝酸第二鉄(Fe(NO
3)
3−9H
2O、(製品番号I110−500、ニュージャージー州フェアローン(Fair Lawn)のフィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific))が、99gの22.7重量%アイオノマーキャスティング分散液に、24時間攪拌しながら添加された。鉄塩が溶解し、透明なキャスティング分散液を与えた。膜が、以上に与えられた手順に従ってキャストされた。表IIは、この膜についての過酸化物浸漬試験及び酸含有量測定結果の記録を示す。2つのサンプルが製造され、及び報告された結果は両サンプルの平均である。
【0037】
(実施例6)
実施例5Cに従って調製されたキャスティング分散液のアリコートが、酸化セリウム(CeO
2、製品番号55322、マサチューセッツ州、ワードヒル(Ward Hill)のアルファ・アエサー(Alfa Aesar))と更に組み合わされ、及び24時間攪拌された。膜が、以上に与えられた手順に従ってキャストされた。膜が、以上に与えられた手順に従ってキャストされた。表IIは、この膜についての過酸化物浸漬試験及び酸含有量測定結果の記録を示す。酸化セリウムの添加は、パーフルオロ化アイオノマーの重量喪失を低減し、より高度の酸化安定性を示した。
【0038】
【表2】
【0039】
比較実施例7C
対照膜が、比較実施例1Cに記載された方法に従って調製された。表IIIは、この膜についての過酸化物浸漬試験結果の記録を示す。2つのサンプルが製造され、及び報告された結果は両サンプルの平均である。
【0040】
(実施例8)
実施例5Cに従って調製されたポリマーキャスティング分散液のアリコート(23.3重量%ポリマーを測定し及び500ppmの鉄を含む)が水性酸化セリウムコロイド状分散液と更に組み合わされた。0.0329gの20重量%CeO
2コロイド状分散液(製品番号12730、マサチューセッツ州、ワードヒル(Ward Hill)のアルファ・アエサー(Alfa Aesar))、粒径10〜20nmが、5.28gのポリマー分散液に攪拌しながら添加された。質量は、CeO
2及びポリマーの総質量に対して、収率0.53重量%CeO
2、又は0.031meq Ce/g以上に達する。混合物は、8時間攪拌されて混濁したキャスティング分散液を生成した。膜が、以上に与えられた手順に従ってキャストされた。表IIIは、この膜についての過酸化物浸漬試験結果の記録を示す。2つのサンプルが製造され、及び報告された結果は両サンプルの平均である。
【0041】
【表3】
【0042】
比較実施例9C
対照膜が、本明細書に参考として組み込まれた、米国特許第6,649,295号の実施例に記載された方法に従って調製された。
【0043】
(実施例10)
MEAが、実施例2について記載されたように製造された2つの膜、及び実施例9Cについて記載されたように製造されたものから、以上に記載されたように作製された。
図1は、これらのMEAについての燃料電池寿命試験結果の記録を示しており、実施例9Cの比較MEAについての電池電位(軌跡A1、左側の目盛り)、本発明の2つの実施例10のMEAについての電池電位(軌跡C1及びD1、左側の目盛り)、実施例9Cの比較MEAについてのフッ化物イオン放出速度(軌跡A2、右側の目盛り)、及び本発明の実施例10のMEAについてのフッ化物イオン放出速度(軌跡C2及びD2、右側の目盛り)を包含する。比較のために、
図1は、Mn塩添加物により製造された比較MEAについての電池電位及びフッ化物イオン放出速度を更に報告している(軌跡B1及びB2)。本発明の実施例10のMEAは、劇的に延長された寿命及び低減したフッ化物イオンの発生を実証した。
【0044】
本出願では、以下の態様が提供される。
1. 高フッ素化ポリマー電解質及びその中に分散した少なくとも1種の酸化セリウム化合物を含むポリマー電解質膜を含む燃料電池膜電極組立体。
2. 前記ポリマー電解質膜の厚さにわたる前記高フッ素化ポリマー電解質の分布が均一であり、及びその際前記ポリマー電解質膜の厚さにわたる前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物の分布が均一である、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
3. 前記高フッ素化ポリマー電解質が、パーフルオロ化されている、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
4. 前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物が、前記ポリマー電解質膜の総重量に対して0.01〜5重量%の量で存在する、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
5. 前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物が、前記ポリマー電解質膜の総重量に対して0.1〜1重量%の量で存在する、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
6. 前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物が、前記ポリマー電解質膜の総重量に対して0.2〜0.3重量%の量で存在する、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
7. 前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物が、前記ポリマー電解質膜の総体積に対して1体積%未満の量で存在する、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
8. 前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物が、CeO2である、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
9. 前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物が、Ce2O3である、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
10. 前記ポリマー電解質が、1000以下の当量を有する、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
11. 前記ポリマー電解質が、900以下の当量を有する、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
12. 前記ポリマー電解質が、800以下の当量を有する、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
13. 前記ポリマー電解質が、式:−O−CF2−CF2−CF2−CF2−SO3Hに従うペンダント基を含む、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
14. 前記ポリマー電解質が、式:−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3Hに従うペンダント基を含む、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
15. a)酸官能基を含む高フッ素化ポリマー電解質を提供する工程と、b)その中に少なくとも1種の酸化セリウム化合物を、前記ポリマー電解質膜の総重量の0.01〜5%を提供するような量で分散する工程と、c)その後、前記ポリマー電解質を含むポリマー電解質膜を形成する工程と、を含む、燃料電池ポリマー電解質膜を製造する方法。
16. 前記ポリマー電解質膜の厚さにわたる前記高フッ素化ポリマー電解質の分布が均一であり、及びその際前記ポリマー電解質膜の厚さにわたる各酸化セリウム化合物の分布が均一である、態様15に記載の方法。
17. 態様15に記載の方法を含み、及び:d)前記ポリマー電解質膜を含む膜電極組立体を形成する工程を更に含む、燃料電池膜電極組立体を製造する方法。
18. 前記高フッ素化ポリマー電解質が、パーフルオロ化されている、態様15に記載の方法。
19. 前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物が、前記ポリマー電解質膜の総重量の0.1〜1%を提供する、態様15に記載の方法。
20. 前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物が、前記ポリマー電解質膜の総重量の0.2〜0.3%を提供する、態様15に記載の方法。
21. 前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物が、前記ポリマー電解質膜の総体積に対して1体積%未満の量で存在する、態様15に記載の方法。
22. 前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物が、CeO2である、態様15に記載の方法。
23. 前記少なくとも1種の酸化セリウム化合物が、Ce2O3である、態様15に記載の方法。
24. 前記ポリマー電解質が、1000以下の当量を有する、態様15に記載の方法。
25. 前記ポリマー電解質が、900以下の当量を有する、態様15に記載の方法。
26. 前記ポリマー電解質が、800以下の当量を有する、態様15に記載の方法。
27. 前記ポリマー電解質が、式:−O−CF2−CF2−CF2−CF2−SO3Hに従うペンダント基を含む、態様15に記載の方法。
28. 前記ポリマー電解質が、式:−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3Hに従うペンダント基を含む、態様15に記載の方法。
29. 多孔質支持体を更に含む、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
30. 多孔質支持体を含まない、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
31. 前記ポリマーが架橋されている、態様1に記載の燃料電池膜電極組立体。
本発明の様々な修正及び変更は、本発明の範囲及び原理から逸脱することなく当業者には明白であり、また、本発明は、上記で説明した例示的な実施形態に不当に限定して理解すべきではない。