(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932756
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】C形鋼固定用ボルト
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
E04B1/58 509J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-235550(P2013-235550)
(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2015-94182(P2015-94182A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143558
【氏名又は名称】株式会社国元商会
(72)【発明者】
【氏名】大野 健
【審査官】
渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−6211(JP,A)
【文献】
実公昭37−8844(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C形鋼の両側リップ部を当該C形鋼の内側から押える押え金具が、その長さ方向の中央位置においてボルトの頭部内側にT字形に、このボルトに相対回転不能に取り付けられているC形鋼固定用ボルトにおいて、前記ボルトの頭部と押え金具との間に回転制限板が、その長さ方向の中央位置において前記ボルトに相対回転不能に取り付けられ、前記押え金具と回転制限板をC形鋼の両側リップ部間から当該C形鋼の内側に差し込んだ後、前記ボルトに対するナットの締め付け方向に当該ボルトを回転させて前記押え金具を、その両端がC形鋼の両側リップ部を押える向きに転向させたとき、前記回転制限板の両端がC形鋼の平行両側板の内面に当接してそれ以上のボルトの回転を制限するように構成された、C形鋼固定用ボルト。
【請求項2】
前記ボルトには、頭部に隣接する内端に角軸部が形成され、前記押え金具は、長さ方向の両端側ほどボルトの軸部先端側に湾曲する円弧形背板部と、この円弧形背板部の両側辺からボルトの軸部先端側へ一体に連設された左右両側板部とから成るプレス成形品から成り、前記円弧形背板部の中央に角筒状周壁が内側へ突出するバーリング角孔が設けられ、この押え金具のバーリング角孔と前記回転制限板の角孔とがボルトの前記角軸部に外嵌した状態で、押え金具のバーリング角孔の前記角筒状周壁を、ボルトの前記角軸部に続く螺軸部に圧接させるように加圧変形させて、押え金具と回転制限板をボルトの頭部内側に固着して成る、請求項1に記載のC形鋼固定用ボルト。
【請求項3】
前記回転制限板は、ボルトに固定される中央部から両方向に延出する先細り腕板部を備え、この回転制限板が、その先細り腕板部の両端が押え金具の両端に対して前記ボルトに対するナットの締め付け方向とは反対側にずれて位置するように取り付けられ、前記先細り腕板部の両端には、C形鋼の平行両側板の内面に当接する円弧状先端側縁が形成されている、請求項1又は2に記載のC形鋼固定用ボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨造り建物の窓枠などをC形鋼で組み立てる場合などに使用されるC形鋼固定用ボルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のC形鋼固定用ボルトは、特許文献1などによって従来周知のように、C形鋼の両側リップ部を当該C形鋼の内側から押える押え金具が、ボルトの頭部内側にT字形に、このボルトに対して相対回転不能に取り付けられたものである。このようなC形鋼固定用ボルトは、C形鋼の両側リップ部間の巾の広いスリット状開口部を貫通するものであって、使用に際してこのボルトを前記スリット状開口部の巾の中心位置にセンタリングする必要がある。従来は、特許文献1にも記載されるように、前記押え金具に前記スリット状開口部内に嵌合するセンタリング用突出部を形成する方法や、C形鋼の左右両側板部に前記押え金具を左右両側から挟み込んでセンタリングするセンタリング用側板部を形成する方法などが採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−6209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押え金具にセンタリング用突出部を形成する方法では、C形鋼を形成している板材の板厚が最小である場合を想定してセンタリング用突出部の突出量を設定しなければならないため、C形鋼の両側リップ部間のスリット状開口部に対する押え金具側のセンタリング用突出部の嵌合深さが非常に浅くなり、確実に機能させることが出来ない。又、C形鋼自体に押え金具のセンタリング用側板部を形成する方法では、汎用のC形鋼を活用することが出来ないのでコストが非常に高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるC形鋼固定用ボルトを提案するものであって、本発明に係るC形鋼固定用ボルトは、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、C形鋼(22)の両側リップ部(23a,23b)を当該C形鋼(22)の内側から押える押え金具(4)が、その長さ方向の中央位置においてボルト(2)の頭部内側にT字形に、このボルト(2)に相対回転不能に取り付けられているC形鋼固定用ボルト(1)において、前記ボルト(2)の頭部(6)と押え金具(4)との間に回転制限板(3)が、その長さ方向の中央位置において前記
ボルト(2)に相対回転不能に取り付けられ、前記押え金具(4)と回転制限板(3)をC形鋼(22)の両側リップ部(23a,23b)間から当該C形鋼(22)の内側に差し込んだ後、前記ボルト(2)
に対するナット(25)の締め付け方向に当該ボルト(2)を回転させて前記押え金具(4)を、その両端がC形鋼(22)の両側リップ部(23a,23b)を押える向きに転向させたとき、前記回転
制限板(3)の両端がC形鋼(22)の平行両側板(24a,24b)の内面に当接してそれ以上のボルト(2)の回転を制限する構成になっている。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明のC形鋼固定用金具は次のように使用出来る。即ち、C形鋼を載置固定するC形鋼受け台部のボルト孔に、押え金具と回転制限板が頭部内側に固定されたボルトを下向きに差し込み、固定対象のC形鋼を、その両リップ部が前記C形鋼受け台部上に支持される向きで載置するとき、前記C形鋼受け台部下から前記ボルトを回転させて、押え金具と回転制限板の長さ方向をC形鋼の長さ方向と平行にし、これら押え金具と回転制限板をC形鋼の両リップ部間の巾広スリット状開口部から当該C形鋼の内側に差し込む。この状態で前記ボルトに対するナットの締め付け方向に当該ボルトを回転させて前記押え金具を、その両端がC形鋼の両側リップ部を押える向きに転向させる。このとき前記回転制限板の両端がC形鋼の平行両側板の内面に当接してそれ以上のボルトの回転を制限する。
【0007】
従って、作業者は特に意識せずとも前記押え金具を、その両端がC形鋼の両側リップ部を押える向きで且つその両端とC形鋼の両側リップ部との重なり代が等しくなる状態にセットすることが出来る。この状態で前記C形鋼受け台部の下側に突出している前記ボルトの螺軸部にナットを螺嵌締結することにより、前記押え金具の両端でC形鋼の両側リップ部を前記C形鋼受け台部上に押圧固定することが出来る。勿論、前記ナットの締結操作時にボルトが共回りして前記押え金具の向きが変化してしまうようなことも、前記回転制限板の両端がC形鋼の平行両側板の内面に当接して阻止する。
【0008】
上記のように使用出来る本発明のC形鋼固定用金具によれば、押え金具には、固定対象のC形鋼の両側リップ部上に当接する両端部を設けておくだけで良く、固定対象のC形鋼の板厚などに合わせた特別なセンタリング用突出部を設ける必要がなく、押え金具自体をシンプル且つ安価に製造することが出来る。又、固定対象のC形鋼は、押え金具の両端で押えられる両側リップ部を有すると共に平行両側板の内面間に一定の巾がありさえすれば良いので、汎用の各種C形鋼を固定対象に利用することが出来、平板の型抜き加工で簡単且つ安価に製造出来る回転制限板を追加しなければならないとしても、全体としての経済的効果は大きい。
【0009】
上記本発明を実施する場合、前記ボルト(2)には、頭部(6)に隣接する内端に角軸部(7)
を形成し、前記押え金具(4)は、長さ方向の両端側ほどボルト(2)の先端側に湾曲する円弧形背板部(13)と、この円弧形背板部(13)の両側辺からボルト(2)の先端側へ一体に連設さ
れた左右両側板部(14a,14b)とから成るプレス成形品で構成し、前記円弧形背板部(13)の
中央に角筒状周壁(15a)が内側へ突出するバーリング角孔(15)を設け、この押え金具(4)のバーリング角孔(15)と前記回転制限板(3)の角孔(8)とをボルト(2)の前記角軸部(7)に外嵌した状態で、押え金具(4)のバーリング角孔(15)の前記角筒状周壁(15a)を、ボルト(2)の
前記角軸部(7)に続く螺軸部(5)に圧接させるように加圧変形させて、押え金具(4)と回転
制限板(3)をボルト(2)の頭部(6)内側に固着することが出来る。この構成によれば、溶接によらずに、そしてネジなどの他の止着具を併用することなく、丈夫なC形鋼固定用ボルトを組み立てることが出来る。
【0010】
又、前記回転制限板(3)は、ボルト(2)に固定される中央部(9)から左右両方向に延出す
る先細り腕板部(10a,10b)を備えた形状とし、この回転制限板(3)を、その先細り腕板部(10a,10b)の両端が押え金具(4)の両端に対して前記ボルト(2)に対するナット(25)の締め付
け方向とは反対側にずれて位置するように取り付け、前記先細り腕板部(10a,10b)の両端
には、C形鋼(22)の平行両側板(24a,24b)の内面に当接する円弧状先端側縁(12a,12b)を形成しておくことが出来る。この構成によれば、必要最小限の大きさの平板を使用して回転制限板を構成することが出来ると共に、ボルトがC形鋼の両側リップ部間の巾広スリット状開口部の巾方向の中心位置から片側にずれている状態からの当該ボルト及び押え金具に対するセンタリング作用を円滑に行わせることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは、本発明のC形鋼固定用ボルトの使用状態を示す一部縦断側面図、
図1Bは、同横断平面図である。
【
図2】
図2Aは、本発明のC形鋼固定用ボルトの使用の直前状態を示す一部縦断側面図、
図2Bは、同横断平面図である。
【
図4】
図4は、組み立てられたC形鋼固定用ボルトの縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のC形鋼固定用ボルト1は、
図3及び
図4に示すように、ボルト2、回転制限板3、及び押え金具4から構成されている。ボルト2は、螺軸部5となべ型頭部6との間に、辺長が螺軸部5の外径より若干大きい横断面正方形の角軸部7を形成したものであり、螺軸部5の先端面には、回転操作用の溝5aが形成されている。尚、図示の溝5aは、マイナス形の溝であるが、プラス形の溝や角孔であっても良い。
【0013】
回転制限板3は、金属の平板を型抜き加工して構成したもので、ボルト2の角軸部7に丁度外嵌し得る大きさの角孔8が設けられた中央部9から左右両側に先端側ほど巾狭くなる先細り腕板部10a,10bが連設され、各先細り腕板部10a,10bの先端には、平面視において時計回りの方向に屈曲する屈曲端部11a,11bが形成され、これら各屈曲端部11a,11bの外側縁が滑らかに面取りされて円弧状先端側縁12a,12bとなっている。
【0014】
押え金具4は、長さ方向の両端側ほど片側に湾曲する円弧形背板部13と、この円弧形背板部13の両側辺から、円弧形背板部13の湾曲中心側へ一体に連設された左右両側板部14a,14bとから成る金属板のプレス成形品から成り、前記円弧形背板部13の中央に角筒状周壁15aが内側へ突出するバーリング角孔15が設けられている。このバーリング角孔15は、ボルト2の角軸部7に丁度外嵌し得る大きさのものである。そして押え金具4の長さ方向の両端部4a,4bには、左右両側板部14a,14bの下側辺で形成されたC形鋼押え部16a,16bが設けられている。
【0015】
上記構成のボルト2の角軸部7に角孔8を利用して回転制限板3を外嵌させて、ボルト2のなべ型頭部6の内側に隣接させ、次にバーリング角孔15を利用して押え金具4を、回転制限板3にほぼ沿う向きでボルト2の角軸部7に外嵌させて、回転制限板3の内側に押え金具4の円弧形背板部13の頂面を隣接させる。このとき、押え金具4のバーリング角孔15を形成している角筒状周壁15aの先端部が、ボルト2の角軸部7から突出して螺軸部5に外嵌するように、角筒状周壁15aの高さが設定されている。従って、当該角筒状周壁15aの先端部(例えば直径方向の2箇所)を内側へ絞るように加締めて、螺軸部5に食い込むカシメ部17を形成することにより、押え金具4をボルト2に固着している。
【0016】
以上のように組み立てられた本発明のC形鋼固定用ボルト1は、
図1B及び
図2Bに示すように、平面視において、回転制限板3の両端の屈曲端部11a,11bが押え金具4の長さ方向の両端部4a,4bより外側で且つこれら両端部4a,4bより時計回り方向に少し離れた位置に位置している。この押え金具4の長さと回転制限板3の長さは、次のように使用出来るように、固定対象のC形鋼に合わせて設定されている。
【0017】
図1及び
図2に示す本発明のC形鋼固定用ボルト1の使用例では、鉄骨造りの建物の柱用形鋼18の側面所定高さにC形鋼受け部材19がボルトナット又は溶接により取り付けられ、このC形鋼受け部材19のC形鋼受け台部20に上下方向にボルト孔21が穿設されている。固定対象のC形鋼22は、その両側リップ部23a,23bが前記C形鋼受け台部20上に支持される向きにC形鋼受け部材19上に載置されるが、その前に前記ボルト孔21にC形鋼固定用ボルト1のボルト2が、
図2に示すように、回転制限板3と押え金具4の長さ方向がC形鋼22の長さ方向と平行になる向きで、上から差し込まれる。従って、固定対象のC形鋼22がC形鋼受け部材19上に載置されたとき、C形鋼固定用ボルト1の回転制限板3と押え金具4が、C形鋼22の両側リップ部23a,23b間から当該C形鋼22の内側に入り込むことになる。
【0018】
次に、ボルト2の螺軸部先端の回転操作用の溝5aを利用してドライバーなどで当該ボルト2を、C形鋼受け部材19の下側から、このボルト2に対するナットの締め付け方向(平面視で反時計回り方向)に回転させる。このボルト2がほぼ90度回転したとき、
図1に示すように、押え金具4の長さ方向が固定対象のC形鋼22の長さ方向に対してほぼ直交して、その両端部4a,4bがC形鋼22の両側リップ部23a,23bの上に重なる向きになると同時に、前記押え金具4の長さより少し長い回転制限板3の両端の屈曲端部11a,11bにおける円弧状先端側縁12a,12bが、C形鋼22の平行両側板24a,24bの内面に当接して、それ以上の押え金具4の回転を阻止する。換言すれば、このような状態になるように、C形鋼22の平行両側板24a,24b間の間隔に対して回転制限板3と押え金具4の長さが設定されている。この状態になれば、ボルト2の螺軸部5にナット25を螺嵌締結し、当該ナット25と押え金具4の両端部4a,4bのC形鋼押え部16a,16bとの間で、C形鋼受け部材19のC形鋼受け台部20とC形鋼22の両側リップ部23a,23bとを挟持固定する。
【0019】
以上のようにC形鋼固定用ボルト1を使用して、C形鋼受け部材19のC形鋼受け台部20上にC形鋼22を、その両側リップ部23a,23bをC形鋼受け台部20上に支持させる向きで固定することが出来るのであるが、回転制限板3の両端がC形鋼22の平行両側板24a,24bの内面に当接していることにより、ボルト2がC形鋼22の両側リップ部23a,23b間の中心位置にセンタリングされ、C形鋼22の両側リップ部23a,23bに対する押え金具4の両端部4a,4bの重なり代がほぼ等しい状態になり、C形鋼22は安定良くC形鋼受け部材19上に固定されることになる。
【0020】
尚、図示の使用例では、建物の壁構造体に沿って水平に配置されるC形鋼22の中間位置をC形鋼受け部材19上で固定する状態を示しているが、当該C形鋼22の端部をC形鋼受け部材19上で固定することも出来るし、巾広のC形鋼受け部材19上に、端部どうしが突合せ状態に直列する2本のC形鋼22の互いに隣接する端部を固定することも出来る。更に、柱用形鋼18に対して直角に突合せられるC形鋼22の端部をC形鋼受け部材19上に固定することも出来る。このように本発明のC形鋼固定用ボルト1は、いろいろな状況の下で、C形鋼受け部材19のC形鋼受け台部20上にC形鋼22を、その両側リップ部23a,23bをC形鋼受け台部20上に支持させる向きで固定することが出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のC形鋼固定用ボルトは、鉄骨造り建物の窓枠などをC形鋼で組み立てる場合などに、C形鋼受け台部上にC形鋼を、その両側リップ部をC形鋼受け台部上に支持させる向きで固定する手段として活用出来る。
【符号の説明】
【0022】
1 C形鋼固定用ボルト
2 ボルト
3 回転制限板
4 押え金具
4a,4b 押え金具両端部
5 螺軸部
6 なべ型頭部
7 角軸部
8 角孔
10a,10b 先細り腕板部
11a,11b 屈曲端部
12a,12b 円弧状先端側縁
13 円弧形背板部
14a,14b 左右両側板部
15 バーリング角孔
15a 角筒状周壁
16a,16b C形鋼押え部
17 カシメ部
18 柱用形鋼
19 C形鋼受け部材
20 C形鋼受け台部
21 ボルト孔
22 固定対象のC形鋼
23a,23b 両側リップ部
24a,24b 平行両側板
25 ナット