特許第5932769号(P5932769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5932769患者の呼吸活動を分析する方法およびシステム、並びに関連するアプリケーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932769
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】患者の呼吸活動を分析する方法およびシステム、並びに関連するアプリケーション
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/09 20060101AFI20160526BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   A61B5/08 201
   A61M16/00 370A
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-506717(P2013-506717)
(86)(22)【出願日】2011年4月28日
(65)【公表番号】特表2013-528415(P2013-528415A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】FR2011050957
(87)【国際公開番号】WO2011135257
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年4月9日
(31)【優先権主張番号】1053357
(32)【優先日】2010年4月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100108383
【弁理士】
【氏名又は名称】下道 晶久
(74)【代理人】
【識別番号】100141162
【弁理士】
【氏名又は名称】森 啓
(72)【発明者】
【氏名】パトリック アヌッセ
【審査官】 冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−078139(JP,A)
【文献】 特開2009−225976(JP,A)
【文献】 特表平10−503943(JP,A)
【文献】 国際公開第95/032016(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
A61M 11/00 − 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸活動の信号を取得する手段と前記呼吸活動の信号を分析する手段とを有する、患者の呼吸活動を分析するシステムにおいて、
前記呼吸活動の信号を取得する手段が、少なくとも一つの呼吸活動の信号を取得するステップであって、前記呼吸活動の信号は、一つの呼吸サイクルに対応する基本信号を少なくとも一つ有し、前記呼吸活動の信号の一般的な形はx(t) = x0 + x1cos(Φ(t))によって表され、ただし、Φ(t)は前記基本信号の位相であるステップと、
前記呼吸活動の信号を分析する手段が、前記呼吸活動の信号を分析するステップと、を有し、
前記呼吸活動の信号を分析するステップは、
−前記呼吸活動の信号から、前記基本信号を抽出するステップと、
−前記基本信号の位相方程式
【数1】
の表現を決定するステップと、
−前記基本信号の位相Φ(t)の表現を、以下の式(1)で定義される関数pcosnおよびpsinnに基づいた、前記基本信号の非調和および形状を計測するパラメータ(r, rk0, pk)の関数によって決定する、ステップと、
【数2】
を有することを特徴とする、患者の呼吸活動を分析する方法。
【請求項2】
前記位相方程式は、以下の式(2)によって表され、
【数3】
ただし、rは[0, 1]の範囲内で変化し、前記基本信号の非調和を計測するパラメータである、請求項1に記載の呼吸活動を分析する方法。
【請求項3】
前記基本信号は、二つのパラメータrおよびΦ0で以下の式(3)によって表され、
【数4】
ただし、a1 = x1cos(Φ0)およびb1 = -x1sin(Φ0)であり、関数hsinおよびhcosは以下の式(4)によって定義される、
【数5】
請求項2に記載の呼吸活動を分析する方法。
【請求項4】
前記位相方程式は、以下の式(5)によって表され、
【数6】
ただし、P(Φ)およびQ(Φ)は三角関数の多項式である、請求項1に記載の呼吸活動を分析する方法。
【請求項5】
前記位相Φ(t)の表現は以下の式(6)によって決定され、
【数7】
ただし、関数psin1およびpcos1は以下の式(7)によって定義される、
【数8】
請求項4に記載の呼吸活動を分析する方法。
【請求項6】
呼吸活動の信号を取得する手段であって、前記呼吸活動の信号は、一つの呼吸サイクルに対応する基本信号を少なくとも一つ有し、前記呼吸活動の信号の一般的な形はx(t) = x0 + x1cos(Φ(t))によって表され、ただし、Φ(t)は前記基本信号の位相である手段と、
前記呼吸活動の信号を分析する手段と、を有し、
前記呼吸活動の信号を分析する手段は、
−前記呼吸活動の信号から、前記基本信号を抽出する手段と、
−前記基本信号の位相方程式
【数9】
の表現を決定する手段と、
−前記基本信号の位相Φ(t)の表現を、以下の式(8)で定義される関数pcosnおよびpsinnに基づいた、前記基本信号の非調和および形状を計測するパラメータ(r, rk, Φ0, pk)の関数によって決定する手段と、
【数10】
を有することを特徴とする、患者の呼吸活動を分析するシステム。
【請求項7】
前記位相方程式を以下の式(9)によって表す手段であって、
【数11】
ただし、rは[0, 1]の範囲内で変化し、前記基本信号の非調和を計測するパラメータである手段を有する、請求項6に記載の呼吸活動を分析するシステム。
【請求項8】
前記基本信号を二つのパラメータrおよびΦ0で以下の式(10)によって表す手段であって、
【数12】
ただし、a1 = x1cos(Φ0)およびb1 = -x1sin(Φ0)であり、関数hsinおよびhcosは以下の式(11)によって定義される手段を有する、
【数13】
請求項7に記載の呼吸活動を分析するシステム。
【請求項9】
前記位相方程式を以下の式(12)によって表す手段であって、
【数14】
ただし、P(Φ)およびQ(Φ)は三角関数の多項式である手段を有する、請求項8に記載の呼吸活動を分析するシステム。
【請求項10】
前記位相Φ(t)を以下の式(13)によって表す手段であって、
【数15】
ただし、関数psin1およびpcos1は以下の式(14)によって定義される手段を有する、
【数16】
請求項9に記載の呼吸活動を分析するシステム。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載の呼吸活動を分析するシステムを有する、呼吸補助装置。
【請求項12】
請求項6〜10のいずれか一項に記載の呼吸活動を分析するシステムを有する、呼吸監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の呼吸活動を分析する方法およびシステムに関する。本発明は、患者の呼吸活動を分析する方法およびシステムであって、この方法は、一つの呼吸サイクルに関連する少なくとも一つの基本信号を有する少なくとも一つの呼吸信号を取得するステップであって、この呼吸信号の一般的な形は数式x(t) = x0 + x1cos(Φ(t))によって表され、ただし、Φ(t)は基本信号の位相であるステップと、呼吸信号を分析するステップと、を有する、方法およびシステムに関する。
【0002】
同様に、本発明は、これらの呼吸補助器具および呼吸監査器具のコマンドでのアプリケーションに関する。
【0003】
特に、本発明は、呼吸障害の検出または人工呼吸器のコマンドに適用される。
【背景技術】
【0004】
呼吸活動の信号は、患者の呼吸活動に関する数量の変動を計測する信号である。この呼吸活動に関する数量とは、空気の流量および圧力、呼吸器官口における酸素および二酸化炭素の密度または血液内の酸素の密度などである。これらの数量は、例えば、患者の口に取り付けられたマスクに内蔵された流量もしくは圧力センサまたは酸素計、または、例えば患者の呼吸器官内に設置された圧力計などの内蔵センサなどの非侵襲的計測装置で計測される。同様に、これらの信号は、心電図の信号から推定することができる。
【0005】
呼吸活動とは一連の呼吸サイクルの連続であり、呼吸頻度(frequence respiratoire)と呼ばれる頻度で吸収段階および排出段階を有する。よって、呼吸活動の信号は準周期的な信号であり、連続する基本信号を有し、これらの基本信号の一つ一つが呼吸サイクルの特徴を表す。
【0006】
これらの信号を分析することによって、睡眠時無呼吸または喘息などの呼吸の問題または異常を検出することができる。しかしながら、この分析は一般的に呼吸頻度およびその変動並びに信号の振幅の決定に限られており、この信号の波形の分析は全くされてこなかった。
【0007】
ところで、呼吸活動の信号の波形はこの呼吸活動の特徴を表し、これを分析することによって効率的に実際の呼吸異常を検出することができる。
【0008】
周期的な信号を分析したり特徴付けたりする方法は数多く存在するが、特に、信号の頻度の分析によってフーリエ空間において信号を表すことができる。フーリエ展開は、頻度fの周期的な信号をfの倍数の頻度の、フーリエ係数によって加重された正弦関数の無限和に分解することである。これらのフーリエ係数は、分析される信号を符号化する、この信号の特徴を表すパラメータである。実際には、維持されるフーリエ係数の数は限られており、フーリエ展開の最初の数項のみが保存される。しかしこれらの項は信号の特徴を有効に表すには十分な数を揃えなければならない。
【0009】
ところで、呼吸活動の信号は非調和の信号、すなわち非線形であり、このような信号のフーリエ展開は多数の係数を維持する必要があり、これらの係数は物理的な意味を持たせるのが難しい。よって、これらの信号の分析にフーリエ展開は不適切である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、物理的な意味を持つ少数のパラメータによって呼吸活動の信号の波形を分析し、これらの信号の形を簡潔で明確に記号化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明は、前述したタイプの分析方法であって、呼吸活動の信号の分析は、
−呼吸活動の信号から、基本信号を抽出するステップと、
−基本信号の位相方程式
【数1】
の表現を決定するステップと、
−基本信号の位相Φ(t)の表現を、以下の式(1)で定義される関数pcosnおよびpsinnに基づいた、基本信号の非調和および形状を計測するパラメータ(r, rk, Φ0, pk)の関数によって決定するステップと、
【数2】
を有する呼吸活動の信号の分析を特徴とする、分析方法を目的とする。
【0012】
本発明に係る方法は、同様に以下の特徴を別々にまたは組み合わせて有する。
−位相方程式は以下の式(2)で表される。
【数3】
ただし、rは[0, 1]の範囲内で変化し、基本信号の非調和を計測するパラメータである。
−基本信号は、二つのパラメータrおよびΦ0によって、以下の式(3)のように表される。
【数4】
ただしa1=x1cos(Φ0)およびb1=-x1sin(Φ0) であり、関数hsinおよびhcosは以下の式(4)のように定義される。
【数5】
−位相方程式は以下の式(5)で表される。
【数6】
ただし、P(Φ)およびQ(Φ)は三角関数の多項式である。
−位相Φ(t)の表現は以下の式(6)で決定される。
【数7】
ただし、関数psin1およびpcos1は以下の式(7)によって定義される。
【数8】
【0013】
このようにして、本発明に係る方法によれば、技術の状態に応じた周期的な信号の分析方法によって、少数のパラメータで呼吸活動の信号を分析し、これらの信号の特徴を表すことができる。さらに、これらのパラメータは、物理的な意味を有しており、これらの信号の波形の特徴を表す。
【0014】
別の視点から見ると、本発明は患者の呼吸活動の分析システムも同様に目的としている。そのシステムとは、呼吸活動の信号を取得する手段であって、この信号は一つの呼吸サイクルに対応する基本信号を少なくとも一つ有し、この呼吸活動の信号の一般的な形は、x(t) = x0 + x1cos(Φ(t))で表され、ただし、Φ(t)は基本信号の位相である手段と、呼吸活動の信号を分析する手段と、を有し、この呼吸活動の信号を分析する手段は、
−呼吸活動の信号から、基本信号を抽出する手段と、
−基本信号の位相方程式
【数9】
の表現を決定する手段と、
−基本信号の位相Φ(t)の表現を、以下の式(8)で定義される関数pcosnおよびpsinnに基づいた、基本信号の非調和および形状を計測するパラメータ(r, rk, Φ0, pk)の関数によって決定する手段と、を有する。
【数10】
【0015】
同様に、本発明に係るシステムは、以下の特徴を別々にもしくは組み合わせて有する。
−このシステムは、以下の式(9)で位相方程式を表す手段を有する。
【数11】
ただし、rは[0, 1]の範囲内で変化し、基本信号の非調和を計測するパラメータである。
−このシステムは、以下の式(10)で二つのパラメータrおよびΦ0によって基本信号を表す手段を有する。
【数12】
ただし、a1 = x1cos(Φ0)およびb1 = -x1sin(Φ0)であり、関数hsinおよびhcosは以下の式(11)で定義される。
【数13】
−このシステムは以下の式(12)で位相方程式を表す手段を有する。
【数14】
ただし、P(Φ)およびQ(Φ)は三角関数の多項式である。
−このシステムは以下の式(13)で位相Φ(t)を表す手段を有する。
【数15】
ただし、関数psin1およびpcos1は以下の式(14)で定義される。
【数16】
【0016】
他の側面から見ると、本発明は、本発明に係る呼吸活動の分析システムを有する、呼吸補助器具および呼吸活動の分析システムを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る分析システムを表す概略図である。
図2】呼吸活動の信号を表す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る方法を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例を参照することによって、本発明への理解が深まるであろう。添付図面を参照しながら以下に本発明の実施例について説明する。
【0019】
図1に、呼吸活動の信号を取得および分析するシステムを示す。
【0020】
このシステムは、呼吸活動の信号の取得手段1と、取得手段1に連結された取得箱3と、例えば処理装置などの、取得箱3に連結された呼吸活動の信号を分析する手段5と、を有する。
【0021】
取得手段1は、呼吸活動の信号を収集するものである。例えば、これらの手段1は、呼吸器自記回転速度計7を有し、この速度計は患者11の鼻および口を覆う呼吸マスク9の出口に設置される。呼吸器自記回転速度計7は、患者11が吸収し排出する空気の流量を連続的に計測するものであり、取得箱3にアナログ電気信号を送る。このアナログ電気信号は、流量の特徴を表す。
【0022】
取得箱3はアナログ/デジタル変換器を有する。このアナログ/デジタル変換器は、呼吸活動の連続信号によって呼び出され、アナログ信号のサンプリングおよび量子化によってアナログ信号をデジタル信号に変換するものである。
【0023】
処理装置5は、呼吸活動のデジタル信号を、この信号の形の特徴を表すパラメータを抽出することによって分析するものである。
【0024】
図2に、呼吸器自記回転速度計7などによって計測される、呼吸活動の信号13の形を表現するグラフを示す。このグラフの横軸は時間を表し、縦軸は外から患者11の呼吸器へと流れる空気の流量を表す。このグラフ上には4つの基本信号15があり、それぞれ呼吸サイクルに対応する。この呼吸サイクルは流量が正の吸収段階16と、流量が負の排出段階17とを有する。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態に係る、図1を参照して説明したシステムによる呼吸活動の信号の取得および分析を例示する概略図である。
【0026】
最初の取得ステップ20において、患者11によって吸収し排出された空気の流量は、取得箱3に電気アナログ信号を連続的に送信する呼吸器自記回転速度計7によって計測される。この回転速度計の瞬間の振幅は計測された流量に比例する。
【0027】
このアナログ信号は、ステップ22において、取得箱3のアナログ/デジタル変換器を用いて、サンプリングおよび量子化によってデジタル化される。このようにしてデジタル化された信号、すなわち呼吸活動の信号は、処理装置5へ送信される。
【0028】
この呼吸活動の信号13は、それぞれ呼吸サイクルに対応する連続した基本信号15を有する。しかし、呼吸活動の信号13は厳密には周期的でない。なぜなら、呼吸の頻度およびそれぞれのサイクルにおいて吸収し排出される空気の流量が変動するからである。よって、瞬間の呼吸期間は、呼吸サイクルの開始と前の呼吸サイクルの開始との間の期間と定義する。この呼吸サイクルの開始は、吸収段階の開始である。
【0029】
ステップ24において、処理装置は、呼吸活動の信号13を基本信号15に分解する。この分解は、例えば信号が負の値から正の値に移行する瞬間を検出することによって実現される。この瞬間は、1つのサイクルの排出段階から次のサイクルの吸収段階への移行に対応する。このようにしてステップ24において、処理装置は患者の瞬間の呼吸頻度とその変動を決定する。
【0030】
次に、処理装置5は、ステップ26において、この分解から得られた基本信号15をそれぞれ分析する。
【0031】
それぞれの基本信号x(t)は非調和の信号であり、以下の式(15)で表される。
【数17】
ただし、全ての時間への依存は位相関数Φに含まれる。
【0032】
この基本信号x(t)は、周期Tの周期信号とみなされる。Tは、瞬間の呼吸頻度の逆数に等しい。
【0033】
ところで、非調和の信号において、非調和の主な原因は、位相の変動の対称性の亀裂に由来する。よって、関連する変動情報は、全て位相の変動によって表される。信号x(t)の分析の際には、この位相Φ(t)、特に関数Fによって表される位相の変動を調べなければならない。この関数Fは、以下の式(16)のように時間tに関する関数Φによって導かれる。
【数18】
【0034】
このようにして、信号x(t)の形状は、Fを知ることによって完全に定義される。
【0035】
よって、本発明に係る方法の分析ステップ26は、この関数Fを少数のパラメータで表すことを有する。少数のパラメータによって、フーリエ級数で同関数の展開に必要なパラメータ数に応じて低減された多数のパラメータを、同等の精度をもって理解するであろう。
【0036】
このように、この分析ステップ26は、位相Φを表す第一ステップを有する。また、特に時間に関するΦから導出される関数Fを表す。
【0037】
最も単純なケースにおいて、期間2πの信号を仮定した時、位相の変動は以下の式(17)で表される。
【数19】
上の式(17)は位相方程式と呼ばれる。
【0038】
この場合関数Fは、軸Φ=0に関する対称性を表す。この位相の変動を表す表現にはパラメータは一つしか含まれない。このパラメータは[0, 1]の範囲内で変化するrである。r=0に限りなく近づくと調和信号に対応し、r=1に限りなく近づくと無限の非調和信号に対応する。
【0039】
信号x(t)は、以下の式(18)で表される。
【数20】
ただし、Φ0は位相の初項であり、展開して書き直すとパラメータrおよびΦ0を用いた以下の式(19)になる。
【数21】
ここで、a1=x1cos(Φ0)、b1=-x1sin(Φ0)とすると、hcosおよびhsinは、以下の式(20)のように定義される。
【数22】
【0040】
このようにして、信号x(t)の分解は、2つのパラメータrおよびΦ0の介入のみ必要とする。
【0041】
非調和のパラメータと呼ばれるrは、信号の非調和性を計測する。r=0に限りなく近づくと調和の信号に対応し、r=1に限りなく近づくと無限の非調和信号に対応する。ところで、2つの関数hcosおよびhsinにおいて信号の構成を定義するパラメータΦ0は、位相の変動の対称性の角度に対応する形状のパラメータである。
【0042】
一般的な場合、すなわちいくらか周期的な信号の場合、位相方程式は以下の式(21)で表される。
【数23】
ただし、PnおよびQmは、それぞれ角度nおよびmの三角関数の多項式である。
【0043】
角度nの一般的な三角関数の多項式の式(22)は以下の通りである。
【数24】
【0044】
よって信号x(t)の分析は、少数のパラメータを介入させることによってΦの表現を決定することを有する。この分析によって、これらのパラメータの関数として信号x(t)の表現を決定することもできる。
【0045】
また、利点として、ステップ(2)の方程式は以下の式(23)に書き直すことができる。
【数25】
【0046】
多項式Pn(Φ)を因数分解することによって
【数26】
を単項式に変換することができる。これによって位相方程式を以下の式(24)に書き直すことができる。
【数27】
ただし、パラメータrkは0と1との間で信号x(t)の非調和性を計測し、パラメータpkはその形状の特徴を表す。
【0047】
信号の期間Tは、この式を0と2πとの間のΦを用いて代入することで、以下の式(25)のように求められる。
【数28】
【0048】
以上の結果、および、期間が2πに等しく係数rkが全てゼロのとき信号が調和するという条件より、位相方程式は以下の式(26)のようにも表される。
【数29】
ただし、方程式Dkは以下の式(27)ように定義される。
【数30】
ゆえに、
【数31】
関数polycosをpcosn、関数polysinをpsinnと示すと、これらの関数の定義は、以下の式(29)に表される。
【数32】
そして互いに次の特性を持つ。
【数33】
これにより、位相方程式は以下の式(31)に書き表される。
【数34】
【0049】
この方程式を解くと、以下の式(32)のようなt(Φ)の分析的表現が導かれる。
【数35】
【0050】
よって時間tは、位相Φの関数として表される。また双対的に、位相Φは、時間tの関数として表される。その際には明確に定義された、非調和を計測するパラメータrもしくはrk、および、形状を計測するパラメータΦ0もしくはpkなどの独立パラメータを用いる。
【0051】
このようにして、分析ステップ26において処理装置5は、少数のパラメータを用いてそれぞれの基本信号x(t)を符号化する。ある実施形態によれば、それぞれの基本信号x(t)は、振幅、調和性rおよび形状Φ0によってほぼ正確に表される。他の実施形態によれば、それぞれの基本信号x(t)は、それぞれ加重された2組のパラメータ(r1, p1)および(r2, p2)によりさらに正確に表される。
【0052】
それぞれの基本信号、つまりそれぞれの呼吸サイクルは、数に限りのあるパラメータによって特徴が表される。これらのパラメータは物理的な意味を持つ。なぜなら、この信号の非線形性および形状を表すからである。
【0053】
そして、ステップ28において、処理装置は、それぞれの基本信号に対して決定されたパラメータの値と予め登録されたパラメータの表の値とを比較することによって、起こりうる呼吸異常を検出する。これらの決定されたパラメータは、瞬間の呼吸頻度、振幅並びに信号の形状および調和性などのパラメータである。
【0054】
このように、本発明に係る方法によれば、呼吸活動の分析と、少数のパラメータによる呼吸活動の信号を抽出することとができる。同時に、この信号の波形をコンパクトで的確に表すことと、起こりうる呼吸異常の精密な検出が可能である。
【0055】
ステップ20、ステップ22、ステップ24、ステップ26およびステップ28を段階的に実現することによって、呼吸活動の信号を取得して患者の呼吸活動を連続的に監視することができる。
【0056】
他の実施形態によれば、本発明に係るシステムおよび方法は、人工呼吸器において実施可能である。
【0057】
人工呼吸器とは、患者の呼吸障害を取り除くことを目的とした器具である。人工呼吸器は、送風器のように、マスクを通じて患者の肺に向かって空気を送り込む。この送風が効果的となるために、患者の吸い込む努力と送風器の排出が同期しなければならない。つまり、空気は患者の呼吸サイクルの吸収段階の間においてのみ送り込まれなければならない。
【0058】
患者によって排出し吸収された空気の流量を計測することで、この吸収段階の始めと終わりを検出することができる。またこのようにして送風器の働きを患者の呼吸サイクルと同期させることができる。
【0059】
一般的に、この検出は空気の流量または圧力に2つの閾値を設定することによって実現される。送風器は患者によって吸入される空気の流量または圧力が最初の閾値を越えた瞬間に始動し、この流量または圧力が2番目の閾値の下に来る瞬間に停止する。
【0060】
この検出法は、特に呼吸サイクルが変動するため設定された流量の閾値とこれらの呼吸サイクルとの間で不適切となり、非効率的であると証明されうる。この不適切さの為に送風器と患者との間で同期が上手くとれなかったり、同様に送風器が始動しなかったりする。
【0061】
このように、本発明の実施形態によれば、本発明に係る呼吸活動の分析方法は、呼吸器の使用に先立って、呼吸器の最適な動作に最も適合する呼吸パラメータの閾値を決定するよう実施される。同様に、この分析は、これらの閾値を患者の呼吸に適合させるために、呼吸器が作動している間連続的に実施される。
【0062】
他の実施形態によれば、本発明に係るシステムおよび方法は、断面デンシトメトリ画像(TMD)で実施できる。呼吸活動の信号の分析によって、特に肺の画像の、呼吸運動によるアーティファクトを修正することができる。
【0063】
いずれにせよ、以上に紹介した実施形態の例に限定されないと理解しなければならない。
【0064】
特に、呼吸活動の信号は、必ずしも排出または吸収された空気の流量にのみ関連するのではない。
図1
図2
図3