(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
i)表面を有する第一成分であって、前記表面の少なくとも一部分が表面樹脂組成物でできており、不織構造物、織物、繊維詰め物、及びこれらの組み合わせから選択される繊維状材料を含み、前記繊維状材料がマトリックス樹脂組成物により含浸されている第一成分と、
ii)オーバーモールド成形用樹脂組成物を含む第二成分とを含み、
前記第二成分が、前記第一成分の表面の少なくとも一部分の上で、前記第一成分に接着しており、かつ
前記表面樹脂組成物が、(A)230℃未満の融点を有するグループ(I)のポリアミドから選択される1種以上の全脂肪族ポリアミドと(B)少なくとも250℃の融点を有するグループ(II)のポリアミドから選択される1種以上の全脂肪族ポリアミドとのブレンドを含むポリアミド組成物から選択され、前記マトリックス樹脂組成物が、(B)から独立に選択されるか、又は(A)と(B)とのブレンドから独立に選択され、前記オーバーモールド成形用樹脂組成物が、全脂肪族ポリアミドを含む、オーバーモールド成形複合構造体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるオーバーモールド成形複合構造は、向上した耐衝撃性及び曲げ強さを有し、熱可塑性ポリアミドを含むオーバーモールド成形用樹脂組成物でできている部品が、複合構造の表面の少なくとも一部分に接着される場合に良好な接着性を示す。オーバーモールド成形複合構造の良好な耐衝撃性及び曲げ強さ並びに複合構造とオーバーモールド成形用樹脂との間の良好な接着性は、使用に伴う経時的な構造の劣化に対する良好な耐性及び層間剥離に対する耐性を示す構造をもたらす。
【0013】
いくつかの特許及び刊行物が本明細書に引用されている。これらの特許及び刊行物のそれぞれの開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
本明細書では、「1つの(a)」という用語は、1つ並びに少なくとも1つを意味し、その指示する名詞を必ずしも単数に限定する冠詞ではない。
【0015】
本明細書では、「約」及び「〜又は約〜」という用語は、対象とする量又は値が、指定される値でも、ほぼ同じである他の値でもよいことを意味するものとする。この句は、類似の値が、本発明による均等な結果又は効果を促進することを伝えるものとする。
【0016】
本明細書では、ポリアミドに関連する「融点」という用語は、第一加熱走査における10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定(DSC)により決定される純粋な樹脂の融点を意味し、融点は吸熱ピークの極大でとられる。ポリマーのブレンドの融解挙動の通常の測定において、2つ以上の加熱走査が1つの検体に実施されることがあり、第二及び/又は後の走査は、第一の走査とは異なる融解挙動を示すことがある。この異なる融解挙動は、吸熱ピークの極大の温度のずれ及び/又はおそらくは2つ以上のピークを持つ融解ピークのブロード化として観察されることがあり、2種以上のポリアミドの場合、起こりうるアミド基転移の効果でもありうる。しかし、本発明の範囲においてグループIまたはグループIIのポリアミドを選択する場合、単一のポリアミドの第一加熱走査の融解吸熱のピークが常に使用される。本明細書では、走査速度は、単位時間あたりの温度の上昇である。融点の少なくとも30℃上、好ましくは少なくとも50℃上の温度に達するまで、十分なエネルギーを供給して、10℃/分の一定の走査速度を維持しなくてはならない。
【0017】
本発明は、オーバーモールド成形複合構造及びその製造方法に関する。本発明によるオーバーモールド成形複合構造は、少なくとも2種の成分、すなわち、第一成分及び第二成分を含む。第一成分は、表面を有する複合構造からなり、その表面は、少なくとも一部分が表面樹脂組成物でできており、不織構造物、織物、繊維詰め物、及びこれらの組み合わせから選択される繊維状材料を含み、前記繊維状材料はマトリックス樹脂組成物により含浸されている。
【0018】
オーバーモールド成形複合構造は、2種以上の第一成分を含んでよく、すなわち、2種以上の複合構造を含んでよく、かつ、2種以上の第二成分を含んでよい。
【0019】
第二成分は、前記第一成分の表面の少なくとも一部分の上で第一成分に接着しており、表面のその部分は、本明細書に記載される表面樹脂組成物でできている。第一成分が、第二成分により完全又は部分的に封入されていてもよい。
【0020】
本明細書では、「マトリックス樹脂組成物により含浸されている繊維状材料」という用語は、マトリックス樹脂組成物により実質的に包囲されている繊維状材料の相互貫入ネットワークを形成するように、マトリックス樹脂組成物が繊維状材料を封入し、埋め込むことを意味する。本明細書における目的には、「繊維」という用語は、巨視的に均質な物体であって、その長さに対して垂直なその断面積にわたる幅に対する長さの比が高いものを意味する。繊維の断面はどのような形状でもよいが、典型的には円形である。繊維状材料は、当業者に公知である任意の好適な形態でよいが、好ましくは、不織構造物、織物、繊維詰め物、及びこれらの組み合わせから選択される。不織構造は、ランダムな繊維配向又は整列繊維構造から選択できる。ランダム繊維配向の例には、マット、ニードルドマット、又はフェルトの形態をとりうる細断材料及び連続材料があるが、これらに限定されない。整列繊維構造の例には、一方向繊維ストランド、二方向ストランド、多方向ストランド、多軸織物があるが、これらに限定されない。織物は、織布形態、ニット、ブレード、及びこれらの組み合わせから選択できる。繊維状材料は、その形態が連続的でも、不連続でもよい。
【0021】
オーバーモールド成形複合構造の最終消費用途及び要求される機械的性質に応じて、いくつかの同じ繊維状材料又は異なる繊維状材料の組み合わせを使用することにより、2つ以上の繊維状材料を使用でき、すなわち、本明細書に記載される第一成分は2つ以上の繊維状材料を含んでよい。異なる繊維状材料の組み合わせの例は、例えば、中心層として配置される平坦ランダムマットなどの不織構造物と、外層として配置される1つ以上の織布連続繊維状材料とを含む組み合わせである。そのような組み合わせにより、第一成分の加工及び均質性が改善可能であり、それにより向上した機械的性質がもたらされる。繊維状材料は、材料又は材料の混合物が、マトリックス樹脂組成物及び表面樹脂組成物による含浸の間に利用される加工条件に耐える場合、どのような好適な材料又は材料の混合物でできていてもよい。
【0022】
好ましくは、繊維状材料は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、グラファイト繊維、金属繊維、セラミック繊維、天然繊維、又はこれらの混合物を含む。より好ましくは、繊維状材料は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、天然繊維、又はこれらの混合物を含む。さらにより好ましくは、繊維状材料は、ガラス繊維、炭素繊維、及びアラミド繊維、又はこれらの組み合わせを含む。天然繊維とは、植物由来又は動物由来の材料のいずれかを意味する。使用される場合、天然繊維は、好ましくは、例えば種子毛(例えば、綿)、茎植物(例えば、麻、亜麻、竹;靱皮及び芯繊維の両方)、葉植物(例えば、サイザル及びアバカ)、農業繊維(例えば、穀類のわら、トウモロコシの穂軸、籾殻、及びココナツ繊維)、又はリグノセルロース繊維(例えば、木、木繊維、木粉、紙、及び木関連材料)由来の植物源から誘導される。上述のとおり、2種以上の繊維状材料を使用できる。異なる繊維でできた繊維状材料の組み合わせを使用することができ、例えば、ガラス繊維又は天然繊維でできた1つ以上の中心層及び炭素繊維又はガラス繊維でできた1つ以上の表面層を含む複合構造を使用できる。好ましくは、繊維状材料は、織布構造、不織構造、又はこれらの組み合わせから選択され、ここで、前記構造はガラス繊維でできており、ガラス繊維は、直径が8〜30ミクロン、好ましくは直径が10〜24ミクロンのEガラスフィラメントである。
【0023】
繊維状材料は、熱可塑性材料及び上述の材料をさらに含んでよく、例えば、繊維状材料は、混合された又は同時に織ったヤーンでも、後の織布形態又は不織形態への加工に適した熱可塑性材料でできた粉体により含浸されている繊維状材料でも、含浸の間にその部位で重合するオリゴマーにより含浸されている一方向材料又は繊維状材料として使用される混合物の形態でもよい。
【0024】
好ましくは、第一成分、すなわち、マトリックス樹脂組成物及び表面樹脂組成物と組み合わせた繊維状材料中の繊維状材料とポリマー材料との比は、少なくとも30体積パーセント繊維状材料、より好ましくは40〜60体積パーセント繊維状材料であり、パーセンテージは第一成分の全体積に基づく体積パーセンテージである。
【0025】
第一成分のマトリックス樹脂組成物は、表面樹脂組成物と相溶性のある熱可塑性樹脂でできている。表面樹脂組成物は、(A)230℃未満の融点を有するグループ(I)の1種以上の全脂肪族ポリアミドと、(B)少なくとも250℃の融点を有するグループ(II)のポリアミドから選択される1種以上の全脂肪族ポリアミドとのブレンドを含むポリアミド組成物から選択される。マトリックス樹脂組成物は、(B)から独立に選択されるか、又は(A)と(B)とのブレンドから独立に選択される。マトリックス樹脂組成物と表面樹脂組成物とは、同一でも異なっていてもよい。表面樹脂組成物とマトリックス樹脂組成物とが異なり、マトリックス樹脂組成物が(A)と(B)とのブレンドから選択される場合、それは、成分(A)、すなわち、230℃未満の融点を有するグループ(I)の1種以上の全脂肪族ポリアミド、及び/又は成分(B)、すなわち、少なくとも250℃の融点を有するグループ(II)のポリアミドから選択される1種以上の全脂肪族ポリアミドが同じでないか、かつ/又は成分(A)及び/又は(B)の量が、表面樹脂組成物とマトリックス樹脂組成物とで異なることを意味する。
【0026】
好ましくは、マトリックス樹脂組成物は、(A)グループ(I)の1種以上の全脂肪族ポリアミドと(B)グループ(II)の全脂肪族ポリアミドから選択される1種以上のポリアミドとのブレンドであって、重量比(A:B)が約1:99〜約95:5、より好ましくは約15:85〜約85:15であるブレンドを含む。さらにより好ましくは、マトリックス樹脂組成物は、(A)グループ(I)の1種以上の全脂肪族ポリアミドと(B)グループ(II)のポリアミドから選択される1種以上の全脂肪族ポリアミドとのブレンドであって、重量比(A:B)が約20:80〜約30:70であるブレンドを含むか、又は1種以上のポリアミドBのみから選択される。
【0027】
好ましくは、表面樹脂組成物は、(A)1種以上のグループ(I)のポリアミドと、(B)グループ(II)のポリアミドから選択される1種以上のポリアミドとのブレンドであって、重量比(A:B)が約1:99〜約95:5、より好ましくは約15:85〜約85:15、さらにより好ましくは40:60〜約60:40であるブレンドを含む。
【0028】
オーバーモールド成形用樹脂組成物は任意のポリアミド樹脂でよいが、好ましくは全脂肪族ポリアミド樹脂である。それは、表面樹脂組成物及び/又はマトリックス樹脂組成物と同じでも異なっていてもよく、ポリアミドのブレンドでも単一のポリアミド樹脂でもよい。好ましい実施形態において、それは、(A)230℃未満の融点を有するグループ(I)の1種以上のポリアミドと(B)少なくとも250℃のグループ(II)のポリアミドから選択される1種以上のポリアミドとのブレンドを含むポリアミド組成物から選択されるか、少なくとも250℃の融点を有するグループ(II)のポリアミドから選択される1種以上のポリアミド(B)のみから選択される。より好ましくは、オーバーモールド成形用樹脂組成物は、少なくとも250℃の融点を有するグループ(II)のポリアミドから選択される1種以上のポリアミド(B)のみから選択される。
【0029】
オーバーモールド成形用樹脂組成物と表面樹脂組成物とが異なり、オーバーモールド成形用樹脂組成物が(A)と(B)とのブレンドである場合、それは、成分(A)、すなわち230℃未満の融点を有するグループ(I)のポリアミドから選択される1種以上のポリアミド、及び/又は成分(B)、少なくとも250℃の融点を有するグループ(II)のポリアミドから選択される1種以上のポリアミドが同じでないか、かつ/又は成分(A)及び(B)の量が、オーバーモールド成形用樹脂組成物と表面樹脂組成物とにおいて異なるか、又はオーバーモールド成形用樹脂組成物が、グループ(II)のポリアミド(B)から選択される1種以上のポリアミドのみから選択されることを意味する。
【0030】
ポリアミドは、1種以上のジカルボン酸と1種以上のジアミン、及び/若しくは1種以上のアミノカルボン酸の縮合生成物、並びに/又は1種以上の環式ラクタムの開環重合生成物である。
【0031】
1種以上の全脂肪族ポリアミド(A)及び(B)は、脂肪族及び脂環式のモノマー、例えば、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、アミノカルボン酸、及びそれらの反応性のある均等物から形成される。好適なアミノカルボン酸は11−アミノドデカン酸である。好適なラクタムには、カプロラクタム及びラウロラクタムがある。本発明の文脈において、「全脂肪族ポリアミド」という用語は、2種以上のそのようなモノマーから誘導されるコポリマー及び2種以上の全脂肪族ポリアミドのブレンドも意味する。直鎖、分岐鎖、及び環式のモノマーを使用できる。
【0032】
全脂肪族ポリアミドに含まれるカルボン酸モノマーは、脂肪族カルボン酸、例えば、アジピン酸(C6)、ピメリン酸(C7)、スベリン酸(C8)、アゼライン酸(C9)、セバシン酸(C10)、ドデカン二酸(C12)、及びテトラデカン二酸(C14)などである。好ましくは、1種以上の全脂肪族ポリアミド(A)及び(B)の脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸及びドデカン二酸から選択される。本明細書に記載される1種以上の全脂肪族ポリアミド(A)及び(B)は、先に記載された脂肪族ジアミンを含む。好ましくは、本発明による1種以上の全脂肪族ポリアミドコポリマー(A)及び(B)の1種以上のジアミンモノマーは、テトラメチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンから選択される。全脂肪族ポリアミドの好適な例には、ポリアミド6;ポリアミド6,6;ポリアミド4,6;ポリアミド6,10;ポリアミド6,12;ポリアミド6,14;ポリアミド6,13;ポリアミド6,15;ポリアミド6,16;ポリアミド11;ポリアミド12;ポリアミド9,10;ポリアミド9,12;ポリアミド9,13;ポリアミド9,14;ポリアミド9,15;ポリアミド6,16;ポリアミド9,36;ポリアミド10,10;ポリアミド10,12;ポリアミド10,13;ポリアミド10,14;ポリアミド12,10;ポリアミド12,12;ポリアミド12,13;ポリアミド12,14がある。本発明のポリアミド組成物に有用な全脂肪族ポリアミド(B)の好ましい例は、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ポリアミド66、PA66、ナイロン66とも呼ばれる)、及びポリ(テトラメチレンアジパミド)(ポリアミド46、PA46、ナイロン46とも呼ばれる)である。
【0033】
230℃未満の融点を有する好ましいグループ(I)のポリアミドは、ポリ(ε−カプロラクタム)(PA6)及びポリ(ペンタメチレンデカンジアミド)(PA510)、ポリ(ペンタメチレンドデカンジアミド)(PA512)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA6/66)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA6/610)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA6/612)、ポリ(ヘキサメチレントリデカンジアミド)(PA613)、ポリ(ヘキサメチレンペンタデカンジアミド)(PA615)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA6/66/610)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA6/66/612)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンデカンジアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA6/66/610/612)、ポリ(2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/)(PAD6/66)、ポリ(デカメチレンデカンジアミド)(PA1010)、ポリ(デカメチレンドデカンジアミド)(PA1012)、ポリ(11−アミノウンデカンアミド)(PA11)、ポリ(12−アミノドデカンアミド)(PA12)、PA6,12、PA12,12からなる群から選択される全脂肪族ポリアミドを含む。
【0034】
少なくとも250℃の融点を有する好ましいグループ(II)のポリアミドは、下記の群、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA66)、ポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド)(PA46)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA6/66)、(PA6/66/610)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA6/66/612)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンデカンジアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA6/66/610/612)、ポリ(2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/)(PAD6/66)から選択される全脂肪族ポリアミドを含む。
【0035】
本発明の一実施形態は、PA6(グループ(I)のポリアミドA)及びPA66(グループ(II)のポリアミドB)を、25:75のA:B比で含むマトリックス樹脂組成物及び表面樹脂組成物並びにPA66を含むオーバーモールド成形用樹脂組成物を含む。本発明の他の実施形態は、PA6(グループ(I)のポリアミドA)及びPA66(グループ(II)のポリアミドB)を、25:75のA:B比で含むマトリックス樹脂組成物及び表面樹脂組成物並びにPA6TDTを含むオーバーモールド成形用樹脂組成物を含む。
【0036】
本発明の好ましい実施形態は、PA6(グループ(I)のポリアミドA)及びPA66(グループ(II)のポリアミドB)を25:75のA:B比で含むマトリックス樹脂組成物、PA6(グループ(I)のポリアミドA)及びPA66(グループ(II)のポリアミドB)を50:50のA:B比で含む表面樹脂組成物、並びにPA66、PA6TDT、又はこれらの組み合わせを含むオーバーモールド成形用樹脂組成物を含む。
【0037】
本発明の他の好ましい実施形態は、PA66(グループ(II)のポリアミドB)を含むマトリックス樹脂組成物、PA6(グループ(I)のポリアミドA)及びPA66(グループ(II)のポリアミドB)を50:50のA:B比で含む表面樹脂組成物、並びにPA66、PA6TDT、又はこれらの組み合わせを含むオーバーモールド成形用樹脂組成物を含む。
【0038】
オーバーモールド成形複合構造は、上述のオーバーモールド成形用樹脂組成物を含む第二成分を含む。第二成分は、第一成分の表面の少なくとも一部分の上で、上述の第一成分に接着している。
【0039】
本明細書に記載される表面樹脂組成物、及び/又はマトリックス樹脂組成物、及び/又はオーバーモールド成形用樹脂組成物は、1種以上の耐衝撃性改良剤、1種以上の熱安定剤、1種以上の酸化安定剤、1種以上の紫外光安定剤、1種以上の難燃剤、又はこれらの混合物をさらに含んでよい。
【0040】
本明細書に記載される表面樹脂組成物、及び/又はマトリックス樹脂組成物、及び/又はオーバーモールド成形用樹脂組成物は、1種以上の強化剤、例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、カーボンナノチューブ、マイカ、珪灰石、炭酸カルシウム、タルク、焼成粘土、カオリン、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミニウム炭酸ナトリウム、バリウムフェライト、及びチタン酸カリウムなどをさらに含んでよい。存在する場合、1種以上の強化剤は、1又は約1〜60又は約60重量%、好ましくは1又は約1〜40又は約40重量%、又はより好ましくは、1又は約1〜35又は約35重量%の量で存在するが、重量パーセンテージは、場合によって、表面樹脂組成物又はマトリックス樹脂組成物又はオーバーモールド成形用樹脂組成物の総重量に基づく。
【0041】
上述のとおり、マトリックス樹脂組成物と表面樹脂組成物とは同一でも異なっていてもよい。繊維状材料の含浸速度を増す目的で、組成物の溶融粘度、特にマトリックス樹脂組成物の溶融粘度を下げることができる。
【0042】
本明細書に記載される表面樹脂組成物、及び/又はマトリックス樹脂組成物、及び/又はオーバーモールド成形用樹脂組成物は、流動向上添加剤(flow enhancing additives)、潤滑剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料、カーボンブラックなどを含む)、核化剤、結晶化促進剤(crystallization promoting agents)、及びポリマー配合分野に公知である他の処理助剤を含むが、これらに限定されない改質剤及び他の構成要素をさらに含んでよい。
【0043】
充填剤、改質剤、上述の他の構成要素は、当分野に周知である量で、粒子の寸法の少なくとも1つが1〜1000nmの範囲にあるいわゆるナノ材料の形態を含む当分野に周知である形態で組成物中に存在してよい。
【0044】
好ましくは、表面樹脂組成物及びマトリックス樹脂組成物及びオーバーモールド成形用樹脂組成物は溶融混合ブレンドであり、ポリマー成分の全ては互いの中に良好に分散しており、非ポリマー構成要素の全てはポリマーマトリックス中に良好に分散し、かつポリマーマトリックスに結合して、ブレンドが一体化した全体を形成する。任意の溶融混合方法を利用して、本発明のポリマー成分と非ポリマー構成要素を混合することができる。例えば、ポリマー成分及び非ポリマー構成要素を、例えば、一軸若しくは二軸の押出機;ブレンダー;一軸若しくは二軸の混練機;バンバリーミキサーなどのメルトミキサーに、一段階の添加により全て一度に、又は段階的に加えて、次いで溶融混合できる。ポリマー成分及び非ポリマー構成要素が段階的に加えられる場合、ポリマー成分及び/又は非ポリマー構成要素の一部は最初に加えられて溶融混合され、それに続いて残りのポリマー成分及び非ポリマー構成要素が加えられて、よく混合された組成物が得られるまで、さらに溶融混合される。
【0045】
本発明によるオーバーモールド成形複合構造は、上述の第一成分を、オーバーモールド成形用樹脂組成物によりオーバーモールド成形する工程を含む方法により製造することができる。「オーバーモールド成形」とは、本明細書に記載されるオーバーモールド成形用樹脂組成物を含む第二成分が、第一成分の表面樹脂組成物でできている表面の少なくとも一部分の上に、成形又は押し出されることを意味する。
【0046】
オーバーモールド成形プロセスは、第二成分が、第一成分を既に収容している型に成形されることを含むが、後者は以下に記載されるとおり事前に製造されており、そのため第一成分と第二成分とは、第一成分の表面の少なくとも一部分の上で、互いに接着する。第一成分は、最終的なオーバーモールド成形複合構造の外部表面を規定する空洞を有する型に配置される。オーバーモールド成形用樹脂組成物は、第一成分の片面にも両面にもオーバーモールド成形でき、第一成分を完全にも部分的にも封入できる。型に第一成分を配置した後、次いで、オーバーモールド成形用樹脂組成物が溶融した形態で導入される。第一成分と第二成分とは、オーバーモールド成形により互いに接着する。少なくとも2つの部品は、好ましくは、オーバーモールド成形工程として射出成形又は圧縮成形により、より好ましくは射出成形により互いに接着する。
【0047】
最終消費用途に応じて、本発明による第一成分はどのような形状もとることができる。好ましい実施形態において、本発明による第一成分は、シート構造の形態である。第一成分は柔軟性があってもよく、その場合巻くことができる。
【0048】
第一成分は、繊維状材料をマトリックス樹脂組成物により含浸する工程を含む方法により製造可能であり、第一成分、すなわち複合構造の表面の少なくとも一部分は表面樹脂組成物でできている。好ましくは、繊維状材料は、サーモプレス(thermopressing)により、マトリックス樹脂により含浸されている。サーモプレスの間、繊維状材料、マトリックス樹脂組成物、及び表面樹脂組成物は、樹脂組成物が溶融して繊維状材料の中に侵入し、従って前記繊維状材料を含浸するために、熱及び圧力を受ける。
【0049】
典型的には、サーモプレスは、2〜100バール、より好ましくは、10〜40バールの圧力で、マトリックス樹脂組成物及び表面樹脂組成物の融点より上の温度、好ましくは、適切な含浸を可能にするために融点より少なくとも約20℃上の温度でなされる。加熱は、接触加熱、放射ガス加熱(radiant gas heating)、赤外線加熱、対流若しくは強制対流空気加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、又はこれらの組み合わせを含む種々の手段により実施できる。
【0050】
含浸圧力は、静的プロセスによっても連続プロセスによっても(動的プロセスとしても知られる)加えることができ、連続プロセスが速度の理由から好ましい。含浸プロセスの例には、真空成形、インモールドコーティング、クロスダイ押出、引抜成形、針金被覆タイプのプロセス、ラミネーション、型打ち、ダイアフラム形成、又はプレス成形があるがこれらに限定されず、ラミネーションが好ましい。ラミネーションの間、熱及び圧力が、加熱ゾーンの対向加圧ローラー若しくはベルトにより、繊維状材料、マトリックス樹脂組成物、及び表面樹脂組成物に加えられ、好ましくは、それに続いて、冷却ゾーン中で圧力を引き続きかけて加圧手段により強化の仕上げがされ、含浸された繊維状材料が冷却される。ラミネーション技術の例には、カレンダー加工、フラットベットラミネーション(flatbed lamination)、及びダブルベルトプレスラミネーションがあるが、これらに限定されない。ラミネーションが含浸プロセスとして利用される場合、好ましくは、ダブルベルトプレスがラミネーションに使用される。
【0051】
マトリックス樹脂組成物と表面樹脂組成物とが異なる場合、表面樹脂組成物は、第一成分の上にオーバーモールド成形用樹脂組成物が塗布されるときに接近可能であるように、常に第一成分の環境に面している。
【0052】
表面樹脂組成物が、複合材料の、第一成分の環境に曝されている表面の少なくとも一部分に塗布される場合、マトリックス樹脂組成物及び表面樹脂組成物は、例えば、粉体塗装、フィルムラミネーション、押出コーティング、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの従来の手段により繊維状材料に塗布される。
【0053】
粉体塗装プロセスの間、従来の粉砕方法により得られたポリマー粉体が繊維状材料に塗布される。粉体は、繊維状材料の上に、散乱、散布、噴霧、熱スプレー若しくは火炎溶射、又は流動床コーティング法により塗布できる。粉体塗装プロセスは、繊維状材料への粉体の焼結後工程にある一工程をさらに含んでもよい。マトリックス樹脂組成物及び表面樹脂組成物は、第一成分の表面の少なくとも一部分が表面樹脂組成物でできているように、繊維状材料に塗布される。その後、加圧ゾーンの外での粉体塗装された繊維状材料の任意の予熱と共に、粉体塗装された繊維状材料にサーモプレスが実施される。
【0054】
フィルムラミネーションの間、インフレート法、キャストフィルム押出、及びキャストシート押出などの当分野に公知である従来の押出法により得られた、マトリックス樹脂組成物でできた1つ以上のフィルム及び表面樹脂組成物でできた1つ以上のフィルムが、例えば、レイヤリングにより、繊維状材料にあてがわれる。次いで、サーモプレスが、マトリックス樹脂組成物でできた1つ以上のフィルム、表面樹脂組成物でできた1つ以上のフィルム、及び1つ以上の繊維状材料を含む集成体に実施される。得られる第一成分において、フィルムは溶融して、繊維状材料を包囲するポリマー連続体として、繊維状材料の周囲に侵入する。
【0055】
押出コーティングの間、マトリックス樹脂組成物でできたペレット及び/又は顆粒、並びに表面樹脂組成物でできたペレット及び/又は顆粒は溶融され、1つ以上のメルトカーテンを形成するように1つ以上のフラットダイを通して押し出され、次いで、1つ以上のメルトカーテンをかけることにより繊維状材料上に塗布される。続いて、サーモプレスが、マトリックス樹脂組成物、表面樹脂組成物、及び1つ以上の繊維状材料を含む集成体に実施される。
【0056】
第一成分の表面とオーバーモールド成形用樹脂との間の接着性を向上させるために、オーバーモールド成形工程の前に、第一成分を、マトリックス樹脂組成物の融点に近いがそれより低い温度で予熱し、次いで加熱された複合構造をオーバーモールド成形のために迅速に移すことができるが、そのような工程は、オーバーモールド成形用樹脂組成物及び表面樹脂組成物の使用により、改善させることができ、なくすことすらできる。本発明によるオーバーモールド成形複合構造のオーバーモールド成形用樹脂と表面樹脂組成物との間の高い接着性及び高い結合強度により、予熱工程の必要性は大きく低下し、なくなることすらある。予熱工程が利用されるとすれば、移動時間は従来の複合構造ほど重要でなくなることがあり、移動時間を増加でき、それにより加工ウィンドウを拡げ、成形装置及び自動化コストを低減できることを意味している。そのような予熱工程は、種々の手段により、例えば、接触加熱、放射ガス加熱、赤外線加熱、対流若しくは強制対流空気加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、又はこれらの組み合わせにより実施できる。
【0057】
最終消費用途によって、第一成分は、所望の幾何学的形状又は構造に付形することができ、オーバーモールド成形用樹脂組成物をオーバーモールド成形する工程の前にシート形態で使用することもできる。第一成分は柔軟性があることもあり、その場合巻くことができる。
【0058】
付形された第一成分を製造する方法は、含浸工程の後に起こる第一成分を付形する工程をさらに含む。第一成分を付形する工程は、圧縮成形、型打ち、又は熱及び/若しくは圧力を利用する任意の技術により実施でき、圧縮成形及び型打ちが好ましい。好ましくは、油圧成形プレスの使用により、圧力が加えられる。圧縮成形又は型打ちの間に、第一成分は、表面樹脂組成物の融点より高い温度に、好ましくは、マトリックス樹脂組成物の融点より高い温度に、加熱手段により予熱され、最終的な所望の幾何学的形状の形の空洞を有する型を含む成形プレスなどの形成又は付形手段に移され、そこで所望の構造に付形され、その後、表面樹脂組成物の融点より低い温度に、好ましくはマトリックス樹脂組成物の融点より低い温度に冷却した後に、プレス又は型から外される。オーバーモールド成形用樹脂と表面樹脂組成物との間の接着性をさらに高める目的で、第一成分の表面は、オーバーモールド成形に利用できる相対的表面を増やすように、ざらざらした表面でもよく、そのようなざらざらした表面は、付形工程の間に、例えばその表面に多孔性又はぎざぎざを有するプレス又は型を使用することにより得られる。
【0059】
或いは、単一の成形ステーション中で第一成分を付形及びオーバーモールド成形する工程を含む一段階プロセスを利用してもよい。この一段階プロセスは、型又はプレス中での第一成分の圧縮成形又は型打ちの工程を回避し、任意の予熱工程及び予熱された第一成分の成形ステーションへの移動を回避する。この一段階プロセスの間に、第一成分、すなわち複合構造は、成形ステーションの外で、それに隣接して、又はその中で、第一成分がオーバーモールド成形の間に、形に従うことができる(conformable)又は付形可能である温度に加熱される。そのような一工程プロセスにおいて、成形ステーションは、最終的な所望の幾何学的形状の形の空洞を有する型を含む。第一成分の形状は、それによりオーバーモールド成形の間に得られる。
【0060】
本発明によるオーバーモールド成形複合構造は、広範囲の用途、例えば、自動車、トラック、民間飛行機、航空宇宙、レール(rail)、家電製品、コンピューターハードウェア、ハンドヘルドデバイス(hand held device)、レクリエーション及びスポーツ用の部品、機械の構造部品、建築物の構造部品、太陽光発電装置(photovoltaic equipment)の構造部品、又は機械的装置(mechanical device)の構造部品として使用できる。
【0061】
自動車用途の例には、座席部品及び座席骨組み、エンジンカバーブラケット、エンジンクレードル、サスペンションアーム及びクレードル、スペアタイヤウェル、シャーシ補強材、フロアパン、フロントエンド・モジュール、ステアリングコラム・フレーム、計器板、ドアシステム、ボディーパネル(水平ボディーパネル及びドアパネルなど)、テールゲート、ハードトップフレーム構造、コンバーチブルトップフレーム構造、屋根材構造、エンジンカバー、トランスミッション及び動力伝達部品用のハウジング、油受皿、エアバッグ用ハウジングキャニスター、自動車内部衝撃構造、エンジンサポートブラケット、クロスカービーム、バンパービーム、歩行者用安全ビーム、防火壁、リヤパーセルシェルフ、クロスビークル・バルクヘッド(cross vehicle bulkhead)、圧力容器、例えば、冷却剤ボトル及び消火器及びトラック圧縮空気ブレーキシステム容器、ハイブリッド内燃/電気自動車又は電気自動車のバッテリートレイ、自動車サスペンション・ウィッシュボーン及びコントロールアーム、サスペンションスタビライザーリンク、板ばね、車輪、レジャー用車及びオートバイ用スイングアーム、フェンダー、屋根フレーム及びタンクフラップがあるが、これらに限定されない。
【0062】
家電製品の例には、洗濯機、ドライヤー、冷蔵庫、空調装置、及び暖房装置があるが、これらに限定されない。レクリエーション及びスポーツの例には、インラインスケート部品、野球バット、ホッケー用スティック、スキー及びスノーボード締め具、リュックサックバック及びフレーム、及び自転車フレームがあるが、これらに限定されない。機械用構造部品の例には、例えば、携帯電子装置、コンピューター用のハウジングなどの電気/電子部品があるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0063】
下記の材料を、本発明による複合構造及びオーバーモールド成形複合構造並びに比較例の製造に使用した。
【0064】
材料
下記の材料が、実施例及び比較例に使用した組成物に含まれる。
【0065】
グループIIのポリアミド(B)(表1、2中のPA1):アジピン酸及び1,6−ヘキサメチレンジアミンでできており、重量平均分子量がおよそ32000ダルトンであるグループIIのポリアミド。PA1は、融点が約260℃〜約265℃であり、ガラス転移が約40℃〜約70℃である。PA1はPA6,6と呼ばれ、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Companyから市販されている。
【0066】
グループIのポリアミド(A)(表1、2中のPA2):ε−カプロラクタムでできており、融点が約220℃のグループIのポリアミド。PA1はPA6と呼ばれ、例えば、BASF corporationから市販されている。
【0067】
オーバーモールド成形用樹脂:アジピン酸及び1,6−ヘキサメチレンジアミンでできているグループIIのポリアミド(PA1)、表1のE1、E2、及びC1の場合には総樹脂組成物の30重量%のガラス繊維、表2のE3及びC2の場合には総樹脂組成物の50重量%のガラス繊維を含む組成物。樹脂は、E.I.du Pont de Nemours and Companyから市販されている。
【0068】
フィルムの製造
実施例(表1及び2で「E」と略記)に使用した樹脂組成物及び比較例(表1及び2で「C」と略記)に使用した樹脂組成物を、二軸押出機中で構成要素を溶融又は溶融ブレンドすることにより製造した。押出機を出ると同時に、表1及び2に列記された組成物を、C1、E1、E2、E3、及びC2のマトリックス樹脂組成物並びにC1、E3、及びC2の表面樹脂組成物の場合には約102ミクロンの厚さのフィルムに、実施例E1及びE2の表面樹脂組成物の場合には約200ミクロンの厚さのフィルムにキャストした。
【0069】
複合構造の製造
表1のオーバーモールド成形複合構造C1、E1、及びE2並びに表2のE3及びC2の製造に使用した複合構造を、厚さが約102ミクロンであり、C1、E1、E2、及びC2の場合にはPA1でできているフィルム、又はE3の場合にはマトリックス樹脂及び表面樹脂組成物でできているフィルムの8層と連続ガラス繊維織布の3層(直径17ミクロン、0.4%シラン系サイジング、公称ロービングテックス1200g/kmのE−ガラス繊維、2/2綾織り(バランス織り)に織られ、目付が600g/m
2)と重ねることにより最初にラミネートを作ることにより製造した。下記のシーケンスをC1、E1、E2、及びC2に利用した、すなわち、PA1でできている2層、連続ガラス繊維織布の1層、PA1の2層、連続ガラス繊維織布の1層、PA1の2層、連続ガラス繊維織布の1層、及びPA1の2層。下記のシーケンスをE3に利用した、すなわち、表面樹脂組成物の2層(表2に記載)、連続ガラス繊維織布の1層、マトリックス樹脂組成物の2層(表2に記載)、連続ガラス繊維織布の1層、マトリックス樹脂組成物の2層、連続ガラス繊維織布の1層、及び表面樹脂組成物の2層。
【0070】
ラミネートを、逆転スチールベルト(counter rotating steel belt)を備えた等圧ダブルプレス機(isobaric double press machine)を利用して製造したが、どちらもHeld GmbH製であった。異なるフィルムは、先に定義された積み重ねシーケンスで、巻出機から機械に入った。加熱ゾーンは約2000mmの長さであり、冷却ゾーンは約1000mmの長さであった。加熱及び冷却は、圧力を開放しないまま維持した。ラミネートを下記の条件で製造した、すなわち、ラミネーション速度1m/分、最大機械温度360℃、及びラミネート圧力40バール。そのように得られたラミネートは全体の厚さが約1.5mmであった。
【0071】
E1及びE2に使用する複合構造を完成させるために、表1に記載されるE1及びE2の表面ポリアミド樹脂組成物でできている約200マイクロメートルのフィルムを、PA1フィルム及び連続ガラス繊維織布でできている上述のラミネートにあてがい、複合構造を形成した。E1及びE2の表面ポリアミド樹脂組成物を含むフィルムを、アダプター及びフィルムダイ及び油加熱されたキャスティングドラムを有する28mmW&P押出機で製造した。押出機、アダプター、及びダイの温度を280℃に設定し、キャスティングドラムの温度を100℃に設定した。E1及びE2の複合構造を、8インチ圧盤の付いたDake Press(Grand Haven、Mich)Model 44−225(圧力範囲0〜25K)により、フィルムを圧縮成形して形成した。6×6インチのラミネートの試験片を型に入れ、フィルムをラミネートの表面に約300℃の温度で、約3KPsiの圧力で約2分間プレスし、約6Kpsiの圧力でさらに約3分間プレスし、その後室温に冷却した。表1に記載されるE1又はE2の表面ポリアミド樹脂組成物できている表面、マトリックス樹脂組成物PA1、及び繊維状材料を含む複合構造は、全体の厚さが約1.5mmであった。
【0072】
オーバーモールド成形複合構造の製造
表1及び2に列記されたオーバーモールド成形複合構造を、上述のとおり得られた複合構造の上に、約1.7mmのオーバーモールド成形用樹脂組成物をオーバー射出成形することにより製造した。
【0073】
表1及び2に列記された表面樹脂組成物でできている表面、表1及び2に列記されたマトリックス樹脂組成物、及び上述の繊維状材料を含むC1、E1、E2、E3、及びC2の複合構造を、5×5インチ(約127mm×127mm)の試験片に切り出し、C1、E1、及びE2の場合には180℃の加熱チャンバーに3分間、E3及びC2の場合には210℃の加熱チャンバーに3分間置いた。次いで、複合構造を、ロボットアームで素早くEngel縦型プレスの型穴に移し、Engel成形機により、表1及び2に列記されたオーバーモールド成形用樹脂組成物によりオーバー射出成形した。加熱チャンバーを離れてからオーバーモールド成形用樹脂に接触するまでの移動時間は9秒であった。型を120℃で油加熱した。射出機を280℃に設定した。
【0074】
表1のE1、E2、及びC1の結合強度
上述のとおり製造したオーバーモールド成形複合構造E1、E2、及びC1の5×5インチの試験片を、3/4インチ×5インチの試験片(約19mm×約127mm)に切り出し、オーバーモールド成形された部品を、オーバーモールド成形された部品と複合構造との界面まで切ることにより、切込みを入れた。切込みは、試験片のほぼ中心(長手方向)でその幅にわたっていれた。複合構造へのオーバーモールド成形された樹脂組成物の結合強度は、ISO−178を変更した三点曲げ法により、切込みを入れた試験片に対して測定した。装置及び幾何的形状はISO法178に準拠し、負荷用エッジをスパンの中心にして2.0インチ(約51mm)の支点幅で試験片を曲げる。試験片のオーバーモールド成形された部品は引張側(外側スパン)で2つの両端支点(2インチ(約51mm)離れている)に載っており、1つの支点(負荷)により、試験片の複合構造面にある圧縮側(内部スパン)でへこんだ。この試験形状では、試験片の切込みは下向きであった(引張側)。切込みは、中心から1/4インチ外して(負荷から1/4インチ離れて)置いた。試験は、2mm/分で、1KNの負荷により実施した。試験は、試験片の2つの部品の間に分離又は破断(層間剥離)が見られるまで実施した。その点での応力を記録した。表1において、本発明に従って製造した実施例E1及びE2が、比較例C1よりも高い結合強度を示すことが分かる。表1において、本発明による最も好ましい組成物により製造された実施例E2が、本発明による好ましい組成物により製造された実施例E1よりさらに高い結合強度を有することもさらに分かる。
【0075】
表2のE3及びC2の曲げ強さ
上述のとおり製造したオーバーモールド成形複合構造E3及びC2の5×5インチの試験片を、オーバーモールドされた樹脂の流れ方向に沿って、3/4インチ×5インチの試験片(約19mm×約127mm)に切り出した。曲げ強さを、ISO−178三点曲げ法により、試験片に対して測定した。装置及び幾何的形状はISO法178に準拠し、負荷用エッジをスパンの中心にして2.0インチ(約51mm)の支点幅で試験片を曲げた。試験片の複合構造部品は引張側(外側スパン)で2つの両端支点(2インチ(約51mm)離れている)に載っており、1つの支点(負荷)により、試験片のオーバーモールドされた部品の面にある圧縮側(内部スパン)でへこんだ。試験は、2mm/分で、1KNの負荷により実施した。試験は、破断まで実施した。その点での応力を記録した。
【0076】
表2において、本発明に従って製造した実施例E3が、比較例C2よりも高い曲げ強さを示すことが分かる。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
本発明は以下の実施の態様を含むものである。
1.i)表面を有する第一成分であって、前記表面の少なくとも一部分が表面樹脂組成物でできており、不織構造物、織物、繊維詰め物、及びこれらの組み合わせから選択される繊維状材料を含み、前記繊維状材料がマトリックス樹脂組成物により含浸されている第一成分と、
ii)オーバーモールド成形用樹脂組成物を含む第二成分とを含み、
前記第二成分が、前記第一成分の表面の少なくとも一部分の上で、前記第一成分に接着しており、かつ
前記表面樹脂組成物が、(A)230℃未満の融点を有するグループ(I)のポリアミドから選択される1種以上の全脂肪族ポリアミドと(B)少なくとも250℃の融点を有するグループ(II)のポリアミドから選択される1種以上の全脂肪族ポリアミドとのブレンドを含むポリアミド組成物から選択され、前記マトリックス樹脂組成物が、(B)から独立に選択されるか、又は(A)と(B)とのブレンドから独立に選択される、オーバーモールド成形複合構造体。
2.前記オーバーモールド成形用樹脂組成物が、(A)230℃未満の融点を有するグループ(I)のポリアミドから選択される1種以上の全脂肪族ポリアミドと(B)少なくとも250℃の融点を有するグループ(II)のポリアミドから選択される1種以上の全脂肪族ポリアミドとのブレンドを含むポリアミド組成物から選択されるか、又は少なくとも250℃の融点を有するグループ(II)のポリアミド(B)から選択されるポリアミドのみから選択される、前記1に記載のオーバーモールド成形複合構造体。
3.前記繊維状材料が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、天然繊維、又はこれらの組み合わせでできている、前記1又は2に記載のオーバーモールド成形複合構造体。
4.前記繊維状材料がガラス繊維でできている、前記3に記載のオーバーモールド成形複合構造体。
5.前記繊維状材料が、前記複合構造体の30体積パーセント〜60体積パーセントである、前記1〜4のいずれかに記載の複合構造体。
6.熱安定剤、酸化安定剤、強化剤、及び難燃剤、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含む、前記1〜5のいずれかに記載の複合構造体。
7.グループ(I)のポリアミドから選択される前記1種以上の全脂肪族ポリアミドが、PA6、PA510、PA512、PA6/66、PA6/610、PA6/612、PA613、PA615、PA6/66/610、PA6/66/612、PA6/66/610/612、PAD6/66、PA1010、PA1012、PA11、PA12、PA612、PA1212からなる群から選択される、前記1〜6のいずれかに記載の複合構造体。
8.グループ(II)のポリアミドから選択される前記1種以上の全脂肪族ポリアミドが、PA66、PA6/66、PA6/66/610、PA6/66/612、PA6/66/610/612、PAD6/66、PA46からなる群から選択される、前記1〜7のいずれかに記載の複合構造体。
9.前記マトリックスポリアミド組成物の、グループ(I)のポリアミドから選択される前記1種以上のポリアミド(A)と、グループ(II)のポリアミドから選択される前記1種以上のポリアミド(B)との重量比(A:B)が、約1:99〜約95:5である、前記1〜8のいずれかに記載のオーバーモールド成形複合構造体。
10.前記マトリックスポリアミド組成物の、グループ(I)のポリアミドから選択される前記1種以上のポリアミド(A)と、グループ(II)のポリアミドから選択される前記1種以上のポリアミド(B)との重量比(A:B)が、約20:80〜約30:70であり、前記表面ポリアミド組成物の、グループ(I)のポリアミドから選択される前記1種以上のポリアミド(A)と、グループ(II)のポリアミドから選択される前記1種以上のポリアミド(B)との重量比(A:B)が、約40:60〜約60:40である、前記1〜9のいずれかに記載のオーバーモールド成形複合構造体。
11.前記マトリックス樹脂組成物が、グループ(II)のポリアミドから選択される1種以上のポリアミド(B)を含み、前記表面ポリアミド組成物の、グループ(I)のポリアミドから選択される前記1種以上のポリアミド(A)と、グループ(II)のポリアミドから選択される前記1種以上のポリアミド(B)との重量比(A:B)が、約40:60〜約60:40である、前記1〜10のいずれかに記載のオーバーモールド成形複合構造体。
12.(A)が、PA6、PA6/12、PA10/10を、単独又はこれらの組み合わせで含む、前記1〜11のいずれかに記載の複合構造体。
13.(B)が、PA66、PA46を、単独又はこれらの組み合わせで含む、前記1〜12のいずれかに記載の複合構造体。
14.自動車、トラック、民間飛行機、航空宇宙、レール、家電製品、コンピューターハードウェア、ハンドヘルドデバイス、レクリエーション及びスポーツ用の部品、機械の構造部品、建築物の構造部品、太陽光発電装置の構造部品、又は機械的装置の構造部品の形態である、前記1〜13のいずれかに記載のオーバーモールド成形複合構造体。
15.第一成分の上に、オーバーモールド成形用樹脂組成物を含む第二成分をオーバーモールド成形する工程を含む、オーバーモールド成形複合構造体を製造する方法であって、
前記第一成分が繊維状材料を含み、表面を有し、前記表面はその少なくとも一部分が表面樹脂組成物でできており、前記繊維状材料が、不織構造物、織物、繊維詰め物、及びこれらの組み合わせから選択され、前記繊維状材料がマトリックス樹脂組成物により含浸されており、前記第二成分が、前記第一成分の表面の少なくとも一部分の上で前記第一成分に接着しており、前記表面樹脂組成物が、(A)230℃未満の融点を有するグループ(I)のポリアミドから選択される1種以上の全脂肪族ポリアミドと(B)少なくとも250℃の融点を有するグループ(II)のポリアミドから選択される1種以上の全脂肪族ポリアミドとのブレンドを含むポリアミド組成物から選択され、前記マトリックス樹脂組成物が、(B)から独立に選択されるか、又は(A)と(B)とのブレンドから独立に選択される、オーバーモールド成形複合構造体を製造する方法。
16.前記含浸工程より後であるが前記オーバーモールド成形工程より前に起こる、前記第一成分を付形する工程をさらに含む、前記15に記載の方法。
17.前記第一成分が、前記オーバーモールド成形工程の前に加熱されて、前記オーバーモールド成形用樹脂組成物との界面を形成する表面が軟化又は部分的に溶融される、前記15又は16に記載の方法。
18.前記第一成分が、前記オーバーモールド成形工程の前に加熱されない、前記15〜17のいずれかに記載の方法。