【文献】
Transgen. Plant J.,2008年,vol.2, no.2,pp.127-137
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記植物細胞が、種、葉、茎、根、未熟胚、成熟胚、カルス、小胞子、分裂組織、子葉、胚軸、上胚軸、中胚軸、子葉鞘、根生、幼芽、または生殖組織の細胞を含む、請求項1に記載の方法。
前記細菌仲介形質転換が、アグロバクテリウム(Agrobacterium)仲介、リゾビウム(Rhizobium)仲介、シノリゾビウム(Sinorhizobium)仲介、メソリゾビウム(Mesorhizobium)仲介、およびブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)仲介形質転換である、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下は、本発明を実施する当業者を助けるために提供される詳細な説明である。当業者は、本発明の精神または範囲を逸脱することなく本明細書に記載されている実施形態に修正および変更を行うことができる。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、発明が属する当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書に記載されている基本的な製造または実験室手順の命名法および記載は、当該技術において既知であり、一般的に用いられている。特に示されない限り、従来の方法がこれらの手順において使用され、様々な一般的な技術用語辞書または教科書により例示されている。用語が単数形で提供される場合、本発明者たちは、その用語の複数形により記載される発明の態様も考慮する。本発明者たちは、特定の作用機構または様式に限定することを意図しない。それらへの参照は、例示目的のためだけに提供される。本明細書に記述される全ての公報、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照として明確に組み込まれる。
【0016】
本発明は、植物細胞を形質転換の前に有効量のポリエチレングリコール(PEG)により、処理される組織の形質転換を増強するのに十分な時間にわたって接触させる(適用させる、処理させる、保存させる、触れさせる、接合させる、混合させる、そうでなければ相互作用をひきおこす)ことを含む、植物細胞の細菌仲介形質転換の適格性を改善する方法を提供する。
【0017】
本発明の方法は、トウモロコシの未熟胚における植物細胞の生存力を様々な保存条件下で保存し、したがって、有効量のPEGと接触させない組織と比較して、形質転換および組織培養の適格性を改善するのに有用である。このように、組成物の「有効量」は、植物細胞の適格性に効果がないかまたは有害である少なすぎるまたは多すぎる組成物と接触させたまたは接触させていない植物と比較して、組成物と接触させた植物細胞の細菌仲介形質転換の適格性を改善するのに効果的な量と定義される。
【0018】
形質転換および組織培養に適格性のある植物細胞を保存および維持する能力は、最高の生産時間または生産プロセスの予期せぬ中断の際に柔軟性をもたらすことによって、大規模実験のより効率的な計画および実施を可能にする。このことは、異なる立地に組織を輸送するために大きな柔軟性を持つことも可能にする。また、そのような方法は、例えばダイズの乾燥種の胚軸における植物細胞の形質転換の適格性を改善するのに有用である。
【0019】
そのような用語に与えられる範囲を含む、本明細書および請求項への明快で一貫した理解を提供するために、以下の定義を提供する。
【0020】
用語「適格性」は、組織培養または形質転換に対する植物細胞の応答と定義される。「応答」は、典型的には、外部または内部の刺激によりもたらされる生物における任意の挙動または変化として生体系において典型的に定義される。したがって、用語「改善された適格性」は、組織培養または形質転換に対する基礎または否定応答への増強として定義される。幾つかの態様において、組織培養に対して改善された適格性は、植物細胞の高い生存率により測定することができる。別の態様では、形質転換に対して改善された適格性は、形質転換頻度の増加として測定される。
【0021】
用語「植物細胞」は、とりわけ種、葉、茎、根、未熟胚、成熟胚、カルス、小胞子、分裂組織、子葉、胚軸、上胚軸、中胚軸、子葉鞘、根生、幼芽、またはがく片、花弁、おしべ、花粉、花粉管、めしべ、花托、および胚珠を含む花の細胞が含まれるが、これらに限定されない植物の任意の部分からの任意の細胞を一般に意味する。植物細胞は、オオムギ、トウモロコシ、エンバク、コメ、ライムギ、モロコシ、芝生、サトウキビ、コムギ、アルファルファ、バナナ、ブロッコリー、インゲンマメ、キャベツ、カノーラ、ニンジン、キャッサバ、カリフラワー、ハクサイ、セロリ、柑橘類、クローバー、ココナッツ、コーヒー、ワタ、ウリ科、アメリカトガサワラ、乾燥マメナス、ユーカリノキ、ウイキョウ、アマ、ソラマメ、ニンニク、ヒョウタン、ブドウ、オリーブ、オクラ、タマネギ、リーキ、デーダマツ、メロン、ヤシ、レタス、エンドウマメ、ピーナッツ、コショウ、ジャガイモ、ポプラ、マツ、カボチャ、ラディッシュ、ヒマワリ、ベニバナ、モロコシ、ダイズ、ホウレンソウ、スクアッシュ(squash)、イチゴ、サトウダイコン、モミジバフウ、サツマイモ、スイッチグラス、チャ、タバコ、トマト、ライコムギ、芝生、スイカ、観賞植物、灌木、堅果、ヒヨコマメ、キマメ、キビ、ホップ、および牧草が含まれるが、これらに限定されない実質的に任意の植物から誘導されうる。
【0022】
「胚」は、葉、茎、および根の前駆組織(分裂組織)を含む種の一部である。胚が成長(発芽)し始めると、実生植物になる。
【0023】
「分裂組織(meristem)」または「分裂組織(meristematic tissue)」は、分化して、茎、根、葉、生殖組織、および種を含む複数の植物構造を生み出す分裂組織細胞である未分化細胞を含む。「外植片」は、植物細胞を含む形質転換の標的材料を意味するために使用される用語である。植物細胞は上記に定義されたとおりである。
【0024】
本発明の方法は、植物細胞を形質転換の前に有効量のポリエチレングリコール(PEG)と所定の時間接触させることを含む。本明細書に記載されるPEGの量の率は、容量に基づいて提示される。特定の非限定実施形態では、PEGを、滅菌蒸留水(SDW)、接種培地(INO、表7を参照すること)、またはマメ発芽培地(BGM、表8を参照すること)に溶解することができる。本発明のPEGの有効量は作物によって変わることができ、一般に、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50%を含み、特にそのような任意の2つの値の間に派生する全ての範囲を含む約1%〜約50%の範囲である。特定の非限定実施形態において、PEGの平均分子量は、約200、300、400、550、600、1000、1500、2000、3000、3350、4000、6000、8000、10000、20000、および35000を含み、特にそのような任意の2つの値の間に派生する全ての範囲を含む約200〜約35000でありうる。幾つかの実施形態において、PEGの分子量は、4000、5000、6000、7000、または8000である。
【0025】
本発明の幾つかの形態では、植物細胞を、有効量のPEGおよび1つ以上の植物成長調整剤(PGR)を含む組成物と接触させることができる。胚形成培養応答は、遺伝子型、外植片の発育段階、培養条件、および培養培地の成長調整剤組成物の間の相互作用の生成物である。培養開始のプロセスの際に、外植片は、外植片の最初の発育段階が成長調整剤の助けにより適切に修飾されるステップである、「脱分化」として知られているプロセスを受ける。成長調整剤の効果に応じて、このプロセスは数時間または数日間かかり、ここでは、最適量の生長調整剤の組み合わせを送達することが主要なステップである。この「成長調整剤」を送達する主要なステップにおける1つの大きな問題は、非常に高い用量の成長調整剤が外植片に対して有害な作用を引き起こしうることである。本発明の1つの態様は、PRGをPEG組成物と組み合わせることにより、有害作用のない適切な培養培地で培養する前に外植片を高濃度のPGRと接触させる方法を提供する。この手法は、高濃度の成長調節剤の有害作用を緩和するのみならず、植物細胞の脱分化プロセスも増強する。
【0026】
多くのPGRが当該技術において知られており、本発明の方法に使用することができ、例えば、4−CPA、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、ジクロルプロプ、フェノプロプ、インドール−3−酢酸(IAA)、インドール−3−酪酸(IBA)、ナフタレンアセトアミド、α−ナフタレン酢酸、1−ナフトールナフトキシ酢酸(NAA)、ナフテン酸カリウム、ナフテン酸ナトリウム、および2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、3,6−ジクロロ−2−メトキシ安息香酸(ジカンバ)、および4−アミノ−3,5,6−トリクロロピコリン酸(ピクロラム)が含まれるが、これらに限定されないオーキシン;クロフィブリン酸および2,3,5−トリ−ヨード安息香酸が含まれるが、これらに限定されない抗オーキシン;2iP、ベンジルアデニン、チジアズロン(TDZ)、6−ベンジルアミノプリン(BAP)、カイネチン、およびゼアチンが含まれるが、これらに限定されないサイトカイニン;カルシウムシアナミド、ジメチピン、エンドタール、エテホン、メルホス、メトクスロン、ペンタクロロフェノール、およびトリブホスが含まれるが、これらに限定されない落葉剤;アビグリシンおよび1−メチルシクロプロペンが含まれるが、これらに限定されないエチレンインヒビター;1−アミノシクロプロパンカルボン酸、エタセラシル、エテホン、およびグリオキシムが含まれるが、これらに限定されないエチレンリリーサー;ジベレリン酸(GA3)が含まれるが、これに限定されないジベレリン;グリホセート、グリホシネート、DL−ホスフィノトリシン、3,6−ジクロロ−2−メトキシ安息香酸、および2,4−ジクロロフェノキシ酢酸が含まれるが、これらに限定されない除草剤;アブシジン酸、アンシミドール、ブトラリン、カルバリル、クロルホニウム、クロルプロファム、ジケグラック、フルメトラリン、フルオリダミド、ホサミン、グリホシン、イソピリモール、ジャスモン酸、マレイン酸ヒドラジド、メピコート、ピプロクタニル、プロヒドロジャスモン、プロファム、2,3,5−トリ−ヨード安息香酸、クロルメコート、ダミノジッド、フルルプリミドール、メフルイジド、パクロブトラゾール、テトシクラシス、およびウニコナゾールが含まれるが、これらに限定されない成長抑制剤および矮化剤;クロルフルレン、クロルフルレノール、ジクロルフルレノール、およびフルレノールが含まれるが、これらに限定されないモルファクチン;ブラシノライド、ホルクロルフェヌロン、およびヒメキサゾールが含まれるが、これらに限定されない成長刺激剤;ならびに/またはベンゾフルオル(benzofluor)、ブミナホス、カルボン、シオブチド(ciobutide)、クロフェンセット、クロキシホナック、シアナミド、シクラニリド、シクロヘキシミド、シプロスルファミド(cyprosulfamide)、エポコレオン(epocholeone)、エチクロゼート、エチレン、フェンリダゾン(fenridazon)、ヘプトパルギル(heptopargil)、ホロスルフ、イナベンフィド、カレタザン(karetazan)、ヒ酸鉛、メタスルホカルブ、プロヘキサジオン、ピダノン、シントフェン(sintofen)、トリアペンテノール(triapenthenol)、およびトリネキサパックが含まれるが、これらに限定されない他の未分類の植物成長調整剤である。
【0027】
本発明の特定の実施形態において、オーキシンは2,4−Dであり、他の実施形態では、オーキシンはピクロラムである。他の実施形態において、サイトカイニンはTDZであり、なお他の実施形態では、サイトカイニンはBAPである。
【0028】
植物細胞培養および形質転換の当業者は、本発明の特定の植物種に使用するのに適した植物成長調整剤の適切なレベルおよび/または比率を決定することができる。例えば、トウモロコシまたは他の植物種における例えばBAPおよび/または2,4−Dの活性と機能的に同等のこれらまたは他のPGRのレベルは、植物が接触させられる培地に存在するそのような成長調整剤のレベルを変え、外植片およびそれから誘導される組織の成長をモニタリングして決定することができる。したがって、他のPGRが使用される場合でも、上記に提示されたPGRの考慮された量および比率と同等な植物成長調整効果を含む。
【0029】
様々な非限定実施形態において、PEG含有組成物に使用されるPGRの量は、約0.01、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30mg/Lを含み、特にそのような任意の2つの値の間に派生する全ての範囲を含む0.001mg/L〜約30mg/Lの範囲でありうる。
【0030】
特定の非限定実施形態では、未熟トウモロコシ胚外植片を、PEG含有組成物と、2、3、4、5、6、7、8、9、および10日間を含み、特にそのような任意の2つの値の間に派生する全ての範囲を含む約1〜10日間にわたって接触させる。特定の実施形態では、外植片を組成物と約3日間接触させる。
【0031】
他の実施形態では、細胞を含む成熟ダイズ胚外植片を、PEG含有組成物と、30、40、50、60、70、90、100、120、180、240、および300分間を含み、特にそのような任意の2つの値の間に派生する全ての範囲を含む約30〜300分間にわたって接触させる。特定の実施形態では、外植片を組成物と約60分間接触させる。
【0032】
なお他の非限定実施形態では、外植片を、PEG含有組成物と、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30℃を含み、特にそのような任意の2つの値の間に派生する全ての範囲を含む約2〜30℃の温度で接触させる。
【0033】
本明細書に開示される量、持続時間、温度、および分子量の範囲は、非限定的である。当業者は、特定の植物種の特定の要件に応じて、本発明の精神および範囲を逸脱することなく特定的に提示されたものよりも低い、高い、またはその中間の量、持続時間、温度、または分子量を使用して本発明を実施することができる。
【0034】
本発明の方法は、すすぎステップを更に含むことができ、ここで、ポリエチレングリコール組成物と接触させた植物細胞を形質転換の前に非PEG含有組成物ですすぐ。様々な非限定態様において、非PEG含有組成物は、本開示の他の部分に記載されている、水、または1/2MS PL(表1)、1/2MS VI(表2)、INO(表6)、BGM(表8)のような培地、またはアグロバクテリウム培養再懸濁液でありうる。特定の非限定実施形態において、すすぎステップは、所望のリンス媒質による1回以上の急速な反復すすぎを含むことができる、または代替的に1〜5分間にわたる長時間の単回のすすぎを含むことができる。
【表1】
【表2】
【0035】
本発明の特定の非限定態様において、植物細胞は未熟胚でありうる。未熟胚がトウモロコシのような単子葉植物のものである場合、実質的に単離される組織は、任意の適切な様式で、例えば種の成熟する雌穂または頭花に結合して提供される。単子葉植物の種は、標的組織を実質的に精製する前に、雌穂または頭花から取り出すことができる。雌穂は、典型的には受粉の10〜12日後に収集され、表面滅菌される。表面滅菌の方法は、当該技術において良く知られており、有効濃度のエタノールまたは亜塩素酸ナトリウムを含有する溶液に有効時間、例えば1〜15分間にわたって浸漬することが含まれるが、これに限定されない。未熟胚は、手作業、または機械化もしくは自動化された方法を含む任意の適切な技術により得ることができる。
【0036】
単子葉植物の種の果皮または種皮を開くことは、所望の外植片の単離の実現をもたらすために提供される。このことは、例えば針、錐、刃、または他の適切な器具で穴を開ける、刺す、または切り込むことであるが、これらに限定されない任意の適切な技術により達成することができる。方法の幾つかの適用では、果皮組織を取り出す必要はなく、他の適用では、果皮組織を開くことは、果皮の少なくとも一部、可能であれば幾つかの非胚組織(例えば、内乳)の取り出しを含むことができる。好ましくは、開くことは種から胚を実質的に分離するのに十分であり、これは、手作業により、またはスパチュラのような滅菌道具を使用して内乳および胚をかき出すことにより、または仁の側面を押して、胚を出現させ、仁から部分的または完全に露出させることにより実施することができる。種への力の適用が胚のような標的組織の実質的な単離をもたらすように、果皮を十分に弱めること(例えば、摩耗により、または他の物理的、化学的、もしくは酵素的な処理により)のみが必要なこともある。
【0037】
自動化または機械化された手段により未熟胚を得る方法は、米国特許第7,560,611号に開示されている。方法は、種から未熟胚のような標的組織を実質的に単離するのに十分な力を種に適用するステップを含み、実質的に単離された標的組織は、遺伝子形質転換および組織培養に適している。力を複数の種に続けてまたは同時に適用することができる。適用される力は、連続的または非連続的(例えば、脈動または波状力)であることができ、一般に機械的に適用され、すなわち、力は人の手ではなく装置または機械を使用して得られる。適用される力の量は、好ましくは、標的組織(例えば、胚)と非標的(例えば、内乳のような非胚組織)が互いに接着することを克服するのに十分であり、したがって標的と非標的組織の分離を可能にする。任意の適切な力を種からの標的組織の取り出しに用いることができ、複数の力を組み合わせて、順次、または同時に使用することができる。適切な力には、流体ジェット正圧、液体ジェット正圧、機械式正圧、負圧、吸引、遠心力、線形加速、線形減速、流体剪断、流体乱流、および流体層流が含まれるが、これらに限定されない。流体力は、任意の流体、気体、もしくは液体、または両方の組み合わせにより発揮されうる。
【0038】
方法は、未熟胚のような実質的に単離された標的組織を内乳、ほう頴、および種皮または果皮組織のような関連する非胚組織から分離するステップを更に含むことができる。未熟胚を他の組織から分離する方法は、米国特許出願公開第2009/0142837号に記載されている。分離は、サイズ排除(例えば、1つ以上の濾過ステップによる濾過)による分離、疎水性、親水性、親油性、または他の引力に基づいた分離、および質量または密度の差による分離(例えば、遠心分離、沈降、および傾瀉による分離)が含まれるが、これらに限定されない1つ以上の適切な技術によって達成することができる。分離ステップは任意であり、無傷または部分胚の追加の分離は、組織培養における使用では必要ない。
【0039】
遺伝子形質転換または組織培養に適したトウモロコシ胚のような実質的に単離された標的組織を提供するこれらの方法を自動化することができ、例えば、トウモロコシの雌穂または種にロボットまたは機械による取扱いを用いて、果皮を開き、種に力を適用する、または任意の分離ステップを適用する。そのような自動化は、光学または機械式センサーを使用して、適用される力に対して、または分離ステップにおいてトウモロコシの雌穂または種を位置決めすることを助ける。トウモロコシ胚を実質的に単離する機器は米国特許第7,560,611号に開示されているように提供され、これは、流体流を導く少なくとも1つの開口部を含み、ここで流体流はトウモロコシ雌穂の仁と接触し、仁から胚を実質的に単離する。一般に、流体流は、胚をより急速に単離するように、所定時間内に都合よいほど多くの仁と接触することが好ましい。少なくとも1つの開口部は、単一の開口部または複数の開口部(例えば、平坦、丸形、楕円、扇型、または他のパターン化ノズル、および可調、移動、または静止ノズルを含むことができる単一または複数のノズル)を含むことができ、任意の適切な種類および媒体の流体流を発生することができる。流体は、気体(例えば、空気、窒素、もしくは気体混合物)、液体(例えば、水、生理食塩水、もしくは様々な培養培地)、またはこれらの組み合わせでありうる。適切な流体流には、流体ジェット(例えば、単または複数カラムジェット;平坦、円錐形、または扇型のジェットまたはスプレー;およびシート状ジェット)、流体層流、ならびに流体乱流が含まれるが、これらに限定されない。適切な流体流は、正圧もしくは負圧、またはその両方を含む1つ以上の力をもたらして、胚を仁から取り出すことができる。1つ以上の力を、連続的または非連続的に複数の種に続けてまたは同時に適用することができ、一般に機械的に適用され、手作業では適用されない。他の適切な力は、遠心力、線形加速、線形減速、および流体剪断でありうる。そのような力は、均一もしくは非均一、連続的もしくは非連続的(例えば、脈動もしくは波状力)、またはこれらの任意の組み合わせでありうる。
【0040】
機器は、実質的に精製される標的組織および流体流を互いに移動させる手段を更に含むことができる。例えば、種を含有するトウモロコシの雌穂もしくは流体流、またはその両方を移動させることができる。様々な実施形態の機器を、トウモロコシの単一または複数の無傷または部分雌穂と使用することができる。例えば、トウモロコシの雌穂を、流体流に対して移動するホルダまたは捕捉器具に固定することができる。しかし他の実施形態では、トウモロコシの雌穂をホルダに個別に固定する必要がなく、仁から胚を取り出すのに使用される力によって複数の仁が接触するのを可能にするように、自由に移動することができる。流体流に対して少なくとも1つのトウモロコシ雌穂を移動させる手段は、少なくとも1つのトウモロコシ雌穂および少なくとも1つの開口部を互いに回転することができる、または流体流を少なくとも1つのトウモロコシ雌穂の縦軸に沿って移動させることができる、または少なくとも1つのトウモロコシ雌穂および少なくとも1つの開口部の互いの回転および縦運動の組み合わせのような任意の適切な三次元移動を提供することができる。
【0041】
機器は、標的組織を非標的組織から分離する少なくとも1つの分離機を更に含むことができる。例えば、胚を非胚組織から分離することができ、ここで分離された胚は、遺伝子形質転換または組織培養に適した少なくとも幾つかのトウモロコシ胚を含む。分離機は、サイズ排除による(例えば、メッシュ、スクリーン、有孔表面、または特定のサイズの物体を排除することができる他の装置を使用する)分離、疎水性または他の引力に基づいた(例えば、胚を誘引または跳ね返す固体または液体である材料を使用する)分離、および質量または密度の差による(例えば、遠心力を使用する、または異なる沈降の溶液を使用する)分離が含まれるが、これらに限定されない任意の適切な機構により作用することができる。分離機は任意であり、無傷または部分胚の追加の分離は、遺伝子形質転換または組織培養における使用では必要ない。
【0042】
実質的に単離された(および場合により分離された)未熟胚には、上記に記載された、組織培養用途、形質転換、カルス形成、直接の胚形成、分化植物組織の形成、少なくとも1つの成熟した植物の形成、少なくとも1つの稔性植物の形成、およびこれらのプロセスの組み合わせに適した、少なくとも幾つかの未熟無傷または部分胚のような胚が含まれる。実質的に単離された未熟胚および非胚組織を、遺伝子または生化学分析が含まれるが、これらに限定されない他の目的に使用することもできる。
【0043】
組み合わせ機器は、場合により、少なくとも1つのトウモロコシ雌穂を力の供給源に対して移動させる手段(すなわち、機械的な正圧力を適用する固体表面、流体流を導く開口部、または負流体圧を適用する開口部)を含むことができる。好ましくは、雌穂は、力が胚をより急速に単離するために所定時間内に都合よいほど多くの仁と接触するように、力の起源に対して移動される。
【0044】
組み合わせ機器は、遺伝子形質転換または組織培養に適した実質的に単離された未熟胚を更に分離する少なくとも1つの手段を更に含むことができ、ここで分離された胚は、遺伝子形質転換または組織培養に適した少なくとも幾つかのトウモロコシ胚を含む。分離機は、サイズ排除による分離、引力に基づいた分離、および質量または密度の差による分離が含まれるが、これらに限定されない任意の適切な機構により作用することができる。
【0045】
本発明の別の態様において、植物細胞は成熟胚である。成熟胚外植片は、例えば米国特許出願公開第2008/0280361号に開示されているように、乾燥種から得ることができる。これらの外植片は、乾燥切除外植片(DEE)と呼ばれる。乾燥湿潤外植片を使用することもでき、これは水和/吸水の後に種から切除された外植片であり、続いて脱水され、保存される。両方の種類の外植片は、保存時に適度な安定性を示したが、形質転換の前の急速な水和ステップは、これらの細菌仲介形質転換の適格性を低減しうる。特定の作用機構に束縛されることを意図していないが、本発明の方法は、乾燥種から、または水和もしくは吸水種の切除後に脱水される外植片から誘導される胚外植片の水和率を調節するのに有用であり、それによって植物細胞の細菌仲介形質転換の適格性を改善する。
【0046】
様々な実施形態において、植物細胞を含む外植片は、手作業または機械的な方法により得ることができる。胚切除の前に、種を滅菌ステップ、ならびに選別ステップに付して、微生物汚染を避けること、高度の細菌または真菌汚染を有する種を除去すること、また、本発明に使用される生存可能な外植片組織を何らかの理由で生産する可能性がない種を除去することができる。選別は、例えば、種のサイズ、色、もしくは密度、または化学組成の特徴を含む他の特徴のようなパラメーターに基づいて実施することができる。選別方法の例には、サイズ分別の後での自動秤の使用を含めることができる。この目的に適した光学分別機は、Sortex 3000 Series Color Sorter(Buhler−Sortex KK,Yokohama,Japan)である。水分量による選別を含む他の選別技術を用いることもできる。
【0047】
特定の実施形態において、切除は、表面に適用された種を破砕する、反対方向の回転することができるローラーを使用して機械的に実施される。ローラー間の隙間は、適用される種のサイズに基づいて調整することができる。ローラー材料は、例えば、エラストマーまたは金属でありうる。特定の実施形態では、ステンレス鋼ローラーが、反復および持続使用の後でも有益な作業品質を保持することが見出された。1つの実施形態において、外植片は、約3、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および25%の内部水分を含み、特にそのような任意の2つの値の間に派生する全ての範囲を含む約3〜25%の内部水分を有することができる。外植片が調製される種は、形質転換可能植物細胞を単離するのに適した所定の内部水分で採取することができる。種の脆性は、水分量を操作することにより変えることができ、効率的な種の分割および外植片の調製を可能にする。例えば、3%〜7%のような内部水分量が有利でありうる。種を、使用前にそのような水分量または安定した保存条件(および形質転換可能な外植片)を生じる任意の他の水分量で保持することができる。種の脆性は、種を低温、例えば−20℃もしくは−80℃、またはより寒冷に曝露して、例えば液体窒素(約−196℃)と接触させて、変えることもできる。
【0048】
様々な齢の乾燥外植片を使用することができ、外植片が比較的「若い」場合、これらには使用の1日未満、例えば約2、3、5、7、10、12、15、20、または23時間のように約1〜24時間前に種から取り出されるものが含まれる。外植片は長期間保存することもでき、これには、外植片の生存力を維持するために使用される保存条件に応じて数日間、数週間、数か月、または数年間さえも含まれる。特に当業者は、保存時間を、形質転換体の品質および/または収率、ならびに形質転換プロセスの効率が最大化されるように最適化できることを理解する。
【0049】
乾燥種または外植片を、再乾燥する前、ならびに後の形質転換および再生に使用する前に、例えば水または滅菌液のような液体の吸水により最初に予備刺激することができる。種または外植片を、種内部水分量を30%超に上昇させ、その時点で種または外植片を保持し、次に後の時点で吸水を再開することによって、予備刺激することもできる。あるいは、種または外植片を、内部水分量を30%超に上昇させ、種または外植片を所定の時間保存し、種または外植片を20%未満の内部水分量まで乾燥し、次に吸水を再開することによって、予備刺激することができる。
【0050】
例えば子葉の1/4まで胚組織に結合したままでいる各子葉を含有しない、いくらか含有する、または一部分含有する再生可能な形質転換可能外植片を、採取することができる。これらの外植片は、それぞれ安定した形質転換植物をもたらしうるので、実質的に類似すると考慮される。しかし外植片は、典型的には外植片が組織培養増殖条件を開始した12週間以内に苗条を生産できるように、胚の少なくとも幾つかの分裂組織の領域を含有するべきである。
【0051】
外植片を得るため、および取り扱うための多数のパラメーターは、変わることができる。滅菌は、種または外植片を液体滅菌剤と接触させることによって実施することができる。種または外植片を、気体滅菌剤またはUV光線のような照射滅菌剤と接触させることもできる。あるいは、種または外植片は、種または外植片の活力を低減することなく種または外植片の表面の外来性細菌および真菌のような生物学的汚染物の活力を低減するように、種または外植片を高温に短時間付すことによって滅菌することができる。このことは、40℃を超える温度、例えば約40〜約90℃で達成することができる。温度を、例えば強制加熱空気または流により上昇させることができる。そのような温度は、Bry−Air Inc.(Sunbury,Ohio,USA)により製造されるドライヤーにより提供することができる。同時培養培地(例えば、INO)へのDMSO(1リットルのINOあたり1.0mlのDMSO)に溶解したナイスタチン(50ppm)およびチアベンダゾール(10ppm)の添加は、おそらく、種の中および外に一般的に見出される酵母菌および真菌を制御することにより外植片の健康を改善することができ、大規模および/または自動化組織培養を実施する場合に有用な道具となりうる。
【0052】
切除時の種の水分量、ならびに切除時の種の温度は、変わりうる。加えて、切除後の保存パラメーターも変わりうる。例えば、外植片が保存される相対湿度は、変わりうる。外植片の保存温度、ならびに外植片保存の持続時間および外植片が保存される培地の組成も、変わりうる。更に、操作されうるパラメーターには、とりわけ、水和および再水和培地の組成、インキュベーション温度、時間の長さ、および形質転換の方法が含まれる。
【0053】
切除の後、非形質転換可能損傷外植片、子葉、種皮、および他の破片から形質転換可能外植片材料をスクリーニングする方法および機器は、米国特許出願公開第2008/0280361号に記載されているように用いることができる。方法は、手作業で実施することができる、または部分的もしくは完全に機械化することができる。例えば、1つ以上の篩い分けのステップは、破砕される種および単離される外植片のサイズに基づいた適切なサイズの篩を使用して、実施することができる。ローラーを通過する破砕種のバルク収量を、不要な大型および小型破片がサイズ排除により所望の外植片から分離されるように、一連の分離篩に通すことができる。このことは、例えば、#8(開口2.36mm)、#10(開口2.0mm)、#16(開口1.18mm)のような米国標準篩、および適切であれば他のもの(例えば、1/16″×3/4″、1/18″×3/4″、1/19″×1/2″、または1/20″×1/2″のような細長窓篩)を使用して、ダイズ材料で効果的に達成することができる。他の開口サイズの篩を、所定の種のサイズに必要であれば、適用される材料のサイズに基づいて作製することができる。スクリーニングプロセスの時間の長さ、および篩い分けの激しさを調整して、プロセスの処理量および/または収率を増強することもできる。
【0054】
破片に対する外植片材料の溶液中における異なる浮力を測定することのような、他のスクリーニング方法を利用することもできる。水溶液に浮遊する材料の画分は、無傷の形質転換可能外植片が豊富であることが見出された。
【0055】
外植片を、水和種から、乾燥保存可能種から、乾燥水和外側片の部分再水和から(ここで、「水和」および「再水和」は、種内部水分率の測定可能な変化として定義される)、または「予備刺激」された種から、すなわち、発芽を開始しているが、発芽プロセスと競合する均衡未決定好条件に適切に置かれている種から回収することができる。当業者は、様々な水和方法を使用すること、および形質転換の前のインキュベーション時間を最適化することができる。得られる外植片は、保存可能であり、発芽することができる、および/または適切な条件が提供される場合に形質転換されうる。したがって、新たな乾燥保存可能な分裂組織外植片を、人工種と呼ぶことができる。
【0056】
切除に続いて、当業者は、開示されている方法に従って外植片を後の使用の前に保存することができる。種を乾燥する、保存する、発芽させる方法およびパラメーターは、当該技術において知られている。植物細胞を含む切除外植片の保存は、望ましい場合は、例えば約−80℃〜約60℃の温度を含む、そのような保存条件の変更を使用して実施することができる。約−20℃から室温の温度は、特に良好に機能することが見出されている。
【0057】
細胞を含む単離された胚外植片を、本発明の組成物と接触させた後、外植片を、選択された異種DNA配列により形質転換することができ、遺伝子導入植物をそれらから再生することができる。遺伝子導入植物を遺伝導入事象と呼ぶこともできる。高速マイクロプロジェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、直接DNA取り込み、および細菌仲介形質転換を含む様々な方法が、遺伝子を植物組織に移入するために開発されてきた。リゾビウム科(Rhizobiaceae)の種の様々な細菌を植物および/または植物細胞の遺伝子形質転換のベクターとして使用する方法、ならびに遺伝子導入植物をそれらから再生する方法は、当該技術において知られている。宿主細菌株は、多くの場合、発現単位の移入機能を有するプラスミドを持つアグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のABI、C58、LBA4404、EHA101、またはEHA105である。本発明の特定の非限定態様において、アグロバクテリウム仲介形質転換および遺伝子導入植物の再生は、米国特許第5,824,877号、同第5,591,616号、同第5,981,840号、および同第6,384,301号に記載されているように実施することができる。植物形質転換の当業者に知られている他の細菌株も、本発明における使用のために考慮され、例えば米国特許出願公開第2007/0271627号に記載されているリゾビウム仲介形質転換、シノリゾビウム種、メソリゾビウム種、およびブラディリゾビウム種(例えば、Broothaerts et al.,2005)である。
【0058】
所望の遺伝子成分を含有するプラスミドまたはベクターを調製する手段は、当該技術において良く知られている。一般に、異種DNA配列を1つ以上の遺伝子成分と組み合わせて、発現単位を調製する。多くの場合に、これらの発現単位は、植物細胞への配列の移入のために少なくとも1つのT−DNA境界を備える。次に1つ以上の発現単位をプラスミドまたはベクターに挿入し、次にこれを細菌の中に移動させ、次にこれを細胞と接触させる。細菌は、発現単位を細胞に移入し、発現単位は、細胞のゲノムに組み込まれ、次に世代毎に遺伝される。
【0059】
遺伝子成分は、以下の遺伝子成分:(a)植物細胞で機能してRNA配列の産生を引き起こすプロモーター、(b)商業的に有用性のある産物をコードするRNA配列の産生を引き起こす構造DNA配列、および/または遺伝子の発現を阻害するRNAi分子の産生を引き起こすDNA配列、ならびに(c)植物細胞で機能してRNA配列の3′末端へのポリアデニル化ヌクレオチドの付加を引き起こす3′非翻訳DNA配列の少なくとも1つ以上を含むプラスミドまたはベクター分子に組み込まれる。
【0060】
mRNAへのDNAの転写は、通常「プロモーター」と呼ばれるDNAの領域により調節される。プロモーター領域は、DNAと関連すること、およびDNA鎖のうちの1つをテンプレートとして使用してmRNAへの転写を開始し、RNAの対応する相補鎖を作製することを、RNAポリメラーゼにシグナル伝達する塩基の配列を含有する。植物細胞において活性な多数のプロモーターが文献に記載されている。そのようなプロモーターには、アグロバクテリウムツメファシエンスのTiプラスミドに運ばれるノパリンシンターゼ(NOS)およびオクトピンシンターゼ(OCS)プロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)19Sおよび35Sプロモーター、およびFigwortモザイクウイルス(FMV)35Sプロモーターのようなカリモウイルスプロモーター、ならびに強化CaMV35Sプロモーター(e35S)が含まれるが、これらに限定されない。環境、ホルモン、化学、および/または発生のシグナルに応答して調節される様々な他の植物遺伝子プロモーターを、植物細胞における異種遺伝子の発現に使用することもでき、例えば、(1)熱(Callis et al.,1988)、(2)光(例えば、エンドウマメRbcS−3Aプロモーター、Kuhlemeier et al.,(1989);トウモロコシRbcSプロモーター、Schaffner et al.,(1991))、(3)アブシジン酸のようなホルモン(Marcotte et al.,1989)、(4)創傷(例えば、Wuni,Siebertz et al.,1989)、または他のシグナルもしくは化学薬品により調節されるプロモーターが含まれる。組織特異的発現も知られている。下記に記載されているように、選択される特定のプロモーターは、有効量の目的遺伝子産物の産生をもたらすのに十分な発現を引き起こすことができるべきである。そのようなプロモーターを記載する例には、限定されることなく、米国特許第6,437,217号(トウモロコシRS81プロモーター)、米国特許第5,641,876号(コメアクチンプロモーター)、米国特許第6,426,446号(トウモロコシRS324プロモーター)、米国特許第6,429,362号(トウモロコシPR−1プロモーター)、米国特許第6,232,526号(トウモロコシA3プロモーター)、米国特許第6,177,611号(構成的トウモロコシプロモーター)、米国特許第5,322,938号、同第5,352,605号、同第5,359,142号、および同第5,530,196号(35Sプロモーター)、米国特許第6,433,252号(トウモロコシL3オレオシンプロモーター)、米国特許第6,429,357号(コメアクチン2プロモーター、ならびにコメアクチン2イントロン)、米国特許第5,837,848号(根特異的プロモーター)、米国特許第6,294,714号(光誘導性プロモーター)、米国特許第6,140,078号(塩誘導性プロモーター)、米国特許第6,252,138号(病原体誘導性プロモーター)、米国特許第6,175,060号(リン欠乏誘導性プロモーター)、米国特許第6,635,806号(ガンマ−コイキシン(coixin)プロモーター)、ならびに米国特許出願第09/757,089号(トウモロコシクロロプラストアルドラーゼプロモーター)が含まれる。使用を見出すことができる追加のプロモーターは、ノパリンシンターゼ(NOS)プロモーター(Ebert et al.,1987)、オクトピンシンターゼ(OCS)プロモーター(アグロバクテリウムツメファシエンスの腫瘍誘導性プラスミドにより運ばれる)、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)19Sプロモーター(Lawton et al.,1987)、CaMV 35Sプロモーター(Odell et al.,1985)、figwortモザイクウイルス35S−プロモーター(Walker et al.,1987;米国特許第6,051,753号、同第5,378,619号)のようなカリモウイルスプロモーター、スクロースシンターゼプロモーター(Yang et al.,1990)、R遺伝子複合体プロモーター(Chandler et al.,1989)、クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子プロモーター、PC1SV(米国特許第5,850,019号)、およびAGRtu.nos(ジェンバンク受入番号V00087;Depicker et al,1982;Bevan et al.,1983)プロモーターである。
【0061】
またプロモーターハイブリッドを構築して、転写活性を増強すること(米国特許第5,106,739号)、または所望の転写活性、誘導性、および組織特異性もしくは発生特異性を組み合わせることができる。植物において機能するプロモーターには、記載されているように誘導性である、ウイルス性である、合成である、構成的である、ならびに時間的に調節される、空間的に調節される、および時間空間的に調節されるプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。組織増強される、組織特異的である、または発生調節される他のプロモーターも当該技術において知られており、本発明の実施に有用性を有すると考慮される。
【0062】
本発明のDNA作成物(すなわち、キメラ/組み換え植物遺伝子)に使用されるプロモーターを、望ましい場合は修飾して、これらの制御特性に影響を与えることができる。プロモーターを、オペレーター領域との連結により、ランダムまたは制御突然変異誘発などにより誘導することができる。更に、プロモーターを、複数の「エンハンサー配列」を含有するように変更して、遺伝子発現を高めるのを助けることができる。
【0063】
本発明のDNA作成物により産生されるmRNAは、5′非翻訳リーダー配列を含むこともできる。この配列は、遺伝子を発現するように選択されたプロモーターから誘導することができ、mRNAの翻訳を増加または減少するように特異的に修飾することができる。5′非翻訳領域は、ウイルスRNAから、適切な真核生物遺伝子から、または合成遺伝子配列から得ることもできる。そのような「エンハンサー」配列は、得られるmRNAの翻訳効率を増加または変更するために望ましいことがある。本発明は、非翻訳領域がプロモーター配列を伴う両方の5′非翻訳配列から誘導される作成物に限定されない。むしろ、非翻訳リーダー配列を、無関係のプロモーターまたは遺伝子から誘導することができる(例えば、米国特許第5,362,865号を参照すること)。非翻訳リーダー配列の例には、トウモロコシおよびペチュニアヒートショックタンパク質リーダー(米国特許第5,362,865号)、植物ウイルス外殻タンパク質リーダー、植物ルビスコリーダー、GmHsp(米国特許第5,659,122号)、PhDnaK(米国特許第5,362,865号)、AtAnt1、TEV(Carrington and Freed,1990)、ならびにAGRtu.nos(ジェンバンク受入番号V00087;Bevan et al.,1983)が含まれる。遺伝子の発現を増強する、または転写もしくは翻訳に影響を与えるのに役立つ他の遺伝子成分も、遺伝子成分として考慮される。
【0064】
キメラ作成物の3′非翻訳領域は、転写ターミネーターまたは同等の機能を有するエレメント、および植物において機能して、RNAの3′末端にポリアデニル化ヌクレオチドを付加させるポリアデニル化シグナルを含有することができる。DNA配列は、本明細書において転写終結領域と呼ばれる。領域は、転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)の効率的なポリアデニル化にとって必要である。RNAポリメラーゼは、ポリアデニル化が生じる部位を介してコードDNA配列を転写する。適切な3′領域の例は、(1)ノパリンシンターゼ(NOS; Fraley et al.,1983)遺伝子のようなアグロバクテリウム腫瘍誘導性(Ti)プラスミド遺伝子のポリアデニル化シグナルを含有する3′転写、非翻訳領域、ならびに(2)ダイズ貯蔵タンパク質遺伝子のような植物遺伝子およびリブロース−1,5−ビスホスフェートカルボキシレート(ssRUBISCO)遺伝子の小型サブユニットである。好ましい3′領域の例は、エンドウマメのssRUBISCO E9遺伝子からのものである(欧州特許出願第0385,962号)。
【0065】
本発明は、評価可能、選択可能、またはスクリーン可能なマーカー、および記載された関連調節エレメントを、特定の望ましい形質を付与するのに十分な方法で発現された1つ以上の核酸を伴って含有する任意の適切な植物形質転換プラスミドまたはベクターと共に使用することができる。例示的なマーカーは知られており、とりわけ、GUS、緑色蛍光タンパク質(GFP)、およびルシフェラーゼ(LUX)が含まれるが、これらに限定されない。選択可能またはスクリーン可能なマーカーは、再生可能植物組織において機能して、そうでなければ毒性化合物に対する抵抗性を植物組織に対して付与する化合物を生成する。特定の実施形態において、ベクターは、植物細胞にスペクチノマイシンに対する抵抗性をコードする関連調節エレメントを有するaadA遺伝子を含む。特定の実施形態において、aadA遺伝子は、形質転換植物細胞の葉緑体へのaadA遺伝子産物の輸送を指示する葉緑体輸送ペプチド(CTP)配列を含む。他の実施形態において、ベクターは、アグロバクテリウム細胞のような細菌細胞における発現が設計されている適切な調節エレメントを有するスペクチノマイシン抵抗性遺伝子を含み、それによって、選択的試薬を同時培養培地に加えることができ、例えば同時培養の時間の後で選択的作用物質を更に使用しないで、遺伝子導入植物を得ることを可能にする。本発明において考慮される農学的な目的の形質を付与する適切な遺伝子の例には、病気、昆虫、または病害虫に耐性、除草剤に耐性の遺伝子、収率、栄養強化、環境もしくはストレス耐性、またはデンプン産生(米国特許第6,538,181号、同第6,538,179号、同第6,538,178号、同第5,750,876号、同第6,476,295号)、変更された油生成(米国特許第6,444,876号、同第6,426,447号、同第6,380,462号)、高い油生成(米国特許第6,495,739号、同第5,608,149号、同第6,483,008号、同第6,476,295号),変更された脂肪酸含有量(米国特許第6,828,475号、同第6,822,141号、同第6,770,465号、同第6,706,950号、同第6,660,849号、同第6,596,538号、同第6,589,767号、同第6,537,750号、同第6,489,461号、同第6,459,018号)、高いタンパク質産生(米国特許第6,380,466号)、果実の成熟(米国特許第5,512,466号)、強化された動物およびヒトの栄養(米国特許第6,723,837号、同第6,653,530号、同第6,5412,59号、同第5,985,605号、同第6,171,640号)、バイオポリマー(米国特許第RE37,543号、同第6,228,623号、同第5,958,745号、および米国特許公開第2003/0028917号)を含む、植物生理学、成長、発生、形態学、もしくは植物生成物における任意の所望の変化のような品質の改善のための遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。また、環境ストレス抵抗性(米国特許第6,072,103号)、医薬ペプチドおよび分泌性ペプチド(米国特許第6,812,379号、同第6,774,283号、同第6,140,075号、同第6,080,560号)、改善されたプロセッシング形質(米国特許第6,476,295号)、改善された消化性(米国特許第6,531,648号)、低いラフィノース(米国特許第6,166,292号)、工業用酵素生産(米国特許第5,543,576号)、改善された風味(米国特許第6,011,199号)、窒素固定(米国特許第5,229,114号)、ハイブリッド種の生産(米国特許第5,689,041号)、繊維生産(米国特許第6,576,818号、同第6、271、443号、同第5,981,834号、同第5,869,720号)、及びバイオ燃料生産(米国特許第5,998,700号)である。これらのまたは他の遺伝子エレメント、方法、および導入遺伝子のいずれかを、本開示を考慮して当業者によって適切であると理解されたら、本発明と共に使用することができる。
【0066】
あるいは、目的のDNA配列は、アンチセンス仲介機構、相互抑制仲介機構のような遺伝子サイレンシング技術、miRNAを含むRNAi技術を介して、内在性遺伝子の発現に標的阻害を引き起こすRNA分子をコードすることによりこれらの表現型の影響を与えることができる(例えば、米国特許出願公開第2006/0200878号)。
【0067】
本発明に包含される方法により導入されうる例示的な核酸には、例えば、別の種のDNA配列もしくは遺伝子、または同じ種に由来する、もしくは存在するが、伝統的な生殖もしくは繁殖技術ではなく遺伝子操作方法によりレシピエント細胞に組み込まれる遺伝子もしくは配列も含まれる。しかし、用語「外来性」は、形質転換された細胞に通常存在しない、または単に、通常存在するが、例えば過剰発現することが望ましい形質転換DNAセグメントもしくは遺伝子に見出されるような形態、構造などで存在しない遺伝子を意味することが意図される。したがって、用語「外来性」遺伝子またはDNAは、同様の遺伝子が細胞に既に存在しうるかにかかわらず、レシピエント細胞に導入される任意の遺伝子またはDNAセグメントを意味することが意図される。外来性DNAに含まれるDNAの種類には、植物細胞に既に存在しているDNA、別の植物のDNA、異なる生物のDNA、または遺伝子のアンチセンスメッセージを含有するDNA配列、もしくは遺伝子の合成型もしくは修飾型をコードするDNA配列のような外部で生成されたDNAが含まれうる。
【0068】
T−DNAは、RBおよび/もしくはLB配列により結合されうる、または境界配列を有さないことがある。植物細胞に移入されうる配列は、1つの形質転換ベクターにおいて、形質転換に利用される細菌株の中に存在しうる。別の実施形態において、配列は別々の形質転換ベクターで細菌株の中に存在しうる。なお別の実施形態において、配列は、形質転換に一緒に使用される別々の細菌細胞または株に見出される。
【0069】
本発明の方法で形質転換に使用されるDNA作成物は、細菌細胞に複製機能および抗生物質選択を提供する、例えば、ori322のような大腸菌由来の複製、oriVまたはoriRiのような広範囲の宿主由来の複製、およびスペクチノマイシンまたはストレプトマイシンに対して抵抗性を付与するアミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼ(aadA)をコードするSpec/Strpのような選択性マーカーのコード領域を提供するプラスミド主鎖DNAセグメントを含有することもできる(例えば、米国特許第5,217,902号)。本開示を考慮すると、他の多数の可能な調節エレメントおよび他の興味深い配列が当業者に理解される。したがって、前述の考察は、網羅的ではなく例示的であることが意図される。
【0070】
当業者は、植物のアグロバクテリウム仲介形質転換プロセスにおける典型的なステップを認識している。アグロバクテリウムは、グリセロール貯蔵液からLuria Burtani(LB)培地のような液体を直接接種すること、またはグリセロール貯蔵液からアグロバクテリウムを固体培地にストリークすることにより、細菌を適切な選択条件下、一般に約26℃〜30℃または約28℃で増殖させ、プレートからアグロバクテリウムの単一のコロニーまたは小型のループを取り出し、選択性作用物質を含有する液体培養培地に接種することによって調製することができる。当業者は、アグロバクテリウムの増殖手順および適切な培養条件、ならびに続く接種の手順について良く知っている。接種に使用されるアグロバクテリウム培養物の密度およびアグロバクテリウム細胞と外植片の比率は、系毎に変わることがあり、したがって、任意の形質転換方法におけるこれらのパラメーターの最適化が予測される。
【0071】
典型的には、アグロバクテリウム培養物を、ストリークされたプレートまたはグリセロール貯蔵液により接種し、一晩増殖させ、細菌細胞を、外植片の接種に適した培養培地により洗浄および再懸濁する。本発明に適した接種培地には、未熟胚外植片では1/2MS PLまたは1/2MS VI(それぞれ表1および2を参照すること)、ならびに成熟胚外植片ではINO(表6を参照すること)が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
アグロバクテリウム仲介形質転換プロセスの次の段階は、接種である。この段階では、外植片およびアグロバクテリウム細胞懸濁液が一緒に混合される。胚外植片が未熟トウモロコシ胚である本発明の実施形態において、胚外植片は、アグロバクテリウムを含有する接種培地に直接置かれる。胚を接種培地で30分未満培養する。接種は、一般に、約15℃〜30℃または約23℃〜28℃の温度で実施される。接種は、また、未熟胚を同時培養培地(下記に記載される)で直接単離し、次に1μLのアグロバクテリウム溶液を胚にスポットする、あるいはアグロバクテリウム溶液で飽和した1片の濾紙を胚の上に覆うように約5〜60分間配置することによって実施することができる。次に濾紙および過剰溶液を、同時培養の前に除去する。
【0073】
特定の実施形態において、異種DNAが外植片と接触したとき、またはその後、外植片を1つ以上の植物成長調整剤(PGR)と接触させることができる。多くのPGRが当該技術において知られており、そのような実施形態において考慮され、例えば、オーキシン、抗オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、除草剤、成長抑制剤および矮化剤、モルファクチン、成長刺激剤、ならびに/または他の未分類植物成長調整剤であり、本開示の他の部分に提示されている。
【0074】
接種の後、過剰アグロバクテリウム溶液を除去することができ、アグロバクテリウムおよび標的植物材料が同時培養される。同時培養は、接種後であり、遅延または選択培地への移動の前の時点を意味する。任意の数の植物組織培養培地を、同時培養ステップに使用することができる。特定の実施態様では、アグロバクテリウムで接種した後、植物組織を、アガロースまたは低EEOアガロースのようなゲル化剤を有する半固体MSに基づいた、または還元塩1/2MSに基づいた半固体同時培養培地で培養する(表3)。
【表3】
【0075】
同時培養は、典型的には、約18℃〜30℃または約20℃〜25℃の温度で約1〜3日間または24時間未満にわたって実施される。同時培養は、光または光制限条件下で実施することができる。通常、同時培養は、光制限条件下で実施される。「光制限条件」は、本明細書で使用されるとき、植物とアグロバクテリウムの混合物を含有する培養皿を布、ホイルで覆うこと、または培養皿をブラックバッグに入れること、または培養細胞を暗室に入れることが含まれるが、これらに限定されない、同時培養期間に光を制限する任意の条件と定義される。点灯条件は、それぞれの植物系に最適化することができ、当業者には知られている。
【0076】
胚外植片が成熟ダイズ胚のものである本発明の実施形態では、胚外植片を、調製した接種物に曝露し、L&R Ultrasonics QS140(L&R Manufacturing Co.,Kearny,N.J.)またはHonda W113超音波処理器(Honda,Denshi Japan)のような標準的な実験室水浴洗浄超音波処理機からの超音波エネルギーに20秒間、短時間曝露する。短時間の超音波処理ステップの後、外植片を発生接種物から排出し、通常は形質移入の開始の数時間以内に、INO培地に浸した濾紙をそれぞれ含有する新たなPLANTCONに移す。次に外植片を、点灯チャンバー(一般に≧5uEの光で16時間)によりおよそ23〜28℃で1〜5日間インキュベートする。同時培養および後のステップは、暗黒条件または光の中で、例えば点灯Percivalインキュベーターにより、例えば、およそ23〜25℃の温度で2〜5日間(例えば、約5〜200μEのような≧5μEの光強度または正常な色素体発生を可能にする他の点灯条件で16時間の光期間/8時間の暗黒を)実施することができ、約35℃または40℃まで実施することができる。
【0077】
アグロバクテリウムとの同時培養の後または微小発射体の衝撃の後、外植片を、典型的には選択性作用物質を含有する再生培地に直接置くことができる。外植片は(形質転換方法にかかわりなく)、選択培地に、約7〜約42日間、または約7〜約30日間、または約7〜約21日間、または約7〜約14日間置かれる。様々な組織培養培地および移入要件が知られており、これらを実施および最適化して、植物組織の成長、植物の形質転換の発生、および遺伝子導入植物の回収を支持することができる。これらの組織培養培地を、市販の調製物として購入することができる、または当業者により特別仕様に調製すること、および修飾することができる。そのような培地の例には、Murashige and Skoog(1962);Chu et al.,(1975);Linsmaier and Skoog(1965);Uchimiya and Murashige(1962);Gamborg et al.,(1968);Duncan et al.,(1985);McCown and Lloyd(1981);Nitsch and Nitsch(1969);およびSchenk and Hildebrandt(1972)、または適宜補充されたこれらの培地の誘導体が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、培地、ならびに形質転換および再生に使用される栄養素および成長調整剤のような培地補充物が、通常、特定の標的作物または様々な目的のために最適化されることを認識する。組織培養培地を、グルコース、スクロース、マルトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、および/もしくはデキストロースのような炭水化物、または炭水化物の割合で補充することができる。試薬は市販されており、多数の供給者から購入することができる(例えば、Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.;およびPhytoTechnology Laboratories,Shawnee Mission,Kans.を参照すること)。追加的に適切な培地成分を、選択または遅延培地に添加してアグロバクテリウムの成長を抑制することができる。そのような培地成分には、カルベニシリンまたはセフォタキシムのような抗生物質が含まれるが、これらに限定されない。続いて培養物を、形質転換小植物の回収に適した培地に移す。当業者は、植物系および選択性作用物質に応じて変わりうる選択的な措置、培地、および成長条件における多数の変更も認識している。典型的な選択性作用物質には、ジェナテシン(G418)、カナマイシン、パロモマイシン、スペクチノマイシンのような抗生物質、またはグリホセートもしくは他の除草剤のような他の化学薬品が含まれるが、これらに限定されない。本発明の特定の実施形態において、選択性作用物質はスペクチノマイシンである。緑芽または葉を有するスペクチノマイシン抵抗性苗条は、スペクチノマイシン抵抗性があるのでスクリーン可能または評価可能である。これらを選択性作用物質の存在下または不在下で土壌または発根培地のような土壌代用物に置くことができる。そのような外植片から伸びる苗条は、遺伝子導入性であることを日常的に示しており、遺伝子導入性であるR
1および続く後代を生じ、一方、そのような外植片から発生する根は、遺伝子導入性または非遺伝子導入性でありうる。したがって、遺伝子導入苗条および部分的または完全に非遺伝子導入根系を含む植物も、考慮される。あるいは、選択性作用物質を欠いている培地で形質転換組織を培養することによって、形質転換分裂組織から、根は非遺伝子導入性であるが、遺伝子導入苗条を再生する方法も考慮され、例えば、米国特許出願公開第2008/0057512号に開示されている。
【0078】
これらの方法を1つ以上の容器で実施することもでき、プロセスは、手作業でありうる、または最新の自動制御機械を使用して自動化することができる。本発明に開示されている培地および培養条件を、栄養的に同等の成分または遺伝子導入事象の同様の選択および回収プロセスに変更または代え、それでも、本発明の範囲内に入ることができる。アグロバクテリウム形質転換方法を使用して形成される遺伝子導入植物は、1つの染色体に挿入された単一の簡単な組み換えDNA配列(単一コピー)を典型的に含有し(しかし、必ずしもそうであるとは限らず)、遺伝子導入事象と呼ばれる。そのような遺伝子導入植物は、挿入された外来性配列によってヘテロ接合体であると呼ぶことができる。導入遺伝子の観点から遺伝子導入植物ホモ接合体は、単一の外来性遺伝子配列を含有する個別の分離個体植物をそれ自体と、例えばR
0植物と有性交配(自配)して、R
1種を生産することによって得られる。生産されたR
1種の四分の一は、導入遺伝子の観点からホモ接合体である。R
1種の発芽は、典型的には、ヘテロ接合体とホモ接合体の区別を可能にするSNPアッセイまたは熱増幅アッセイ(すなわち、接合生殖性アッセイ)を使用して、接合生殖性について試験することができる植物においてもたらされる。
【0079】
遺伝子導入植物において外来性DNAまたは「導入遺伝子」の存在を確認するために、様々なアッセイを実施することができる。そのようなアッセイには、例えば、サザンおよびノーザンブロッティング、PCR(商標)、INVADERアッセイ、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)法(例えば、米国特許第7,485,428号を参照すること)のような「分子生物学」アッセイ;例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)による、または酵素機能によるタンパク質産物の存在の検出のような「生化学」アッセイ;葉または根のアッセイのような植物部分のアッセイ;また、全再生植物の表現型を分析することが含まれる。
【0080】
導入遺伝子が植物に導入されると、この遺伝子を、第2植物を直接形質転換することなく、交配により、第1植物と生殖的に同等の任意の植物に導入することができる。したがって、本明細書で使用されるとき、用語「後代」は、本発明により調製される任意の世代の親植物の子孫を意味し、ここで後代は選択されたDNA作成物を含む。したがって「遺伝子導入植物」は、任意の世代でありうる。植物を「交配」して、出発植物系と比べて1つ以上の付加導入遺伝子または対立遺伝子を有する植物系を提供することは、出発系を、導入遺伝子または対立遺伝子を含むドナー植物系と交配させることによって、特定の配列が植物系に導入されることをもたらす技術と定義される。これを達成するために、例えば、以下の4つのステップ:(a)第1(出発系)および第2(所望の導入遺伝子または対立遺伝子を含むドナー植物系)の親植物の種を植えるステップ;(b)第1および第2親植物の種を、花を咲かせる植物に成長させるステップ;(c)第1親植物の花を第2親植物の花粉で受粉させるステップ;ならびに(d)受精花を持つ親植物で生産される種を採取するステップを実施することができる。
【0081】
本発明の別の態様は、本明細書に開示されている本発明に方法を使用して作り出される、本開示の他の部分において定義されている遺伝子導入植物およびその任意の植物部分である。
【実施例】
【0082】
当業者は、本発明により提供される方法および組成物の多くの利点を理解する。以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すために含まれている。当業者は、本開示を考慮して、多くの変更を、開示されている特定の実施形態において実施することができ、依然として、本発明の精神および範囲を逸脱することなく同様または類似の結果が得られることを理解するべきである。本明細書に引用される全ての参考文献は、本明細書に用いられている方法論、技術、または組成物を補足する、説明する、背景を提供する、または教示する程度で参照として本明細書に組み込まれる。
実施例1
【0083】
水中のPEGと接触させたダイズ細胞の増強された形質転換
この実施例は、滅菌蒸留水(SDW)にPEGを含有する組成物と接触させた乾燥ダイズ胚の増強された形質転換を示す。ダイズcv.A3525乾燥胚を、米国特許出願公開第2008/0280361号に記載された方法に従って切除し、SDWに溶解した5、10、20、または50%PEG−4000の様々な量と1時間接触させた。胚をSDWで5〜6回すすぎ、米国特許出願公開第2009/0138985号に記載された方法に従って形質転換した。胚を、元のOriRiまたはOriV複製を有し、アグロバクテリウムのABIまたはAB30株に含まれた2T形質転換ベクターで形質転換した。胚を、スペクチノマイシン選択培地で再生させた。表4に示されているように、5、10、および20%PEG組成物と接触させた胚は、INO培地またはSDW単独と接触させた胚と比較して、一般に、増強された形質転換頻度および単一コピー事象の増強された頻度を示した。50%PEGと接触させた胚も、SDWと接触させた胚(TF=2.3%)と比較して改善されたTF(7%)を示した。50%PEGでの実験は、AB30/OriRi作成物により実施した。ダイズのスペクチノマイシン選択培地の組成については表5を参照すること。
【表4】
【表5】
実施例2
【0084】
INO培地中のPEGと接触させたダイズ細胞の増強された形質転換
この実施例は、INOまたはINO培地中にPEGを含有する組成物と接触させた乾燥ダイズ胚の増強された形質転換を示す。ダイズcv.A3525乾燥胚を、米国特許出願公開第2008/0280361号に記載された方法に従って切除し、INOに溶解した20%PEG−4000と1時間接触させた。胚を無添加INOで5〜6回すすぎ、米国特許出願公開第2009/0138985号に記載された方法に従って形質転換した。胚を、元のOriRi複製を有し、アグロバクテリウムのAB30株に含まれた2T形質転換ベクターで形質転換した。胚を、スペクチノマイシン選択培地で再生させた。表6に示されているように、20%PEG組成物と接触させた胚は、一般に、INO培地単独と接触させた胚と比較して、2つの異なる実験において増強された形質転換頻度を示した。INO培地の組成については表7を参照すること。
【表6】
【表7】
実施例3
【0085】
BGM中のPEGと接触させたダイズ細胞の増強された形質転換
この実施例は、BGM単独と比較した、マメ発芽培地(BGM−表8)にPEGを含有する組成物と接触させた乾燥ダイズ胚の増強された形質転換を示す。ダイズcv.A3525乾燥胚を、米国特許出願公開第2008/0280361号に記載された方法に従って切除し、BGMに溶解した10%または20%PEG−4000と1時間接触させた。胚をBGMで5〜6回すすぎ、米国特許出願公開第2009/0138985号に記載された方法に従って形質転換した。胚を、元のOriV複製を有し、アグロバクテリウムのAB30株に含まれた2T形質転換ベクターで形質転換した。胚を、スペクチノマイシン選択培地で再生させた。表9に示されているように、10%および20%PEG組成物と接触させた胚は、BGM単独と接触させた胚と比較して増強された形質転換頻度を示した。
【表8】
【表9】
実施例4
【0086】
他の浸透性化合物と比較したTFに対するPEGの効果
この実施例は、PEGと比較したTFに対する他の浸透性化合物の効果を示す。様々なPEG種による処理のTF増強も比較する。ダイズcv.A3555乾燥胚を、米国特許出願公開第2008/0280361号に記載された方法に従って切除し、SDWに溶解したPEG−4000、PEG−6000、PEG−8000、マンニトール、ソルビトール、またはグリセロールの様々な量と1時間接触させた。次に胚をSDWで5〜6回すすぎ、米国特許出願公開第2009/0138985号に記載された方法に従って形質転換した。胚を、元のOriRi複製を有し、アグロバクテリウムのAB30株に含まれた2T形質転換ベクターで形質転換した。胚を、スペクチノマイシン選択培地で再生させた。表10に示されているように、10%および20%PEG組成物と接触させた胚は、他の浸透性化合物または水単独で処理した胚と比較して、増強された形質転換頻度を示した。
【表10】
実施例5
【0087】
PEGは乾燥胚外植片の水和率を調節する
この実施例は、PEGが乾燥胚外植片の水和率の調節に有用であることを示す。ダイズcv.A3525乾燥胚を、米国特許出願公開第2008/0280361号に記載された方法に従って切除した。次に外植片を、INOに溶解した20%PEG4000またはINO単独のいずれかと接触させた。水分取り込み率は、処理の際に定期的な間隔で外植片の試料を取り、それらを重量測定に基づいた破壊オーブン試験に付し、そこで外植片を約100℃のオーブンでおよそ2日間乾燥した。水分率は、これらの重量損失により決定した。表11および12にそれぞれ示されているように、第1の研究は、1、4、および24時間の水和率を検査し、一方、第2の研究は、0、15、30、45、および60分間の水和率の率を検査した。両方の研究は、20%PEG4000と接触させた乾燥ダイズ胚外植片による水分取り込み率が低減されていることを示す。により水和を調節する
【表11】
【表12】
実施例6
【0088】
PEG処理は胚外植片の出液水放出を低減する
この実施例は、水中のPEGと接触させた乾燥切除胚外植片が、水単独と接触させたものと比較して少ない出液水を放出することを示す。ダイズcv.A3555乾燥胚を、米国特許出願公開第2008/0280361号に記載された方法に従って切除し、SDW中20%PEG−4000またはSDW単独と1時間接触させた。それぞれの培地中の外植片を、オービタルシェイカーに75RPMで入れ、室温でインキュベートした。各群の培地の試料をインキュベーションの0、15、30、45、および60分後に取り出し、光学密度(300nmでの吸光度、適切な培地による空試験)および伝導率(マイクロジーメンス)を測定して出液水を分析した。表13に示されているように、出液水の光学密度は、20%PEG処理の試料と比較して水対照試料においてはるかに高かった。伝導率についても同じことが当てはまった。注:星印(
*)で示された読み取り値は、使用した分光光度計が最大範囲の3.295を有したので、試料の1/10希釈で実施し、次に10を掛けた。
【表13】
実施例7
【0089】
水和ダイズ胚の形質転換頻度に対するPEG処理の効果
この実施例は、アグロバクテリウム仲介形質転換の前に接触させたときの、水和ダイズ胚の形質転換頻度に対するPEG処理の効果を示す。ダイズcv.A3525ダイズ胚を、米国特許出願公開第2008/0280361号に記載された方法に従って切除し、SDW中のPEG−4000の多様な量と1時間接触させた。胚をSDWで5〜6回すすぎ、米国特許第7,402,734号に記載された方法に従って形質転換した。胚を、元のOriRi複製を有し、アグロバクテリウムのAB30株に含まれた2T形質転換ベクターで形質転換した。胚を、スペクチノマイシン選択培地で再生させた。表14に示されているように、PEG処理は、既に水和されたダイズ成熟胚のTFの増強に有用であるとは思われなかった。PEG処理は乾燥胚および下記のトウモロコシ未熟胚で例示されているように未熟胚に有用でありうる。
【表14】
実施例8
【0090】
形質転換頻度に対する、同時培養の際のPEGの使用の効果
この実施例は、形質転換頻度に対する、同時培養の際のPEG組成物の効果を示す。ダイズcv.A3555乾燥胚を、米国特許出願公開第2008/0280361号に記載された方法に従って切除し、SDWに溶解した20%PEG−4000と1時間接触させた。胚をSDWで5〜6回すすぎ、米国特許出願公開第2009/0138985号に記載された方法に従って形質転換した。胚を、元のOriRi複製を有し、アグロバクテリウムのAB30株に含まれた2T形質転換ベクターで形質転換した。次に形質転換された細胞を、1、5、10、または20%PEG4000を含有するINO培地で同時培養した。同時培養培地は1ppmのTDZも含有した。胚を、スペクチノマイシン選択培地で再生させた。表15に示されているように、PEGが同時培養培地に含まれている処理は、PEGが同時培養の前に使用された処理と比較して低いTFを生じた。このことは、形質転換の前のPEG処理が細胞の細菌仲介形質転換の適格性を改善するが、同時培養の際のPEGはTFを低減すると思われることを示唆している。
【表15】
実施例9
【0091】
PEGと接触させたトウモロコシ胚の増強されたカルス生産
この実施例は、PEGおよび異なる量(%)のPEGをカルス生産の改善のために使用できることを示す。トウモロコシの雌穂からトウモロコシ胚を、本開示の他の部分に記載されているように手作業で単離し、集めた。胚を、1mLのLynx2304または異なる量のPEG8000(Sigma P−2139)を含有する1mLのLynx2304培地のいずれかに、6℃で4日間暗黒に保存した。それぞれの処理では4回の反復を実施した。続いて胚をカルス誘導培地Lynx1074で約2週間培養した。Lynx1074および2304培地の組成については表17を参照すること。表16に示されているように、対照処理(保存なし)では、単離の後にLynx2304培地で直接培養したとき、100%の胚がカルスを生産した。1%または5%のPEG8000に保存されたとき、僅かな率の胚がカルスを生産した。PEGなしの培地に保存されたとき、カルスを生産した胚はなかった(処理2)。10または20%のPEG8000に保存された胚の100%がカルスを生産した(処理5および6)。
【表16】
【表17】
実施例10
【0092】
この実施例は、植物細胞の適格性を改善するための、異なる分子量のPEGの使用を示す。トウモロコシの雌穂からトウモロコシ胚を、本開示の他の部分に記載されているように手作業で単離し、集め、次に1mlのLynx2304または異なる分子量の20%PEGを含有する1mlのLynx2304培地のいずれかに、6℃で4日間暗黒に保存した。続いてこれらをLynx1074で2週間培養して、カルス応答を観察した。表18に示されているように、対照処理(保存なし)では、単離の後にLynx2304培地で直接培養したとき、100%の胚がカルスを生産した。PEG不在下で保存されなかった胚により形成されたカルスはなかったが、一般に全ての胚は、PEGと接触させたときカルスを生産した。更に、PEGの分子量が200から8000に増加すると、カルスの形成は増加した。
【表18】
実施例11
【0093】
この実施例は、形質転換の前にPEGと接触させたトウモロコシ胚の形質転換頻度における改善を例示する。トウモロコシ未熟胚を同系繁殖系LH244から本開示の他の部分に記載されているように手作業で単離し、処理に分けた。1つの処理の胚を、20%W/V PEG8000を含有するLynx2304培地と10分間接触させ、次に滅菌ddH
2Oで3回洗浄した。別の処理は、胚単離の後にPEG処理を受けなかった。両方の処理にアグロバクテリウム(660nmでOD0.1)を5分間接種し、続いて米国特許第7、682,829号に記載されているように、選択および再生のために培養した。
【0094】
表19に示されているように、PEGと接触させた胚は、より多くの遺伝子導入部分、最終的にはより多くの遺伝子導入植物を生産し、トウモロコシ胚をPEGと接触させることは、これらの形質転換適格性を改善することを示している。
【表19】
実施例12
【0095】
この実施例は、植物細胞の適格性が、植物細胞をPEGおよびオーキシンのような成長調整剤を含有する培地と接触させることによって改善されうることを示す。トウモロコシ未熟胚を同系繁殖系LH244から本開示の他の部分に記載されているように手作業で単離し、2.2mg/Lのピクロラム、20%PEG8000(v/v)を含有する1mLのLynx1854(表20)またはPEG8000なしのLynx1854のいずれかに4℃で6日間暗黒に保存した。続いて胚をカルス誘導培地Lynx1074で約2週間培養した。
図1は、Lynx1854のみに保存した胚(右側パネル)と比較した、PEGおよびピクロラムを補充したLynx1854培地に保存した胚(左側パネル)のみからのカルス生産を例示する。
【表20】
実施例13
【0096】
この実施例は、PEGおよび1つ以上の成長調整剤を含有する培地に保存したトウモロコシ胚の改善された形質転換を示す。トウモロコシ未熟胚を同系繁殖系LH244から本開示の他の部分に記載されているように手作業で単離し、処理に分けた。処理2を、20%(v/v)PEG8000、0.5mg/lの2,4−D、0.01mg/LのBAP(Sigma B−3408)を補充したLynx1452培地(表21)に保存し、一方、処理3を、20%(v/v)PEG、0.5mg/lの2,4−D、2.2mg/lのピクロラムを補充したLynx1452に保存した。処理2および3を6℃で4日間暗黒に保存した。対照(処理1)では、胚を形質転換の前に保存せず、PEGまたは任意の成長調整剤と接触もさせなかった。保存した後、胚に1mLのアグロバクテリウム培養懸濁液を5分間接種し、アグロバクテリウムを除去し、次に1mLのアグロバクテリウム培養懸濁液を更に5分間再び接種した。続く培養および植物再生を、米国特許第7,682,829号に記載された方法に従って実施した。
【0097】
表22に示されているように、トウモロコシ胚を、PEGおよび1つ以上の成長調整剤を含有する培地と接触させることは、高い形質転換頻度をもたらした。
【表21】
【表22】
実施例14
【0098】
この実施例は、異なる温度で植物細胞の形質転換の適格性を改善するための、PEG単独または成長調整剤と組み合わせたPEGの使用を示す。トウモロコシ未熟胚を同系繁殖系LH244から本開示の他の部分に記載されているように手作業で単離し、20%(v/v)PEG8000を含有するLynx2304または20%(v/v)PEG8000および0.5mg/mlの2,4−D+0.01mg/lのBAPを含有するLynx2304のいずれかに保存した。これらを、米国特許第7,682,829号に記載された方法に従って形質転換する前に、4℃または23℃で3日間暗黒に保存した。表23に示されているように、Lynx2304+PEGまたはLynx2304+PEGおよび成長調整剤の培地に4℃または23℃で保存したトウモロコシ胚は、遺伝子導入植物を生産した。PEGおよび成長調整剤を含有する培地で保存したトウモロコシ胚は、BAPを含有しない培地で保存したものより多くの遺伝子導入植物を生産した。4℃で保存したトウモロコシ胚は、23℃で保存したものより多くの遺伝子導入植物を生産した。
【表23】
実施例15
【0099】
この実施例は、胚が異なる時間にわたって保存された場合における、植物細胞の形質転換の適格性を改善するための、成長調整剤と組み合わせたPEGの使用を示す。トウモロコシ未熟胚を同系繁殖系LH244から本開示の他の部分に記載されているように手作業で単離し、20%(v/v)PEG8000、0.5mg/lの2,4−D、0.01mg/lのBAPを含有するLynx2304に4℃で3、5、または7日間暗黒に保存した。次に胚を、米国特許第7,682,829号に記載された方法に従って形質転換した。表24に示されているように、3、5、または7日間のいずれかで保存されたトウモロコシ胚は、遺伝子導入植物を生産した。3日間保存されたトウモロコシ胚は、PEG8000および成長調整剤を含有する培地で保存しなかったものより多くの遺伝子導入植物を生産した。
【表24】
実施例16
【0100】
この実施例は、機械的に単離された植物細胞の適合性を改善するためのPEGの使用を示す。トウモロコシ胚を米国特許第7,560,611号に記載されたように切除し、20%(v/v)PEG8000を含有するLynx2304に4℃で2日間暗黒に保存した。次に胚を、米国特許第7,682,829号に記載された方法に従って形質転換した。表25に示されているように、機械的に切除したトウモロコシ胚は、2つの異なる実験において、保存の2日後に遺伝子導入植物を生産することができた。
【表25】
実施例17
【0101】
この実施例は、植物細胞/組織への成長調整剤の効果的な送達が、植物細胞/組織を培養する前に、植物細胞/組織を、PEGおよびサイトカイニンのような成長調整剤を含有する培地と接触させることによって達成できることを示す。トウモロコシ未熟胚を同系繁殖系LH244から本開示の他の部分に記載されているように手作業で単離し、1mLのLynx2304または20%PEG8000(v/v)、5mgのBAP(v/v)を含有する1mlのLynx2304のいずれかに4℃で14日間暗黒に保存した。次に胚外植片を、PEGを除去した後、発芽培地で平板培養した。Lynx2304のみに保存した胚を平板培養する直前に、5mg/lのBAP(v/v)を保存管に加えた。続いて胚を、サイトカイニンを有さない発芽培地Lynx1607(表26)で約1週間培養した。
図2は、BAPなしで保存した胚(左側パネル)と比較した、PEGおよびBAPを補充したLynx2304培地に保存した胚(右側パネル)からの子葉鞘節の増強された毛状突起形成および膨潤を例示する。
【表26】
実施例18
【0102】
この実施例は、植物細胞/組織を、PEGおよびサイトカイニンのような成長調整剤を含有する培地と接触させることによる植物細胞/組織の適格性の増強を更に示す。トウモロコシ未熟胚を同系繁殖系LH244から本開示の他の部分に記載されているように手作業で単離し、1mLのLynx2304または20%PEG8000(v/v)および20mgのBAP(v/v)を含有する1mlのLynx2304のいずれかに4℃で3日間暗黒に保存した。続いて胚をカルス誘導培地Lynx1074で約2週間培養した。
図3は、PEGまたはBAPなしで保存した胚(左上、左下のパネル)と比較した、PEGおよびBAPを補充したLynx2304培地に保存した胚(右上、右下のパネル)からの改善された苗条形成を例示する。したがって、この実施例は、オーキシン含有カルス誘導培地(Lynx1074)で培養する前、PEGおよびサイトカイニンと有効時間にわたって接触させた外植片ら生産された胚形成カルスからの、苗条および苗条様構造の増強された急速な再生も示す。
実施例19
【0103】
この実施例は、胚の保存における、PEGと比較した別の一般的に使用される凍害防御物質の浸透圧調節物質であるグリセロールの効果を示す。トウモロコシ未熟胚を同系繁殖系LH244から本開示の他の部分に記載されているように手作業で単離した。胚を、1mlのLynx1854、20%グリセロールを有し、PEGを有さないLynx1854、または20%グリセロールおよび20%PEGの両方を有するLynx1854を含有するエッペンドルフ管に移した。それぞれの培地に1本のエッペンドルフ管があった。3本の管を全て4℃で6日間保存した。このインキュベーション期間の後、管をインキュベーションから取り出し、それぞれの管の内容物を全て1074半固体培地に移し、続いて未熟胚を散布した(20〜25/プレート)。胚を1074で暗黒にインキュベートした7日後、培養応答を評価した。表27に示されているように、培養反応は、PEG単独を有する処理番号1においてのみ達成された。単独またはPEGの組み合わせで存在するグリセロールは、いずれも、胚盤組織から培養応答がなかったので保存の際に負の効果を有した。
【表27】
実施例20
【0104】
PEGと接触させたワタ細胞の増強された形質転換
この実施例は、滅菌水にPEGを含有する組成物と接触させた乾燥ワタ胚の増強された形質転換を示す。ワタcv.DP393−0053種を、10%クロロックス漂白剤で10分間無菌化した。次にこれらを種乾燥機で一晩乾燥して、平均内部水分量の3.4%を達成した。最初にディスク型粉砕機のGP140型(Modern Process Equipment Corp.,Chicago,II)で種を加工し、次にClipper Eclipse 324(Clipper Separation Technologies;A.T.Ferrell Company,Bluffton,Ind)のような自動化篩い分け空気流分離装置で加工して、種皮、微粉および他の破片のような種の不要な部分の大部分を除去することにより、乾燥胚を乾燥種から切除した。保持した種材料を沸騰が止まるまで(約30秒間)液体窒素に浸け、次に、米国特許出願公開第2008/0280361号に記載されているように、追加的にスクリーンして、子葉、種皮および他の破片のような不要な材料から望ましい胚外植片材料を単離する前に、ディスク型粉砕機で再び加工した。乾燥胚を、滅菌水に溶解した20%PEG−4000と1時間接触させた。胚をRO水で4分間すすぎ、次に、米国特許第8,044,260号に記載された方法に従ってアグロバクテリウム仲介形質転換に付した。胚を、スペクチノマイシン選択培地で再生させた。表28に示されているように、20%PEG組成物と接触させた胚は、一般に、INO培地(PEGなし)と接触させた胚と比較して増強された形質転換頻度を示した。ワタのスペクチノマイシン選択培地の組成については表29を参照すること。
【表28】
【表29】