(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記近位部(20;78)が、前記1つ以上の骨留め具係合部材(56)を有する前記結合ユニット(14;110;116;130)を、前記近位部(20;78)の前記長手軸(44)に対して略平行な方向に案内するように構成された請求項1に記載のインプラントシステム(10)。
前記1つ以上の案内構造(48)が、前記髄内釘(12)の前記外側および前記内側のうちの一方または両方において前記1つ以上の骨留め具係合部材(56)を摺動可能に受け入れるように構成されている請求項1または請求項2に記載のインプラントシステム(10)。
前記結合ユニット(116)が、髄内釘(12)の前記外側に位置する第1の骨留め具係合部材(56)と、前記内側に位置する第2の骨留め具係合部材(56)とを有する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のインプラントシステム(10)。
前記結合ユニット(130)が、前記近位部(20)の前記長手軸(44)と前記横穴(26)の長手軸とを含む平面に対して垂直に延びる線上に位置する第1の骨留め具係合部材(56)と第2の骨留め具係合部材(56)とを有し、
前記線が、前記近位部(20)の前記長手軸(44)から前記髄内釘(12)の内方向および外方向のうちの一方に離間している請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のインプラントシステム(10)。
前記近位部(20;78)の前記穴(46;84)が、髄内釘(12)の前記内側または前記外側に位置するか、または近位部(20;78)の前記長手軸(44)に対して中心に位置している請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のインプラントシステム(10)。
前記結合ユニット(14;110;116;130)は、該結合ユニット(14;110;116;130)が前記髄内釘(12)の遠位部(22)へ向かって移動するときに、前記1つ以上の骨留め具係合部材(56)を前記近位部(20;78)の前記長手軸(44)の方向に前記遠位部(22)へ向かって付勢するように構成されている請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のインプラントシステム(10)。
前記1つ以上の骨留め具係合部材(56)が、前記結合ユニット(14;110;116;130)の駆動部材(58;94)に偏心して配置されている請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のインプラントシステム(10)。
前記結合ユニット(14;110;116;130)が、前記結合ユニット(14;110;116;130)を前記近位部(20;78)の前記穴(46;84)内で移動させるための駆動部材(58;94)を有する請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のインプラントシステム(10)。
【背景技術】
【0002】
大腿骨骨折は一般に、大腿骨頸部および転子部で起こる。通常、転子部および転子下の大腿骨骨折は、現在のところ、髄内釘で治療され、この髄内釘は、ラグスクリュの形態で通常提供される大腿骨頸部スクリュなど骨留め具(bone fastener)を受け入れるために、横穴を有する。髄内釘は、大腿骨の髄内管(intramedullary canal)に取り付けられ、ラグスクリュは、髄内釘の横穴を通り、大腿骨頸部を経て大腿骨頭部に入る。
【0003】
ラグスクリュは、速くかつ確実な骨折治癒を可能とするために、骨折線をブリッジングすることによって大腿骨頭部にかかる荷重を釘シャフト部内へ移すように設計される。さらに、ラグスクリュは、大腿骨骨折の焼結(sintering)に従って髄内釘内で摺動することができる。通常、髄内釘の穴にセットスクリュが挿入されて、ラグスクリュの回転および自由な内側偏位を防止する。
【0004】
髄内釘は、キルシュナー鋼線などの外科手術用ワイヤ(ガイドワイヤ)を受け入れるために、その長手軸に沿って中心管路を含むことができる。外科手術用ワイヤは、髄内釘の挿入に先立って、大腿骨の髄腔に挿入される。
【0005】
特許文献1は、髄内転子間骨折固定器具および取付けデバイスに関する。この髄内骨折固定器具は、ラグスクリュの形態をなす大腿骨頸部スクリュを受け入れるための横穴を有する髄内釘を含む。髄内釘の近位端部には、釘を通って同軸で延在して横穴に開口する、別の穴が設けられている。この釘の同軸穴の中に、セットスクリュが配置される。セットスクリュの下端部は、中央配置された突出部を有する。セットスクリュがその最終位置にあるときには、セットスクリュの中央突出部は、ラグスクリュのシャフト上に配置された長手方向に延在する溝のうちの1つと係合する。
【0006】
特許文献2は、結合機構を有する髄内釘に関する。結合機構は、本体部材と、本体部材から横方向に延在する平形尖状部とを含む。さらに、髄内釘内で軸方向に延在する部分的にねじ付きのチャネルとねじ式係合(threadable engagement)するための短いボルトが、本体部材に回転可能に連結される。本体部材は、チャネルの溝に受け入れられるタブをさらに含み、それにより、タブと溝とが協働することで、チャネル内での本体部材の回転が防止される。本体部材が髄内釘の横穴を通じて挿入されたラグスクリュの方へ付勢されると、平形尖状部は、チャネル壁とラグスクリュとの間の空間にしっかりと嵌合するように、ラグスクリュの側面に接触し、かつラグスクリュの平坦部によって画定された空隙を埋める。
【0007】
特許文献3は、分岐したロックを有する髄内釘に関する。特許文献4に記載の本体部材と同様に、スリーブ・ロックが、平形尖状部の形態をなす2つの横方向ロック・タブと、髄内釘のチャネルの溝内に係合する回転防止タブとを含む。スリーブ・ロックのロック・タブは、ラグスクリュ上に配置されたスリーブのロック・スロット内に係合する。
【0008】
特許文献5は、近位部に固定穴を有する髄内釘に関する。釘の近位部はさらに、2つの横穴を有し、この横穴の中に、ラグスクリュと補助接続具が配置される。補助接続具は、髄内釘の固定穴にねじ込まれたセットスクリュとラグスクリュとの間の位置で釘を貫通するので、締付力を伝達するためのスペーサが、セットスクリュとラグスクリュとの間に挿入される。スペーサは、本体と、本体から長手方向に延在する離間した2つの脚部とを含む。セットスクリュが固定穴内のスペーサ上に置かれて固定穴にねじ込まれると、セットスクリュはスペーサ全体を押し下げ、脚部の下端部はラグスクリュの溝内に係合する。補助接続具は、スペーサの2つの脚部間に位置決めされ、また、セットスクリュの先端部に形成された中央ボスによってしっかりと保持され、スペーサの本体内に形成された開口部を通じて挿入される。
【0009】
特許文献6は、髄内釘とラグスクリュとの間の結合構成を開示している。結合組立体が、係合部材および係合駆動体を含む。結合組立体は、髄内釘の横穴内に配置されたラグスクリュの一部分と係合するために、髄内釘の穴の近位部に受け入れられる。係合駆動体は、釘の髄内穴とねじ込式に結合されて、係合部材を係脱位置と係合位置との間で移動させる働きをする。係合部材は、係合部材が係合位置にあるときにラグスクリュと係合することができる平形尖状部として形成された、2つの係合腕部を含む。
【0010】
さらなる技術的背景は、特許文献7および特許文献8に見ることができる。
【0011】
従来の髄内釘には、いくつかの欠点がある。貫通穴のないセットスクリュは、前もって髄内釘に組み付けることができず、したがって、ガイドワイヤを除去した後で、手術中に髄内釘に挿入しなければならない。この場合、比較的小さなセットスクリュを髄内釘のシャフトに挿入することが、面倒である。釘の近位端部で開口部に重なり合う軟組織が、セットスクリュの挿入およびねじの相互係合を妨げる可能性がある。したがって、セットスクリュが髄内釘内で動けなくなって、追加的な手術ステップのために手術時間が増大する場合がある。さらに、1つ以上の尖状部を有するセットスクリュは、ラグスクリュの自由な内側偏位を防止することができない。したがって、髄内釘、結合組立体、および髄内釘の横穴を介して骨に挿入されるラグスクリュの構成は、患者の体内で高い機械的負荷安定性を提供することができない。さらに、尖状部を有するセットスクリュの使用は、現状のラグスクリュ・シャフトの設計の変更を必要とする。現状のラグスクリュ軸の設計は、髄内釘内でのラグスクリュの画定された摺動を保証するために、セットスクリュのピンが係合することができる長手方向に延在する溝を提供するものである。
【発明の概要】
【0013】
本開示の諸態様は、髄内釘および対応する骨留め具に関する外科的処置および移植を簡素化しかつ容易にするだけでなく患者の体内で十分な機械的負荷安定性を提供する、インプラントシステムの提供を対象とする。
【0014】
第1の態様によれば、骨を固定するための整形外科手術で使用するインプラントシステムが提供される。インプラントシステムは、内側と、外側と、長手軸を画定する近位部とを有する髄内釘を備える。近位部は、近位部の長手軸に対して略平行な第1の軸を画定する穴と、骨留め具を受け入れるように構成された少なくとも1つの横穴とを有する。さらに、インプラントシステムは、近位部の穴内に移動可能に配置されるように構成されるとともに、髄内釘の外側および内側のうちの一方または両方に1つ以上の骨留め具係合部材を有する結合ユニットを備える。
【0015】
近位部は、1つ以上の骨留め具係合部材を有する結合ユニットを近位部の長手軸に対して略平行な方向に案内するように構成されてもよい。この案内は、1つ以上の骨留め具係合部材が(髄内釘の外側および内側のうちの一方または両方で)近位部の横穴を貫通している骨留め具と係合することができるようなものであってもよい。髄内釘の近位部の横穴は、近位部の長手軸に対してある決められた角度を有する、角度の付いたまたは傾斜した穴として形成されてもよい。一例においては、1つ以上の骨留め具係合部材は、骨留め具の長手軸に略垂直である線に対して両側に配置されていてもよい。言い換えれば、1つ以上の骨留め具係合部材は、髄内釘の前方側および後方側によって画定された線に対して両側に配置されていてもよい。
【0016】
一実施態様においては、近位部は、該近位部の長手軸に対して略平行な第2の軸をそれぞれが画定する、結合ユニット用の1つ以上の案内構造を有していてもよい。1つ以上の案内構造は、髄内釘の外側および内側のうちの一方もしくは両方で、または髄内釘の他の側で、1つ以上の骨留め具係合部材(または結合ユニットの任意の他の部分)を摺動可能に受け入れるように、構成されていてもよい。1つ以上の案内構造の第2の軸は、近位部の長手軸に対して偏心して配向されていてもよい。
【0017】
近位部の穴、および1つ以上の案内構造は、例えば横断方向に(例えば、外側−内側方向に)隣接するように、互いに隣接して配置されていてもよい。髄内釘の近位部の穴は、同軸で配置することができる。さらに、髄内釘の近位部の穴は、髄内釘の内側または外側に位置していてもよく、または、近位部の長手軸に対して中心に位置していてもよい。したがって、髄内釘の近位部の穴、および1つ以上の案内構造は、髄内釘の近位部の長手軸に対して偏心して配向することができる。1つ以上の案内構造は、髄内釘の外側および内側のうちの一方または両方に位置していてよい。
【0018】
1つ以上の案内構造は、溝または穴として形成することができる。1つ以上の案内構造は、例えば、V形、U形、またはC形などの断面を有することができる。あるいは、1つ以上の案内構造は、丸い形状(例えば、円形)、四角い形状(例えば、四角形、台形、正方形、または長方形)、または三角形などの断面を有することができる。
【0019】
結合ユニットは、少なくとも髄内釘の外側に位置する第1の骨留め具係合部材と、内側に位置する第2の骨留め具係合部材とを有することができる。そのような実施態様では、第1および第2の骨留め具係合部材は、異なる長さを有することができる。例えば、外側上の骨留め具係合部材を、反対側の骨留め具係合部材よりも長くすることができる。ある実施態様では、第1および第2の骨留め具係合部材は、基板部材によって相互に連結される。基板部材と骨留め具係合部材は、一体構造を構成することができる。
【0020】
別の実施例においては、結合ユニットは、近位部の長手軸および横穴の長手軸を含む平面に対して垂直に延びる線上に位置する第1の骨留め具係合部材と第2の骨留め具係合部材とを有していてもよい。この線は、近位部の長手軸から、髄内釘の外側方向および内側方向のうちの一方に離間されていてもよい(すなわち、2つの骨留め具係合部材はどちらも、髄内釘の外側および内側のうちの一方に位置していてもよい)。いくつかの他の実施態様では、線は、近位部の長手軸と交差していてもよい。
【0021】
結合ユニットは、髄内釘の遠位部へ向かって移動したときに、1つ以上の骨留め具係合部材を近位部の長手軸の方向に遠位部へ向かって付勢するように、構成されていてもよい。そのような場合には、1つ以上の骨留め具係合部材は、骨留め具の溝または任意の他の構造内に係合して、骨留め具が該骨留め具の長手軸周りに回転することを阻止することができる。
【0022】
一実施態様においては、1つ以上の骨留め具係合部材は、骨留め具の長手軸に交差する長手軸を画定していてもよい。1つ以上の骨留め具係合部材は、それぞれ、シャフト(および、球面ボール形、円形、円錐形、平形、U形、またはV形の随意の先端)を有するブレード、尖状部、またはボルトとして形成されていてもよい。1つ以上の骨留め具係合部材は、丸い形状(例えば、円形)、四角い形状(例えば、四角形、台形、正方形、または長方形)、または三角形などの断面を有していてもよい。さらに、1つ以上の骨留め具係合部材は、結合ユニットの駆動部材上に偏心して配置することができる。
【0023】
一実施例においては、結合ユニットは、近位部の穴内で結合ユニットを移動させるための駆動部材を有していてもよい。駆動部材は、外科手術用ワイヤを受け入れるための貫通穴を有していてもよく、有していなくてもよい。さらに、駆動部材の貫通穴は、中央に配置される場合もある。駆動部材は、1つ以上の骨留め具係合部材に移動可能に接続されていてもよい。
【0024】
髄内釘は、髄内釘の長手軸に略沿ったチャネルを有していてもよい。この釘のチャネルは、円形または角のある形状の断面を有していてもよい。髄内釘のチャネル、駆動部材の貫通穴、および髄内釘の近位部の穴によって、髄内釘を貫通する管路を画定することができ、その結果、この管路を通じて外科手術用ワイヤを挿入することができる。外科手術用ワイヤは、キルシュナー鋼線や任意の他の種のワイヤなどのガイドワイヤであってよい。
【0025】
一実施態様においては、駆動部材は、髄内釘、例えば髄内釘の近位部とねじ締結可能な雄ねじを有していてもよい。駆動部材は、駆動部材の円周溝内に配置された(例えば合成材料で作られた)リングをさらに有することができる。あるいは、リングは、駆動部材の雄ねじ上に(例えば、雄ねじの溝内に)配置されていてもよい。リングの材料は、変形可能なものであってもよい。したがって、リングは、変形可能なプラスチック・リングとすることができる。髄内釘の近位部の穴は雌ねじを有することができ、駆動部材の雄ねじは、近位部の雌ねじと締結することができる。さらに、駆動部材は、(短い)ボルトとして形成することができる。
【0026】
駆動部材は、駆動力伝達部を有することができ、また、1つ以上の骨留め具係合部材は、該1つ以上の骨留め具係合部材の長手方向を横切る方向に実質的に配置された溝を有することができる。駆動力伝達部は、(例えば、駆動部材が回転することによって、1つ以上の骨留め具係合部材を髄内釘の近位部の長手軸の方向に移動させることができるように)1つ以上の骨留め具係合部材の溝内に移動可能に係合するように構成することができる。駆動力伝達部は、1つ以上の骨留め具係合部材の溝内に回転可能に支持されていてもよい。
【0027】
別の実施態様においては、駆動部材は、駆動力伝達部を有することができ、また、1つ以上の骨留め具係合部材は、基板部材上に配置することができ、駆動力伝達部は、基板部材に移動可能に係合することができる。ある実施例では、基板部材は保持部を有することができ、駆動力伝達部は、保持部に移動可能に係合することができる。駆動部材が回転することによって、1つ以上の骨留め具係合部材を髄内釘の近位部の長手軸の方向に移動させることができる。
【0028】
基板部材は、外科手術用ワイヤを受け入れるための貫通穴を有していてもよい。基板部材は、円形であってもよく、また、貫通穴は、中央にまたは偏心して配向していてもよい。さらに、髄内釘のチャネル、髄内釘の近位部の穴、基板部材の貫通穴、駆動部材の貫通穴、および近位部の中央穴は、管路を画定することができ、その結果、その管路を通って外科手術用ワイヤを挿入することができる。
【0029】
インプラントシステムは、髄内釘の近位部内に配置された保持器をさらに備えていてもよく、近位方向における結合ユニットの可動域が、保持器によって制限されうる。保持器は、規定のばね定数を有する止め輪またはばね輪として形成することができる。保持器はさらに、円形状を有することができる。
【0030】
インプラントシステムは、骨留め具を備えていてもよい。骨留め具は、摺動スクリュ、ラグスクリュもしくは大腿骨頸部スクリュ、または任意の種のブレードとして形成することができる。骨留め具は、1つ以上の溝もしくは他の構造を有していてもよく、また、1つ以上の骨留め具係合部材は、骨留め具の1つ以上の溝もしくは他の構造内に係合して骨留め具が骨留め具の長手軸周りで回転するのを阻止するように、構成されていてもよい。
【0031】
結合ユニットは、髄内釘の近位部内に係留されてもよい。さらに、駆動部材および1つ以上の骨留め具係合部材は、髄内釘の近位部内に予め組み立てられてもよい。駆動部材は、1つ以上の骨留め具係合部材に移動可能に接続されていてもよい。
【0032】
さらに、長手軸を画定する近位部を有する髄内釘であって、近位部が、該近位部の長手軸に対して略平行な第1の軸を画定する穴と、少なくとも1つの横穴とを有する髄内釘と、横穴を貫通するように構成され、1つ以上の傾斜路を有する少なくとも1つの溝を有する骨留め具と、近位部の穴内に移動可能に配置されるように構成され、少なくとも1つの溝に係合して1つ以上の傾斜路を介して骨留め具に圧力を加えるように構成された1つ以上の骨留め具係合部材とを備える結合ユニットとを備える、骨を固定するための整形外科手術で使用するインプラントシステムを提供する。
【0033】
さらなる態様によれば、内側と外側とを有する髄内釘を骨の髄腔に挿入するステップであって、髄内釘は、長手軸を画定する近位部であって、近位部の長手軸に対して略平行な第1の軸を画定する穴と、骨留め具を受け入れるように構成された横穴とを有する近位部と、近位部の穴内に移動可能に配置されかつ髄内釘の外側および内側のうちの一方または両方に1つ以上の骨留め具係合部材を有する結合ユニットとを備えるステップと、髄内釘の近位部の横穴を通って骨留め具を骨に挿入して、骨折部を固定するステップと、結合ユニットを駆動させて1つ以上の骨留め具係合部材と髄内釘の横穴を貫通している骨留め具とを係合させ、それにより骨留め具の回転を阻止するステップとを含む、骨を固定するための方法が提供される。
【0034】
上記方法は、ガイドワイヤを骨の髄腔に挿入する最初のステップをさらに含み、髄内釘が、管状化されて、ガイドワイヤ上を沿って骨の髄腔に挿入されてもよい。その後のステップでは、髄内釘の挿入後にガイドワイヤが取り除かれてもよい。
【0035】
髄内釘の近位部の穴と1つ以上の案内構造とが互いに離間され、また、例えばセットスクリュの形態をなす結合ユニットが、1つ以上の骨留め具係合部材と、貫通穴を有する駆動部材とを有し、1つ以上の案内構造が、1つ以上の骨留め具係合部材を摺動可能に受け入れる場合、結合ユニット(すなわち、1つ以上の骨留め具係合部材、および駆動部材)は、髄内釘内に予め組み立てるまたは組み込むことができ、それと同時に、外科手術用ワイヤを通すことができる。具体的には、大腿骨の髄内管内での髄内釘の外科的処置および移植が、簡素化されかつ容易になる。さらに、1つ以上の骨留め具係合部材が髄内釘の外側および内側のうちの一方または両方に位置するので、髄内釘、結合ユニット、および髄内釘の横穴を通って骨に挿入される骨留め具の構造は、患者の体内で高い機械的負荷安定性を提供する。さらに、現状の骨留め具の設計の変更は、必ずしも必要とされない。
【0036】
本開示の上記その他の特徴、態様、および利点は、添付の図面と併せ以下により詳細に説明することから、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の例示的な実施形態の説明では、同一のまたは同様の構成要素は、同じ参照番号によって表される。様々な構成の特定の構成要素が様々な実施形態において区別なく提供されうることが理解されよう。さらに、以下の実施形態は主として大腿骨の治療に関して説明されるが、本明細書で提示されるインプラントシステムが他の治療にも使用できることが理解されよう。
【0039】
図1を参照すると、大腿骨(
図1には図示せず)などの骨を固定するための整形外科手術で使用するインプラントシステム10の一実施形態の断面図が示されている。インプラントシステム10は、髄内釘12と、結合ユニット14と、骨留め具16とを備える。結合ユニット14は、骨留め具16を髄内釘12に結合する。髄内釘12は、大腿骨の内腔(髄腔)すなわち大腿骨の髄内管に挿入することが可能な棒状本体18を有する。髄内釘12の棒状本体18は、近位部20と、該近位部20よりも長い遠位部22と、近位部20と遠位部22との間に位置する湾曲部24とを有する。言い換えれば、湾曲部24は、近位部20と遠位部22とを接続している。
【0040】
図1に示されているように、髄内釘12は、近位部20に位置する横穴26を有する。横穴26の軸は、髄内釘の長手軸に対してある角度を有し、それにより、横穴26の長手軸は、近位部20の軸方向の延びに対して傾斜した延びを有する。本実施形態では、単一の横穴26のみ利用されているが、他の実施形態では、複数の(例えば2つ以上の)横穴が近位部20に設けられていてもよい。
【0041】
髄内釘12の近位部20は、その中に横穴26を設けるのに十分な直径を有するが、髄内釘12の遠位部22は、髄内管への遠位部22の挿入を容易にするために、大腿骨の髄腔の形状に適合した、近位部20よりも小さい直径を有する。さらに、遠位部22は、該遠位部22の長手軸に対して直角に延びる貫通穴28を有する。貫通穴28は、髄内釘12を骨にしっかりと固定するために、髄内釘12の遠位部22の端に形成されてロックスクリュなどの骨留め具を受け入れる。
【0042】
図1に示されているインプラントシステム10の実施形態では、骨留め具16は、ラグスクリュ16の形態をなす大腿骨頸部スクリュである。ラグスクリュ16は、髄内釘12の横穴26を貫通するように構成されている。ラグスクリュ16は、ねじ、例えば並目ねじを有する前方部30と、後方部32とを有する。後方部32には、ラグスクリュ16の軸に沿って後方シャフト部32の周面上に配置された、長手方向に延びる複数の溝34(
図1には2つ示されている)が設けられている。通常、4つの溝34が、ラグスクリュ16の長手軸周りに90°の間隔を空けて、ラグスクリュ16の周面上に配置される。各溝34が、浅端および深端を有する傾斜路を画定する。上昇傾斜路は、後方部32の後端の浅端からねじ付き前方部30に向かって深端まで延びている。したがって、溝34は、非対称の深さプロファイルを有する。さらに、ラグスクリュ16は、該ラグスクリュ16の長手軸に沿った中心管路36を有する。ラグスクリュ16の後方部32は、後端に、ねじ回しまたは(例えば、棒レンチの形態の)レンチを受け入れるための同軸穴38および凹部40(例えば、ヘクサロビュラ穴(hexalobular internal driving feature))を有する。
【0043】
図1に示されているように、髄内釘12の近位部20は、エンド・キャップまたは保持器具や標的器具などの用具(
図1には図示せず)を受け入れるための凹部42を、その上端に有している。近位部20は、長手軸44を画定し、さらに穴46および案内構造48を有する。本実施形態では、近位部20の穴46は、近位部20の長手軸44と同軸である。さらに
図1に示されているように、穴46は、雌ねじ50と、例示的には止め輪の形態である保持器54を受け入れるための凹部52とを有する。
【0044】
結合ユニット14は、予め組み立てられて、髄内釘12の近位部20内に移動可能に配置される。結合ユニット14は、1つの骨留め具係合部材56と、貫通穴60を有する駆動部材58とを有する。係合部材56は、髄内釘12の外側に配置され、また、略円筒形のボルトまたはピン56の例示的形態で実現される。
【0045】
内(medial)および外(lateral)という用語は、方向に関する標準的な解剖学用語であって、それぞれ、体の中心面すなわち正中面に向かう方向と、中心から側面に向かう反対の方向を意味する。本開示の全体および例示的な実施形態に関して、内方向および外方向は、一般に、近位部20の長手軸44と横穴26の長手軸とを含む平面内に位置する。そのような場合、髄内釘12の内側は、横穴26の送り出し側に面する(例えば、横穴26を貫通している骨留め具16の先端に面する)側とすることができ、一方で、外側は、横穴26の送り込み側に面する(例えば、骨留め具16の頭部に面する)側とすることができる。多くの場合、髄内釘12は、(例えば、湾曲部24によって具現化されるような)1箇所または複数箇所のその曲り、横穴26の傾きなどに関して、内側および外側を本質的に画定するように、解剖学的に適合される。
【0046】
図1に戻ると、駆動部材58は、ピン56に移動可能に接続されている。駆動部材58の貫通穴60は、近位部20の長手軸44と一致する軸を有する中心貫通穴である。駆動部材58はさらに、髄内釘12との(例えば、
図1に示されているように近位部20との)ねじ締結を可能にするための雄ねじ62を有する。近位部20の雌ねじ50は、駆動部材58の雄ねじ62と噛み合う。本実施形態では、結合ユニット14の駆動部材58は、髄内釘12の近位部20の穴46内に移動可能に配置される。さらに、結合ユニット14は、髄内釘12の近位部20内に係留される。やはり
図1に示されているように、案内構造48が結合ユニット14のピン56を摺動可能に受け入れ、その結果、ピン56はラグスクリュ16の溝34内に係合することができる。ピン56は、溝34内に係合すると、目標の固定化のためにラグスクリュ16に圧力を加えることができる。この圧力は、初めはゼロか、または髄内釘12に対するラグスクリュ16の摺動をなおも可能にするほどの十分に低い圧力である。圧力は、溝34の深さプロファイル(すなわち、外方向および内方向に設けられた傾斜路)のため、ラグスクリュ16が摺動するのにつれて変化(通常は増大)することになる。
【0047】
さらに
図1に示されているように、髄内釘12は、髄内釘12の長手軸に略沿ったチャネル64を有する。したがって、髄内釘12のチャネル64、駆動部材58の貫通穴60、および近位部20の穴46によって、髄内釘12を貫通する管路66が画定され、その結果、管路66を通じて外科手術用ワイヤ(
図1には図示せず)を挿入することができる。
【0048】
図2は、
図1に示された髄内釘12の近位部20の詳細
図Aを示す。
図2に示されているように、近位部20の穴46は第1の軸68を画定し、この第1の軸68は、本実施形態では近位部20の長手軸44と一致する。他の実施形態では、穴46の第1の軸68は、近位部20の長手軸44から離間されて長手軸44に平行に延びる場合もある。一例では、穴46の第1の軸68は、近位部20の長手軸44に対してわずかに(例えば、最大で10°または15°まで)傾けられてもよく、したがって長手軸44に対して一応略平行なままである。
【0049】
さらに、案内構造48は、第2の軸70を画定する。穴46の第1の軸68および案内構造48の第2の軸70は、髄内釘12の近位部20の長手軸44に対して略平行であり、かつ互いに離間される。さらに、案内構造48の第2の軸70は、近位部20の長手軸44に対して偏心して配向される。近位部20の穴46と案内構造48とは、互いに隣接して配置される。
図1および
図2に示されている本実施形態では、近位部20の穴46は、中心に位置し、近位部20の案内構造48は、髄内釘12の外側に位置する。したがって、案内構造48内に案内された結合ユニット14のピン56は、髄内釘12の外側に配置される。近位部20の穴46は、髄内釘12のチャネル64内のその下端で終わっている。案内構造48は、近位部20の横穴26内のその下端で終わっている。本実施形態では、「下端」という用語は、髄内釘12の遠位部22に近い方の端を意味し、「上端」という用語は下端の反対である。さらに、案内構造48は、円形状(例えば、C形)の断面を有する溝として形成されている。
【0050】
やはり
図2に示されているように、結合ユニット14のピン56は、駆動部材58上に偏心して配置されている。すなわち、偏心位置に(例えば、
図2に示されているように外側に)配置されている。さらに、案内構造48、したがってピン56は、ラグスクリュ16の長手軸に交差する長手軸を画定する。ピン56は、円筒形のシャフト(ここでは、円柱断面を有する)とその下端に球形の先端とを有するボルトとして形成される。
【0051】
駆動部材58は、該駆動部材58の運動をピン56に伝達するための駆動力伝達部72を有する。ピンは、その上端に溝74を有する。ピン56の溝74は、ピン56の長手方向を横切る方向に実質的に配置されている。駆動部材58の駆動力伝達部72は、ピン56の溝74内に移動可能に係合する。この目的のために、駆動力伝達部72は、ピン56の溝74内に回転可能に支持される。したがって、駆動部材58が回転すると、ピン56が近位部20の長手軸44の方向に移動する。
【0052】
結合ユニット14の駆動部材58は、用具、ねじ回し、レンチ、などを受け入れるための(例えば、ヘクサロビュラ穴の形態の)凹部を有する円錐の形態をなす、受入れ部76を有する。そのような用具を使用して駆動部材58を動かすことによって、駆動部材58の雄ねじ62が近位部20の穴46の雌ねじ50と噛み合うので、結合ユニット14全体が髄内釘12の近位部20の長手軸44に沿って移動する。言い換えれば、髄内釘12の近位部20内の結合ユニット14の位置とそのピン56の位置は、結合ユニット14の駆動部材54を長手軸44に沿ってねじ込むことによって調整することができる。
【0053】
図2に示されているように、近位方向における結合ユニット14の可動域(すなわち、動き)は、保持器54によって制限される。止め輪の形態をなす保持器54は、凹部52内に係合する。凹部52は、髄内釘12の近位部20内の円周溝として形成されて、結合ユニット14およびその駆動部材58ならびにピン56が意図せずに分解することを防ぐ。
【0054】
結合ユニット14が髄内釘12の遠位部22の方へ移動すると、結合ユニット14(具体的には、結合ユニット14の駆動部材58)は、ピン56を近位部20の長手軸44の方向に髄内釘12の遠位部22へ向かって付勢する。したがって、結合ユニット14のピン56は、案内構造48内でラグスクリュ16に向かって摺動する。最終位置では(
図2に示されているように)、ピン56は、ラグスクリュ16の溝34のうちの1つの溝34内に係合して、ラグスクリュ16がその長手軸周りに回転するのを防止する。
【0055】
図1および
図2に示されているように、外側に配置された偏心したピン56によって、ラグスクリュ16の溝34内での係合が可能になる。髄内釘12の管64と、駆動部材58の中心貫通穴60と、近位部20の穴46とによって形成された中央の管路66によって、ガイドワイヤの同時挿入が可能になる。
【0056】
外科的処置中、髄内釘12は、骨、例えば大腿骨の髄内管内に位置決めされて配置される。次いで、ラグスクリュ16を受け入れるために、大腿骨および大腿骨の頸部を貫いて大腿骨の頭部内へと横方向に穴があけられる。次いで、用具、例えばねじ回しを操作することによって、ラグスクリュ16は、該ラグスクリュ16の長手方向溝34のうちの1つが最上位置に位置合わせされるように髄内釘12の横穴26を通って所定の位置にねじ込まれる。次いで、髄内釘12の近位部20内に予め組み立てられた結合ユニット14の駆動部材58が、ピン56の下端がラグスクリュ16の溝34のうちの1つの溝34内に係合されるまで、下方に向かうように(すなわち、近位部20の長手軸44の方向に髄内釘12の遠位部22に向かって)ねじ回しを使用して回転される。
【0057】
結合ユニット14が完全には締結されていない(すなわち、結合ユニット14の駆動部材58が完全には締結されていない)ならば、ラグスクリュ16は、横穴26内で外方向(
図1および
図2では右へ)にのみ摺動することができるが、その長手軸周りの回転に対してはロックされる。ラグスクリュ16は、結合ユニット14によって(すなわち、結合ユニット14のピン56によって)回転に抗した状態に保持されるので、ラグスクリュ16は、単に横穴26を通って摺動して、大腿骨の頭部を引っ張って骨の残りの部分と近接係合させる。ラグスクリュ16の溝34の上昇傾斜路によって、髄内釘12内でラグスクリュ16が勝手に内側へ(
図1および
図2では左へ)摺動することが防止される。
【0058】
図3〜
図7は、代替的な結合ユニット実施形態を有する近位部の別の実施形態を示しており、この実施形態は、
図1に示されているインプラントシステム10の髄内釘12で使用するために、必要に応じて(例えば、形状、長さ、幅、厚さ、などについて)適合させることができる。
【0059】
図3は、髄内釘の近位部78の代替実施形態の断面図を示している。近位部78は、雌ねじ82を有する中心穴80を有する。近位部78はさらに、中心穴80内に、保持器54を受け入れるための溝52の形態をなす凹部52を有する。さらに、近位部78はまた、エンド・キャップまたは保持器具や標的器具などの用具(
図3には図示せず)を受け入れるための凹部42を、その上端に有する。
【0060】
図3に示されているように、案内構造48が、髄内釘の外側(
図3では右手側)に位置する穴48として形成されている。案内構造48は、近位部78の中心穴80内のその上端と、横穴26内のその下端で終わっている。この実施形態でも同様に、「下端」という用語は、髄内釘の遠位部に近い方の端を意味し、「上端」という用語は、下端の反対側である。さらに
図3に示されているように、近位部78は、案内構造48に隣接して配置された穴84を有する。近位部78の穴84もまた、中心穴80内のその上端と、髄内釘の横穴26内のその下端で終わっている。さらに、穴84は第1の軸68を画定し、また、案内構造48は第2の軸70を画定し、
図3に示されているように、第1の軸68および第2の軸70は、近位部78の長手軸44に対し略平行であり、かつ、互いに離間されている(ここでは、横断方向に互いに離間されている)。
【0061】
図4は、ピン56が配置される板86の形態をなす基板部材86を有する、代替的なピン実施形態の底面図a)、側面図b)、および上面図c)を示している。本実施形態では、ピン56は、一体形構造として板86と一体的に形成されている。ピン56は、
図1および
図2に関連して全体的に上述したように構成される。板86は、円形状を有し、かつ、外科手術用ワイヤまたはガイドワイヤを受け入れるための貫通穴88を有する。ピン56および貫通穴88は、板86上に偏心して配置されている。
【0062】
板86はさらに、保持部90を有する。保持部90は、ピン56が配置される下面とは反対側の上面上に配置されている。保持部90は、
図4の側面図b)に示されるように、板86から延び、L形の断面を有する。さらに、保持部90は、
図4の上面図c)に示されるように、板86の外周に沿って弧を形成する。この目的のために、保持部90によって形成された弧は、180°以下にわたって延びていてもよい。したがって、板86とその保持部90は、以下で説明するように、駆動部材の一部分を受け入れるための円形溝92を形成する。
【0063】
図5を参照すると、短いボルトの形態をなす駆動部材94の別の実施形態の側面図が示されている。駆動部材94は、その外周面98上に雄ねじ96を有する。駆動部材94の雄ねじ96は、円周溝97によって中断されている。円周溝97は、合成材料で作られたリング(
図5には図示せず)を受け入れることができる。駆動部材94はさらに、駆動力伝達部100を有する。駆動力伝達部100は、駆動部材94上に配置されたフランジとして形成され、駆動力伝達部100の直径は、駆動部材94のシャフト部102の直径よりもわずかに大きい。したがって、駆動部材94の駆動力伝達部100とシャフト部102とによって、円周段差104が画定される。駆動力伝達部100は、板86の保持部90と移動可能に係合することができ、このときに駆動部材94の段差104は、保持部90の円周溝92内に係合する。駆動部材94はさらに、ガイドワイヤを受け入れるための中心貫通穴106と、ねじ回し、レンチ、などのような用具を受け入れるための(例えば、ヘクサロビュラ穴または内部六角形の形態をなす)凹部108とを有する。
【0064】
図6および
図7に示されているように、駆動部材94と、ピン56を有する板86とによって結合ユニット110が形成され、駆動部材94は、上記のように板86に移動可能に接続されている。さらに、結合ユニット110、すなわち駆動部材94およびピン56を有する板86は、髄内釘の近位部78内に予め組み立てられる。髄内釘の近位部78の案内構造48は、ピン56の直径よりもわずかに大きい直径を有し、その結果、穴48内でのピン56の最適な案内および摺動がそれぞれ保証される。
図6に示されているように、結合ユニット110のピン56は、予め組み立てられた形態で案内構造48内に配置される。さらに、結合ユニット110の駆動部材94の雄ねじ96が、髄内釘の近位部78の中心穴80の雌ねじ82と噛み合い、その結果、結合ユニット110全体が、髄内釘の近位部78内に係留されかつ移動可能に配置される。したがって、結合ユニット110の高さ調整と、これにともなうピン56の高さ調整は、
図1および
図2に関連して全体的に上述したように、また以下で説明するように、駆動部材94によって行われる。結合ユニット110の意図せぬ緩みを防ぐために、結合ユニット110の駆動部材94は、
図6および
図7に示されているように、駆動部材94の円周溝97に配置された合成材料で作られたリング112を有する。さらに、結合ユニット110の意図せぬ分解、または結合ユニット110の部品(駆動部材94、およびピン56を有する板86)の意図せぬ分解を防ぐために、髄内釘の近位部78の中心穴80内の溝52として形成された凹部52の中に、保持器54が位置決めされて係合する。したがって、保持器54は、結合ユニット110の近位方向における可動域を制限するリミッタとして機能する。
【0065】
図6および
図7に示されているように、駆動部材94の駆動力伝達部100は、板86の保持部90上に係合する。板86は、髄内釘の近位部78内の中心に挿入されて、結合ユニット110のピン56が安定して回転するようにする。したがって、結合ユニット110の駆動部材94が回転すると、案内構造48内に摺動可能に受け入れられているピン56が、髄内釘の近位部78の長手軸44の方向に移動する。駆動部材94の回転は、駆動部材94の凹部108内に係合するねじ回しなどの用具によって行われる。結合ユニット110が髄内釘の近位部78の長手軸44に沿って移動すると、結合ユニット110(具体的には、結合ユニット110の駆動部材94)は、ピン56を、案内構造48を通って長手軸44の方向に髄内釘の遠位部に向かって付勢し、その結果、ピン56は、ラグスクリュの溝内に係合して、ラグスクリュがその長手軸周りに回転するのを防止する。
【0066】
さらに
図6および
図7に示されるように、髄内釘のチャネル、髄内釘の近位部78の穴84、板86の貫通穴88、駆動部材94の貫通穴106、および近位部78の中心穴80は、管路を画定する。
図7に示されるように、この管路を通じてガイドワイヤ114を挿入することができる。
【0067】
図8は、
図1および
図2に示されているインプラントシステム10の髄内釘12の近位部20の一代替実施形態の断面図を示している。髄内釘12の近位部20は、
図1および
図2に示しかつ
図1および
図2を参照して全体的に上述したように、第1の軸68を画定する穴46と、第2の軸70を画定する案内構造48とを有する。近位部20の穴46の第1の軸68および案内構造48の第2の軸70は、髄内釘12の近位部20の長手軸44に対して略平行であり、かつ互いに離間されている。
図1および
図2を参照して上述したように、案内構造48の第2の軸70は、近位部20の長手軸44に対して偏心して配向されている。髄内釘12はさらに、
図1および
図2に示しかつ
図1および
図2を参照して全体的に上述したように、駆動部材58上に偏心して配置されたピン56を有する結合ユニット14を有する。
【0068】
図8に示されているように、近位部20の穴46の第1の軸68は、近位部20の長手軸44と一致する。したがって、近位部20の穴46は、この場合、髄内釘12の近位部20の長手軸44に対して中心に位置する。
図8に示された本実施形態では、近位部20の案内構造48は、髄内釘12の内側に位置する。案内構造48は、結合ユニット14の円筒形ピン56を摺動可能に受け入れるように構成され、その結果、ピン56は、髄内釘12の横穴26を貫通するように構成された骨留め具16の溝34内に係合することができる。したがって、
図8に示されるように、結合ユニット14のピン56は、髄内釘12の内側に配置される(
図8では、髄内釘12の内側は図面の左側である)。さらに、ピン56は、ラグスクリュ16の長手軸に交差する長手軸を画定する。
【0069】
結合ユニット14が髄内釘12の遠位部22へ向かって移動すると、結合ユニット14、具体的には結合ユニット14の駆動部材58は、ピン56を、近位部20の長手軸44の方向に髄内釘12の遠位部22へ向かって付勢する。したがって、結合ユニット14のピン56は、案内構造48内でラグスクリュ16へ向かって摺動する。最終位置では(
図8に示されているように)、ピン56は、髄内釘12の内側でラグスクリュ16の溝34内に係合して、ラグスクリュ16がその長手軸周りに回転するのを防止し、かつ、近位部20の横穴26内でのラグスクリュ16の規定された摺動を実現する。
【0070】
図9は、
図1および
図2に示されているインプラントシステム10の髄内釘12の近位部20の一代替実施形態の断面図を示している。
図9に示されている髄内釘12は、
図1および
図2に示しかつ
図1および
図2を参照して全体的に上述したように、近位部20、結合ユニット14、および骨留め具16を有する。さらに、髄内釘12は、横穴26を有する。近位部20は、
図1および
図2を参照して全体的に上述したように、長手軸44を画定する。
【0071】
本実施形態では、髄内釘12の近位部20は、穴軸68を画定する穴46と、2つの案内構造48とを有し、各案内構造は、案内軸70を画定する。
図9に示されているように、穴46の穴軸68および案内軸70は、髄内釘12の近位部20の長手軸44に対して略平行であり、かつ互いに離間されている。結合ユニット14は、
図1および
図2に示しかつ
図1および
図2を参照して全体的に上述したように、髄内釘12の近位部20内に移動可能に配置されるように構成されている。結合ユニット14は、この実施形態では、略円筒形の2つのピン56と、駆動部材58とを有する。
図9に示されているように、一方の案内構造48は、髄内釘12の外側(
図9では図面の右手側)に位置し、他方の案内構造48は、髄内釘12の内側(
図9では図面の左手側)に位置する。
図9に示されているように、髄内釘の外側と内側の両方に、1つのピン56が配置される。言い換えれば、髄内釘12の外側に1つのピン56が位置し、髄内釘の内側にさらなる1つのピン56が位置している。したがって、本実施形態は、
図1、
図2、および
図8に示されている実施形態の組み合わせである。さらに、各案内構造は、略円筒形のピン56のうちの一方を摺動可能に受け入れるように構成されており、その結果、ピン56は、髄内釘12の横穴26を貫通するように構成された骨留め具16の(例えば単一の)溝34内に係合することができる。
【0072】
図9に示されているように、ピン56は、近位部206の長手軸44の方向に略沿って配置される。あるいは、ピン56は、長手軸44に対してずらされていてもよく、髄内釘12の外側および内側において1つの領域内にそれぞれ配置されていてもよい。結合ユニット14が髄内釘12の遠位部22へ向かって移動すると、結合ユニット(具体的には、結合ユニット14の駆動部材58)は、2つのピン56を、近位部20の長手軸44の方向に髄内釘12の遠位部22へ向かって付勢する。したがって、結合ユニット14のピン56は、案内構造48内でラグスクリュ16へ向かって摺動する。最終位置では(
図9に示されているように)、ピン56は、ラグスクリュ16の(例えば単一の)溝34内に係合して、ラグスクリュ16がその長手軸周りに回転するのを防止し、かつ、患者の体内での髄内釘12、結合ユニット14、および骨留め具16の構造の高い機械的負荷安定性を提供する。
【0073】
図10および
図11は、代替的な結合ユニット実施形態内の近位部の別の実施形態を示し、この実施形態は、
図1に示されるインプラントシステム10の髄内釘12で使用するために、必要に応じて(例えば、形状、長さ、幅、厚さ、などについて)構成されることができる。
【0074】
図10は、髄内釘12の代替的な近位部20の断面図を示している。髄内釘12の近位部20、駆動部材58、および骨留め具16は、
図1、
図2、
図8、および
図9に示しかつそれらの図を参照して全体的に上述したように、構成されている。髄内釘12の近位部20は、長手軸44を画定する。さらに、近位部20は、近位部20の長手軸44と同軸である穴軸68を画定している穴46を有する。すなわち、穴46は、釘12の近位部20内で近位部20の長手軸44に対して中心に配置されている。
【0075】
本実施形態でも同様に、近位部20は2つの案内構造48を有し、各案内構造48は、案内軸70を画定する。
図10に示されるように、穴軸68および案内軸70は、髄内釘12の近位部20の長手軸44に対して略平行であり、かつ互いに離間されている。
【0076】
さらに、インプラントシステムは、
図1、
図2、
図8、および
図9に示しかつそれらの図を参照して全体的に上述したように、駆動部材58を有する結合ユニット116を有する。結合ユニット116は、
図1、
図2、
図8、および
図9を参照して全体的に上述したように、略円筒形の2つのピン56を有する、代替的なピン実施形態118を備える。結合ユニット116のピン実施形態118は、
図11を参照しながら以下でより詳細に説明する。
【0077】
図10に示されているように、案内構造48は、溝として形成される。一方の案内構造48は、髄内釘12の外側(
図10では右手側)に位置し、他方の案内構造48は、髄内釘12の内側(
図10では左手側)に位置する。各案内構造48は、結合ユニット116のピン実施形態118のピン56のうちの一方を摺動可能に受け入れるように構成され、その結果、ピン56は、髄内釘12の横穴26を貫通するように構成された骨留め具16の溝34内に係合することができる。
図10に示されているように、髄内釘の外側と内側の両方に、1つのピン56が配置される。言い換えれば、髄内釘の外側に1つのピン56が位置し、髄内釘の内側に1つのピン56が位置する。
【0078】
図11は、駆動部材58と一緒に使用される代替的なピン実施形態118の底面図a)、側面図b)、および上面図c)を示す。ピン実施形態118と駆動部材58は共に、
図10の実施形態で示されているように髄内釘10の近位部20に挿入されると、結合ユニット116を形成する。ピン実施形態118は、2つのピン56が配置される板120の形態をなす基板部材120を有する。本実施形態では、各ピン56は板120と一体的に形成される。各ピン56は、
図1および
図2を参照して全体的に上述したように構成される。板120は、略円形状の2つの板片122を有する。板120の2つの板片122は、2つの湾曲した腕部124によって互いに接続され、その結果、2つの腕部124は、外科手術用ワイヤまたはガイドワイヤを受け入れるための貫通穴126を形成する。さらに、貫通穴126は、基板部材120上で中心に配置される。
図11に示されているように、各ピン56は、それぞれ、基板部材120の対応する板片122上に配置される。したがって、ピン56は、互いに対向して配置され、かつ、基板部材120から同じ方向に延びる。さらに
図11に示されているように、ピン56は、その長手方向に異なる長さを有する。ピン56の長さは、
図10に示されているインプラントシステムの髄内釘12の近位部20内で使用するために、必要に応じて構成することができる。
【0079】
図10を参照すると、ピン実施形態118は、各ピン56が近位部20の案内構造48に受け入れられるように、髄内釘12の近位部20に挿入される。本実施形態では、長さが短い方のピン56は、髄内釘12の内側(
図10では左手側)に位置する案内構造48に受け入れられる。さらに、長さが長い方のピン56は、髄内釘12の外側(
図10では右手側)に位置する案内構造48に受け入れられる。結合ユニット116の駆動部材58は、ピン実施形態118の基礎板120の上面上に係合する駆動力伝達部128を有する。したがって、
図10に示されているように、結合ユニット116は、駆動部材58と、ピン56を有する基板部材120とによって形成され、駆動部材58は、基板部材120に移動可能に接続されている。さらに、結合ユニット116、すなわち駆動部材58およびピン56を有する基板部材120は、髄内釘12の近位部20内に予め組み立てられる。髄内釘12の近位部20の案内構造48は、開放穴(例えば、C形の溝)として形成され、各ピン56の直径よりもわずかに大きい直径を有し、その結果、案内構造58内でのピン56の最適な案内および摺動がそれぞれ保証される。
【0080】
図10に示されているように、駆動部材58の駆動力伝達部128、この場合は駆動部材58の底面が、ピン実施形態118の基板部材120上に係合する。基板部材120は、髄内釘12の近位部20の中心に挿入されて、結合ユニット116のピン56が安定して回転するようにする。したがって、結合ユニット116の駆動部材58が回転すると、案内構造48に摺動可能に受け入れられたピン56が、髄内釘12の近位部20の長手軸44の方向に移動する。駆動部材58の回転は、
図1および
図2を参照して全体的に上述したように、駆動部材の凹部と係合するねじ回しなどの用具によって行われる。結合ユニット116が髄内釘12の近位部20の長手軸44に沿って移動すると、結合ユニット116(具体的には、結合ユニット116の駆動部材58)は、2つのピン56を、対応する案内構造48を通って長手軸44の方向に髄内釘12の遠位部22へ向かって付勢し、その結果、ピン56は、骨留め具16の(例えば1つの)溝内に係合する。したがって、骨留め具がその長手軸周りに回転することが防止され、また、患者の体内での、髄内釘、結合ユニット、および髄内釘12の横穴26を通って骨に挿入される骨留め具の構造の、高い機械的負荷安定性が提供される。
【0081】
さらに
図10に示されているように、髄内釘12のチャネル64、髄内釘12の近位部20の穴46、ピン実施形態118の基板部材120の貫通穴126、および駆動部材58の貫通穴60は、管路66を画定する。この管路66を通じて、外科手術用ワイヤまたはガイドワイヤ(
図10には図示せず)を挿入することができる。
【0082】
図12〜
図14は、インプラントシステムのさらに他の実施形態を示す。
図12の断面図に示されているように、髄内釘12の近位部20、駆動部材58、および骨留め具16は、
図1、
図2、
図8、
図9、および
図10に示しかつそれらの図を参照して全体的に上述したように、構成されている。したがって、髄内釘12の近位部20は、長手軸44を画定し、また、穴軸68を画定する穴46を有する。穴軸68はこの場合、近位部20の長手軸44と同軸である。すなわち、穴46は、近位部20の長手軸44に関して近位部20内の中心に配置されている。
【0083】
本実施形態でも同様に、近位部は2つの案内構造48を有し、各案内構造48は、案内軸70を画定する。穴軸68と案内軸70は、
図12に示されているように、髄内釘12の近位部20の長手軸44に対して略平行であり、かつ、互いに離間されている。
【0084】
本実施形態では、インプラントシステムは、
図12に示されている髄内釘12の近位部20内で使用するために必要に応じて(例えば、形状、長さ、幅、厚さ、などについて)構成することができる、代替的な結合ユニット実施形態を含む。代替的な結合ユニット130は、
図1、
図2、
図8、
図9、および
図10に示しかつそれらの図を参照して全体的に上述したように、駆動部材58を有する。結合ユニット130はさらに、
図1、
図2、
図8、
図9、および
図10を参照して全体的に上述したように、略円筒形の2つのピン56を有する、代替的なピン実施形態132を備える。
【0085】
結合ユニット130のピン実施形態132は、2つのピン56が配置される板134の形態をなす基板部材134を有する。本実施形態では、各ピン56は、板134と一体的に形成される。各ピン56は、
図1および
図2を参照して全体的に上述したように、構成される。板134は、円形状を有し、かつ、外科手術用ワイヤまたはガイドワイヤ(
図12には示さず)を受け入れるための貫通穴136を有する。
図12に示されているように、貫通穴136は、基板部材134の中心に配置されている。ピン56は、板134に偏心して配置されている。さらに、ピン56は、互いに対向して配置され、かつ、基板部材134から同じ方向に延びる。本実施形態では、ピン56は、長手軸44と直角に交差する円形の板134の直径の方向に沿って、基板部材134上に位置決めされている。あるいは、ピン56は、例えば円形の板134の直径によって画定される線に対して平行する形でずらされていてもよく、例えば、円形の板134の直径に対して略直角な方向にずらされていてもよい。この場合、ピン56は、円形の板134の直径に対して平行な線上に位置することになる。さらに
図12に示されているように、各ピン56は、基板部材134の外周近傍で、板134に配置されている。
【0086】
図12に示されているように、案内構造48は、髄内釘12の横穴26を貫通するように構成された骨留め具16の長手軸に対して両側に位置している。したがって、案内構造48は、近位部20に対して中心位置に(
図12に示されるように)位置するか、あるいは、髄内釘12の内側または外側に位置することができる。したがって、2つのピン56は、髄内釘12の外側および内側のうちの一方に近接して二者択一的に配置されうる。言い換えれば、ピン56は、髄内釘12の外側または内側に位置することができる。
【0087】
ピン実施形態132は、各ピン56が近位部20の案内構造48に受け入れられるように、髄内釘12の近位部20に挿入される。結合ユニット130の駆動部材58は、ピン実施形態132の板134の上面上に係合する駆動力伝達部138を有する。この場合、駆動力伝達部138は、駆動部材58の底面である。したがって、
図12に示されているように、結合ユニット130は、駆動部材58と、ピン56を有する基板部材134とによって形成され、駆動部材58は基板部材134に移動可能に接続されている。さらに、結合ユニット130、すなわち駆動部材58およびピン56を有する基板部材134は、髄内釘12の近位部20内に予め組み立てられる。
【0088】
図12に示されているように、駆動部材58の駆動力伝達部138は、ピン実施形態132の基板部材134上に係合する。基板部材134は、髄内釘12の近位部20内の中心に挿入され、すなわち近位部20の穴46内の中心に挿入されて、結合ユニット130のピン56が安定して回転するようにする。したがって、結合ユニット130の駆動部材58が回転すると、案内構造48に摺動可能に受け入れられたピン56が、髄内釘12の近位部20の長手軸44の方向に移動する。駆動部材58の回転は、
図1、
図2、
図8、
図9、および
図10を参照して全体的に上述したように、用具によって行われる。結合ユニット130が髄内釘12の近位部20の長手軸44に沿って移動すると、結合ユニット130(具体的には、結合ユニット130の駆動部材58)は、2つのピン56を、対応する案内構造48を通って長手軸44の方向に髄内釘12の遠位部へ向かって付勢し、その結果、各ピン56は、骨留め具16の専用の溝34内に係合する。したがって、
図12および
図14に示されているように、結合ユニット130の各ピン56は、骨留め具16の2つの異なる溝34内に係合する。さらに、溝34内に係合すると、ピン56は、固定化を目的としてラグスクリュ16に圧力を加えることができる。したがって、骨留め具16がその長手軸周りに回転することが防止され、また、患者の体内での髄内釘、結合ユニット、および髄内釘12の横穴26を通じて骨に挿入される骨留め具の構造の、高い機械的負荷安定性が提供される。
【0089】
上記の通り、他の実施形態では、ピン56は、
図12に示されている中心釘平面から髄内釘12の外側および内側のうちの一方へずらされる場合もある。するとピン56は、近位部20の長手軸44と横穴26の長手軸とを含む平面に対して直角に延びる線(上述の「直径」)上に位置することになるが、この線は、髄内釘12の内側方向および外側方向の一方において、その平面から離間されている。そのような場合では、2つのピン56による2つの溝34との係合を維持することができるが、場合によっては、溝34は、(例えば、その幅または数に関して)変更を必要とする可能性がある。
【0090】
さらに
図12に示されているように、髄内釘12のチャネル64、髄内釘12の近位部20の穴46、ピン実施形態132の基板部材134の貫通穴136、および駆動部材58の貫通穴60は、管路66を画定する。この管路66を通じて、外科手術用ワイヤまたはガイドワイヤ(
図12には示さず)を挿入することができる。
【0091】
上記または他のインプラントシステム実施形態のうちのいずれかを使用して骨の骨折固定をする例示的な方法では、最初にガイドワイヤ114(
図7参照)が骨の髄腔に挿入される。次いで、上記または他の実施形態のいずれかの管状髄内釘12がガイドワイヤ114上を沿って骨の髄腔に挿入される。髄内釘12は、全体的に上記で説明したように、内側、外側、近位部20または78、横穴26、および結合ユニット14、110、116または130を有する。次いで、ガイドワイヤ114が取り除かれ、骨折部を固定するために、骨留め具16が髄内釘12の横穴26を通って骨に挿入される。最後に、髄内釘12の結合ユニットが動かされて、ピン56と髄内釘12の横穴26を貫通している骨留め具16との係合をもたらし、それにより骨留め具16の回転が防止される。
【0092】
髄内釘の近位部、ならびに駆動部材およびピンを有する結合ユニットは、上述のように構成されているので、結合ユニットは、ガイドワイヤの同時挿入/通過を可能にしながらも、髄内釘内に予め組み立てるまたは予め組み込むことができる。髄内釘のチャネル、髄内釘の近位部の(1つ以上の)穴、および結合ユニットの(1つ以上の)貫通穴(これらは一緒に管路を画定する)は、予め組み立てられたユニットおよび髄内釘を完全に通してガイドワイヤを挿入することを可能にするために、略一直線に並ぶ。したがって、ガイドワイヤは、予め組み立てられた結合ユニットを有する髄内釘を例えば大腿骨の髄内管の中へ案内するために、使用することができる。したがって、結合ユニットは、手術中に組み立てる必要がない。それゆえ、外科医によって行われる必要がある手術ステップが減り、それにより、外科的処置および大腿骨の髄内管内での髄内釘の移植が、容易になりかつ簡易化される。このため、手術時間が短縮する。髄内釘には、髄内釘の近位部の中空部(穴)内に予め組み立てられる結合ユニット(ピン、およびピンに移動可能に接続された駆動部材を有する)が備えられているので、髄内釘の移植に関わる時間、および外科医が扱わなければならない部品の数が少なくなる。
【0093】
本明細書で説明した1つもしくは複数の案内構造および/または1つもしくは複数のピン(すなわち、1つ以上の係合部材)は、髄内釘の外側または内側に実質的に位置するが、髄内釘の近位部の1つ以上の案内構造、および結合ユニットの1つ以上のピンは、必要に応じて様々な用途に適合させることができる。したがって、髄内釘の近位部の案内構造、および結合ユニットの1つ以上のピンは、例えば、髄内釘の外側または内側の一領域内に位置していてもよい。さらに、より多くの、例えば2つ以上のピンが、髄内釘の外側および内側のうちの一方または両方に位置していてもよい。
【0094】
上述のインプラントシステムの全ての部品は、現在の工作機械を用いて容易かつ廉価に製造することができるものである。さらに、ピンは骨留め具の溝内に係合することができるので、現在の骨留め具を変更または交換することは、少しも必要とされない。ガイドワイヤは、髄内釘が曲がることによって、髄内釘内で偏心位置に(例えば、内側に)それるので、結合ユニットのピンと特に髄内釘の近位部の穴とを偏心配置すると、髄内釘内のガイドワイヤの囲い込みが促進される。
【0095】
髄内釘の棒状本体は、図面に示された実施形態では、遠位部および湾曲部を有するが、釘本体は、骨を固定するためおよび例えば大腿骨の髄内管へ挿入するための整形外科手術で使用するために、必要に応じて(例えば、形状、長さ、幅、厚さ、などについて)構成することができる。したがって、髄内釘は、様々な用途に適合させることができ、したがって、様々な形状を有することができる。さらに、本明細書に示したようなねじは1条ねじであるが、これらは多条ねじ(例えば、2条ねじ)とすることもできる。
【0096】
本明細書で説明したような骨留め具はラグスクリュとして形成されているが、骨留め具は、任意のタイプのもの、例えば大腿骨頸部スクリュや任意の種のブレードとすることができ、また、必要に応じて様々な用途に適合させることができる。したがって、骨留め具は、様々な直径、長さ、形状、またはねじを有し得る。さらに、上述の骨留め具およびインプラント一般に、ステンレス鋼、チタン、または任意の他の生体適合性材料で作ることができる。
【0097】
上記の実施形態は、骨スクリュおよび髄内釘に関連して例示的に説明されてきたが、本明細書に提示された技法が、他のタイプの(棒様またはピン様のシャフトを有する骨ペグ、キルシュナー鋼線などのワイヤ様の骨留め具、などのような)骨留め具、および他のタイプの(骨プレート、骨延長器、などのような)インプラントと組み合わせて実施することもできることは、容易に理解されよう。したがって、本開示は、いかなるタイプの骨留め具にも、またはいかなるタイプのインプラントにも、限定されるものではない。
【0098】
添付の図面と併せて上記の説明で述べた特徴は、容易に組み合わせることができ、その結果、様々な実施形態がもたらされる。したがって、上述の開示がいろいろな形で変更可能であることが、理解されよう。そのような変形形態は、本発明の範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、あらゆる修正形態が以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。