特許第5932846号(P5932846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ HOYA株式会社の特許一覧

特許5932846ガラス塊の製造方法、及びガラス塊の成形装置、並びにプレス成形用素材、ガラス成形品、球プリフォーム、及び光学素子の製造方法
<>
  • 特許5932846-ガラス塊の製造方法、及びガラス塊の成形装置、並びにプレス成形用素材、ガラス成形品、球プリフォーム、及び光学素子の製造方法 図000004
  • 特許5932846-ガラス塊の製造方法、及びガラス塊の成形装置、並びにプレス成形用素材、ガラス成形品、球プリフォーム、及び光学素子の製造方法 図000005
  • 特許5932846-ガラス塊の製造方法、及びガラス塊の成形装置、並びにプレス成形用素材、ガラス成形品、球プリフォーム、及び光学素子の製造方法 図000006
  • 特許5932846-ガラス塊の製造方法、及びガラス塊の成形装置、並びにプレス成形用素材、ガラス成形品、球プリフォーム、及び光学素子の製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932846
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】ガラス塊の製造方法、及びガラス塊の成形装置、並びにプレス成形用素材、ガラス成形品、球プリフォーム、及び光学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 11/02 20060101AFI20160526BHJP
   C03B 11/16 20060101ALI20160526BHJP
   C03B 11/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   C03B11/02
   C03B11/16
   C03B11/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-555314(P2013-555314)
(86)(22)【出願日】2013年1月24日
(86)【国際出願番号】JP2013051510
(87)【国際公開番号】WO2013111838
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-12496(P2012-12496)
(32)【優先日】2012年1月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 義規
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−300020(JP,A)
【文献】 特開平07−309630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 11/00−11/16
C03B 7/00− 7/22
C03B 19/00−19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形面に複数のガス噴出孔を有する複数の成形部と、前記複数の成形部の各々が周方向に沿って等間隔に設けられたターンテーブルと、前記複数の成形部の各々に熔融ガラス塊を供給する熔融ガラス供給部とを有し、前記ターンテーブルの回転軸を中心に前記ターンテーブルを回転させることにより、前記熔融ガラス供給部の下方に、前記複数の成形部の各々を順次移動させ、一定重量の前記熔融ガラス塊を供給し、冷却してガラス塊を製造するガラス塊の成形装置において、
前記熔融ガラス塊が滴下されたことを検知するセンサと、
前記ターンテーブルの回転駆動を制御する回転駆動制御部と、を備え、
前記回転駆動制御部は、
前記熔融ガラス塊が滴下されるタイミングに応じた前記センサからの検知信号と、予め設定された前記ターンテーブルの駆動のための条件とに基づき、前記ターンテーブルの駆動設定のための目標値を演算するシーケンサと、
演算された前記目標値に基づき、前記ターンテーブルの駆動のための信号を発生させる駆動回路と、
前記駆動回路からの前記信号に基づき、加減速しながら連続的に回転するように、前記ターンテーブルを駆動する回転駆動機構と、を含む、ガラス塊の成形装置。
【請求項2】
前記回転駆動制御部は、加減速しながら連続的に回転するように前記ターンテーブルの回転駆動を制御し、かつ、前記成形部が前記熔融ガラス供給部の下方にあるときに、前記ターンテーブルの回転速度が最も速い速度よりも遅い速度となるように、前記ターンテーブルの回転駆動を制御する請求項1に記載のガラス塊の成形装置。
【請求項3】
前記回転駆動制御部は、加減速しながら連続的に回転するように前記ターンテーブルの回転駆動を制御し、かつ、前記成形部が前記熔融ガラス供給部の下方にあるときに、前記ターンテーブルの回転速度が最も遅くなるように、前記ターンテーブルの回転駆動を制御する請求項1に記載のガラス塊の成形装置。
【請求項4】
前記成形部は、前記ガス噴出孔から浮上ガスを噴出することにより前記熔融ガラス塊を浮上又は略浮上させた状態で受ける凹陥状に形成され、前記成形部の開口外縁近傍には、前記成形部の中心に向かって斜め下方に傾斜する斜面が形成された請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガラス塊の成形装置。
【請求項5】
前記ターンテーブルの半径を100mm〜200mmとし、前記ターンテーブルに設ける前記成形部の数を36〜180とした請求項1から請求項4のいずれか項に記載のガラス塊の成形装置。
【請求項6】
隣接する二つの前記成形部の中心間距離を2.0mm〜7.9mmとした請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のガラス塊の成形装置。
【請求項7】
前記成形部の直径を0.3mm〜4.5mmとした請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のガラス塊の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熔融ガラスから一定重量のガラス塊を製造するガラス塊の製造方法、及びガラス塊の成形装置、並びにこれらによって製造されたガラス塊を利用するプレス成形用素材、ガラス成形品、球プリフォーム、及び光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズなどのガラス光学素子を製造する方法として、熔融ガラスから被成形素材としてのガラスプリフォームを成形し、このガラスプリフォームを加熱、軟化させて成形型でプレス成形することにより、成形型の成形面形状を転写して、所定形状のガラス光学素子を高精度に製造することができる精密プレス成形法が知られている。
【0003】
また、このような精密プレス成形法に用いるガラスプリフォームを成形するにあたっては、一定重量の熔融ガラス塊を成形型で受けて、これを成形型内で浮上又は略浮上させた状態で成形してガラスプリフォームとする方法が知られている(例えば、特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−326823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献(特開2002−326823号公報)は、本出願人によるものであり、間欠周回動をするガラス塊成形部において熔融ガラス塊を成形、冷却して、プレス成形用素材(ガラスプリフォーム)として好適なガラス塊を製造するにあたり、ガラス塊成形部が間欠周回動する時間と距離を規定することで、外観不良のないガラス塊を生産性良く製造できるようにしている。
【0006】
しかしながら、近年における生産性の改善に対する要求は益々厳しくなってきており、生産性のさらなる向上が求められている。
【0007】
そこで、本発明者は、上記したような方法を根本から見直して鋭意検討したところ、未だ改善の余地があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、より一層の生産性の向上を図り、成形精度を損なうことなく一定の時間内により多くのガラス塊を製造することができるガラス塊の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るガラス塊の製造方法は、成形面に複数のガス噴出孔を有する複数の成形部が周方向に沿って等間隔に設けられたターンテーブルの回転駆動に伴って、熔融ガラス供給部の下方に移動してきた成形部のそれぞれに、順次、一定重量の熔融ガラス塊を供給し、冷却してガラス塊を製造するにあたり、熔融ガラス供給部から前記熔融ガラス塊を一定重量ずつ滴下するとともに、熔融ガラス塊が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、又は一定の速度で連続的に回転するように、ターンテーブルの回転駆動を制御する。
【0010】
また、本発明に係るガラス塊の成形装置は、成形面に複数のガス噴出孔を有する複数の成形部と、成形部が周方向に沿って等間隔に設けられたターンテーブルと、回転軸を中心にターンテーブルを回転させる回転駆動機構とを有し、成形部に熔融ガラス塊を供給する熔融ガラス供給部の下方に、成形部を順次移動させ、一定重量の熔融ガラス塊を供給し、冷却してガラス塊を製造するガラス塊の成形装置において、熔融ガラス塊が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、又は一定の速度で連続的に回転するように、ターンテーブルの回転駆動を制御する回転駆動制御部を備える。
【0011】
また、本発明に係るプレス成形用素材の製造方法は、本発明に係るガラス塊の製造方法によりガラス塊を製造し、ガラス塊をバレル研磨加工する。
【0012】
また、本発明に係るガラス成形品の製造方法は、本発明の実施の形態に係るガラス塊の製造方法によりガラス塊を製造し、プレス成形用素材を加熱・軟化し、プレス成形してガラス成形品を得る。
【0013】
また、本発明に係る球プリフォームの製造方法は、本発明の実施の形態に係るガラス塊の製造方法によりガラス塊を製造し、ガラス塊に冷間加工を施して球プリフォームを得る。
また、本発明に係る光学素子の製造方法は、本発明の実施の形態に係る球プリフォームの製造方法により球プリフォームを製造し、球プリフォームを加熱・軟化し、精密プレス成形して光学素子を得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、成形精度を損なうことなく一定の時間内により多くのガラス塊を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るガラス塊の成形装置の概略を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るガラス塊の成形装置の概略を示す正面図である。
図3図1のC−C断面図である。
図4】レーザーセンサーから発せられた検知信号と、モータドライバから発せられたパルス信号と、ターンテーブルの回転速度との関係の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[ガラス塊の成形装置]
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るガラス塊の製造方法を適用して、精密プレス成形用素材をガラス塊として製造するのに好適な本発明の実施形態に係るガラス塊の成形装置の概略を示す平面図である。図2は、本発明の実施形態に係るガラス塊の成形装置の概略を示す正面図である。また、図3は、図1のC−C断面図である。
【0018】
なお、以下の説明において、「ガラス塊」には、精密プレス成形用のガラスプリフォームのほか、リヒートプレスや研磨加工に供するガラス素材としてのガラス素球、ガラスゴブなども含むものとし、「ガラス塊」をこれらのものに読み替えたものが、これらを成形対象とする場合の実施形態に相当する。
【0019】
図1などに示すガラス塊の成形装置100は、熔融ガラス供給部102から供給された熔融ガラス塊200を受け取って所定のガラス塊に成形する複数(図1に示す例では36個)の成形部104と、これらの成形部104が周方向に沿って等間隔に設けられたターンテーブル106と、ターンテーブル106の回転駆動を制御する駆動制御部108と、成形部104の移動経路上に設置された加熱炉112a,112bと、成形されたガラス塊を成形部104から取り出すための取出手段114と、成形部104から取り出されたガラス塊を回収する回収装置116と、を備えている。
【0020】
熔融ガラス供給部102は、図示しないガラス熔融炉で熔融され、清澄、均質化された熔融ガラス200aを、流出ノズル102aの下端から一定の間隔で一定重量ずつ滴下する。これにより、ターンテーブル106の回転駆動に伴って、熔融ガラス供給部102の下方に位置するように設定されたキャスト位置Aに移動してきた成形部104のそれぞれに、順次、一定重量の熔融ガラス塊200が供給されるようになっている(図2及び3参照)。
【0021】
成形部104に滴下、供給する熔融ガラス塊200の重量は、成形対象とするガラス塊の大きさにもよるが、1.0〜200mgとするが好ましく、より好ましくは5.0〜100mg、特に好ましくは10〜45mgである。
【0022】
また、熔融ガラス塊200が滴下されてから、次に熔融ガラス塊200が滴下されるまでの時間は、30〜200ミリ秒とするのが好ましく、より好ましくは50〜180ミリ秒、特に好ましくは70〜160ミリ秒である。
【0023】
熔融ガラス供給部102の流出ノズル102aには、図示しない温度制御装置が取り付けられている。この温度制御装置によって熔融ガラス200aの温度を制御することで、流出ノズル102aから熔融ガラス塊200を所望のタイミング(一定の間隔)で一定重量ずつ滴下することができる。そのため、成形部104がキャスト位置Aに移動してきたタイミングで、熔融ガラス塊200が一定重量ずつ成形部104に滴下することができる。
【0024】
また、このときの熔融ガラス200aの粘度は、2.0〜50dPa・sであるのが好ましく、より好ましくは3.0〜40dPa・s、特に好ましくは3.5〜30dPa・sである。
【0025】
また、熔融ガラス供給部102の下方に設定されたキャスト位置Aには、熔融ガラス塊200が滴下されるタイミングを検知するレーザーセンサー103が設けられている。レーザーセンサー103から発せられた検知信号は、複数の成形部104が設けられたターンテーブル106の回転駆動を制御する駆動制御部108に入力される。
【0026】
本実施形態において、ターンテーブル106の回転駆動を制御する回転駆動制御部108は、回転軸を中心にターンテーブル106を回転させる回転駆動機構としてのステッピングモータと、シーケンサと、モータドライバを含む駆動回路とを備え、オープンループ制御によってターンテーブル106の回転駆動を制御する。ターンテーブル106は、回転駆動制御部108によって、熔融ガラス塊200が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、又は一定の速度で連続的に回転するように、その回転駆動が制御される。
【0027】
なお、ターンテーブル106には、回転駆動機構に接続されてターンテーブル106を回転させるための回転軸が設けられているが、図2では、ターンテーブル106の回転軸と回転駆動機構とを回転駆動制御部108に含めて、これらの図示を簡略化している。
【0028】
ターンテーブル106は、慣性モーメントが小さくなるように設計するのが好ましい。具体的には、ターンテーブル106の材料として軽量性に優れるアルミニウム合金などの軽量金属を採用して軽量化を図るとともに、ターンテーブル106を直径200〜400mmとするのが好ましい。
【0029】
また、ターンテーブル106の軽量化を図る上で、ターンテーブル106の厚みは、要求される強度などを考慮して10〜30mmとするのが好ましく、15〜25mmとするのがより好ましい。
【0030】
成形部104は、ターンテーブル106の周縁側に、周方向に沿って等間隔に設けられた凹陥状の部位として形成される(図3参照)。このような成形部104の大きさは、成形対象とするガラス塊の大きさに応じて適宜設計することができる。
【0031】
本実施形態では、熔融ガラス供給部102から滴下することによって、ガラス塊の原料となる熔融ガラス塊200を成形部104に供給することから、成形できるガラス塊の大きさは、熔融ガラス塊200の滴下量に応じたものとなる。このため、熔融ガラス供給部102から滴下可能な熔融ガラス塊200の重量を考慮すると、成形対象とするのに好適なガラス塊の直径は、0.5〜4.0mmである。このような大きさのガラス塊を成形するのに適するように、成形部104の直径は、0.3〜4.5mmとするのが好ましく、0.5〜4.0mmとするのがより好ましい。
【0032】
また、一定の時間内により多くのガラス塊が成形できるようにするには、できるだけ多くの成形部104を設けることが望まれ、その数は、36〜180とするのが好ましい。
【0033】
このためには、隣接する二つの成形部104の中心間距離を2.0〜7.9mmとして、ターンテーブル106の周方向に沿って成形部104が密接して設けられるようにするのが好ましく、熔融ガラス塊200を滴下して成形部104に供給するようにしたことによって、このような成形部104の密接した配置が可能となる。
【0034】
すなわち、前述した特許文献(特開2002−326823号公報)における従来技術では、降下切断法と呼ばれる方法により熔融ガラス塊を分離して成形部(ガラス塊成形部)に供給しており、成形部をターンテーブルに対して上昇、下降させるための機構が必要となるため、成形部の間隔を狭めて密接した配置とするには限界があった。これに対して、本実施形態では、成形部104をターンテーブル106に対して上昇、下降させる必要はなく、ターンテーブル106の周縁側に凹陥状の部位として成形部104を設けているので、成形部104の密接した配置が可能となる。
【0035】
また、成形部104には、ターンテーブル106内に配設された図示しない配管を通して、成形部104に供給された熔融ガラス塊200を浮上又は略浮上させるための浮上ガスが供給される。このような浮上ガスとしては、例えば、空気、窒素などの不活性ガス、又はこれらの混合ガスが用いられる。成形部104の成形面104bに開口する複数のガス噴出口104aから浮上ガスを噴出させることで、成形面104b上の熔融ガラス塊を浮上又は略浮上された状態とすることができる。成形部104は、ガス噴出孔104aから浮上ガスを噴出することにより、熔融ガラス塊200を浮上又は略浮上させた状態で受け取り、これにより、成形部104に供給された熔融ガラス塊200は、成形部104が所定の経路を移動する間に、浮上又は略浮上した状態を保ちながら、所定の表面曲率を有するガラス塊に成形される。なお、成形部104に供給された熔融ガラス塊200が、「浮上した状態を保つ」とは、ガス噴出孔104aから噴出する浮上ガスにより成形部104上に供給された熔融ガラス塊200が浮上しており、熔融ガラス200と成形部104とが接触しない状態を言う。また、成形部104に供給された熔融ガラス塊200が、「略浮上した状態を保つ」とは、ガス噴出孔104aから噴出する浮上ガスにより成形部104上に供給された熔融ガラス塊200が浮上している状態において、熔融ガラス塊200が成形部104と瞬間的接触をする、または瞬間的接触を繰り返すことを言う。ここで、熔融ガラス塊200は、成形部104と接触した瞬間、接触部分の表面近傍が成形部104によって冷却される。しかし、接触時間が極僅かであれば、冷却された熔融ガラス塊200の表面部は、熔融ガラス内部の熱によって温められて粘度が低下して自由表面となるため、シワ等の成形不良が残存しない。すなわち、熔融ガラス塊200は、成形部104との接触時間が極僅か(一瞬)であれば、接触による影響が解消されて、正確な形状のガラス塊に成形される。本明細においては、このように接触による影響が解消される範囲を「瞬間的接触」と言う。
【0036】
また、ターンテーブル106に設けられた複数の成形部104は、ターンテーブル106の回転に伴って同一円周上を周回する。このとき、各成形部104は、キャスト位置Aで熔融ガラス塊200を受け取り、図1及び図3中矢印で示す方向に移動するが、その移動経路上には、加熱炉112a,112bが設置されている(図1参照)。なお、図1では、加熱炉112a,112bの図示を省略している。
【0037】
加熱炉112aは、キャスト位置Aで熔融ガラス塊200を受け取った成形部104が、成形されたガラス塊を取り出す取出位置Bに至るまでの移動経路上に設置されている。加熱炉112aによる加熱温度は、成形部104の成形面104b上で成形されるガラス塊が、取出位置Bに至るまでに、そのガラス転移点Tg以下に徐冷されるように、例えば、室温より高い温度〜500℃に設定することができる。加熱を必要としない場合には、加熱炉112aは省略することもできる。
【0038】
一方、加熱炉112bは、取出位置Bでガラス塊が取り出された成形部104が、キャスト位置Aに至るまでの移動経路上に設置されている。加熱炉112bによる加熱温度は、例えば、室温より高い温度〜600℃に設定することができ、これによって、ガラス塊が取り出されて熱源を失った成形部104を加熱、保温して、成形部104の著しい温度低下を有効に回避する。加熱を必要としない場合には、加熱炉112bは省略することもできる。
【0039】
また、取出位置Bには、取出手段114と回収装置116が設置されており、ここでガラス転移点Tg以下になったガラス塊が成形部104から取り出される。具体的には、取出手段114は、成形部104上のガラス塊と成形部104との間の下方空間に向けてガスを噴き出すようにし、取出手段114から吹き出されたガスにより成形部104上のガラス塊を吹き飛ばして、吹き飛ばされたガラス塊を扇状の受け部を有する回収装置116で回収することで、成形されたガラス塊を成形部104から取り出すようにしている。このとき、取出手段114から吹き出させるガスとしては、例えば、前述したような空気、窒素などの不活性ガス、又はこれらの混合ガスが用いられる。なお、図2では、取出手段114と回収装置116の図示を省略している。
【0040】
また、特に図示しないが、上記したガラス塊の成形装置100は、キャスターなどの移動手段を備えた架台にXYZ軸ステージを介して取り付けて、熔融ガラス供給部102に対する位置を三軸方向に調整可能とするとともに、装置全体を移動可能とするのが好ましい。
【0041】
通常、ガラス塊の原料となる熔融ガラスの硝種を変更する際には、熔融ガラス供給部102の硝種替えが必要となり、そのためのコストが発生するだけでなく、硝種替えの作業が終了するまでの間、ガラス塊の製造が中断されてしまう。これに対して、硝種ごとに熔融ガラス供給部102を別々に用意し、それぞれの熔融ガラス供給部102の間をガラス塊の成形装置100が移動できるようにしておけば、硝種替えを行わずとも、熔融ガラスの硝種を適宜変更することが可能となり、多品種のガラス塊を生産性よく製造することができる。
[ガラス塊の製造方法]
【0042】
次に、本実施形態に係るガラス塊の製造方法について、以上のようなガラス塊の成形装置100を使用してガラス塊を製造する例を挙げて説明する。
【0043】
前述したように、本実施形態にあっては、複数の成形部104が設けられたターンテーブル106の回転駆動を制御する回転駆動制御部108は、回転駆動機構としてのステッピングモータと、シーケンサと、モータドライバを含む駆動回路とを備え、オープンループ制御によってターンテーブル106の回転駆動を制御する。
【0044】
具体的には、キャスト位置Aに設けられたレーザーセンサー103が、熔融ガラス塊200が滴下されたことを検知すると、その検知信号が駆動制御部108に入力される。レーザーセンサー103からの検知信号が入力された回転駆動制御部108は、予め設定された条件にしたがってシーケンサが目標値を演算し、その演算結果に基づいて、モータドライバが所定の間隔で所定数のパルス信号を発生させてステッピングモータを駆動させる。これにより、熔融ガラス塊200が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、又は一定の速度で連続的に回転するように、ターンテーブル106の回転駆動を制御する。
【0045】
なお、熔融ガラス供給部102から滴下した熔融ガラス塊200を、成形部104が、より確実に受け取ることができるようにするには、熔融ガラス塊200が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、ターンテーブル106の回転駆動を制御するのが好ましい。
【0046】
ここで、図4は、レーザーセンサー103から発せられた検知信号と、モータドライバから発せられたパルス信号と、ターンテーブル106の回転速度との関係について、その一例を示すタイムチャートである。
【0047】
図4(a)は、レーザーセンサー103が検知信号を発するタイミングを示している。また、図4(b)は、モータドライバから発生されたパルス信号の発生状況を示し、図4(c)は、ターンテーブル106の回転速度の変化を示している。図4(a)において、t1〜t4は、熔融ガラス塊200がレーザーセンサー103に検知されるタイミングを示している。また、図4(a)におけるTは、t1〜t2と、t2〜t3と、t3〜t4のそれぞれにおいて熔融ガラス塊200が一定の間隔で滴下することを示している。また、図4(b)及び図4(c)に示されるt12、t23、t34、t45のそれぞれは、パルス信号の発生が終了するとほぼ同時にターンテーブル106の回転速度(成形部104の移動速度)が減速し始めることを示している。
【0048】
図4に示す例では、まず、熔融ガラス供給部102から熔融ガラス塊200が滴下されると、滴下された熔融ガラス塊200がレーザーセンサー103に検知される。そして、レーザーセンサー103に検知されたタイミングと同時(又は検知されたタイミングから少し遅れて)にモータドライバがパルス信号を発生する。これによりターンテーブル106は回転速度を速め(図4(c)における(I)参照)、その後、一定の速度(このときの回転速度をVmaxとする。図4(c)における(II)参照)で回転するように、ターンテーブル106の回転駆動を制御している。その後、モータドライバからのパルス信号の発生が終了すると(図4(b)におけるt12、t23、t34、t45)、ターンテーブル106は回転速度が遅くなる(図4(c)における(III)参照)。なお、図4(c)における(III)において、熔融ガラス塊200が供給される空の成形部104がキャスト位置Aに近づく程、ターンテーブル106の回転速度が遅くなるが、ターンテーブル106が停止することはない(Vmin>0)。
【0049】
すなわち、レーザーセンサー103から検知信号が出力されてから、駆動制御部108での演算処理と、それに基づくパルス信号が発生されるまでに要する時間は数ミリ秒程度であり、タイムラグはほとんどないのに対して、ターンテーブル106の慣性モーメントや、ステッピングモータ自身の慣性モーメントにより、パルス信号の発生から少し遅れてターンテーブル106の回転速度が変化する。回転駆動制御部108では、タイムラグを考慮して目標値の演算がなされるようにして、熔融ガラス塊200が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、ターンテーブル106の回転駆動を制御している。なお、図4においては、説明の便宜上、レーザーセンサー103が熔融ガラス200を検知したと同時に、ターンテーブル106の回転速度が速くなるように描いている。実際には、レーザーセンサー103が熔融ガラス塊200を検知してから熔融ガラス塊200が成形部104に到達するまでの時間を考慮し、熔融ガラス塊200が滴下されるタイミングに応じて成形部104の位置とターンテーブル106の回転速度を制御している。
【0050】
このようにすることで、本実施形態では、ターンテーブル106に設けられた成形部104をキャスト位置Aで停止させることなく、キャスト位置Aに次々に移動してくる成形部104のそれぞれに、順次、一定重量の熔融ガラス塊200が供給されるようにしている。これにより、成形部104の移動速度が速められ、一定時間内により多くのガラス塊を製造することが可能になる。
【0051】
成形部104に熔融ガラス塊200を滴下、供給するにあたっては、図3に示すように、ガス噴出孔104aから浮上ガスを噴出することにより熔融ガラス塊200を浮上又は略浮上させた状態で受ける凹陥状に形成された成形部104を囲むようにして、この成形部104の開口外縁近傍に、成形部104の中心に向かって斜め下方に傾斜する斜面109を形成しておくのが好ましい。そして、熔融ガラス塊200が、斜面109上に滴下され、この斜面109に案内されて成形部104の中心に移動してくるようにするのが好ましい。このとき、熔融ガラス供給部102から滴下された熔融ガラス塊200は、斜面109に接触した(ここで熔融ガラス塊200の落下速度を吸収している)後に、斜面109を滑り落ちるように案内されて成形部104に収容されるようにするのが特に好ましい。
【0052】
より具体的には、図3に示す例にあっては、ターンテーブル106に設けられた複数の成形部104のそれぞれに対応する位置に貫通孔108が形成された板状部材107を、ターンテーブル106の上面側に配置している。そして、板状部材107に形成された貫通孔108は、図示するような逆円錐台形状とされ、貫通孔108の中心に向かって斜め下方に傾斜する傾斜面を有しており、この傾斜面が、斜面109となるようにしている。
【0053】
なお、図3に示す例において、板状部材107に設けた貫通孔108の内周端縁は、成形部104の開口外周縁よりも径方向外側(図3における左右方向)に位置しているが、斜面109上に滴下された熔融ガラス塊200が、斜面109に案内されて成形部104上または成形部104の中心に移動できるようになっていれば、貫通孔108の内周端縁は、成形部104の径方向内側に位置してもよい。
【0054】
また、斜面109は、熔融ガラス塊200を成形部104の中心に移動するように案内できる形状であればよく、図示するような平坦面とするほかに、凸状又は凹状の曲面としてもよく、成形部104の中心に向かって全体が傾斜した波状の曲面としてもよい。
【0055】
また、板状部材107を省略してもよい。この場合、熔融ガラス塊200を成形部104の開口外縁近傍に滴下するようにし、成形部104の開口外縁近傍を曲面や傾斜面としておくことで熔融ガラス塊200を成形部104の中心に移動させるようにすることもできる。
【0056】
このようにして成形部104の中心に移動してきた熔融ガラス塊200は、粘度の低い状態で、成形面104bに開口する複数のガス噴出孔104aから噴出する浮上ガスにより浮上又は略浮上した状態で保持されて、その表面張力の作用により球体に成形することができる。
【0057】
また、図4に示すようにターンテーブル106の回転駆動を制御する場合、レーザーセンサー103が検知信号を発した瞬間において、ターンテーブル106の回転速度が最も遅くなる。
【0058】
このとき、先行する成形部104(104f)の開口外縁近傍に設けられたターンテーブル106の回転方向の前方に位置する斜面109(109f)が、熔融ガラス供給部102の直下(より好ましくは、熔融ガラス供給部102の流出ノズル102aの中心軸上、以下同じ)に位置したときに、ターンテーブル106の回転速度が図4(c)に示されるように最も遅くなるようにするのが好ましい。そして、成形部104(104f)の移動速度が最も遅くなったときに、斜面109(109f)上に熔融ガラス塊200が滴下されるようするのが好ましい。また、斜面109(109f)が熔融ガラス供給部102の流出ノズル102aの直下に位置したときに、ターンテーブル106の回転速度はVmaxよりも遅ければよく、成形部104(104f)の移動速度がVmaxよりも遅くなったときに、斜面109(109f)上に熔融ガラス塊200が滴下されても良い。
【0059】
次いで、レーザーセンサー103から出力される検知信号に基づいて駆動制御部108からパルス信号が発せられることによりターンテーブル106の回転速度が速まる。ターンテーブル106が一定の速度(最も速い速度=Vmax)に達した後に、ターンテーブル106の回転速度が制御されているため、再び遅くなり始める。そのため、次にキャスト位置Aに移動してくる次段に設けられた空の成形部104(104r)の移動速度もターンテーブル106の回転速度の低下に伴い、遅くなる。そして、ターンテーブル106の回転速度が最も遅くなったとき、つまり、成形部104(104r)の移動速度が最も遅くなったときに、板状部材107の貫通孔108の開口外縁近傍に設けられたターンテーブル106の回転方向の前方に位置する傾斜面109(109r)上に熔融ガラス塊200が滴下されるようにし、このような動作が繰り返されるようにターンテーブル106の回転駆動を制御するのが好ましい。
【0060】
さらに、このような態様とする場合、ターンテーブル106の回転速度(成形部104の移動速度)が最も遅くなったときに、ターンテーブル106の回転方向の前方に位置する上記斜面109のターンテーブル106の回転方向に沿った経路上の中間位置が、熔融ガラス供給部102の直下に位置するのが好ましい。
【0061】
また、この他の態様として、ターンテーブル106の回転速度が遅くなっていく途中で、成形部104の開口外縁近傍に設けられたターンテーブル106の回転方向の前方に位置する傾斜面109に熔融ガラス塊200が滴下されるようにすることもできる。このような態様とする場合、成形部104の中心が、熔融ガラス供給部102の直下に位置したときに、ターンテーブル106の回転速度が最も遅くなるようにするのが好ましい。
【0062】
この場合、熔融ガラス塊200を受け取った先行する成形部104(104f)がキャスト位置Aを通過すると(熔融ガラス塊200がレーザーセンサーに検知されると)、ターンテーブル106の回転速度が速まり、一定の速度(最も速い速度=Vmax)に達した後に、ターンテーブル106の回転速度が制御されているため、再び遅くなり始める。そのため、次にキャスト位置Aに移動してくる次段に設けられた空の成形部104(104r)の移動速度もターンテーブル106の回転速度の減速に伴い、遅くなる。そして、板状部材107の開口外縁近傍に設けられたターンテーブル106の回転方向の前方に位置する傾斜面109(109r)に熔融ガラス塊200が滴下され、成形部104(104r)が減速しながらさらに移動して、成形部104(104r)の中心が、熔融ガラス供給部102の直下に位置したときにターンテーブル106の回転速度が最も遅くなり、その後、再びターンテーブル106の回転速度が速くなっていくようにし、このような動作が繰り返されるようにターンテーブル106の回転駆動を制御するのが好ましい。
【0063】
ターンテーブル106の回転速度V、すなわち、成形部104の移動速度Vは、熔融ガラス供給部102の流出ノズル102aから熔融ガラス塊200が滴下され、次に熔融ガラス塊200が滴下されるまでに要する時間や、ターンテーブル106に設けられた成形部104の設置間隔、成形するガラス塊の重量や大きさなどを考慮して、熔融ガラス供給部102の流出ノズル102aから滴下、供給された熔融ガラス塊200を成形部104が確実に受け取ることができ、かつ、成形部104に供給した熔融ガラス塊200がターンテーブル106の遠心力によって成形部104から飛び出さない範囲で、できるだけ速くなるように設定することができる。具体的には、成形部104の移動速度Vが、0mm/秒<V≦150mm/秒となるようにするのが好ましく、より好ましくは30mm/秒≦V≦130mm/秒であり、特に好ましくは50mm/秒≦V≦120mm/秒である。
【0064】
回転駆動機構としてステッピングモータを用いたオープンループ制御を採用することで、その駆動状態の測定を不要とし、演算処理に要する時間を大幅に短縮することができる。これにより、ターンテーブル106の回転速度V、すなわち、成形部104の移動速度Vをより速くすることが可能となり、さらなる生産性の向上を図ることができる。
【0065】
また、オープンループ制御によってターンテーブル106の回転駆動を制御するにあたっては、前述したように、慣性モーメントが小さくなるようにターンテーブル106を設計することが好ましい。
【0066】
このようにして、その回転駆動が制御されたターンテーブル106に設けられた複数の成形部104は、熔融ガラス供給部102の下方に位置するように設定されたキャスト位置Aで熔融ガラス塊200を受け取り、熔融ガラス塊200を成形面104b上に浮上又は略浮上させた状態で保持して、図1及び図3中矢印で示す方向に移動する。そして、ターンテーブル106の回転に伴って、成形部104が加熱炉112a内を移動する間に、成形部104の成形面104b上に保持された熔融ガラス塊200は、徐冷されつつ、所定の表面曲率を有するガラス塊に成形される。
【0067】
そして、成形部104の成形面104b上で成形されたガラス塊は、取出位置Bに至るまでに、そのガラス転移点Tg以下に徐冷され、取出位置Bに設置された取出手段114から吹き出されたガスにより吹き飛ばされて、回収装置116に回収される。その後、ガラス塊が取り出された成形部104は、加熱炉112b内を移動して加熱、保温された後に、再びキャスト位置Aまで移動して、上記工程が繰り返される。
【0068】
このような本実施形態によれば、前述したような従来技術に比して、より一層の生産性の向上を図り、成形精度を損なうことなく一定の時間内により多くのガラス塊を製造することができる。
【0069】
また、上述したようにして製造されたガラス塊は、冷間加工と言われるCG(カーブジェネレーター)加工、スムージング加工、研磨加工等の粗研磨及び精研磨加工を適宜施し、精密プレス成形用の球プリフォームに加工される。そして、球プリフォームは、その後の工程において精密プレス成形に供される。精密プレス成形では、球プリフォームを加熱・軟化し、窒素雰囲気などの非酸化性雰囲気中でプレス成形型による精密プレス成形を行う。成形型の成形面に施された面形状を、プレス成形により球プリフォームに転写することにより非球面レンズなどの光学素子を成形することができる。
【0070】
このようにして得られた光学素子は、研削・研磨加工を施さなくても高い形状精度を備えている。また、必要に応じて芯取り加工や反射防止膜の形成などの二次加工を行うことができる。
【0071】
また、上記のようにして製造されたガラス塊にバレル研磨加工を施してプレス成形用素材とすることができる。そして、バレル研磨加工を施したガラス塊(プレス成形用素材)は再加熱・軟化することによりリヒートプレスに供され、研磨加工を施すことで、光学素子(例えば球面レンズ)などの各種ガラス成形品を製造することができる。このリヒートプレス成形においても上記と同様に必要に応じて芯取り加工や反射防止膜の形成などの二次加工を行うことができる。なお、ガラスゴブは、研磨加工を施すことなく、リヒートプレスに供することもできる。
【実施例】
【0072】
次に、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
[実施例1]
【0073】
図1などに示されるガラス塊の成形装置を使用して、ガラス塊を製造するにあたり、熔融ガラス供給部102から滴下、供給する熔融ガラス塊として、SiO−B−BaO系ガラスを用いた。そして、ガラスの温度(滴下温度)を1100℃、粘度(滴下粘度)を29.5dPa・sとして、熔融ガラス塊を20.0mgずつ、150m秒の間隔で滴下し、キャスト位置Aに移動してきた成形部104のそれぞれに、順次、供給されるようした。熔融ガラスの硝種、及びその滴下条件を表1に示す。
【0074】

【表1】
【0075】
回転駆動機構としてステッピングモータを用いたオープンループ制御を採用し、熔融ガラス塊が滴下されるタイミングに応じてターンテーブル106が加減速しながら連続的に回転するように、ターンテーブル106の回転駆動を制御した。このとき、ターンテーブル106が一定の速度(最も速い速度=Vmax)で回転している状態において、成形部104の移動速度Vが60mm/秒となるようにした。
【0076】
直径2.3mmの球状プリフォームを成形対象とし、その生産性を一分間に製造できたガラス塊の数で評価し、成形精度を真球度(最小外接球面の半径と最大内接球面の半径との比)で評価した。これらの評価結果を表2に示す。
【0077】
なお、成形部104の成形面上に熔融ガラス塊を浮上又は略浮上された状態で成形するにあたり、その浮上ガス流量を150mL/分とした。
【0078】

【表2】
【0079】
[実施例2〜6]
【0080】
熔融ガラスの硝種、その滴下条件、成形部104の移動速度などを表1及び表2に示したものとした以外は、実施例1と同様にして生産性と成形精度を評価した。その結果を表2に併せて示す。
【0081】
これらの結果から、前述した特許文献(特開2002−326823号公報)に記載された従来技術では、その実施例における一分間に製造できたガラス塊の数(DPM)が最大で173であるのに比べて(特許文献の[0038]段落の表1参照)、本発明では、生産性が格段に向上していることが確認できた。さらに、成形されたガラス塊の真球度も高く、成形精度が損なわれないことも確認できた。
【0082】
また、上記実施例1〜6で製造したガラス塊を用い、これを窒素雰囲気中においてガラスの粘度が10dPa・s程度になる温度まで加熱し、加熱・軟化したガラス塊を、上型、下型および胴型から構成されるプレス成形型を用いて窒素雰囲気中で精密プレス成形し、上型および下型に形成された成形面(凹形状)の面形状をガラス塊に転写することができる。このようにして例えば、両凸形状の両側非球面レンズを得ることができ、二次工程において、得られた非球面レンズに、芯取り加工、および、反射防止膜を形成することができる。
【0083】
最後に、本発明の実施の形態を、図等を用いて総括する。
【0084】
本発明の実施の形態にかかるガラス塊の製造方法は、図1図4に示すように、成形面(104b)に複数のガス噴出孔(104a)を有する複数の成形部(104)が周方向に沿って等間隔に設けられたターンテーブル(106)の回転駆動に伴って、熔融ガラス供給部(102)の下方に移動してきた成形部(104)のそれぞれに、順次、一定重量の熔融ガラス塊(200)を供給し、冷却してガラス塊(200)を製造するにあたり、熔融ガラス供給部(102)から熔融ガラス塊(200)を一定重量ずつ滴下するとともに、熔融ガラス塊(200)が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、又は一定の速度で連続的に回転するように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御する。
【0085】
また、好ましくは、図1図4に示すように、ターンテーブル(106)の回転駆動は、熔融ガラス塊(200)が滴下されたことを検知し、検知した信号に基づいて行われる。
【0086】
また、更に好ましくは、図1図4に示すように、オープンループ制御によりターンテーブル(106)の回転駆動を制御する請求項1又は請求項2に記載のガラス塊の製造方法。
また、更に好ましくは、図1図4(特に図3、4)に示すように、熔融ガラス塊(200)が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御し、かつ、成形部(104)が熔融ガラス供給部(102)の下方にあるときに、ターンテーブル(106)の回転速度が最も速い速度よりも遅い速度となるように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御する。
【0087】
また、更に好ましくは、図1図4(特に図3、4)に示すように、熔融ガラス塊(200)が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御し、かつ、成形部(104)が熔融ガラス供給部(102)の下方にあるときに、ターンテーブル(106)の回転速度が最も遅くなるように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御する。
【0088】
また、更に好ましくは、図1図4(特に図3、4)に示すように、成形部(104)は、ガス噴出孔(104a)から浮上ガスを噴出することにより熔融ガラス塊(200)を浮上又は略浮上させた状態で受ける凹陥状に形成するとともに、成形部(104)の開口外縁近傍には、成形部(104)の中心に向かって斜め下方に傾斜する斜面を有し、熔融ガラス塊(200)が、斜面(109)上に滴下され、斜面(109)に案内されて成形部(104)に移動する。
【0089】
また、更に好ましくは、図1図4(特に図3、4)に示すように、熔融ガラス塊(200)が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御し、かつ、ターンテーブル(106)の回転方向の前方に位置する斜面(109)が、熔融ガラス供給部(102)の直下に位置したときに、ターンテーブル(106)の回転速度が最も遅くなるように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御する。
【0090】
また、更に好ましくは、図1図4(特に図4)に示すように、熔融ガラス塊(200)が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御し、かつ、成形部(104)の中心が、熔融ガラス供給部(102)の直下に位置したときに、ターンテーブル(106)の回転速度が最も遅くなるように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御する。
【0091】
また、更に好ましくは、ターンテーブル(106)の半径を100mm〜200mmとし、ターンテーブル(106)に設ける成形部(104)の数を36〜180とした。
【0092】
また、更に好ましくは、熔融ガラス塊(200)の重量を1.0mg〜200mgとするか、又は熔融ガラス塊(200)の直径を0.5mm〜4.0mmとした。
【0093】
また、更に好ましくは、熔融ガラス供給部(102)から熔融ガラス塊(200)を30ミリ秒〜200ミリ秒の間隔で滴下する。
【0094】
また、更に好ましくは、隣接する二つの成形部(104)の中心間距離を2.0mm〜7.9mmとした。
【0095】
また、更に好ましくは、成形部(104)の移動速度を0mm/秒より大きく150mm/秒以下とした。
【0096】
本発明の実施の形態に係るガラス塊の成形装置は、図1図4に示すように、成形面(104b)に複数のガス噴出孔(104a)を有する複数の成形部(104)と、成形部(104)が周方向に沿って等間隔に設けられたターンテーブル(106)と、回転軸を中心にターンテーブル(106)を回転させる回転駆動機構(108)とを有し、成形部(104)に熔融ガラス塊(200)を供給する熔融ガラス供給部(102)の下方に、成形部(104)を順次移動させ、一定重量の熔融ガラス塊(200)を供給し、冷却してガラス塊(200)を製造するガラス塊の成形装置において、熔融ガラス塊(200)が滴下されるタイミングに応じて加減速しながら連続的に回転するように、又は一定の速度で連続的に回転するように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御する回転駆動制御部を備える。
【0097】
また、好ましくは、図1図4に示すように、熔融ガラス供給部(102)から熔融ガラス塊(200)が滴下されたことを検知し信号を発するセンサ(103)を更に備え、前記回転駆動機構(108)は、信号に基づきターンテーブル(106)の回転駆動を制御する。
【0098】
また、更に好ましくは、図1図4に示すように、回転駆動制御部(108)は、オープンループ制御によりターンテーブル(106)の回転駆動を制御する。
【0099】
また、更に好ましくは、図1図4(特に図3、4)に示すように、回転駆動制御部(108)は、センサ(103)からの信号に基づき、加減速しながら連続的に回転するようにターンテーブル(106)の回転駆動を制御し、かつ、成形部(104)が熔融ガラス供給部(102)の下方にあるときに、ターンテーブル(106)の回転速度が最も速い速度よりも遅い速度となるように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御する。
【0100】
また、更に好ましくは、図1図4(特に図3、4)に示すように、回転駆動制御部(108)は、センサ(103)からの信号に基づき、加減速しながら連続的に回転するようにターンテーブル(106)の回転駆動を制御し、かつ、成形部(104)が熔融ガラス供給部(102)の下方にあるときに、ターンテーブル(106)の回転速度が最も遅くなるように、ターンテーブル(106)の回転駆動を制御する。
【0101】
また、更に好ましくは、図1図4(特に図3、4)に示すように、成形部(104)は、ガス噴出孔(104a)から浮上ガスを噴出することにより熔融ガラス塊(200)を浮上又は略浮上させた状態で受ける凹陥状に形成され、成形部(104)の開口外縁近傍には、成形部(104)の中心に向かって斜め下方に傾斜する斜面(109)が形成されている。
【0102】
また、更に好ましくは、ターンテーブル(106)の半径を100mm〜200mmとし、ターンテーブル(106)に設ける成形部(104)の数を36〜180とした。
【0103】
また、更に好ましくは、隣接する二つの成形部(104)の中心間距離を2.0mm〜7.9mmとした。
【0104】
また、更に好ましくは、成形部(104)の直径を0.3mm〜4.5mmとした。
【0105】
また、本発明の実施の形態に係るプレス成形用素材の製造方法は、本発明の実施の形態に係るガラス塊の製造方法によりガラス塊を製造し、ガラス塊をバレル研磨加工する。
【0106】
また、本発明の実施の形態に係るガラス成形品の製造方法は、本発明の実施の形態に係るプレス成形用素材の製造方法によりプレス成形用素材を製造し、プレス成形用素材を加熱・軟化し、プレス成形してガラス成形品を得る。
【0107】
また、本発明の実施の形態に係る球プリフォームの製造方法は、本発明の実施の形態に係るガラス塊の製造方法によりガラス塊(200)を製造し、ガラス塊(200)に冷間加工を施して球プリフォームを得る。
【0108】
また、本発明の実施の形態に係る光学素子の製造方法は、本発明の実施の形態に係る球プリフォームの製造方法により球プリフォームを製造し、球プリフォームを加熱・軟化し、精密プレス成形して光学素子を得る。
【0109】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0110】
例えば、本発明の上記態様において、ターンテーブル106の回転速度がVmaxよりも遅いときに熔融ガラス塊200を成形部104に設けられた斜面109に滴下する例について説明したが、ターンテーブル106の回転速度の制御はこの態様に限られない。例えば、図4(c)における(III)において、各(III)の間隔を縮めて制御することによりターンテーブル106を一定の速度で連続的に回転するように制御することができる。即ち、ターンテーブル106を加減速することなく、常に一定の速度で連続的に回転させても良い。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、ガラス塊を製造し、さらに、かかるガラス塊を利用してプレス成形用素材、ガラス成形品、球プリフォーム及び光学素子を製造する技術として利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
100 ガラス塊の成形装置
102 熔融ガラス供給部
103 レーザーセンサー
104 成形部
104a ガス噴出孔
104b 成形面
106 ターンテーブル
108 回転駆動制御部
109 斜面
200 熔融ガラス塊
200a 熔融ガラス。
図1
図2
図3
図4