(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932852
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 9/04 20060101AFI20160526BHJP
H01H 21/08 20060101ALN20160526BHJP
B60J 1/17 20060101ALN20160526BHJP
【FI】
H01H9/04 F
!H01H21/08
!B60J1/17 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-5885(P2014-5885)
(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2015-135730(P2015-135730A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輔
【審査官】
岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−194434(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/00− 9/28
H01H 19/00−21/88
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ノブと、
固定接点及び可動接点を収容し、プッシャ挿通孔を有するボディと、
前記ボディの側面部に設けられ、前記操作ノブにより操作されて前記プッシャ挿通孔に面しつつ前記ボディの表面部を摺動するスライダと、
前記プッシャ挿通孔に挿通され、その孔内を前記スライダの摺動に応じ移動して前記可動接点を前記固定接点に対し接離させるプッシャと、
前記ボディに設けられ、前記スライダの前記摺動方向と交差する方向の一方の端縁部分を被って防水する第一の防水カバーと、
前記スライダに設けられ、前記スライダの前記摺動方向と交差する方向の他方の端縁部分を被って防水する第二の防水カバーと、
を設けたことを特徴とするスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防水手段を施したスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば車両のウィンドレギュレータ用スイッチ装置においては、使用者により操作ノブが操作され、この操作ノブの操作でスライダが摺動され、このスライダの摺動に接点が応じ接離することで、ドアウィンドガラスが開閉されるようになっているものが供されている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7− 65681号公報
【特許文献2】特開平9−265851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたものでは、接点はボディに収容されており、このボディにプッシャ挿通孔が形成されて、このプッシャ挿通孔に挿通されたプッシャがスライダの摺動に応じプッシャ挿通孔内を移動して接点を接離させるようになっている。
このため、通常は水や飲料等の液体が浸入することはないが、例えば誤って操作ノブ部分に水をかけたときなどには、操作ノブの表面を伝った水が更にスライダを伝ってスライダとボディとの間に表面張力により浸入し、そして、プッシャとプッシャ挿通孔との間を同じく表面張力により浸入して、ボディ内に入り接点に達することで、この接点の電気絶縁性を不良にするというおそれを有していた。
【0005】
一方、上記特許文献2に記載されたものでは、スイッチ装置の外殻ケースを構成する上ケースと下ケースとの、孔部と突起とによる結合部分からの水の浸入を防止すべく、上ケースにこれの孔部を囲繞するリブを設けているが、これは、上述のように、スイッチ装置の外殻ケースを構成する上ケースと下ケースとの結合部分からの水の浸入を防止するためのものであり、操作ノブの表面を伝う水に対する防水性を考慮したものではない。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、操作ノブの表面を伝う水に対する防水性を向上して、接点の電気絶縁性を良好に確保することのできるスイッチ装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のスイッチ装置は、操作ノブと、固定接点及び可動接点を収容し、プッシャ挿通孔を有するボディと、
前記ボディの側面部に設けられ、前記操作ノブにより操作されて前記プッシャ挿通孔に面しつつ前記ボディの表面部を摺動するスライダと、前記プッシャ挿通孔に挿通され、その孔内を前記スライダの摺動に応じ移動して前記可動接点を前記固定接点に対し接離させるプッシャ
と、前記ボディに設けられ、前記スライダの前記摺動方向と交差する方向の一方の端縁部分を被って防水する第一の防水カバーと、前記スライダに設けられ、前記スライダ
の前記摺動方向と交差する方向の
他方の端縁部分を被って防水する
第二の防水カバー
と、を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記手段によれば、操作ノブの表面を水が伝っても、それがスライダとボディとの間に浸入することが防水カバーによって防がれ、それによって、プッシャとプッシャ挿通孔との間に水が浸入することがなくされ、ボディ内の接点に水が達することがなくされる。これにより、ボディ内の接点の電気絶縁性を良好に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例を示す、
図5のI−I線に沿う、モジュールスイッチ単体部分の縦断側面図
【
図4】
図2のIV−IV線に沿う、スイッチ全体の縦断側面図
【
図6】
図5のVI−VI線に沿う、モジュールスイッチ単体部分の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例(一実施形態)につき、図面を参照して説明する。
まず、
図2及び
図3には、スイッチ装置、特には車両のウィンドレギュレータ用スイッチ装置の外観を上方(
図2)及び側方(
図3)より見て示しており、ケース1を主体としている。このケース1には、操作ノブ2を4個、車両のウィンドの配置形態に合わせて配設しており、そのほか操作ノブ3を1個、配設している。この場合、操作ノブ2は車両の各ウィンドの上げ下げ用であり、操作ノブ3は例えばウィンドの共通のロック及び共通のロック解除用である。
【0011】
ケース1は、詳細にはケース上部1aとケース下部1bとにより構成するもので、それらを側壁部の複数の爪部4と同じく複数の孔5とで結合することにより、直方体の箱状に組成している。
【0012】
図4に示すように、ケース上部1aは下面が開放し、ケース下部1bは上面が開放しており、そのうちのケース上部1aに操作ノブ2用のノブ支持部6を形成すると共に、操作ノブ3用のノブ支持部7を形成している。これらのノブ支持部6,7は、いずれも上方に隆起する四角筒状を成すものであり、ケース1内に連通していて、そのうちのノブ支持部6に操作ノブ2をそれぞれ被装して側壁部の軸部8と孔9とにより上下に回動可能に取付け、ノブ支持部7に操作ノブ3を被装して同じく側壁部の軸部と孔(いずれも図示せず)とにより上下に回動可能に取付けている。
【0013】
操作ノブ2はアーム10を、操作ノブ3はアーム11を、ともに内上面部から下方へ突出させて有するものであり、そのうちのアーム10をノブ支持部6に挿通し、アーム11をノブ支持部7に挿通して、ともにケース1内に進入させている。
【0014】
これらに対して、ケース下部1bの開放した上面部には、下面に操作ノブ2用のモジュールスイッチ12と操作ノブ3用のモジュールスイッチ13を実装した回路基板14を装着しており、そのうちのモジュールスイッチ12はスライダ15を側面部に有している。このスライダ15は外面部に受動部16を有するものであり、その受動部16は、
図5に示すように、上下の全長に延びるリブ16aと、上半部にのみ位置する凸部16bとから成っている。なお、モジュールスイッチ13は、アクチェータ17を外部に突出させて有している(
図4参照)。
【0015】
受動部16の間(リブ16aと凸部16bとの間)には、前記操作ノブ2のアーム10の先端部10aを位置させており、アクチェータ17には前記操作ノブ3のアーム11の先端部11aを係合させている。なお、アーム10の先端部10aは、後述するようにスライダ15の摺動に供するもので、その摺動が円滑にできるように、ともに先細状で更に円形に形成している。
なお、回路基板14は、アーム10によるスライダ15の摺動のため切欠部14aを有している。
【0016】
図5のほか、
図1及び
図6は、モジュールスイッチ12の構成を単品で示しており、中でも
図1に示すように、外殻であるホディ18の内部に、接片対19,20を上下の配置で設けている。この接片対19,20は、そのうちの接片対20で代表して
図6に示すように、固定接片21とそれと対応する可動接片22から成るものであり、それぞれ固定接点21a及び可動接点22aを有していて、この固定接点21aと可動接点22aをホディ18が収容している。
【0017】
又、ホディ18外には、
図1及び
図5に示すように、接片対19,20の固定接片21及び可動接片22に連なる接続端子23〜25を突出させており、この接続端子23〜25を前記回路基板14に挿通接続している。
【0018】
ホディ18は、詳細にはボディ基体(インシュレータ)18aとホディ蓋18bとから成るものであり、そのうちのホディ蓋18bの上記可動接片22と対応する部分に、
図1に示すように、それぞれプッシャ挿通孔26,27を形成していて、このプッシャ挿通孔26,27にそれぞれプッシャ28,29を挿通している。このプッシャ28,29に対して、前記スライダ15のボディ18側には、スライダ15の前記摺動によってプッシャ挿通孔26,27に面しつつプッシャ28,29を押圧、並びにその押圧から解放するプッシャ授動面15a,15bを設けている。
【0019】
そして又、ボディ18のホディ蓋18bには、上下の両縁部にスライダ15の摺動のためのスライダガイド30,31を複数ずつ形成しており、更に、ボディ蓋18bの上縁部とスライダ15の下縁部には、それぞれ防水カバー32,33を形成している。このうち、ボディ18の防水カバー32は、ボディ蓋18bの上縁部の全長にわたるものであり、庇状にて、スライダ15の上端縁部分15cを上方より被うものである。一方、スライダ15の防水カバー33は、スライダ15の下縁部の全長にわたるものであり、断面逆L字状にて、スライダ15の下端縁部分15dを上方及び前方より覆い隠すように被うものである。
【0020】
次に、上記構成のスイッチ装置の作用を、操作ノブ2で代表して述べる。
まず、全図は操作ノブ2が中立位置にあるときの状態を示しており、この状態から、操作ノブ2を
図4に矢印A
1で示すように
反時計回りの方向に押込み操作すると、アーム10も同方向に回動して、先端部10aにより受動部16を介してモジュールスイッチ12のスライダ15を同図に矢印A
2で示すように摺動させる。
一方、操作ノブ2を同図に矢印B
1で示すよう
に時計回りの方向に引上げ操作すると、アーム10も同方向に回動して、先端部10aにより受動部16を介してモジュールスイッチ12のスライダ15を同図に矢印B
2で示すように摺動させる。
【0021】
これらの摺動により、プッシャ28,29が、スライダ15のプッシャ授動面15a,15bで押圧又はその押圧から解放されて、プッシャ挿通孔26,27内をボディ18内に向かって移動され、又はそれとは反対側に移動され、それに伴い、可動接片22が押圧又はその押圧から解放されて可動接点22aを固定接点21の固定接点21aに接触又は離間させる。
これにより、操作された操作ノブ2に対応する車両のウィンドが上げ下げされ、開閉される。
【0022】
この説明から明らかなように、スライダ15の上端縁部分15cと下端縁部分15dは、スライダ15の摺動方向と交差する方向の端縁部分であり、これらの端縁部分15c,15dを防水カバー32,33がそれぞれに被っている。
【0023】
さて、上述のように機能する構成のスイッチ装置において、前述のように、例えば誤って操作ノブ2部分に水をかけたときなどには、操作ノブ2の表面を水が伝うことがある。
図1はその様子を矢印Wで示しており、操作ノブ2の表面を伝った水は、スライダ15の上方においては、モジュールスイッチ12のスライダ15とボディ18との間に浸入することが、スライダ15の上端縁部分15cを上方より被った防水カバー32によって防がれ、スライダ15の下側においては、同じくモジュールスイッチ12のスライダ15とボディ18との間に浸入することが、スライダ15の下端縁部分15dを上方及び前方より被った防水カバー33によって防がれる。
【0024】
このようにして、上記構成のスイッチ装置においては、操作ノブ2の表面を水が伝っても、それがモジュールスイッチ12のスライダ15とボディ18との間に浸入することが防がれ、それによって、プッシャ28とプッシャ挿通孔26並びにプッシャ29とプッシャ挿通孔との間に水が浸入することがなくされ、ボディ内の接点に達することがなくされる。これにより、ボディ18内の接点の電気絶縁性を良好に確保することができる。
【0025】
以上、操作ノブ2についてのみ説明したが、操作ノブ3については、これを回動操作することにより、アーム11の先端部11aでアクチェータ17を動かし、モジュールスイッチ13を開閉する。この操作ノブ3からモジュールスイッチ13への防水構造は、図示しないが、適宜施すものとする。
なお、操作ノブ3については、詳細な説明を割愛したが、これも操作ノブ2と同様の構成として、同様の作用するものとしている。
【0026】
又、本発明は車両のウィンドレギュレータ用スイッチ装置に限られず、本発明と同様の構成を有するスイッチ一般に広く適用して実施することが可能である。
そのほか、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0027】
図面中、2は操作ノブ、15はスライダ、15cはスライダの上端縁部分、15dはスライダの下端縁部分、18はボディ、21aは固定接点、22aは可動接点、26,27はプッシャ挿通孔、28,29はプッシャ、32,33は防水カバーを示す。