特許第5932881号(P5932881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5932881マルチコアファイバ及びそのマルチコアファイバの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932881
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】マルチコアファイバ及びそのマルチコアファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20160526BHJP
   C03B 37/012 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   G02B6/02 461
   G02B6/02 471
   C03B37/012 A
   C03B37/012 C
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-97157(P2014-97157)
(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公開番号】特開2015-215426(P2015-215426A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】石田 格
(72)【発明者】
【氏名】松尾 昌一郎
【審査官】 廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0322835(US,A1)
【文献】 特開2015−118270(JP,A)
【文献】 米国特許第05519801(US,A)
【文献】 特開2010−286548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02 − 6/10
6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアと、前記複数のコアを囲むクラッドとを備えるマルチコアファイバであって、
前記クラッドの断面の外形は、前記クラッドの中心軸を基準とした円弧状に形成されている円弧部分と、前記円弧部分の両端に挟まれ前記クラッドの中心軸を基準とした円弧状に形成されていない非円弧部分とでなり、
前記非円弧部分には、前記円弧部分の両端を結ぶ直線を基準として前記中心軸側とは反対側に前記円弧部分の両端から突出する一対の凸部と、前記一対の凸部の間に挟まれる1つ以上の凹部とが形成され
前記一対の凸部の間には、前記一対の凸部の先端を結ぶ直線を基準として前記中心軸側とは反対側に突出する中間凸部が形成され
ことを特徴とするマルチコアファイバ。
【請求項2】
前記複数のコアは、前記一対の凸部の先端を結ぶ直線と平行に並べられる
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項3】
クラッドロッド内に、複数の挿入用貫通孔を、前記クラッドロッドの長手方向に沿って穿設する穿設工程と、
コアロッドがガラス層で被覆されたコア被覆ロッドを、前記複数の挿入用貫通孔それぞれに挿入する挿入工程と、
前記クラッドロッド及び前記コア被覆ロッドを加熱して前記クラッドロッドと前記コア被覆ロッドとを一体化させる一体化工程と、
前記一体化工程により一体化されたロッドを線引きする線引き工程と
を備え、
前記穿設工程では、前記複数の挿入用貫通孔とは別に、前記クラッドロッドの外周面の一部を凹ませるための凹部形成用空孔が、前記クラッドロッドの長手方向に沿って少なくとも1つ以上穿設される
ことを特徴とするマルチコアファイバの製造方法。
【請求項4】
前記一体化工程と前記線引き工程とは同時に行われる
ことを特徴とする請求項に記載のマルチコアファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマルチコアファイバ及びそのマルチコアファイバの製造方法に関し、光軸の位置合わせを簡易にさせる場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
現在、一般に普及している光ファイバ通信システムに用いられる光ファイバは、1本のコアをクラッドで囲んだ構造となっており、このコア内を光信号が伝搬することで情報が伝送される。
【0003】
近年の光ファイバ通信システムでは、数十本から数百本といった多数の光ファイバが用いられ、伝送情報量が飛躍的に増大している。こうした光ファイバ通信システムにおける光ファイバの数を低減させるため、複数のコアをクラッドで囲んだマルチコアファイバが提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1のマルチコアファイバでは、16つのコアがクラッドで囲まれており、当該クラッドの外形には平坦な外形部分が形成されている。このマルチコアファイバは、マルチコアファイバ母材の外形の一部に平坦な外形部分を形成し、そのマルチコアファイバ母材を線引きすることで製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−72963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、マルチコアファイバを他のマルチコアファイバと接続する場合、当該マルチコアファイバにおいて接続対象となる端部のクラッドが調芯用治具の載置台に載置される。この場合、上記特許文献1のマルチコアファイバにおけるクラッドの平坦な外形部分を載置台に載置すれば、当該マルチコアファイバにおける回転方向の調芯を省略させることができると考えられる。
【0007】
しかしながら、上述の製造方法では、マルチコアファイバ母材を線引きする際の加熱によって、マルチコアファイバ母材の外形の一部に形成された平坦な外形部分の両端は少なからず丸みを帯びる傾向にある。
【0008】
したがって、このような丸みを帯びた外形部分を所定の載置台に載置すると、マルチコアファイバが載置台でふらついて光軸の位置合わせが困難となることが懸念される。
【0009】
そこで本発明は、光軸の位置合わせを簡易にさせ得るマルチコアファイバ及びそのマルチコアファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明は、複数のコアと、前記複数のコアを囲むクラッドとを備えるマルチコアファイバであって、前記クラッドの断面の外形は、前記クラッドの中心軸を基準とした円弧状に形成されている円弧部分と、前記円弧部分の両端に挟まれ前記クラッドの中心軸を基準とした円弧状に形成されていない非円弧部分とでなり、前記非円弧部分には、前記円弧部分の両端を結ぶ直線を基準として前記中心軸側とは反対側に前記円弧部分の両端から突出する一対の凸部と、前記一対の凸部の間に挟まれる1つ以上の凹部とが形成されることを特徴とする。
【0011】
このようなマルチコアファイバでは、非円弧部分に形成される凹部が1つである場合、一対の凸部を、所定の載置台に載置する際の支持点とすることができる。このため、円弧部分の両端に繋がる一対の凸部の先端がたとえ丸みを帯びていたとしても、当該凸部の2点で、マルチコアファイバがふらつかないように支持することができる。
また、非円弧部分に形成される凹部が2以上である場合には、互いに隣接する凹部の間に凸部が設けられることになる。この凸部が、一対の凸部の先端を結ぶ直線を基準として中心軸側にある場合、非円弧部分に形成される凹部が1つである場合と同様に、円弧部分の両端に繋がる一対の凸部の2点で、マルチコアファイバがふらつかないように支持することができる。
一方、互いに隣接する凹部間に設けられる凸部が、円弧部分の両端に繋がる一対の凸部の先端を結ぶ直線を基準として中心軸とは反対側にある場合、その凸部と、円弧部分の両端に繋がる一対の凸部との2点で、マルチコアファイバがふらつかないように支持することができる。
このように本発明のマルチコアファイバは、当該マルチコアファイバの外形に形成される2点で自身がふらつかないように支持できるため、当該マルチコアファイバにおける回転方向の調芯を省略させることができる。こうして、光軸の位置合わせを簡易にさせ得るマルチコアファイバが実現される。
【0012】
また、前記一対の凸部の間には、前記一対の凸部の先端を結ぶ直線を基準として前記中心軸側とは反対側に突出する中間凸部が形成されることが好ましい。
【0013】
このようにした場合、円弧部分の両端に繋がる一対の凸部の一方と中間凸部との2点で支持する態様と、当該一対の凸部の他方と中間凸部との2点で支持する態様とを、当該中間凸部の位置や形状などに応じて変更することができる。したがって、マルチコアファイバにおけるコアの配置態様が2通りあっても、当該マルチコアファイバにおける回転方向の調芯を省略させることができる。
【0014】
また、前記複数のコアは、前記一対の凸部の先端を結ぶ直線と平行に並べられることが好ましい。
【0015】
このようにした場合、複数のコアが一対の凸部の先端を結ぶ直線と平行に並べられていない場合に比べて、コアが一列に配置される平型導波路を2つ以上接続する等といった状況下では有利となる。
【0016】
また、上記課題を解決するため本発明に係るマルチコアファイバの製造方法は、クラッドロッド内に、複数の挿入用貫通孔を、前記クラッドロッドの長手方向に沿って穿設する穿設工程と、コアロッドがガラス層で被覆されたコア被覆ロッドを、前記複数の挿入用貫通孔それぞれに挿入する挿入工程と、前記クラッドロッド及び前記コア被覆ロッドを加熱して前記クラッドロッドと前記コア被覆ロッドとを一体化させる一体化工程と、前記一体化工程により一体化されたロッドを線引きする線引き工程とを備え、前記穿設工程では、前記複数の挿入用貫通孔とは別に、前記クラッドロッドの外周面の一部を凹ませるための凹部形成用空孔が、前記クラッドロッドの長手方向に沿って少なくとも1つ以上穿設されることを特徴とする。
【0017】
このようなマルチコアファイバの製造方法では、一体化工程を経ると、凹部形成用空孔の内壁面の少なくとも一部をクラッドロッドの外周面の一部とするクラッドロッドが得られる。このクラッドロッドの断面の外形のうち、凹部形成用空孔に相当する部分は、当該クラッドロッドの中心軸を基準とした円弧状に形成されていない非円弧部分となる。
この非円弧部分の大きさは上述のクラッドと大きさが異なっているが、当該非円弧部分の外形は上述のクラッドの外形と同程度となる。すなわち、上述のクラッドとおおむね相似形のクラッドロッドが得られ、当該クラッドロッドを線引きすることで上述のクラッドが得られる。
したがって、上述したように、マルチコアファイバの外形に形成される2点で自身がふらつかないように支持できるマルチコアファイバが製造されるため、当該マルチコアファイバにおける回転方向の調芯を省略させることができる。こうして、光軸の位置合わせを簡易にさせ得るマルチコアファイバの製造方法が実現される。
【0018】
なお、前記一体化工程と前記線引き工程とは同時に行われるようにしても良い。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、光軸の位置合わせを簡易にさせ得るマルチコアファイバ及びそのマルチコアファイバの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態におけるマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面を示す図である。
図2】コア及びクラッドを図1と同じ視点で示す図である。
図3】マルチコアファイバの製造方法を示すフローチャートである。
図4】穿設工程後の様子を示す図である。
図5】挿入工程後の様子を示す図である。
図6】一体化工程後の様子を示す図である。
図7】第2実施形態におけるマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面を示す図である。
図8】第2実施形態における穿設工程後の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するために好適となる実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。
【0022】
(1)第1実施形態
図1は、本実施形態におけるマルチコアファイバ1の長手方向に垂直な断面を示す図である。図1に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、複数のコア11と、複数のコア11を被覆するクラッド12と、クラッド12を被覆する第1保護層13と、第1保護層13を被覆する第2保護層14とを主な構成要素として備える。
【0023】
複数のコア11は、クラッド12の中心軸C1を通る直線LN1上に並べられて配置される。
【0024】
図2は、コア11及びクラッド12を図1と同じ視点で示す図である。図2に示すように、クラッド12は、円柱の外形とは異なる外形を有している。
【0025】
すなわち、クラッド12の断面の外形は、クラッド12の中心軸C1を基準として円弧状に形成されている円弧部分PA1と、円弧部分PA1の両端に挟まれクラッド12の中心軸C1を基準として円弧状に形成されていない非円弧部分PA2とでなる。本実施形態では、円弧部分PA1の外形の長さは、非円弧部分PA2の外形の長さよりも大きくされる。
【0026】
非円弧部分PA2には、円弧部分PA1の両端E1及びE2を結ぶ直線LN2を基準として中心軸C1とは反対側に円弧部分PA1の両端E1及びE2から突出する一対の凸部12A及び12Bと、一対の凸部12A及び12Bの間に挟まれる1つの凹部12Cとが形成されている。
【0027】
本実施形態では、凹部12Cは、円弧部分PA1の両端E1及びE2を結ぶ直線LN2よりも中心軸C1側にまで凹んでおり、当該一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2は丸みを帯びている状態とされる。また、一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2を結ぶ直線LN3と平行に複数のコア11が配置されている。
【0028】
なお、本実施形態では、一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2を結ぶ直線LN3と、円弧部分PA1の両端E1及びE2を結ぶ直線LN2とが平行になっているが、これらが平行になっていなくても良い。
【0029】
このようなマルチコアファイバ1を他のマルチコアファイバと接続する場合、当該マルチコアファイバ1において接続対象となる端部の第1保護層13(図1)及び第2保護層14(図1)が剥離される。そして、第1保護層13及び第2保護層14から露出したクラッド12は、マルチコアファイバ1の各コア11と、他のマルチコアファイバとのコアとの光軸を合わせる調芯用治具の載置台に載置される。
【0030】
上述したように、このクラッド12の断面の外形は、円弧部分PA1の両端E1及びE2を結ぶ直線LN2を基準として中心軸C1とは反対側に円弧部分PA1の両端E1及びE2から突出する一対の凸部12A及び12Bを有する。また、これら一対の凸部12A及び12Bの間は凹部12Cとなっている。
【0031】
このようなクラッド12は、一対の凸部12A及び12Bを、所定の載置台に載置する際の支持点とすることができる。このため、一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2がたとえ丸みを帯びていたとしても、当該凸部12A及び12Bの2点で、マルチコアファイバ1がふらつかないように支持することができる。
【0032】
したがって、本実施形態におけるマルチコアファイバ1は、当該マルチコアファイバ1における回転方向の調芯を省略させることができる。こうして、光軸の位置合わせを簡易にさせ得るマルチコアファイバ1が実現される。
【0033】
また、本実施形態の場合、複数のコア11は、一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2を結ぶ直線LN3と平行に並べられている。
【0034】
このため、複数のコア11が一対の凸部の先端を結ぶ直線LN3と平行に並べられていない場合に比べて、コアが一列に配置される平型導波路を2つ以上接続する等といった状況下では有利となる。
【0035】
次に、マルチコアファイバ1の製造方法について図面を用いながら詳細に説明する。図3は、マルチコアファイバ1の製造方法を示すフローチャートである。図3に示すように、マルチコアファイバ1の製造方法は、穿設工程P1、挿入工程P2、一体化工程P3、線引き工程P4及び保護層形成工程P5を主工程として備える。
【0036】
<穿設工程>
図4は、穿設工程後の様子を示す図である。図4に示すように、穿設工程P1では、クラッドロッド71内に、複数の挿入用貫通孔THLを、当該クラッドロッド71の長手方向に沿って穿設する。
【0037】
また、これら挿入用貫通孔THLとは別に、クラッドロッド71の外周面の一部を凹ませるための凹部形成用空孔VHLを、当該クラッドロッド71の長手方向に沿ってクラッドロッド71内に1つ穿設する。
【0038】
本実施形態の場合、複数の挿入用貫通孔THLは、クラッドロッド71の中心軸C10を通る直線LN10上に並ぶように穿設される。凹部形成用空孔VHLは、図3に示す例では、挿入用貫通孔THLの断面積よりも大きい断面積の楕円形状とされ、クラッドロッド71の外周面の近傍に穿設される。
【0039】
なお、凹部形成用空孔VHLとクラッドロッド71の外周面との最短距離が、最も外側に位置する挿入用貫通孔THLとクラッドロッド71の外周面との最短距離よりも小さくすると良い。これは、一体化工程P3においてクラッドロッド71の一部分を凹部形成用空孔VHLに陥入させ、その陥入部分と凹部形成用空孔VHLの内周面とを一体化させ易くできるからである。
【0040】
このような挿入用貫通孔THLと凹部形成用空孔VHLとは、例えばドリル等を用いて同じように穿設される。なお、クラッドロッド71は円柱状のガラス体であり、例えば純粋な石英で構成される。
【0041】
<挿入工程>
図5は、挿入工程後の様子を示す図である。図5に示すように、挿入工程P2では、穿設工程P1で穿設された複数の挿入用貫通孔THLそれぞれにコア被覆ロッド72を挿入する。
【0042】
コア被覆ロッド72は、挿入用貫通孔THLのいずれかに挿入される部材であり、コアロッド72Aをガラス層72Bで被覆した2層構造となっている。コアロッド72Aの平均屈折率はガラス層72Bの平均屈折率よりも高くされる。例えば、ゲルマニウム等のドーパントを付加した石英でコアロッド72Aが構成され、純粋な石英でガラス層72Bが構成される。なお、ガラス層72Bの平均屈折率はクラッドロッド71の平均屈折率と同程度とされる。
【0043】
<一体化工程>
図6は、一体化工程後の様子を示す図である。図6に示すように、一体化工程P3は、クラッドロッド71及びコア被覆ロッド72を加熱してクラッドロッド71とコア被覆ロッド72とを一体化させて、マルチコアファイバ用母材80を得る。
【0044】
具体的には、クラッドロッド71と、当該クラッドロッド71の挿入用貫通孔THLに挿入されたコア被覆ロッド72とが真空中にて加熱される。このようにした場合、クラッドロッド71の収縮等によってクラッドロッド71内に応力が生じて挿入用貫通孔THLが埋まるとともに、クラッドロッド71とコア被覆ロッド72の外層であるガラス層72Bとが融着して一体化する。
【0045】
このとき、クラッドロッド71の一部分は凹部形成用空孔VHLに陥入し、その陥入部分は凹部形成用空孔VHLの内周面と融着して一体化する。これによりクラッドロッド71の断面の外形のうち、凹部形成用空孔VHLに相当する部分は、当該クラッドロッド71の中心軸を基準とした円弧状に形成されていない非円弧部分となる。この非円弧部分の大きさは上述のクラッド12と大きさが異なっているが、当該非円弧部分の外形は上述のクラッド12の外形と同程度となる。すなわち、クラッド12と相似形のクラッドロッド71が得られる。
【0046】
<線引き工程>
線引き工程P4では、一体化工程P3により一体化されたロッド(マルチコアファイバ用母材80)を線引きする。
【0047】
具体的には、一体化工程P3にて得られたマルチコアファイバ用母材80の一端を円錐状の凸部として形成する末端加工処理が前処理として施される。なお、この末端加工処理は一体化工程P3にて施されても良い。
【0048】
そして、マルチコアファイバ用母材80が紡糸炉に設置され、当該紡糸炉によってマルチコアファイバ用母材80の凸部が溶融するまで加熱される。そして、溶融状態にあるマルチコアファイバ用母材80の凸部が線引きされ、当該線引きされた部分が冷却装置により適切な温度にまで冷却される。
【0049】
この結果、線引きされた部分におけるコアロッド72Aがコア11として形成され、当該部分において融着されているガラス層72B及びクラッドロッド71がクラッド12として形成される。
【0050】
<保護層形成工程>
保護層形成工程P5では、クラッド12の周りに保護層を形成する。具体的には、クラッド12の外周面が例えば紫外線硬化性樹脂で被覆され、当該紫外線硬化性樹脂に対して紫外線が照射されて第1保護層13が形成される。
【0051】
その後、第1保護層13の外周面が例えば紫外線硬化性樹脂で被覆され、当該紫外線硬化性樹脂に対して紫外線が照射されて第2保護層14が形成される。こうして、図1に示すマルチコアファイバ1が製造される。
【0052】
このようにマルチコアファイバ1の製造方法は、穿設工程P1にて挿入用貫通孔THLを穿設する際に、当該挿入用貫通孔THLの穿設手法と同様の手法で凹部形成用空孔VHLを穿設しさえすれば、その後の工程P2〜P5を何ら変更することなく、クラッド12に非円弧部分PA2を形成することができる。
【0053】
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、第2実施形態におけるマルチコアファイバの構成要素のうち第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0054】
図7は、第2実施形態におけるマルチコアファイバ2の長手方向に垂直な断面を示す図である。図7に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ2は、非円弧部分PA2の構造を変更した点のみ上記第1実施形態と相違する。
【0055】
すなわち、上記第1実施形態では、一対の凸部12A及び12Bの間に1つの凹部12Cが形成された。これに対し、本実施形態では、一対の凸部12A及び12Bの間に2つの凹部12D及び12Eが形成され、当該凹部12D及び12Eの間に中間凸部12Fが形成される。
【0056】
本実施形態の場合、凹部12Dは、円弧部分PA1の一端E1に繋がる凸部12Aから、当該円弧部分PA1の両端E1及びE2を結ぶ直線LN2を基準として中心軸C1側にまで凹んでいる。また、凹部12Eは、円弧部分PA1の他端E2に繋がる凸部12Bから、当該円弧部分PA1の両端E1及びE2を結ぶ直線LN2を基準として中心軸C1側にまで凹んでいる。
【0057】
また本実施形態の場合、中間凸部12Fは2つの凹部12D及び12Eの中間に位置し、当該中間凸部12Fの先端T3は、一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2を結ぶ直線LN3上に位置している。
【0058】
このようなマルチコアファイバ2のクラッド12は、一対の凸部12A及び12Bと中間凸部12Fとを、所定の載置台に載置する際の支持点とすることができる。このため、上記第1実施形態の場合と同様に、一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2がたとえ丸みを帯びていたとしても、マルチコアファイバ2がふらつかないように支持することができる。
【0059】
したがって、本実施形態におけるマルチコアファイバ2も、上記第1実施形態の場合と同様に、当該マルチコアファイバ2における回転方向の調芯を省略させることができる。
【0060】
このようなマルチコアファイバ2を製造する場合、上述の穿設工程P1のみが変更となる。図8は、第2実施形態における穿設工程後の様子を示す図である。図8に示すように、本実施形態における穿設工程P1では、クラッドロッド71内に、2つの凹部形成用空孔VHLを、当該クラッドロッド71の長手方向に沿って穿設すれば良い。
【0061】
なお、図7に示す例では、各凹部形成用空孔VHLは、挿入用貫通孔THLの大きさと同程度とされ、クラッドロッド71の外周面の近傍に穿設される。また、クラッドロッド71の中心軸を通り、複数の挿入用貫通孔THLが並べられる方向とは直交する方向の直線を基準として線対称で穿設される。
【0062】
(3)変形例
以上、第1実施形態及び第2実施形態が一例として説明されたが、本発明のマルチコアファイバ及びその製造方法は上記実施形態に限定されるものではない。
【0063】
例えば、上記実施形態では、複数のコア11がクラッド12の中心軸C1を通る直線上に並べられて配置された。しかしながら、複数のコア11は、クラッド12の中心軸C1を通る直線以外の直線上に並べられていても良い。また、複数のコア11は直線上に並べられていなくても良い。例えば、クラッド12の中心軸C1上に1つのコア11を配置し、そのコア11の周囲に複数のコア11を等間隔で配置する配置構造が適用可能である。なお、上記実施形態ではコア数が4つである場合を例示しているが、2以上のコア数であれば良い。
【0064】
また上記実施形態では、断面円形状の凹部形成用空孔VHLがクラッドロッド71内に穿設された。しかしながら、凹部形成用空孔VHLの断面形状は円以外の形状であっても良い。また、凹部形成用空孔VHLはクラッドロッド71の内部に穿設されていなくても良い。例えば、クラッドロッド71の外周面の一部に断面半円の溝状の凹部形成用空孔を、当該クラッドロッド71の長手方向に沿って穿設することができる。
【0065】
また上記実施形態では、一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2が丸みを帯びていたが、当該先端T1及びT2を研磨等して尖らせるようにしても良く、また平坦化するようにしても良い。
【0066】
また上記第2実施形態では、中間凸部12Fが2つの凹部12D及び12Eの中間に位置され、当該中間凸部12Fの先端T3が一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2を結ぶ直線LN3上に位置された。
しかしながら、中間凸部12Fは凹部12D及び12Eの中間に位置していなくても良く、当該中間凸部12Fの先端T3が一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2を結ぶ直線LN3よりも中心軸C1側に位置していても良い。
要するに、一対の凸部12A及び12Bの間におけるクラッド12の外形部分が、当該一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2を結ぶ直線LN3を基準として中心軸C1側にあれば、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
これに対し、中間凸部12Fが、一対の凸部12A及び12Bの先端T1及びT2を結ぶ直線LN3を基準として中心軸C1とは反対側に突出するようにしても良い。このようにした場合、円弧部分PA1の両端E1及びE2に繋がる一対の凸部12A及び12Bの一方と中間凸部12Fとの2点で支持する態様と、当該一対の凸部12A及び12Bの他方と中間凸部12Fとの2点で支持する態様とを、当該中間凸部12Fの位置や形状などに応じて変更することができる。したがって、マルチコアファイバにおけるコアの配置態様が2通りあっても、当該マルチコアファイバにおける回転方向の調芯を省略させることができる。このようなクラッド12を有するマルチコアファイバを製造するためには、例えば、2つの凹部形成用空孔VHLの配置によって調整できる。
【0067】
本発明のマルチコアファイバ及びその製造方法は、上述した内容以外に、適宜、本願目的を逸脱しない範囲で組み合わせ、省略、変更、周知技術の付加などをすることができる。
【符号の説明】
【0068】
1,2・・・マルチコアファイバ
11・・・コア
12・・・クラッド
12A,12B・・・凸部
12C〜12E・・・凹部
12F・・・中間凸部
13・・・第1保護層
14・・・第2保護層
71・・・クラッドロッド
72・・・コア被覆ロッド
72A・・・コアロッド
72B・・・ガラス層
80・・・マルチコアファイバ用母材
THL・・・挿入用貫通孔
VHL・・・凹部形成用空孔
P1・・・穿設工程
P2・・・挿入工程
P3・・・一体化工程
P4・・・線引き工程
P5・・・保護層形成
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8