(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥を行うことができる洗濯機(いわゆる、縦型の洗濯乾燥機)を例に挙げて説明するが、洗濯、すすぎ、脱水を行うことができる縦型の洗濯機(いわゆる、全自動洗濯機)に適用することもできる。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る洗濯機を示す外観斜視図である。なお、
図1は、外蓋3を開けた状態を示している。
【0011】
図1に示すように、洗濯機100は、外郭が鋼板と樹脂成型品とを組み合わせて構成された筐体1を備えている。筐体1の上部には、樹脂製のトップカバー2が設けられている。トップカバー2には、洗濯槽の上部を開閉する外蓋3が設けられている。
【0012】
外蓋3は、上向きに凸となるように山型に折れ曲がりながら後ろ側に開くことにより筐体1の上部に形成された開口部1aを開放するように構成されている。また、外蓋3は、各種操作ボタンスイッチ6や表示器7を備えた操作パネル8を備えている。この操作パネル8は、機体底部に設けたマイクロコンピュータ40(以下、マイコンと略記する)と電気的に接続されている。また、トップカバー2の前面には、洗濯機100の電源のオン/オフを行う電源スイッチ5が設けられている。また、筐体1内部の開口部1aの後方には、給水電磁弁4(
図2参照)が設けられ、この給水電磁弁4に水道水(清水)を供給するための接続口4a(
図2参照)がトップカバー2の後部に設けられている。また、トップカバー2には、洗剤・仕上げ剤容器28が設けられ、外蓋3を閉じたときに、洗剤・仕上げ剤容器28が外蓋3によって覆われるようになっている。
【0013】
図2は、本発明の実施形態に係る洗濯機の概略構造を示す縦断面図である。
【0014】
図2に示すように、洗濯機100は、筐体1内に、内槽9、外槽10、脈動翼盤11(回転翼盤)、流体バランサ12、洗濯水循環機構50などを含んで構成されている。
【0015】
内槽9は、洗濯兼脱水槽として機能するものであり、有底円筒状に形成され、鉛直方向(上下方向)に回転軸を有している。また、内槽9は、その外周壁に通水および通風のための複数の小さな貫通孔9aが形成されるとともに、その底壁に通水および通風のための複数の貫通孔9bが形成されている。また、内槽9は、駆動装置13によって回転可能に支持されている。
【0016】
外槽10は、有底円筒状に形成され、内槽9を同軸上に内包している。また、外槽10は、筐体1の上端部の四隅部に設けた隅板(不図示)に係止して垂下させた4本の支持棒に緩衝装置(不図示)を介して該筐体1内の中心部に弾性支持されている。
【0017】
また、外槽10の上縁部には、外槽カバー14が設けられている。この外槽カバー14は、内槽9の上方を閉塞するように構成されている。
【0018】
脈動翼盤11(パルセータともいう)は、略円盤状に形成され、内槽9の底部に設けられている。また、脈動翼盤11は、駆動装置13によって回転可能に支持されている。これにより、洗い時やすすぎ時に、回転翼盤11を回転させることで洗濯水を洗濯物ごと攪拌することができる。
【0019】
流体バランサ12は、合成樹脂などでリング状に形成され、内槽9の胴板の上端縁部(上縁部)に設けられている。この流体バランサ12は、内部に比重の大きな流体(塩水など)を封入して構成され、内槽9の回転時に洗濯物の偏りなどによって偏心が生じたときに、流体バランサ12内での流体の移動によって偏心を打ち消し、回転のバランスを維持する機能を有している。
【0020】
駆動装置13は、インバータ駆動電動機または可逆回転型のコンデンサ分相単相誘導電動機を使用した電動機13aと電磁操作クラッチ機構(クラッチ)13bと遊星歯車減速機構を内蔵して構成されている。また、駆動装置13は、マイコン40によって電動機13aとクラッチ13bを制御することによって、内槽9を静止させるように係止、または自由に回転できるように解放した状態で、脈動翼盤11を繰り返し正逆回転させる洗濯駆動モードと、内槽9と脈動翼盤11とを一体的に同一方向に回転させる脱水駆動モードと、を選択的に実行する機能を有する。
【0021】
洗濯水循環機構50は、循環ポンプ16、循環パイプ17(循環路、戻し流路)、循環水路18などで構成されている。
【0022】
循環ポンプ16は、筐体1の底部(外槽10の下方)に設けられ、循環パイプ17を介して外槽10の底部に溜められた洗濯水を、外槽10の底部に設けた通水通気口10bから循環水路18の洗濯水導入口14bに向けてくみ上げる機能を有する。なお、本実施形態では、循環ポンプ16が筺体1内の底部左側に配置されており、循環パイプ17が、外槽10の前方を上向きに延在し、外槽10の上部において後方に向きを変えて開口部1aの左側を通って、外槽カバー14の左端に位置する洗濯水導入口14bに接続されている(
図2参照)。このようにして循環パイプ17の長さを短くする(最短で構成する)ことにより、洗濯水に対する圧力損失を低減できる。
【0023】
循環パイプ17は、外槽10の通水通気口10bと洗濯水導入口14bとを連通させる流路を構成し、当該循環パイプ17の途中に前記循環ポンプ16が設けられている。なお、循環パイプ17の内径(直径)は、従来の循環パイプの内径(直径)よりも大きく形成されている。例えば、循環パイプ17の内径は、32.5mmであり、従来の循環パイプの内径は、19.5mmである。このように、循環パイプ17を従来よりも太くすることにより、洗濯水が流れる際の圧力損失を低減することができ、循環パイプ17を流れる洗濯水の循環流量を従来よりも増加させることができる。
【0024】
また、循環パイプ17には、循環ポンプ16の上流側に図示しない異物トラップ(第1のフィルタ)が設けられ、異物トラップの上流側には、排水弁15を備えた排水ホース24が分岐して接続されている。
【0025】
循環ポンプ16が駆動すると、外槽10の底の洗濯水は、外槽10の底部に形成された通水通気口10bから循環パイプ17を通り外槽10の外部を通って外槽10の上部に運ばれ、洗濯水導入口14bから循環水路18に導入され、循環水路18から内槽9内に戻るようにして循環する。
【0026】
一方で、本実施形態では、循環ポンプ16を利用した循環流路の以外に、下面に羽根を設けた回転翼盤11の回転による遠心力で、洗濯水を持ち上げて内槽9内に散水する、別の循環流路も有している。この別の循環流路は、
図2に示す通り、内槽9の内周面に、周方向の2箇所に循環流路部材51,52を取り付けて形成される。これら2つの循環流路部材51,52は、内槽9の回転軸を中心として互いに対向する位置に設けられている。
【0027】
循環流路部材51,52は、所定の幅で鉛直方向に延びる略板状の部材で構成されており、この循環流路部材51,52の上流側には流入部51a,52aが形成され、下流側には糸くずフィルタ(第2のフィルタ)51b,52bが取り付けられている。
図15に示すように、流入部51a,52aは、内槽9底部の側壁との間で水の流入口を形成し、回転翼盤11の回転に伴って、回転翼盤11の下から水が吸い込まれる。この流入口から循環流路部材51,52と内槽9壁面との間の水路へ流入した水は、勢いで水路内を上方へ流れ、糸くずフィルタ51b,52bで糸くずが捕集された後、内槽9内に流入する。
【0028】
この糸くずフィルタ51b,52bは、水位が低くても循環水が到達して糸くずが捕集できるように、メッシュ状のフィルタ部の下端が、内槽9の高さの半分より低い位置となっている。
【0029】
また、洗濯機100は、
図2に示すように、乾燥運転時に機能する乾燥ユニット60を備えている。この乾燥ユニット60は、公知の方法によって構成することができ、外槽10の底部と外槽カバー14とを連通させる乾燥ダクト22(一部のみ図示)に、送風ファン19(
図12参照)、ヒータ20(
図12参照)、リントフィルタ(不図示)、除湿機構(不図示)を備えることで構成されている。これにより、送風ファンを運転し、ヒータを通電することで、内槽9内に温風が吹き込まれ、内槽9内の洗濯物が温められて水分が蒸発する。そして、高温多湿となった空気が、乾燥ダクトを通って除湿機構によって低湿の空気となり、ヒータで再度加熱され、内槽9内に吹き込まれるようにして循環する。
【0030】
なお、洗濯機100は、ゴム製の蛇腹管29a,29b,29c,29dを備えている。これら蛇腹管29a〜29dは、振動変位側に設けた外槽10や外槽カバー14、固定側(筐体1やトップカバー2など)に設けた乾燥ダクト22や給水電磁弁4,循環ポンプ16などとの接続に用いられている。
【0031】
図3は、内槽を収容した外槽を示す斜視図である。なお、
図3では、外槽カバー14に設けられる内蓋(不図示)を取り外した状態を示している。
【0032】
図3に示すように、外槽カバー14は、手前側に略台形状の洗濯物投入口14a(投入口)が形成されている。また、外槽カバー14には、洗濯物投入口14aを開閉する内蓋(不図示)が設けられている。内蓋は、洗濯物投入口14aの後端に設けられたヒンジ機構(不図示)を介して洗濯物投入口14aの全体を閉塞するように構成されている。
【0033】
また、外槽カバー14には、洗濯物投入口14bの後方に、内槽9内に洗濯水を導入する洗濯水導入口14b、外槽10内に温風を導入する温風導入口14c、水道栓からの給水を導入する給水導入口14dが設けられている。また、洗濯水導入口14bは、左端に位置している。
【0034】
脈動翼盤11は、回転することによって上面に乗っている洗濯物に上下方向の動きを繰り返し発生するように回転方向になだらかに傾斜した複数の傾斜面からなる隆起部11aと、多数の水抜き貫通孔11bと、を備える。隆起部11aは、周方向に傾斜し、かつ、外周部位が順次高くなるように径方向に傾斜する面を有している。本実施形態では、隆起部11aが2ヶ所(一方のみ図示)設けられているが、2ヶ所に限定されるものではなく、3箇所以上であってもよい。また、脈動翼盤11の隆起形状は、一例であって本実施形態に限定されるものではない。
【0035】
この脈動翼盤11が回転することで、脈動翼盤11上の洗濯物は、該脈動翼盤11上を滑りながら該脈動翼盤11の回転方向に回転するとともに隆起部11aによって押し上げられて上下方向に振動する。このとき、洗濯水を循環しながら洗濯物の上方から散水することで、洗濯物に洗濯水を行き渡らせることができる。こうすることで、内槽9内に洗濯物が洗濯水に浸かるほど洗濯水を溜めなくても、洗濯物を洗濯することができ、大幅な節水が可能になる。ちなみに、洗濯物に洗濯水を均一に散布することができれば、洗浄力が向上するため、洗濯時間の短縮につながる。なお、洗濯水を均一に散布する詳細な構成については後記する。
【0036】
図4は、外槽カバーを裏面側から見たときの平面図である。なお、
図4は、外槽カバー14に水路カバー30が取り付けられた状態を示している。
【0037】
図4に示すように、洗濯物投入口14aは、径方向の中心Oよりも後方に位置するとともに左右方向(幅方向)に延在する直線部14a1と、中心Oよりも前方に位置するとともに左右方向に延在する直線部14a2と、直線部14a1の一端(左端)と直線部14a2の一端(左端)とをつなぐ円弧部14a3と、直線部14a1の他端(右端)と直線部14a2の他端(右端)とをつなぐ円弧部14a4と、を有している。なお、洗濯物投入口14aの平面視における形状は、
図4の形状に限定されるものではなく、例えば、直線部14a2が円弧形状であって、全体として略半径状に形成されていてもよい。また、外槽カバー14の洗濯物投入口14aの外周部分は、流体バランサ12と対向するようになっている。
【0038】
水路カバー30は、外槽カバー14の裏面(内槽9側の面)に設けられることで、水路カバー30と外槽カバー14とによって循環水路18を構成している。また、水路カバー30は、平面視略三角形状を呈し、洗濯物投入口14aの直線部14a1に沿って直線状に延在する吐出口31(戻し口)を有している。この吐出口31は、直線部14a1よりも短く形成されている。
【0039】
また、水路カバー30は、吐出口31の一端側(左端側)に洗濯水導入口14bが位置している。また、水路カバー30は、直線部14a1に沿って延在する直線状の外周辺部32aと、この外周辺部32aの一端(左端、図示右側)から洗濯水導入口14bに向けて延在する外周辺部32bと、外周辺部32aの他端(右端、図示左側)から洗濯水導入口14bに向けて延在する外周辺部32cと、を有している。また、水路カバー30の外周縁部は、複数個所において外槽カバー14にねじ固定されている。また、水路カバー30の外周縁部と外槽カバー14とは、図示しないパッキンを介して水密に構成されている。
【0040】
このように、本実施形態では、外槽カバー14と水路カバー30とによって、洗濯水導入口14bから吐出口31に通じる循環水路18が構成されている。循環水路18の壁の一面(上面)を外槽カバー14によって構成することで、外槽カバー14から下方(内槽9側)に突出する突出量を減らすことができ、洗濯水をより高い位置から散布させることができる。
【0041】
図5は、水路カバーの内部を示す斜視図、
図6は、水路カバーの内部を示す平面図である。なお、
図5は、水路カバー30の内部を手前側上方から見下ろした状態を示している。
【0042】
図5および
図6に示すように、水路カバー30は、流路の底面側を構成する底壁33aと、外周辺部32bにおいて底壁33aから上向きに立ち上がる側壁33bと、外周辺部32cにおいて底壁33aから上向きに立ち上がる側壁33cと、側壁33bの前端と側壁33cの前端とを左右方向に直線状につなぐ側壁33dと、を有して凹状に構成されている。
【0043】
また、外周辺部32bと外周辺部32cとをつなぐ角部は、洗濯水導入口14b(
図4参照)に対向する位置であり、底壁33aよりも一段高くなる平面視略三角形状の底壁33eが形成されている。なお、底壁33eは、一段高くなるように形成せずに、底壁33aと同じ高さ位置に形成されていてもよい。
【0044】
また、底壁33a上には、洗濯水を吐出口31の全体から横一文字状(カーテン状)に吐出させるための、複数本の案内突起34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g、34h,34iが形成されている。各案内突起34a〜34iはすべて底壁33aから上向きに山型に突出して形成されている。
【0045】
案内突起34a〜34cは、それぞれ、洗濯水導入口14b(
図4参照)に近い側において細長く形成され、底壁33eから吐出口31(
図4参照)に向けて延在している。具体的には、案内突起34b,34cは、底壁33eから右斜め前方に向けて延在し、その後徐々に前方に向きを変えて延在することで、底壁33eから吐出口31に向けて湾曲して形成されている。また、案内突起34a〜34cの基端は、近接して配置され、吐出口31に向けて、隣り合う案内突起34a〜34cの間隔が徐々に広くなるように構成されている。また、案内突起34a〜34cは、吐出口31の近傍まで延びている。これら案内突起34a〜34cは、洗濯水導入口14b(
図4参照)から導入された洗濯水を吐出口31の一端側(左側)に向けて案内する機能を有している。
【0046】
また、側壁33bは、洗濯水導入口14b側から他端側(他側)に向けて延在する壁面33b1と、吐出口31に向かう途中において一端側(一側)に向けて延在する壁面33b2と、を有している。なお、壁面33b1から壁面33b2に切り替わる変極点P(
図6参照)は、吐出口31の端部31a(一端、
図4参照)よりも他端側に位置している。このような形状とすることにより、吐出口31の端部31aから洗濯水を一側(外側)に向けて吐出させることが可能になる。
【0047】
案内突起34dは、案内突起34cの右隣に離間して形成されるとともに、側壁33cから吐出口31側に向けて延在している。また、案内突起34dは、案内突起34a〜34cよりも短く形成され、案内突起34a〜34cと同様な向きに湾曲して形成されている。これにより、案内突起34dの手前側において洗濯水を吐出口31に向けて案内するようになっている。
【0048】
案内突起34eは、案内突起34cと接して形成され、略左右方向に延在している。この案内突起34eは、側壁33cに沿って形成され、洗濯水導入口14b(
図4参照)から導入される洗濯水を他側(右側)に向けて案内する機能を有している。
【0049】
案内突起34fは、案内突起34dの右隣に離間して形成され、側壁33c側から吐出口31(
図4参照)に向けて延在している。また、案内突起34fは、前記と同様な向きに湾曲して形成されている。これにより、案内突起34fの手前側において洗濯水を吐出口31に向けて案内するようになっている。
【0050】
案内突起34gは、案内突起34fの右隣に離間して形成され、平面視略L字状に形成されている。また、案内突起34gは、側壁33cに沿って延在する突起部34g1と、吐出口31側に向けて延在する突起部34g2とで構成されている。突起部34g1によって、洗濯水を後記する案内突起34h側に案内し、突起部34g2によって、吐出口31側に向けて案内するようになっている。
【0051】
案内突起34hは、案内突起34gの右隣に離間して形成され、平面視略L字状に形成されている。また、案内突起34hは、側壁33cに沿って延在する突起部34h1と、吐出口31側に向けて延在する突起部34h2とで構成されている。突起部34h1によって、洗濯水を後記する案内突起34i側に案内し、突起部34h2によって、吐出口31側に向けて案内するようになっている。
【0052】
案内突起34iは、案内突起34hの右隣り離間して形成され、側壁33cから吐出口31側に向けて延在している。この案内突起34iによって、洗濯水が、吐出口31の右端に導入され過ぎるのを抑制でき、案内突起34iの手前側において洗濯水を吐出口31に向けて案内するようになっている。
【0053】
図7は、
図6のA−A線矢視断面図である。なお、
図7は、各案内突起34a〜34iの手前側で左右方向(幅方向)において切断して、前側から後側に向けて見たときの状態である。
【0054】
図7に示すように、案内突起34a,34b,34cは、底壁33aからの高さが最も高く形成され、案内突起34d,34f,34g,34h,34iは、底壁33aからの高さが案内突起34a〜34cよりも低く形成され、案内突起34iは、底壁33aからの高さが最も低く形成されている。
【0055】
このように、洗濯水導入口14b(
図4参照)に近い側の案内突起34a〜34cの長さL1を、遠い側の案内突起34d,34f,34g,34h,34iの長さL2よりも長く形成し、さらに、洗濯水導入口14b(
図4参照)に近い側の案内突起34a〜34cの高さH1を、遠い側の案内突起34d,34f,34g,34hの高さH2よりも高く形成することで、洗濯水導入口14bから導入された洗濯水を吐出口31の全体から均一な流量で吐出させることが可能になる。つまり、案内突起34a〜34i(案内突起34eを除く)の長さL1,L2は、整流機能として働き、高さH1,H2は、流量調整として働くようになっている。
【0056】
図8は、
図4のB−B線矢視断面図、
図9は、
図4のC−C線矢視断面図である。なお、
図8において、底壁33aから上向きに突出している突起は案内突起34hの断面を示している。
【0057】
図8および
図9に示すように、水路カバー30は、外槽カバー14の下面に図示しないパッキンを介して水密に取り付けられている。本実施形態では、水路カバー30と外槽カバー14とで、洗濯水導入口14bから吐出口31までの循環水路18が構成されている。また、水路カバー30が取り付けられる外槽カバー14の下面14eは、水路カバー30の底壁33aからの高さが同じ平面14e1と、吐出口31の近傍において平面14e1から該吐出口31に向けて下降するように傾斜する傾斜面14e2と、を有している。
【0058】
水路カバー30は、先端部(直線部14a1側の部分)に吐出口31が形成されている。この吐出口31は、底壁33aの前端33a2と、側壁33dとの間に隙間を形成することによって構成されている。側壁33dは、下端から斜め後方に向けて延在する傾斜面33d1を有している。この傾斜面33d1の下端は、底壁33aの面と略同じ高さに位置している。また、傾斜面33d1の傾きは、鉛直方向(上下方向)に対して前側に角度θ(
図8参照)となるように設定されている。また、傾斜面33d1の延長線上は、内槽9の回転中心O1(
図10参照)よりも前側に位置するように設定される。
【0059】
これにより、吐出口31から洗濯水が吐出されたときに、重力の影響を受けたとしても、洗濯水を内槽9の回転中心O付近に着水させることができる。また、前記のように傾斜面33d1の向きを設定することにより、洗濯槽に投入される洗濯物の量が定格ぎりぎりとなった場合(
図11(a)のラインH3参照)であっても、洗濯物に着水する位置を内槽9の回転中心O1に近づけることができ、洗濯物全体に洗濯水を散布することが可能になる。
【0060】
また、底壁33aは、側壁33c側から吐出口31側に向けて傾斜する傾斜面33a1となっている。これにより、水路カバー30の底壁33aの洗濯水を吐出口31に向けて流すことができ、水路カバー30の底壁33aに洗濯水が残留するのを抑制することができる。よって、乾燥した衣類が残留した洗濯水によって濡れるのを抑制することができる。また、案内突起34a,34b,34c,34d,34f,34g,34h,34iを離間して形成することによっても、水路カバー30の底壁33aに洗濯水が残留するのを抑制することができ、乾燥した衣類が残留した洗濯水によって濡れるのを抑制することができる。
【0061】
また、吐出口31は、左右方向(洗濯機100の幅方向)に沿ってスリット状に細長く形成されている。
図4に示す通り、吐出口31の右端は、洗濯水導入口14bの右端よりも右側に位置しており、吐出口31の左端は、洗濯水導入口14dの左端よりも左側に位置している。この吐出口31の幅Wa(
図4参照)は、流体バランサ12の内径よりも内側に位置し、かつ、洗濯物投入口14aの最大幅Wmaxの半分以上(50%以上)に設定されている。これにより、洗濯水を流体バランサ12に接触させることなく、洗濯物全体に洗濯水を散布することができる。なお、幅Waが最大幅Wmaxの半分未満(50%未満)であると、内槽9内の洗濯物の全体に洗濯水を散布することが難しくなる。なお、本実施形態では、幅Waは、最大幅Wmaxの約70%に設定されている。
【0062】
図10は、シャワー形状を示す模式図である。なお、
図10は、外槽10内に内槽9が収容され、外槽10の開口に外槽カバー14(内蓋は不図示)が取り付けられた平面図である。また、吐出口31の位置を、太い実線で図示している。
【0063】
図10に示すように、吐出口31から洗濯水Q(二点鎖線参照)が吐出されると、吐出口31の幅方向の全体から膜状に散布される。また、吐出口31から吐出する際の洗濯水Qは、吐出口31の左右の端部31a,31bよりも左右外側に向けて、吐出口31の幅Waよりも広い幅となって膜状に吐出される。なお、実際、吐出口31から出た直後の洗濯水Qは、幅Waよりも広くなるが、その後、洗濯水Qの幅が縮まり、洗濯水Qが内槽9の底面(脈動翼盤11)に着水する位置では、吐出口31の幅Waと同等な幅となる。このように、洗濯水Qは、吐出口31から吐出されると、一旦吐出口31の幅Waよりも広がり、その後縮まって、最終的には、吐出口31の幅Waと同等の幅で着水するようになっている。
【0064】
図11(a)は、本実施形態における洗濯物高さとシャワーとの位置関係を示す側断面図、(b)は比較例における洗濯物高さとシャワーとの位置関係を示す側断面図である。なお、
図11(b)は、洗濯水を円錐状に散水させた場合を模式的に示す図である。
【0065】
図11(b)の比較例に示すように、外槽カバー14に、遠心力を利用して洗濯水を内槽9の上部から円錐状に吐出させる水路カバー200が設けられたものでは、高さH20で示すように、低負荷時の洗濯物(衣類)高さの場合には、洗濯物に対する洗濯水の散布面積を十分広く確保することができ、洗濯物全体に洗濯水を散布することができる。しかし、高さH10で示すように、高負荷時の洗濯物高さの場合には、洗濯水が広がりきるまでに洗濯物が当たってしまい、洗濯物に対する洗濯水の散布面積が低下し、洗濯物の一部にしか洗濯水を散布できなくなる。このように、負荷量が増加するにつれて、洗濯水の散布面積が低下し、洗浄力の低下や洗いムラ発生の原因となる。
【0066】
そこで、本実施形態では、
図11(a)に示すように、横一文字状に洗濯水(循環水)Qを散布する構成にしたものである。このように、横一文字(紙面垂直方向に一文字)に洗濯水Qを散布することで、高さH3で示すように低負荷時の洗濯物(衣類)高さの場合であっても、高さH4で示すように高負荷時の洗濯物(衣類)高さの場合であっても、洗濯水Qの散布面積が変化することなく、洗濯物全体に洗濯水を散布することができる。なお、洗濯水Qを散布する場合には、脈動翼盤11や内槽9が回転することで、洗濯水Qを洗濯物全体散布できる。このように、本実施桁形態では、負荷量(衣類高さ)が増加したとしても、洗濯物に対する洗濯水の散布面積が変化せず、洗いムラの低減や、高負荷時の洗浄力の向上が図れる。
【0067】
また、幅Waを広くして吐出口31の開口面積を広くしたことによって、比較例のように(
図11(b)参照)、洗濯水を絞って出す(勢いよく出す)必要がなくなるので、比較例よりも大流量の洗濯水を吐出口31から吐出し易くなる。なお、本実施形態では、内槽9の底から外槽カバー14の上部に戻す循環パイプ17(循環ポンプ16の経路も)を太く(内径:19mm→32.5mm)することで、圧力損失を低減して、循環ポンプ16のモータの回転速度を上げることなく、流量(23L/分→45L/分)を増加させたものである。本実施形態に限らず、循環ポンプ16から洗濯水導入口14bに至るまでの循環流路のうち、断面積の最も狭い部分が500mm2(平方ミリメートル)以上となるようにすれば、循環流量の増加が期待できる。
【0068】
さらに、本実施形態では、循環ポンプ16の上流側に設けられる異物トラップを、格子状のフィルタ部で形成したので、メッシュ状のフィルタ部の場合と比べて詰まり難く、水が循環する上での流路抵抗を小さくでき、循環流量の増加に効果的である。ただし、異物トラップを格子状のフィルタ部にするだけだと、異物の捕集性能が低下してしまうので、メッシュ状のフィルタ部を有する糸くずフィルタ51b,51bを別途設けている。
【0069】
この糸くずフィルタ51b,52bは、回転翼盤11が回転していれば、循環流路部材51,52を介して異物が捕集される。このため、循環ポンプ16が駆動しておらず異物トラップで異物を捕集できないときでも、回転翼盤11の回転により糸くずフィルタ51b,52bで異物が捕集でき、捕集性能が向上する。また、循環ポンプ16の下流側であって吐出口31の上流側に、メッシュ状のフィルタ部を設ける必要もなくなり、吐出口31から大流量の循環水を勢いよく散布し易くなる。
【0070】
ところで、循環ポンプがないタイプの洗濯機では、回転翼盤等の回転による遠心力で水を上方に持ち上げて、循環流路部材の下流側に設けられたスリット状の散水口から、内槽内に洗濯水を循環させている。しかし、このようなタイプの洗濯機では、内槽内の洗濯物の量や洗濯水の量の影響を受け、内槽に投入される洗濯物が増えると散水量が少なくなり、洗濯水を洗濯物に安定して散布できなくなる。しかし、本実施形態では、循環ポンプ16を使用して洗濯水を循環させているので、吐出口31から出る洗濯水の量をほぼ一定にすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、比較例と比べて扁平形状にできるので、吐出口31を内槽9の上縁部に設けられた流体バランサ12の上面12aよりも上側に配置でき、洗濯物と吐出口31との距離を長く確保でき(水の落差が大きくなり)、洗浄力を高めることが可能になる。
【0072】
なお、本実施形態の循環流路部材51,52の下流側には、スリット状の散水口を設けていないが、糸くずフィルタ51b,52bを介して内槽9内に洗濯水を循環させることができる。特に、内槽9内に面するフィルタ部出口が、内槽9の高さの半分より低い位置にも存在しているので、内槽9の上方から散布される循環ポンプ16によるシャワーが掛かり難い中位にある洗濯物、すなわち上の洗濯物と下の洗濯物の間にある洗濯物にも、循環水を行き渡らせることが可能となる。
【0073】
図12は、本発明の実施形態に係る洗濯機の制御ブロック図である。
【0074】
図12に示すように、マイコン(制御装置)40は、各操作ボタンスイッチ6に接続される操作ボタン入力回路41、水位センサ21、温度センサ26、振動センサ27と接続され、使用者のボタン操作や洗濯工程、乾燥工程での各種情報信号を取得する。また、マイコン40は、駆動回路42を介して、給水電磁弁4、クラッチ13b、排水弁15、循環ポンプ16、電動機13a、送風ファン19、ヒータ20などと接続され、これらの開閉や回転、通電を制御する。また、マイコン40は、使用者に洗濯機の動作状態を知らせるための7セグメント発光ダイオードからなる表示器25、発光ダイオードからなる表示器7、ブザー43と接続されている。
【0075】
図13は本発明の実施形態に係る洗濯機の制御処理の一部を示すフローチャート、
図14は本発明の実施形態に係る洗濯機の制御処理の他の一部を示すフローチャートである。マイコン40は、電源スイッチ5が押されて電源が投入されると起動し、
図13および
図14に示す洗濯および乾燥の基本的な制御処理プログラムを実行する。洗濯コースが設定された場合には、洗い運転、すすぎ運転、最終脱水運転が実行される。
【0076】
図13に示すように、ステップS101において、マイコン40は、洗濯機100の状態確認および初期設定を行う。
【0077】
ステップS102において、マイコン40は、操作パネル8(
図1参照)の表示器7,25(
図12参照)を点灯表示し、操作ボタンスイッチ6からの入力指示にしたがって洗濯コースを設定する。入力指示がない状態では、標準の洗濯コースまたは前回実施の洗濯コースを自動的に設定する。
【0078】
ステップS103において、マイコン40は、操作パネル8の操作ボタンスイッチ6におけるスタートスイッチ(操作ボタンスイッチ)からのスタートスイッチ信号の入力を監視する。マイコン40は、スタートスイッチ信号の入力が無いと判定した場合には、ステップS103の処理を繰り返し、スタートスイッチ信号の入力が有りと判定した場合には、ステップS104に進む。
【0079】
ステップS104において、マイコン40は、洗剤量検出処理を実行する。この洗剤量検出処理は、洗い水を給水する前の洗濯物が乾布状態において、内槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を一方向に回転させたときに、該脈動翼盤11に作用する回転負荷量に基づいて洗濯物の布量を検出することにより行う。マイコン40は、電動機13aとクラッチ13bを制御し、検出した布量に基づいて洗剤の適量(洗剤量)を求める。洗剤量は、予め設定した布量と洗剤量の対照テーブルを参照することによって求める。
【0080】
具体的に、電動機13aとしてインバータ駆動電動機を使用した布量の検出は、電動機13aを回転させるように所定時間給電した時の到達回転速度を検出することによって行う。電動機13aとしてコンデンサ分相単相誘導電動機を使用した布量の検出は、電動機13aを飽和回転速度まで上昇させるように給電した状態で断電した後の惰性回転減速特性を検出することによって行う。そして、好ましい洗剤量は、予め設定した布量と洗剤量の対照テーブルを参照することによって求める。
【0081】
また、洗濯水量は、布量が所定の布量の範囲(適量)内のときには脈動翼盤11を越えない水位を維持して外槽10の底部に溜まるように洗濯水量(水位h1)を設定する。
【0082】
また、マイコン40は、検出結果(布量)に基づいて洗濯時間を求めて設定する。布量検出が行われない場合には、標準の洗濯時間を設定する。
【0083】
ステップS105において、マイコン40は、求めた洗剤量を操作パネル8の表示器25に表示する。
【0084】
ステップS106において、マイコン40は、洗剤給水電磁弁(不図示)を開き、洗剤・仕上げ剤容器28(
図1参照)の洗剤投入室に対して洗剤給水を実行する。なお、使用者は、洗剤給水前に、表示された量の粉末洗剤を洗剤・仕上げ剤容器28(
図1参照)の洗剤投入室に投入した後、外蓋3(
図1参照)を閉じるように操作する。洗剤給水が流れている洗剤投入室に投入された粉末洗剤は、洗剤給水の水と共に洗剤・仕上げ剤容器28を通り外槽10の底部に落下する。
【0085】
ステップS107において、マイコン40は、洗剤溶かし水位まで給水後、洗剤給水を停止する。この実施形態では、洗剤給水量を洗濯量(布量)に関わらず、例えば、約10リットルに設定した。この水量は、この後の洗剤溶かし(ステップS108)で内槽9を回転させたときに、内槽9の底で給水した水と洗剤を攪拌するのに十分な水量で、かつ、水面が脈動翼盤11の下面の高さより低くなる(洗濯物が洗剤溶かし前に濡れない)ように設定される。
【0086】
ステップS108において、マイコン40は、内槽9と脈動翼盤11を一体的に一方向に緩速回転(例えば、約毎分70回転)させることによって、該内槽9の底面で外槽10の底部に投入された洗剤溶かし水と粉末洗剤を攪拌して高洗剤濃度の洗い水を生成する洗剤溶かしを実行する。洗剤溶かしの時間は、例えば1分間に設定される。低温(低水温)、溶けにくい粉末洗剤の条件でも約90%の溶解率となる。生成した洗い水の洗剤濃度は、標準濃度の約7倍である。ここで、標準濃度は、粉末洗剤量20グラム/洗い水量30リットルの割合である。
【0087】
ステップS109において、マイコン40は、前洗いを実行する。この前洗いでは、内槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させる撹拌を間欠的に行い、脈動翼盤11の正逆回転中に循環ポンプ16を運転することによって外槽10の底部の洗い水(洗濯水)を循環パイプ17によってくみ上げて、外槽カバー14に形成された洗濯水導入口14bから水路カバー30に洗濯水を導入する。そして、水路カバー30に形成された吐出口31から洗濯物上に洗濯水を横一文字状に散布する。このように、内槽9が正逆回転中に吐出口31から洗濯水が散布されるので、洗濯物(衣類)の全体に洗濯水を散水することができる。また、マイコン40は、脈動翼盤11と循環ポンプ16の停止期間中に水位センサ21の検出信号を参照しながら洗剤給水電磁弁(不図示)および洗濯給水電磁弁(不図示)を開いて水位が設定水位(h1)を越えないように補給水を行う。この運転を複数回繰り返すことによって洗濯物を洗い水(洗濯水)に馴染ませて脈動翼盤11上に分散させるようにして行う。
【0088】
第1回目の正逆回転時には、洗剤濃度が約7倍の洗い水が洗濯物に降り掛かって該洗濯物内に浸透していく。高濃度の洗い水は、水路カバー30の吐出口31(
図4参照)から吐出され、洗濯物全体に満遍なく散布される。このため、洗剤の浸透作用で洗濯物にむらなく浸透する。洗濯物に浸透した高濃度の洗い水は、油の溶解能力が高く、油脂汚れを溶解し、洗濯物から汚れを浮き上がらせる効果が非常に大きく、高い洗浄力が得られる。
【0089】
また、補給水を繰り返すことによって洗濯物に散布される洗い水の洗剤濃度が低下して行き、前洗い終了段階では、洗剤濃度が標準濃度の2倍程度となる。
【0090】
ステップS110において、マイコン40は、本洗いを実行する。この本洗いでは、先ず、前記と同様な方法で布量検出を実行して、設定されている洗濯時間を補正する。その後、内槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させながら循環ポンプ16を運転して外槽10の底部に溜った洗濯水(洗い水)を水路カバー30に形成された吐出口31から洗濯物に散布する洗い水循環を行う約1分間の撹拌と、循環ポンプ16の運転を停止して洗濯水(洗い水)の循環を止めた状態で脈動翼盤11を正逆回転させる約1分間の布ほぐし撹拌とを繰り返す。
【0091】
ところで、従来のように、洗濯水を洗濯物に勢いよく吹き付けるものでは、洗濯物の表面で水はねが発生し、洗濯物に洗濯水が浸透し難くなり、また外槽カバー14の内蓋が汚れる問題があった。しかし、本実施形態では、吐出口31の開口を広げることで、洗濯水を勢いよく出さなくても、大流量を確保することができる。このため、洗濯物に洗濯水を勢いよく吹き付けることなく散布できるので、洗濯物に洗濯水を浸透させ易くなる。さらに、本洗い中に内槽9内に発生する洗剤の泡を消す効果もあるため、必要以上な発泡を抑制できる。このため、洗剤の泡のクッション作用による洗浄力の低下を防ぐことができる。さらに、本洗い後の排水をスムーズにでき、脱水時の発泡現象を防止できる効果もある。
【0092】
そして、ステップS110では、マイコン40は、循環ポンプ16の運転を停止して洗濯し(洗い水)の循環を止めた状態で脈動翼盤11を正逆回転させる約1分間の均一化撹拌を実行した後、本洗いを終了する。
【0093】
図14に示すように、ステップS111において、マイコン40は、第1回目のすすぎ工程の中で、回転シャワーすすぎを実行する。この第1回目のすすぎ工程では、先ず、排水弁15を開いて外槽10の底部に溜っている洗濯水(洗い水)を排水した後に、内槽9と脈動翼盤11を一体的に一方向に回転させて洗濯物に含まれている洗い水を遠心脱水する。この遠心脱水時の内槽9と脈動翼盤11の回転速度は、後記する最終脱水における回転速度(約1000rpm)と同様な回転速度に設定される。これにより、高い脱水率を実現する脱水運転が行われる。
【0094】
そして、マイコン40は、排水弁15を開けたまま、内槽9と脈動翼盤11を一体的に一方向に緩速回転(35〜40rpm)させながら、洗濯給水電磁弁(不図示)を開放して水道水(清水)を散水口14fから脈動翼盤11上の洗濯物に散布されるように給水する(回転シャワーすすぎ)。なお、この回転シャワーすすぎのときは、循環ポンプ16は駆動させていないので、異物トラップでの異物の捕集は行われず、脈動翼盤11も内槽9と一体的に回転しており水のかき上げも行われないので、糸くずフィルタ51b,52bでの糸くずの捕集も行われない。
【0095】
ステップS112において、マイコン40は、第2回目のすすぎ工程の中で、溜めすすぎを実行する。この第2回目のすすぎ工程では、排水弁15を閉じた後、内槽9と脈動翼盤11を一体的に一方向に緩速回転(35〜40rpm)させながら、洗濯給水電磁弁(不図示)を開放して水道水(清水)を散水口14fから脈動翼盤11上の洗濯物に散布されるように給水する。
【0096】
外槽10の底部に水道水が溜まってくると、循環ポンプ16を駆動させて、吐出口31から水を散布させる。その後、洗濯給水電磁弁だけでなく、柔軟仕上げ剤給水電磁弁(不図示)も開いて洗剤・仕上げ剤容器28(
図1参照)の柔軟仕上げ剤投入室に給水することによって、該柔軟仕上げ剤投入室内の柔軟仕上げ剤を外槽10の底部に導入する。ここで、洗濯給水電磁弁や柔軟仕上げ剤給水電磁弁を開弁しているときは、電流値が商用電源の上限を超えないように、循環ポンプ16のモータの回転速度を落としている。したがって、このときの循環流量は、本洗いのときと比べると少ない。しかし、水路カバー30の吐出口31から出る洗濯水(すすぎ水)は、本洗いのときに及ばないものの、洗濯物にムラなく散布されるため、洗濯物に含まれる洗剤成分を効率よく希釈でき、すすぎ性能を高くできる。このとき、異物トラップでは、異物の捕集も同時に行われる。
【0097】
次に、マイコン40は、内槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を120rpm程度で正逆回転させながら、溜まったすすぎ水を撹拌する。このとき、循環ポンプ16は駆動していないので、異物トラップでの異物の捕集は行われないが、糸くずフィルタ51b,52bによる糸くずの捕集は行われる。
【0098】
ステップS113において、マイコン40は、最終脱水を実行する。最終脱水では、排水弁15を開放したままの状態で内槽9と脈動翼盤11を一体的にして一方向に約1000rpmで高速回転させるように洗濯脱水駆動装置を運転して内槽9内の洗濯物を遠心脱水する。この最終脱水の運転時間は、所望の脱水率が得られる時間に設定する。
【0099】
ステップS114において、マイコン40は、洗濯乾燥コースが設定されているか否かを判定する。マイコン40は、洗濯乾燥コースが設定されていないと判定した場合には(S114、N)、ステップS115をスキップして処理を終了し、洗濯乾燥コースが設定されていると判定した場合には(S114、Y)、ステップS115に進む。
【0100】
ステップS115において、マイコン40は、洗濯乾燥コースが設定されている場合は、乾燥を実行する。この乾燥では、排水弁15を開放したまま、洗濯行程と同様に、内槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させながら、乾燥ダクト(不図示)の途中に設けた送風ファン19(
図12参照)を運転する。これにより、外槽10内の空気が通水通気口10b(
図2参照)から乾燥ダクト(不図示)内に吸い出され、乾燥ダクト内を通過するときに該乾燥ダクト内に設置した除湿機構から流れ落ちる冷却水に触れることで冷却除湿される。冷却除湿された空気は、リントフィルタを通して糸屑を捕集し、ヒータ20によって加熱された後に温風導入口14c(
図4参照)から内槽9内に吹き込まれる。
【0101】
そして、マイコン40は、温度センサ26(
図12参照)によって温風の温度を監視しながら乾燥を実行し、温度変化の割合が所定の値になったときに乾燥を終了する。
【0102】
ここで、循環ポンプ16の流量(循環流量)と、洗浄性能との関係について、
図16を用いて説明する。
図16は、循環流量と洗浄比との関係を示すグラフである。ちなみに、洗浄比とは、供試洗濯機の洗浄度と標準洗濯機の洗浄度の比であり、日本工業規格『家庭用電気洗濯機の性能測定方法(JISC9811)』に規定されている。つまり、洗浄比が高いほど、洗浄性能が高くなる。
【0103】
図16の実線は、本実施形態に係る縦型の洗濯機100における循環流量と洗浄比との関係を示すグラフであり、
図16の破線は、ドラム式洗濯機における循環流量と洗浄比との関係を示すグラフである。
図16に示すように、循環流量が多いほど洗浄比(洗浄性能)が向上し、一定以上の循環流量になると洗浄比が飽和するようになる。具体的には、循環流量を30L/min以上に高くすれば、従来の一般的な洗濯機(洗浄比=1.10)よりも高い洗浄比(洗浄性能)が得られる。
【0104】
ここで、ドラム式洗濯機の場合、同等の洗浄比を得るためには36L/min以上の循環流量が必要となっている。すなわち、縦型の洗濯機では、ドラム式洗濯機よりも低い循環水量であっても、同等の洗浄比が得られる。この理由の一つは、縦型の洗濯機の場合、回転翼盤11の正逆回転によって洗濯物に動きを与えながら洗浄できるためである。また他の理由としては、縦型の洗濯機の場合、内槽9の下部にある洗濯物は水に浸かっており、流量を多くしなくても内槽9内の洗濯物全体に含水させ易いことが考えられる。
【0105】
また、
図16のように、縦型洗濯機の場合、50L/minを超えると、洗浄比が飽和してくるので、循環流量としては、30L/min以上50L/min以下であれば良い。これにより、循環ポンプ16を駆動させるモータにおける消費電力が抑制できるだけでなく、循環ポンプ16の上流側に溜めておく水の量が少なくて済むので流路の拡張などの構造的変更を最小限にできる。ただし、さらに高い洗浄比である1.15を超えるためには、循環流量を40L/min以上とするのが望ましい。
【0106】
次に、本洗い工程における循環ポンプ16の駆動タイミングについて、
図17を用いて詳細に説明する。
【0107】
先ず、本洗い1では、補給水が行われており、外槽10内に水がまだ十分に溜まっていないので、循環ポンプ16は低めの回転速度で駆動する。次の本洗い2では、早い段階で多くの洗濯物を湿らせるために、他の本洗いよりも高い回転速度(例えば2800rpm)で循環ポンプ16のモータを駆動させ、循環流量を高めている(例えば48L/min)。循環水が洗濯物に給水されていくと、外槽10内に溜まっている水が減少するため、循環ポンプ16のモータの回転速度を高くしても、循環流量は増加しない。また、循環ポンプ16のモータの回転速度を高くすると、騒音も大きくなる傾向にあるため、本洗い3〜6では、回転速度を低くしている(例えば2400rpm)。
【0108】
なお、本実施形態における循環ポンプ16による大流量のシャワーは、帯状に広範囲へ散布されるので、循環ポンプ16のモータの回転速度を可変にしてシャワーの形状を変えながら散布しなくても、洗濯物にまんべんなく散水できる。したがって、本実施形態の本洗い工程やすすぎ2工程では、循環ポンプ16のモータの回転速度を一定とし、うなり音などの発生を抑制している。ここで、循環ポンプ16のモータの回転速度が一定の状態とは、本洗い1等の同じ工程内における回転速度が、その工程における回転速度の平均値の±10%の範囲内に、常に収まっている状態を指すものとする。また、本洗い1〜本洗い6では、内槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を120rpm程度の回転速度で正逆回転させるので、糸くずフィルタ51b,52bによって糸くずが捕集される。
【0109】
以上説明したように、本実施形態の洗濯機100によれば、内槽9内に洗濯水を戻す吐出口31が、流体バランサ12の位置よりも内側に位置し(
図2参照)、かつ、内槽9に洗濯物を投入する洗濯物投入口14aの最大幅Wmaxの半分以上の幅にすることで(
図4参照)、吐出口31から幅広に横一文字形状の洗濯水を散水することができ、洗い時の洗い水(洗濯水)やすすぎ時のすすぎ水(洗濯水)を洗濯物の全体に散布することができる。その結果、洗濯水を洗濯物にムラなく散布することができ、洗いムラを低減することができ、しかも洗浄力を高めることができる。
【0110】
また、本実施形態では、吐出口31が回転翼盤11の回転中心O1(
図10参照)よりも後側に位置し、吐出口31から吐出された洗濯水が、洗濯物投入口14aの最大幅Wmaxの半分以上の幅で回転中心O1よりも前側に落下するようにしたことで、負荷量の多少(洗濯物高さの高低)に拘わらず、洗濯水を内槽9の回転中心に落下させることができ、洗濯物(衣類)の全体に洗濯水を散布することができる。
【0111】
また、本実施形態では、案内突起34a,34b,34c,34d,34f,34g,34h,34iが、洗濯水導入口14bに近い側(突部34a,34b,34c)の長さを洗濯水導入口14bから遠い側(突部34d,34f,34g,34h,34i)の長さよりも長くしたので、洗濯水導入口14bから導入される洗濯水を、吐出口31の洗濯水導入口14bに近い側に向けて案内することができる(整流機能)。しかも、洗濯水導入口14bに近い側(突部34a,34b,34c)の底壁33aからの高さを洗濯水導入口14bから遠い側(突部34d,34f,34g,34h,34i)の底壁33aからの高さよりも高くしたので、吐出口31の洗濯水導入口14bに近い側の流量を十分に確保することができる(流量調整機能)。これにより、吐出口31の全幅から洗濯水を吐出させることができ、横一文字状の洗濯水を洗濯物に散布することが可能になる。
【0112】
また、本実施形態では、洗濯水導入口14bが水路カバー30の幅方向(左右方向)の一側の端部(図示左側)に位置し、水路カバー30の側壁33bにおいて、他側に延在した後に途中で一側に延在することで湾曲状に形成されている(
図8、
図9参照)。これにより、吐出口31の一側(
図6の左側)の端部31a(
図4参照)において、当該端部31aから外側に洗濯水を吐出させることができる。なお、吐出口31の他側(
図6の右側)の端部については、洗濯水が左側(一側)から流れ込むので、吐出口31の他側(
図6の右側)の端部31b(
図4参照)において、当該端部31bから外側に洗濯水を吐出させることができる。このように、吐出口31の左右の端部31a,31b(
図4参照)よりも外側に向けて洗濯水を吐出させることで、吐出口31とほぼ同じ幅で洗濯物に着水させることが可能になる。したがって、洗濯水を洗濯物全体に満遍なく散布することが可能になる。
【0113】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更することができる。なお、前記した実施形態では、左端(幅方向の一端側)に洗濯水導入口14bを備えた水路カバー30を例に挙げて説明したが、左端に限定されるものではなく、幅広(最大幅Wmaxの半分以上)の吐出口31を形成できるものであれば、右端(幅方向の他端側)であってもよく、中央(幅方向の中間)であってもよい。右端の場合には、本実施形態と左右逆の形状とすることで構成でき、中央の場合には、水路カバー30の中央を基準として左右対称形状とすることで構成できる。
【0114】
また、本実施形態では、幅方向(左右方向)に一続きの吐出口31を形成した場合を例に挙げて説明したが、吐出口31が幅方向の途中で分割された構成であってもよい。なお、分割する数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上に分割されていてもよい。
【0115】
また、本実施形態では、幅方向(左右方向)に直線状に吐出口31を形成した場合を例に挙げて説明したが、吐出口31が弓型に湾曲した形状であってもよく、波型形状であってもよい。さらに、本実施形態では、
図4のように、洗濯物投入口14aのうち直線部14a1に吐出口31を一つ形成した例を挙げて説明したが、直線部14a2や円弧部14a3,14a4に吐出口31を形成しても良い。