特許第5932891号(P5932891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932891
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】有機電界発光表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20160526BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160526BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20160526BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20160526BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   G09F9/30 365
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-125324(P2014-125324)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-88457(P2015-88457A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2014年6月18日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0129417
(32)【優先日】2013年10月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】李 在 暎
(72)【発明者】
【氏名】朴 ▲ジュン▼ 遠
(72)【発明者】
【氏名】李 相 ▲フン▼
(72)【発明者】
【氏名】許 海 利
(72)【発明者】
【氏名】許 訓 會
(72)【発明者】
【氏名】金 智 ▲ミン▼
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−187019(JP,A)
【文献】 特開2011−018639(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0161592(US,A1)
【文献】 特開2013−091858(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/140728(WO,A1)
【文献】 特開2007−287557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
G09F 9/30
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタが形成された基板の上に順次に形成された第1電極、発光層を含む有機層、及び第2電極で構成された有機発光素子と、
前記有機発光素子が形成された前記基板の上に位置する酸化アルミニウム系列の物質で構成された単一膜で形成された上部封止層と、を含み、かつ、
前記上部封止層の水蒸気透過率(WVTR:Water Vapor Transmission Rate)が10−2g/m/day以下であり、前記上部封止層の厚さが20乃至50nmであることを特徴とする有機電界発光表示装置。
【請求項2】
前記上部封止層の上に位置する接着層と、
前記接着層の上に位置し、前記有機発光素子を封止するバリアフィルムとをさらに含む、請求項1に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項3】
前記上部封止層は、水素原子をさらに含む請求項1に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項4】
前記上部封止層に含まれた全ての種類の原子の総個数に対する前記水素原子の含量割合は10%以下であることを特徴とする、請求項に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項5】
前記上部封止層のベンディング曲率半径は10mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項6】
前記酸化アルミニウム系列の物質におけるAlに対するOの割合は1.4乃至1.6であることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項7】
前記上部封止層の上部面または下部面にシリコン系列の無機膜をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項8】
前記上部封止層及び前記シリコン系列の無機膜の厚さの和は0.02乃至3μmであることを特徴とする、請求項に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項9】
前記バリアフィルムは光等方性フィルムまたは位相差フィルムを含むことを特徴とする、請求項2に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項10】
前記バリアフィルムの下部面または上部面に無機膜または有機膜をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項11】
前記基板はポリイミド系列またはポリカーボネート系列で形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項12】
前記基板の下部にポリエチレンナフタレート(Polyethylene Naphthalate:PEN)、ポリエチレンテレフタレート(Ployethylene Terephthalate:PET)、ポリエチレンエーテルフタレート(polyethylene ether phthalate)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリアリレート(polyarylate)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリエーテルスルホン酸(polyether sulfonate)、ポリイミド(polyimide)、及びポリアクリレート(polyacrylate)のうちから選択された1つで構成された下部封止層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光表示装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多様な情報を画面に実現してくれる映像表示装置は、情報通信時代の核心技術であって、より薄く、より軽く、携帯が可能で、かつ高性能の方向に発展している。ここに、陰極線管(CRT)の短所である重さと体積を縮めることができる平板表示装置に、有機発光層の発光量を制御して映像を表示する有機電界発光表示装置などが脚光を浴びている。
【0003】
有機電界発光表示装置は、電極間の薄い発光層を用いた自発光素子であって、紙のように薄膜化が可能であるという長所がある。
【0004】
一般的な有機電界発光表示装置は、基板にサブ画素駆動部アレイと有機電界発光アレイが形成された構造であって、有機電界発光アレイの有機発光素子から放出された光が基板またはバリア層を通過しながら画像を表示するようになる。
【0005】
有機発光素子は、酸素による電極及び発光層の劣化、発光層−界面間の反応による劣化など、内的要因による劣化があると共に、外部の水分、酸素、紫外線、及び素子の製作条件など、外的要因により容易に劣化が起こる短所がある。特に、外部の酸素と水分は素子の寿命に致命的な影響を及ぼすので、有機電界発光表示装置のパッケージングが非常に重要である。
【0006】
パッケージング方法には、有機発光素子が形成された基板を保護用キャップで封入する方法があるが、保護用キャップを封入する前に吸湿剤を保護用キャップの内側中央部に付着して、内部にある湿気などを吸水できるようにする。
【0007】
また、吸湿剤が有機物層に落ちることを防止するために、保護用キャップの背面には水分及び酸素などが出入りできるように半透膜が付着される。
【0008】
このように、有機発光素子の有機物層を酸素及び湿気から保護するために、金属やガラスのような保護用キャップを使用してパッケージングする方法は、パッケージングのために接着剤や吸湿剤などの別途の材料を使用しなければならないので、材料費が増加する。また、保護用キャップの形成によって有機電界発光表示装置の体積及び厚さが増加することがあり、保護用のキャップの材質がガラスであるので、フレキシブルであることが求められる用途への適用には困難性がある。
【0009】
このような難点を克服するために、有機電界発光表示装置をパッケージングする他の方法に、薄膜のバリア層を形成してカプセル化(encapsulation)させる方法が試みられているが、バリア層としては無機絶縁膜と有機絶縁膜を多層に積層して形成された膜が用いられている。バリア層を多層に形成する理由は、外部から水分や酸素の侵入を遮断させようとすることに目的がある。
【0010】
しかしながら、このように無機膜及び有機膜を多層に積層してバリア層に形成した場合、薄膜の厚さが厚くなるため、最近のフレキシブルなディスプレイ素子に適用する場合、ベンディング(bending)時、クラック(crack)が発生して基板に損傷が加えられて不良が発生する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−027591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような背景で、本発明の目的は、一側面で、ディスプレイ素子の上部封止層の厚さを最小化して、ベンディング時、クラックの発生を減少または防止させて基板の損傷を減らす有機電界発光表示装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、一側面において、本発明は、薄膜トランジスタが形成された基板の上に順次的に形成された第1電極、発光層を含む有機層及び第2電極で構成された有機発光素子と、上記有機発光素子が形成された上記基板の上に位置する酸化アルミニウム系列の物質で構成された単一膜で形成された上部封止層と、を含み、かつ、上記上部封止層の水蒸気透過率(WVTR:Water Vapor Transmission Rate)が10−2g/m/day以下であることを特徴とする有機電界発光表示装置を提供する。
【0014】
上記有機電界発光表示装置は、上記上部封止層の上に位置する接着層と、上記接着層の上に位置し、上記有機発光素子を封止するバリアフィルムとをさらに含むことができる。
【0015】
上記有機電界発光表示装置において、上記上部封止層の厚さは20乃至50nmでありうる。
【0016】
上記有機電界発光表示装置において、上記上部封止層は水素原子をさらに含むことができる。
【0017】
上記有機電界発光表示装置において、上記上部封止層に含まれた全ての種類の原子の総個数に対する上記水素原子の含量割合は10%以下でありうる。
【0018】
上記有機電界発光表示装置において、上記上部封止層のベンディング曲率半径は10mm以下でありうる。
【0019】
上記有機電界発光表示装置において、上記酸化アルミニウム系列の物質におけるAlに対するOの割合は1.4乃至1.6でありうる。
【0020】
上記有機電界発光表示装置は、上記上部封止層の上部面または下部面にシリコン系列の無機膜をさらに含むことができる。
【0021】
上記有機電界発光表示装置において、上記上部封止層及び上記シリコン系列の無機膜の厚さの和は0.02乃至3μmでありうる。
【0022】
上記有機電界発光表示装置において、上記バリアフィルムは光等方性フィルムまたは位相差フィルムを含むことができる。
【0023】
上記有機電界発光表示装置において、上記バリアフィルムの下部面または上部面に無機膜または有機膜をさらに含むことができる。
【0024】
上記有機電界発光表示装置において、上記基板はポリイミド系列またはポリカーボネート系列で形成できる。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明したように、本発明によれば、ディスプレイ素子の上部封止層の厚さを最小化して、ベンディング時、クラックの発生が減少または防止されて基板の損傷を防止する効果がある。
【0026】
そして、更に他の側面によれば、工程減少及び費用低減の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態が適用される有機電界発光表示装置のシステム構成図である。
図2】第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の概略的な断面図である。
図3a】第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の製造方法を示す概略的な断面図(その1)である。
図3b】第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の製造方法を示す概略的な断面図(その2)である。
図3c】第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の製造方法を示す概略的な断面図(その3)である。
図4】第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層の水蒸気透過率(WVTR:Water Vapor Transmission Rate)の厚さ別単位性能を示すグラフである。
図5】第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層の密度(density)の厚さ別単位性能を示すグラフである。
図6】第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層の屈折率(refractive index)の厚さ別単位性能を示すグラフである。
図7】第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層の応力(stress)の厚さ別単位性能を示すグラフである。
図8】第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層のステップカバレッジ(step coverage)の厚さ別単位性能を示すグラフである。
図9】従来技術に従う有機電界発光表示装置に関する図である。
図10】第1実施形態に従う有機電界発光表示装置に関する図である。
図11】第2実施形態に従う有機電界発光表示装置の概略的な断面図である。
図12a】第2実施形態に従う有機電界発光表示装置の製造方法を示す概略的な断面図(その1)である。
図12b】第2実施形態に従う有機電界発光表示装置の製造方法を示す概略的な断面図(その2)である。
図12c】第2実施形態に従う有機電界発光表示装置の製造方法を示す概略的な断面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一部の実施形態を添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加するに当たって、同一な構成要素に対してはたとえ他の図面上に表示されても、できる限り同一な符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本発明の実施形態を説明するに当たって、関連した公知構成または機能に対する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすることがあると判断される場合にはその詳細な説明は省略する。
【0029】
また、本発明の構成要素を説明するに当たって、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。このような用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものであり、その用語により当該構成要素の本質や回または順序などが限定されない。ある構成要素が他の構成要素に“連結”、“結合”、または“接続”されると記載された場合、その構成要素はその他の構成要素に直接的に連結または接続できるが、各構成要素の間に更に他の構成要素が“連結”、“結合”、または“接続”されることもできると理解されるべきである。同じ脈絡で、ある構成要素が他の構成要素の“上”にまたは“下”に形成されると記載された場合、その構成要素はその他の構成要素に直接または更に他の構成要素を介して間接的に形成されることを全て含むことと理解されるべきである。
【0030】
図1は、実施形態が適用される有機電界発光表示装置のシステム構成図である。
【0031】
図1を参照すると、実施形態を適用するための表示装置100は、ゲートライン(GL1〜GLn)とデータライン(DL1〜DLm)が交差されて形成されたパネル140と、パネル140に形成されたゲートラインを駆動するためのゲートドライバ130と、パネル140に形成されたデータラインを駆動するためのデータドライバ120と、ゲートドライバ130及びデータドライバ120の駆動タイミングを制御するタイミングコントローラ110などを含む。タイミングコントローラ110は、例えば水平同期化信号(Hsync)、垂直同期化信号(Vsync)などの信号、RGBデータ信号(RGB)、そしてクロック信号(CLK)などを回路150から受信することもできる。
【0032】
パネル140には、ゲートライン(GL1〜GLn)とデータライン(DL1〜DLm)とが交差されて各画素(P:Pixel)が定義される。
【0033】
図1の表示装置100は、一例に、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)または有機発光素子(OLED:Organic Light-Emitting Device)を有する有機電界発光表示装置などであることがあり、これに制限されず、後述する実施形態に従う如何なる形態の表示装置であることもある。例えば、前述した表示装置100は、後述する実施形態に従う有機電界発光表示装置であることがあり、その製造方法により製造できる有機電界発光表示装置でありうる。
【0034】
以下、図面を参照して、実施形態に従う有機電界発光表示装置についてより詳細に説明する。
【0035】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に従う有機電界発光表示装置についてより詳細に説明する。図2は、第1実施形態に従う有機電界発光表示装置を示す断面図である。
【0036】
図2を参照すると、薄膜トランジスタ(TFT)が形成された基板201の上に順次に形成された第1電極210、有機発光層212、及び第2電極214で構成された有機発光素子(OLED)が形成されている。
【0037】
より詳しくは、基板201の上に半導体層202、ゲート絶縁膜203、ゲート電極204、層間絶縁膜205、及びソース及びドレイン電極206、208が順次に形成されて薄膜トランジスタ(TFT)が形成されており、薄膜トランジスタ(TFT)が形成された基板201の上に保護膜207が形成されている。
【0038】
この際、基板201は、耐熱性の強いプラスチック基板でありうる。例えば、基板201は、ポリイミド系列またはポリカーボネート系列の物質で形成できる。
【0039】
半導体層202は、一例に、ポリシリコンで形成されることができ、この場合、所定の領域が不純物でドーピングされることもできる。
【0040】
勿論、半導体層202は、一例に、ポリシリコンでないアモルファスシリコンで形成されることもでき、延いてはペンタセンのような多様な有機半導体物質で形成されることもできる。
【0041】
半導体層202がポリシリコンで形成される場合、アモルファスシリコンを形成し、これを結晶化させてポリシリコンに変化させることができる。このような結晶化方法には、RTA法(Rapid Thermal Annealing)、MILC法(Metal Induced Lateral Crystallization)、またはSLS法(Sequential Lateral Solidification)など、多様な方法が適用できる。
【0042】
ゲート絶縁膜203は、シリコン酸化膜(SiOx)またはシリコン窒化膜(SiNx)などの絶縁性物質で形成されることができ、勿論、その他にも絶縁性有機物などで形成されることもできる。
【0043】
上記ゲート電極204は、多様な導電性物質で形成することができる。例えば、Mg、Al、Ni、Cr、Mo、W、MoW、Auなどの金属、またはこの金属などの合金などで形成できる。
【0044】
例えば、層間絶縁膜205は、シリコン酸化膜(SiOx)またはシリコン窒化膜(SiNx)などの絶縁性物質で形成されることができ、勿論、その他にも絶縁性有機物などで形成されることもできる。層間絶縁膜205とゲート絶縁膜203を選択的に除去してソース及びドレイン領域が露出するコンタクトホールが形成できる。
【0045】
ソース及びドレイン電極206、208は、コンタクトホールが埋め込まれるように層間絶縁膜205の上にゲート電極204用の物質で単一層または多層の形状に形成される。
【0046】
保護膜207は、駆動薄膜トランジスタ(TFT)を保護し平坦化させる。保護膜207は、多様な形態に構成できるが、BCB(benzocyclobutene)、またはアクリル(acryl)などの有機絶縁膜、またはシリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸化膜(SiOx)などの無機絶縁膜で形成されることもでき、単層で形成されるか、または二重あるいは多重層で構成されることもできるなど、多様な変形が可能である。
【0047】
有機発光素子(OLED)は、保護膜207の上に形成された第1電極210、第1電極210の上に形成された発光層を含む有機層212、及び有機層212の上に形成された第2電極214で構成される。有機発光素子(OLED)は、具体的には、例えば有機発光ダイオードである。
【0048】
より詳しくは、第1電極210は、コンタクトホールを通じて駆動薄膜トランジスタ(TFT)のドレイン電極208と電気的に連結される。このような第1電極210は、反射率の高い不透明な導電物質で形成できる。例えば、第1電極210は、Ag、Al、AlNd、Au、Mo、W、Crなどの金属、またはこれらの合金などで形成できる。
【0049】
バンク220は、発光領域とは異なる領域に形成できる。これによって、バンク220は、発光領域と対応する第1電極210を露出させるバンクホールを有する。ここで、発光領域は、光が発光できる領域であって、第1電極210、有機層212、及び第2電極214を含んだ有機発光素子(OLED)が形成された領域でありうる。
【0050】
バンク220は、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸化膜(SiOx)などの無機絶縁物質、またはBCB、アクリル系樹脂、またはイミド系樹脂などの有機絶縁物質で形成できる。
【0051】
バンク220により露出した第1電極210の上には、有機層212が形成されている。有機層212は発光層を含み、その他にも電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層などをさらに含むことができる。
【0052】
有機層212が形成された基板201の上には、第2電極214が形成されている。第2電極214は、インジウムチンオキサイド(Indium Tin Oxide:ITO)、またはインジウムジンクオキサイド(Induim Zinc Oxide:IZO)などの透明導電性物質で形成されることによって、発光層を含む有機層212で生成された光を第2電極214の上部に放出させる。
【0053】
有機発光素子(OLED)が形成された基板201の上には、第2電極214と付着されている上部封止層230が形成されている。この際、上部封止層230は無機単一膜である。例えば、上部封止層230は、酸化アルミニウム(AlOx)からなる無機単一膜である。この際、上部封止層230が酸化アルミニウム(AlOx)からなる場合、AlOxのAlとOとの割合は1:1.4〜1:1.6で構成される。AlOxはAlyOzで表現できる。この場合、z/yは1.4〜1.6でありうる(例:Al)。
【0054】
この際、上部封止層230の厚さは20〜50nmで形成されている。このような厚さを有する上部封止層230は、曲率半径10mm以下でのベンディングを実現することが可能である。
【0055】
上部封止層230は、原子層堆積法(atomic layer deposition)により形成する。原子層堆積法により形成された薄膜は、一例に、約5.4nm/minの速度で形成されて均一度が非常に優れ、高密度の特徴を有する。このように原子層堆積法により形成された上部封止層230は、密度が2.7〜3.0g/cmであり、上部封止層230のエッチ速度(etch rate)は70nm/min以下の高密度であることを示す値である。また、このように形成された上部封止層230の水蒸気透過率は10−2g/m/day以下である。したがって、上部封止層230は、外部から基板への酸素及び水分の侵入をよく防止して基板201を保護することができる。
【0056】
そして、上部封止層230の応力の程度は±100MPaで、ベンディング時にも少なくとも1つのクラックが発生しないので基板に損傷も発生しない。
【0057】
また、このように形成された上部封止層230は、表面粗さが0.2〜0.3nmの範囲を満たす。そして、上部封止層230の透過率は380〜780nmの波長で97%以上の透過率を満たし、屈折率は1.62〜1.65の範囲を満たす。
【0058】
一方、上部封止層230は、酸化アルミニウム系列の物質だけでなく、水素原子をさらに含むこともできる。
【0059】
このような場合、上部封止層230に含まれた全ての種類の原子(例:Al、O、Hなど)の総個数に対する水素原子の含量割合は10%以下でありうる。
【0060】
例えば、上部封止層230に含まれた水素原子は、酸化アルミニウム系列の物質と結合される陽イオン(プロトンまたは水素カチオン:H)及び/又は陰イオン(ヒドリドまたは水素アニオン:H)でありうる。
【0061】
上部封止層230に含まれる水素原子は、水分または酸素の浸透を遮断する封止機能の性能を低下させる不純物でありうる。
【0062】
したがって、水素原子の含量割合が高いほど、封止性能は低くなることがある。本実施形態では、原子層堆積法を用いて、酸化アルミニウム系列の物質で上部封止層230を形成することによって、水素原子の含量割合をさらに低めることができる。
【0063】
上部封止層230が形成された基板201の上には、バリアフィルム250が位置して有機発光素子(OLED)を含む基板201を封止する。
【0064】
この際、上部封止層230とバリアフィルム250との間には、接着層240が形成されている。接着層240は、上部封止層230とバリアフィルム250とを接着させる。
【0065】
接着層240は、熱硬化型または自然硬化型の接着剤でありうる。例えば、接着層240は、B−PSA(Barrier Pressure Sensitive Adhesive)のような物質で形成される。接着剤の水蒸気透過率は10−2g/m/day以下であり、弾性率(elastic modulus)は0.3MPa以下であることが好ましい。
【0066】
バリアフィルム250は、位相差フィルムまたは光等方性フィルムでありうる。
【0067】
バリアフィルム250が位相差フィルムの場合、上部封止層230から出射された光の位相をλ/4遅延させる。位相差フィルムはポリカーボネート系列を含み、138〜148nmの位相差を有する。
【0068】
そして、バリアフィルム250が光等方性フィルムの場合、位相遅延値が0〜5nm以下の光等方性の性質を有する。このような光等方性フィルムには、ポリカーボネート(polycarbonate:PC)系列、シクロオレフィンコポリマー(Cyclic Olefin Copoymer:COC)系列、シクロオレフィンポリマー(Cyclic Olefin Polymer:COP)系列などのうちの1つ以上が使用できる。
【0069】
バリアフィルム250が光等方性の性質を有すれば、バリアフィルム250に入射された光を位相遅延無しでそのまま透過させる。
【0070】
また、バリアフィルム250の上部または下部面には、有機膜または無機膜がさらに位置することができる。この際、無機膜は、シリコン酸化膜(SiOx)またはシリコン窒化膜(SiOx)を含むことができる。
【0071】
有機膜は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド、またはポリエチレンなどのポリマー材質の物質を含むことができる。バリアフィルムの上部または下部面に形成される有機膜または無機膜は、外部の水分や酸素の侵入を遮断する役割をする。
【0072】
一方、基板201の下部には、下部接着層260と下部封止層270が順次に形成されている。下部封止層270は、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene Naphthalate:PEN)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate:PET)、ポリエチレンエーテルフタレート(polyethylene ether phthalate)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリアリレート(polyarylate)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリエーテルスルホン酸(polyether sulfonate)、ポリイミド(polyimide)、及びポリアクリレート(polyacrylate)のうちから選択された少なくとも1つの有機物質で形成できる。下部封止層270は、外部から水分または酸素の基板への侵入を防止する役割をする。
【0073】
下部接着層260は、熱硬化型または自然硬化型の接着剤で形成され、基板201と下部封止層270とを接着させる役割をする。例えば、下部接着層260は、OCA(Optically Clear Adhesive)などの物質で形成できる。接着剤の水蒸気透過率は10−2g/m/day以下であり、弾性率は0.3MPa以下であることが好ましい。
【0074】
以下、図面を参照して第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の製造方法に関して説明する。
【0075】
図3a乃至図3cは、第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の製造方法に関するものである。
【0076】
図3aを参照すると、基板201を用意し、基板201の上に薄膜トランジスタ(TFT)を形成する。
【0077】
この際、基板201は、耐熱性の強いプラスチック基板で形成する。例えば、基板201は、ポリイミド(polyimide)またはポリカーボネート(polycarbonate)系列で形成することができる。
【0078】
薄膜トランジスタ(TFT)は、基板201の上に半導体層202と、ゲート絶縁膜203と、ゲート電極204と、層間絶縁膜205と、ソース及びドレイン電極206、208とを順次に形成する。その後、薄膜トランジスタ(TFT)が形成された基板201の全面に保護膜207を形成する。
【0079】
この際、半導体層202は、一例に、ポリシリコンで形成することができ、この場合、所定の領域が不純物でドーピングされることもできる。勿論、半導体層202は、一例に、ポリシリコンでないアモルファスシリコンで形成することもでき、ペンタセンなどのような多様な有機半導体物質で形成することもできる。
【0080】
半導体層202をポリシリコンで形成する場合、アモルファスシリコンを形成し、これを結晶化させてポリシリコンに変化させることができる。このような結晶化方法には、RTA法(Rapid Thermal Annealing)、MILC法(Metal Induced Lateral Crystallization)、またはSLS法(Sequential Lateral Solidification)など、多様な方法を適用して形成することができる。
【0081】
ゲート絶縁膜203は、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸化膜(SiOx)などの無機絶縁物質、またはBCB、アクリル系樹脂、またはイミド系樹脂のような有機絶縁物質で形成することができる。
【0082】
上記ゲート電極204は、多様な導電性物質で形成することができる。例えば、Mg、Al、Ni、Cr、Mo、W、MoW、Auなどの金属、またはこれらの合金などで形成できる。
【0083】
層間絶縁膜205は、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸化膜(SiOx)などの無機絶縁物質、またはBCB、アクリル系樹脂、またはイミド系樹脂などの有機絶縁物質で形成することができる。層間絶縁膜205とゲート絶縁膜203を選択的に除去してソース及びドレイン領域が露出するコンタクトホールを形成することができる。
【0084】
ソース及びドレイン電極206、208は、コンタクトホールが埋め込まれるように層間絶縁膜205の上にゲート電極204用物質で単一層または多層の形状に形成する。この際、ソース及びドレイン電極は半導体層と電気的に連結する。
【0085】
その後、保護膜207を形成して駆動薄膜トランジスタ(TFT)を保護し、平坦化させる。保護膜207は、多様な形態に構成することができるが、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸化膜(SiOx)などの無機絶縁物質、またはBCB、アクリル系樹脂、またはイミド系樹脂などの有機絶縁物質で形成できる。そして、保護膜207は単層に形成されるか、または二重あるいは多重層で構成することができるなど、多様な変形が可能である。
【0086】
その後、保護膜207の上に、ソースまたはドレイン電極の一部を露出させるコンタクトホールを含み、コンタクトホールを通じて駆動薄膜トランジスタ(TFT)のドレイン電極208と電気的に連結される第1電極210を形成する。
【0087】
第1電極210は、反射率の高い不透明な導電物質で形成できる。例えば、第1電極210はAg、Al、AlNd、Au、Mo、W、Crなどの金属、またはこれらの合金などで形成することができる。
【0088】
その後、基板201の上にバンク220を形成する。バンク220は、発光領域とは異なる領域に形成することができる。この際、バンク220は、発光領域と対応する第1電極210を露出させる。
【0089】
バンク220は、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸化膜(SiOx)などの無機絶縁物質、またはBCB、アクリル系樹脂、またはイミド系樹脂などの有機絶縁物質で形成することができる。
【0090】
その後、露出した第1電極210の上に、発光層を含む有機層212を形成する。この際、有機層212は、発光層を含み、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層などをさらに含むことができる。
【0091】
その後、基板201の全面に第2電極214を形成する。第2電極214はIZOのような透明な導電物質で形成されることによって、発光有機層212で生成された光を第2電極214の上部に放出させる。第2電極214は、インジウムチンオキサイド(Indium Tin Oxide:ITO)またはインジウムジンクオキサイド(Indium Zinc Oxide:IZO)などの透明な導電物質で形成することができる。
【0092】
以上のようにして、薄膜トランジスタ(TFT)が形成された基板201の上に順次に形成された第1電極210、有機層212、及び第2電極214で構成された有機発光素子(OLED)を形成する。
【0093】
その後、有機発光素子(OLED)を含む基板201の上に原子層堆積法を使用して上部封止層230を形成する。
【0094】
上部封止層230は、無機物質からなる単一膜である。例えば、酸化アルミニウム(AlOx)またはシリコン(Si)系列物質などで形成できる。この際、上部封止層230が酸化アルミニウム(AlOx)の場合、AlとOとの割合は1:1.4〜1:1.6である。即ち、Alに対するOの割合は1.4乃至1.6である。
【0095】
原子層堆積法を使用して上部封止層230を形成する場合、上部封止層230の厚さを正確で、かつ簡単に制御して上部封止層230を形成することができる。例えば、上部封止層230を形成しようとする物質の固体前駆体を使用して均一で、かつ高密度の薄膜の形成が可能である。このような高密度の薄膜を形成することは、化学気相蒸着法(CVD)では不可能である。また、原子層堆積法を使用して薄膜を形成する場合、低い温度で形成可能であるので、基板の損傷を最小化することができる。したがって、原子層堆積法を用いて上部封止層の薄型形成が可能である。
【0096】
原子層堆積法を使用して上部封止層230を厚さが20〜50nmになるように形成する。この際、上部封止層230の厚さを20〜50nmに形成するのは次の理由による。まず、上部封止層230を厚さ20nm未満に形成すると、水蒸気透過率が低下して外部から侵入する酸素または水分により有機発光素子が損傷する可能性があるためである。そして、上部封止層230を50nmを超過する厚さに形成すると、密度や水蒸気透過率には異常がないが、ベンディング時に受けるストレスが急激に大きくなって、上部封止層にクラックが発生することがあるためである。クラックが発生する場合、クラックを通じて外部から水分または酸素が侵入して画素が収縮するなど、有機発光素子に損傷を及ぼす可能性がある。
【0097】
このように原子層堆積法により形成された上部封止層230は密度が2.7〜3.0g/cmであり、上部封止層230の薄膜のエッチ速度を測定して見ると、70nm/min以下の高密度を示す値であることが分かる。
【0098】
また、上部封止層230は、水蒸気透過率が5×10−2〜1×10−4g/m/dayに形成し、より好ましく10−2g/m/day以下に形成する。上部封止層230は、有機発光素子の上に位置して、外部から侵入する水分及び酸素の侵入を防止する役割をする。
【0099】
また、本実施形態に従う上部封止層230は、表面粗さが0.2〜0.3nmの範囲を満たし、均一な薄膜であることが分かる。そして、上部封止層230の透過率は380〜780nmの波長で97%以上の透過率を満たし、屈折率は1.62〜1.65の範囲を満たす。
【0100】
したがって、本実施形態に従う上部封止層230は、簡単な工程により形成することができ、基板201の損傷を最小化し、外部からの水分及び酸素の侵入を防止することができる。
【0101】
その後、図3bを参照すると、上部封止層230の上には接着層240を形成する。この際、接着層240は、熱硬化型または自然硬化型の物質で形成できる。例えば、接着層240はエポキシ系列の接着剤を含むことができ、好ましくはB−PSA(Barrier Pressure Sensitive Adhesive)で形成することができる。接着剤の水蒸気透過率は10−2g/m/day以下であり、弾性率は0.3MPa以下であることが好ましい。
【0102】
その後、接着層240の上にバリアフィルム250を形成する。この際、バリアフィルム250は、有機発光素子を封止する機能をする。バリアフィルム250は、位相差フィルムまたは光等方性フィルムで形成することができる。
【0103】
位相差フィルムは、その中心軸が偏光板の中心軸と45度の角をなして、上記上部封止層230から出射された光の位相をλ/4遅延させる。なお、偏光板は、バリアフィルム250の上部に設けられるものである。位相差フィルムは、例えばポリカーボネート系列を含み、138〜148nmの位相差を有するものを使用することができる。
【0104】
光等方性フィルムを使用してバリアフィルム250を形成する場合、位相遅延値が0〜5nm以下の光等方性の性質を有するものを使用して形成する。このような光等方性フィルムには、ポリカーボネート(polycarbonate:PC)系列、シクロオレフィンコポリマー(Cyclic Olefin Copoymer:COC)系列、またはシクロオレフィンポリマー(Cyclic Olefin Polymer:COP)系列などのうちの1つ以上を使用することができる。
【0105】
バリアフィルム250が光等方性の性質を有すれば、バリアフィルム250に入射された光を位相遅延無しでそのまま透過させる。
【0106】
また、バリアフィルム250の上部面または下部面には、有機膜または無機膜をさらに形成することもできる。この際、無機膜は、シリコン酸化膜(SiOx)またはシリコン窒化膜(SiNx)を使用することができる。有機膜は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド、またはポリエチレンなどのポリマー材質の物質を使用することができる。バリアフィルム250の上部または下部面に形成される有機膜または無機膜は、外部の水分や酸素の侵入を遮断する役割をする。
【0107】
その後、図3cを参照すると、バリアフィルム250が形成された基板201の下部面に下部接着層260と下部封止層270を順次に形成する。
【0108】
下部接着層260は、熱硬化型または自然硬化型の接着剤で形成され、基板201と下部封止層270とを接着させる役割をする。例えば、下部接着層260はOCA(Optically Clear Adhesive)などの物質で形成することができる。接着剤の水蒸気透過率は10−2g/m/day以下であり、弾性率は0.3MPa以下であることが好ましい。
【0109】
下部封止層270は、下部接着層260を介して基板201の下部面に付着する。この際、下部封止層270は、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene Naphthalate:PEN)、ポリエチレンテレフタレート(Ployethylene Terephthalate:PET)、ポリエチレンエーテルフタレート(polyethylene ether phthalate)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリアリレート(polyarylate)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリエーテルスルホン酸(polyether sulfonate)、ポリイミド(polyimide)、及びポリアクリレート(polyacrylate)などで形成することができる。下部封止層270は、基板の下部から酸素または水分が侵入することを防止する機能をする。このような下部封止層は単一層または多層でありうる。
【0110】
一方、図4乃至図8及び表1は、第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層230の厚さ別単位性能を測定したものであって、これを参照して第1実施形態に従う有機電界発光表示装置をさらに説明する。
【0111】
図4は、第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層230の水蒸気透過率(WVTR:Water Vapor Transmission Rate)の厚さ別単位性能を示すグラフである。
【0112】
図5は、第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層230の密度の厚さ別単位性能を示すグラフである。
【0113】
図6は、第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層230の屈折率の厚さ別単位性能を示すグラフである。
【0114】
図7は、第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層230の応力の厚さ別単位性能を示すグラフである。
【0115】
図8は、第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層230のステップカバレッジの厚さ別単位性能を示すグラフである。
【0116】
表1は、第1実施形態に従う有機電界発光表示装置の上部封止層230の水蒸気透過率、密度、屈折率、応力、及びステップカバレッジの厚さ別単位性能を示す表である。
【0117】
【表1】
【0118】
図4乃至図8及び表1を参照すると、上部封止層230の厚さが50nmの場合、応力の程度が108MPaであり、70nmの場合、応力の程度が167MPaであって、約50%位増加したことが分かる。そして、上部封止層230の厚さが90nmの場合、応力の値が248MPaに急激に増加することが分かる。したがって、上部封止層230を50nmを超過する厚さに形成する場合、ベンディング時、クラックの発生が増加し、併せて基板の損傷も増加する。また、上部封止層230のステップカバレッジ性能が低下し、水蒸気透過率も増加する問題が発生する。したがって、基板が損傷される可能性も増加する。
【0119】
そして、上部封止層230の厚さが20nm以下の時、密度、屈折率、ステップカバレッジは大きく差がない。また、応力の程度も低いので、基板をベンディングする時にも無理がない。しかしながら、上部封止層230の厚さが10nmの時、水蒸気透過率は0.0136g/m/dayで、上部封止層230の厚さを20nmにした場合である水蒸気透過率0.0078g/m/dayより約2倍増加して外部の水分または酸素が侵入して基板を保護する機能が弱くなった。また、上部封止層230の厚さが50nmを超過すれば、ステップカバレッジ、密度、屈折率も弱くなるので、上部封止層230の機能が低下する。
【0120】
前述したステップカバレッジは、多様な層またはパターンが基板上に形成される時、段差(Step)部分が異なる物質により覆われる時、段差のプロファイルに従って物質がよく形成される程度を意味する。
【0121】
また、第1実施形態に従う酸化アルミニウム(AlOx)の単一膜で形成された上部封止層230は、原子層堆積法により形成したので、20〜50nmの厚さの薄膜形成が可能である。また、20〜50nmの厚さの上部封止層230は、ベンディング時にもクラックが発生しないので曲面ディスプレイ形成にも無理がない。また、上部封止層230の屈折率が1.63〜1.64の範囲を満たすことが有利であるが、その基準に符合する。そして、上部封止層230が薄い厚さであるにもかかわらず、優れる密度と低い水蒸気透過率を有するので、有機発光素子(OLED)を保護する機能を向上することができる。
【0122】
したがって、第1実施形態に従う上部封止層230は、外部から侵入する酸素と水分による基板損傷を最小化するために、有機膜/無機膜の多層を積層して有機発光素子(OLED)の上部に形成した数百ナノメートルの厚さを有する従来のものより厚さは格段に減少させてベンディング特性は向上させることができる。したがって、第1実施形態によれば、高密度の水蒸気透過率に優れる高性能の上部封止層230を含む有機電界発光表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【0123】
以下、前述した第1実施形態による有機電界発光表示装置と従来技術による有機電界発光表示装置を図9及び図10を参照してさらに説明する。
【0124】
図9は、従来技術による有機電界発光表示装置に関する図である。
【0125】
図10は、第1実施形態による有機電界発光表示装置に関する図である。
【0126】
図9を参照すると、従来技術による上部封止層をシリコン(Si)系列無機膜及びエポキシ及びアクリル系列有機膜層を多層に積層して数十マイクロメートルの厚さで形成した場合の有機電界発光表示装置は、ベンディング後、クラックの発生によって外部から水分と酸素が侵入して基板の画素収縮(A)が発生した。
【0127】
一方、図10を参照すると、酸化アルミニウム(AlOx)の単一膜で上部封止層を形成した本実施形態に従う有機電界発光表示装置の場合、ベンディング後、240時間が経てもクラックの発生がなく、基板の損傷も発見されなかった。
【0128】
したがって、第1実施形態に従う有機電界発光表示装置は、従来の工程より工程を簡素化して歩留まりの向上と費用低減が可能であり、ベンディング時に発生するクラックを最小化することができる。
【0129】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に従う有機電界発光表示装置についてより詳細に説明する。図11は、第2実施形態に従う有機電界発光表示装置の概略的な断面図である。図11の有機電界発光表示装置は、シリコン系列の無機膜が上部封止層の上にさらに形成されたという点を除いては、図2の有機電界発光表示装置と類似している。したがって、反復的な説明は省略する。
【0130】
図11を参照すると、基板1101の上に、半導体層1102、ゲート絶縁膜1103、ゲート電極1104、層間絶縁膜1105、及びソース及びドレイン電極1106、1108が順次に形成されて薄膜トランジスタ(TFT)が形成されており、薄膜トランジスタ(TFT)が形成された基板1101の上に保護膜1107が形成されている。
【0131】
この際、基板1101は、耐熱性の強いプラスチック基板でありうる。例えば、基板1101は、ポリイミド系列またはポリカーボネート系列の物質で形成できる。
【0132】
保護膜1107の上に形成された第1電極1110、第1電極1110の上に形成された発光層を含む有機層1112、及び有機層1112の上に形成された第2電極1114で構成された有機発光素子(OLED)が形成されている。
【0133】
有機発光素子(OLED)の上には、酸化アルミニウム(AlOx)で構成された無機単一膜である上部封止層1130が形成されている。
【0134】
上部封止層1130の上には、シリコン(Si)系列の無機膜1135が形成されている。シリコン(Si)系列の無機膜は、シリコン酸化膜(SiOx)またはシリコン窒化膜(SiNx)でありうる。
【0135】
この際、上部封止層1130とシリコン(Si)系列の無機膜1135は原子層堆積法により形成されている。
【0136】
上部封止層1130の厚さは20〜50nmの厚さが適当である。上部封止層1130の厚さが50nmを超過すれば、ベンディング特性が減少して水分及び酸素の侵入により基板が損傷されることがあり、厚さが20nm未満であれば、水蒸気透過率が減少して基板への水分及び酸素侵入の防止機能が低下する。
【0137】
上部封止層1130とシリコン(Si)系列の無機膜1135の厚さの和は0.02〜3μmにすることがベンディング特性を考慮すると好ましい。
【0138】
シリコン(Si)系列の無機膜の上には、接着層1140とバリアフィルム1150が順次に形成されている。
【0139】
接着層1140は、熱硬化型または自然硬化型の接着剤であることがあり、外部から流入する水分及び酸素を遮断する。接着層1140は、例えばB−PSA(Barrier Pressure Sensitive Adhesive)でありうる。接着剤の水蒸気透過率は10−2g/m/day以下であり、弾性率は0.3MPa以下であることが好ましい。
【0140】
バリアフィルム1150は、位相差フィルムまたは光等方性フィルムを含むことができる。
【0141】
基板1101の下部には、下部接着層1160と下部封止層1170とを含む。この際、下部接着層1160と下部封止層1170は、外部から水分及び酸素の侵入を防止する機能をするものである。
【0142】
下部接着層1160は、熱硬化型または自然硬化型の接着剤でありうる。例えば、下部接着層1160はOCA(Optically Clear Adhesive)などで形成できる。接着剤の水蒸気透過率は10−2g/m/day以下であり、弾性率は0.3MPa以下であることが好ましい。
【0143】
図12a乃至図12cは、第2実施形態に従う有機電界発光表示装置の製造方法に関する断面図である。
【0144】
図12aを参照すると、基板1101は、耐熱性の強いプラスチック基板で形成する。例えば、基板1101は、ポリイミドまたはポリカーボネート系列で形成することができる。
【0145】
薄膜トランジスタ(TFT)は、基板1101の上に半導体層1102と、ゲート絶縁膜1103と、ゲート電極1104と、層間絶縁膜1105と、ソース及びドレイン電極1106、1108とを順次に形成する。その後、薄膜トランジスタ(TFT)が形成された基板1101の全面に保護膜1107を形成する。
【0146】
その後、保護膜1107の上に、ソースまたはドレイン電極の一部を露出させるコンタクトホールを含み、コンタクトホールを通じて駆動薄膜トランジスタ(TFT)のドレイン電極1108と電気的に連結される第1電極1110を形成する。
【0147】
その後、基板1101の上にバンク1120を形成する。バンク1120は、発光領域とは異なる領域に形成できる。この際、バンク1120は、発光領域と対応する第1電極1110を露出させる。
【0148】
その後、露出した第1電極1110の上に、発光層を含む有機層1112を形成する。この際、有機層1112は、発光層を含み、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層などをさらに含むことができる。その後、基板1101の全面に第2電極1114を形成する。
【0149】
以上のようにして、薄膜トランジスタ(TFT)が形成された基板1101の上に順次に形成された第1電極1110、有機層1112、及び第2電極1114で構成された有機発光素子(OLED)を形成する。
【0150】
その後、有機発光素子(OLED)を含む基板1101の上に原子層堆積法を使用して上部封止層1130を形成する。
【0151】
上部封止層1130は、無機膜であって、酸化アルミニウム(AlOx)を使用して単一膜で形成する。この際、酸化アルミニウム(AlOx)のAlとOとの割合は1:1.4〜1:1.6である。
【0152】
原子層堆積法を使用して上部封止層1130を形成する場合、上部封止層1130の厚さを正確で、かつ簡単に制御して上部封止層1130を形成することができる。例えば、上部封止層1130を形成しようとする物質の固体前駆体を使用して、均一で、かつ高密度の薄膜の形成が可能である。このような高密度の薄膜を形成することは、化学気相蒸着法(CVD)では不可能である。また、原子層堆積法を使用して薄膜を形成する場合、低い温度で形成が可能であるので、基板の損傷を最小化することができる。したがって、原子層堆積法を用いて上部封止層の薄型形成が可能である。
【0153】
原子層堆積法を使用して上部封止層1130を厚さが20〜50nmになるように形成する。この際、上部封止層1130の厚さを20〜50nmに形成するのは次の理由による。まず、上部封止層230を厚さ20nm未満に形成すると、水蒸気透過率が低下して外部から侵入する酸素または水分によって有機発光素子が損傷される可能性があるためである。そして、上部封止層1130を50nmを超過する厚さに形成すると、密度や水蒸気透過率には異常がないが、ベンディング時に受けるストレスが急激に大きくなって、上部封止層に少なくとも1つのクラックが発生することがある。クラックが発生する場合、クラックを通じて外部から水分または酸素が侵入して画素が収縮するなど、有機発光素子に損傷を及ぼす可能性がある。
【0154】
このように原子層堆積法により形成された上部封止層1130は、密度が2.7〜3.0g/cmであり、上部封止層1130の薄膜のエッチ速度を測定して見ると、70nm/min以下の高密度を示す値であることが分かる。
【0155】
その後、上部封止層1130の上にシリコン(Si)系列の無機膜1135を形成する。この際、シリコン(Si)系列の無機膜1135も原子層堆積法により形成する。
【0156】
上部封止層1130とシリコン(Si)系列の無機膜1135の総厚さの和は0.02〜3μmになるように形成する。
【0157】
その後、図12bを参照すると、シリコン(Si)系列の無機膜1135の上に接着層1140を形成する。この際、接着層1140は、熱硬化型または自然硬化型の接着剤でありうる。例えば、接着層1140はB−PSA(Barrier Pressure Sensitive Adhesive)で形成できる。接着剤の水蒸気透過率は10−2g/m/day以下であり、弾性率は0.3MPa以下であることが好ましい。
【0158】
その後、接着層1140の上にバリアフィルム1150を形成する。この際、バリアフィルム1150は、位相差フィルムまたは光等方性フィルムで形成することができる。
【0159】
位相差フィルムは、その中心軸が偏光板の中心軸と45度の角をなして、上記上部封止層1130から出射された光の位相をλ/4遅延させる。なお、偏光板は、バリアフィルム1150の上部に設けられるものである。位相差フィルムは、例えば、ポリカーボネート系列を含み、138〜148nmの位相差を有するものを使用することができる。
【0160】
光等方性フィルムを使用してバリアフィルム1150を形成する場合、位相遅延値が0〜5nm以下の光等方性の性質を有するものを使用して形成する。このような光等方性フィルムには、ポリカーボネート(polycarbonate:PC)系列、シクロオレフィンコポリマー(Cyclic Olefin Copoymer:COC)系列、またはシクロオレフィンポリマー(Cyclic Olefin Polymer:COP)系列などのうちの1つ以上を使用することができる。
【0161】
バリアフィルム1150が光等方性の性質を有すれば、バリアフィルム1150に入射された光を位相遅延無しでそのまま透過させる。
【0162】
また、バリアフィルム1150の上部または下部面には、有機膜または無機膜をさらに形成することもできる。この際、無機膜はシリコン酸化膜(SiOx)またはシリコン窒化膜(SiOx)を使用することができる。有機膜は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミドまたはポリエチレンなどのポリマー材質の物質を使用することができる。バリアフィルム1150の上部または下部面に形成される有機膜または無機膜は、外部の水分や酸素の侵入を遮断する役割をする。
【0163】
その後、図12cを参照すると、バリアフィルム1150が形成された基板1101の下部面に下部接着層1160と下部封止層1170を順次に形成する。
【0164】
下部接着層1160は、熱硬化型または自然硬化型の接着剤で形成され、基板1101と下部封止層1170とを接着させる役割をする。例えば、下部接着層1160はOCA(Optically Clear Adhesive)などの物質で形成することができる。
【0165】
下部封止層1170は、下部接着層1160を介して基板1101の下部面に付着する。この際、下部封止層1170は、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene Naphthalate:PEN)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate:PET)、ポリエチレンエーテルフタレート(polyethylene ether phthalate)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリアリレート(polyarylate)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリエーテルスルホン酸(polyether sulfonate)、ポリイミド(polyimide)、及びポリアクリレート(polyacrylate)などで形成することができる。下部封止層1170は、基板の下部から酸素または水分が侵入することを防止する機能をする。このような下部封止層は単一層または多層でありうる。
【0166】
以上、図面を参照して実施形態を説明したが、本発明はこれに制限されない。
【0167】
前述した実施形態において、バリアフィルムの上部に偏光板などの他の層をさらに含めることもでき、場合によっては、上部封止層とバリアフィルムとの間に有機物質または無機物質からなる追加の層が含まれることもできる。
【0168】
前述した実施形態において、薄膜トランジスタについてトップゲート型薄膜トランジスタを例として説明したが、薄膜トランジスタをボトムゲート型薄膜トランジスタの形態に形成することもでき、多様な形態の薄膜トランジスタで、多様な変形が可能である。
【0169】
前述した実施形態において、有機層に含まれる発光層の発光物質は、有機物であることと記載したが、発光層の発光物質にグラフェン量子点のような量子点を含むことができる。広い意味で、発光層に量子点を含む表示装置/表示素子も本明細書で有機電界発光表示装置/表示素子に含まれることができる。
【0170】
以上に記載された“含む”、“構成する”、または“有する”などの用語は、特別に反対になる記載がない限り、該当構成要素が内在できることを意味するものであるので、他の構成要素を除外するのでなく、他の構成要素を更に含むことができることと解釈されるべきである。技術的または科学的な用語を含んだ全ての用語は、異に定義されない限り、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者により一般的に理解されることと同一な意味を有する。予め定義された用語のように、一般的に使われる用語は関連技術の文脈上の意味と一致するものと解釈されるべきであり、本発明で明らかに定義しない限り、理想的であるとか、過度に形式的な意味として解釈されない。
【0171】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したことに過ぎないものであって、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明に開示された実施形態は本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであるので、このような実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は特許請求の範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図12c