特許第5932909号(P5932909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932909
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】植物栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/00 20060101AFI20160526BHJP
   A01G 9/02 20060101ALI20160526BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20160526BHJP
   A01G 1/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   A01G9/00 J
   A01G9/02 103G
   A01G7/00 602D
   A01G1/00 303A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-148519(P2014-148519)
(22)【出願日】2014年7月22日
(62)【分割の表示】特願2012-66913(P2012-66913)の分割
【原出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2014-217383(P2014-217383A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】308007099
【氏名又は名称】工藤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(72)【発明者】
【氏名】工藤 哲也
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−69135(JP,A)
【文献】 特開平3−35730(JP,A)
【文献】 特開2010−193812(JP,A)
【文献】 特開平8−289668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 − 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培方法において、
主根張用の成型培土又は成型培土の外周が被覆材でカバーされた被覆成型培土の外側に副根張用の成型培土又は被覆成型培土が配置され、
主根張用の成型培土又は被覆成型培土で植物を栽培して生育、成長させて、その植物の根が副根張用の成型培土又は被覆成型培土まで展伸してから、主根張用の成型培土又は被覆成型培土を、副根張用の成型培土又は被覆成型培土の内側から取り除くか、又は副根張用の成型培土又は被覆成型培土を、主根張用の成型培土又は被覆成型培土の周囲から取り除くことにより、前記根を切断して当該根を刺激して新たな発根を促進させる、
ことを特徴とする植物栽培方法。
【請求項2】
植物栽培方法において、
主根張用の成型培土又は成型培土の外周が被覆材でカバーされた被覆成型培土の外側に、副根張用の成型培土又は被覆成型培土が配置され、
前記主根張用の成型培土又は被覆成型培土と副根張用の成型培土又は被覆成型培土が仕切り材で仕切られ、仕切り材は植物の根が通過可能な通過部を備え、主根張用の成型培土又は被覆成型培土で植物を栽培して生育、成長させて、その植物の根が仕切り材の通過部を通過して副根張用の成型培土又は被覆成型培土まで展伸してから、主根張用の成型培土又は被覆成型培土を、副根張用の成型培土又は被覆成型培土の内側から取り除くか、又は副根張用の成型培土又は被覆成型培土を、主根張用の成型培土又は被覆成型培土の周囲から取り除くことにより、前記根を切断して当該根を刺激して新たな発根を促進させる、
ことを特徴とする植物栽培方法。
【請求項3】
植物栽培方法において、
副根張用の培土が成型培土又は被覆成型培土を二以上並べて形成され、その内側に主根張用のバラの培土が収容され、
前記主根張用バラの培土で植物を栽培して生育、成長させ、その植物の根が前記根張用の成型培土又は被覆成型培土まで展伸してから、前記副根張用の成型培土又は被覆成型培土を取り除くことにより、前記根を切断して当該根を刺激して新たな発根を促進させる、
ことを特徴とする植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は果菜、花卉類、植木といった各種植物(以下、これらをまとめて「植物」という)の栽培に使用する植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナス、ピーマンなどの植物は、苗の時はポットで、定植後はプランター等で栽培されることがある。ポットやプランターで栽培した場合、植物の根は培土内で伸び、根同士が絡まりあって根詰まりを起こし易い。根詰まりは植物の生育を阻害する一因となるため、回避することが望まれる。
【0003】
従来、根詰まりの解消を解決課題とするポットとして、育苗用紙製ポット(特許文献1)や紙製筒とトレイとからなる育苗器(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−136840号公報
【特許文献2】特開2000−270687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1記載の育苗用紙製ポット及び特許文献2記載の育苗器は、いずれも伸びた根をポットや紙製筒の開口部から外に出し、その根を空気に触れさせることによって成長を止め(エアプルーニングし)、その根から出る新たな側根を元の根とは別の方向に成長させて培土中にまんべんなく分散させて根詰まりしにくくするものである。
【0006】
前記両特許文献記載の発明は、紙製ポット内や紙製筒内にまんべんなく根を分散させることはできるが、結果的にポット内や筒内に広がる根の量が多くなるため、土中の酸素や栄養が不足し、果菜類の生育を阻害することがある。
【0007】
本発明の解決課題は、定植後の植物栽培は勿論のこと、育苗(例えば、果樹の苗などの育苗)にも使用でき、いずれの場合も、根詰まりを防止でき、根に酸素や栄養が供給され易く、植物の生育、成長が促進される植物栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の植物栽培方法は、主根張用の成型培土又は成型培土の外周が被覆材でカバーされた被覆成型培土の外側に副根張用の成型培土又は被覆成型培土が配置され、主根張用の成型培土又は被覆成型培土で植物を栽培して生育、成長させて、その植物の根が副根張用の成型培土又は被覆成型培土まで展伸してから、主根張用の成型培土又は被覆成型培土を、副根張用の成型培土又は被覆成型培土の内側から取り除くか、又は副根張用の成型培土又は被覆成型培土を、主根張用の成型培土又は被覆成型培土の周囲から取り除くことにより、前記根を切断して当該根を刺激して新たな発根を促進させる栽培方法である。
【0009】
本発明の植物栽培方法は、主根張用の成型培土又は成型培土の外周が被覆材でカバーされた被覆成型培土の外側に、副根張用の成型培土又は被覆成型培土が配置され、この主根張用の成型培土又は被覆成型培土と副根張用の成型培土又は被覆成型培土が仕切り材で仕切られ、仕切り材は植物の根が通過可能な通過部を備え、主根張用の成型培土又は被覆成型培土で植物を栽培して生育、成長させて、その植物の根が仕切り材の通過部を通過して副根張用の成型培土又は被覆成型培土まで展伸してから、主根張用の成型培土又は被覆成型培土を、副根張用の成型培土又は被覆成型培土の内側から取り除くか、又は副根張用の成型培土又は被覆成型培土を、主根張用の成型培土又は被覆成型培土の周囲から取り除くことにより、前記根を切断して当該根を刺激して新たな発根を促進させる栽培方法である。
【0010】
本発明の植物栽培方法は、副根張用の培土が成型培土又は被覆成型培土を二以上並べて形成され、その内側に主根張用のバラの培土が収容され、前記主根張用バラの培土で植物を栽培して生育、成長させ、その植物の根が前記根張用の成型培土又は被覆成型培土まで展伸してから、前記副根張用の成型培土又は被覆成型培土を取り除くことにより、前記根を切断して当該根を刺激して新たな発根を促進させる栽培方法である。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【発明の効果】
【0015】
本発明の植物栽培方法は次の効果がある。
(1)栽培された植物の根を、副根張用の成型培土に進入させるので、植物が主根張用の成型培土又は副根張用の成型培土で根詰まりすることがなく、根詰まりによる各種弊害が一掃される。また、根張りし易くなるため植物の成長に適し、根が安定する。
(2)展伸後に副根張用の成型培土を主根張用の成型培土から分離したり、副根張用の成型培土を主根張用の成型培土から分離したりするだけで、根を適度に切断(根切り)できるので、新たな根の発育(発根)が促進される。
【0016】
願における成型培土、カプセル培土は次のような効果がある。
(1)ブロック状、カプセル状であるため栽培容器の副根張室に手軽にセットでき、培土の入替えを容易且つ迅速に行うことができ、作業性が向上する。
(2)植物の根が通過可能な被覆材でカバーすれば、培土が型崩れしにくくなるので取り扱い易く作業性がよい。カプセル培土の場合も同様の効果がある。
(3)成型培土の被覆材や、カプセル培土のカプセル容器を土中で分解される不織布製や紙製などとすれば、被覆材が分解した後は培土が崩れ易くなるのでその培土を再利用し易い。また、分解した被覆材が土に帰るため食物連鎖が容易になり、環境に優しい培土となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は植物栽培状態の一例を示す斜視説明図、(b)は一方の副根張室の外壁を取外した状態を示す斜視説明図。
図2】(a)は底材が横幅方向中央に向けてV字状に傾斜している場合の縦断面図、(b)は底材が横幅方向外側に向けてヘの字状に傾斜している場合の縦断面図、(c)は底材が横幅方向一方側に向けて傾斜している場合の縦断面図。
図3】仕切り材を網にし、副根張室を小室に区画し、外壁を小室ごとに区画した栽培容器の斜視図。
図4】(a)は仕切り材を孔あき板にし、副根張室を小室に区画し、外壁を小室ごとに区画し、小室に成型培土を出し入れできるようにした栽培容器の斜視図、(b)は仕切り材を孔あき板にし、副根張室に成型培土を出し入れできるようにした栽培容器の斜視図。
図5】主根張室と副根張室を別体にした場合の一例を示すものであって、副根張室を主根張室から分離した状態を示す縦断面図。
図6】主根張室と副根張室を二以上の仕切り材を横に並べて仕切って、仕切り材の間に通過部を設けた場合の斜視説明図。
図7】(a)は主根張室の植物の根が副根張室に進入した状態を示す断面図、(b)は仕切り材の外側に切断具を押し込んで副根張室に進入した根を切断する状態を示す断面図、(c)は切断した根を副根張室内の培土と共に排除した状態を示す断面図、(d)は副根張室に新たな培土を入れた状態を示す断面図。
図8】(a)は主根張室とその外側の副根張室を円形にした場合の斜視図、(b)は主根張室の外側と内側の双方に副根張室を設けた場合の斜視図。
図9】栽培容器の外壁を取り外して一例に連結配置した場合の説明図。
図10】本発明の栽培方法の一例であって、(a)はブロック状の主根張培土と副根張培土を並べて植物栽培する方法の説明図、(b)はブロック状の主根張培土と副根張培土を仕切り材で仕切って並べて植物栽培する方法の説明図。
図11】本発明の栽培方法の一例であって、(a)は容器本体内にブロック状の副根張培土を中央部を囲って配置し、その副根張培土の内側にバラの主根張培土を入れて植物を栽培する方法の説明図、(b)は容器本体の中央部にブロック状の主根張培土を配置し、その外側にバラの副根張培土を入れて植物を栽培する方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(植物栽培方法の実施形態1)
植物栽培方法の実施形態の一例について、図1を参照して説明する。図1の植物栽培方法は、容器本体1内に主根張室4と副根張室5が設けられた栽培容器を使用し、その主根張室4内の培土で植物Pを栽培する方法である。図1に示す栽培容器は、容器本体1の外壁2の内側に二枚の仕切り材3を設けて仕切り材3の内側を主根張室4とし、仕切り材3と容器本体1の外壁2との間を副根張室5とし、仕切り材3に通過部6を設けてある。図1では主根張室4内の培土で植物Pを栽培して生育、成長させた植物Pの根が通過部6を通過して、副根張室5内の培土まで展伸(進入)するようにした栽培方法である。
【0019】
図1の実施形態は副根張室5が主根張室4の両外側に設けた栽培容器を用いた場合であるが、副根張室5が主根張室4の一方の外側にのみ設けられた栽培容器を用いることもできる。
【0020】
(植物栽培方法の実施形態2)
植物栽培方法の実施形態の第2の例として図11(a)に示すものは、ブロック状の複数の副根張培土50を箱状の容器本体1内の中央部を囲って配置し、その副根張培土50の内側にバラの主根張培土40を入れ、前記主根張培土40で栽培した植物の根を副根張培土50に進入させる栽培方法である。
【0021】
(植物栽培方法の実施形態3)
植物栽培方法の実施形態の第2の例として図11(b)に示すものは、ブロック状の複数の主根張培土40を箱状の容器本体1内の略中央部に配置し、その外周にバラの副根張培土50を入れ、前記主根張培土40で栽培した植物の根を副根張培土50に進入させる栽培方法である。
【0022】
(植物栽培方法の実施形態4)
植物栽培方法は、図8(a)(b)に示すような環状(リング状)の栽培容器を使用し、内側の主根張室4の外側に副根張室5を設け、両根張室の間の仕切り材3に通過部(図示せず)を開口し、主根張室4で栽培した植物Pの根がその通過部を通過して副根張室5内の培土に進入できるようにした栽培方法である。リング状の栽培容器を使用する場合、副根張室5は主根張室4の外側又は内側の双方に設けることも、内側だけに設けることもできる。
【0023】
(植物栽培方法の実施形態5)
植物栽培方法の実施形態の一例について、図10(a)(b)を参照して説明する。この実施形態の植物栽培方法は、トレイ状の容器本体1内にブロック状に成型した主根張培土40と副根張培土50を並べ、主根張培土40で植物Pを栽培して生育、成長させた植物Pの根が副根張培土50内に進入するようにした方法である。
【0024】
図10では一つの主根張培土40の外側に形状の異なる副根張培土50を副数並べてあるが、主根張培土40の数、形状、大きさ、副根張培土50の数、形状、大きさ、配置等は図10に示す以外のものであってもよい。一つの容器本体1内に主根張培土40を二以上配置した場合は、夫々の主根張培土40で植物を栽培することができる。
【0025】
主根張培土40と副根張培土50の境目には、図10(b)のように仕切り材3を配置することもできる。この場合、仕切り材3には植物の根が通過できる通過部を備えたもの、例えば、網材、不織布、孔あきシート等を使用することができる。図10の主根張培土40、副根張培土50は腐植布、紙などの被覆材で被覆したものであってもよい。図10の主根張培土40、副根張培土50は箱状の栽培容器内に配置することもできるが、容器本体1としては浅いトレイのようなものを使用することもできる。主根張培土40と副根張培土50の間、隣接する副根張培土50間に隙間をあけて収容することも密着するように配置することもできる。
【0026】
(植物栽培方法の実施形態6)
前記した植物栽培方法は、いずれも、栽培当初から、主根張室4と副根張室に培土を入れておいて栽培する方法、主根張培土40と副根張培土50を配置しておいて栽培する方法であるが、本発明の植物栽培方法は、主根張室4の培土で植物Pを栽培する当初は副根張室5に培土を入れず、植物Pが生育、成長して根Rが副根張室5の近く又は副根張室5内まで展伸してから副根張室5に培土を入れ、その副根張室5の培土に根Rを進入させることもできる。
【0027】
(本発明における栽培容器の実施形態1)
本発明における栽培容器の実施形態の一例について図面を参照して説明する。本願における栽培容器は円形、楕円形、星型等のどのような形状であってもよいが、図1図7の実施形態は横長箱状の場合、図8は円形(リング状)の場合である。図1図7の栽培容器は主根張室4と副根張室5を備えている。本発明では主根張室4の両外側に副根張室5を設けてあるが、本発明では片外側のみに設けることもできる。図8(a)はリング状の主根張室4の外周囲にリング状の副根張室5を同心円状に設けた場合、図8(b)はリング状の主根張室4の外周と内周の双方にリング状の副根張室5を同心円状に設けてある。
【0028】
図1(a)に示す栽培容器は、紙、樹脂、FRP、SUSといった各種材質製の横長箱状であり、容器本体1の外壁2の内側に二枚の仕切り材3を設けて、仕切り材3の内側を主根張室4とし、仕切り材3と容器本体1の外壁2との間を副根張室5とし、仕切り材3に通過部6を設けてある。図1(a)では仕切り材3と通過部6を見易くするため、片側の副根張室5には培土を入れずに片側にだけ培土を入れた状態を示してある。通過部6の一例として図1(a)に示すものは下端開口の縦長溝であり、それを数本開口してあるが、通過部6は他の形状、例えば縦長角孔、丸穴、横長孔等であってもよく、その数、配列、間隔等も根が通過し易くなるように任意に設計することができる。この栽培容器は図1(b)に示すように容器本体1の側壁9の内面にガイド溝13を縦向きに形成して、そのガイド溝13に沿って副根張室5の外壁2を抜き差し(着脱)できるようにしてある。外壁2は固定式であってもよい。
【0029】
主根張室4は、図2(a)に示すように底材8と、容器本体1内に対向配置された二枚の仕切り材3と、容器本体1の二枚の側壁9(図1)で囲われており、その内部空間に培土を入れて植物Pを栽培できるようにしてある。仕切り材3には、例えば、図1(b)に示すような縦長孔を備えた板材、図3に示すような網材、図4(a)(b)に示すような丸孔を備えた板材、図示しないエキスパンドメタル等を使用することができる。図1(b)の場合は縦長孔が、図3の場合は網目が、図4(a)(b)の場合は丸孔が、エキスパンドメタルの場合はその網目が通過部6となる。培土は、植物栽培に必要な性能や目的を備えていれば、汎用の培土を使用することも、新たな培土を使用することもできる。
【0030】
図1では主根張室4の両外側に副根張室5が設けられている。夫々の副根張室5は図1(a)に示すように底材8と仕切り材3と容器本体1の外壁2と二枚の側壁9(図1)で囲われている。副根張室5にも培土を収容することができる。副根張室5の外壁2は通気性のあるものが好ましく、例えば紙製の硬質板材、前面に培土が落ちない程度の微細孔が開口されたパンチングメタルなどを用いることができる。
【0031】
図1(a)(b)に示す栽培容器の底材8は、栽培容器を設置する床面やベッド等の設置面に対して平行に設けられているが、底材8は図2(a)に示すように主根張室4の幅方向(図2(a)の左右方向)中央部に向けて正面視V字状の下り傾斜にして、主根張室4内及び副根張室5内の水はけを良くして根腐れを防止できるようにしてある。底材8の傾斜方向最下部にドレイン7を設けておけば底材8に溜まった水抜きができる。底材8は排水に適する傾斜方向、傾斜角度、形状であれば図示した以外であってもよく、例えば、図2(b)に示すように底面をヘの字状(主根張室4の横幅方向中央側から両副根張室の外壁2側に向けてヘの字状)にして、両側面(外壁2側)から余分な水分を排水可能とすることもできる。底材8は図2(c)のように横幅方向一方側に傾斜させておくこともできる。底材8は培土が落下しない程度の細かな孔や目を備えた板材、網材等、通気性の良いものを用いることもできる。この場合、底材8は任意方向、任意角度に傾斜させることもできるが、傾斜させなくてもよい。底材8にも通気用、通水用の開口部(孔や溝等を)を設けることもできる。底材8は全部又は一部を着脱可能とすることもできる。
【0032】
前記副根張室5は図3に示すようにその内部を区画材10で二以上の小室11に区画することもできる。その区画数は二個又は四個以上など、目的に応じ任意の数とすることができる。前記区画材10は取り外し式とすることもでき、図3に示す栽培容器は副根張室5を縦方向に区画してあるが、横方向に区画したり、縦方向と横方向に交互に区画したり、適宜に区画することができる。各小室11の外壁2は個別に脱着できるようにしてあるが、外壁2は全ての小室11を一度に閉塞できるサイズの一枚とすることもできる。
【0033】
図4(a)に示す栽培容器の基本的な構造は、副根張室5を小室に区画し、外壁2を小室11ごとに区画した図3に示す栽培容器と同様である。異なるのは、仕切り材3を孔あき板にしたこと、小室11に成型培土12を出し入れできるようにしたことである。同図(b)に示す栽培容器の基本的な構造は、図1(a)(b)に示す栽培容器と同じである。異なるのは、仕切り材3を孔あき板にしたこと、副根張室5に成型培土12を出し入れできるようにしたことである。成型培土12は汎用の培土、例えば、ピートモスや赤土等の根張に適した培土を単独で又は二種以上混合して、副根張室5内に収容可能な形状、サイズのブロック状に成型したものである。この場合、ブロック状に成型した培土を被覆材14でカバーすることもできる。被覆材14には通気性があり、土中で分解される性質の紙製のフィルム、シート、不織布等を使用するのが好ましい。副根張室5を小室11に区画した場合は、成型培土12を夫々の小室11に収容可能なサイズにする。
【0034】
本発明における栽培容器は、図5に示すように副根張室5と主根張室4を別体として脱着可能とすることもできる。具体的には、副根張室5の底材8に嵌合突起15aを設けるとともに、主根張室4の底材8にその嵌合突起15aに嵌合可能な嵌合凹部15bを設け、嵌合突起15aを嵌合凹部15bに嵌合することで接続でき、嵌合突起15aを嵌合凹部15bから抜くことで分離できるようにすることができる。副根張室5と主根張室4は他の手段による脱着式とすることもできる。主根張室4で栽培中の植物Pの根Rが副根張室5内に進入(展長)して根が詰まったら根切りをし、副根張室5を主根張室4から取外して、培土の入替えを行うことができる。
【0035】
図1では底材8の底面の長手方向両下端にL字状の細長板状の支持部17が取り付けられて、支持部17を設置面に設置すると底材8の底面が設置面から離れて(浮いて)、設置面と設置面との間に底側空間Sができるようにしてある。また、図1では支持部17の長手方向両端部の下には上向きコ字状の補強板16を取付けて支持部17及び底材8を補強してある。この補強板16は細長であり両端の上向きに突出する受部16aが左右の支持部17の外側に宛がわれて容器本体1に固定されて、支持部17が外側に広がる(変形する)のを防止することもできるようにしてある。図1の底側空間Sには、例えば暖房用或いは冷却用の配管を敷設することができる。支持部17、補強板16は他の形状や構造であってもよく、例えば角パイプやブロック等であってもよい。
【0036】
前記支持部17には、二以上の栽培容器を連結する際に使用可能な孔状の連結部18が設けられている。例えば、二つの栽培容器を連結する場合、両栽培容器の連結部18を向い合せ、両連結部18にボルトを差し込み、そのボルトをナットで固定することによって、両者を連結することができる。連結部18はこれ以外の機構、方式であってもよく、個々の栽培容器にフックや他の構造の係止具を取り付けて、連結する二つの栽培容器の係止具を互いに係止することにより連結でき、その係止を外すことにより分離できるものであってもよい。連結部18は支持部17以外に設けることもできる。栽培容器は図9のように長手方向両側の側壁を取り外して連結することもできる。可能であれば図9の横方向(左右)に並べて連結することもできる。
【0037】
(本発明における栽培容器の実施形態2)
本発明における栽培容器の他の実施形態を、図6を参照して説明する。図6の栽培容器の基本構造は図1(a)(b)に示す栽培容器と同様である。異なるのは、主根張室4と副根張室5とを二枚以上の仕切り材3を間隔をあけて配置して仕切り、夫々の仕切り材3の隙間を通過部6としたことである。主根張室4内で栽培した植物Pの根Rは通過部6を通過して副根張室5内に進入できるようにしてある。この場合、夫々の仕切り材3には、スリット、網目、貫通孔などの通過部6を備えたものを用いることもできるが、通過部6を備えていないものを用いることもできる。この実施形態では、二枚以上の仕切り材3が縦向きに配置されているが、二以上の仕切り材3は横向きにして高さ方向に間隔をあけて配置することもできる。この場合、仕切り材3は容器本体1の上下方向にスライドさせて出し入れ可能とすることも、長手方向両端側から横方向にスライドさせて出し入れ可能とすることもできる。
【0038】
(本発明における栽培容器の実施形態3)
前記した本発明における栽培容器の実施形態1、2では、主根張室4が横長箱型であり、その両外側に副根張室5を設けてあるが、副根張室5はいずれか一方にのみ設けることも、同一方向に二以上設けることもできる。
【0039】
(本発明における栽培容器の実施形態4)
本発明における栽培容器の他の実施形態を、図8(a)を参照して説明する。この栽培容器は主根張室4が有底円筒状(リング状)であり、その外側(外周)に有底円筒状の副根張室5を設けたものであるが、副根張室5をリング方向に二以上の分割構造にすることができるなど、他の構造は基本的には実施形態1、2と同じである。
【0040】
(本発明における栽培容器の実施形態5)
本発明における栽培容器の他の実施形態を、図8(b)を参照して説明する。この栽培容器は主根張室4が有底円筒状であり、その外側(外周)と内側(内周)に有底円筒状の副根張室5を設けたものであるが、他の構造は基本的には実施形態1、2と同じである。
【0041】
(本発明における栽培容器の実施形態6)
本発明における栽培容器の実施形態を、図10(a)を参照して説明する。図10(a)の本発明における栽培容器は容器本体1としてトレイ状のものを使用し、その上に、植物Pを栽培可能なブロック状に成型された主根張培土40が配置され、その四方外周にブロック状に成型された副根張培土50を配置して、主根張培土40で栽培されて生育、成長した植物Pの根が副根張培土50に展伸できるようにしたものである。副根張培土50の配置は図10(a)以外の配置とすることもできる。いずれの配置の場合も、副根張培土50は主根張培土40の外側に二以上設けて、根詰まりをブロック単位で細かく管理できるようにするのが望ましい。主根張培土40と副根張培土50、又は副根張培土50と副根張培土50は、間隔をあけて収容することもできるが、互いに密着するように配置することもできる。
【0042】
主根張培土40と副根張培土50のブロックは被覆材でカバーされたものでも良く、カバーされないものでも良い。副根張培土50は形状又はサイズが同じもの又は異なるものでもよい。主根張培土40の四周に副根張培土50が配置される場合は、主根張培土40はばらのものであってもよい。
【0043】
(本発明における栽培容器の実施形態7)
図10(b)の本発明における栽培容器は容器本体1としてトレイ状のものを使用し、その内部に縦横に仕切り材3を入れて容器本体1内を多数の空間に区画し、それら空間にブロック状に成型された培土を入れ、そのうちの一部の空間を主根張室4とし、その外側の空間を副根張室5とすることもできる。培土はバラのものをいれてもよい。仕切り材3は薄板状、シート状、フィルム状といった各種厚さのものを使用することができ、材質も容器本体1の材質と同じものでも他のもの、例えば、紙、樹脂等でもよい。透水性、通気性のあるものが適する。
【0044】
(培土の実施形態)
根張室4、副根張室5に収容する培土は、栽培に必要な性能や目的を備えた汎用の或いは新規な培土を使用することができる。培土はバラでも、ブロック状に成型したもの(成型培土、ブロック培土)でも、カプセルのような容器にバラ或いはブロック状の培土を収容したもの(カプセル培土)であってもよい。カプセル形状の容器は土中で分解されない材質のものでもよい。この場合、使用後にカプセル内の培土を取り出して、そのカプセルに新しい培土を詰めて再利用できるようにしてもよい。
【0045】
(成型培土の実施形態)
型培土12は前記栽培容器の主根張室4、副根張室5に収容できる培土であって、栽培に必要な性能や目的を備えた汎用の或いは新規な培土を副根張室5に収容可能なブロック状に成型したものである。成型培土12はブロック状のままでも良いが、その外周を被覆材14で被覆して型崩れしないようにすることもできる。被覆材14には植物Pの根Rが進入可能な孔、目、隙間等の通過部6を備えたもの、通水性や通気性を備えたもの、土中で分解される紙製のフィルム、シート、不織布等が適する。被覆材14は土中で分解されない材質のものでもよい。
【0046】
型培土12のブロック形状、サイズは、小室11に区画した又は区画しない副根張室5内に収容できるように、夫々の副根張室5の形状、サイズに合わせる。
【0047】
(使用例)
本発明における栽培容器の使用例について説明する。この使用例は、副根張室5が小室11に区画されていない場合の例であるが、小室11に区画されている場合も同様である。
(1)主根張室4に培土を入れる。培土は汎用のものを使用することができる。副根張室5には、主根張室4で栽培される植物Pの根Rが伸びるまでは入れなくてもよい。副根張室5に入れる培土は主根張室4に入れる培土と同じものであっても異なるものであってもよい。また、前記した成型培土12であってもよい。
(2)主根張室4にナス、ピーマン、マンゴーといった植物Pの種を播種したり、苗を定植したりして栽培する。
(3)生育し、成長した植物Pの根Rは主根張室4から通過部6を通って副根張室5に進入し、副根張室5でさらに張る(図7(a))。
(4)図7(b)のように植物Pの根Rが副根張室5内で根詰まりしたら、図7のように副根張室5の上方から仕切り材3の外側に切断具Cを押し込んで副根張室5内の根Rを培土と共に切断する。切断後、又は切断前に図7に示すように容器本体1の外壁2を引き抜いて取り外し、切断した培土と根Rを副根張室5から排出する(取り除く)。
(5)図7(c)のように前記外壁2を戻してから、空の副根張室5内に新たな培土を入れる。この場合、成型培土12を入れることもできる。
【0048】
副根張室5内の根Rの切断及び培土の入替えは両外側の副根張室5について同時に行うこともできるが、根Rが切断され過ぎて植物Pの生育が阻害されないようにするためには、時期をずらすなど生育の状態を見極めながら行うことが望ましい。前記使用例は副根張室5が小室11に区画されている場合も同様である。また、栽培容器が図8(a)(b)に示すような円形状の場合も同様である。
【0049】
栽培容器は、上記使用例以外の方法や手順で使用することもできる。
【0050】
栽培容器は各種サイズを用意して、植物Pの播種用、育苗用、栽培(定植)用といった各種用途に使用することができる。本願における栽培容器は構造が簡潔であることから根切りや土の入替えなどを機械化することも可能である。成型培土12を使用する場合は特に機械化し易い。可能であれば、主根張室4にも成型培土12を使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 容器本体
2 外壁
3 仕切り材
4 主根張室
5 副根張室
6 通過部
7 ドレイン
8 底材
9 側壁
10 区画材
11 小室
12 成型培土
13 ガイド溝
14 被覆材
15a 嵌合突起
15b 嵌合凹部
16 補強板
16a 受部
17 支持部
18 連結部
40 主根張培土
50 副根張培土
C 切断具
P 植物
R (植物の)根
S 底側空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11