(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932921
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】複数のコイル1次を有する誘導充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/00 20160101AFI20160526BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
H02J17/00 B
H02J17/00 X
H02J7/00 301D
【請求項の数】33
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-180384(P2014-180384)
(22)【出願日】2014年9月4日
(62)【分割の表示】特願2010-550854(P2010-550854)の分割
【原出願日】2009年3月12日
(65)【公開番号】特開2015-29415(P2015-29415A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2014年9月4日
(31)【優先権主張番号】61/036,459
(32)【優先日】2008年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】302070822
【氏名又は名称】アクセス ビジネス グループ インターナショナル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】バールマン,デイビッド ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】モルレマ,スコット エー.
(72)【発明者】
【氏名】シュワンネッケ,ジョシュア ケー.
【審査官】
杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−328916(JP,A)
【文献】
特開2005−6440(JP,A)
【文献】
特開2005−110409(JP,A)
【文献】
特開2005−110412(JP,A)
【文献】
特開2005−110421(JP,A)
【文献】
特開2006−81249(JP,A)
【文献】
特開2006−246633(JP,A)
【文献】
特表2005−525705(JP,A)
【文献】
特表2006−525705(JP,A)
【文献】
特表2006−517778(JP,A)
【文献】
特表2006−518179(JP,A)
【文献】
特表2006−519580(JP,A)
【文献】
特表2008−503196(JP,A)
【文献】
特表2009−525715(JP,A)
【文献】
特表2010−527226(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0015479(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0130915(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0130916(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0145830(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0182367(US,A1)
【文献】
米国特許第6803744(US,B1)
【文献】
国際公開第2004/038888(WO,A2)
【文献】
国際公開第2006/001557(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/089086(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H02J 7/00
H02J 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔装置にワイヤレス電力を供給するとともに前記遠隔装置から通信を受信する誘導充電装置であって、
前記遠隔装置にワイヤレスで電力を伝達するために電圧を印加する能力を有する第1のワイヤレス電力伝達1次と、
前記遠隔装置にワイヤレスで電力を伝達するために電圧を印加する能力を有する第2のワイヤレス電力伝達1次と、
前記第1のワイヤレス電力伝達1次及び前記第2のワイヤレス電力伝達1次を除く通信路を介して前記遠隔装置から通信を受信するワイヤレス通信受信器と、
第1の電力範囲内の前記第1のワイヤレス電力伝達1次又は第2の電力範囲内の前記第2のワイヤレス電力伝達1次に電圧を印加することによって前記遠隔装置にワイヤレスで電力を選択的に伝達する制御器であって、前記制御器は、前記第1のワイヤレス電力伝達1次及び前記第2のワイヤレス電力伝達1次を除く前記通信路を介して前記第1の電力範囲内のワイヤレス電力送信中に前記遠隔装置から通信を受信するようプログラミングされる制御器と、
を有し、
前記制御器は、前記第1のワイヤレス電力伝達1次と前記第2のワイヤレス電力伝達1次のうちの少なくとも一方を含む通信路を介して前記第2の電力範囲内のワイヤレス電力送信中に前記遠隔装置から通信を受信するようプログラミングされることを特徴とする誘導充電装置。
【請求項2】
前記制御器は、前記遠隔装置からの前記通信に応じてワイヤレスで電力を選択的に伝達するようプログラミングされる請求項1に記載の誘導充電装置。
【請求項3】
前記通信は電力要求情報を含み、前記電力要求情報に応答して、前記制御器は、異なる電力量を前記遠隔装置に伝達し、前記制御器は、前記第1のワイヤレス電力伝達1次及び前記第2のワイヤレス電力伝達1次を除く前記通信路と、前記第1のワイヤレス電力伝達1次と前記第2のワイヤレス電力伝達1次のうちの少なくとも一方を含む前記通信路との間の切替を行う請求項2に記載の誘導充電装置。
【請求項4】
前記電力要求情報は、メモリにある前記遠隔装置についての電力要求情報を調べるための遠隔装置IDを含む請求項3に記載の誘導充電装置。
【請求項5】
前記制御器は、前記遠隔装置から受信した前記通信に応じて送信される電力量を決定するようプログラミングされ、前記第1のワイヤレス電力伝達1次と前記第2のワイヤレス電力伝達1次のいずれに前記制御器が電圧を印加するかは、前記送信される電力量に応じる請求項2に記載の誘導充電装置。
【請求項6】
メモリを有し、前記メモリはしきい値を有し、前記制御器は、前記しきい値より下である前記送信される電力量に応答して前記第1のワイヤレス電力伝達1次に電圧を印加することによって、前記遠隔装置にワイヤレスで電力を伝達するようプログラミングされ、前記制御器は、前記しきい値より上である前記送信される電力量に応答して前記第2のワイヤレス電力伝達1次に電圧を印加することによって、前記遠隔装置にワイヤレスで電力を伝達するようプログラミングされる請求項5に記載の誘導充電装置。
【請求項7】
前記通信は、前記遠隔装置の電力クラスを含み、前記遠隔装置の前記電力クラスは、前記電力の伝達が前記第1の電力範囲内と前記第2の電力範囲内のいずれで行われているか、及び、前記第1のワイヤレス電力伝達1次及び前記第2のワイヤレス電力伝達1次を除く通信路と前記第1のワイヤレス電力伝達1次と前記第2のワイヤレス電力伝達1次のうちの少なくとも一方を含む通信路のいずれを介して通信が行われているかを決定する請求項1に記載の誘導充電装置。
【請求項8】
遠隔装置にワイヤレス電力を供給するとともに前記遠隔装置から通信を受信する方法であって、
各々が前記遠隔装置にワイヤレスで電力を伝達するために電圧を印加する能力を有する複数の1次を提供することと、
前記遠隔装置に供給する電力量を決定することと、
ワイヤレス電力伝達1次として前記複数の一次の少なくとも1つに電圧を印加することによって前記遠隔装置に前記電力量を選択的に伝達することと、
前記遠隔装置に伝達される前記電力量に応じて、第1の電力範囲内の電力の伝達中の前記ワイヤレス電力伝達1次を介した前記遠隔装置との通信又は第2の電力範囲内の電力の伝達中の前記ワイヤレス電力伝達1次以外の前記複数の1次の1つを介した前記遠隔装置との通信を選択的に行うことと、
を有することを特徴とするワイヤレス電力の供給方法。
【請求項9】
前記遠隔装置からの前記通信に応じて前記遠隔装置にワイヤレスで電力を選択的に伝達する請求項8に記載のワイヤレス電力の供給方法。
【請求項10】
前記通信は電力要求情報を含み、前記電力要求情報に応答して異なる電力量を前記遠隔装置に伝達し、異なる通信路を介して前記遠隔装置と通信を行う請求項8に記載のワイヤレス電力の供給方法。
【請求項11】
前記電力要求情報は遠隔装置IDを含み、前記遠隔装置IDに基づいて、メモリにある前記遠隔装置についての電力要求情報を調べることを有する請求項10に記載のワイヤレス電力の供給方法。
【請求項12】
前記遠隔装置から受信した前記通信に応じて、送信される電力量を決定することを有し、所定の1つ以上の前記1次は、前記電力量に基づいて前記遠隔装置にワイヤレスで前記電力量を選択的に伝達するために選択される請求項9に記載のワイヤレス電力の供給方法。
【請求項13】
前記通信は、前記遠隔装置の電力クラスを含み、前記遠隔装置の前記電力クラスは、前記電力量の伝達が前記第1の電力範囲内と前記第2の電力範囲内のいずれで行われているか、及び、前記ワイヤレス電力伝達1次を除く通信路と前記ワイヤレス電力伝達1次を含む通信路のいずれを介して通信が行われているかを決定する請求項9に記載のワイヤレス電力の供給方法。
【請求項14】
遠隔装置にワイヤレス電力を供給するとともに前記遠隔装置から通信を受信する誘導充電装置であって、
制御器と、
前記遠隔装置にワイヤレスで電力量を伝達するために電圧を印加する能力を有するワイヤレス電力伝達1次と、
前記遠隔装置と前記制御器との間の第1の通信路であって、前記第1の通信路は、前記ワイヤレス電力伝達1次を含む第1の通信路と、
前記遠隔装置と前記制御器との間の第2の通信路であって、前記第2の通信路は、前記ワイヤレス電力伝達1次を除くとともにWIFI、赤外線、Bluetooth(登録商標)及びRFIDのうちの少なくとも1つを含む第2の通信路と、
を有し、
前記制御器は、前記遠隔装置にワイヤレスで伝達される前記電力量に応じて、前記第1の通信路又は前記第2の通信路を介して前記遠隔装置と選択的に通信をようプログラミングされることを特徴とする誘導充電装置。
【請求項15】
前記制御器は、前記遠隔装置からの通信に応じてワイヤレスで電力を選択的に伝達するようプログラミングされる請求項14に記載の誘導充電装置。
【請求項16】
前記通信は電力要求情報を含み、前記電力要求情報に応答して、前記制御器は、前記ワイヤレス電力伝達1次を介して異なる電力量を前記遠隔装置に伝達し、前記制御器は、前記第1の通信路と前記第2の通信路との間の切替を行う請求項15に記載の誘導充電装置。
【請求項17】
前記電力要求情報は、メモリにある前記遠隔装置についての電力要求情報を調べるための遠隔装置IDを含む請求項16に記載の誘導充電装置。
【請求項18】
前記制御器は、前記遠隔装置から受信した前記通信に応じて送信される電力量を決定するようプログラミングされる請求項15に記載の誘導充電装置。
【請求項19】
前記通信は、前記遠隔装置の電力クラスを含み、前記遠隔装置の前記電力クラスは、前記電力量の伝達が第1の電力範囲内と第2の電力範囲内のいずれで行われているか、及び、前記第1の通信路と前記第2の通信路のいずれを介して通信が行われているかを決定する請求項14に記載の誘導充電装置。
【請求項20】
前記遠隔装置にワイヤレスで前記電力量を伝達することは、ワイヤレス電力伝達1次として前記複数の1次の複数に電圧を印加することを有する請求項8に記載のワイヤレス電力の供給方法。
【請求項21】
前記制御器は、前記第1の電力範囲、前記第2の電力範囲又は第3の電力範囲内にある前記第1のワイヤレス電力伝達1次及び前記第2のワイヤレス電力伝達1次の両方に電圧を印加することによって前記遠隔装置にワイヤレスで電力を選択的に伝達するようプログラミングされる請求項1に記載の誘導充電装置。
【請求項22】
複数の1次コイルを有する1次コイルアセンブリを有する誘導充電装置から遠隔装置に誘導電力を伝達する方法であって、
制御識別クラス及び電力クラスを取得することと、
前記制御識別クラスに基づいて、複数の誘導充電制御アルゴリズムのうちの1つを選択することと、
前記電力クラスと前記制御識別クラスのうちの少なくとも1つに基づいて、前記遠隔装置に電力を伝達する前記1次コイルアセンブリの前記複数の1次コイルから1次コイルを選択することと、
前記選択した誘導充電制御アルゴリズム及び前記選択した1次コイルを用いて、前記誘導充電装置から前記遠隔装置への電力伝達を開始することと、
を有し、
前記電力クラスは、前記遠隔装置が受け入れることができる最大電力量を表すことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記制御識別クラス及び前記電力クラスを取得することは、前記制御識別クラス及び前記電力クラスを有する前記遠隔装置から電力要求情報を受信することを有する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の誘導充電制御アルゴリズムは、充電設定点制御、充電エラー制御、充電装置設定点制御、充電装置エラー制御、及び充電装置直接制御のうちの2つ以上を含む請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記電力クラスに基づいて前記遠隔装置に電力を伝達する前記1次コイルアセンブリの前記複数の1次コイルから1次コイルを選択することは、前記電力クラスに基づいて電力を前記遠隔装置に伝達する前記1次コイルアセンブリの前記複数の1次コイルから複数の1次コイルを選択することを有する請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記制御識別クラス及び前記電力クラスを取得することは、ピングメッセージを周期的に送信することと、それに応答して受信したメッセージを認証することと、認証メッセージに応答して、前記制御識別クラス及び前記電力クラスを決定することと、を有する請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記電力クラスは、コイルの形状及びパラメータ仕様に影響を与える請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記1次コイルアセンブリの前記複数の1次コイルの各々は、異なる電力クラスに関連した誘導充電の範囲を作り出すために選択的に電圧を印加する能力を有する請求項22に記載の方法。
【請求項29】
遠隔装置に電力を伝達する誘導充電装置であって、
複数の1次コイルを有する1次コイルアセンブリと、
複数の誘導充電制御アルゴリズムを格納するメモリと、
遠隔装置の制御識別クラス及び遠隔装置の電力クラスに関する情報を受信する通信システムであって、前記遠隔装置の電力クラスは、前記遠隔装置が受け入れることができる最大電力量を表す通信システムと、
前記制御識別クラスに基づいて前記複数の誘導充電制御アルゴリズムのうちの1つを選択し、前記遠隔装置の電力クラスと前記遠隔装置の制御識別クラスのうちの少なくとも1つに基づいて、前記遠隔装置に電力を伝達する前記1次コイルアセンブリの前記複数の1次コイルの1つ以上を選択し、前記1つ以上の選択した1次コイルの上にある前記選択した誘導充電制御アルゴリズムを有する前記遠隔装置への電力伝達を開始するように設定される制御器と、
を有する誘導充電装置。
【請求項30】
前記複数の誘導充電制御アルゴリズムは、充電設定点制御、充電エラー制御、充電装置設定点制御、充電装置エラー制御、及び充電装置直接制御のうちの2つ以上を含む請求項29に記載の誘導充電装置。
【請求項31】
前記制御器は、前記電力クラスに基づいて電力を前記遠隔装置に伝達する前記1次コイルアセンブリの前記複数の1次コイルから複数の1次コイルを選択するように設定される請求項29に記載の誘導充電装置。
【請求項32】
前記通信システムは、ピングメッセージを周期的に送信し、それに応答して受信したメッセージを認証し、認証メッセージに応答して、前記制御識別クラス及び前記電力クラスを決定する請求項29に記載の誘導充電装置。
【請求項33】
前記1次コイルアセンブリの前記複数の1次コイルの各々は、異なる電力クラスに関連した誘導充電の範囲を作り出すために選択的に電圧を印加する能力を有する請求項29に記載の誘導充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年3月13日に出願された米国仮出願第61/036459号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、誘導結合に関する。より具体的には、複数の範囲の誘導電力を提供するシステム、及び方法に関する。
【0003】
電磁誘導の概念を使用して無線電力を提供するシステムは、長年利用されている。従来のシステムは、既存の誘導技術における実際上の限定のために、成果が限定される。例えば、十分に効果的な動作を提供するために、従来の誘導システムは、典型的には誘導充電装置の電子回路と、遠隔装置の電子回路との間で程度が高く協調した同調とともに、1次コイルと、2次コイルとの間を近接し、かつ正確な配置構造とする必要がある。これらの問題は、異なる遠隔装置は、非常に異なる電力量が必要になる可能性があるという事実のために、複雑になる。例えば、携帯電話は、ノート型パソコン、又は台所用機器とは異なる所要電力を有する可能性がある。
【0004】
誘導充電装置を供給して、遠隔装置間の相違の一部を調整し、かつ把握することが可能になる進歩が一部あった。Kuennenらによる米国特許第6825620号は、システムの動作を調整して、様々な負荷の動作パラメータに対応する能力を有する誘導充電システムを開示する。名称を「誘導結合した安定器回路(Inductively Coupled Ballast Circuit)」という米国特許第6825620号は、2004年11月30日に公開され、参照することによって、本明細書に包含される。米国特許出願第11/965085号は、遠隔装置、及び遠隔装置の動作パラメータを識別する能力を有する誘導充電システムを開示する。名称を「装置識別を有する誘導充電装置(Inductive Power Supply with Device Identification)」というBaarmanらによる米国特許出願第11/965085号は、2007年12月27日に出願され、参照することによって、本明細書に包含される。既存のシステムを超える改良が示されるが、いくつかの応用において、より高い自由度への要望がある。いくつかの応用において、電力の複数の範囲を提供する能力を有する単一の誘導充電装置への要望が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、遠隔装置の電力クラスを識別し、その電力クラスに応じて誘導充電装置を提供する誘導充電システム、及びそれに関連する方法を提供する。電力クラスに応じて電力を提供するために、誘導充電装置は、複数のコイルを有する1次コイルアセンブリを具備する。コイルはそれぞれ、選択的に電圧が印加されて、異なる電力クラスに関連する誘導充電の範囲を作り出す。誘導充電システムは、物理的な電気接点なしに、遠隔装置に電力の複数の範囲を提供する。
【0006】
1つの実施形態において、本発明は、制御器と、コイルセレクタ回路と、コイルアセンブリとを有する誘導充電装置を具備する。この実施形態において、コイルアセンブリは、低電力コイルと、中電力コイルと、高電力コイルとを具備する。遠隔装置はそれぞれ、低電力コイル装置、中電力コイル装置、又は高電力コイル装置に分類される。制御器、及びコイルセレクタ回路を動作して、選択したコイルに電圧を印加する。通常は、低電力コイルは、低電力コイル装置に電力を供給するために電圧を印加され、中電力コイルは、中電力コイル装置に電力を供給するために電圧を印加され、高電力コイルは、高電力コイル装置に電力を供給するために電圧を印加される。いくつかの応用において、低電力コイルは、中電力クラス、及び高電力クラスにおいてさえも、認証、識別、又は通信のために使用される可能性がある。誘導充電装置は、選択したコイルによって提供される電力を同調する技術を実現できる。例えば、コイルはそれぞれ、適応して、調整された共振周波数を有する能力を有することができる。さらに、誘導充電装置の動作周波数、又は他の動作特性は、変化させることができる。
【0007】
動作において、遠隔装置は、遠隔装置の電力クラスなどの電力要求情報を誘導充電装置に通信する。1つの実施形態において、低電力コイルは、駆動されるときに、時間変動する磁界を作り出す。2次コイルが、駆動する低電力コイルの近くに移動したときに、2次コイルは、低電力コイルと相互インダクタンスを形成する。低電力コイルの磁界は、2次コイルを貫通して、電圧を印加する。これにより、適当なコイルを選択することによって、電力の適当な範囲における電力クラスシーケンスを開始する電力クラス信号を送信し、認証することができる電力を2次に提供する。
【発明の効果】
【0008】
複数のコイルを備えるコイルアセンブリを有する誘導充電装置の1つの利点は、単一のホットスポットが、低電力、中電力、及び高電力を遠隔装置に供給できることである。これにより、低電力装置に電力を供給する誘導充電装置、中電力装置に電力を供給するための別個の誘導充電装置、及び高電力装置に電力を提供する別個の誘導充電装置を有するニーズが低減する。さらに、高電力装置が、より低い電力を消費する期間に、より低い電力コイルを使用できるので、省エネルギになるであろう。またより低い電力装置は、空間的な自由度を獲得するために、より高い電力コイルから電力を引き出すことができる。
【0009】
本発明のこれらの目的、利点、及び形状、並びに他の目的、利点、及び形状は、本実施形態の詳細な説明と、図面を参照することにより、迅速に理解され、認識されることになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る実施形態に従う誘導充電システムのブロックを概略的に示す図である。
【
図2】1つの実施形態の1次回路のブロックを概略的に示す図である。
【
図3】1つの実施形態の2次回路のブロックを概略的に示す図である。
【
図4】1つの実施形態のタンク回路の回路を概略的に示す図である。
【
図5】1つの実施形態の誘導充電システムの回路を概略的に示す図である。
【
図6】1つの実施形態のタンク回路の回路を概略的に示す図である。
【
図7】1つの実施形態の誘導充電システムの回路を概略的に示す図である。
【
図8】1つの実施形態のスイッチング回路、及びタンク回路の回路を概略的に示す図である。
【
図9】遠隔装置に電源を供給する方法の概略的なステップを表すフローチャートを示す図である。
【
図10】1つの実施形態の1次回路の機能ブロックを概略的に示す図である。
【
図11】1つの実施形態の2次回路の機能ブロックを概略的に示す図である。
【
図12】1つの実施形態の1次回路の機能ブロックを概略的に示す図である。
【
図13】1つの実施形態の2次回路の機能ブロックを概略的に示す図である。
【
図14】1つの実施形態の誘導充電システムの回路を概略的に示す図である。
【
図15】1つの実施形態の誘導充電システムの回路を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔I.概説〕
図1に記載され、かつ100で示される本発明に係る誘導充電システムの典型的な実施形態において、誘導充電システムは、誘導充電装置102と、遠隔装置104とを有する。誘導充電装置は、複数の範囲の電力を生成できる1次コイルアセンブリ101を有する1次回路103を具備する。遠隔装置104は、負荷106を有する2次回路105を具備する。遠隔装置の2次回路105は、電力クラスを包含できる電力要求情報を具備する。電力要求情報は、適当な範囲の電力における電力伝達を容易にするために、誘導充電装置に送信できる。電力要求情報に応答して、1次コイル103は、遠隔装置104に電力を伝達するために介される1次コイルアセンブリ101の適当なコイルを選択する。1つの実施形態において、コイルは、遠隔装置の電力クラスに応じて、少なくとも一部において選択される。単一の誘導充電装置とともに、電力の異なる範囲を選択する能力によって、非常に異なる電力要求を有する装置への電力伝達が可能になる。
【0012】
本発明は、3つの電力クラスのそれぞれに対応する3つの異なる範囲の電力を提供する3つのコイルを有するコイルアセンブリ101との関連で説明される。しかしながら、いくつかの実施形態において、コイルアセンブリは、付加的なコイル、又はより少ないコイルを具備できる。これによって、電力の種々の範囲の数をそれぞれ増加し、又は減少する。したがって、提供できる電力クラスの数をそれぞれ増加し、又は減少する。すなわち、説明される実施形態において、電力の範囲の数と、電力クラスの数との間の相対的なマッピングである。しかしながら、その必要はない場合もある。コイルよりも多い電力クラスがあるシナリオにおいて、複数の電力クラスは同一のコイルにマッピングできる。そして、電力クラスよりもコイルが多いときは、逆もまたしかりである。いくつかの実施形態において、種々のコイルが提供する電力クラス、すなわち電力の範囲の間をいくつか重複できる。
【0013】
いくつかの応用において、装置は、異なる時に異なる電力量を要求する可能性がある。この一例は、電力を伝達する方法の間に示される。誘導充電装置102の1次コイル103は、より低い電力コイルを使用して、電力を周期的に送信する。その電力を受信する遠隔装置104は、誘導充電装置102に電力要求情報を伝達するために、より低い電力コイルを使用する。誘導充電装置は、電力要求情報を使用して、電力伝達のために、コイルアセンブリ101の適当なコイルを選択する。このコイルは、初期化手順の間に使用されるコイルとは異なるコイルにしてもよい。
【0014】
〔II.誘導充電システム〕
本発明に従う誘導充電システムの1つの実施形態を
図5に図示し、概略的に500で示す。誘導充電システム500は、誘導充電装置503と、遠隔装置504とが表される。一般的に示されているが、遠隔装置504は、誘導充電装置が、遠隔装置の電力クラスなどの電力要求情報を検出可能であることを含む通信能力を有するいずれの型の装置にも本質的にできる。
【0015】
誘導充電装置503は、遠隔装置504を置く表面506を有する専用筐体などの筐体501の内部に収容できる。筐体501の大きさ、形状、及び構造、及び表面506は、変更可能である。さらに、コイルアセンブリ502の1次コイル512、514、及び516もまた、表面506に対して変更でき、また相互に変更できる。
図5の実施形態において、コイル512、514、及び516は、表面506の下方に、平面的、かつ同心状に配置される。
【0016】
図7において示される実施形態などの他の実施形態において、コイル712、714、及び716は、垂直に配置され、かつ遠隔装置704を置く表面706を有する容器のような形状である筐体701の側壁702内に埋め込むことができる。
図5、及び7は、筐体、表面、及びコイルの配置可能な方法の単なる一例である。他の多くの配置が可能である。
【0017】
遠隔装置の2次コイルと、アクティブにした1次コイルとの間の類似性によって、効率的な電力伝達が促進される。例えば、2次コイル509と、低電力コイル512とは、大きさ、形状、巻線数、長さ、及び口径において類似する。これらの類似性によって、より良好な配置が可能になり、効率的な電力伝達が容易になる。同様に、中電力クラス装置、及び高電力クラス装置は、中電力コイル、及び高電力コイルにそれぞれ類似する特性を有する2次コイルを有することができ、これらのコイルに電圧を印加するときに、より良好な電力伝達が容易になる。
【0018】
遠隔装置の大きさ、すなわち2次コイルの大きさは、
図7の実施形態における遠隔装置も同様に、配置を容易にすることができる。全ての場合に正しい訳ではないが、低電力クラス装置は、物理的により小さくなる傾向があるのに対して、高電力クラス装置は、比較的大きくなる傾向がある。これは、
図7の実施形態のように、コイルが垂直に配置されると、より小さい装置は、低電力コイル712に良好に並べられる傾向を有する一方、より大きな装置は、高電力コイル716に良好に並べられる傾向を有する。
【0019】
遠隔装置と、アクティブにした1次との位置合わせは、磁気的な位置調整によって、さらに容易にできる。いくつかの応用において、誘導充電システム500は、誘導充電装置内に磁石510を組み込むとともに、遠隔装置内に磁石508を組み込んで、磁気的な位置調整を提供できる。誘導充電システム500は、名称を「誘導結合の磁気位置調整(Magnetic Positioning for Inductive Coupling)」という2008年2月22日に出願された米国仮出願第61/030586号のいずれの特徴も本質的に組み込むことができる。この出願は、参照することによって、本明細書に包含される。磁石は、低電力クラスの遠隔装置、中電力クラスの遠隔装置、及び高電力クラスの遠隔装置のいずれとの組み合わせとともに使用できる。磁気的な位置調整は、いくつかの遠隔装置で使用でき、又は全ての遠隔装置で使用できる。また全ての遠隔装置で使用しなくてもよい。磁石は、随意的であり、誘導充電装置、又は遠隔装置に提供する必要はない。
【0020】
いくつかの応用において、複数の装置は、
図14で最も理解されるであろうように、誘導充電装置によって、同時に電力を供給できる。1つの簡便なシナリオは、より高い電力コイルを使用して、複数の低電力クラス装置に電力を供給することである。高電力コイルは、より大きい領域を覆う誘導性磁界を示すので、内部に装置を位置させる空間がより大きい。すなわち、電力効率は、低電力装置が、高電力コイルから充電する間に受信可能な電力量を実質的に制限しないので、低電力装置は、空間的な自由度を獲得する。
【0021】
なおまた、より寛大な負荷、及び装置は、空間的な自由度の利益を取得するために、遠隔装置の電力クラスよりも高い電力クラスを有するコイルを使用できる。装置は、高電力コイルを使用して電力が供給されるが、装置の区分、及び他の基準に基づいて低電力を使用して電力が供給される。図示される実施形態において、この利益は、中電力コイル514、又は高電力コイル516を低電力遠隔装置に使用することによって得ることができる。寛大な負荷の一例は、遠隔制御である。典型的には、寛大な負荷は、性能を実質的に低下させることなしに、種々の速度、又は種々の電力量で充電できる。
【0022】
高電力コイルを低電力装置に使用できる場合があるように、低電力コイルを高電力装置に使用できる場合がある。一部の高電力装置は、消費電力が少ないスタンバイオプションを有することが可能である。1つの実施形態では、高電力が供給された装置は、スタンバイモードに入り、低電力コイルを使用して電力を供給できるなどの理由によって、必要な電力が少ないことを示す。本質的には、装置は、一般的な電力クラスを有してもよいが、より多くの電力、又はより少ない電力を供給することが有利である場合がある可能性があり、これらの場合は、複数のコイルを有するコイルアセンブリを使用して、適応できる。これによって、省エネルギをもたらすことが可能である。
【0023】
〔III.誘導充電装置〕
本発明は、複数のコイルを備える1次コイルアセンブリを有する1次回路103を具備するいずれの誘導充電装置とともに使用することが適当である。したがって、誘導充電装置102内の1次コイルアセンブリ101に関連しない回路は、詳細に説明されることはないであろう。1次回路103は、単数、又は複数の所望の周波数において、交流電流を提供する能力を有するいずれかの回路を本質的に具備することができる。例えば、電源供給回路103は、Kuennenらによる名称を「誘導結合したバラスト回路(Inductively Coupled Ballast Circuit)」という2004年11月30日に発行された米国特許第6825620号で開示された誘導充電システムの共振探索回路、Baarmanらによる名称を「適応誘導充電システム(Adaptive Inductive Power Supply)」という2007年5月1日に発行された米国特許第7212414号の適応誘導充電システム、Baarmanらによる名称を「通信を有する適応誘導充電システム(Adaptive Inductive Power Supply with Communication)」という2003年10月20日に出願された米国シリアル番号第10/689148号の、通信を有する適応誘導充電装置、Baarmanらによる名称を「電池を充電するシステム、及びその方法(System and Method for Charging a Battery)」という2007年9月14日に出願された米国シリアル番号第11/855710号のリチウムイオン電池をワイヤレスで充電する誘導充電装置、Baarmanらによる名称を「装置識別を有する誘導充電装置(Inductive Power Supply with Device Identification)」という2007年12月27日に出願された米国シリアル番号第11/965085号の装置識別を有する誘導充電装置、又はBaarmanらによる名称を「デューティサイクル制御を有する誘導充電装置(Inductive Power Supply with Duty Cycle Control)」という2008年1月7日に出願された米国シリアル番号第61/019411号のデューティサイクル制御を有する誘導充電装置を具備できる。全てのこれらの刊行物は、その全体が参照することによって、本明細書に包含される。
【0024】
図2において、誘導充電装置102の1次回路の1つの実施形態を図示し、200で概略的に示される。図示される実施形態の1次回路200は、概して、1次制御器202と、駆動回路204と、スイッチング回路206と、タンク回路208と、ワイヤレス受信器212と、電流センサ回路210とを有する。
【0025】
1次制御器202は、駆動回路204と、スイッチング回路206と、タンク回路208とを制御する。1次制御回路202は、電力要求情報などの遠隔装置104から受信する情報を処理する能力を有する。1次制御器202は、内部メモリを具備でき、外部メモリにアクセスでき、又はこれらを組み合わせることができる。電力要求情報を使用して、1次コイルアセンブリ222のいずれのコイルに電圧を印加すべきかを決定できる。1つの実施形態では、遠隔装置から提供される電力要求情報は、装置が、低電力クラス、中電力クラス、又は高電力クラスのいずれかであるかを識別する。他の実施形態において、遠隔装置から提供される電力要求情報は、遠隔装置が受信を要求する電力量を識別(すなわち、電力調整)し、制御器202は、その情報を処理して、いずれのコイルに電圧を印加するかを決定する。電力調整によって、電力クラスのしきい値を超える場合は、異なるコイルに電圧が印加されることになるであろう。また他の実施形態において、電力要求情報は、遠隔装置を識別し、1次制御器は、ルックアップテーブルを使用して、いずれのコイルに電圧を印加するかを決定する。
【0026】
1つの実施形態において、電力要求情報は、特定のコイルを選択するための最小電力レベル、最大電力レベル、及び双方の電力レベルに関する情報を具備する。いずれのコイルに電圧を印加するかを判定するために使用されるしきい値は、電力要求情報に応じて変化できる。例えば、1つの遠隔装置において、低電力コイルのしきい値の最小、及び最大は、1つの値にできるが、異なる遠隔装置において、低電力コイルのしきい値の最小、及び最大は、異なる値にできる。一方の遠隔装置において、低電力コイルを使用して、ある電力量を送信するのが適当であり、他方の遠隔装置において、中電力コイルを使用して、同一の電力量を送信するのが適当であるという状況にできる。遠隔装置に記憶される電力要求情報は、性能に基づくことができ、設計予測(design expectations)に基づくことができる。
【0027】
1次制御器202は、他の機能とともにプログラムできる。例えば、この実施形態において、1次制御器202は、米国シリアル番号第11/965085号で説明される発明の概念を使用して、遠隔装置を識別するようにプログラムされる。この出願は、参照することにより、先に包含されている。例えば、遠隔装置IDは、電力要求情報を具備できる。また、電力要求情報は、遠隔装置IDをキーとして使用して、誘導充電装置102のルックアップテーブルにアクセスできる。
【0028】
本質的には、ドライバ204、及びスイッチング回路206のいずれの型も使用できる。この実施形態のスイッチング回路206は、DCからACに変換するインバータを形成する1対のスイッチとして実施される。
【0029】
図2のタンク回路208は、コイルセレクタ回路220と、複数のコイルを有する1次コイルアセンブリ222とを具備する。コイルセレクタ回路220は、コイルアセンブリ222の複数のコイルの1つ、又は複数に電圧を印加する能力を有する。
図4において、別々の複数のコイルの間の選択を示し、
図6において、単一のコイルの複数のタップの間の選択を示し、
図15において、単一のコイルの複数のセグメントの間の選択を示す。図示される実施形態は、単なる例示であり、別々のコイル、複数のタップ、及び複数のセグメントのいずれかの組み合わせを使用して、複数の異なるコイル構成のオプションの変形を提供できる。1つの実施形態において、制御器202は、いずれのコイルに電圧を印加するかを、コイルセレクタ回路220に指示する。図示される実施形態において、1次コイルアセンブリ222は、低電力コイル、中電力コイル、及び高電力コイルの3つのコイルを具備する。他の実施形態において、1次コイルアセンブリ222は、より多くのコイルを具備し、又はより少ないコイルを具備する。いくつかの応用において、1次コイルアセンブリ222のコイルは、リッツ線から形成できる。他の実施形態において、コイルは、銅、LITZ、PLITZ、FLITZ、導電性インク、又はコイル特性を有する他のいずれかの材料にできる。それぞれのコイルの特性は、応用ごとに変更でき、またコイルごとに変更できる。ぞれぞれのコイルの巻数、大きさ、長さ、口径、形状、及び構造などは、変更できる。1つの実施形態において、低電力コイルは、10本程度のLITZ線を有し、中電力コイルは、50本程度のLITZ線を有し、高電力コイルは、138本程度のLITZ線を有する。1つの実施形態において、低電力コイル、中電力コイル、及び高電力コイルの間の唯一の相違点は、コイルのそれぞれの口径である。またコイルに関して説明されるが、1次コイルアセンブリ222は本質的に、電磁界を使用して、複数の範囲の電力を選択的に生成する能力を有するいずれかの構造にできる。1つの実施形態において、1次コイルアセンブリ222は、Baarmanらによる名称を「プリントされた回路基板回路(Printed Circuit Board Coil)」という2007年9月28に出願された米国シリアル番号第60/975953号の発明概念が組み込まれるプリント回路基板のコイルなどの、プリント回路器基板のコイルとして実施できる。この出願は、参照することによって、本明細書に包含される。
【0030】
図8の回路図は、典型的なスイッチング回路802と、タンク回路804とを示す。スイッチング回路は、2つの電界効果トランジスタスイッチ810、及び812を具備する。しかしながら、本質的には、いずれの型のスイッチを使用できる。スイッチ810、及び812は、DC電力をAC電力に変換する。AC電力は、スイッチングされる3つのLC回路に並列で供給される。この実施形態において、LC回路はそれぞれ、それぞれのコイルが開始する共振を設定する可変キャパシタ814、816、及び818を具備する。他の実施形態において、可変キャパシタ814、816、及び816は、除去でき、また可変でないキャパシタに置き換えることができる。可変キャパシタ814、816、及び816は、動作の間に私の制御器202により制御されるか、又は製造時に手動で制御される。図示される実施形態において、1次コイルアセンブリは、低電力コイル832、中電力コイル834、及び高電力コイル836を具備する。しかしながら、上述のように、異なる構造のコイル、及び異なる数のコイルにより、実施できる。スイッチ820、822、824、826、828、及び830は、コイル832、834、及び836のいずれかが電力を受信するかを制御する。すなわち、単数、又は複数のコイルのいずれに電圧が印加されるかを制御する。この実施形態において、制御器316は、820‐822、824‐826、及び828‐830の1対を一度にアクティブにする。すなわち、コイルは、相互に排他的な方法でアクティブにされる。しかしながら、他の実施形態において、複数のコイルは、応用によって同時にアクティブにできる。さらに、他の実施形態において、マトリクス選択のために付加的なスイッチをそれぞれのコイルの間に配置できる。さらに他の実施形態において、回路におけるスイッチの数を削減するために、スイッチ822、826、及び830は、削除され、すなわち短絡される。
【0031】
この実施形態において、ワイヤレスIR受信器212、及び電流センサ回路210を双方使用して、遠隔装置と通信する。電流センサ210を使用して、遠隔装置からの反射インピーダンスを感知できる。これによって、誘導結合による効率的な通信が可能になる。ワイヤレスIR受信器を使用して、2次回路300のワイヤレスIR送信器320と通信できる。他の実施形態において、ピーク検出器は、既に実施される通信システムと置き換えられることができ、また既に実施される通信システムとともに使用できる。ワイヤレスIR受信器212、及び電流センサ回路210の一方、又は双方は、1つ、又は2つ以上の遠隔装置と通信する種々の通信システムに置き換えることができる。例えば、WIFI通信システム、赤外線通信システム、Bluetooth(登録商標)通信システム、移動体通信システム、又はRFID通信システムのいずれかの通信システムを、1次回路200において、実施できる。1つの実施形態において、電流センサ回路は、遠隔装置に関連する電力要求情報を低電力クラスで受信し、ワイヤレスIR受信器は、遠隔装置に関連する電力要求情報をより高い電力クラスで受信する。電流センサ回路を使用する通信は、より多くの電力量が送信される場合は、非効率になる可能性がある。電力伝達が多い間、異なる通信システムを使用することによって、損失は、低減できる。
【0032】
動作中に、1次制御器202、駆動回路204、及びスイッチング回路206は、タンク回路208に交流電流を印加して、選択された電力範囲、及び周波数における電磁誘導電力のソースを生成する。
【0033】
図4において、タンク回路208の1つの実施形態が記載され、400で示される。タンク回路208は、コイルセレクタ回路420、及び1次コイルアセンブリ408を具備する。1次コイルアセンブリ408は、随意的な位置調整磁石420と、低電力コイル410と、中電力コイル412と、高電力コイル414とを具備する。この実施形態において、コイルの一部は、コイルセレクタ回路との電気的な接続を共有する。具体的には、低電力コイル410は、中電力コイル412と、リード線を共有する。中電力コイル412は、高電力コイル414と、別のリード線を共有する。
【0034】
物理的な特性によって、コイルに電圧が印加されるときに送信される電力がもたらされる。この特性の例は、形状、長さ、口径、及び巻数を含む。コイル414、412、及び410の物理的な特性のいずれかは、本質的に変更できる。図示される実施形態において、低電力コイル410は、中電力コイル412と比較すると、比較的短い長さ、及び口径を有する。同様に、中電力コイル412は、高電力コイル414よりも短い長さ、及び口径を有する。さらに
図4に示すコイルは、概して円形である。しかしながら、コイルは、楕円形、長方形、正方形などのようないくつかの他の形状を使用して実施できる。1つの実施形態において、多次元のコイルで実施される。
【0035】
また他の要因によって、コイルに電圧が印加されるときに送信される電力がもたらされる。例えば、1つの要因は、コイル410、412、及び414の間の空間である。
図4に示す実施形態において、コイル410、412、及び414の間の間隙416、及び418があり、クロストーク、又は他の干渉を低減する可能性がある。この実施形態において、これの間隙416、及び418は、空気が充填され、コイル410、412、及び414の間の絶縁を提供する役目を果たす。他の実施形態において、空隙416、及び418は、シールド材料が充填されて、さらなる絶縁を提供できる。また他の実施形態において、空隙416、及び418は、コイル410、412、及び414が作り出す磁界を移動させるために、フェライトを充填できる。
図6に示す実施形態において、コイル610、612、及び614の間の空間は、限定される。コイルの間に空隙がないので、コイルの大きさを維持したまま、コイルをよりコンパクトにすることが可能である。
図6の実施形態において、コイルは、コイルセレクタ回路620へのリード線の一部を共有する。他の実施形態において、コイル610、612、及び614はそれぞれ、コイルセレクタ回路620への分離した2つのリード線を含むことができる。
【0036】
〔IV.遠隔装置〕
図3において、2次回路の1つの実施形態が記載され、概略的に300で示される。
図3に図示される実施形態において、2次回路300は通常、2次302と、整流器304(又はAD電力をDCに変換する他の構成要素)と、2次制御器316と、メモリ322と、ワイヤレスIR送信器320と、信号レジスタ318と、負荷306とを具備する。他の回路を具備ことができる。例えば、他の1つの実施形態において、低電圧電源を具備して、受信電力をスケール(scale)できる。さらに他の実施形態において、条件回路を具備して、受信電力をフィルタリングするか、さもなければ受信電力を調整できる。
【0037】
図示される実施形態の2次コイル302は、変動する電磁界が存在する下で、電気を生成するのに適した線のコイルである。
図5において、最も明快に示されるであろうように、2次回路509は、1次コイル512、514、及び516の1つの大きさ、及び形状に対応できる。例えば、2つのコイルは、実質的に等しい直径を有することができる。いくつかの応用において、2次コイルは、リッツ線のコイルにできる。1次コイルと同様に、2次コイル509の特性は、応用ごとに変更できる。例えば、2次コイルの巻数、大きさ、形状、構造、又は他の特性は、変更できる。さらに、長さ、口径、及び線の型などの線の特性は、変更できる。線のコイルとの関係で説明されるが、本質的には、2次コイル509はまた、対象とする電磁界に応答した十分な電力を生成する能力を有するいずれかの構造にできる。
【0038】
他のいくつかの実施形態において、遠隔装置は、複数の2次コイルを有することができる。例えば、遠隔装置は、低電力の応用のための分離した低電力コイルと、中電力の応用のための分離した中電力コイルと、高電力の応用のための分離した高電力コイルとを有することができる。また他の実施形態において、遠隔装置は、複数の2次コイルを有して、方位的な自由度、及び空間的な自由度を、遠隔装置に与える。
【0039】
1つの実施形態において、種々の位相の電力を受信する複数の2次コイルを使用して、リップル電圧を低減できる。これは、Baarmanらによる名称を「多位相誘導充電システム(Multiphase Inductive Power Supply System)」という2007年9月9日に出願された出願第60/976137号において参照される。この出願は、参照することによって、本明細書に包含される。この実施形態において、それぞれが複数のコイルを有する複数のコイルアセンブリは、種々の位相において電力を転送することが望まれる可能性がある。
【0040】
動作中に、整流器304は、2次コイル302で生成されたAC電力をDC電力に変換する。いくつかの応用において、整流器は、除去できる。例えば負荷306がAC電力を受け取る場合である。
【0041】
2次制御器316は、本質的に電力要求情報を誘導充電装置に通信する通信システムを動作する能力を有するいずれの型のマイクロ制御器にできる。いくつかの実施形態において、2次制御器316は、メモリを具備する。図示される実施形態において、2次回路は、外部メモリ322を具備する。メモリは通常、電力要求情報を具備し、かつ遠隔装置についての付加的な情報を具備できる。電力要求情報は、遠隔装置がどの程度の大きさの電力を所望するかを分類する電力クラスを具備する。
【0042】
1つの実施形態において、低電力クラス、中電力クラス、及び高電力クラスの3つの電力クラスがある。低電力クラスは、0ワットと5ワットとの間の電力が所望される装置として規定される。中電力クラスは、5ワットと110ワットとの間の電力が所望される装置として規定される。高電力クラスは、110ワットよりも大きい電力が所望される装置として規定される。この電力クラススキームの下で低電力クラスの装置として分類される装置の例には、携帯電話、MP3プレーヤ、及び携帯情報端末(PDA)が包含される。中電力クラスである装置の例には、ラップトップコンピュータ、及び他の中電力の応用が包含される。高電力装置の例には、ミキサ、又はフライパンなどの台所用器具が包含される。異なる電力クラスを有する他の実施形態において、電力クラスの規定は、変更できる。
【0043】
1つの実施形態において、信号レジスタ318を使用して、1次制御器202に情報を送信できる。信号レジスタ318を使用して2次回路103から1次回路105への通信を提供することは、参照することによって、先に包含された米国特許出願第11/855710号において説明された。信号レジスタ318は、過電流状態、又は過電圧状態を示す通信信号を、分路するときに送信する。レジスタを分路するとき、1次回路103の電流検出器、又はピーク検出器は、過電圧/過電流状態を感知し、それに応じて作動できる。本発明に係る信号レジスタ318は、系統的に分路して、1次制御器202に付加的なデータを通信できる。例えば、データのストリームは、電力要求情報を示すことができ、また遠隔装置についての他の情報を提供できる。また、信号レジスタ318は、別の通信システムと全体的に置き換えることができる。例えば、ワイヤレス送信320を信号レジスタ318とともに使用して、又は信号レジスタ318の代わりに使用して、1次回路200のワイヤレス受信器212とワイヤレス通信できる。他の実施形態において、ワイヤレスIR送信器320、及び信号レジスタ318の一方、又は双方は、誘導充電装置と通信する別の通信システムに置き換えることができる。例えば、WIFI通信システム、赤外線通信システム、Bluetooth(登録商標)通信システム、移動体通信システム、又はRFID通信システムのいずれかの通信システムを、遠隔装置104において、実施できる。
【0044】
ワイヤレス送信器、又はワイヤレス送受信器を使用することは、参照することによって、先に包含されたBaarmanらによる米国特許出願公報第2004/130915A号において、先に説明された。具体的には、WIFI、Bluetooth(登録商標)、移動体、又はRFIDは、遠隔装置と、誘導充電装置との間のデータをワイヤレス通信する方法として、先に説明された。さらに誘導コイル、及び電力線通信プロトコルを使用する通信が説明された。所望のデータを遠隔装置から誘導充電装置に送信するためにデータを送信するこれらのデータ送信方法のいずれも、本発明において実施できる。
【0045】
遠隔装置の負荷306は、本質的には、いずれかの適当な負荷にできる。いくつかの実施形態において、負荷306は、再充電可能な電池にでき、2次回路は、付加的な充電回路を具備できる。他の実施形態において、負荷306は、遠隔装置の機能に関係できる。
【0046】
〔V.方法〕
図9のフローチャートにおいて、認証、及び電力伝達制御の方法が記載され、概略的に900で示される。本方法は、ピングメッセージ(ping message)を周期的に送信する工程902と、それに応じて受信したメッセージを認証する工程904と、認証メッセージに応答して、制御識別クラス(CIDC)、及び1次電力クラスPPCを決定して、決定したCIDC、及びPPCに基づいて電力伝達を開始する工程906とを具備する。アクティブ電力送信モード908の間、装置の存在、及び制御点の状態は、遠隔装置からの制御フィードバックパケット912を有するフィードバックループにおいて、連続的にチェックされる(910)。
【0047】
1つの実施形態において、誘導充電装置は、ピンギング、又はアクティブ電力伝達といういくつかのモードの1つである。ピングモードは、適当な装置が存在するか否かを能動的に判定する。電力伝達は、デバイス識別クラスが認識され、かつ有効であるときにのみ行われる。
【0048】
安全なピング頻度は、誘導充電システムのハードウェアの特性を使用して、決定できる。1次は、特定のピング頻度における低電力コイル(又は他のコイル)に電圧を印加することによって、2次との通信を試みて、応答を待つ。2次が、充電領域内部に存在する場合、ピング動作の間に送信されるエネルギによって、初期化し、かつ電力要求情報を含む識別メッセージを、誘導充電装置に送信するのに十分に電力を供給できる。
【0049】
1次が、ピング動作の間に充電領域の装置を検出しない場合は、コイル電力は、検出のための次の試みまで除かれる。1次が、ピング動作の間に充電領域の装置を検出した場合は、1次は、試みにおいて確立された開始動作頻度に戻り、電力伝達を開始する。伝達の間に2次に供給される電力は、2次から受信する通信に基づいて制御できる。
【0050】
制御識別クラスは、誘導充電装置の種々の制御方法を識別して、遠隔装置を充電し、又は電力を供給するため使用できる。制御識別クラスの例示には、充電設定点制御、充電エラー制御、充電
装置設定点制御、充電
装置エラー制御、及び充電
装置直接制御が包含される。
【0051】
1次の電力クラスは、誘導充電装置の特定のコイルの電力の範囲を決定する。また、1次の電力クラスは、コイルの形状、及びパラメータ仕様に影響を与える可能性がある。他の実施形態において、1次の電力クラスは、誘導充電装置が提供する電力の全体的な範囲についての情報を包含する。遠隔装置は、誘導充電装置に送信する電力要求情報に遠隔装置の電力クラスを包含できる。遠隔装置の電力クラス、及び1次の電力クラスは、同一にでき、また異なることができる。
【0052】
1つの実施形態において、電力クラスは、遠隔装置から誘導充電装置に通信される情報の一部である。1つの実施形態において、情報は、遠隔装置が要求することを予期できる電力の最大量についての情報を、1次回路に提供できる。例えば、携帯電話は、3.5Wの最大電力レベルに分類できる。この電力クラスのバイトは、0000 0111bであろう。
【0053】
以下のチャートは、電力クラスのバイトを構成できる方法を説明する。電力クラスは、本質的にどのような方法でもエンコードできる。このチャートは、可能な1つの実施形態を単に示す。
【表1】
【0054】
図10において、本発明に係る1つの実施形態に従って、電力を提供する機能ブロック図を示す。
図11において、本発明に係る1つの実施形態に従って、電力を受信する機能ブロック図を示す。
図12において、本発明に係る他の実施形態に従って、電力を提供する機能ブロック図を示す。
図13において、本発明に係る1つの実施形態に従って、電力を受信する機能ブロック図を示す。
【0055】
図10、及び11の機能ブロック図は、遠隔装置の負荷を誘導的に充電することに向けられる。
図12、及び13の機能ブロック図は、遠隔装置の再充電可能な電池を誘導的に充電することに向けられる。
【0056】
図10、及び
図12において、コイルはそれぞれ、上述のように複数のコイルを有する1次コイルアセンブリを示してもよい。また、コイルはそれぞれ、1次コイルアセンブリの1つのコイルを示してもよい。
【0057】
これまで、複数のコイルの誘導充電装置のいくつかの実施形態が説明されてきた。具体的には、例示は、複数のタップ構造で構成される複数のコイルを使用する複数のコイルの誘導充電装置を提供しているか、又は独立のコイル構造を使用する複数のコイルの誘導充電装置を提供している。また、可変インダクタンスを提供する他の構造を提供できる。例えば、
図15に示されるリッツ線のようなセグメント化された1次は、可変量のインダクタンスを提供するために、様々な構造において、接続され、かつ、印加されることが可能である複数のより線を提供できる。セグメント化された1次の様々な構造によって、誘導充電装置は、同一の1次を使用して、2次電力により良好にマッチすることが可能になるとともに、高電力から低電力までの結合要求により良好にマッチすることが可能になる。この実施形態において、タップ、及びセグメント構造の組み合わせは、広範囲のインダクタンス値、及び線口径を提供する。いくつかの実施形態において、セグメントの一部は、接続せずに、より広い範囲にできる。
【0058】
より線の接続方法によって、種々の構造を創出できる。以下の表は、様々なコイルセレクタ回路のセグメントオプションのいくつかの例示を示す。
【表2】
【0059】
図15において、4つの区域にセグメント化されているリッツ線の断面を示す。図示される実施形態において、区域はそれぞれ、別々に電圧が印加される。他の実施形態において、区域は、異なって分割でき、より線はそれぞれ、別々に電圧を印加できる。さらに、この実施形態において、コイルセレクタ回路が様々なセグメントをともに接続する方法に基づいて、セグメントを並列に、又は直列に配置できるように、コイルセレクタ回路は、ぞれぞれのタップにおいて、それぞれのセグメントを別々に接続する。
【0060】
図15において、口径を変化させる3つのコイル610、612、及び614が示されるが、他の実施形態において、コイルはそれぞれ、同一の口径にでき、コイルセレクタ回路が、いずれのセグメント、又は別個のより線のいずれかに電圧を印加するかを選択することによって、口径は、制御できる。
【0061】
他の誘導充電装置の実施形態に関して既に説明したように、コイルセレクト回路は、制御器202のメモリにレジストされるプログラムに従って、制御できる。コイルセレクト回路は、遠隔装置から提供される電力要求情報に基づいて調整する動作の間、セグメント化された1次の構造を変更できる。線の口径を動的に変化する能力、及び他の特性は、2次電力、及び結合要求により良好にマッチするのに有用である。
【0062】
これまでの説明は、本発明に係る現在の実施形態の説明である。様々な変形、及び変更が、本発明の精神、及びより広範な態様から逸脱することなしに、実施できる。