特許第5932930号(P5932930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932930
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】遮光装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/322 20060101AFI20160526BHJP
   E06B 9/66 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   E06B9/322
   E06B9/66
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-197626(P2014-197626)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-69828(P2016-69828A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2014年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】514245384
【氏名又は名称】高山 旭
(74)【代理人】
【識別番号】100114638
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 寛也
(72)【発明者】
【氏名】高山 旭
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−028296(JP,U)
【文献】 特許第3691148(JP,B2)
【文献】 特許第3256129(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00−9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に設けられた窓の遮光を行う遮光装置であって、前記窓の周囲に取り付ける方形の枠体と、前記窓の開口の少なくとも一部を覆って遮光を行う遮光体と、前記枠体の下部に設けられて前記遮光体を収納する収納部と、前記遮光体の上側端縁部の左右両端部を吊り下げる状態でこれらの左右両端部に接続された左右のワイヤと、これらの左右のワイヤをそれぞれ巻き取る左右のリールと、前記窓の遮光範囲を拡大する際には、前記ワイヤを巻き取る方向に前記リールを回転させることにより前記遮光体の上側端縁部を上方に引き揚げて前記遮光体を前記収納部から徐々に引き出すとともに、前記窓の遮光範囲を縮小する際には、前記ワイヤを送り出す方向に前記リールを回転させることにより前記遮光体の上側端縁部を下方に降ろして前記遮光体を前記収納部に徐々に収納する巻取用モータとを備え
前記遮光体は、複数のスラットを紐状部材で連結して並行に配置して形成されたブラインドであり、
前記複数のスラットのうち最も上側のスラットの左右両端部に取り付けられた左右の軸をそれぞれ上下に摺動案内するために前記枠体の左右両側部分に設けられたガイドレールと、前記最も上側のスラットの左右の軸のうちのいずれか一方の軸を回転させることによりこの最も上側のスラットの傾斜を調整するとともに、これに伴って前記複数のスラットのうち前記収納部から外に出ている他のスラットの傾斜も調整する傾斜調整用モータと、前記最も上側のスラットの左右の軸にそれぞれ回転自在に取り付けられた左右のプーリとを備え、
前記左右のワイヤは、前記左右のプーリを介して前記最も上側のスラットの左右の軸を吊り下げる状態を保持したまま前記左右のリールに巻き取られる構成とされ、
前記傾斜調整用モータの回転子側は、前記最も上側のスラットの左右の軸のうちのいずれか一方の軸に固定されて前記最も上側のスラットと一体的に回転し、前記傾斜調整用モータの固定子側は、前記傾斜調整用モータのケースまたはこのケースに固定された部材と一体化されて前記ガイドレールにより上下に摺動案内される構成とされていることを特徴とする遮光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等の固定構造物や船舶等の移動構造物に設けられた窓の遮光を行う遮光装置に係り、例えば、風呂場、トイレ、洗面所の窓の遮光や目隠しを行う場合等に利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物等の各種構造物に設けられた窓には、遮光や目隠しを行うために、複数のスラットを連結して形成されたブラインドやロールカーテン等を用いた遮光装置が設置されている。これらのブラインドやロールカーテン等の遮光体は、通常、使用しないときには、窓の上部に収納され、遮光や目隠しを行う際に、上方から下方に徐々に降ろされて遮光範囲(目隠しする範囲)を拡げていくようになっている。また、左右の側方から中心部に向かって遮光体が閉じられていく構成のものもある。そして、遮光装置には、ブラインドやロールカーテン等を手動で操作することができるものと、モータを使用した電動式のものとがある。
【0003】
なお、本発明に関連する技術としては、例えば、1つの駆動モータでブラインドの開閉および角度の調節を行うことができる電動ブラインドが知られているが、この装置も、遮光の際には、上方から下方へとブラインドを降ろしていく従来型の構成となっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−301673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したブラインドやロールカーテン等の遮光体を用いた従来の遮光装置では、手動式、電動式のいずれについても、閉じる際、すなわち遮光範囲(目隠しする範囲)を拡げる際には、遮光体を上方から下方に向かって移動させるか、左右の側方から中心部に向かって移動させるので、前者の場合には、窓の開口の上部から遮光範囲が拡がっていき、窓の開口の下部が最後に塞がれ(遮光体で覆われ)、後者の場合には、窓の開口の左右両側部分から遮光範囲が拡がっていき、窓の開口の中心部が最後に塞がれる状態となる。
【0006】
このため、窓の開口のうち最後に塞がれる部分に着目すると、窓の内側にいる者が、窓の外側からの不都合な目線を遮断するには、より端的に言えば、自分が隠したい部分を完全に隠すためには、結局、全閉状態、すなわち窓の開口の全部を覆う状態にしなければならないことが多い。そして、遮光装置を全閉状態にすれば、窓の内側の空間には自然光は入らないので、電灯を付けない限り、室内は暗くなってしまう。従って、窓の内側にいる者が目隠しする必要のある部分を適切に隠すことができ、かつ、適度な採光を行うことができる遮光装置があれば、便利である。
【0007】
本発明の目的は、適切な目隠しと適度な採光とを同時に実現できる遮光装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、構造物に設けられた窓の遮光を行う遮光装置であって、窓の周囲に取り付ける方形の枠体と、窓の開口の少なくとも一部を覆って遮光を行う遮光体と、枠体の下部に設けられて遮光体を収納する収納部と、遮光体の上側端縁部の左右両端部を吊り下げる状態でこれらの左右両端部に接続された左右のワイヤと、これらの左右のワイヤをそれぞれ巻き取る左右のリールと、窓の遮光範囲を拡大する際には、ワイヤを巻き取る方向にリールを回転させることにより遮光体の上側端縁部を上方に引き揚げて遮光体を収納部から徐々に引き出すとともに、窓の遮光範囲を縮小する際には、ワイヤを送り出す方向にリールを回転させることにより遮光体の上側端縁部を下方に降ろして遮光体を収納部に徐々に収納する巻取用モータとを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
ここで、「構造物に設けられた窓」は、例えば風呂場、トイレ、洗面所の窓等のように、主として建築物等の固定構造物に設けられた窓であるが、これに限らず、キャンピングカーの窓(但し、居室部分の窓のことであり、運転席や助手席の横の窓のことではない。)、バス、列車、船舶、飛行機等の移動構造物に設けられた窓も含まれる。また、屋内と屋外との境界を形成する外周壁に設けられた窓だけではなく、例えば居室と風呂場との境界等のような屋内空間を仕切る間仕切壁に設けられた窓も含まれる。なお、移動構造物の場合には、例えば、船舶であれば、船内空間と船外空間とを隔てる外周壁に相当する部分の外側は、甲板(デッキ)になっていて人が歩く可能性があり、また、船内空間でも、人が往来する通路と船室とを仕切る間仕切壁に相当する部分等があるので、以下に述べる本発明の作用・効果が発揮され得る窓が存在する。
【0010】
このような本発明の遮光装置においては、閉じる際、すなわち窓の開口を覆って遮光範囲を拡げる際には、巻取用モータにより左右のワイヤを巻き取って遮光体の上側端縁部を上方に引き揚げることにより、枠体の下部に設けられた収納部から遮光体を上方に徐々に引き出していくので、遮光体の上側端縁部が窓の内側にいる者にとって所望の目隠しを行うことができる適宜な位置に到達したところで、巻取用モータを停止させれば、遮光体により窓の開口の下部が覆われて適切な目隠しが実現されるとともに、窓の開口の上部には、遮光(目隠し)されない部分が形成され、上部からの適度な採光が実現される。
【0011】
このため、従来の遮光装置のように、必要な目隠しを行った結果、採光が全くできなくなり、室内が暗くなってしまうという不都合を解消することが可能となり、これにより前記目的が達成される。
【0012】
より具体的には、遮光体を複数のスラットを連結して形成されるブラインドとする場合には、次のような構成とすることが望ましい。すなわち、前述した遮光装置において、遮光体は、複数のスラットを紐状部材で連結して並行に配置して形成されたブラインドであり、複数のスラットのうち最も上側のスラットの左右両端部に取り付けられた左右の軸をそれぞれ上下に摺動案内するために枠体の左右両側部分に設けられたガイドレールと、最も上側のスラットの左右の軸のうちのいずれか一方の軸を回転させることによりこの最も上側のスラットの傾斜を調整するとともに、これに伴って複数のスラットのうち収納部から外に出ている他のスラットの傾斜も調整する傾斜調整用モータと、最も上側のスラットの左右の軸にそれぞれ回転自在に取り付けられた左右のプーリとを備え、左右のワイヤは、左右のプーリを介して最も上側のスラットの左右の軸を吊り下げる状態を保持したまま左右のリールに巻き取られる構成とされ、傾斜調整用モータの回転子側は、最も上側のスラットの左右の軸のうちのいずれか一方の軸に固定されて最も上側のスラットと一体的に回転し、傾斜調整用モータの固定子側は、傾斜調整用モータのケースまたはこのケースに固定された部材と一体化されてガイドレールにより上下に摺動案内される構成とされていることが望ましい。
【0013】
このように遮光体をブラインドとし、傾斜調整用モータでスラットの傾斜を調整する構成とした場合には、傾斜調整用モータにより電動でスラットの傾斜調整を行うことができるので、調整操作に伴うユーザの労力を軽減することが可能となる。
【0014】
また、傾斜調整用モータのケースまたはこのケースに固定された部材が、ガイドレールにより上下に摺動案内されるようになっているので、傾斜調整用モータの姿勢を一定に保持しつつ、最も上側のスラットを回転させることが可能となり、安定したスラットの傾斜調整を行うことができるようになる。つまり、傾斜調整用モータの固定子側は、ガイドレールに沿って上下には動くが、空間に対して回転はしないように姿勢が保持されるので、傾斜調整用モータの回転が、最も上側のスラットに確実に伝達されるようになる。
【0015】
また、遮光体をロールカーテンとする場合には、次のような構成とすることが望ましい。すなわち、前述した遮光装置において、遮光体は、収納部に巻き取り収納されるロールカーテンであり、ロールカーテンの上側端縁部に設けられた軸の左右両端部を上下に摺動案内するために枠体の左右両側部分に設けられたガイドレールと、ロールカーテンの上側端縁部に設けられた軸の左右両端部にそれぞれ回転自在に取り付けられた左右のプーリと、拡げられたロールカーテンを収納する方向に付勢する巻き戻しばねとを備え、左右のワイヤは、左右のプーリを介してロールカーテンの上側端縁部に設けられた軸の左右両端部を吊り下げる状態を保持したまま左右のリールに巻き取られる構成とされていることが望ましい。
【0016】
このように遮光体をロールカーテンとした場合には、巻き戻しばねが設けられているので、枠体の下部に設けられた収納部から上方に送り出されて拡げられたロールカーテンは、常に収納部に収納される方向に引っ張られている状態となる。このため、ロールカーテンを拡げた際には、撓むことなく遮光を行う姿勢を保持し、収納部に収納する際にも、撓むことなく円滑な収納が実現される。
【発明の効果】
【0017】
以上に述べたように本発明によれば、枠体の下部に設けられた収納部に収納された遮光体が下方から上方に拡げられ、この遮光体の動きにより、窓の開口の下部から順に遮光(目隠し)が行われていくので、遮光体の上側端縁部が適宜な位置に到達したところで巻取用モータを停止させれば、適切な目隠しと適度な採光とを同時に実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の遮光装置の全体構成を示す斜視図。
図2】前記実施形態の遮光装置の要部を示す斜視図。
図3】前記実施形態の遮光装置の下方の要部を示す拡大斜視図。
図4】前記実施形態の遮光装置の上方の要部を示す拡大斜視図。
図5】本発明の別の実施形態の遮光装置の要部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1には、本実施形態の遮光装置10の全体構成が示されている。図2は、図1に示された組立完了状態にある遮光装置10から枠体20の図中の手前側の構成部材を取り外した状態であり、遮光装置10の要部を含む内部構成が示されている。図3は、遮光装置10の下方の要部を示す拡大斜視図であり、遮光体の収納状態が示されている。図4は、遮光装置10の上方の要部を示す拡大斜視図であり、遮光体の駆動機構の詳細が示されている。
【0020】
図1および図2において、遮光装置10は、窓の周囲に取り付ける方形(長方形または正方形)の枠体20と、窓の開口の少なくとも一部を覆って遮光を行う遮光体であるブラインド30と、枠体20の下部21に設けられてブラインド30を収納する収納部40と、ブラインド30の上側端縁部の左右両端部を吊り下げる状態でこれらの左右両端部に接続された左右のワイヤ50,51と、これらの左右のワイヤ50,51をそれぞれ巻き取る左右のリール60,61と、枠体20の上部22に設けられてブラインド30の昇降のために左右のリール60,61を固定した軸62を回転駆動する巻取用モータ70と、ブラインド30の上側端縁部の左右両端部を上下に摺動案内するために枠体20の左側部23および右側部24の内側に設けられたガイドレール80,81と、ブラインド30を構成する各スラット31の傾斜を調整する傾斜調整用モータ90とを備えている。
【0021】
ここで、遮光装置10は、例えば、風呂場、トイレ、洗面所の窓等に設置することが好適であるが、これに限定されるものではない。また、枠体20の形状は、方形(四角形)であるが、窓の開口形状は、方形に限定されるものではなく、三角形、台形、円形等、任意である。さらに、ブラインド30は、窓の開口の全部を覆うことができる大きさを有していることが好ましいが、全閉にした状態(遮光範囲を最大にした状態)で、窓の開口の上部に遮光(目隠し)されない部分が生じる大きさとしてもよい。
【0022】
枠体20は、室内側に向けて配置される前面(図1中の手前側の面)の部材25を着脱自在に構成され、図2に示すように、前面の部材25を取り外すことにより、巻取用モータ70や傾斜調整用モータ90を含む駆動機構のメンテナンスを行うことができるようになっている。枠体20の材質は、形状を保つための一定の強度を確保することができれば、スチール製(鋼製)、アルミニウム合金製、ステンレス鋼製、木製、合成樹脂製等、任意である。
【0023】
ブラインド30は、複数の薄板状のスラット31を紐状部材32により左右両端部の合計4箇所で連結して並行に配置して形成されている。なお、紐状部材32による連結箇所は、左右両端部だけではなく、中間部分に1箇所または複数箇所設けてもよく、従って、合計6箇所、8箇所、10箇所等であってもよい。スラット31の材質は、その面形状をある程度保つことができる強度を有するものであれば、金属製、合成樹脂製、木製等、任意である。また、紐状部材32の材質は、図3に示すように、各スラット31を積み重ねて収納部40へ収納できるように可撓性を有し、かつ、図2に示すように、ブラインド30を拡げた際に各スラット31の間隔を一定に保つことができるように大きくは伸びない引張強さを有するものであれば、ナイロンやポリプロピレン等の合成樹脂、木綿、麻、絹、金属製ワイヤ等、任意である。
【0024】
図3に示すように、ブラインド30は、枠体20の下部21に設けられた収納部40に収納された状態では、外部から見えなくなるようになっている。すなわち、図3では、前面の部材25(図1参照)が取り外された状態であるが、図1のように前面の部材25を取り付ければ、室内側からは見えなくなる。
【0025】
図2図4に示すように、複数のスラット31のうち最も上側のスラット31A(ブラインド30の上側端縁部に相当する部材)の左右両端部に取り付けられた左右の軸33,34には、プーリ(滑車)35,36がベアリングを介して回転自在に取り付けられている。左右のワイヤ50,51は、これらの左右のプーリ35,36を介して最も上側のスラット31Aの左右の軸33,34を吊り下げる状態を保持したまま左右のリール60,61に巻き取られるようになっている。また、左右のワイヤ50,51の他方の端部(左右のリール60,61側とは反対側の端部)は、枠体20の上部22に設けられた部材52に固定されている。ワイヤ50,51の材質は、金属製であることが好ましいが、必要な強度や耐久性を確保できれば、金属製以外であってもよい。
【0026】
図4に示すように、巻取用モータ70は、歯車71,72を介して左右のリール60,61が固定されている軸62を回転させるようになっている。この巻取用モータ70は、ステッパーモータ(ステッピングモータ、ステップモータ、パルスモータとも称される。)であり、リモートコントローラ(不図示)でON/OFFされ、細かい回転駆動のON/OFF制御(ブラインド30の昇降のON/OFF制御)を行うことができる。また、巻取用モータ70や軸62の周りの部材は、枠体20の上部22の内側に形成された空間内に収まり、外部から見えないようになっている。すなわち、図4では、前面の部材25(図1参照)が取り外された状態であるが、図1のように前面の部材25を取り付ければ、室内側からは見えなくなる。
【0027】
図2図4に示すように、枠体20の左側部23および右側部24の内側に設けられたガイドレール80,81は、最も上側のスラット31Aの左右両端部に取り付けられた左右の軸33,34をそれぞれ上下に摺動案内するようになっている。
【0028】
図2図4に示すように、傾斜調整用モータ90は、最も上側のスラット31Aの左側端部に固定された軸33に取り付けられている。なお、傾斜調整用モータ90は、最も上側のスラット31Aの右側端部に固定された軸34に取り付けてもよい。より正確には、傾斜調整用モータ90の回転子側は、最も上側のスラット31Aの左右の軸33,34のうちのいずれか一方の軸(本実施形態では、左側の軸33)に固定されて最も上側のスラット31Aと一体的に回転するようになっている。一方、傾斜調整用モータ90の固定子側は、傾斜調整用モータ90のケースまたはこのケースに固定された部材と一体化されて左右のガイドレール80,81のうちのいずれか一方(本実施形態では、左側のガイドレール80)により上下に摺動案内されるようになっている。
【0029】
この傾斜調整用モータ90は、巻取用モータ70と同様にステッパーモータであり、リモートコントローラ(不図示)でON/OFFされ、細かい回転駆動のON/OFF制御(各スラット31の傾斜の調整制御)を行うことができる。各スラット31の傾斜角度は、180度の範囲の調整が可能である。また、傾斜調整用モータ90は、枠体20の左側部23または右側部24(本実施形態では、左側部23)の内側に形成された空間内に収まり、外部から見えないようになっている。すなわち、図2図4では、前面の部材25(図1参照)が取り外された状態であるが、図1のように前面の部材25を取り付ければ、室内側からは見えなくなる。
【0030】
このような本実施形態においては、以下のようにして巻取用モータ70によりブラインド30の昇降制御(開閉制御:但し、上昇で閉まり、下降で開くので、正確に対応させると閉開制御である。)が行われるとともに、傾斜調整用モータ90により各スラット31の傾斜の調整制御が行われる。
【0031】
先ず、ブラインド30を閉める動作を行う際、すなわちブラインド30を拡げて窓の遮光範囲(目隠しする範囲)を拡大する際には、リモートコントローラ(不図示)を操作して巻取用モータ70を閉動作ONにし、巻取用モータ70により軸62を回転(正転)させて左右のワイヤ50,51を左右のリール60,61に巻き取っていく。左右のワイヤ50,51が巻き取られると、左右のプーリ35,36が回転し、ブラインド30の上側端縁部に相当する最も上側のスラット31Aの左右の軸33,34の高さ位置が上がり、スラット31Aが上方に移動していくので、その結果として、ブラインド30の全体が上方に引き揚げられて収納部40から徐々に引き出されていく。この際、左右のプーリ35,36は回転するが、最も上側のスラット31Aおよびその左右の軸33,34は回転せず、上方に移動するだけであり、スラット31Aの傾斜は変わらない。そして、最も上側のスラット31Aが所望の位置に到達したところで、リモートコントローラ(不図示)を操作して巻取用モータ70をOFFにし、スラット31Aの上昇を停止させる。
【0032】
一方、ブラインド30を開ける動作を行う際、すなわちブラインド30を畳んで窓の遮光範囲(目隠しする範囲)を縮小する際には、リモートコントローラ(不図示)を操作して巻取用モータ70を開動作ONにし、巻取用モータ70により軸62を反対方向に回転させて左右のワイヤ50,51を左右のリール60,61から送り出していく。左右のワイヤ50,51が送り出されると、左右のプーリ35,36が回転し、ブラインド30の上側端縁部に相当する最も上側のスラット31Aの左右の軸33,34の高さ位置が下がり、スラット31Aが下方に移動していくので、その結果として、ブラインド30の全体が下方に降ろされ、下側のスラット31から順に自重で重なっていき、収納部40に徐々に収納されていく。この際にも、左右のプーリ35,36は回転するが、最も上側のスラット31Aおよびその左右の軸33,34は回転せず、下方に移動するだけであり、スラット31Aの傾斜は変わらない。そして、最も上側のスラット31Aが最下部または所望の位置に到達したところで、リモートコントローラ(不図示)を操作して巻取用モータ70をOFFにし、スラット31Aの下降を停止させる。
【0033】
次に、ブラインド30を構成する各スラット31の傾斜を調整する際には、リモートコントローラ(不図示)を操作して傾斜調整用モータ90を閉動作ONにし、傾斜調整用モータ90により最も上側のスラット31Aの左右の軸33,34のうちのいずれか一方の軸(本実施形態では、左側の軸33)を回転させてスラット31Aの傾斜を調整し、所望の傾斜に到達したところで、リモートコントローラ(不図示)を操作して傾斜調整用モータ90をOFFにし、軸33の回転を停止させる。また、最も上側のスラット31Aの下方に配置されている他のスラット31(但し、収納部40から外に出ているスラット31)も紐状部材32で連結されているので、これらの他のスラット31の傾斜も同時に調整される。この際、最も上側のスラット31Aの左右の軸33,34は回転するが、左右のプーリ35,36は回転せず、左右の軸33,34の高さ位置は変わらない。従って、巻取用モータ70によるブラインド30の昇降制御と、傾斜調整用モータ90による各スラット31の傾斜の調整制御とは、独立した駆動機構により実現されている。なお、リモートコントローラ(不図示)を操作して傾斜調整用モータ90を開動作ONにし、適宜なタイミングでOFFにすれば、傾斜調整用モータ90を反対方向に回転させ、各スラット31の傾斜を水平方向に戻すことができる。
【0034】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。すなわち、遮光装置10では、ブラインド30を閉じる動作を行う際、すなわち窓の開口を覆って遮光範囲を拡げる際には、ブラインド30を枠体20の下部21に設けられた収納部40から上方に徐々に引き出していくことができる。従って、ブラインド30の上側端縁部に相当する最も上側のスラット31Aが、窓の内側にいる者にとって所望の目隠しを行うことができる適宜な位置に到達したところで、巻取用モータ70を停止させれば、ブラインド30により窓の開口の下部を覆って適切な目隠しを実現することができるとともに、窓の開口の上部に、遮光(目隠し)されない部分を形成し、上部からの適度な採光を実現することができる。このため、従来の遮光装置のように、必要な目隠しを行った結果、採光が全くできなくなり、室内が暗くなってしまうという不都合を解消することができる。
【0035】
より具体的には、窓の内側にいる者は、リモートコントローラ(不図示)の操作により、細かいON/OFF制御が可能なステッパーモータにより構成された巻取用モータ70を自分で制御することができるので、例えば、自分の身長に合わせて、自由自在な高さ位置でブラインド30の上側端縁部に相当する最も上側のスラット31Aを停止させることができる。このため、窓の開口の下部に、自分の身長に応じた遮光範囲(目隠しする範囲)を形成することができるとともに、窓の開口の上部に、採光用に開放しておく範囲を形成することができる。このため、窓の内側の部屋が全体的に暗くなってしまうという不都合を回避することができ、窓の外から太陽光線が入る昼間であれば、電灯を使用しなくても、ある程度の明るさを確保することができるので、電気代を節約することができる。また、リモートコントローラ(不図示)の操作により電動でブラインド30の昇降を行うことができるので、例えば、女性、子供、老人、背の小さい人、力のない人、身体障害者等、誰でも容易にブラインド30の開閉制御を行うことができる。
【0036】
また、窓の外部からの視線を遮断し、室内にいる者のプライバシーを守るという観点からは、例えば、風呂場、トイレ、洗面所等、プライバシーを強く守るべき様々なプライベート空間の窓に、遮光装置10を設置すれば効果的である。特に、一軒家の一階では、風呂場の窓等に、目隠し用の固定板材を設置することも多いが、室内が暗くなってしまうので、昼間でも電灯を付けなければならず、さらに、風通しが悪いので、真夏日には室内の温度が非常に高くなってしまうという不都合が生じる。これに対し、遮光装置10を設置すれば、昼間に電灯を付ける必要はなくなるので、電気代を節約でき、かつ、各スラット31の傾斜を調整すれば、風通しも確保できるので、目隠し用の固定板材の設置による不都合を解消することができる。
【0037】
そして、目隠し用の固定板材を設置した場合には、窓の外から覗かれることを防止することはできるが、同時に窓の内側にいる人が窓の外の様子、例えば、天気が悪くなってきたことや、日が暮れてきたこと等を把握できなくなってしまう。これに対し、遮光装置10を設置すれば、窓の開口の上部は開放された状態にすることができるので、このような不都合を解消することができる。
【0038】
また、遮光装置10は、傾斜調整用モータ90を備えているので、この傾斜調整用モータ90により電動で各スラット31の傾斜調整を行うことができる。このため、調整操作に伴うユーザの労力を軽減することができる。
【0039】
さらに、遮光装置10では、傾斜調整用モータ90のケースまたはこのケースに固定された部材が、ガイドレール80により上下に摺動案内されるので、傾斜調整用モータ90の姿勢を一定に保持しつつ、最も上側のスラット31Aを回転させることができ、安定したスラット31の傾斜調整を行うことができる。つまり、傾斜調整用モータ90の固定子側は、ガイドレール80に沿って上下には動くが、空間に対して回転はしないように姿勢が保持されるので、傾斜調整用モータ90の回転を、最も上側のスラット31Aに確実に伝達することができる。より端的に言えば、傾斜調整用モータ90で最も上側のスラット31Aを回転させる際に、傾斜調整用モータ90がケースごと空間に対してふら付いてしまうことを防止できる。
【0040】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等は本発明に含まれるものである。
【0041】
例えば、前記実施形態の遮光装置10では、遮光体は、複数のスラット31を連結して形成されたブラインド30とされていたが、これに限定されるものではなく、図5に示す遮光装置100のように、可撓性を有するシート状部材で形成されたロールカーテン130としてもよい。ロールカーテン130の材質は、布製、ビニール製等、任意である。この遮光装置100は、ロールカーテン130以外の部分は、前記実施形態の遮光装置10と同様な構成を有するので、同一部分には、同一符号を付し、図示や説明は省略する。
【0042】
図5において、遮光装置100は、前記実施形態の遮光装置10と同様に、枠体20を備え、枠体20の下部21には、ロールカーテン130の巻取部131を収納する収納部40が設けられ、枠体20の上部22には、左右のワイヤ50,51を巻き取るリール60,61の軸62を回転駆動する巻取用モータ70が設けられ、枠体20の左側部23および右側部24には、ロールカーテン130の上側端縁部132に設けられた軸133の左右両端部134,135を上下に摺動案内する左右のガイドレール80,81が設けられているが、これらの一部(前記実施形態の遮光装置10と同様な構成を有する部分)については、図示を省略している。
【0043】
ロールカーテン130の下部に設けられた巻取部131は、巻取軸136を中心に巻かれて形成され、この巻取軸136には、拡げられたロールカーテン130を巻き取って収納する方向に付勢する左右の巻き戻しばね137,138が取り付けられている。従って、収納部40から上方に送り出されて拡げられたロールカーテン130は、常に収納部40に収納される方向に引っ張られている状態となるので、ロールカーテン130を拡げた際には、撓むことなく遮光を行う姿勢を保持することができ、収納部40に収納する際にも、撓むことなく円滑な収納を実現することができる。
【0044】
巻取用モータ70によるロールカーテン130の昇降制御は、前記実施形態のブラインド30の昇降制御と同様である。なお、ロールカーテン130には、ブラインド30とは異なり、スラット31の傾斜調整に相当するものはないので、前記実施形態の傾斜調整用モータ90に相当するものは設けられていない。従って、図5の遮光装置100では、前記実施形態のスラット31の傾斜調整に関する作用・効果は得られないが、その他の作用・効果は前記実施形態の遮光装置10の場合と同様に得られる。
【0045】
また、前記実施形態の遮光装置10や上述した図5の遮光装置100では、ワイヤ50,51は、左右のプーリ35,36を介して遮光体の上側端縁部を吊り下げる構成とされていたが、これに限定されるものではなく、ワイヤ50,51の端部を直接に遮光体の上側端縁部に取り付けてもよく、また、例えば、左右にそれぞれ3つずつ合計で6つのプーリを設置する等、プーリの設置個数を増やして巻取用モータ70の負荷の軽減を図ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明の遮光装置は、建築物等の固定構造物や船舶等の移動構造物に設けられた窓の遮光や目隠しを行う場合に利用でき、特に、例えば風呂場、トイレ、洗面所のような特定目的の空間に設けられた窓の遮光や目隠しを行う場合等に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0047】
10,100 遮光装置
20 枠体
30 遮光体であるブラインド
35,36 プーリ
40 収納部
50,51 ワイヤ
60,61 リール
70 巻取用モータ
80,81 ガイドレール
90 傾斜調整用モータ
130 遮光体であるロールカーテン
137,138 巻き戻しばね
図1
図2
図3
図4
図5