特許第5932959号(P5932959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5932959
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 97/00 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   A47B97/00 C
   A47B97/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-258610(P2014-258610)
(22)【出願日】2014年12月22日
【審査請求日】2016年3月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関根 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小倉 雅則
(72)【発明者】
【氏名】井上 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】一新 賢二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 景太
【審査官】 蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−10973(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3022426(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 97/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井又は設置面に当接し、前記天井又は前記設置面から徐々に離れながら一方向に延びて配置され、弾性を有する当接部と、
一端部が前記当接部の前記天井又は前記設置面から離れた端部に連結され、他端部が前記設置面上に設置された物品に設けられる連結部とを備えており、
前記当接部は、前記物品の傾きに伴って弾性変形し、前記天井又は前記設置面に当接する面積が増加することを特徴とする転倒防止装置。
【請求項2】
前記当接部は、前記物品が傾いた際に前記物品と前記天井又は前記設置面との間隔が狭くなる方向に向けて、前記天井又は前記設置面から徐々に離れて配置されることを特徴とする請求項1記載の転倒防止装置。
【請求項3】
設置面上に設置された物品に当接し、前記物品から徐々に離れながら一方向に延びて配置され、弾性を有する当接部と、
一端部が前記当接部の前記物品から離れた端部に連結され、他端部が天井又は前記設置面に設けられる連結部とを備えており、
前記当接部は、前記物品の傾きに伴って弾性変形し、前記物品に当接する面積が増加することを特徴とする転倒防止装置。
【請求項4】
前記当接部は、前記物品が傾いた際に前記天井又は前記設置面に近づく側の前記物品の端部に当接し、前記物品と前記天井又は前記設置面との間隔が広くなる方向に向けて、前記物品から徐々に離れて配置されることを特徴とする請求項3記載の転倒防止装置。
【請求項5】
前記当接部の弾性力を利用して前記物品と前記天井又は前記設置面との間に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の転倒防止装置。
【請求項6】
前記連結部は、前記物品と前記天井又は前記設置面との間隔に応じて高さ方向の寸法を調整する高さ調整部を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転倒防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の転倒防止装置を開示している。この転倒防止装置は、家具押さえ用下部と、天井当接用上部と、伸縮部とを備えている。家具押さえ用下部は家具の上面に配置された家具保護用のプレートの上面に当接させる。天井当接用上部は天井に当接させる。伸縮部は、家具押さえ用下部と天井当接用上部との間に配置され、上下伸縮可能で任意位置で固定可能である。この転倒防止装置は、家具の高さに応じて伸縮部の上下長さを調整することができるため、高さの異なる家具に対して取り付けることができ、家具の転倒を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−242954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、地震の揺れ等によって特許文献1の転倒防止装置を取り付けた家具に傾く方向の力が加わると、家具保護用のプレートに当接した家具押さえ用下部の当接面、及び天井に当接した天井当接用上部の当接面にその力が集中する。このため、家具押さえ用下部が家具の上面を突き抜けないようにするために、家具の上面に家具保護用のプレートを配置する必要がある。また、この転倒防止装置は、天井当接用上部は天井の強度が高い個所(桟木と回り縁とが取り付けられている箇所)に取り付ける必要がある。このように、この転倒防止装置は、取り付けに際し、プレートを配置したり、取り付け位置を選定したりする手間を要する。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、容易に取り付けることができ、物品の転倒を防止することができる転倒防止装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の転倒防止装置は当接部と連結部とを備えている。当接部は天井又は設置面に当接する。この当接部は天井又は設置面から徐々に離れながら一方向に延びて配置される。連結部は、一端部が当接部の天井又は設置面から離れた端部に連結され、他端部が設置面上に設置された物品に設けられる。当接部は、物品の傾きに伴って弾性変形し、天井又は設置面に当接する面積が増加する。
【0007】
この転倒防止装置は、当接部が物品の傾きに伴って弾性変形し、天井又は設置面に当接する面積が増加する。このように、この転倒防止装置は、地震の揺れ等によって物品が傾いた際、当接部の弾性変形によってその力を緩和することができる。さらに、この転倒防止装置は、地震の揺れ等によって家具が傾いた際、当接部の天井又は設置面に当接する面積が増加するため、天井又は設置面にかかる力を分散することができる。このように、この転倒防止装置は、天井又は設置面にかかる力を小さくすることができるため、取り付け位置の自由度を広げることができる。
【0008】
第2発明の転倒防止装置も当接部と連結部とを備えている。当接部は設置面上に設置された物品に当接する。この当接部は物品から徐々に離れながら一方向に延びて配置される。連結部は、一端部が当接部の物品から離れた端部に連結され、他端部が天井又は設置面に設けられる。当接部は、物品の傾きに伴って弾性変形し、物品に当接する面積が増加する。
【0009】
この転倒防止装置は、当接部が物品の傾きに伴って弾性変形し、物品に当接する面積が増加する。このように、この転倒防止装置は、地震の揺れ等によって物品が傾いた際、当接部の弾性変形によって、家具が傾く力を緩和することができる。さらに、この転倒防止装置は、地震の揺れ等によって家具が傾いた際、当接部の物品に当接する面積が増加するため、物品にかかる力を分散することができる。このように、この転倒防止装置は、物品にかかる力を小さくすることができるため、取り付け位置の自由度を広げることができる。
【0010】
したがって、第1発明及び第2発明の転倒防止装置は容易に取り付けることができ、物品の転倒を防止することができる。
【0011】
第1発明の転倒防止装置において、当接部は、物品が傾いた際に物品と天井又は設置面との間隔が狭くなる方向に向けて、天井又は設置面から徐々に離れて配置され得る。この場合、物品が傾くと当接部が弾性変形して天井又は設置面に当接する面積を増加させることができる。これによって、この転倒防止装置は物品の転倒を防止することができる。
【0012】
第2発明の転倒防止装置において、当接部は物品が傾いた際に天井又は設置面に近づく側の物品の端部に当接する。この当接部は、物品が傾いた際に天井又は設置面との間隔が広くなる方向に向けて、物品から徐々に離れて配置され得る。この場合、物品が傾くと当接部が物品に当接する面積を増加させることができる。これによって、この転倒防止装置は物品の転倒を防止することができる。
【0013】
第1発明又は第2発明の転倒防止装置は、当接部の弾性力を利用して物品と天井又は設置面との間に取り付けられ得る。この場合、転倒防止装置を物品と天井又は設置面との間に容易に取り付けることができる。
【0014】
第1発明又は第2発明の転倒防止装置において、連結部は、物品と天井又は設置面との間隔の広さに応じて高さ方向の寸法を調整する高さ調整部を有し得る。この場合、この転倒防止装置は高さ調整部によって高さ方向の寸法を調整することができるため、転倒防止装置を取り付けることができる物品と天井又は設置面との間隔を広い範囲にすることができる。
【0015】
ここで、物品は、家具、複数の寝台を上下方向に連結したベッド、大型テレビ、冷蔵庫、書棚、ショーケース、サーバーラック等、地震の揺れ等によって転倒するおそれのあるものが含まれる。設置面は、建物内の床面のみならず、建物外で物品を設置する基礎面等が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1の転倒防止装置であって、当接部を天井に当接させて家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す側面図である。
図2】実施形態1の転倒防止装置であって、当接部を家具の上面に当接させて家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す側面図である。
図3】実施形態1転倒防止装置であって、当接部を天井に当接させたものと、当接部を家具の上面に当接させたものを夫々家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す側面図である。
図4】実施形態2の転倒防止装置であって、当接部を家具の下面に当接させて家具の下面と床面との間に取り付けた状態を示す側面図である。
図5】実施形態3の転倒防止装置であって、当接部を天井に当接させて家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す側面図である。
図6】実施形態4の転倒防止装置であって、家具の上面天井との間に取り付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1発明及び第2発明の転倒防止装置を具体化した実施形態1〜4について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
<実施形態1>
実施形態1の転倒防止装置10は、図1図3に示すように、床面(図示せず)から鉛直方向に延びる壁面Wに背面1Bを対向させて床面上に設置された家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付けられる。家具1は、直方体形状であり、正面1Fに図示しない扉や引き出し等を有し、内部に衣類や装身具等を収納することができる。家具1は、水平断面形状が左右方向(図1において奥行き方向)に長い長方形状である。この家具1は、転倒防止装置10が取り付けられていない場合、地震の揺れ等によって、前方向(図1において右方向)に傾いて転倒するおそれがある。
【0019】
転倒防止装置10は当接部11と連結部13とを備えている。当接部11は、帯状の平板であり、弾性を有している。この当接部11は弧状に湾曲している。また、当接部11は一端部の一側面に滑り止め部材12が貼り付けられている。
【0020】
連結部13は当接部11の他端部に連続して一体に形成された帯状の平板である。連結部13は、当接部11の湾曲に連続して湾曲した湾曲部分14と、湾曲部分14の端部から屈曲して直線状に延びた直線部分15とを有している。連結部13は直線部分15の一側面に滑り止め部材16が貼り付けられている。
【0021】
このような構成を有する転倒防止装置10は、図1及び図3に示すように、当接部11と連結部13の湾曲部分14とが斜め後側上方向(天井Cと壁面Wとが連結した角部方向)に膨らむように湾曲させて、家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付けることができる。このように転倒防止装置10を家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付ける際、当接部11及び連結部13の湾曲部分14を弾性変形させ、上下方向の寸法を縮めた状態にする。そして、連結部13の直線部分15を家具1の背面1B側の上面1Uに配置し、当接部11の先端部分を天井Cに当接させる。この当接部11は、家具1が前方向に傾いた際に家具1の上面1Uと天井Cとの間隔が狭くなる方向(家具1の背面1B方向)に向けて、天井Cから徐々に離れて配置される。
【0022】
このように転倒防止装置10を家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付ける際、当接部11及び連結部13の湾曲部分14の上下方向に広がる方向の弾性力を利用し、転倒防止装置10を取り付けることができる。このため、この転倒防止装置10は家具1の上面1Uと天井Cとの間に容易に取り付けることができる。
【0023】
また、このように家具1の上面1Uと天井Cとの間に転倒防止装置10を取り付けた場合、地震等の揺れによって家具1が前方向に傾くと、それに伴って当接部11及び連結部13の湾曲部分14が弾性変形し、当接部11の天井Cに当接する面積が増加する。このように、この転倒防止装置10は、地震の揺れ等によって家具1が前方向に傾いた際、当接部11及び連結部13の湾曲部分14の弾性変形によって、家具1が傾く力を緩和することができる。さらに、この転倒防止装置10は、地震の揺れ等によって家具1が前方向に傾いた際、当接部11の天井Cに当接する面積が増加するため、天井Cにかかる力を分散することができる。このように、この転倒防止装置10は、天井Cにかかる力を小さくすることができるため、取り付け位置の自由度を広げることができる。
【0024】
また、転倒防止装置10は、図2及び図3に示すように、当接部11と連結部13の湾曲部分14とが斜め前側下方向に膨らむように湾曲させて、家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付けることができる。このように転倒防止装置10を家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付ける際にも、当接部11及び連結部13の湾曲部分14を弾性変形させ、上下方向の寸法を縮めた状態にする。そして、当接部11の先端部分が家具1の背面1B側の上面1Uに当接するように連結部13の直線部分15を天井Cに当接させる。つまり、当接部11は家具1が前方向に傾いた際に天井Cに近づく側(家具1の背面1B側)の家具1の上面1Uの端部に当接させる。この当接部11は、家具1が前方向に傾いた際に家具1の上面1Uと天井Cとの間隔が広くなる方向(家具1の正面1F方向)に向けて、家具1の上面1Uから徐々に離れて配置される。
【0025】
このように転倒防止装置10を家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付ける際、当接部11及び連結部13の湾曲部分14の上下方向に広がる方向の弾性力を利用し、転倒防止装置10を取り付けることができる。このため、この転倒防止装置10は家具1の上面1Uと天井Cとの間に容易に取り付けることができる。
【0026】
また、このように家具1の上面1Uと天井Cとの間に転倒防止装置10を取り付けた場合も、地震等の揺れによって家具1が前方向に傾くと、それに伴って当接部11及び連結部13の湾曲部分14が弾性変形し、当接部11の家具1の上面1Uに当接する面積が増加する。このように、この転倒防止装置10は、地震の揺れ等によって家具1が前方向に傾いた際、当接部11及び連結部13の湾曲部分14の弾性変形によって、家具1が傾く力を緩和することができる。さらに、この転倒防止装置10は、地震の揺れ等によって家具1が前方向に傾いた際、当接部11の家具1の上面1Uに当接する面積が増加するため、家具1の上面1Uにかかる力を分散することができる。このように、この転倒防止装置10は、家具1の上面1Uにかかる力を小さくすることができるため、取り付け位置の自由度を広げることができる。
【0027】
したがって、実施形態1の転倒防止装置10は容易に取り付けることができ、家具1の転倒を防止することができる。
【0028】
また、この転倒防止装置10は、当接部11の一端部の一側面、及び連結部13の直線部分15の一側面に滑り止め部材12,16が貼り付けられているため、地震等の揺れによって家具1が前方向に傾いたとしても、連結部13の直線部分15又は当接部11が家具1の上面1U又は天井Cに対してずれることなく取り付けることができる。このため、この転倒防止装置10は、地震の揺れ等が生じても家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付けられた状態が維持され、家具1の転倒を防止することができる。
【0029】
<実施形態2>
実施形態2の転倒防止装置10は、図4に示すように、床面F上に設置された家具2の下面3Dと床面Fとの間に取り付けられる点で実施形態1と相違する。転倒防止装置10の形態は実施形態1と同じであり、実施形態1と同様の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0030】
家具2は、家具本体3と、床面Fに載置されて家具本体3を支持する支持脚4とを有している。家具本体3は、直方体形状であり、正面3Fに図示しない扉や引出し等を有し、内部に衣類や装身具等を収納することができる。家具本体3は、水平断面形状が左右方向(図4において奥行き方向)に長い長方形状である。支持脚4も直方体形状であり、水平断面形状が家具本体3よりも小さく、左右方向に長い長方形状である。支持脚4の長手方向と、家具本体3の長手方向とが同じになるように、支持脚4は家具本体3の下面の中央部から連続して下方に延びている。このため、家具本体3は支持脚4の上端周縁部から外側に下面3Dが広がっている。家具2は支持脚4の下面が床面Fに当接した状態で自立している。この家具2は、支持脚4が左右方向に長い直方体形状であるため、転倒防止装置が10取り付けられていない場合、地震の揺れ等によって、前後方向(図4において左右方向)に傾いて転倒するおそれがある。
【0031】
転倒防止装置10は、支持脚4を挟んで少なくとも一対を家具本体3の下面3Dと床面Fとの間に取り付けることができる。家具本体3の下面3Dと床面Fとの間に取り付けられる一対の転倒防止装置10は、斜め内側上方向(家具本体3の下面3Dと支持脚4とが連結した角部方向)に膨らむように湾曲している。
【0032】
このように転倒防止装置10を家具本体3の前側(図4において左側)の下面3Dと床面Fとの間に取り付ける際、当接部11及び連結部13の湾曲部分14を弾性変形させ、上下方向の寸法を縮めた状態にする。そして、連結部13の直線部分15を支持脚4に近い床面Fに配置し、当接部11の先端部分を家具本体3の前端縁の下面3Dに当接させる。つまり、当接部11は家具2が前方向(図4において左方向)に傾いた際に床面Fに近づく側(家具2の正面3F側)の家具本体3の下面3Dの端部に当接させる。この当接部11は、家具2が前方向に傾いた際に家具本体3の前側の下面3Dと床面Fとの間隔が広くなる方向(支持脚4の方向)に向けて、家具本体3の下面3Dから徐々に離れて配置される。
【0033】
また、家具本体3の後側(図4の右側)の下面3Dと床面Fとの間に取り付ける際も、当接部11及び連結部13の湾曲部分14を弾性変形させ、上下方向の寸法を縮めた状態にする。そして、連結部13の直線部分15を支持脚4に近い床面Fに配置し、当接部11の先端部分を家具本体3の後端縁の下面3Dに当接させる。つまり、当接部11は家具2が後方向(図4において右方向)に傾いた際に床面Fに近づく側(家具本体3の背面B側)の家具本体3の下面3Dの端部に当接させる。この当接部11は、家具2が後方向に傾いた際に家具本体3の後ろ側の下面3Dと床面Fとの間隔が広くなる方向(支持脚4の方向)に向けて、家具本体3の下面3Dから徐々に離れて配置される。
【0034】
このように転倒防止装置10を家具本体3の前側の下面3Dと床面Fとの間、及び家具本体3の後ろ側の下面3Dと床面Fとの間に取り付ける際、当接部11及び連結部13の湾曲部分14の上下方向に広がる方向の弾性力を利用し、転倒防止装置10を取り付けることができる。このため、この転倒防止装置10は家具本体3の下面3Dと床面Fとの間に容易に取り付けることができる。
【0035】
このように家具本体3の下面3Dと床面Fとの間に転倒防止装置10を取り付けた場合、地震等の揺れによって家具2が前後方向に傾くと、それに伴って当接部11及び連結部13の湾曲部分14が弾性変形し、当接部11の家具本体3の下面3Dに当接する面積が増加する。このように、この転倒防止装置10は、地震の揺れ等によって家具2が前後方向に傾いた際、当接部11及び連結部13の湾曲部分14の弾性変形によって、家具2が傾く力を緩和することができる。さらに、この転倒防止装置10は、地震の揺れ等によって家具2が前後方向に傾いた際、当接部11の家具本体3の下面3Dに当接する面積が増加するため、家具2にかかる力を分散することができる。このように、この転倒防止装置10は、家具2にかかる力を小さくすることができるため、取り付け位置の自由度を広げることができる。
【0036】
したがって、実施形態2の転倒防止装置10は容易に取り付けることができ、家具2の転倒を防止することができる。
【0037】
また、この転倒防止装置10は、当接部11の一端部の一側面、及び連結部13の直線部分15の一側面に滑り止め部材12,16が貼り付けられているため、地震等の揺れによって家具2が前後方向に傾いたとしても、当接部11が家具本体3の下面3Dに対してずれることなく取り付けることができる。同様に、連結部13の直線部分15が床面Fに対してずれることなく取り付けることができる。このため、この転倒防止装置10は、地震の揺れ等が生じても家具本体3の下面3Dと床面Fとの間に取り付けられた状態が維持され、家具2の転倒を防止することができる。
【0038】
<実施形態3>
実施形態3の転倒防止装置20は、図5に示すように、連結部23が高さ調整部25を有している点が実施形態1と相違する。実施形態1と同様の形態は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0039】
この転倒防止装置20の連結部23は、当接部11の他端部に連続して一体に形成され直線上に延びた挿入部24と、この挿入部24を挿入して高さ方向を調整する高さ調整部25と、高さ調整部25の下端部に連続して家具1の上面1Uに設置される支持部26とを有している。
【0040】
連結部23の挿入部24も平板状であり、2個の貫通孔24Aが貫設されている。これら2個の貫通孔24Aは挿入部24が伸びている方向に沿った中心線上の離れた位置に設けられている。これら2個の貫通孔24Aは、円形であり、内径が同じである。
【0041】
高さ調整部25は、支持部26を家具1の上面1Uに設置した状態で家具1の上面1Uに対して鉛直方向に延び、連結部23の挿入部24の肉厚よりも僅かに離れた一対の平板27を有している。この一対の平板27の間に連結部23の挿入部24が挿入される。
【0042】
高さ調整部25は一対の平板27を貫通する3組の貫通孔27Aを有している。これら3組の貫通孔27Aは鉛直方向に延びる一直線上に等間隔に離れた位置に設けられている。3組の貫通孔27Aの間隔は連結部23の挿入部24に設けられた2個の貫通孔24Aの間隔と同じである。3組の貫通孔27Aの夫々は、円形であり、内径が同じである。高さ調整部25の3組の貫通孔27Aの内径は、連結部23の挿入部24に設けられた2個の貫通孔24Aの内径よりも大きい。
【0043】
支持部26は、平板状であり、家具1の上面1Uに設置された際、家具1の上面1Uに当接する下面に滑り止め部材26Aが貼り付けられている。また、支持部26は上面の中央部に高さ調整部25の一対の平板27が連続している。
【0044】
この転倒防止装置20は高さ調整部25の3組の貫通孔27Aの夫々を挿通することができるピン50を有している。このピン50は、頭部51と、頭部51に連続して延びた軸部52とを有している。頭部51は、円柱形状であり、外径は高さ調整部25の各貫通孔27Aの内径よりも大きい。軸部52は、先割れ形状であり、先端から外側に広がった先端部52Aを有している。軸部52は、通常形態では先端部52Aの最も大きい外径が高さ調整部25の各貫通孔27Aの内径よりも大きい。軸部52は、先端部52Aが弾性変形して外径を小さくすることができ、高さ調整部25の各貫通孔27Aを挿通することができる。軸部52は、高さ調整部25の貫通孔27Aを挿通すると、先端部52Aが貫通孔27Aに係止して、抜け止め状態になる。
【0045】
この転倒防止装置20は、連結部23の挿入部24を高さ調整部25の一対の平板27の間に挿入し、同一直線上に配置した高さ調整部25の貫通孔27Aと連結部23の貫通孔24Aとにピン50を挿通して抜け止め状態にし、高さを調整することができる。つまり、この転倒防止装置20は高さを3段階に調整することができる。このため、この転倒防止装置20を取り付けることができる家具1と天井Cとの間隔を広い範囲にすることができる。つまり、高さの違う様々な家具1にこの転倒防止装置20を取り付けることができる。
【0046】
このような構成を有する転倒防止装置20は、家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付ける前に、家具1の上面1Uと天井Cとの間隔に応じて高さ調整部25を調整する。その後、当接部11及び連結部23の湾曲部分14を弾性変形させ、上下方向の寸法を縮めた状態にする。そして、連結部23の支持部26を家具1の背面1B側の上面1Uに配置し、当接部11の先端部分を天井Cに当接させる。この当接部11は、家具1が前方向に傾いた際に家具1の上面1Uと天井Cとの間隔が狭くなる方向(家具1の背面1B方向)に向けて、天井Cから徐々に離れて配置される。
【0047】
このように転倒防止装置20を家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付ける際、当接部11及び連結部23の湾曲部分14の上下方向に広がる方向の弾性力を利用し、転倒防止装置20を取り付けることができる。このため、この転倒防止装置20は家具1の上面1Uと天井Cとの間に容易に取り付けることができる。
【0048】
また、このように家具1の上面1Uと天井Cとの間に転倒防止装置20を取り付けた場合、地震等の揺れによって家具1が前方向に傾くと、それに伴って当接部11及び連結部23の湾曲部分14が弾性変形し、当接部11の天井Cに当接する面積が増加する。このように、この転倒防止装置20は、地震の揺れ等によって家具1が前方向に傾いた際、当接部11及び連結部23の湾曲部分14の弾性変形によって、家具1が傾く力を緩和することができる。さらに、この転倒防止装置20は、地震の揺れ等によって家具1が前方向に傾いた際、当接部11の天井Cに当接する面積が増加するため、天井Cにかかる力を分散することができる。このように、この転倒防止装置20は、天井Cにかかる力を小さくすることができるため、取り付け位置の自由度を広げることができる。
【0049】
したがって、実施形態3の転倒防止装置20は容易に取り付けることができ、家具1の転倒を防止することができる。
【0050】
<実施形態4>
実施形態4の転倒防止装置30は、図6に示すように、実施形態1の転倒防止装置10の2個を当接部11と連結部13の湾曲部分14とが反対方向に膨らむように連結したものである。つまり、一方の転倒防止装置10の当接部11と他方の転倒防止装置10の連結部13の直線部分15とを一体化し、一方の転倒防止装置10の連結部13の直線部分15と他方の当接部11とを一体化したものである。実施形態1と同様の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0051】
このような構成を有する転倒防止装置30は、当接部11と連結部13の湾曲部分14の一方が斜め後ろ側上方向に膨らむように湾曲させ、他方が斜め前側下方向に膨らむように湾曲させて、家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付けることができる。このように転倒防止装置30を家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付ける際、当接部11及び連結部13の湾曲部分14を弾性変形させ、上下方向の寸法を縮めた状態にする。そして、他方の当接部11の先端部分を家具1の背面1B側の上面1Uに配置し、一方の当接部11の先端部分を天井Cに当接させる。一方の当接部11は、家具1が前方向に傾いた際に家具1の上面1Uと天井Cとの間隔が狭くなる方向(家具1の背面1B方向)に向けて、天井Cから徐々に離れて配置される。また、他方の当接部11は、家具1が前方向に傾いた際に家具1の上面1Uと天井Cとの間隔が広くなる方向(家具1の正面1F方向)に向けて、家具1の上面1Uから徐々に離れて配置される。
【0052】
このように転倒防止装置30を家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付ける際、当接部11及び連結部13の湾曲部分14の上下方向に広がる方向の弾性力を利用し、転倒防止装置30を取り付けることができる。このため、この転倒防止装置30は家具1の上面1Uと天井Cとの間に容易に取り付けることができる。
【0053】
また、このように家具1の上面1Uと天井Cとの間に転倒防止装置30を取り付けた場合、地震等の揺れによって家具1が前方向に傾くと、それに伴って当接部11及び連結部13の湾曲部分14が弾性変形し、一方の当接部11の天井Cに当接する面積及び他方の当接部11の家具1の上面1Uに当接する面積が増加する。
【0054】
このように、この転倒防止装置30は、地震の揺れ等によって家具1が前方向に傾いた際、各当接部11及び各連結部13の湾曲部分14の弾性変形によって、家具1が傾く力を緩和することができる。さらに、この転倒防止装置30は、地震の揺れ等によって家具1が前方向に傾いた際、一方の当接部11の天井Cに当接する面積及び他方の当接部11の家具1の上面1Uに当接する面積が増加するため、天井C及び家具1の上面1Uにかかる力を分散することができる。このように、この転倒防止装置30は、天井C及び家具1の上面1Uにかかる力を小さくすることができるため、取り付け位置の自由度を広げることができる。
【0055】
したがって、実施形態4の転倒防止装置30は容易に取り付けることができ、家具1の転倒を防止することができる。
【0056】
また、この転倒防止装置30は、各当接部11の一端部の一側面に滑り止め部材12が貼り付けられているため、地震等の揺れによって家具1が前方向に傾いたとしても、各当接部11が家具1の上面1U又は天井Cに対してずれることなく取り付けることができる。このため、この転倒防止装置30は、地震の揺れ等が生じても家具1の上面1Uと天井Cとの間に取り付けられた状態が維持され、家具1の転倒を防止することができる。
【0057】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態1〜4に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1では、一つの転倒防止装置を当接部と連結部の湾曲部分とが斜め後側上方向に膨らむように湾曲させて取り付け、もう一つの転倒防止装置を当接部と連結部の湾曲部分とが斜め前側下方向に膨らむように湾曲させて取り付けたが、一つ又は複数個の転倒防止装置を当接部と連結部の湾曲部分とが同じ方向に膨らむように取り付けてもよい。
(2)実施形態1〜4では、当接部の一端部の一側面及び連結部の直線部分の一側面に滑り止め部材を貼り付けて、天井、家具の上面又は下面に当接させて取り付けたが、当接部の一端部又は連結部の直線部分を天井、家具の上面又は下面に接着したり、螺子止めしたりしてもよい。
(3)実施形態3では、高さ調整部が転倒防止装置の高さを3段階に調整することができるが、2段階、4段階以上又は無段階に調整することができるようにしてもよい。
(4)実施形態3では、転倒防止装置を家具の上面と天井との間に取り付けたが、家具の下面と床面との間に取り付けてもよい。
(5)実施形態4では、転倒防止装置を家具の下面と床面との間に取り付けたが、家具の上面と天井との間に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0058】
C…天井、F…床(設置面)、1,2…家具(物品)、11…当接部、13,23…連結部、25…高さ調整部
【要約】
【課題】容易に取り付けることができ、物品の転倒を防止することができる転倒防止装置を提供する。
【解決手段】転倒防止装置10は当接部11と連結部13とを備えている。当接部11は天井Cに当接する。この当接部11は天井Cから徐々に離れながら一方向に延びて配置される。連結部13は、一端部が当接部11の天井Cから離れた端部に連結され、他端部が床面F上に設置された家具1の上面1Uに設けられる。当接部11は、家具1の傾きに伴って弾性変形し、天井Cに当接する面積が増加する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6