(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933022
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】多種飲料販売機
(51)【国際特許分類】
G07F 13/00 20060101AFI20160526BHJP
B67D 1/08 20060101ALI20160526BHJP
F16K 31/70 20060101ALI20160526BHJP
F16K 11/04 20060101ALI20160526BHJP
A47J 31/46 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
G07F13/00 101
B67D1/08 A
F16K31/70 B
F16K11/04 B
A47J31/46
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-542968(P2014-542968)
(86)(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公表番号】特表2015-507238(P2015-507238A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】IB2012056492
(87)【国際公開番号】WO2013076634
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年9月7日
(31)【優先権主張番号】MI2011A002121
(32)【優先日】2011年11月22日
(33)【優先権主張国】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511020829
【氏名又は名称】サエス・ゲッターズ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ・ブテーラ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・アラクア
(72)【発明者】
【氏名】エマヌエーレ・ニコリーニ
【審査官】
宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−101042(JP,A)
【文献】
米国特許第05803354(US,A)
【文献】
特開2005−316560(JP,A)
【文献】
特開2008−75899(JP,A)
【文献】
米国特許第7832421(US,B2)
【文献】
米国特許第5579992(US,A)
【文献】
特表2010−531407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 13/00
A47J 31/46
B67D 1/08
F16K 11/04
F16K 31/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスタント飲料販売機であって、
第1の温度(T1)の水を供給する水基幹部(20)への接続部と、第1の温度(T1)よりも高い第2の温度(T2)の温水を供給しかつバルブ(40、40’)によって制御される少なくとも2つの流出部を有するヒータ(10)と、を備える給水システム(100)を含み、
前記ヒータ(10)の前記流出部の一方に接続される第1の水流入部(71;71’;710)と、前記水基幹部(20)に接続される第2の水流入部(72;72’;720)と、前記第1の温度(T1)より高くかつ前記第2の温度(T2)より低い選択された温度(T3’)の水を供給する流出部(76;76’;760)と、を有する少なくとも1つの自動温度調節形状記憶合金デバイス(70;700;700’)をさらに備えることを特徴とするインスタント飲料販売機。
【請求項2】
前記バルブ(40、40’)は、前記ヒータの流出部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインスタント飲料販売機。
【請求項3】
前記システムは、2つの自動温度調節形状記憶合金デバイスを備え、かつ前記ヒータ(10)は、3つの流出部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインスタント飲料販売機。
【請求項4】
前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(70;700;700’)は、形状記憶合金ばね(73;73’;730)を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインスタント飲料販売機。
【請求項5】
前記ばね(73;73’;730)は、少なくとも70wt%のニッケルおよびチタニウムを含むNi-Tiベースの合金から形成されることを特徴とする請求項4に記載のインスタント飲料販売機。
【請求項6】
前記Ni-Tiベースの合金は、銅も含むことを特徴とする請求項5に記載のインスタント飲料販売機。
【請求項7】
前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(70;700;700’)は、付勢要素(75;75’;750)と、開口を備える可動要素(74;74’;740)とを備えており、前記可動要素(74;74’;740)は、前記付勢要素(75;75’;750)と前記形状記憶合金ばね(73;73’;730)との間に配置されており、第1の均衡ポジションにおいて、前記可動要素(74;74’;740)の前記開口は、前記第2の流入部(72;72’;720)を介して第1の温度(T1)の水を供給する導管(60)と連通し、かつ第2の均衡ポジションにおいて、前記可動要素(74;74’;740)は、前記導管(60)と、前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(70;700;700’)のうち前記自動温度調節形状記憶合金ばね(73;73’;730)が配置される空間との連通を遮断することを特徴とする請求項4に記載のインスタント飲料販売機。
【請求項8】
前記第1および第2の流入部(710,720)は、前記第1および第2の流入部(710,720)からの流体が前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(70;700;700’)のうち付勢要素(750)が配置される空間に流入するように、形成されることを特徴とする請求項7に記載のインスタント飲料販売機。
【請求項9】
前記第1の水流入部(71’)は、前記第1の水流入部(71’)からの流体が前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(700)のうち前記形状記憶合金ばね(73’)が配置される空間に流入するように、形成されており、かつ前記第2の水流入部(72’)は、前記第2の水流入部(72’)からの流体が前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(700)のうち前記付勢要素(75’)が配置される空間に流入するように、形成されることを特徴とする請求項7に記載のインスタント飲料販売機。
【請求項10】
自動温度調節形状記憶合金デバイス(700’)は、自動温度調節形状記憶合金デバイス(700’)の作動中に一定に保たれる付加的かつ選択可能な付勢を提供するために、前記形状記憶合金ばね(730)に連結された荷重調節手段(701)をさらに備えることを特徴とする請求項4から請求項9のいずれか一項に記載のインスタント飲料販売機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多種の飲料を販売する機械に関するものであり、当該機械は、一連のあらかじめ規定された温度間に選択される温度に混合されたお湯を得るための水供給システムを含む。その温度は、混合される温水の温度に対応する上限値と、混合される冷水の温度に対応する下限値との間に含まれる。この多種飲料販売機において、この水供給システムで得られるお湯は、インスタント飲料を準備するために使用される。以下では、多種飲料販売機およびインスタント飲料販売機との用語は、いずれも同じ機械を意味する代替的な表現として使用される。
【背景技術】
【0002】
多種飲料販売機は幅広く使用されており、多くの公共の場所または職場に設けられている。これら飲料販売機は、例えばコーヒー、お茶、ココア、ミルクなどの幅広い種類のさまざまな飲料を用意するよう構成されている。飲料の準備は、本質的に、(コーヒーの場合)パーコレーションによってあるいは(コーヒー以外の多くの飲料の場合)インスタントのパウダー状の原料を溶かすことによって、所望の種類の飲料を得るよう、給湯器からお湯を供給することからなる。
【0003】
例えば、富士電機冷機株式会社により特許文献1として公開される特許があり、当該文献には、真空断熱加熱器内に貯留される温水を含む販売機が開示される。温水は、販売機内に設けられた既存の混合ボウルにそれぞれ接続される2つ以上の異なる流出部によって供給される。各混合ボウルは、選択された飲料の準備のために有用な可溶性パウダー状製品のうち、その一種類のみを混合するために使用される。
【0004】
お湯の温度を良好に制御することは、最終的に質の良い飲料を保証するために非常に重要である。なぜなら、お湯の理想的な温度は、お湯がパーコレーション処理に使用されるのかあるいは溶融処理に使用されるのかで変化し、かつもう一つの場合として販売機内に詰められた特定のインスタントのパウダー状の成分に関連しても変化するからである。そのため、この制御を改良するために、最近でもさまざまな試みが行われている。
【0005】
さらにそうした試みが、加熱器の電力消費量を最小にすると同時に水温の制御を向上させたとしても、特許文献1に開示された温水供給装置は1つだけの温度(つまり加熱器内に含まれる水の温度)の値の制御に焦点を当てており、そのため、引用文献1には、どのように、その中で使用されるさまざまな可溶性のパウダー状製品に関連して、水温を、混合ボウルそれぞれに最適な値に調整するかについての開示はない。
【0006】
代替的な公知の解決法として、富士電機リテイルシステムズにより特許文献2として開示される日本国特許出願がある。特許文献2に記載の発明は、所望の温度で作動するようそれぞれ設定された2つ以上の給湯器を使用することを含む。これは非常にシンプルな解決法であるが、いくつかの欠点を有する。実際に、システムが2つの加熱器を有する場合、製造コストが2倍になること、サイズが大きくなること、およびその作動中の電力消費量が大きくなることは明らかだ。
【0007】
事実、販売機の製造者には単一の加熱器を使用することが好まれる。この場合、例えば加熱器は、コーヒーの準備に必要な温度(つまりパーコレーションが用いられるならば100〜120℃)に設定され、かつ当該加熱器は、コーヒーのための流出部とパウダー状成分の溶融を必要とする飲料のための少なくとも1つの流出部との複数の流出部を有する。温水は、コーヒーの準備には「そのまま」使用される一方で、お茶、ミルク、ココアなどの可溶性飲料の準備には水基幹供給部(つまり導水ライン)からの冷水と混合される。
【0008】
温水および冷水の混合は、加熱器の放出部からの水と水基幹供給部からの水を集める「ピボットチューブ」として知られるマルチチャネル混合チューブを使用することによって達成される。そして混合された水は、このピボットチューブに設けられた電気バルブの1つを通ってこのピボットチューブから放出される。特定の種類の飲料が選択された場合、対応する電気バルブが開放されて、水を適切な混合ボウル(またはパーコレーションボウル)へ方向付けることができる。この解決法の大きな欠点として、導水ラインからの冷水の温度の変化が大きく、その温度は5〜40℃になり得るため、結果的に得られる水の温度の制御が不十分となることが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第04529531号公報
【特許文献2】特開2008−264486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来の装置の欠点を解決すること、つまり供給される水の効果的な温度制御を実現するのに適した水供給システムを備えるインスタント飲料販売機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、温度T
1の水を供給する水基幹部への接続部と、温度T
1より高い温度T
2の温水を供給するヒータであって、該ヒータから水を放出するためのバルブによって制御される少なくとも2つの放出部を有するヒータと、少なくとも1つの自動温度調節形状記憶合金デバイスとを備える水供給システムを含むインスタント飲料販売機からなり、当該自動温度調節形状記憶合金デバイスは、水基幹部への接続部に連結された第1の水流入部と、ヒータの流出部のうちの1つに接続された第2の水流入部と、温度T
1からT
2の範囲内に含まれるよう選択された温度T
3の水を供給する流出部と、を有する。
【0012】
以下の図面を参照しながら、本発明についてさらに説明する
。
[付記項1]
インスタント飲料販売機であって、
第1の温度(T1)の水を供給する水基幹部(20)への接続部(20)と、第1の温度(T1)よりも高い第2の温度(T2)の温水を供給しかつバルブ(40、40’)によって制御される少なくとも2つの流出部を有するヒータ(10)と、を備える給水システム(100)を含み、
前記ヒータ(10)の前記流出部の一方に接続される第1の水流入部(71;71’;710)と、前記水基幹部(20)に接続される第2の水流入部(72;72’;720)と、前記第1の温度(T1)からより高くかつ前記第2の温度(T2)のより低い範囲に含まれる選択された温度(T3’)の水を供給する流出部(76;76’;760)と、を有する少なくとも1つの自動温度調節形状記憶合金デバイス(70;700;700’)をさらに備えることを特徴とするインスタント飲料販売機。
[付記項2]
前記バルブ(40、40’)は、前記ヒータの流出部に配置されていることを特徴とする付記項1に記載のインスタント飲料販売機。
[付記項3]
前記システムは、2つの自動温度調節形状記憶合金デバイスを備え、かつ前記ヒータ(10)は、3つの流出部を有することを特徴とする付記項1または付記項2に記載のインスタント飲料販売機。
[付記項4]
前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(70;700;700’)は、形状記憶合金ばね(73;73’;730)を備えることを特徴とする付記項1から付記項3のいずれか一項に記載のインスタント飲料販売機。
[付記項5]
前記ばね(73;73’;730)は、少なくとも70wt%のニッケルおよびチタニウムを含むNi-Tiベースの合金から形成されることを特徴とする付記項4に記載のインスタント飲料販売機。
[付記項6]
前記Ni-Tiベースの合金は、銅も含むことを特徴とする付記項5に記載のインスタント飲料販売機。
[付記項7]
前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(70;700;700’)は、付勢要素(75;75’;750)と、開口を備える可動要素(74;74’;740)とを備えており、前記可動要素(74;74’;740)は、前記付勢要素(75;75’;750)と前記形状記憶合金ばね(73;73’;730)との間に配置されており、第1の均衡ポジションにおいて、前記可動要素(74;74’;740)の前記開口は、前記第2の流入部(72;72’;720)を介して第1の温度(T1)の水を供給する導管(60)と連通し、かつ第2の均衡ポジションにおいて、前記可動要素(74;74’;740)は、前記導管(60)からと、前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(70;700;700’)のうち前記自動温度調節形状記憶合金ばね(73;73’;730)が配置される空間との連通をを隔離遮断することを特徴とする付記項4に記載のインスタント飲料販売機。
[付記項8]
前記第1および第2の流入部(710,720)は、前記第1および第2の流入部(710,720)からの流体が前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(70;700;700’)のうち付勢要素(750)が配置される空間に流入するように、に対応して形成されることを特徴とする付記項7に記載のインスタント飲料販売機。
[付記項9]
前記第1の水流入部(71’)は、前記第1の水流入部(71’)からの流体が前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(700)のうち前記形状記憶合金ばね(73’)が配置される空間に流入するように、に対応して形成されており、かつ前記第2の水流入部(72’)は、前記第2の水流入部(72’)からの流体が前記自動温度調節形状記憶合金デバイス(700)のうち前記付勢要素(75’)が配置される空間に流入するように、に対応して形成されることを特徴とする付記項7に記載のインスタント飲料販売機。
[付記項10]
自動温度調節形状記憶合金デバイス(700’)は、自動温度調節形状記憶合金デバイス(700’)の作動中に一定に保たれる付加的かつ選択可能な付勢を提供するために、前記形状記憶合金ばね(730)に連結された荷重調節手段(701)をさらに備えることを特徴とする付記項4から付記項9のいずれか一項に記載のインスタント飲料販売機。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に基づくインスタント飲料販売機のための水供給システムの例示的な概略図である。
【
図2】
図1に示されたインスタント飲料販売機のための水供給システムに使用される適切な自動温度自動調整形状記憶合金デバイスの断面を例示的に示す図である。
【
図3】
図1に示されたインスタント飲料販売機のための水供給システムに使用される適切でありかつ代替的な実施形態に基づく自動温度自動調整形状記憶合金デバイスの断面を例示的に示す図である。
【
図4】
図1に示されたインスタント飲料販売機のための水供給システムに使用される適切な自動温度自動調整形状記憶合金デバイスの好ましい実施形態の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述の図面において、図示される要素の寸法および寸法比は、実際のスケールまたは比率と同じではなく、場合によっては図面を明瞭にするために変更されることがある。
【0015】
図1には、3種類の飲料、例えばコーヒーと2つの別の可溶性飲料などを販売する機械に有用な本発明に基づくインスタント飲料販売機の水供給システム100を例示的かつ概略的に図示する。ヒータ10には、導管30を介して水基幹供給チューブ20からの温度T
1の冷水が供給される。ヒータ10は、温度T
1より高くかつ販売機で選択可能な飲料の中で最も高い温度を要求する飲料(最も高い温度の飲料)の準備に必要な温度T
2の水を供給する。
【0016】
必要であれば、お湯は、制御バルブ40、40’、40”の1つを介して、導管50、50’、50”を使用して放出される。好ましくは制御バルブ40、40’、40”は、ヒータ10の流出部に配置される。
【0017】
飲料を最高温度で準備する必要があれば、温水は「そのまま」(つまりT
3=T
2)でバルブ40および導管50を通ってパーコレーションボウルまたは混合ボウルに供給される。温度を下げることが必要な場合には、制御バルブ40’、40”の一方を介して放出された温水は、関連する導管50’、50”を通って自動温度調節形状記憶合金デバイス70’、70”に供給される。自動温度調節形状記憶合金デバイス70’、70”では、温度T
2の水は、共用の供給チューブ20への関連する接続導管60、60’を通って供給される(温度T
1の)冷水と混合される。所望の温度T
3’またはT
3”に混合された水は、続いて関連する導管80、80’を用いて適切な混合ボウルに供給される(T
3’およびT
3”は、T
1からT
2の異なる温度である)。
【0018】
図1の水供給システム100は、単に例示的な本発明に基づく好ましい実施形態であり、同等の変更を含み得る。例えば接続導管60および60’は単一の供給パイプラインによって置換されてもよく、同様のことが導管50、50’、50”にも適用されてもよい、つまり同じ導管がさらに多くの自動温度調節形状記憶合金デバイスを提供してもよい。
【0019】
また、他の共通の変形例が、
図1ではタンク状の形態および構造を有するよう図示されたヒータ10の構造にも適用される。なおヒータ10は、ヘッド付パイプ、または水の流動経路において適切に電力供給されかつ制御される例えば蛇行形態の加熱要素とすることもできる。
【0020】
「自動温度調節形状記憶合金デバイス(thermostatic shape memory alloy device)」との表現は、温度に応じて要素を作動させるような形状記憶合金要素を使用したサーモスタットデバイスを意味している。
【0021】
形状記憶合金は、「SMA」の略語で当技術分野において一般的に知られている。さまざまなSMAの組成物が公知であるが、特に、ニッケルおよびチタンが合金の少なくとも70wt%であるものを意味するNi-Ti組成に基づくSMAが最も使用されている。最も一般的なものは、ニッケルを重量で好ましくは54から55.5%含み、その他がチタンである組成物である(少量の他の成分も使用可能であり、典型的にはそのすべての含有量が1wt%未満である)。
【0022】
他の有用な合金は、1つ以上の他の要素の量を追加したものが考えられる。これに関して、当技術分野において認識される他の合金は、米国特許第4144057号明細書に開示される合金などのNi-Ti-Cu合金である。
【0023】
Ni-Ti合金からなる機械部分は、合金の微細構造における相転移(phase transition)を引き起こす温度変化の結果として、2つの形状間で相互変化可能であることが知られる。より高い温度で安定する相はオーステナイトと呼ばれており、一方でより低い温度で安定する相はマルテンサイトと呼ばれる。2つの相間の変態は、4つの温度値によって特性付けられる、温度−変形の図におけるヒステリシスサイクルに基づいて生じる:加熱時には、マルテンサイト相が安定している低温を起点として、オーステナイト相への変態が始まる温度Asに到達し、続いてオーステナイトへの変態が完了する温度Af(Af>As)に到達する;冷却時には、オーステナイト相が安定している温度を起点として、マルテンサイト相への変態が始まる温度Msに到達し、その後、そうした変態が完了する温度Mf(Mf<Ms)に到達する。
【0024】
最も一般的な構造のうちの1つにおいては、SMA要素は、ばねを形成するようなコイル状ワイヤの形態で使用される。なぜなら、この形態は、SMA要素の長さの変動を引き起こすSMA合金推移変化で生じる力の活用に最も有用な形態の1つであるからである。また、例えばばね状構造の形状記憶要素へ負荷をかけることは、かけられる負荷あるいは一般に規定されるようなバイアスを変更することによって、本件の出願人の名義の国際公開第2009/000859号パンフレットに開示されるようにその作動温度をシフトして変更することができる。それゆえ、この機構は、混合された水の温度のための設定手段として使用できる。
【0025】
図2には、本発明に基づくインスタント飲料販売装置の水供給システムへの設置に適した自動温度調節形状記憶合金デバイス70の断面を例示的かつ概略的に図示する。このデバイスは、導管50’を介してヒータ10の流出部に接続される第1の流入部71と、導管60を介して水基幹供給部に接続される第2の流入部72と、を有する。形状記憶合金ばね73および可動要素74がデバイス内に設けられる。この可動要素74の実際の位置は、形状記憶合金ばね73および付勢要素75によって当該可動要素74に付与される応力の結果であり、かつ通常作動時におけるその静止位置は、形状記憶合金ばね73と付勢ばね75とによって付与される応力のバランスによって決定される。
【0026】
形状記憶転移温度Asよりも高い温度T
2の温水が第1の流入部71を通って流入すると、形状記憶合金ばね73は、オーステナイト相転移するため、形状記憶合金ばね73は、
図2に図示されるポジションへ可動要素74を移動させて、デバイスの流出部76を介して放出される水に要求される温度T
3’に到達するよう、適切な量の温度T
1の冷水を第2の流入部72を介して流入できるようにする。
【0027】
間隔の狭い飲料の温度設定を可能にする上記ヒステリシスサイクル(つまりヒステリシスサイクルの幅の関数)により、水温の調整のために自動温度調節形状記憶合金デバイスを販売機に使用することが特に有利であることに留意されたい。これにより、システムは単純化され、また、温度が、材料のヒステリシスカーブによってかつ付与されるバイアスによって決定される所望の範囲から外れた場合にのみ、自動温度調節SMAデバイスは、使用される材料の特性を用いて調整を行うため、連続調整が回避され、それによって、システムにおけるストレスを少なく見せ(作動の回数を減らす)かつ実施されるエネルギーを消費させない不連続な調整が実現される。したがって、必要な場合にのみ作動する受動的でスマートなシステムが得られる。
【0028】
図3には、本発明に基づくインスタント飲料販売機の水供給システムへの挿入に適した自動温度調節形状記憶合金デバイス700の別の実施形態の断面が例示的かつ概略的に示される。また、この場合において、ばね73’の形態の形状記憶要素が、導管50’を介してヒータ10の流出部に接続される流入部71’に直接接続されており、一方で、ばね75’の形態の付勢要素が、導管60を介して水基幹供給部に接続される第2の流入部72’に直接接続されている。この形状記憶デバイス700は、可動要素74’を含む。可動要素74’の実際の位置は、形状記憶要素73’と付勢要素75’とによって可動要素74’に付与される応力の結果である。
【0029】
この実施形態はまた、可動要素74’のうち水基幹供給部と接触する部分を密閉する密閉O-リング77’を含む。この構成は、電動バルブを水基幹供給チューブに設置することを必要とせずに、形状記憶デバイス自体が冷水流入部を制御できるようにする。
【0030】
この形状記憶合金デバイスにおいて、異なる温度の水の混合は、可動要素74’を適切な量だけ左へ移動させる要素73’の形状記憶転移によって生じる応力に起因して、温度T
2の温水が流入部71’を通じてデバイス700に流入した場合にのみ可能となり、流入部72’を通って流入した冷水は、デバイスの流出部76’を通って放出される水に関して所望される温度T
3’に到達するように、お湯と混ざり合う。
【0031】
本発明に基づくインスタント飲料販売機を用いると、温水の消費量がより少なくなること(それは異なる温度の水を混合することによって作られる飲料に関して30%までとなり得る)、結果として、ヒータ10の対応する電力消費量の低減をもたらすことが観察された。
【0032】
第2の態様およびさらなる利点として、本発明によって実現される改良点は、現在の季節に関連する小さな変更のために温度T
3’を容易にかつ細かく調節できることにある:実際に、冬季に比べて夏季の間に飲料の温度を下げることは、最終消費者によるその評価を上げることができる。
【0033】
これは、上述の国際公開第2009/000859号パンフレットに開示されるように付勢負荷を利用してなされてもよい。
【0034】
このタイプの構成は、
図4に図示される自動温度調節形状記憶合金デバイスの好ましい実施形態の断面図に図示される。この場合において、自動温度調節形状記憶合金デバイス700’は、例えばばねである付勢要素750に加えて形状記憶合金ばね730に連結された荷重調整手段701を含む。形状記憶合金ばね730の応力と、付勢要素750の応力とのバランスは、可動要素740の位置を決定する。可動要素740は、(付勢負荷に起因するそのシフト分を考慮して)デバイス700’へ流入する水の温度が金属転移温度よりも高い場合に、SMAばねを伸長させるSMA転移の結果として右側に移動する。要素740の変位によって、水の基幹供給のための流入部720は、可動要素740の中央開口と整列させられ、それにより、温度T
1の低温の水と、流入部710からの温度T
2の高温の水との混合が可能となる。そうした混合は、流出部760から放出される水の温度T
3’を決定する。
【0035】
図4に図示される実施形態において、流入部710および720は、自動温度調節デバイス700’の両側に形成されており、いずれも付勢ばね750に対応して異なる温度の水を受容する。これは、温水と冷水とをより均一に混合するという利点およびデバイスのより安定した作動を実現する(黒い円770、770’は、水漏れに対する可動要素740のシーリング性を向上させるO-リングを示す)。
【0036】
上述の自動温度調節形状記憶合金デバイスは、好ましいものであり、かつインスタント飲料販売機の水分配システムに挿入しやすいより有用な構成であるが、自動温度自動調整形状記憶合金デバイスの他の構成も適切に使用されてもよく、かつ例えば互いに隣接して配置された2つの形状記憶合金ばねを用いる自動温度調節デバイスなどが本発明に含まれてもよい。
【0037】
本発明に基づくインスタント飲料販売機は、既存の販売機を改良することによっても実現できる。そうした改良は、1つ以上の形状記憶合金混合デバイスを単純に追加することによって、かつ水供給パイプの必要な分岐を形成することによって実施される。
【符号の説明】
【0038】
10 ヒータ
20 水基幹供給チューブ
30、50、50’、60、60’、80、80’ 導管
40、40’ 制御バルブ
70、70’、700、700’ 自動温度調節形状記憶合金デバイス
71、71’、710 第1の流入部
72、72’、720 第2の流入部
73、73’、730 形状記憶要素
74、74’、740 可動要素
75、75’、750 付勢要素
76、76’、760 流出部
77’、770、770’ O−リング
100 インスタント飲料販売機の水供給システム
701 荷重調整手段