特許第5933023号(P5933023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933023
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】スライドレール機構及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20160526BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B60N2/08
   B60N2/06
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-543114(P2014-543114)
(86)(22)【出願日】2012年10月26日
(86)【国際出願番号】JP2012077791
(87)【国際公開番号】WO2014064848
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598106326
【氏名又は名称】トヨタ車体精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】金子 好信
(72)【発明者】
【氏名】木澤 豊
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 貴行
(72)【発明者】
【氏名】小見山 斉
(72)【発明者】
【氏名】中村 素久
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−111378(JP,A)
【文献】 特開2008−143383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアに固定されるロアレールと、
該ロアレールに対して相対移動可能に支持されるアッパレールと、
前記ロアレールに設けられた係合部に係合可能な被係合部を有し、該被係合部が前記係合部に係合する係合位置と、前記被係合部が前記係合部から離脱した離脱位置との間を移動可能な状態で前記アッパレールに取り付けられたロック部材と、
該ロック部材が前記係合位置に位置するように前記ロック部材を付勢するバネ部材と、
乗員の操作により、前記バネ部材の付勢力に抗して前記ロック部材を前記離脱位置に位置させる操作ハンドルと、を備え、
前記操作ハンドルの外表面には、前記バネ部材の一部分が掛け止めされる掛け止め溝が形成され、
前記ロック部材は、
前記操作ハンドルのうち、前記掛け止め溝が形成された部分を保持する保持部と、
該保持部に形成され、前記バネ部材のうち、前記掛け止め溝に掛け止めされた前記一部分と隣接した部分を係止する係止溝と、
前記保持部から突出形成され、前記係止溝の開口を狭めることにより前記バネ部材の前記係止溝からの脱落を規制する規制部と、を備え
前記保持部は、対向する上板部と底板部と、該底板部及び前記上板部を連結する側板部と、を備え、
前記操作ハンドルのうち、前記掛け止め溝が形成された部分は、前記上板部と前記底板部と前記側板部とで囲まれた保持領域内に保持され、
前記側板部の上面には、前記上板部と連結された部分と異なる部分において、下方に窪んだ前記係止溝と、該係止溝を介して前記上板部と反対側に前記規制部が設けられ、
該規制部は、前記係止溝の開口を狭めるように上方に突出し、かつ、少なくとも一部分が前記上板部の下端よりも上方に突出していることを特徴とするスライドレール機構。
【請求項2】
前記規制部は、前記上板部に向って前記係止溝の開口を狭めるように突出していることを特徴とする請求項1に記載のスライドレール機構。
【請求項3】
前記保持部は、前記操作ハンドルを挿入する側の端部から突出形成され、前記操作ハンドルのうち、前記掛け止め溝が形成された部分を前記保持領域内に案内する案内部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライドレール機構。
【請求項4】
前記操作ハンドルの外表面のうち、前記アッパレールに近い側の端部上面には、前記掛け止め溝と、該掛け止め溝よりも前記アッパレールに近い側に傾斜面とが形成され、
該傾斜面は、前記掛け止め溝から前記アッパレールに近い側の一端に向う方向において、下方に傾斜していることを特徴とする請求項1乃至いずれか記載のスライドレール機構。
【請求項5】
前記操作ハンドルは、前記ロック部材と一体的に回動可能な状態で前記保持部に保持され、
前記ロック部材は、前記保持部と前記被係合部との間に設けられた回動軸を備え、
該回動軸は、前記操作ハンドルの回動と連動して、前記ロック部材が前記アッパレールに対して回動可能な状態で該アッパレールに軸支されていることを特徴とする請求項1乃至いずれか記載のスライドレール機構。
【請求項6】
前記ロック部材は、該ロック部材のうち、前記保持部を備える部分が、前記アッパレールの前記操作ハンドル側の端部から突出するようにして前記アッパレール内に挿設されていることを特徴とする請求項1乃至いずれか記載のスライドレール機構。
【請求項7】
請求項1乃至いずれか記載のスライドレール機構を備えることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドレール機構及び車両用シートに係り、特に、ロアレールに対するアッパレールの相対移動を規制するロック部材を有するスライドレール機構及びスライドレール機構を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体フロアに対してシート本体を前後方向にスライド移動可能なスライドレール機構を備えた車両用シートが知られている。
スライドレール機構は、車体フロアに固定されるロアレールと、シート本体に固定され、ロアレールに相対移動可能に支持されるアッパレールと、ロアレール及びアッパレールの相対移動を規制するロック部材とを主に備えている。ロック部材を有するスライドレール機構として、乗員がハンドルを操作することで、ロアレールに対するアッパレールの相対移動をロック状態又はロック解除状態にする技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のシートスライド装置は、図6に示すように、ロアレール110と、アッパレール120と、ロックレバー130と、ハンドル150とを主に備えており、ハンドル150の操作に伴い、ロアレール110のロック孔116に対して、アッパレール120の開放孔125を介して、ロックレバー130のロック爪136を係脱可能に連結させる構成となっており、ロアレール110に対するアッパレール120の相対移動を規制することができる。
ハンドル150は、ロックレバー130の連動支持部140内に挿設されており、ロックレバー130に対して相対回動可能に支持されている。ロックレバー130は、アッパレール120内に挿設されており、ハンドル150の回動と連動して、アッパレール120に対して回動可能に支持されている。
【0004】
また、ロックレバー130は、ハンドル150を付勢するコイルバネ137を備えており、コイルバネ137の一部分が、ハンドル150の外表面に形成された掛け止め溝151に掛け止めされ、コイルバネ137の一部分と隣接した部分が、連動支持部140に形成された係止溝146に係止されている。コイルバネ137は、ロック孔116にロック爪136を係合させる位置にハンドル150を付勢している。
このように、ハンドル150は、コイルバネ137によってアッパレール120のロック状態側に付勢されて構成されているため、ロック機構の解除防止機能を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−111378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のようなシートスライド装置は、コイルバネ137の一部分をハンドル150の掛け止め溝151に掛け止めし、コイルバネ137の一部分と隣接した部分をロックレバー130の係止溝146に係止させて構成されているものの、このコイルバネ137の保持位置のずれを防止する形状、配置については特に配慮されていなかった。そのため、乗員による急激なハンドル操作や車両衝突時等の衝撃荷重によって、コイルバネ137が掛け止め溝151及び係止溝146の正規保持位置からずれてしまい、ロック機構のバネの付勢力が低下する恐れがあった。
そこで、ハンドル及びロック部材に対するコイルバネの位置ずれ防止及び脱落防止機能を向上させたスライドレール機構が望まれていた。
また、特許文献1のようなシートスライド装置は、ロック機構を構成するハンドル150とロックレバー130を組み立てる際に、ハンドル150をロックレバー130に挿設させると同時に、ハンドル150に備えられた掛け止め溝151に、ロックレバー130に備えられたコイルバネ137の一部分を掛け止めする組立作業が必要となるため、組立作業性を一層向上させたスライドレール機構が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ロアレールに対するアッパレールの相対移動を規制するロック機構と、ロック機構を解除するための操作ハンドルを備える構成において、操作ハンドルを付勢するバネ部材の位置ずれ防止及び脱落防止機能を向上させたスライドレール機構及び車両用シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、組立作業性を向上させたスライドレール機構及び車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明のスライドレール機構によれば、車体フロアに固定されるロアレールと、該ロアレールに対して相対移動可能に支持されるアッパレールと、前記ロアレールに設けられた係合部に係合可能な被係合部を有し、該被係合部が前記係合部に係合する係合位置と、前記被係合部が前記係合部から離脱した離脱位置との間を移動可能な状態で前記アッパレールに取り付けられたロック部材と、該ロック部材が前記係合位置に位置するように前記ロック部材を付勢するバネ部材と、乗員の操作により、前記バネ部材の付勢力に抗して前記ロック部材を前記離脱位置に位置させる操作ハンドルと、を備え、前記操作ハンドルの外表面には、前記バネ部材の一部分が掛け止めされる掛け止め溝が形成され、前記ロック部材は、前記操作ハンドルのうち、前記掛け止め溝が形成された部分を保持する保持部と、該保持部に形成され、前記バネ部材のうち、前記掛け止め溝に掛け止めされた前記一部分と隣接した部分を係止する係止溝と、前記保持部から突出形成され、前記係止溝の開口を狭めることにより前記バネ部材の前記係止溝からの脱落を規制する規制部と、を備え、前記保持部は、対向する上板部と底板部と、該底板部及び前記上板部を連結する側板部と、を備え、前記操作ハンドルのうち、前記掛け止め溝が形成された部分は、前記上板部と前記底板部と前記側板部とで囲まれた保持領域内に保持され、前記側板部の上面には、前記上板部と連結された部分と異なる部分において、下方に窪んだ前記係止溝と、該係止溝を介して前記上板部と反対側に前記規制部が設けられ、該規制部は、前記係止溝の開口を狭めるように上方に突出し、かつ、少なくとも一部分が前記上板部の下端よりも上方に突出していること、により解決される。
【0009】
このように、ロック部材は、保持部から突出形成され、係止溝の開口を狭めることによりバネ部材の係止溝からの脱落を規制する規制部を備えるため、バネ部材の脱落を防止でき、ロック部材の機能性を向上させることができる。従って、ロアレールに対するアッパレールの相対移動を規制するロック部材を備え、このロック部材に設けられ、操作ハンドルを付勢するバネ部材の位置ずれ防止及び脱落防止機能を向上させたスライドレール機構を提供することができる。
また、操作ハンドルのうち、掛け止め溝が形成された部分は、上板部と底板部と側板部とで囲まれた保持領域内に保持されているため、操作ハンドルをロック部材の保持部に安定して保持させることができ、ロック機構の機能性を向上できる。
また、側板部に設けられた係止溝の開口は、開口の一端側に設けられた規制部が、上方に突出することにより開口を狭める構成となっているため、係止溝に係止されたバネ部材の脱落防止機能を一層向上させることができる。
また、係止溝の開口の一端側に設けられた規制部の少なくとも一部分が、開口の他端に設けられた上板部の下端よりも上方に突出しているため、係止溝の開口を一層狭める構成となり、係止溝に係止されたバネ部材の脱落を一層防止することができる。
【0010】
このとき、前記規制部は、前記上板部に向って前記係止溝の開口を狭めるように突出していると良い。
このような構成となっているため、係止溝に係止されたバネ部材の脱落防止機能を一層向上させることができる。
【0011】
このとき、前記保持部は、前記操作ハンドルを挿入する側の端部から突出形成され、前記操作ハンドルのうち、前記掛け止め溝が形成された部分を前記保持領域内に案内する案内部を備えると良い。
このように、保持部は、操作ハンドルのうち、掛け止め溝が形成された部分を保持領域内に案内する案内部を備えるため、ロック機構を構成する操作ハンドルとロック部材を組み立てる際に、操作ハンドルが案内部に案内されてロック部材の保持部に挿設でき、組立作業が容易になる。
【0014】
このとき、前記操作ハンドルの外表面のうち、前記アッパレールに近い側の端部上面には、前記掛け止め溝と、該掛け止め溝よりも前記アッパレールに近い側に傾斜面とが形成され、該傾斜面は、前記掛け止め溝から前記アッパレールに近い側の一端に向う方向において、下方に傾斜していると良い。
このように、操作ハンドルの外表面の端部上面には、掛け止め溝と、この掛け止め溝からアッパレールに近い側の一端に向う方向に下方傾斜している傾斜面とが設けられているため、操作ハンドルの掛け止め溝にバネ部材の一部分を掛け止めする際に、バネ部材の一部分が傾斜面によって案内されることとなり、組立作業が容易になる。
【0015】
このとき、前記操作ハンドルは、前記ロック部材と一体的に回動可能な状態で前記保持部に保持され、前記ロック部材は、前記保持部と前記被係合部との間に設けられた回動軸を備え、該回動軸は、前記操作ハンドルの回動と連動して、前記ロック部材が前記アッパレールに対して回動可能な状態で該アッパレールに軸支されていると良い。
このように、ロック部材は、操作ハンドルの回動と連動して、アッパレールに対して回動可能な状態で軸支されているため、操作ハンドルの操作によってロック部材を回動させて、ロアレールに対するアッパレールの相対移動を規制するコンパクトな構成となる。
【0016】
このとき、前記ロック部材は、該ロック部材のうち、前記保持部を備える部分が、前記アッパレールの前記操作ハンドル側の端部から突出するようにして前記アッパレール内に挿設されていると良い。
このように、操作ハンドルは、アッパレール内に挿設されたロック部材のうち、アッパレールから突出した保持部に保持されているため、操作ハンドルがロック部材に対して回動する際に、操作ハンドルとアッパレールとが当接しない構成となる。
従って、操作ハンドルとロック部材の相対回動範囲を広げることができ、ロック状態維持機能を高めることができる。
【0017】
このとき、上記のスライドレール機構を備える車両用シートとして構成しても良い。
このように構成することにより、ロアレールに対するアッパレールの相対移動を規制するロック機構を有し、このロック機構に設けられ、操作ハンドルを付勢するバネ部材の脱落防止機能を向上させたスライドレール機構を備えた車両用シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、ロック部材は、保持部から突出形成され、係止溝の開口を狭めることによりバネ部材の係止溝からの脱落を規制する規制部を備えるため、バネ部材の脱落を防止でき、ロック部材の機能性を向上させることができる。従って、ロアレールに対するアッパレールの相対移動を規制するロック部材を備え、このロック部材に設けられ、操作ハンドルを付勢するバネ部材の位置ずれ防止及び脱落防止機能を向上させたスライドレール機構を提供することができる。
また、操作ハンドルのうち、掛け止め溝が形成された部分は、上板部と底板部と側板部とで囲まれた保持領域内に保持されているため、操作ハンドルをロック部材の保持部に安定して保持させることができ、ロック機構の機能性を向上できる。
また、側板部に設けられた係止溝の開口は、開口の一端側に設けられた規制部が、上方に突出することにより開口を狭める構成となっているため、係止溝に係止されたバネ部材の脱落防止機能を一層向上させることができる。
また、係止溝の開口の一端側に設けられた規制部の少なくとも一部分が、開口の他端に設けられた上板部の下端よりも上方に突出しているため、係止溝の開口を一層狭める構成となり、係止溝に係止されたバネ部材の脱落を一層防止することができる。
請求項2の発明によれば、係止溝に係止されたバネ部材の脱落防止機能を一層向上させることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、保持部は、操作ハンドルのうち、掛け止め溝が形成された部分を保持領域内に案内する案内部を備えるため、ロック機構を構成する操作ハンドルとロック部材を組み立てる際に、操作ハンドルが案内部に案内されてロック部材の保持部に挿設でき、組立作業が容易になる。
請求項4の発明によれば、操作ハンドルの外表面の端部上面には、掛け止め溝と、この掛け止め溝からアッパレールに近い側の一端に向う方向に下方傾斜している傾斜面とが設けられているため、操作ハンドルの掛け止め溝にバネ部材の一部分を掛け止めする際に、バネ部材の一部分が傾斜面によって案内されることとなり、組立作業が容易になる。
請求項5の発明によれば、ロック部材は、操作ハンドルの回動と連動して、アッパレールに対して回動可能な状態で軸支されているため、操作ハンドルの操作によってロック部材を回動させて、ロアレールに対するアッパレールの相対移動を規制するコンパクトな構成となる。
請求項6の発明によれば、操作ハンドルは、アッパレール内に挿設されたロック部材のうち、アッパレールから突出した保持部に保持されているため、操作ハンドルがロック部材に対して回動する際に、操作ハンドルとアッパレールとが当接しない構成となる。
従って、操作ハンドルとロック部材の相対回動範囲を広げることができ、ロック状態維持機能を高めることができる。
請求項7の発明によれば、上記の効果を奏するスライドレール機構を備えた車両用シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る車両用シートの概略斜視図である。
図2】本発明に係るスライドレール機構の概略斜視図である。
図3図2のスライドレール機構を分解して示した概略斜視図である。
図4】(a)は、図2のスライドレール機構を側面側から見た部分断面図であり、(b)は、平面側から見た部分断面図である。
図5図2のスライドレール機構のうち、保持部に操作ハンドルが挿設された状態を示す部分側面図である。
図6】従来例のシートスライド装置を備えた車両用シートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができる。
【0024】
本実施形態は、ロアレールに対するアッパレールの相対移動を規制するロック部材と、アッパレールの相対移動をロック状態に付勢するバネ部材とを有し、ロック部材に取り付けられ、バネ部材の一部分を係止する係止溝に対して、この係止溝の開口を狭める規制部を設けたことを特徴とするスライドレール機構を備えた車両用シートの発明に関するものである。
本実施形態の車両用シートSは、図1に示すように、シートクッション1と、シートバック2と、ヘッドレスト3とを備えるシート本体と、シート本体を前後方向に移動可能な状態で車体フロアに取り付けるためのスライドレール機構4とから構成されている。
なお、車両用シートSのシートバック2に対して乗員が着座する側が前方側となる。
【0025】
シートクッション1は、乗員を下方から支持する着座部であって、骨格となる不図示のクッションフレームに、クッションパッド1aを載置して、クッションパッド1aの上から表皮1bによって被覆されて構成されている。
シートバック2は、乗員の背中を後方から支持する背もたれ部であって、骨格となる不図示のシートバックフレームに、クッションパッド2aを載置して、表皮2bで被覆されて構成されている。
ヘッドレスト3は、乗員の頭を後方から支持する頭部であって、芯材となる不図示のピラーにクッションパッド3aを配設させて表皮3bで被覆して形成される。
【0026】
スライドレール機構4は、上下方向においてシート本体と車体フロアとの間に配設されており、図2に示すように、車体フロアに固定されるロアレール10と、ロアレール10に対して相対移動可能に支持され、シートクッション1に固定されるアッパレール20と、アッパレール20の内部に挿設され、アッパレール20の相対移動を規制するロック部材30と、ロック部材30に係止され、アッパレール20を相対移動不能なロック状態に維持するバネ部材37と、ロック部材30の一端に支持された操作ハンドル50と、から主に構成されている。
【0027】
ロアレール10は、金属材料から形成された長尺な中空体からなり、左右方向に所定の間隔をおいて一対に配置され、前端部及び後端部が開口となるように構成されている。
なお、ロアレール10の材質は、金属材料に限定されることなく、樹脂材料等、他の材料を用いても良い。
【0028】
ロアレール10は、図3に示すように、車体フロアに固定される底板部11と、底板部11の左右両端部から上方に屈曲された外側板部12と、左右の外側板部12の上端部から左右内側に屈曲された上板部13と、左右の上板部13から下方に屈曲された内側板部14とを備えている。
ロアレール10には、底板部11と、左右の外側板部12と、左右の上板部13と、左右の内側板部14とで囲まれた収容室15が設けられており、収容室15は、左右の内側板部14の間に形成された開口を備えている。
左右の内側板部14の下方端部には、略中央部分から前方部分にわたって上方に切り欠かれた略コ字状からなるロック溝16が複数設けられている。
なお、ロック溝16が、特許請求の範囲に記載の係合部に相当する。
【0029】
アッパレール20は、ロアレール10の収容室15内に挿入された状態でロアレール10に沿ってスライド移動する長尺体からなり、金属材料等から形成されている。
アッパレール20は、図3に示すように、シートクッション1に連結される上板部21と、上板部21の左右両端部から下方へ屈曲された内側板部22と、左右の内側板部22の下端部から左右外側に屈曲し、上方に突出された案内板部23とを備えている。
アッパレール20には、上板部21と左右の内側板部22とで囲まれた収容室24と、内側板部22と案内板部23との間に形成された収容溝25とが設けられており、収容室24は下方に開放されており、収容溝25は上方に開放されて構成されている。
【0030】
上板部21の前方部分には、下方に切り起こされたストッパ部26が形成されており、ストッパ部26は、収容室24内に入り込むように構成されている。
左右の内側板部22及び案内板部23の下方端部には、前後方向の略中央部分に上方に切り欠かれた略コ字状からなるロック孔27が複数設けられている。
左右の内側板部22の上下方向の中央であって、前後方向においてストッパ部26とロック孔27の間には、左右方向に貫通した貫通穴28が設けられている。
【0031】
アッパレール20は、図3に示すように、ロアレール10の収容室15内に挿入され、上板部21及び内側板部22が、収容室15の開口から上方に突出し、案内板部23が、収容室15のうち、外側板部12と内側板部14の間に嵌め込まれるように構成されている。また、ロアレール10の内側板部14は、アッパレール20の収容溝25内に嵌め込まれるように構成されている。
ロアレール10の左右の外側板部12と、アッパレール20の左右の案内板部23との間にはガイド29が嵌め込まれ、ガイド29は、ロアレール10に対してアッパレール20を前後方向にスライド移動可能にロアレール10及びアッパレール20を支持している。
【0032】
ロック部材30は、図3に示すように、金属材料等から形成された長尺体であって、ロアレール10に対してアッパレール20を相対移動不能なロック状態から、相対移動可能なロック解除状態に切り替えるために動作する部材からなり、アッパレール20の収容室24内に挿設されている。
ロック部材30は、ロック部材30の左右側方に配設され、アッパレール20の左右の内側板部22に隣接して前後方向に延出した右側板部31及び左側板部32と、右側板部31及び左側板部32の後方端部の上面に架設された略平板状の上板部33と、略中央部分に設けられ、右側板部31及び左側板部32から左右外側に突出した凸状の回動軸34と、回動軸34に隣接した前方部分に設けられ、左側板部32を左右内側に湾曲させて形成した略平板状のストッパ板部35と、右側板部31及び左側板部32の後方端部であって、右側板部31及び左側板部32から左右外側に突出した複数のロック爪36と、右側板部31の前方端部であって、左側板部32よりも前方側に延出させた部分に設けられた縦断面略コ字状の保持部40と、から主に構成されている。
【0033】
回動軸34は、略円形状の凸部からなり、アッパレール20の貫通穴28に挿嵌して軸支されることにより、ロック部材30がアッパレール20に対して回動可能となる。
詳しく言うと、図4(a)、(b)に示すように、ロック部材30がアッパレール20の収容室24内に挿入された後、アッパレール20のストッパ部26を下方に折曲させて、右側板部31及びストッパ板部35の間の間隙に挿入して係合させることにより、右側板部31及びストッパ板部35が左右外側に広がる方向に力が加わることとなる。そして、回動軸34が貫通穴28に挿嵌されて軸支される。
【0034】
ロック爪36は、図3に示すように、アッパレール20のロック孔27を貫通してロアレール10のロック溝16に係脱可能に係合される部材である。
ロック爪36がロック溝16に係合する係合位置にあるとき、アッパレール20がロアレール10に対してロック状態となり、ロック爪36がロック溝16から離脱する離脱位置にあるとき、アッパレール20はロアレール10に対してアンロック状態となるように構成されている。
ロック爪36は、略矩形板状に形成された4つの左ロック爪36aと、略矩形板状に形成され、左右外側の端部が互いに連結された1つの右ロック爪36bと、から構成されている。
なお、ロック爪36が、特許請求の範囲に記載の被係合部に相当する。
【0035】
ロック部材30が回動軸34を中心として回動することによって、ロック爪36は、ロック溝16に係合する係合位置と、ロック溝16から離脱する離脱位置との間を移動することができる。すなわち、ロック爪36は、回動軸34を中心として上方に回動するとき、ロック孔27を貫通した状態でロック溝16に係合され、回動軸34を中心として下方に回動するとき、ロック孔27を貫通した状態でロック溝16から離脱するように構成されている。
【0036】
バネ部材37は、公知なねじりコイルバネであって、ロック爪36がロック溝16に係合する係合位置に位置するようにロック部材30を付勢している。
バネ部材37は、図3に示すように、バネ本体部37aと、バネ本体部37aから前方側及び後方側にそれぞれ延出した前方バネ腕部37b、後方バネ腕部37cと、から構成されており、ロック部材30のうち、回動軸34と保持部40との間に配置されている。
バネ本体部37aは、アッパレール20の内側板部22とロック部材30の右側板部31の間に嵌めこまれており、ロック部材30の左右方向の移動を規制すると共に、ロック部材30の変形を防止する機能を果たしている。
前方バネ腕部37bは、アッパレール20の前方端部から突出し、保持部40に掛け止めされている。後方バネ腕部37cは、右側板部31の上面に設けられ、左側板部32側に向かって突出した略L字形状の引掛け部38に引っ掛けられている。
【0037】
保持部40は、操作ハンドルの延出端部を保持する部分であって、図5に示すように、右側板部31から連続して前方側に延出した側板部41と、側板部41の上端部から左右内側に屈曲された上板部42と、側板部41の下端部から左右内側に屈曲された底板部43と、上板部42の左端部から下方に屈曲された案内部44と、から主に構成されている。
【0038】
保持部40には、側板部41と上板部42と底板部43とで囲まれた空間である保持領域45が形成されている。
側板部41の上面には、前方側に上板部42と連結された部分が設けられ、上板部33と連結された部分に隣接した後方部分に下方に窪んだ略U字形状の係止溝46と、係止溝46に隣接した後方部分に、上板部42に向って突出する規制部47とが設けられている。
なお、係止溝46は、略U字形状に形成されているが、これに限定されることなく、略コ字形状、略V字形状等、適宜形状変更可能である。
上板部42は、図5に示すように、前方端部に上方に屈曲された上板部先端42aを備え、底板部43は、前方端部に下方に屈曲された底板部先端43aを備えており、上板部先端42a及び底板部先端43aは、互いに上下方向に広がるように傾斜している。
上板部42の後方端部は、係止溝46の開口の一部を覆うようにして、前後方向に規制部47に向かって突出している。
【0039】
規制部47は、係止溝46の開口を狭めるようにして、上板部42に向かって上方に突出している。規制部47の上方端部は、上板部42の下端部よりも上方に突出している。
係止溝46の開口幅は、バネ部材37の線径と略同じ大きさ又はバネ部材37の線径よりもやや小さくなるように形成されている。
このように、上板部42の後方端部が、規制部47に向って突出し、また規制部47が上板部42に向って突出することにより、係止溝46の開口の前後幅が狭まることとなり、係止溝46に係止されたバネ部材37の脱落を防止することができる。
【0040】
本実施形態の規制部47は、係止溝46の開口を狭めるようにして、上板部42に向かって上方に突出しているが、これに限定されることなく適宜形状を変更することが可能である。規制部47が、係止溝46の開口を狭めるように、又は開口の一部を覆うようにして前後方向に上板部42に向って突出する突出部分を備えていても良い。
【0041】
操作ハンドル50は、図3に示すように、乗員の操作により、バネ部材37の付勢力に抗してロック爪36をロック溝16から離脱させた離脱位置に位置させる棒部材であって、略コ字状に形成されている。
操作ハンドル50は、乗員が操作するハンドル本体部51と、ハンドル本体部51の左右両端部から後方に屈曲されて延出する左右のハンドル腕部52とから構成されている。
【0042】
ハンドル腕部52の後方端部は、図5に示すように、保持部40の保持領域45に挿入されて保持されており、後方端部の外表面には、下方に窪んだ掛け止め溝53と、掛け止め溝53よりも後方側に形成された傾斜面54とが設けられている。
掛け止め溝53は、略U字形状であって左右方向に延出して形成されており、左右方向において係止溝46と対向して配置されている。
バネ部材37の一部分は、掛け止め溝53に掛け止めされると共に、バネ部材37の一部分に隣接する部分は、係止溝46に係止されて構成されている。
【0043】
傾斜面54は、後方側に向かって下方傾斜している。そのため、操作ハンドル50の掛け止め溝53にバネ部材37の一部分を掛け止めする際に、バネ部材37の一部分が傾斜面54によって案内されることとなり、ハンドル腕部52と保持部40の組立作業が容易になる。
【0044】
ハンドル腕部52が、保持部40の保持領域45内に挿入して保持される際に、ハンドル腕部52は、左右方向において案内部44及び側板部41によって案内され、上下方向において上板部先端42a及び底板部先端43aによって案内されるため、組み付け作業が容易になる。
また、案内部44は、上板部先端42aに連結されており、底板部先端43aに連結される場合よりも前方側に配置されることになるため、ハンドル腕部52を保持領域45内に一層案内し易くなる。
【0045】
ハンドル腕部52が、図5に示すように、保持領域45内に挿入された状態で、バネ部材37によって底板部43と当接する方向に付勢されているとき、ロック部材30のうち、ロック爪36は、回動軸34を中心として上方に回動した位置にあり、ロアレール10のロック溝16と係合され、アッパレール20をロック状態に保持している。
乗員がハンドル本体部51を上方に移動させることによって、ハンドル腕部52がバネ部材37の付勢力に抗して上板部42と当接する方向に移動するとき、ロック爪36は、回動軸34を中心として下方に回動した位置に切り替わり、ロック溝16から離脱され、アッパレール20をロック解除状態に保持するようになる。
【0046】
操作ハンドル50は、保持部40内に挿入されて、ロック部材30と一体的に回動可能な状態で保持され、ロック部材30は、操作ハンドル50の回動と連動して、回動軸34を中心としてアッパレール20及びロアレール10に対して回動可能な状態で、アッパレール20に連結されて構成されている。
スライドレール機構4は、通常、ロック爪36がロアレール10のロック溝16に係合した係合位置にバネ部材37によって付勢された状態となっており、ロアレール10に対してアッパレール20を相対移動不能に保持している。乗員の操作により操作ハンドルが上方に移動されることで、ロック爪36がロック溝16から離脱した離脱位置に移動し、ロアレール10に対してアッパレール20を相対移動可能な状態に容易に切り替えることができる。
【0047】
本実施形態のスライドレール機構4は、バネ部材37が係止された係止溝46の開口を狭めるように規制部47が設けられている。
そのため、操作ハンドル50が乱雑に操作された場合に、バネ部材37が、係止溝46及び掛け止め溝53から脱落することを防止することができる。
例えば、ハンドル本体部51を下方に移動させたとき、ハンドル腕部52は、上板部42の前方部分を支点として回動し、上板部42と略平行となるように当接したロックフルストローク状態となる。このロックフルストローク状態から、ハンドル本体部51をさらに上方に移動させ、ハンドル腕部52が、上板部42の前方部分を支点として下方に回動する操作がなされた場合であっても、バネ部材37の脱落を防止する機能を果たすことができる。
【0048】
なお、上記各実施形態では、具体例として自動車のフロントシートについて説明したが、これに限定されることなく、自動車のミドルシート、リアシートについても適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
S 車両用シート
1 シートクッション
1a、2a、3a クッションパッド
1b、2b、3b 表皮
2 シートバック
3 ヘッドレスト
4 スライドレール機構
10 ロアレール
11 底板部
12 外側板部
13 上板部
14 内側板部
15 収容室
16 ロック溝
20 アッパレール
21 上板部
22 内側板部
23 案内板部
24 収容室
25 収容溝
26 ストッパ部
27 ロック孔
28 貫通穴
29 ガイド
30 ロック部材
31 右側板部
32 左側板部
33 上板部
34 回動軸
35 ストッパ板部
36 ロック爪
36a 左ロック爪
36b 右ロック爪
37 バネ部材
37a バネ本体部
37b 前方バネ腕部
37c 後方バネ腕部
38 引掛け部
40 保持部
41 側板部
42 上板部
42a 上板部先端
43 底板部
43a 底板部先端
44 案内部
45 保持領域
46 係止溝
47 規制部
50 操作ハンドル
51 ハンドル本体部
52 ハンドル腕部
53 掛け止め溝
54 傾斜面
110 ロアレール
116 ロック孔
120 アッパレール
125 開放孔
130 ロックレバー
136 ロック爪
137 コイルバネ
140 連動支持部
146 係止溝
150 ハンドル
151 掛け止め溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6