特許第5933046号(P5933046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5933046潤滑油組成物、ならびに改善されたピストンデポジット制御およびエマルション安定性を有する潤滑油組成物のための添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933046
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】潤滑油組成物、ならびに改善されたピストンデポジット制御およびエマルション安定性を有する潤滑油組成物のための添加剤
(51)【国際特許分類】
   C10M 163/00 20060101AFI20160526BHJP
   C10M 159/12 20060101ALN20160526BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20160526BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20160526BHJP
   C10M 133/56 20060101ALN20160526BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20160526BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20160526BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20160526BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20160526BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20160526BHJP
【FI】
   C10M163/00
   !C10M159/12
   !C10M139/00 A
   !C10M133/16
   !C10M133/56
   C10N10:12
   C10N20:04
   C10N30:00 B
   C10N30:04
   C10N40:25
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-3191(P2015-3191)
(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公開番号】特開2015-160954(P2015-160954A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2015年1月9日
(31)【優先権主張番号】14/190,130
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンシエン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウイリアム・ワイ・ラム
【審査官】 馬籠 朋広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−040332(JP,A)
【文献】 特表2012−512308(JP,A)
【文献】 特開2009−144151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)添加剤組成物を含有する潤滑剤組成物の全重量に基づいて、潤滑剤組成物に対してモリブデンが重量で20〜300ppm以下を占める、有機モリブデン化合物と、(b)添加剤組成物を含有する潤滑剤組成物の全重量に基づいて、0.9〜2.2重量%の、ホウ素化ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤と、
(c)添加剤組成物を含有する潤滑剤組成物の全重量に基づいて、0.4〜1.7重量%の、(i)ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物と、(ii)ポリアミンと、(iii)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物と、(iv)非芳香族ジカルボン酸または非芳香族ジカルボン酸無水物との反応産物とを含み、ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物のヒドロカルビル基が、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が1800ダルトンを超える、潤滑剤用添加剤組成物。
【請求項2】
成分(iii)が1,8−ナフタル酸無水物を含む、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項3】
成分(b)の前記ヒドロカルビル置換基が、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が1000〜1600ダルトンの範囲にあるポリオレフィンに由来する、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項4】
成分(ii)の1モルあたり0.25〜1.5モルの前記縮合芳香族化合物が反応される、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項5】
成分(i)がポリイソブテニルコハク酸またはポリイソブテニルコハク酸無水物を含み、成分(iii)が1,8−ナフタル酸無水物を含み、成分(iv)がマレイン酸無水物を含む、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項6】
成分(ii)の1モルあたり0.25〜1.5モルの成分(iv)が反応される、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の添加剤組成物を含む、潤滑剤組成物。
【請求項8】
エンジン中のピストンデポジットを制御するための方法であって、潤滑粘度を有する基
油、および
(a)潤滑剤組成物の全重量に基づいて、潤滑剤組成物に対してモリブデンが重量で20〜300ppm以下を占める、有機モリブデン化合物と、
(b)添加剤組成物を含有する潤滑剤組成物の全重量に基づいて、0.9〜2.2重量%の、ホウ素化ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤と、
(c)添加剤組成物を含有する潤滑剤組成物の全重量に基づいて、0.4〜1.7重量%の、(i)ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物と、(ii)ポリアミンと、(iii)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物と、(iv)非芳香族ジカルボン酸または非芳香族ジカルボン酸無水物との反応産物とを含み、ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物のヒドロカルビル基が、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が1800ダルトンを超える、潤滑剤用添加剤組成物
を含む、潤滑剤組成物により、エンジンを潤滑する工程を含む方法。
【請求項9】
エンジン潤滑剤組成物のエマルション安定性を維持するための方法であって、潤滑粘度を有する基油、および
(a)潤滑剤組成物の全重量に基づいて、潤滑剤組成物に対してモリブデンが重量で20〜300ppm以下を占める、有機モリブデン化合物と、
(b)添加剤組成物を含有する潤滑剤組成物の全重量に基づいて、0.9〜2.2重量%の、ホウ素化ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤と、
(c)添加剤組成物を含有する潤滑剤組成物の全重量に基づいて、0.4〜1.7重量%の、(i)ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物と、(ii)ポリアミンと、(iii)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物と、(iv)非芳香族ジカルボン酸または非芳香族ジカルボン酸無水物との反応産物とを含み、ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物のヒドロカルビル基が、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が1800ダルトンを超える、潤滑剤用添加剤組成物
を含む、潤滑剤組成物により、エンジンを潤滑する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑剤組成物、詳細には、エンジン潤滑剤組成物のデポジット制御特性および/またはエマルション安定性特性の改善のための添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンオイル用途のための潤滑油組成物は、多くの場合、製造業および/または相手先ブランド製造業者(OEM)によって確立された規格で規定されるような特定の性能要求性を満たす必要がある。一般に、エンジンオイルは、様々な基準のエンジンおよびベンチ試験によって決定されるように、適切なレベルの酸化および摩耗の保護、スラッジおよびデポジットの形成制御、燃料節約利点、シーリング材との適合性、ならびに潤滑性および保守性のために必須の他の所望される物理的および流動学的特性を提供する必要がある。例えば、ASTM Sequence IIIG試験は、ILSAC GF−4/API SM、ILSAC GF−5/API SNおよびGM dexos1(商標)規格において要求されるエンジン試験のうちの1つであり、それぞれ3.5、4.0および4.5の最小加重ピストンデポジット(WPD)の清浄性メリット評点である。したがって、WPD性能における継続的な改善は、恐らくエンジン潤滑油が今後の規格について達成するべき、多くの所望される特色のうちの1つである。同様に、エンジンオイルの燃料節約性能の促進についての要望は、摩擦調整剤の使用レベルの増加を必要とし、そのことは、ASTM D7563 Emulsion Retention試験において水およびE85燃料の混合によって決定されるような安定的エマルションを維持する潤滑剤組成物の能力に対して悪影響を与えることが知られている。
【0003】
したがって、ピストンデポジット制御の改善に加えて、エマルション安定性の改善を提供することができ、現在提唱されている潤滑剤性能基準および今後の潤滑剤性能基準を満たすかまたはそれらを上回るのに好適である、改善された潤滑剤用添加剤組成物に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0004】
上記に関して、本開示の実施形態は、潤滑剤用添加剤組成物、エンジンデポジット形成を低減するための方法、および潤滑剤組成物のエマルション安定性を改善するための方法を提供する。潤滑剤用添加剤組成物は、(a)添加剤組成物を含有する潤滑剤組成物の全重量に基づいて、潤滑剤組成物に対してモリブデンが重量で約50〜約300ppmを占める、有機モリブデン化合物と、(b)ホウ素化ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤と、(c)(i)ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物と、(ii)ポリアミンと、(iii)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物と、(iv)非芳香族ジカルボン酸または非芳香族ジカルボン酸無水物との反応産物とを含む。ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物のヒドロカルビル基は、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が1800ダルトンを超える。(b)対(c)の重量比は約1:1〜約4:1の範囲である。
【0005】
本開示の別の実施形態は、エンジン中のピストンデポジットを制御するための方法を提供する。当該方法は、潤滑粘度を有する基油、および(a)潤滑剤組成物の全重量に基づいて、潤滑剤組成物に対してモリブデンが重量で約50〜約300ppmを占める、有機モリブデン化合物と、(b)ホウ素化ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤と、(c)(i)ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物と、(ii)ポリアミンと、(iii)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物と、(iv)非
芳香族ジカルボン酸または非芳香族ジカルボン酸無水物との反応産物とを含む添加剤組成物を含む、潤滑剤組成物により、エンジンを潤滑することを含む。ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物のヒドロカルビル基は、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が1800ダルトンを超える。(b)対(c)の重量比は約1:1〜約4:1の範囲である。
【0006】
本開示のさらなる実施形態は、エンジン潤滑剤組成物のエマルション安定性を維持するための方法を提供する。当該方法は、潤滑粘度を有する基油、および(a)潤滑剤組成物の全重量に基づいて、潤滑剤組成物に対してモリブデンが重量で約50〜約300ppmを占める、有機モリブデン化合物と、(b)ホウ素化ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤と、(c)(i)ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物と、(ii)ポリアミンと、(iii)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物と、(iv)非芳香族ジカルボン酸または非芳香族ジカルボン酸無水物との反応産物とを含む潤滑剤用添加剤組成物を含む、潤滑剤組成物により、エンジンを潤滑することを含む。ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物のヒドロカルビル基は、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が1800ダルトンを超える。(b)対(c)の重量比は約1:1〜約4:1の範囲である。
【0007】
開示した実施形態の分散剤用添加剤組成物の使用の予想外の利点は、当該組成物が、改善されたエンジンデポジット制御を提供するだけでなく、潤滑剤組成物のエマルション安定性に影響を与えずに金属含有摩擦調整剤の増加も可能にすることにある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書中で使用される場合の特定の用語の意味を明らかにするために、以下の用語の定義を提供する。
【0009】
本明細書中で使用される場合、「油組成物」、「潤滑性組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物」、「完全配合物潤滑剤組成物」および「潤滑剤」という用語は、同義であり、完全に交換可能な用語と判断され、多量の基油に加えてわずかな量の添加剤組成物を含む、完成した潤滑性製品を指す。
【0010】
本明細書中で使用される場合、「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」および「添加剤組成物」という用語は、同義であり、完全に交換可能な用語と判断され、多量の基油ストック混合物を除いた潤滑組成物の部分を指す。
【0011】
本明細書中で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知の通常の意味で使用される。特に、それは、残りの分子に直接付加された炭素原子を有し、炭化水素特性を支配的に有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には、
(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族置換された芳香族置換基、脂肪族置換された芳香族置換基および脂環式置換された芳香族置換基に加えて、環が分子の別の部分を介して完成する環式置換基(例えば、2つの置換基が一緒に脂環式ラジカルを形成する)
(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈において、主な炭化水素置換基を変化させない、非炭化水素基含有置換基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ)
(3)ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈において、主な炭化水素特性を有するが、そうでない場合には炭素原子から構成される環または鎖中に炭素以外を含有する置換基が
含まれる。ヘテロ原子は、硫黄、酸素、窒素を含み、置換基(ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリル)を包含する。一般に、2以下、例えば、1以下の非炭化水素置換基がヒドロカルビル基中に10炭素原子ごとに存在する。典型的には、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0012】
本明細書中で使用される場合、「重量パーセント」という用語は、特別に明記しない限り、列挙された成分が全体の組成物の重量に占めるパーセンテージを意味する。
【0013】
本明細書において使用される「油溶性の」または「分散可能な」という用語は、化合物または添加剤が、すべての割合において、油中で可溶、溶解可能、混和性、または懸濁可能であることを示すが、必須ではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、油が用いられる環境においてそれらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで油中で、例えば、可溶または安定的に分散可能であることを意味する。さらに、他の添加剤の追加の組み入れは、所望の場合には、より高いレベルの特定の添加剤の組み入れも可能にすることができる。
【0014】
本開示の潤滑油、エンジン潤滑油および/またはクランクケース潤滑油は、以下に詳述されるように、適切な基油配合物への1種以上の添加剤の添加によって調合することができる。添加剤は、添加剤パッケージ(または濃縮物)の形態で、基油と組合せることができるか、またはあるいは基油と個別に組合せることができる。完全配合された潤滑剤、エンジン潤滑剤および/またはクランクケース潤滑剤は、添加された添加剤およびそれぞれの割合に基づいて、改善された性能特性を示すことができる。
【0015】
本開示の追加の詳細および利点は、以下の記載中で部分的に説明されよう、および/または本開示の実践によって明らかにすることができる。本開示の詳細および利点は、添付の請求項中で特に指摘された要素および組み合わせを用いて実現および達成することができる。
【0016】
前述の概要および以下の詳細な説明はいずれも、例示的で単に説明に過ぎず、本開示を特許請求の範囲に記載のように限定するものではないことを理解すべきである。
【0017】
本開示は、本開示の配合物および使用の様々な実施例を含むその実施形態のより限定された態様で、ここされように記載する。もっぱら本発明を例証する目的のためにこれらの実施形態が提示され、その範囲への限定として判断されないものとすることが理解されよう。
【0018】
エンジンまたはクランクケースの潤滑剤組成物は、火花点火エンジンおよび圧縮点火エンジンを含有する車両中で使用される。かかるエンジンは自動車、トラックおよび/または列車の用途で使用することができ、ガソリン、ディーゼル、アルコール、圧縮天然ガスおよび同種のものを含むが、これらに限定されない燃料で操作することができる。本開示は、エンジン潤滑剤(ILSAC GF−5および/またはAPI CJ−4潤滑剤基準を満たすかまたはそれらを上回る自動車のクランクケース潤滑剤等)としての使用に好適な潤滑剤を記載する。
基油
【0019】
エンジン潤滑剤組成物の配合物における使用に好適な基油は、好適な合成油、動物油、植物油、鉱油またはその混合物のいずれかから選択することができる。動物油および植物油(例えばラード油、ヒマシ油)に加えて、鉱油系潤滑油(パラフィン系、ナフテン系、またはパラフィン−ナフテン混合系の液体石油系油分および溶媒処理鉱油系潤滑油または酸処理鉱油系潤滑油等)を、使用することができる。石炭またはシェールに由来する油も
好適であり得る。基油は、典型的には、100℃で約2〜約15cStまたはさらなる例として約2〜約10cStの粘度を有することができる。さらに、天然ガス液体燃料化プロセスに由来する油も好適である。
【0020】
好適な合成基油には、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコールおよびアルコール、ポリブテンを含むポリ−α−オレフィン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステルならびにポリシリコーンオイルが含まれ得る。合成油には、重合オレフィンおよび共重合オレフィン(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマーなど);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)などおよびその混合物;アルキルベンゼン(例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ−ノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)ベンゼンなど);ポリフェニル(例えばビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニルなど);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化硫化ジフェニル、ならびにその誘導体、アナログおよびホモログならび同種のもの等の炭化水素油が含まれる。
【0021】
アルキレンオキシドのポリマーおよびインターポリマーならびに末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによって修飾されたその誘導体は、使用可能な別のクラスの公知の合成油を構成する。かかる油は、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合により調製される油、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテルおよびアリールエーテル(例えば、約1000の平均分子量を有するメチル−ポリイソプロピレングリコールエーテル、約500〜1000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、約1000〜1500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)またはそのモノカルボンエステルおよびポリカルボンエステル(例えば酢酸エステル、混合C3−C8脂肪酸エステルまたはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステル)によって例示される。
【0022】
使用可能な別のクラスの合成油には、ジカルボン酸(例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)と、多様なアルコール(例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールなど)とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸と反応させることによって形成された錯体エステル、ならびに同種のものが含まれる。
【0023】
合成油として有用なエステルには、C5−C12モノカルボン酸ならびにポリオールおよびポリオールエーテル(ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトールなど等)から作製されたものも含まれる。
【0024】
したがって、本明細書に記載のエンジン潤滑剤組成物を作製するのに使用することができる使用基油は、American Petroleum Institute(API)基油互換性ガイドラインにおいて規定されるようなグループI〜V中の基油のいずれかから選択することができる。かかる基油グループは以下の通りである。
【表1】
【0025】
基油は、わずかな量または多量のポリ−α−オレフィン(PAO)を含有し得る。典型的には、ポリ−α−オレフィンは約4〜約30または約4〜約20または約6〜約16の炭素原子を有するモノマーに由来する。有用なPAOの例には、オクテン、デセン、その混合物および同種のものに由来するものが含まれる。PAOは、100℃で約2〜約15、約3〜約12または約4〜約8cStの粘度を有することができる。PAOの例には、100℃で4cStのポリ−α−オレフィン、100℃で6cStのポリ−α−オレフィンおよびその混合物が含まれる。前述のポリ−α−オレフィンと鉱油の混合物を使用することができる。
【0026】
基油は、Fischer−Tropsch合成した炭化水素に由来する油であってよい。Fischer−Tropsch合成した炭化水素は、Fischer−Tropsch触媒を使用してH2およびCOを含有する合成ガスから作製される。かかる炭化水素は、基油として有用であるために典型的にはさらなる加工を要求する。例えば、炭化水素は、米国特許第6,103,099号または第6,180,575号中に開示されるプロセスを使用して水素化異性化することができるか;米国特許第4,943,672号または第6,096,940号中に開示されるプロセスを使用して水素化分解および水素化異性化することができるか;米国特許第5,882,505号中に開示されるプロセスを使用して脱蝋することができるか;または米国特許第6,013,171号;第6,080,301号;または第6,165,949号中に開示されるプロセスを使用して水素化異性化および脱蝋することができる。
【0027】
上で開示したタイプの天然または合成(加えて、これらのいずれかの2つ以上の混合物)の非精製油、精製油および再精製油を、基油中で使用することができる。非精製油は、さらなる浄化処理なしに天然源または合成源から直接得られたものである。例えば、乾留操作から直接得られたシェール油、一次蒸留から直接得られた石油系油分、またはエステル化プロセスから直接得られ、さらなる処理なしに使用されるエステル油は、非精製油である。精製油は、1以上の特性を改善する1以上の浄化工程においてさらに処理される以外は非精製油に類似する。多くのかかる浄化技術が当業者に公知である(溶媒抽出、二次蒸留、酸抽出または塩基抽出、濾過、パーコレーションなど等)。再精製油は、業務で既に使用されている精製油へ適用された精製油を得るために使用されるプロセスに類似するプロセスによって得られる。かかる再精製された油は再生油または再処理された油としても公知であり、多くの場合、使用済み添加剤、混入物および油分解産物の除去に関する技法によって追加で加工される。
【0028】
基油は本明細書の複数の実施形態において開示されるような添加剤組成物と組合せてエ
ンジン潤滑剤組成物を提供することができる。したがって、基油は、潤滑剤組成物の全重量に基づいて、約50重量%〜約95%重量の範囲の量でエンジン潤滑剤組成物中に存在することができる。
分散剤用添加剤組成物
【0029】
開示された実施形態の一態様において、方法および組成物は、少なくとも2つのヒドロカルビル分散剤を含む分散剤用添加剤組成物の使用を含む。第1のヒドロカルビル分散剤は、ヒドロカルビルコハク酸またはヒドロカルビルコハク酸無水物およびアミンに由来する従来のスクシンイミド分散剤である。かかる従来のスクシンイミド分散剤は、下記の式(I)および(II)
【化1】
およびその混合物(式中、R1はヒドロカルビル置換基であり、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が約1000〜約1600ダルトンの範囲にあるポリオレフィンに由来する)によって表わすことができる。特に好適なヒドロカルビル置換基は、数平均分子量が約1200〜約1400ダルトンの範囲にあるポリプロペンまたはポリブテンに由来する化合物である。一実施形態において、R1は、50モルパーセントを超える末端ビニリデン基を有するポリブテンに由来する。R2は、H、−(CH2mHおよび
【化2】
から選択され;R3
【化3】
であり;R4は、水素および−(CH3)から選択され、式中、mは1〜3の範囲の整数であり、nは1〜10の範囲の整数である。上記の式に記載の従来のスクシンイミド分散剤を作製する方法は、当技術分野において周知であり、例えば米国特許第4,234,435号および第4,636,322号に記載されている。典型的には、かかる分散剤は、約1:1〜約3:1の範囲のヒドロカルビル基(R1)対ジカルボン酸部分またはジカルボン酸無水物部分のモル比を有する。かかる分散剤は任意の多様な薬剤との反応による従来の方法によって後処理することができる。かかる後処理剤の中でも、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換コハク酸無水物、マレイン酸無水物、ニトリル、エポキシド、カルボネート、環状炭酸エステル、ヒンダードフェノールエステルおよびリン化合物である。米国特許第7,645,726号;同第7,214,649号;および同第8,048,831号は、参照により本明細書に援用される。
【0030】
特に好適な従来のスクシンイミド分散剤には、約1重量%〜約2.5重量%(約1.2重量%〜約2.0重量%および望ましくは約1.4重量%〜約1.7重量%等)の範囲の窒素含有量、および約0.1:1〜約1:1(約0.2:1〜約0.8:1および特に約0.4:1〜約0.55:1等)の範囲のホウ素対窒素の重量比を有する、ホウ素化分散剤が含まれる。
官能化分散剤
【0031】
分散剤用添加剤組成物の第2の分散剤は官能化分散剤である。官能化分散剤は、A)ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物と、B)ポリアミンと、C)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物と、D)非芳香族ジカルボン酸または非芳香族ジカルボン酸無水物との反応産物である。好適な官能化分散剤は、米国特許出願公開第2013/0040866号に記載されており、同文献は参照により本明細書に援用される。
成分A
【0032】
成分Aのヒドロカルビル−ジカルボン酸またはドロカルビル−ジカルボン酸無水物のヒドロカルビル部分は、ブテンポリマー(例えばイソブチレンのポリマー)に由来し得る。本明細書における使用に好適なポリイソブテンは、少なくとも約50モル%(約60モル%および特に約70モル%〜約90モル%以上等)の末端ビニリデン含有量を有するポリイソブチレンまたは高反応性ポリイソブチレンから形成されたものを含む。好適なポリイソブテンはBF3触媒を使用して調製されたものを含むことができる。ポリアルケニル置換基の数平均分子量は、検定標準として上述のようなポリスチレンを使用してGPCによって決定されるように、例えば約100〜約5000(約500〜約5000等)の幅広い範囲にわたって変動し得る。
【0033】
成分Aのジカルボン酸またはジカルボン酸無水物は、マレイン酸無水物から、またはマレイン酸無水物以外のカルボン酸の反応物(マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、メサコン酸、エチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸、および同種のもの等であり、対応する酸ハロゲン化物および低級脂肪族のエステルを含む)から選択することができる。好適なジカルボン酸無水物はマレイン酸無水物である。成分Aを作製するのに使用される反応混合物中のマレイン酸無水物対ヒドロカルビル部分のモル比は、広く変動し得る。したがって、モル比は約5:1〜約1:5(例えば約3:1〜約1:3)で変動することができ、さらなる例として、マレイン酸無水物を過剰に使用して反応を強制的に完了させることができる。未反応のマレイン酸無水物を減圧蒸留によって除去することができる。
成分B
【0034】
官能化分散剤の調製において、任意の多数のポリアミンを成分Bとして使用することができる。非限定的な例示的ポリアミンには、重炭酸アミノグアニジン(AGBC)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)および重質ポリアミンが含まれ得る。重質ポリアミンは、少量の低級ポリアミンオリゴマー(TEPAおよびPEHA)を有するポリアルキレンポリアミンの混合物であるが、主として7以上の窒素原子、1分子あたり2以上の第一級アミン、および従来のポリアミン混合物よりもより大規模な分岐を有するオリゴマーを含むことができる。ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤を調製するのに使用することができる、追加の非限定的ポリアミンは、米国特許第6,548,458号に開示されており、その開示はその全体が参照により本明細書に援用される。本開示の一実施形態において、ポリアミンはテトラエチレンペンタミン(TEP
A)から選択することができる。
【0035】
一実施形態において、官能化分散剤は、式(I)の化合物
【化4】
(式中、nは0または1〜5の整数を表わし、R2は上で定義されるようなヒドロカルビル置換基である)に由来し得る。一実施形態において、nは3であり、R2は、少なくとも約50モル%(約60モル%等、約70モル%〜約90モル%以上等)の末端ビニリデン含有量を有するポリイソブチレンに由来するもの等のポリイソブテニル置換基である。式(I)の化合物は、ヒドロカルビル置換コハク酸無水物(ポリイソブテニルコハク酸無水物(PIBSA)等)およびポリアミン(例えばテトラエチレンペンタミン(TEPA))の反応産物であってよい。
【0036】
式(I)の前述の化合物は、約1:1〜約10:1の範囲の(A)ポリイソブテニル置換コハク酸無水物対(B)ポリアミンのモル比を化合物中で有することができる。特に有用な分散剤は、検定標準としてポリスチレンを使用してGPCによって決定されるように約500〜5000の範囲で数平均分子量(Mn)を有するポリイソブテニル置換コハク酸無水物のポリイソブテニル基、および一般式H2N(CH2m−[NH(CH2mn−NH2(式中、mは2〜4の範囲であり、nは1〜2の範囲である)を有する(B)ポリアミンを含有する。
成分C
【0037】
成分Cは、カルボキシル酸またはカルボキシル酸無水物の官能基が芳香族基へ直接縮合される、カルボキシル酸もしくはポリカルボキシル酸またはそれらのポリ無水物である。かかるカルボキシ含有芳香族化合物は、1,8−ナフタル酸または1,8−ナフタル酸無水物および1,2−ナフタレンジカルボン酸または1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボン酸または2,3−ジカルボン酸無水物、ナフタリン−1,4−ジカルボン酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸無水物、ピロメリット酸無水物、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、ジフェン酸またはジフェン酸無水物、2,3−ピリジンジカルボン酸または2,3−ピリジンジカルボン酸無水物、3,4−ピリジンジカルボン酸または3,4−ピリジンジカルボン酸無水物、1,4,58−ナフタレンテトラカルボン酸または1,4,58−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン無水物、ピレンジカルボン酸またはピレンジカルボン酸無水物、ならびに同種のものから選択することができる。反応させた成分Cのモルは、成分Bの1モルあたり約0.1:1〜約2:1の範囲であってよい。反応混合物中の成分C対成分Bの典型的なモル比は、約0.2:1〜約2.0:1の範囲であってよい。使用可能な成分C対成分Bの別のモル比は、0.25:1〜約1.5:1の範囲であってよい。成分Cを約140℃〜約180℃の範囲の温度で他の成分と反応させることができる。
成分D
【0038】
成分Dは非芳香族カルボン酸または非芳香族カルボン酸無水物である。好適なカルボン酸またはその無水物には、酢酸または酢酸無水物、シュウ酸およびシュウ酸無水物、マロ
ン酸およびマロン酸無水物、コハク酸およびコハク酸無水物、アルケニルコハク酸またはアルケニルコハク酸無水物、グルタル酸およびグルタル酸無水物、アジピン酸およびアジピン酸無水物、ピメリン酸およびピメリン酸無水物、スベリン酸およびスベリン酸無水物、アゼライン酸およびアゼライン酸無水物、セバシン酸およびセバシン酸無水物、マレイン酸およびマレイン酸無水物、フマル酸およびフマル酸無水物、酒石酸または酒石酸無水物、グリコール酸またはグリコール酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロナフタル酸または1,2,3,6−テトラヒドロナフタル酸無水物、ならびに同種のものが含まれ得るが、これらに限定されない。成分Dが反応させた成分Bの1モルあたり約0.1〜約2.5モルの範囲のモル比で、成分Dを成分Bと反応させる。典型的には、使用される成分Dの量は成分B中の第二級アミノ基の数に関連する。したがって、成分Dは、成分B中の1つの第二級アミノ基あたり約0.2〜約2.0モルで、他の成分と反応させて、本開示の実施形態に記載の分散剤を提供することができる。使用可能な成分D対成分Bの別のモル比は、成分Dが成分Bの1モルあたり0.25:1〜約1.5:1モルの範囲であってよい。成分Dを約140℃〜約180℃の範囲の温度で他の成分と反応させることができる。
【0039】
分散剤用添加剤組成物は、約1:1〜約4:1(約1.5:1〜約3:1、特に約1.8:1〜約2.2:1等)の範囲の(b)対(c)の重量比を有する分散剤混合物を含有することができる。したがって、本明細書に記載の潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全重量に基づいて、約0.5重量%〜約10.0重量%の上記の分散剤用添加剤組成物を含有することができる。分散剤用添加剤組成物の典型的な範囲は、潤滑剤組成物の全重量に基づいて、約2重量%〜約6重量%であってよい。前述の分散剤用添加剤組成物に加えて、潤滑剤組成物には、摩擦調整剤、金属洗浄剤、抗摩耗剤、消泡剤、抗酸化剤、粘度調整剤、流動点降下剤、腐食防止剤および同種のものを含むが、これらに限定されない、他の従来の成分が含まれ得る。
金属含有洗浄剤
【0040】
上記の分散剤用反応産物と共に使用可能な金属洗浄剤は、一般的には、長い疎水性尾部を備えた極性頭部を含み、極性頭部は酸性有機化合物の金属塩を含む。塩は実質的に化学量論的な量の金属を含有することができ、その場合には、それらは正塩または中性塩として通例記載され、典型的には約0〜約150未満の全塩基価すなわちTBN(ASTM D2896によって測定されるような)を有する。酸性ガス(二酸化炭素等)と過剰の金属化合物(酸化物または水酸化物等)を反応させることによって、多量の金属塩基を含むことができる。与えられた過塩基性洗浄剤は、無機金属塩基(例えば水和炭酸塩)のコアを囲む中和された洗浄剤のミセルを含む。かかる過塩基性洗浄剤は約150以上(約150〜約450以上等)のTBNを有することができる。
【0041】
本実施形態における使用に好適であり得る洗浄剤は、金属(特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムおよびマグネシウム)の油溶性の過塩基性、低塩基性および中性のスルホネート、フェネート、硫化フェネートおよびサリチレートを含む。2つ以上の金属(例えば、カルシウムおよびマグネシウムの両方)が存在することができる。カルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物も好適であり得る。好適な金属洗浄剤は、150〜450TBNのTBNを有する過塩基性のスルホン酸カルシウムまたはスルホン酸マグネシウム、150〜300TBNのTBNを有する過塩基性の石炭酸カルシウム、石炭酸マグネシウム、硫化石炭酸カルシウムまたは硫化石炭酸マグネシウム、および130〜350のTBNを有する過塩基性のサリチル酸カルシウムまたはサリチル酸マグネシウムであってよい。
【0042】
金属含有洗浄剤は約0.5重量%〜約5重量%の量で潤滑組成物中に存在することができる。さらなる例として、金属含有洗浄剤は約1.0重量%〜約3.0重量%の量で存在
することができる。金属含有洗浄剤は、潤滑剤組成物の全重量に基づいて、約500〜約5000ppmのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を潤滑剤組成物に提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在することができる。さらなる例として、金属含有洗浄剤は、約1000〜約3000ppmのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在することができる。
リンベースの抗摩耗剤
【0043】
リンベースの摩耗防止剤を使用することができ、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物(ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物等であるが、これらに限定されない)を含むことができる。好適な金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートはジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩を含むことができ、金属はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、またはアルミニウム、鉛、錫、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、もしくは亜鉛であってよい。
【0044】
ジヒドロカルビルジチオジチオホスフェート金属塩は、通常1以上のアルコールまたはフェノールとP25との反応によって最初にジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成すること、および次いで形成されたDDPAを金属化合物により中和することによる公知の技法に従って調製することができる。例えば、ジチオリン酸は第一級アルコールおよび第二級アルコールの混合物を反応させることによって作製することができる。あるいは、一方でのヒドロカルビル基の特性が完全に第二級であり、他方でのヒドロカルビル基の特性が完全に第一級である、複数のジチオリン酸を調製することができる。金属塩を作製するために、任意の塩基性金属化合物または中性金属化合物を使用することができるが、酸化物、水酸化物および炭酸塩が最も一般的に用いられる。商業的な添加剤は、多くの場合中和反応における過剰の塩基性金属化合物の使用に起因して過剰量の金属を含有する。
【0045】
ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、下記の式
【化5】
(式中、RおよびR′は、1〜18(例えば2〜12)の炭素原子を含有し、アルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリールラジカル、アリールアルキルラジカル、アルカリールラジカルおよび脂環式ラジカル等のラジカルを含む、同じかまたは異なるヒドロカルビルラジカルであってよい)によって表わすことができる。R基およびR′基は2〜8の炭素原子のアルキル基であってよい。したがって、ラジカルは、例えば、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであってよい。油溶性を得るために、ジチオリン酸中の炭素原子(すなわちRおよびR′)の総数は、一般的には約5以上である。したがって、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛はジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むことができる。
【0046】
リンベースの摩耗防止剤として利用することができる他の好適な成分には、任意の好適な有機リン化合物(ホスフェート、チオホスフェート、ジ−チオホスフェート、ホスファイトおよびその塩ならびにホスホネート等であるが、これらに限定されない)が含まれる
。好適な例は、リン酸トリクレジル(TCP)、ジ−アルキルホスファイト(例えばジブチル水素ホスファイト)およびアミル酸ホスフェートである。
【0047】
別の好適な成分は、リン酸化スクシンイミド(無機リン酸、有機リン酸、無機リン酸エステルまたは有機リン酸エステル等のリン源と組み合わせて、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤とポリアミンとの間の反応からの完了した反応産物等)である。さらに、それは、第一級アミノ基および無水物部分の反応を引き起こすタイプのイミド連結に加えて、アミド連結、アミジン連結および/または塩連結を産物が有し得る化合物を含むことができる。
【0048】
リンベースの摩耗防止剤は、約200〜約2000ppmのリンを提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在することができる。さらなる例として、リンベースの摩耗防止剤は、約500〜約800ppmのリンを提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在することができる。
【0049】
リンベースの摩耗防止剤は、約1.6〜約3.0(ppm/ppm)の、潤滑組成物中のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の合計量に基づいたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量(ppm)対潤滑組成物中のリンの合計量に基づいたリン含有量(ppm)の比を提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在することができる。
摩擦調整剤
【0050】
本開示の実施形態は1種以上の摩擦調整剤を含むことができる。好適な摩擦調整剤は金属含有摩擦調整剤および金属不含有摩擦調整剤を含むことができ、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアナジン(guanadine)、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステルおよび同種のものを含むことができるが、これらに限定されない。
【0051】
好適な摩擦調整剤は、直鎖ヒドロカルビル基、分岐鎖ヒドロカルビル基もしくは芳香族ヒドロカルビル基またはその混和物から選択され、飽和または非飽和であり得るヒドロカルビル基を含有することができる。ヒドロカルビル基は炭素および水素またはヘテロ原子(硫黄または酸素等)からなることができる。ヒドロカルビル基は約12〜約25の炭素原子の範囲であり得、飽和または非飽和であり得る。
【0052】
アミン系摩擦調整剤は、ポリアミンのアミドを含むことができる。かかる化合物は、直鎖状であり、飽和もしくは非飽和またはその混合のいずれかであり、約12〜約25の炭素原子を含有し得るヒドロカルビル基を有することができる。
【0053】
好適な摩擦調整剤のさらなる例にはアルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが含まれる。かかる化合物は、直鎖状であり、飽和、非飽和またはその混合のいずれかのヒドロカルビル基を有することができる。それらは約12〜約25の炭素原子を含有することができる。例にはエトキシ化アミンおよびエトキシ化エーテルアミンが含まれる。
【0054】
アミンおよびアミドは、それ自体として、またはホウ素化合物(酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸またはモノ−アルキルボレート、ジ−アルキルボレートもしくはトリ−アルキルボレート等)との付加物または反応産物の形態で使用することができる。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号に記載されており、
同文献は参照により本明細書に援用される。
【0055】
他の好適な摩擦調整剤には、有機性で無灰(金属不含有)の窒素不含有の有機摩擦調整剤が含まれ得る。かかる摩擦調整剤は、カルボン酸およびカルボン酸無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含むことができる。他の有用な摩擦調整剤は、一般的には親油性炭化水素鎖へ共有結合された極性末端基(例えばカルボキシルまたはヒドロキシル)を含む。カルボン酸およびカルボン酸無水物のアルカノールとのエステルは、米国特許第4,702,850号に記載されている。有機性の無灰の窒素不含有の摩擦調整剤の別の例は、オレイン酸のモノエステルおよびジエステルを含有し得るグリセリンモノオレエート(GMO)として一般的には公知である。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,723,685号に記載されており、同文献は参照により本明細書に援用される。無灰の摩擦調整剤は、潤滑剤組成物の全重量に基づいた重量で、約0.1〜約0.4パーセントの範囲の量で潤滑剤組成物中に存在することができる。
【0056】
好適な摩擦調整剤は、1種以上のモリブデン化合物も含むことができる。モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィネート、モリブデンキサンテート、モリブデンチオキサンテート、硫化モリブデン、三核有機モリブデン化合物、モリブデン/アミン錯体およびその混合物からなる群から選択することができる。
【0057】
加えて、モリブデン化合物は酸性モリブデン化合物であってよい。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムならびに他のアルカリ金属モリブデン酸塩および他のモリブデン塩(例えばモリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo23Cl6、三酸化モリブデンまたは類似の酸性モリブデン化合物)が含有される。あるいは、組成物は、例えば米国特許第4,263,152号;同第4,285,822号;同第4,283,295号;同第4,272,387号;同第4,265,773号;同第4,261,843号;同第4,259,195号、および同第4,259,194号;ならびに国際公開第94/06897号に記載されるような塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンと共に提供することができる。
【0058】
好適なモリブデンジチオカルバメートは、式
【化6】
(式中、R1、R2、R3およびR4の各々は、独立して、水素原子、C1−C20アルキル基、C6−C20のシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基もしくはアラルキル基、またはエステル基、エーテル基、アルコール基もしくはカルボキシル基を含有するC3−C20ヒドロカルビル基を表わし、X1、X2、Y1およびY2の各々は独立して硫黄または酸素原子を表わす)によって表わすことができる。
【0059】
各々のR1、R2、R3およびR4に好適な基の例としては、2−エチルヘキシル、ノニルフェニル、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、ラウリル、オレイル、リノレイル、シクロヘキシルおよびフェニルメチルが含まれる。R1〜R4の各々は
6−C18アルキル基が挙げられる。X1およびX2は同じであってもよく、Y1およびY2は同じであってもよい。X1およびX2の両方は硫黄原子を含むことができ、Y1およびY2の両方は酸素原子を含むことができる。
【0060】
モリブデンジチオカルバメートのさらなる例には、C6−C18のジアルキルジチオカルバメートもしくはジアリールジチオカルバメートまたはアルキル−アリールジチオカルバメート(ジブチル−ジチオカルバメート、ジアミル−ジ−(2−エチル−ヘキシル)−ジチオカルバメート、ジラウリル−ジチオカルバメート、ジオレイル−ジチオカルバメート、およびジシクロヘキシル−ジチオカルバメート等)が含まれる。
【0061】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、三核モリブデン化合物(式Mo3knz(式中、Lは、化合物を油中で可溶または分散可能にするのに十分な数の炭素原子を備えた有機基を有する独立して選択されたリガンドを表わし、nは1〜4であり、kは4〜7で変動し、Qは、中性電子を供与する化合物(水、アミン、アルコール、ホスフィンおよびエーテル等)の群から選択され、zは0〜5の範囲で非化学量論的値を含む)およびその混合物のもの等)である。少なくとも21の全炭素原子が、すべてのリガンドの有機基の中で存在し得る(少なくとも25、少なくとも30または少なくとも35の炭素原子等)。追加の好適なモリブデン化合物は、米国特許第6,723,685号に記載されており、同文献は参照により本明細書に援用される。
【0062】
モリブデン化合物は、重量で約5ppm〜500ppmのモリブデンを提供する量で完全配合物エンジン潤滑剤中に存在することができる。さらなる例として、モリブデン化合物は、重量で約50ppm〜300ppmのモリブデンを提供する量で存在することができる。特に好適な量のモリブデン化合物は、潤滑剤組成物に重量で約60〜250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量であってよい。
消泡剤
【0063】
いくつかの実施形態において、発泡防止剤は組成物中での使用に好適な別の成分を形成することができる。発泡防止剤はシリコーン、ポリアクリレートおよび同種のものから選択することができる。本明細書において記載されるエンジン潤滑剤配合物中の消泡剤の量は、配合物の全重量に基づいて、約0.001重量%〜約0.1重量%の範囲であってよい。さらなる例として、消泡剤は約0.004重量%〜約0.008重量%に量で存在することができる。
酸化防止剤成分
【0064】
酸化防止剤または抗酸化剤は、業務の質を悪化させる(その悪化は、金属面上に堆積するスラッジおよびニス様のデポジット等の酸化産物、ならびに完成した潤滑剤の粘度増大によって証明することができる)ベースストックの傾向を減少させる。かかる酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、硫化ヒンダードフェノール、C5−C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、硫化アルキルフェノール、硫化または非硫化のいずれかのアルキルフェノールの金属塩(例えばカルシウムノニルフェノールスルフィド)、無灰油溶性フェネート、硫化フェネート、リン硫化炭化水素または硫化炭化水素、リンエステル、金属チオカルバメートおよび米国特許第4,867,890号に記載されているような油溶性銅化合物が含まれる。
【0065】
使用可能な他の抗酸化剤としては、立体障害フェノールおよびそのエステル、ジアリールアミン、アルキル化フェノチアジン、硫化化合物ならびに無灰ジアルキルジチオカルバメートが挙げられる。立体障害フェノールの非限定な例としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6ジ−tert−ブチルメチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフ
ェノール、4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ペンチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ヘキシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ヘプチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−(2−エチルヘキシル)−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−オクチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ノニル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−デシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ウンデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、米国特許出願公開第2004/0266630に記載されているようなメチレン架橋立体障害フェノール(4,4−メチレンビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、4,4−メチレンビス(2−tert−アミル−o−クレゾール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6tert−ブチルフェノール、4,4−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)を挙げることができるが、これらに限定されない)およびその混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
ジアリールアミン抗酸化剤は、式
【化7】
(式中、R′およびR′′の各々は独立して6〜30の炭素原子を有する置換または非置換のアリール基を表わす)を有するジアリールアミンを含むが、これらに限定されない。アリール基についての例示的な置換基には、脂肪族炭化水素基(1〜30の炭素原子を有するアルキル等)、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸基もしくはエステル基またはニトロ基が含まれる。
【0067】
アリール基は好ましくは置換または非置換のフェニルまたはナフチルであり、特に1つまたは両方のアリール基が、4〜30、好ましくは4〜18の炭素原子、最も好ましくは4〜9の炭素原子の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルにより置換される。1つまたは両方のアリール基が、例えばモノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、またはモノアルキル化ジフェニルアミンおよびジアルキル化ジフェニルアミンの混合物で置換されることは好ましい。
【0068】
ジアリールアミンは、分子中に2つ以上の窒素原子を含有する構造であってよい。したがって、ジアリールアミンは少なくとも2つの窒素原子を含有することができ、少なくとも1つの窒素原子はそれへ付加された2つのアリール基を有する(例えば、第二級窒素原子に加えて、窒素原子のうちの1つの上の2つのアリールを有する様々なジアミンの事例でのように)。
【0069】
使用可能なジアリールアミンの例としては、ジフェニルアミン;様々なアルキル化ジフェニルアミン;3−ヒドロキシジフェニルアミン;N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン;N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン;モノブチルジフェニル−アミン;ジブチルジフェニルアミン;モノオクチルジフェニルアミン;ジオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミン;ジノニルジフェニルアミン;モノテトラデシルジフェニルアミン;ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン;モノオクチルフェニル−α−ナフチルアミン;フェニル−β−ナフチルアミン;モノヘプチルジフェニルアミン;ジヘプチル−ジフェニルアミン;パラ配向性スチレン化ジフェニルアミン;混合ブチルオクチルジ−フェニルアミン;および混合オクチルスチリルジフェニルアミンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0070】
含硫抗酸化剤には、それらの生産において使用されるオレフィンのタイプおよび抗酸化剤の最終的な硫黄含有量によって特性づけられる硫化オレフィンが含まれるが、これらに限定されない。高分子量オレフィン(すなわち168〜351g/モルの平均分子量を有するオレフィン)が好ましい。使用可能なオレフィンの例としては、α−オレフィン、異性化α−オレフィン、分岐状オレフィン、環状オレフィンおよびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0071】
α−オレフィンには任意のC4−C25α−オレフィンが含まれるが、これらに限定されない。α−オレフィンは硫化反応の前または硫化反応の間に異性化することができる。内部二重結合および/または分岐を含有するα−オレフィンの構造異性体および/または配座異性体も使用することができる。例えば、イソブチレンはα−オレフィン1−ブテンの分岐状オレフィン対応物である。
【0072】
オレフィンの硫化反応に使用することができる硫黄源には、硫黄元素、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、および一緒にまたは硫化プロセスの異なるステージで添加されるこれらの混合物が含まれる。
【0073】
不飽和油はそれらの不飽和に起因して硫化もされ、抗酸化剤として使用することができる。使用することができる油または脂肪の例には、トウモロコシ油、キャノーラ油、綿実油、ブドウ種子油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、ココナッツ油、菜種油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、獣脂およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0074】
完成した潤滑剤に添加する硫化オレフィンまたは硫化脂肪油の量は、硫化オレフィンまたは硫化脂肪油の硫黄含有量および完成した潤滑剤に添加する硫黄の所望されるレベルに基づく。例えば、20重量%の硫黄を含有する硫化脂肪油または硫化オレフィンは、完成した潤滑剤に1.0重量%処理レベルで添加された場合、完成した潤滑剤に2000ppmの硫黄を添加する。10重量%の硫黄を含有する硫化脂肪油または硫化オレフィンは、完成した潤滑剤に1.0重量%処理レベルで添加された場合、完成した潤滑剤に1000ppmの硫黄を添加する。硫化オレフィンまたは硫化脂肪油は、完成した潤滑剤に200ppm〜2000ppmの間の硫黄を添加することが所望される。
【0075】
一般論として、好適なエンジン潤滑剤は、以下でリストされた範囲で添加剤成分を含むことができる。
【表2】
【0076】
本明細書において記載される潤滑剤組成物中に含むことができる追加のオプションの添加剤には、錆防止剤、乳化剤、解乳化剤および油溶性チタン含有添加剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書において記載される組成物を調合するのに使用される添加剤は、個別にまたは様々な小組み合わせで基油の中へブレンドすることができる。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤+炭化水素溶剤等の希釈剤)を同時に使用して、すべての成分をブレンドすることが好適であろう。添加剤濃縮物の使用は、添加剤濃縮物の形態である場合の成分の組み合わせによって与えられる相互の適合性を利用することができる。さらに、濃縮物の使用はブレンド時間を減少させ、ブレンド誤差の可能性を低下させることができる。
【0078】
本開示は、自動車エンジン潤滑剤としての使用のために特に配合された新規の潤滑油ブレンドを提供する。本開示の実施形態は、1以上の以下の特性(抗酸化性、耐摩耗性能、錆防止、燃料節約、水耐久性、空気連行、シール保護および泡減少特性)の改善を提供する、エンジン用途に好適な潤滑油を提供することができる。
【0079】
本開示に記載の潤滑剤組成物の利点および長所を実証するために、以下の非限定的実施例を提供する。分散剤(c)を以下の実施例に従って作製した。
実施例1
【0080】
試験構成には、撹拌器を備えた1Lの四つ首フラスコ、添加漏斗、温度プローブ、温度制御装置、加熱マントル、Dean−Starkトラップおよびコンデンサーが必要とされる。フラスコに、2100Mnのポリイソブチレンコハク酸無水物(PIBSA)(195.0g;0.135モル)をチャージし、窒素ブランケット下で160℃まで加熱した。ポリエチレンアミン混合物(21.17g;0.112モル)を30分にわたって1滴ずつ添加した。反応混合物を4時間撹拌し、次いで711mmHgで1時間真空ストリッピングした。プロセス油(172.0g)を添加し、混合物を15分間撹拌した。1,8−ナフタル無水物(13.39g;0.068モル)を160℃で一括で添加した。反
応混合物を165℃まで加熱し、4時間撹拌した。真空を1時間適用して(711mmHg)、残存する水分を除去した。反応産物をHiflow Super Cel Celiteの上で圧力をかけて濾過して、364gの暗褐色粘稠液(%N、1.75;TBN、36.0)を得た。
【0081】
500mLフラスコに、前述の反応産物(200.0g;0.102モル)をチャージし、窒素ブランケット下で160℃まで加熱した。マレイン酸無水物(4.48g;0.045モル)を一括で添加した。反応混合物を4時間撹拌し、次いで711mmHgで1時間真空ストリッピングした。プロセス油(4.48g)を添加し、混合物を15分間撹拌した。反応産物をHiflow Super Cel Celiteの上で圧力をかけて濾過して、165gの暗褐色粘稠液(%N、1.67;TBN、24.1)を得た。
デポジット制御およびエマルション安定性を査定する試験
【0082】
本開示に記載の潤滑剤配合物を評価するために、Sequence IIIGエンジン試験において、エンジンデポジットを減少させる能力および水存在下における安定的エマルションを維持する能力について、様々な分散剤組成物を試験した。以下の実施例において、使用した分散剤は以下の通りである。
分散剤1は、約1000〜約1400ダルトンの数平均分子量;約1.5〜約1.7重量%の窒素含有量を有する従来のホウ素化スクシンイミド分散剤である。
分散剤2は、1800ダルトンを超える数平均分子量および約1.17重量%の窒素含有量を有する上述の分散剤(c)である。
分散剤3は、2100ダルトンの数平均分子量および約1.58重量%の窒素含有量を有する従来のスクシンイミドである。
分散剤4は、約1300ダルトンの数平均分子量および約1.8重量%の窒素含有量を有する従来のスクシンイミドであった。表中の重量パーセント分散剤は活性成分ベース上のものである。
抗酸化剤1(Antiox.1)は従来のジフェニルアミン抗酸化剤である。
抗酸化剤2(Antiox.2)は従来の硫化オレフィン抗酸化剤である。
抗酸化剤3(Antiox.3)は従来のフェノールタイプの抗酸化剤である。
モリブデン添加剤は従来のモリブデンアミン錯体であり、モリブデン金属の重量でppmに換算して示される。加重ピストンデポジット(WPD)のメリット評点はSequence IIIGエンジン試験に従って決定し、エマルション安定性は25℃でのE85エマルション試験(ASTM D7563)に従って決定した。結果は以下の表中で示される。
【表3】
【0083】
前述の結果が示すように、実施例9〜12の潤滑剤組成物は、実施例1〜8の分散剤組成物と比較して、Sequence IIIGエンジン試験において優れた性能を示しただけではなく、実施例9〜12の潤滑剤組成物は、モリブデン添加剤のより高い処理率でエマルション安定性の改善も示した。これとは対照的に、実施例15および16は、分散剤2と組み合わせて、ホウ素化分散剤の代わりに非ホウ素化スクシンイミド分散剤を含有していた。分散剤2および非ホウ素化分散剤が使用された場合、潤滑剤組成物は、295ppmのモリブデンでは、エマルション試験に合格しなかった。実施例13および14から、分散剤混合物とのモリブデン処理率の上限は約300ppmのモリブデンであると思われる。約300ppmを上回るモリブデン(実施例14)では、潤滑剤組成物はエマルション試験に不合格である。
【0084】
この明細書の全体にわたって多くの場所で多数の米国特許が参照された。すべてのかかる引用文書は、本明細書において完全に説明されたかのように、本開示にその全体が明示的に援用される。
【0085】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考慮および本明細書において開示される実施形態の実践から当業者には明らかとなるであろう。明細書および請求項を通して使用されるように、「1つの(a)」および/または「1つの(an)」は、1つまたは2つ以上を指すことができる。特段の指示のない限り、明細書および請求項中で使用される成分の量、特性(分子量等)、パーセント、比、反応条件などを表現するすべての数は、あらゆる場合に、「約」という文言で修飾されていると理解すべきである。したがって、相反する指示のない限り、明細書および請求項中で説明された数値パラメータは、本発明によって得ることが求められる所望される特性に依存して変動し得る近似値である。最低限でも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮しておよび通常の丸め技法の適用によって解釈されるべきである。本発明の広い範囲を説明する数範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体例中で説明された数値は可能な限り正確に報告されている。し
かしながら、任意の数値は、それぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に与えられる特定の誤差を内在的に含有する。明細書および実施例は単に例示的なものとして考慮され、本発明の真の範囲および趣旨は以下の請求項によって示されることが意図される。
【0086】
前述の実施形態は、実践においてかなりの変動に影響を受けやすい。したがって、実施形態は上で説明された具体的な例証へ限定されることを意図しない。むしろ、前述の実施形態は、法律的に利用可能なその等価物を含む添付の請求項の趣旨および範囲内である。
【0087】
特許権者は任意の開示された実施形態を公共へ供することを意図せず、任意の開示された修飾または変更が、特許請求の範囲内に文言として入らない程度まで、均等論の下で本明細書の一部分であると判断される。
【0088】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
【0089】
1. (a)添加剤組成物を含有する潤滑剤組成物の全重量に基づいて、潤滑剤組成物に対してモリブデンが重量で約20〜約300ppm以下を占める、有機モリブデン化合物と、
(b)ホウ素化ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤と、
(c)(i)ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物と、(ii)ポリアミンと、(iii)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物と、(iv)非芳香族ジカルボン酸または非芳香族ジカルボン酸無水物との反応産物とを含み、ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物のヒドロカルビル基が、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が1800ダルトンを超え、
(b)対(c)の重量比が約1:1〜約4:1の範囲である、
潤滑剤用添加剤組成物。
【0090】
2. 成分(iii)が1,8−ナフタル酸無水物を含む、上記1に記載の添加剤組成物。
【0091】
3. 成分(b)の前記ヒドロカルビル置換基が、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が約1000〜約1600ダルトンの範囲にあるポリオレフィンに由来する、上記1に記載の添加剤組成物。
【0092】
4. 成分(ii)の1モルあたり約0.25〜約1.5モルの前記縮合芳香族化合物が反応される、上記1に記載の添加剤組成物。
【0093】
5. 前記添加剤を含有する潤滑剤組成物が、約0.5〜約5重量パーセントの成分(b)および(c)を含む、上記1に記載の添加剤組成物。
【0094】
6. 成分(i)が、ポリアルケニル置換コハク酸またはポリアルケニル置換コハク酸無水物を含む、上記1に記載の添加剤組成物。
【0095】
7. 成分(i)がポリイソブテニルコハク酸またはポリイソブテニルコハク酸無水物を含み、成分(iii)が1,8−ナフタル酸無水物を含み、成分(iv)がマレイン酸無水物を含む、上記6に記載の添加剤組成物。
【0096】
8. 前記ポリイソブテニル基が、末端ビニリデン含有量が50モルパーセントを超えるポリイソブチレンに由来する、上記7に記載の添加剤組成物。
【0097】
9. 成分(ii)の1モルあたり約0.25〜約1.5モルの成分(iv)が反応される、上記1に記載の添加剤組成物。
【0098】
10. 上記1に記載の添加剤組成物を含む、潤滑剤組成物。
【0099】
11. 洗浄剤、非金属性摩擦調整剤、抗酸化剤、錆防止剤、粘度指数改善剤、乳化剤、解乳化剤、腐食防止剤、抗摩耗剤、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート、灰分不含有アミンリン酸塩、消泡剤および流動点降下剤の群から選択される1以上の構成要素をさらに含む、上記10に記載の潤滑剤組成物。
【0100】
12. 油溶性チタン含有添加剤をさらに含む、上記10に記載の潤滑剤組成物。
【0101】
13. エンジン中のピストンデポジットを制御するための方法であって、潤滑粘度を有する基油、および
(a)潤滑剤組成物の全重量に基づいて、潤滑剤組成物に対してモリブデンが重量で約20〜約300ppm以下を占める、有機モリブデン化合物と、
(b)ホウ素化ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤と、
(c)(i)ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物と、(ii)ポリアミンと、(iii)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物と、(iv)非芳香族ジカルボン酸または非芳香族ジカルボン酸無水物との反応産物とを含み、ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物のヒドロカルビル基が、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が1800ダルトンを超え、
(b)対(c)の重量比が約1:1〜約4:1の範囲である、潤滑剤用添加剤組成物
を含む、潤滑剤組成物により、エンジンを潤滑する工程を含む方法。
【0102】
14. 成分(b)の前記ヒドロカルビル置換基が、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が約1000〜約1600ダルトンの範囲にあるポリオレフィンに由来する、上記13に記載の方法。
【0103】
15. 成分(c)(iii)が1,8−ナフタル酸無水物を含む、上記13に記載の方法。
【0104】
16. 成分(c)(i)がマレイン酸無水物を含む、上記13に記載の方法。
【0105】
17. 前記潤滑剤組成物が、約0.5〜約5重量パーセントの分散剤用添加剤組成物を含む、上記13に記載の方法。
【0106】
18. 成分(c)(i)がポリイソブテニルコハク酸またはポリイソブテニルコハク酸無水物を含み、成分(c)(ii)が3〜5の窒素原子を含有するポリアミンを含む、上記13に記載の方法。
【0107】
19. 成分(c)(i)および(c)(ii)と反応させる成分(c)(iii)のモル比が約0.25〜約1.5の範囲であり、成分(c)(i)および(c)(ii)と反応させる成分(c)(iv)のモル比が約0.25〜約1.5の範囲である、上記13に記載の方法。
【0108】
20. 前記潤滑剤組成物が、洗浄剤、分散剤、摩擦調整剤、抗酸化剤、錆防止剤、粘度指数改善剤、乳化剤、解乳化剤、腐食防止剤、抗摩耗剤、金属ジヒドロカルビルジチオホ
スフェート、灰分不含有アミンリン酸塩、消泡剤および流動点降下剤の群から選択される1以上の構成要素をさらに含む、上記13に記載の方法。
【0109】
21. 前記潤滑剤組成物が油溶性チタン含有添加剤をさらに含む、上記13に記載の方法。
【0110】
22. エンジン潤滑剤組成物のエマルション安定性を維持するための方法であって、潤滑粘度を有する基油、および
(a)潤滑剤組成物の全重量に基づいて、潤滑剤組成物に対してモリブデンが重量で約20〜約300ppm以下を占める、有機モリブデン化合物と、
(b)ホウ素化ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤と、
(c)(i)ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物と、(ii)ポリアミンと、(iii)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物と、(iv)非芳香族ジカルボン酸または非芳香族ジカルボン酸無水物との反応産物とを含み、ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはヒドロカルビル−ジカルボン酸無水物のヒドロカルビル基が、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量が1800ダルトンを超え、
(b)対(c)の重量比が約1:1〜約4:1の範囲である、潤滑剤用添加剤組成物
を含む、潤滑剤組成物により、エンジンを潤滑する工程を含む方法。
【0111】
23. 成分(c)(i)の前記ヒドロカルビル基が、末端ビニリデン含有量が50モルパーセントを超えるポリイソブテンに由来するポリイソブテニル基を含む、上記22に記載の方法。