【実施例】
【0047】
〔加
水燃料用添加剤の製造方法〕
本実施例においては、炭素数16以上の脂肪酸としてオレイン酸を使用し、グリコール系アルコールとしてプロピレングリコールを使用
し、アルコールとしてエタノールを使用した。
【0048】
加
水燃料用添加剤は、まず、撹拌機の撹拌槽に、界面活性剤であるオレイン酸1.30kg(65重量部)、プロピレングリコール0.24kg(12重量部)、エタノール0.34kg(17重量部)、を投入して混合し、5分間撹拌する。なお、この撹拌時間は、前記各成分の配合割合や量の違いで適宜調整することができる。この攪拌時間は、例えば、5〜10分間としてもよい。
【0049】
前記のようにオレイン酸、プロピレングリコール及びエタノールを混合した後、撹拌槽にアンモニア水(25%溶液)0.12kg(6重量部)を加えながら、10分間撹拌・混合する。この攪拌時間は、例えば、5〜10分間としてもよい。
【0050】
その後、前記混合物である溶液に気泡状物質が発生し、溶液の温度が反応熱の発生により、40〜55℃位まで徐々に上昇する。なお、温度については外気温などの条件によって前記温度範囲から逸脱することがあってもよい。
【0051】
前記のような溶液中の気泡状物質の発生と溶液の温度の上昇は、化学反応の進行を意味していると思われるが、そのメカニズムについては明らかではない。そして、そのまましばらく撹拌を続けると、この気泡状物質が徐々に消滅していき、溶液の温度も元の温度に戻るので、これが反応の終了を意味すると思われる。このようにして、加
水燃料用添加剤2.0kgを製造することができた。
【0052】
前記製造方法で使用する撹拌機は、任意・公知のものが使用される。撹拌方法については、アジテータ、循環ポンプ、ラインミキサーなど、様々な方法があるが、本発明に係る製造方法においては、市販の循環ポンプにより循環させるだけの簡単な方法で撹拌を行った。循環ポンプの吐量など、撹拌の強さについて特に限定するものではないが、気泡が発生するような激しい撹拌を行う必要はない。
〔加
水燃料の製造方法〕
次に、前記のようにして製造された加
水燃料用添加剤を用いた加
水燃料を製造する方法について説明する。
【0053】
撹拌機を使用し、燃料油であるA重油6.0kg(60重量部)と前記のようにして製造された加
水燃料用添加剤2.0kg(20重量部)を混合し、5分間撹拌する。撹拌時間はこれに限定するものではなく、前記原料の配合割合や量の違いで適宜調整することができる。この攪拌時間は、例えば、5〜10分間としてもよい。
【0054】
前記撹拌作業によって十分に撹拌することにより、燃料油の中に加
水燃料用添加剤を満遍なく均一に混合することが重要である。満遍なく均一に混合することで、この後加えられる水を燃料油の中に均一に分散し、可溶化・包含させることが可能になる。
【0055】
次に、燃料油に加
水燃料用添加剤が加えられ撹拌された溶液に、水2.0kg(20重量部)を加えながら、さらに撹拌する。この撹拌時間は本実施例では10分間であるが、撹拌時間はこれに限定するものではなく、各原料の配合割合や量の違いで適宜調整することができる。この攪拌時間は、例えば、5〜10分間としてもよい。
【0056】
このような工程を経ることで、燃料油中には水の粒子が細かくなって均等に分散し、可溶化・包含されたものと思われ、乳化することなく、原料の燃料油であるA重油そのものと同等の透明度を有する加
水燃料10.0kgを製造することができた。
【0057】
なお、加
水燃料を製造する際に各成分を混合する順序は、燃料油に加
水燃料用添加剤を入れた後、水を入れるのが重要である。加
水燃料用添加剤と水を直接混合するとドロドロの粘性を有する状態となるため、混合する順序に間違いがないようにする。
【0058】
また、加
水燃料の製造に使用する撹拌機は、本実施例ではラインミキサーであるが、他の撹拌機を使用することもできる。また、本実施例に係る加
水燃料用添加剤を使用した加
水燃料は、原料である水の種類について特に限定することなく使用することができる。つまり、いわゆる硬水でも軟水でも使用することができ、普通の水道水や井戸水を使用することもできる。
【0059】
本実施例に係る加
水燃料の外観を経時的に観察した結果について以下に説明する。
比較対象となる燃料としては、本実施例の加
水燃料の原料であり、漁船の燃料として使用しているものと同等のA重油を使用した。
【0060】
表1は、A重油と、本実施例に係る加
水燃料の製造後における経過時間の異なるサンプルS1、S2の外観を示すデータである。
【0061】
【表1】
〔考察〕
表1から分かるように、製造直後のサンプルS1は、原料の燃料油であるA重油そのものとそれ程違わない透明度を有しており、更に、製造後878日(約二年五ヶ月)が経過したサンプルS2もサンプルS1に比べれば色濃くなったが透明度を有する状態を維持していた。また、サンプルS1、S2共に燃料油であるA重油と水の分離も二層化も認められなかった。このように、本実施例に係る加
水燃料は、製造後、長期にわたって燃料油と水の分離及び二層化が起こらない状態を維持できることがわかった。
〔燃焼試験〕
本実施例に係る加
水燃料の燃焼試験の結果について以下に説明する。
【0062】
比較対象となる燃料としては、本実施例の加
水燃料の原料であり、漁船の燃料として使用しているものと同等のA重油を使用した。
また、A重油と本実施例に係る加
水燃料との燃焼試験は、バーナーボイラーを使用して行った。データの測定は、環境衛生科学研究所において、オルザット法、円形ろ紙方、化学発光法、中和滴定法など、JIS規格に沿った測定方法で測定した。
【0063】
具体的には、CO
2等の排出ガス組成をオルザット法、煤塵濃度を円形ろ紙法、窒素酸化物濃度を化学発光法、硫黄酸化物濃度を中和滴定法、水分量を吸湿管法、酸素濃度をジルコニア式で測定した。
【0064】
なお、使用したバーナーボイラーは、三州社製のビニールハウス暖房機SK−200KM−DFであり、使用した循環ポンプは、荏原製作所社製の15GPE6.4型であり、ラインミキサーは、OHR社製のスタティクミキサーF型を使用した。
【0065】
表2は、A重油と、本実施例に係る加
水燃料の製造後における経過時間の異なるサンプルS1、S2の燃焼性能を比較したデータである。
【0066】
【表2】
〔考察〕
表2から、本実施例に係る加
水燃料は、A重油と比較して燃焼温度がやや向上することが認められた。また、加
水燃料は、温室効果ガスであるCO
2を始めとする煤塵、窒素酸化物、硫黄酸化物等の各種環境汚染物質の排出量が大幅に低減することがわかった。しかも、加
水燃料の製造後における経過時間に関わらず、サンプルS1、S2は、ほぼ同等の値を示した。
【0067】
また、前記燃焼試験の結果から、一応次のようにまとめることができる。
すなわち、バーナーボイラーでの加
水燃料の燃焼は、燃料油であるA重油滴の燃焼であり、A重油滴の表面に物理的現象により気化したA重油と空気中の酸素が混合気を形成して燃焼が進行するようである。そして、加
水燃料に含まれている水の粒子がこの燃焼により輻射熱を受けて加熱され、沸点に達して次々とミクロ爆発を起こし、周囲のA重油滴を飛散させることによりA重油の二次微粒化が起こるものと考えられる。
【0068】
このように、燃料油であるA重油が瞬時に細かくなる(超微粒化する)ことにより、空気との接触面積が増大し、急速に完全燃焼が行なわれ、燃焼排ガス中の煤煙や未燃炭素の発生を抑えると思われる。また、この接触面積の増大は、燃焼に必要な空気量が過剰になることを抑え、排気ガスによる熱の持ち去りを低く抑えることができるので、省エネルギー効果が大きくなる。
【0069】
この条件を満たすためには、燃料油の粒子の中に水の粒子を細かくして均一に分散・包含させることが最も重要であるが、通常、水の粒子は表面張力が比較的大きいため、例えば20〜40ナノメートルまで細かくすることは困難であり、従来のエマルジョン燃料はこの水の粒子を細かくすることが十分にできていないために乳化した状態となっていた。
【0070】
表3は、本実施例の加
水燃料と従来のエマルジョン燃料の特徴の比較を示したものである。エマルジョン燃料については、日本国内だけでも数多くの会社が実験、研究を行っており、容易に入手することができる。ここでは、その中の1つのエマルジョン燃料を比較例として使用した。
【0071】
【表3】
本実施例に係る加
水燃料用添加剤は、燃料油に混合される水の粒径を20〜40ナノメートルまで細かくすることが可能であると思われる。水の粒径がナノメートル単位であることは、水がA重油に可溶化し、乳化することなく、透明度がA重油とそれ程変わらないことで証明することができる。これにより、加
水燃料を単なる燃料油・水の混合ではなく、燃料油であるA重油の粒子の中に細かくなった水の粒子が均一に分散した可溶化・包含状態とすることができる。
【0072】
なお、エマルジョン燃料に含まれる水の粒子の大きさはマイクロメートル単位であり、ナノメートル単位まで細かくすることができないために乳化した状態となる。
このように、本実施例に係る加
水燃料は、エマルジョン燃料と比較して、燃焼温度・燃焼効率及び燃焼カロリーが高く燃費が低下しない。また、燃料油と水が乳化することなく透き通った包含状態となっているために分離したり二層化することがない。したがって、長期にわたる貯蔵と、輸送をすることが可能であり、装置の腐食等、燃焼機関への影響も低減できる。
〔発電機出力試験〕
続いて、本実施例に係る加
水燃料の発電機出力試験の結果について以下に説明する。この試験では、発電機として、西鉄テクノサービス株式会社建設機械事業部の福岡営業所にある型式DCA90SPH(発電機容量90KVA/220V/60Hz/236A/力率0.8)の発電機を使用し、また、負荷装置として同営業所の型式LE−125の装置を使用した。
【0073】
比較対象となる燃料としては、本実施例の加
水燃料の原料であり、漁船の燃料として使用しているものと同等のA重油を使用した。
その結果を、以下の表4に示す。
【0074】
【表4】
表4に示すように、負荷率100%の場合には、実施例Aは比較例aと比べてやや回転数の低下が確認された。しかし、電流値は、発電機に設けられた自動電圧調整器によって定格電流を発生させることで、実施例Aと比較例aとの間で差は認められなかった。
【0075】
さらに、上記の試験に使用した加
水燃料中のA重油の代わりに軽油を使用して製造した加
水燃料についても、上記と同様の発電機出力試験を行った。ここでは、比較対象となる燃料として、当該加
水燃料の原料である軽油を使用した。
【0076】
その結果を、以下の表5に示す。
【0077】
【表5】
表5に示すように、負荷率100%の場合には、実施例Bは比較例bと比べてやや回転数の低下が確認された。しかし、電流値は、発電機に設けられた自動電圧調整器によって定格電流を発生させることで、実施例Bと比較例bとの間で差は認められなかった。
【0078】
以上より、発電機出力試験では、本発明に加
水燃料(実施例AおよびB)とJIS燃料(比較例aおよびb)との間で同等の出力が得られることが確認された。
以上、本発明について説明したが、本発明は上記実施形態だけに限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術範囲に包含される。