(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933072
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】合成ガスを製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
C10J 3/62 20060101AFI20160526BHJP
C10J 3/64 20060101ALI20160526BHJP
C10J 3/46 20060101ALI20160526BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
C10J3/62
C10J3/64
C10J3/46 GZAB
C10J3/46 C
C10J3/46 D
C10J3/46 E
C10J3/46 M
B09B3/00 302F
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-90065(P2015-90065)
(22)【出願日】2015年4月27日
(62)【分割の表示】特願2011-513451(P2011-513451)の分割
【原出願日】2009年6月11日
(65)【公開番号】特開2015-180734(P2015-180734A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2015年4月27日
(31)【優先権主張番号】0801364-1
(32)【優先日】2008年6月11日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】509167224
【氏名又は名称】コルトゥス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】リュングレン、ロルフ
【審査官】
▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−035837(JP,A)
【文献】
特表平07−502766(JP,A)
【文献】
実公平6−043160(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J,C10B,F23C,B09B
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有材料の熱分解により炭素粒子(C)とバーナ燃料とを入手し、
熱分解からの炭素粒子(C)をプロセスガス(P)と共に反応器(1)に供給し、
反応器(1)に配置される、閉鎖された一端部を有するバーナ(Br1〜Brn)に、熱分解からの燃料を供給し、
反応器(1)内でバーナ(Br1〜Brn)の燃焼とプロセスガス(P)との間に直接的なガス交換が生じないように、バーナ(Br1〜Brn)の燃焼がガス化の流れから分離されたバーナ(Br1〜Brn)からの放射熱により、炭素粒子(C)とプロセスガス(P)とを、炭素粒子(C)が存在する同じ空間で間接的に加熱することにより炭素粒子(C)をガス化し、熱分解はガス化に先行して別の工程で行われ、
ガス化中に生成された合成ガス(S)を前記空間から排出する、
合成ガスを製造するための方法。
【請求項2】
ガス化中に生成される合成ガス(S)による熱交換がプロセスガス(P)を加熱するように用いられ、この加熱はプロセスガス(P)がガス化に携わる前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
内部空間を有する反応器(1)と、
反応器(1)の内部に配置される、閉鎖された一端部を有する少なくとも1つの燃焼のためのバーナ(Br1〜Brn)と、
炭素含有材料から炭素粒子(C)とバーナ燃料を製造する分離された熱分解手段と、
熱分解手段からのバーナ燃料を前記少なくとも1つのバーナ(Br1〜Brn)へ燃焼のために供給するための手段と、
炭素粒子(C)とプロセスガス(P)を反応器(1)の内部空間に供給するための手段と、
生成された合成ガス(S)を排出するための手段と
を含み、
前記少なくとも1つのバーナ(Br1〜Brn)の内部におけるバーナ燃料の燃焼は、該バーナ(Br1〜Brn)の燃焼とプロセスガス(P)との間に直接的なガス交換が生じないようにガス化の流れから分離されるように構成される、
合成ガス(S)を製造するための方法を実施するための装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのバーナ(Br1〜Brn)には燃料を該少なくとも1つのバーナの内部空間に供給するための手段が設けられ、該供給手段は反応器(1)の外部に配置される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのバーナ(Br1〜Brn)に供給される酸化剤(O)の加熱のために熱交換器(3)が該少なくとも1つのバーナ(Br1〜Brn)の供給装置に隣接して配置される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
プロセスガス(P)の加熱および合成ガス(S)の冷却のための熱交換器(2)が反応器(1)の外部に配置される、請求項3、4または5に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形カーボン粒子から合成ガスを製造するための方法および装置に関し、該カーボン粒子は熱分解により得られ、カーボン粒子のガス化は、カーボン粒子が与えられるところと同じ空間でプロセスガスの存在下でカーボン粒子を間接的に加熱することにより生じ、ガス化中に発生される合成ガスはこの空間から流出される。
【背景技術】
【0002】
ガス化は固形燃料からガス状燃料を生成するための処理である。この技術は石炭、石炭副産物、石油残渣、廃棄物およびバイオマスに用いられる。反応は加熱されそして炭素([C]還元剤)と反応する酸化気体(CO
2やH
2Oのような)に基づくものであり、一酸化炭素(CO)および水素(H
2)が形成されるとすぐに、熱は吸熱により反応を進めるように消費される。一酸化炭素(CO)と水素(H
2)の混合物は一般的に合成ガスと称される。
【0003】
慣用のガス化技術は、過熱蒸気を供給する一方、かなりのアンダーストイキオメトリック(化学量論的)条件で石炭を燃焼することである。燃焼はシステムに熱と燃焼排出ガス(CO
2およびH
2O)を提供する。燃焼せずに過熱された石炭は排出ガスおよび供給された蒸気と反応する。炭素(C)は二酸化炭素(CO
2)を一酸化炭素(CO)にそして水蒸気(H
2O)を水素(H
2)に還元する。消費される熱は温度を低下させて反応性を減少する。炭素の反応性が高温度に依存する一方、反応の平衡は温度に依存する。今日、酸素に基づいた燃焼は、空気に基づいた燃焼が発生するとはいえ、ガス化状況における燃焼の支配的形態である。
【0004】
石炭、石炭副産物、石油残渣、廃棄物およびバイオマスのガス化に伴う問題は、それらが均質の材料ではなく、異なった質量の成分(タール)および複合体成分(芳香族化合物)が反応中に放出されることである。これらの成分は確実な反応のためにはならず、合成ガスが使用可能になる、または液化炭化水素またはその他の燃料にさらに精製される前に除去される必要がある。
【0005】
ガス化反応の前に石炭、石炭副産物、石油残渣、廃棄物およびバイオマスを熱分解することにより、異なった質量の成分(タール)および複合体成分(芳香族化合物)を取り除くことが可能である。ここで得られる凝縮製品およびガスからなる熱分解製品は、ガス化工程における燃料として使用できる。前述のアンダーストイキオメトリック燃焼を伴うガス化において、熱分解反応は本工程の一部である。しかし、異なった質量の成分(タール)および複合体成分(芳香族化合物)は、ガス化工程で生産される合成ガスとして同じ反応器にある。それ故、異なった質量の成分(タール)および複合体成分(芳香族化合物)の取扱いは、反応器自体に生じる凝縮、貯蔵などのような物理的問題を除いて、ガス化をいかに効果的に行うかについての制限要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−35837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主たる目的は、開始時において本発明の重要な原理が間接的な加熱であることを画定される種類の方法および装置を提示することである。
【0008】
本発明の別の目的は、間接的加熱が炭素含有材料のために先行する熱分解段階からの燃料を使用することにある。
【0009】
本発明のまた別の目的は、工程中に生産される製品の熱容量を利用するように熱交換を用いることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
少なくとも本発明の主たる目的は、後述する独立請求項に特定さられた特色を有する方法および装置によって実現される。本発明の好ましい実施の形態は従属請求項に画定される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明による好適な方法のフロー図を示し、このフロー図はまた本方法を実現するための装置を形成するユニットを図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施例について、以下、添付の図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本方法を実現するための装置を形成する多くのユニットを図式的に示している。装置のユニットを繋ぐ導管、パイプなどは詳細には説明または図示されていない。導管、パイプなどは、それらの機能を実現するように、すなわち、装置のユニット間で気体および固体を移送するように適宜に設計されている。
【0014】
図1は、間接的に加熱されるガス化反応器1を示し、ガス化反応器1は、通常、セラミック裏付き反応器である。固体の炭素粒子CはプロセスガスPと共に反応器に供給される。炭素粒子Cはガス化前の熱分解から来る。炭素粒子Cの寸法は、プロセスガスPを伴うガス流の反応器への流入によりそれに沿って進まされるのに十分なものであることが好ましい。プロセスガスPは燃焼段階からの排気Aを蒸発または再利用して精製できる。プロセスガスPが排気Aを再利用する場合、水蒸気(H
2O)と二酸化炭素(CO
2)を共に含んでいる。プロセスガスPは、熱交換器2で消費する合成ガスSから回収された熱により暖められる。ガス化反応器1で生じる反応は、炭素CがプロセスガスP(H
2OおよびCO
2)の内容を合成ガスS(H
2およびCO)に還元することであり、その還元はバーナBr1からBrnによる工程に供給される熱を使用する。
【0015】
ガス化反応器1はバーナBr1からBrn(nはガス化反応器1に必要なバーナの数である)により間接的に加熱される。熱はBr1からBrnの放射によりガス化反応に提供され、燃焼は内部放射管を発生、すなわち、ガス化の流れから分離される。非直接ガス交換はガス化反応器1においてBr1からBrnとプロセスガスPまたはその反応生成物との間で生じる。
【0016】
バーナBr1からBrnは、好ましくは、先行する炭素含有材料の熱分解段階から燃料Fを供給される。空気、酸素富化空気または純粋酸素の形態の酸化剤Oが燃焼に供給される。熱交換器3は、流出する排出ガスAからの熱を回収し、流入する酸化剤Oを加熱する。互換的に、熱交換器3の熱は、流入する水を蒸発するように、或いは先行する熱分解および乾燥工程のために使用できる。排出ガスAは排煙ガス洗浄に進み、そこにおいて、流入する炭素含有材料からの要求に基づいて遠心分離、触媒洗浄、ろ過(電気的またはファブリック)およびスクラバを用いて本方法のための排出量についての要件が満足される。
【0017】
炭素Cは、先行する熱分解段階に因り、灰残渣を含む。ガス化反応器1の温度を灰の融点以上に制御することにより、スラグS1のような液体形態に適切に取り除くことができる。
【0018】
流出する合成ガスSは燃焼目的のエネルギーガスとして或いは液体燃料にさらに精製(典型的な自動車燃料、メタノール製品などのためのフッシャー・トロブス)するための基材として使用できる。
【0019】
ガス化反応器1内の圧力は大気圧から非常に高い圧力(>100bar)まで制御できる。ガス化反応器1内の温度は合成ガスSの最大収率に達するように制御される。典型的な値は900〜1300℃である。
【0020】
プロセスガスPおよび炭素Cの間接的加熱はまた反応器内の配管システムにおいても生じ、そこにおいて、ボイラにもっとも似ているが、異なったより高い温度で、この場合の反応器および配管システムがガス化反応器1となるように燃焼が生じる。
【0021】
ガス化反応器1の配列はガス化工程に必要な反応時間に依存し、同様に選定される温度に依存する。この配列は、非常にコンパクトなガス化工程を達成できるパイプ形態で回転対称にできるか、或いはボイラに似たそして回転対称を必要としないより膨大な設計となる。反応器の寸法は小規模から非常に大きな工業的規模まで設計できる。
【0022】
ガス化反応器1からの合成ガスS(H
2およびCO)は、流入するプロセスガスPの組成により50%までの水素と残りの一酸化炭素を含む。
【0023】
間接的に加熱されるガス化反応器の熱効率は非常に高く、事前の熱分解および追加の乾燥を含むことで、システム全体で80%もの熱効率に到達することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 ガス化反応器
2 熱交換器
3 熱交換器
A 排出ガス
Br1・・・Brn バーナ
C 炭素粒子
O 酸化剤
P プロセスガス
S 合成ガス
S1 スラグ