(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933079
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】コンクリート型枠組立て用楔板
(51)【国際特許分類】
E04G 17/07 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
E04G17/07
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-119961(P2015-119961)
(22)【出願日】2015年6月15日
(62)【分割の表示】特願2012-252848(P2012-252848)の分割
【原出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-180805(P2015-180805A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143558
【氏名又は名称】株式会社国元商会
(72)【発明者】
【氏名】北尾 徴
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−150050(JP,U)
【文献】
実公昭48−036722(JP,Y1)
【文献】
実開平03−014251(JP,U)
【文献】
実開昭50−011332(JP,U)
【文献】
実開昭49−108859(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 17/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に沿った一側辺に対して他側辺が傾斜すると共に、長さ方向の両端に、互いに平行な小巾端辺と大巾端辺とを備える楔板であって、前記一側辺の長さ方向両端には、前記小巾端辺と大巾端辺それぞれの延長側辺を有する突起部が連設され、前記他側辺の長さ方向両端には、この他側辺と前記小巾端辺及び大巾端辺との間の角が切欠された切欠き凹部が形成され、同一の楔板を前記小巾端面の向きが交互に逆向きとなり且つ前記一側辺と前記他側辺とが互いに隣接するように並べたとき、前記一側辺両端の突起部が、隣接する他の楔板の前記他側辺両端の切欠き凹部に嵌まり込むと共に、各楔板の長さ方向の両端の端面が、互いに平行な直線状に連続するように構成されている、コンクリート型枠組立て用楔板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠板の外側に配置された2本の並列角鋼管バタを前記型枠板に固定するときの手段として使用される、コンクリート型枠組立て用楔板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
型枠板の外側に配置された2本の並列角鋼管バタを前記型枠板に固定する場合、型枠板から突出するセパレーターの先端螺軸部に一端部を螺合連結した楔孔付き棒状締結具を挟むように2本の並列角鋼管バタを配置し、この並列角鋼管バタの外側で、前記楔孔付き棒状締結具の楔孔に楔板を、2本の並列角鋼管バタを横断する向きに打ち込まれる楔板が使用されている。このような用途に使用される従来の楔板として、特許文献1に記載されるように、楔板の前記2本の並列角鋼管バタに近い内側の側辺の長さ方向の両端に、内側に突出する突起部を形成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58−150050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の楔板では、楔板の長さと同一巾の帯板を打ち抜いて楔板を製造する場合、両端の突起部間の部分が除去されることになるので、両端の突起部を持たない楔板の製造時と比較して、一定長さの帯板から打ち抜いて製造し得る楔板の本数が少なくなり、コスト高になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるコンクリート型枠組立て用楔板を提案するものであって、本発明に係るコンクリート型枠組立て用楔板は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、長さ方向に沿った一側辺(11)に対して他側辺(12)が傾斜すると共に、長さ方向の両端に、互いに平行な小巾端辺(13)と大巾端辺(14)とを備える楔板(10)であって、前記一側辺(11)の長さ方向両端には、前記小巾端辺(13)と大巾端辺(14)それぞれの延長側辺を有する突起部(15,16)が連設され、前記他側辺(12)の長さ方向両端には、この他側辺(12)と前記小巾端辺(13)及び大巾端辺(14)との間の角が切欠された切欠き凹部(17,18)が形成され、同一の楔板(10)を前記小巾端面(13)の向きが交互に逆向きとなり且つ前記一側辺(11)と前記他側辺(12)とが互いに隣接するように並べたとき、前記一側辺両端の突起部(15,16)が、隣接する他の楔板(10)の前記他側辺両端の切欠き凹部(17,18)に嵌まり込むと共に、各楔板(10)の長さ方向の両端の端面(13,14)が、互いに平行な直線状に連続する構成になっている。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明のコンクリート型枠組立て用楔板によれば、一定巾の帯状鉄板を打ち抜いて楔板を製造する場合の材料の無駄をなくし、2本の並列角鋼管バタを挟む突起部を備えた楔板で有りながら、このような突起部を持たない楔板と同量の鉄板で軽量且つ安価に製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明に係るコンクリート型枠組立て用楔板の一使用例を示す縦断側面図である。
【
図2】
図2Aは、本発明の一実施例に係る楔板を示す斜視図、
図2Bは、同楔板の正面図、
図2Cは、従来の楔板を示す正面図である。
【
図3】
図3は、上記楔板の製造方法を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1において、1は型枠板であって、相手側の型枠板などとの間でコンクリート打設空間2を形成する。3はセパレーターであって、相手側の型枠板などに一端部が固定され、他端側の螺軸部3aが型枠板1に設けられた貫通孔1aから外側に突出する状態で、当該螺軸部3aの基部に取付けられた受け板3bで型枠板1を受け止める。4は棒状締結具であって、一端に設けられたネジ孔部5をセパレーター3の螺軸部3aに螺合締結することにより、セパレーター3の受け板3bとの間で型枠板1を挟持する状態で型枠板1に取り付けられる。この棒状締結具4には、その長さ方向に沿って直列するように、それぞれ所定長さの2つの楔孔6,7が設けられている。このセパレーター3とこれにネジ結合された棒状締結具4は、直線状に所定間隔で配設される。
【0009】
型枠板1の外側には、型枠板1に当接する内側角鋼管バタ8が鉛直向き(又は水平向き)で水平方向(又は鉛直方向)適当間隔おきに配置され、この内側角鋼管バタ8の外側には、直線状に所定間隔で配設されている前記棒状締結具4を両側から挟むように2本一組の水平方向の外側角鋼管バタ9A,9Bが当該内側角鋼管バタ8に対して直交する向きで配置されている。10は本発明に係る楔板であって、外側角鋼管バタ9A,9Bの外側で各棒状締結具4の楔孔7に、当該外側角鋼管バタ9A,9Bを横断する向きに打ち込まれている。
【0010】
上記楔板10は、
図2A,Bにも示すように、長さ方向に沿った一側辺11に対して他側辺12が傾斜すると共に、長さ方向の両端に、互いに平行な小巾端辺13と大巾端辺14とを備えるものであって、前記一側辺11の長さ方向両端には、前記小巾端辺13と大巾端辺14それぞれの延長側辺を有する突起部15,16が一体に連設され、前記他側辺12の長さ方向両端には、この他側辺12と前記小巾端辺13及び大巾端辺14との間の角を切欠して形成された切欠き凹部17,18が設けられている。而して、この楔板10の一側辺11の長さ方向中央付近の高さ、即ち、一側辺11と他側辺12との間の、一側辺11に対して直角方向の巾は、棒状締結具4の楔孔7の長さの内、外側角鋼管バタ9A,9Bの外側面から突出する領域長さより少し大きい程度に構成され、一側辺11の両端の突起部15,16間の間隔は、外側角鋼管バタ9A,9Bの並列方向の全体の巾より少し広くなるように構成されている。
【0011】
そして楔板10は、外側角鋼管バタ9A,9B間から突出している棒状締結具4の楔孔7に、当該外側角鋼管バタ9A,9Bを横断する向きに小巾端辺13側から差し込んだとき、
図1に仮想線で示すように、小巾端辺13側の突起部15が、楔板差込み方向側の外側角鋼管バタ9Bの外側面から外れる少し手前で、他側辺12が楔孔7の外端に当接して、楔板10の差込みに大きな抵抗が生じるように構成されている。以上の条件を満足する楔板10は、
図2Cに示す従来の楔板(当て板を併用する楔板)10xと共に使用されていた棒状締結具4をそのまま使用するために、楔板10の一側辺11に対する他側辺12の傾斜角度は、従来の楔板10xにおける一側辺11xに対する他側辺12xの傾斜角度と等しくすると共に、楔板10の両側辺11,12間の巾は、従来の楔板10xにおける両側辺11,12間の巾よりも、併用されていた当て板の厚さtだけ大きくすれば良い。
【0012】
上記構成の楔板10を、先に述べたように、並列する2本の外側角鋼管バタ9A,9B間から突出している各棒状締結具4の楔孔7に、外側角鋼管バタ9A,9Bを横断する向きに小巾端辺13側から差し込んだとき、
図1に仮想線で示すように、小巾端辺13側の突起部15が、楔板差込み方向側の外側角鋼管バタ9Bの外側面から外れる少し手前で、他側辺12が楔孔7の外端に当接して、楔板10の差込みに大きな抵抗が生じるので、この状態からハンマーなどで楔板10の大巾端辺14を当該楔板10の長さ方向に打撃することにより、小巾端辺13側の突起部15が外側角鋼管バタ9Bの外側面上から外れて、前後両突起部15,16間の一側辺11が外側角鋼管バタ9A,9Bの外側面に当接し、この状態で楔板10が打ち込み方向に移動し、この移動に伴って、楔板10の他側辺12の傾斜によって当該楔板10が型枠板1側へ押圧され、当該他側辺12と棒状締結具4の楔孔7の外端との間の圧接力が限界に達して、それ以上の打ち込みが不能な状態になる。このとき、楔板10の他側辺12の長さ方向の中央部付近が棒状締結具4の楔孔7の外端に圧接するように構成しておくのが望ましい。この状態を以て楔板10の打ち込みが完了し、外側角鋼管バタ9A,9Bが、棒状締結具4と型枠板1を介して内側角鋼管バタ8と楔板10との間で挟み付けられて、内側角鋼管バタ8と共に型枠板1に固定される。以下同様に、全ての棒状締結具4の楔孔7に対して楔板10を打ち込むことにより、コンクリート型枠が組み立てられる。
【0013】
尚、内側角鋼管バタ8に代えて、型枠板1の周囲枠材や、内側角鋼管バタ8と同一位置に配設された桟木が使用される場合もある。又、内側角鋼管バタ8又はこれに代わる桟木などが省かれて、並列する2本の角鋼管バタ9A,9Bが型枠板1の外側面に直接当接するように配置される場合は、棒状締結具4の内側の楔孔6に楔板10を打ち込んで、上記と同様の作用により角鋼管バタ9A,9Bを型枠板1に固定することも出来る。勿論、棒状締結具4としては、楔孔6又は楔孔7のみを備えたものであっても良い。
【0014】
コンクリート型枠を解体するときは、楔板10を小巾端辺13側からハンマーで打撃して、棒状締結具4の楔孔6,7から抜き取ることになるので、少なくとも小巾端辺13側の突起部15と一側辺11との間の入隅部は、直角に形成するのではなく、図示のように滑らかな曲面で形成するのが望ましい。尚、図示の楔板10には、その大巾端辺14側の端部に貫通孔19が設けられているが、この貫通孔19は、流通過程において複数枚の楔板10を束ねるときの紐通し孔などに利用出来るが、省いても良い。
【0015】
本発明の楔板10は以上のように使用出来るものであるが、係る本発明の楔板の構成によれば、
図3からも明らかなように、小巾端面13と大巾端辺14との間の、これら両端辺に対して直角方向の横巾と等しい巾の帯状鉄板から多数枚の楔板10を、無駄な残片を生じさせることなく打ち抜いて製造することが出来、コストダウンを図ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のコンクリート型枠組立て用楔板は、2本の並列する角鋼管バタを型枠板の外側に配置し、この並列角鋼管バタを、楔孔付きの棒状締結具と楔板とを使用して型枠板に固定してコンクリート型枠を組み立てる際に有効に活用出来る。
【符号の説明】
【0017】
1 型枠板
2 コンクリート打設空間
3 セパレーター
3a 螺軸部
3b 受け板
4 棒状締結具
5 ネジ孔部
6,7 楔孔
8 内側角鋼管バタ
9A,9B 外側角鋼管バタ
10 楔板
11 一側辺
12 他側辺
13 小巾端辺
14 大巾端辺
15,16 突起部
17,18 切欠き凹部
19 貫通孔