(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面シートは、着用者の肌側に向かって隆起した凸部と、凸部間に位置する凹部とを有しており、前記低密度部が、該凸部の頂部部分であり、前記高密度部が、前記凹部の底部に存在する、請求項1又は2記載の吸収性物品。
前記高密度部は、前記表面シートの平面方向の一方向において、前記低密度部間に位置しており、且つ前記一方向に直交する方向においても、前記低密度部間に位置している、請求項1〜4の何れか1項記載の吸収性物品。
平面方向の一方向に前記低密度部が間隔を置いて配置されて低密度部の列を形成しており、該列が、前記一方向の直交方向に多列に形成されており、前記一方向の何れの位置においても、前記低密度部が該直交方向のどこかに形成されている、請求項1〜4の何れか1項記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態である使い捨ておむつ1を一部破断して示す平面図である。第1実施形態の使い捨ておむつ1(以下、単におむつ1ともいう)は、
図1に示すように、液透過性の表面シート10、液不透過性又は撥水性の裏面シート30及びこれら両シート間に配置された液保持性の吸収体40を備えている。
また、おむつ1は、その長手方向に、着用時に着用者の背中側に配される背側部A、股間部に配される股下部B及び腹側に配される腹側部Cを有している。
おむつ1の長手方向の両側それぞれには、撥水性不織布からなるサイドシート70が、表面シート10の両側部を覆うように配されている。表面シート10及び各サイドシート70は、吸収体40の周縁より外方において、裏面シート30に接合されている。吸収体40の側縁より外方のレッグフラップ部には、レッグギャザー形成用の弾性部材71が配されており、上述したサイドシート70のおむつ幅方向中央側の側縁には、立体ギャザー形成用の弾性部材72が配されている。
【0011】
おむつ1は、いわゆる展開型のおむつであり、背側部Aの両側縁部に設けられたファスニングテープ50,50を、腹側部Cの外面に設けられたランディングテープ60に止着することにより、身体に装着して使用する。なお、裏面シート30、吸収体40、ファスニングテープ50、ランディングテープ60、サイドシート70、弾性部材71,72としては、それぞれ、この種の物品に使用されているものを特に制限なく使用することができる。吸収体40としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸水性ポリマーの粒子等を保持したものを、ティッシュペーパや透水性の不織布で被覆してなるもの等を用いることができる。
【0012】
第1実施形態における表面シート10は、
図2に示すように、着用者の肌側に向けられる上層の不織布11と吸収体40側に配される下層の不織布12とを有する不織布製シートからなり、該上層の不織布11と該下層の不織布12とは部分的に接合されて多数の接合部13が形成されている。上層の不織布11は、接合部13以外の部分において着用者の肌側に向けて突出して、内部が空洞となっている多数の凸部14を形成している。表面シート10における凸部14,14間は、
図2に示すように、相対的に凹部となっており、該凹部の底部に接合部13が存在している。凸部14及び接合部13は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されており、更に該列が多列に配置されている。上層の不織布11は、実質的に伸縮しないシート状物からなり、下層の不織布12は、実質的に伸縮しないシート状物からなる。
図2に示した凸部14は、その底面が矩形である。また凸部14は、全体として稜線が丸みを帯びた扁平な直方体又は截頭四角錐体となっている。一方、接合部13は矩形となっている。本発明における不織布製シートには、単層の不織布の他、2層又は3層以上の積層不織布、本実施形態のように、2枚の不織布を、両者間に部分的な空隙が形成されるように所定のパターンで部分的に接合してなるシート等が含まれる。
【0013】
凸部14及び接合部13は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されている。本実施形態においては、同図中X方向に沿って凸部14及び接合部13が交互に配置され列をなしている。X方向は、後述する立体シート10’及び表面シート10の製造工程における流れ方向と一致し、また表面シート10がおむつ1(吸収性物品)に組み込まれたときの該吸収性物品の長手方向とも一致する。凸部14及び接合部13からなる列は、
図2中Y方向に亘って多列に配置されている。
【0014】
表面シート10においては、一の列における任意の一つの凸部に着目したときに、該列に隣り合う左右の列においては、該一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置していない。「一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置していない」とは、一つの凸部に着目したときに、隣り合う列の完全に同位置に、凸部が位置していないことを意味している。つまり、
図2におけるY方向、換言すれば、おむつの幅方向(Y方向)に関して、隣り合う列間における凸部が完全に連なるように凸部が配置されていないことを意味する。従って、一つの凸部と隣り合う位置には、凸部の一部と接合部の一部の双方が存在していてもよいし、或いは接合部のみが存在していてもよい。おむつ1のY方向に関して凸部が完全に連なるように配置されていると、見掛け上Y方向に長く延びた凸部が形成されることになり、その場合には液が長く延びた凸部に沿って流れ出しやすくなり、液漏れの原因となる恐れがある。図示例においては、隣り合う2つの列において、接合部は半ピッチずつずれて配置されている。従って、一の列における任意の一つの凸部14に着目したときに、該一つの凸部14はその前後及び左右が接合部13によって取り囲まれている。接合部13及び凸部14は千鳥格子状に配置されている。
【0015】
表面シート10は、その平面方向に、2枚の不織布11,12間が接合されている接合部13を有する接合部領域13Aと、2枚の不織布11,12間が接合されておらずに上層の不織布11が凸部14を形成している凸部領域14Aを有しており、凸部領域14Aの密度が、接合部領域13Aの密度よりも低くなっている。
表面シート10及び後述する立体シート10’の平面方向は、それらのシートの上下両面と平行な方向である。
なお、本実施形態のように、凸部14の内部が空洞である場合、凸部領域14Aにおける表面シート10又は立体シート10’の密度は、その空洞部分の容積を、密度算出の基礎とするシートの体積に含めないで算出する。
【0016】
本実施形態における表面シート10においては、接合部領域13Aと、凸部領域14Aとが、相互に密度が異なる高密度部及び低密度部であり、
図3に示すように、低密度部である凸部領域14Aに、高密度部である接合部領域13Aより多い量のスキンケア剤5が適用されている。適用という表現には、不織布の表面に塗布してある場合、含浸等により不織布や不織布製シートの内部に含有させてある場合の何れもが含まれるが、本実施形態においては、後述する方法により、凸部領域14Aにおける上層の不織布11及び下層の不織布12の両者にスキンケア剤5を含有させてある。また、多い量のスキンケア剤における「量」は、表面シートの同一面積当たりの量(例えば0.5〜10g/m
2)である。また、低密度部に高密度部より多い量のスキンケア剤が適用されているという表現には、高密度部がスキンケア剤が全く含有していない場合と、高密度部にもスキンケア剤が含まれているが、その量が低密度部より少ない場合とが含まれる。
【0017】
本実施形態のおむつ1は、通常の展開型おむつと同様にして装着して使用することができる。上述した表面シート10は、上層の不織布11側を肌に向けられる側に向け、下層の不織布12側を吸収体40側に向けておむつ1に組み込まれている。
【0018】
本実施形態のおむつ1の表面シート10の低密度部である凸部領域14Aは、高密度部である接合部領域13Aに比して繊維間空隙が大きい。その繊維間空隙が大きい低密度部にスキンケア剤を含有させてあるため、高密度部に含有させる場合に比して相対的の多い量のスキンケア剤を表面シート10に保持させることができる。また、繊維間空隙が小さい高密度部に多い量のスキンケア剤を保持させようとした場合には、液透過性に悪影響を与えやすいが、本実施形態のように低密度部にスキンケア剤を保持させる場合には、そのような問題が生じにくい。
【0019】
また、本実施形態のおむつ1における表面シート10は、高密度部である接合部領域13Aと低密度部である凸部領域14Aとが、表面シート10の平面方向に分布している。また、上述したように、一つの凸部14の前後及び左右が凹部によって取り囲まれており、換言すれば、低密度部である凸部領域14Aが、高密度部である接合部領域13Aによって取り囲まれている。より具体的には、高密度部である接合部領域13Aは、表面シート10の平面方向の一方向(X方向)において、低密度部である凸部領域14A,14A間に位置しており、且つ前記一方向に直交する方向(Y方向)においても、低密度部である凸部領域14A,14A間に位置している。
低密度で柔軟な低密度部にスキンケア剤を保持させることにより、肌にやさしくフィットさせてスキンケア剤を肌に移行させ易くすることができる。また、低密度部が高密度部によって囲まれていることで、スキンケア剤が表面シートを不用意に移動するのを防止でき、肌に必要量を与えるのにも適している。
【0020】
なお、高密度部と低密度部とを表面シートの平面方向に分布させる場合、該表面シートの平面視において、低密度部の面積が高密度部の面積より広いことが、スキンケア剤を肌に移行させやすく、スキンケア剤の単位面積当りの塗布量を低くしても十分な量を肌に移行させられる点から好ましい。低密度部の面積に対する高密度部の面積の比は、2〜20、特に4〜10程度であることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態における表面シート10においては、
図2及び
図3に示すように、平面方向の一方向(X方向)に、低密度部である凸部領域14Aが間隔を置いて配置されて低密度部の列を形成しており、該列が、該一方向の直交方向(Y方向)に多列に形成されている。そして、表面シート10の前記一方向(X方向)の何れの位置においても、低密度部である凸部領域14Aが該直交方向(Y方向)のどこかに形成されている。
即ち、低密度部である凸部領域14Aが、直交方向(Y方向)に亘って全く形成されていない領域がないようにすることによって、表面シートの低密度部である凸部領域14Aを人体の曲面に形状を追従させやすくでき、スキンケア剤を肌に移行させるのに良好である。
【0022】
また、低密度部である凸部領域14Aが肌に当接する肌当接領域を形成する一方、高密度部である接合部領域13Aは、肌に当接しない非肌当接領域に形成してある。
高密度部によりシートに強度を確保すると共に非肌当接領域を形成させると共に、低密度の柔軟な領域で肌当接領域を構成し且つ該領域にスキンケア剤を多く適用することにより、肌にやさしくフィットさせてスキンケア剤を肌に移行させ易くすることができる。
【0023】
本実施形態における表面シート10は、前述したように、後述する方法により、凸部領域14Aにおける上層の不織布11及び下層の不織布12の両者にスキンケア剤5を含有させてある。また、その凸部領域14Aにおける、上層の不織布11と下層の不織布12とを比較すると、
図3に示すように、上層の不織布11の方が、下層の不織布12よりも、同一面積当たりのスキンケア剤5の付着量が多い。また、凸部領域14Aにおける下層の不織布12と接合部領域13Aとを比較すると、
図3に示すように、凸部領域14Aにおける下層の不織布12の方が接合部領域13Aよりも、同一面積当たりのスキンケア剤5の付着量が多い。
【0024】
凸部領域14の肌当接面側を構成する上層の不織布11に下層の不織布12よりも多い量のスキンケア剤5が付着していることにより、肌への移行性が高く、スキンケア効果が高い表面シートが得られる。
また、凸部領域14における下層の不織布12にも、少量のスキンケア剤5を付着させることにより、肌に当接する肌当接領域のスキンケア剤5が保持され易くなり、スキンケア効果の持続性が向上する。
凸部領域14における下層の不織布12にもスキンケア剤5を付着させることにより、おむつ使用時の着用者の荷重等により凹凸が潰れた際にも、スキンケア剤が保持され易くなる。
【0025】
凸部領域14Aにおいて、下層の不織布12の密度は、上層の不織布11の密度と同等であるか、上層の不織布11の密度よりも大きいことが好ましい。
【0026】
本発明で用いるスキンケア剤としては、着用者の肌に対して保護、治癒等の効能を有するものを特に制限なく用いることができる。例えば、好ましいスキンケア剤として、特許文献3に記載した下記式(I)で表されるジアミド誘導体が挙げられる。
【0028】
上記の式(I)で表されるジアミド誘導体は、国際公開公報WO00/61097号に記載されている発明のジアミド誘導体であり、角質層の水分保持能力およびバリヤ機能を改善する、という薬効を有している。高密度部に保持されていた当該ジアミド誘導体が、吸収性物品の着用中に着用者の肌に移行すると、油性スキンケア剤として機能し、肌のかぶれを抑制/改善することができる。
【0029】
上記のジアミド誘導体を使用する場合、使用するジアミド誘導体は1種のみであってもよいし、2種以上の複数種であってもよい。
【0030】
また、本発明で使用し得る他の油性スキンケア剤としては、例えば化粧品の分野においてエモリエント剤として用いられているもの等を用いることができる。
上記他の油性スキンケア剤の具体例としては、流動パラフィン、シリコーンオイル、動植物油(オリーブ油、ホオバ油、ベニバナ油、スクワランおよびスクワレン等)、モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド、脂肪族エーテル(ミリスチル−1,3−ジメチルブチルエーテル、パルミチル−1,3−ジメチルブチルエーテル、ステアリル−1,3−ジメチルブチルエーテル、パルミチル−1,3−メチルプロピルエーテル、ステアリル−1,3−メチルプロピルエーテル等)、イソステアリル−コレステロールエステル、パラフィンワックス、C
12〜C
22脂肪酸、C
12〜C
44脂肪酸エーテル、C
12〜C
22脂肪アルコール、ワセリン、脂肪酸ソルビタンエステル(モノエステル、ジエステル、およびトリエステルのいずれでもよい。)、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル(モノエステル、ジエステル、およびトリエステルのいずれでもよい。)、金属石験(ステアリン酸マグネシウム等)、ショ糖脂肪酸エステル、シクロデキストリン脂肪酸エステル、シリコーン、シリコーン系レジン、特許文献1又は特許文献2に記載されている発明で使用されるエモリエント剤やエモリエント剤と固定化剤を含むローション組成物等が挙げられる。
上記各種のスキンケア剤は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0031】
本実施形態における表面シート10は、例えば、特開2004−174234号公報に記載の、吸収性物品用の表面シートの製造方法と同様にして立体シート10’を製造し、その立体シート10’に、スキンケア剤を、凸部領域14Aに優先的に多くのスキンケア剤が付着するように付与することにより得られる。
好ましい製造方法の一例においては、先ず、
図4に示すように、周面が凹凸形状となっている第1のロール15と、該第1のロール15の凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2のロール16と噛み合わせ部に、実質的に伸縮しない上層の不織布11を噛み込ませて該不織布11を凹凸賦形し、凹凸賦形した不織布11を、吸引によって第1のロール15における該周面に凹凸賦形された状態のまま保持しつつ、該不織布11に、実質的に伸縮しないシート状物からなる下層の不織布12を重ね合わせ、該下層の不織布12を、第1のロール15における凸部上に位置する上層の不織布11と接合して、凸部14を有する立体シート10’を得る。
【0032】
図4に示す製造方法においては、第1のロール15における凸部とヒートロール17の平滑な周面との間で、上層の不織布11及び下層の不織布12を部分的に加熱及び加圧して立体シート10’を得ている。そのため、得られた立体シート10’は、その平面方向に、接合部13を有する密度の高い領域(接合部領域13A)と、接合部以外の相対的に密度の低い領域(凸部領域14A)とを有している。
【0033】
次いで、得られた立体シート10’の凸部領域14Aに優先的にスキンケア剤5を付着させる。具体的には、例えば、
図5(a)に示すように、立体シート10’に、その一面側からスキンケア剤5をスプレーすると共に、立体シート10’の他面側から、スプレーしたスキンケア剤5を含む空気6を吸引する方法がある。立体シート10’は、密度が低い凸部領域14Aにおける通気性が、密度が高い接合部領域13Aにおける通気性に比して高くなっているため、
図5(b)に示すように、スキンケア剤5を含む空気6は、接合部領域13Aを透過する量より凸部領域14Aを透過する量が多くなる。これにより、凸部領域14Aに対して、接合部領域13Aよりも多い量のスキンケア剤5が付着する。
このようにして、低密度部である凸部領域14Aに、高密度部である接合部領域13Aにおけるよりも多い量のスキンケア剤5が付着した表面シート10が得られる。尚、立体シート10’の製造方向の特に説明しない点は、特開2004−174234号公報に記載の表面シートの製造方法と同様とすることができる。
【0034】
上層の不織布11及び下層の不織布12を形成するシート状物としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品における表面シートの構成材料として従来用いられている各種のシート材を、特に制限なく使用することができる。例えば、短繊維をカード法によりウエブ形成させ、その後エアスルー、ヒートロール、レジンボンド、スパンレース、ニードルパンチなどの方法で不織布にしたもの、長繊維をヒートロール、スパンレースなどの方法で不織布にしたもの、(例えばスパンボンド不織布)、また短繊維を直接シート化したもの、(例えばメルトブローン不織布)、さらには短繊維をエアレイド法にてウエブ形成させエアスルー、レジンボンドなどの方法で不織布にしたもの等の種々の不織布を用いることができる。これらの不織布における繊維の結合手段に特に制限はなく、例えば、バインダーによる結合や熱融着による結合を用いることができる。また、繊維の結合に代えて、スパンレース不織布等のように繊維の機械的な絡合を利用してもよい。不織布は、その構成繊維の繊度は1〜20dtex、特に1.5〜4dtexであることが、表面シートの強度確保、肌触りの向上等の点から好ましい。また、上層の不織布11及び下層の不織布12、特に上層の不織布11としては、実質的に非伸縮性のものを用いることが好ましい。
【0035】
また、上層の不織布11及び下層の不織布12に使用される繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル及びナイロンのようなポリアミド等の合成繊維、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、並びにコットン等の天然繊維が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、融点の高い繊維を芯とし且つ融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維等も好適に用いられる。これらの繊維は1種又は2種以上を使用することができる。尚、上層の不織布11と下層の不織布12とは、同一のものでもよく又は異なっていてもよい。また、上層の不織布11を構成する繊維と下層の不織布12を構成する繊維とは、同一のものでもよく又は異なっていてもよい。
【0036】
表面シート10において、凸部14はその高さH(
図2参照)が0.5〜5mm、特に1〜4mmであることが好ましい。また、X方向(列方向)に沿う凸部14の底部寸法Aは2〜30mm、特に2〜5mmであることが好ましく、Y方向(列方向と直交する方向)に沿う底部寸法Bは2〜30mm、特に2〜5mmであることが好ましい。また、凸部14の底面積は4〜900mm
2 、特に4〜25mm
2 であることが好ましい。X方向(列方向)での接合部13の接合長さC(
図2参照)は、0.1〜20mm、特に0.5〜5mmであることが好ましい。凸部14の平面視形状は、矩形状に限られず、円形、長円形、菱形、三角形等、他の形状とすることもできる。
【0037】
なお、第1実施形態の使い捨ておむつにおいては、表面シート10における凸部14及び接合部13からなる列が延びる方向(X方向)を、おむつ1の長手方向と略一致させて配していたが、表面シート10は、凸部14及び接合部13からなる列が延びる方向(X方向)が、おむつ1の幅方向と略一致するように配されていても良い。
【0038】
次に、本発明の第2〜第4実施形態について説明する。本発明の第2〜第4実施形態は、表面シートが異なる以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。第2〜第4実施形態について特に説明しない点は、第1実施形態と同様である。
【0039】
第2実施形態における表面シート10Aは、
図6に示すように、上層繊維層18及び下層繊維層19を有する積層不織布からなる。両繊維層18,19は、千鳥状に配置されたエンボス部20で接合されている。
エンボス部20は、上層繊維層18及び下層繊維層19が一体的に圧縮されていることによって、エンボス部20以外の非エンボス領域21、特に4つのエンボス部20に囲まれた非エンボス領域の中央部21aに比して密度が高い高密度部となっている。即ち、表面シート10Aにおいては、エンボス加工により圧縮されたエンボス部20が高密度部で、非エンボス領域21、特に非エンボス領域の中央部21aが低密度部であり、それらの高密度部及び低密度部が表面シート10Aの平面方向に分布している。
【0040】
第2実施形態における表面シート10Aは、上層繊維層18側を肌に向けられる側に向け、下層繊維層19側を吸収体40側に向けておむつに組み込まれている。
第2実施形態の使い捨ておむつにおいても、低密度部である非エンボス領域21(特に非エンボス領域の中央部21a)に、高密度部であるエンボス部20より多い量のスキンケア剤が含まれている。低密度部である非エンボス領域21(特に非エンボス領域の中央部21a)は、高密度部であるエンボス部20に比して繊維間空隙が大きい。その繊維間空隙が大きい低密度部にスキンケア剤を含有させてあるため、高密度部に含有させる場合に比して相対的の多い量のスキンケア剤を表面シート10Aに保持させることができる。また、繊維間空隙が小さい高密度部に多い量のスキンケア剤を保持させようとした場合には、スキンケア剤が繊維間隙を埋めてしまうなど液透過性に悪影響を与えやすいが、本実施形態のように低密度部にスキンケア剤を保持させる場合には、そのような問題が生じにくい。
【0041】
第2実施形態における表面シート10Aは、例えば、上層繊維層18及び下層繊維層19とを重ね、その積層体に、周面にエンボス部形成用の凸部を備えたエンボスロールとそれに対向する表面平滑なアンビルロールとを備えたエンボス装置によりエンボス加工を施してエンボス部20を形成し、次いで、第1実施形態の表面シート10について上述した好ましい製造方法と同様にして、その積層体の非エンボス領域21に優先的にスキンケア剤が付着させることにより製造することができる。エンボス加工は、加熱しない圧縮のみのエンボス、ヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等であり得るが、表面シート10Aを構成する繊維の融点以下の温度で行われるエンボス加工が好ましい。
第2実施形態の上層繊維層18及び下層繊維層19としては、第1実施形態の上層の不織布11又は下層の不織布12の不織布として前述した各種の不織布等を用いることができる。また、カードにより得たウエブを2層重ね、あるいはカードにより得た不織布化していないウエブを不織布に重ね、それらにエンボス加工を施したものに、上述のようにしてスキンケア剤を付着させても良い。
【0042】
第3実施形態における表面シート10Bは、
図8及び
図9に示すように、熱収縮した熱収縮性繊維を含む下層繊維層22と、非熱収縮性繊維からなる上層繊維層23とが積層されて積層不織布からなる。前記両繊維層22,23は熱融着によって部分的に形成された多数の熱融着部24によって厚さ方向に一体化されている。各熱融着部24の間では、下層繊維層22が前記熱収縮性繊維の収縮により熱収縮して、上層繊維層23が着用者の肌側方向に突出して多数の凸部25を形成している。
【0043】
下層繊維層22を収縮させる熱収縮性繊維としては、公知のものを特に制限無く用いることができ、潜在捲縮性繊維を用いることがより好ましい。潜在捲縮性繊維は、熱処理により螺旋状の捲縮を発現して収縮するものであり、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許2759331号明細書に記載のものが挙げられる。収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料の例としては、例えばエチレン−プロピレンランダム共重合体(EP)とポリプロピレン(PP)との組み合わせが好適に挙げられる。下層繊維層22は熱収縮性繊維100%から構成されていてもよく、他の繊維を含んでいてもよい。他の繊維が含まれる場合、熱収縮性繊維の量は、下層繊維層22の質量に対して50質量%以上、特に70〜90質量%であることが好ましい。
【0044】
上層繊維層23に含まれる非熱収縮性繊維は、熱収縮性を示さない繊維、及び熱収縮性は示すが、下層繊維層に含まれる熱収縮性繊維の熱収縮開始温度以下で実質的に熱収縮しない繊維の双方を含む。また上層繊維層23には、下層繊維層22に含まれる熱収縮性繊維の熱収縮開始温度T
Sより高い融点T
Mを有する熱融着樹脂を含む熱融着繊維が含まれていることが好ましい。熱融着繊維は、該熱融着樹脂の質量基準で上層繊維層23の質量に対して好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上含まれている。最も好ましくは、上層繊維層23を構成する非熱収縮性繊維は、前記熱融着繊維100質量%からなる。
【0045】
表面シート10Bにおいては、下層繊維層22が熱収縮して密度が増大している一方、下層繊維層22の熱収縮により上層繊維層23が凸部を形成し、それに伴って上層繊維層23の密度はむしろ減少する傾向にあるため、
図9に示すように、平面方向における凸部25を有する領域25A(凸部領域)内で比較したときに、下層繊維層22の密度が最も高く、上層繊維層23の密度は、下層繊維層22側から凸部の頂部方向に向かって徐々に減少し、凸部の頂部部分25tにおいて最も低くなっている。
【0046】
第3実施形態における表面シート10Bは、上層繊維層23側を肌に向けられる側に向け、下層繊維層22側を吸収体40側に向けておむつに組み込まれている。
【0047】
第3実施形態における表面シート10Bは、凸部25の頂部部分25tが、低密度部分となっており、凸部25,25間に位置する凹部の底部に存在する熱融着部24が、高密度部分となっている。表面シート10Bにおいても、高密度部と低密度部とが、表面シート10Bの平面方向に分布している。そして、表面シート10Bの平面方向における、頂部部分25tと熱融着部24との間には、頂部部分25tの密度と熱融着部24の密度の中間に密度を有する領域が、前記凸部の頂部部分25tを囲むように形成されている。
【0048】
そして、第3実施形態の使い捨ておむつにおいては、表面シート10Bにおける低密度部である凸部24の頂部部分25tに、高密度部である熱融着部24より多い量のスキンケア剤が含まれている。低密度部である頂部部分25tは、高密度部である熱融着部24に比して繊維間空隙が大きい。その繊維間空隙が大きい低密度部にスキンケア剤を含有させてあるため、高密度部に含有させる場合に比して相対的の多い量のスキンケア剤を表面シート10Bに保持させることができる。また、繊維間空隙が小さい高密度部に多い量のスキンケア剤を保持させようとした場合には、液透過性に悪影響を与えやすいが、本実施形態のように低密度部にスキンケア剤を保持させる場合には、そのような問題が生じにくい。
【0049】
第3実施形態における表面シート10Bは、表面シート10Bにおける低密度部である上層繊維層23からなる部分23A(特に凸部の頂部部分25t)に、高密度部である下層繊維層22からなる部分22Aより多い量のスキンケア剤が含まれている。低密度部である上層繊維層23からなる部分23Aは、高密度部である下層繊維層22からなる部分22Aに比して繊維間空隙が大きい。その繊維間空隙が大きい低密度部にスキンケア剤を含有させてあるため、高密度部に含有させる場合に比して相対的の多い量のスキンケア剤を表面シート10Bに保持させることができる。また、繊維間空隙が小さい高密度部に多い量のスキンケア剤を保持させようとした場合には、液透過性に悪影響を与えやすいが、本実施形態のように低密度部にスキンケア剤を保持させる場合には、そのような問題が生じにくい。
【0050】
また、第3実施形態においては、表面シート10Bの平面方向及び/又は厚み方向(Z方向)に分布した低密度部及び高密度部のうちの低密度部に、高密度部におけるよりも多い量のスキンケア剤を含ませてあるため、嵩高で柔軟な低密度部を着用者の肌側に用いることで肌形状に柔軟に変形でき、必要に応じたスキンケ剤を低密度内に配置されているため着用部位全体にスキンケア剤を移行させやすくなるため好ましい。
【0051】
また、表面シート10Bを構成する不織布製シートは、平面方向における低密度部を有する部分が多層構造を有しており、肌当接領域を形成する上層(上層繊維層23)に、吸収体側の面を形成する下層(下層繊維層22)より多い量のスキンケア剤が適用されている。そのため、表面シートに用いる繊維の樹脂、太さ、さらにはそれらが異なる繊維同士の混合率を調整することにより安定してスキンケア剤を表面シートの低密度部内に保持させることが可能であり、さらには吸収体にスキンケア剤を奪われることなしに着用に対して必要に応じてスキンケア剤を移行させやすくなるため好ましい。
【0052】
第3実施形態における表面シート10Bにおいても、低密度部が肌に当接する肌当接領域を形成する一方、高密度部が、肌に当接しない非肌当接領域に形成してある。
低高密度部によりシートに強度を確保すると共に非肌当接領域を形成させ、低密度の柔軟な領域で肌当接領域を構成し且つ該領域にスキンケア剤を多く適用することにより、肌にやさしくフィットさせてスキンケア剤を肌に移行させ易くすることができる。すなわち下層に高密度部が連続しているため表面シート10Bのシート強度が保たれることで低密度部を十分な嵩高な低密度とすることができ、前記低密度部の効果を発揮させやすくすることができる。
【0053】
第4実施形態における表面シート10Cは、
図10〜
図13に示すように、おむつの肌当接面(着用者の肌側に向けられる面)を形成する上層不織布11と、吸収体40側に向けられる面を形成する下層不織布12とからなる2層構造の積層不織布からなる。
図10及び
図11に示す如く、第4実施形態における表面シート10Cにおいては、肌当接面側に隆起した多数本の畝部2が、それぞれおむつの長手方向(X方向)に連続的に延びており、隣り合う畝部2,2間は溝部3となっている。畝部2と溝部3とは、平面部を有しないようにY方向に交互に配列され、畝部2はY方向の断面が凸の円弧状に湾曲し、溝部3は凹の円弧状に湾曲している。畝部2及び溝部3が延びている方向は、表面シート製造時における機械方向(流れ方向,MD方向)と同じである。畝部2及び溝部3が延びる方向と直行する方向の畝部2のピッチP2及び溝部3のピッチP3は、それぞれ1.0〜6.0mm、特に1.7〜3.7mmであることが好ましい。
【0054】
図10及び
図11に示す如く、表面シート10Cにおける溝部3には、その長手方向に所定間隔をおいて多数の開孔4,4・・が形成されている。開孔4は、表面シート10Cの表面側10aから裏面側10bに向かってそれぞれ延出する2層の不織布11,12によって取り囲まれて形成されている。開孔4の内壁41は、表面シート10Cの表面10aからの連続面で形成されている。即ち、上記開孔4は、立体的な開孔である。立体的な開孔の態様としては、例えば、上記開孔4を取り囲む不織布が円筒状になっている開孔や、上記開孔4の径が上記表面側10aから上記裏面側10bに向かって漸次増加していく円錐状の開孔等が挙げられるが、
図10及び11に示す如く、上記開孔4の径が上記表面側10aから上記裏面側10bに向かって漸次減少していく逆円錐状の開孔が好ましい。開孔4の形状に特に制限はなく、例えば楕円形、三角形又は四角形の開孔でもよいが、
図11に示すように、異方性のない円形の開孔とすることが、表面シート10Cのソフト感、及び開孔4の下端周縁部42の形状安定性を向上させ得る点から好ましい。開孔4は、開孔4のない積層不織布にピンを突き刺して形成してあることに起因して、強く圧縮された開孔4の下端周縁部42における密度が、圧縮されていないか圧縮の程度が弱い畝部2、特に畝部2の頂部26における密度よりも高くなっている。ここでいう、密度は、表面シート10C又はそれを構成する積層不織布の密度であるが、上層の不織布11と下層の不織布12のそれぞれの密度も、開孔4の下端周縁部42における密度が、畝部2、特に畝部2の頂部26における密度よりも高くなっている。上層の不織布11と下層の不織布12は、下層の不織布12の密度が、上層の不織布11の密度より高いことが好ましい。また、表面シート10又はそれを構成する積層不織布の密度は、開孔4の下端周縁部42から畝部2の頂部26に向かって漸減している。
【0055】
第4実施形態における表面シート10Cにおいては、開孔4の下端周縁部42と、畝部2(特にその頂部26)とが、相互に密度が異なる高密度部及び低密度部であり、低密度部である畝部2(特にその頂部26)に、高密度部である開孔4の下端周縁部42より多い量のスキンケア剤5が適用されている。スキンケア剤5は、例えば
図11及び
図12における斜線部に付着している。
【0056】
第4実施形態における表面シート10Cは、上層の不織布11側を肌に向けられる側に向け、下層の不織布12側を吸収体40側に向けておむつに組み込まれている。
【0057】
第4実施形態の使い捨ておむつにおいても、低密度部である畝部2(特にその頂部26)に、高密度部である開孔4の下端周縁部42より多い量のスキンケア剤が含まれている。低密度部である畝部2(特にその頂部26)は、高密度部である開孔4の下端周縁部42に比して繊維間空隙が大きい。その繊維間空隙が大きい低密度部にスキンケア剤を含有させてあるため、高密度部に含有させる場合に比して相対的の多い量のスキンケア剤を表面シート10Cに保持させることができる。また、繊維間空隙が小さい高密度部に多い量のスキンケア剤を保持させようとした場合には、液透過性に悪影響を与えやすいが、本実施形態のように低密度部にスキンケア剤を保持させる場合には、そのような問題が生じにくい。
【0058】
また、第4実施形態においても、表面シート10Cの平面方向及び/又は厚み方向(Z方向)に分布した低密度部及び高密度部のうちの低密度部に、高密度部におけるよりも多い量のスキンケア剤を含ませてあるため、着用者の肌へスキンケア剤を有効に移行できるとともに比較的粘性の高い排泄物を開孔部から吸収体へ引き込むのを阻害しにくいため、肌から排泄物を離脱させるのが早くさらにはスキンケア剤の十分な移行が期待できる。
【0059】
表面シート10Cを構成する2層の不織布11,12としては、それぞれ、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品における表面シートの構成材料として従来用いられている各種のシート材を、特に制限なく使用することができる。例えば、第1実施形態の表面シート10の2層の不織布11,12を構成するシート状物ないし不織布として上述した各種のシート材を用いることができる。2層の不織布11,12は、積層一体化する前は、不織布化していないウエブであっても良い。
【0060】
第3及び第4実施形態の表面シート10B及び10Cは、スキンケア剤5を付与しない立体シートを公知の方法により製造し、該立体シートの片面に、該立体シートの表面のみに接触するように配した塗工ロール等によりスキンケア剤5を塗工することにより製造することができる。
第3実施形態の表面シート10Bの製造に用いる立体シートとしては、特開2002−187228号公報、特開2004−345357号公報等に記載の立体シート材料等が挙げられる。第4実施形態の表面シート10Cの製造に用いる立体シートとしては、特開2004−275296号公報に記載のもの等を用いることができる。
【0061】
表面シート10Cの製造に用いる立体シート10C’の製造方法の一例を
図13を参照して説明する。
図13に示す方法においては、それぞれ図示しない原反ロールから巻き出された不織布11,12を重ね合わせ、重ね合わせた両不織布11,12を、第1の押し型45及び第2の押し型47との間に通して開孔4を形成し、それにより、表面シート10Cの製造に好ましく用いうる立体シート10C’が得られる。
【0062】
開孔形成用の第1の押し型45は、搬送方向に沿って角錐又は円錐形状の多数の凸状ピン46を列状に有し且つ該列が多列に並設しているピンロールから構成されており、第2の押し型47は対向する第1の押し型45における多列の凸状ピンの間に嵌入する突条部48を有する突条ロールから構成されている。第2の押し型47としての突条ロールの突条部が第1の押し型45としてのピンロールの各凸状ピンの列と列の間に嵌入する結果、突条ロールの突条部によって、表面シート10の流れ方向に連続した畝部2及び溝部3が形成され、それと同時に、該溝部3には、ピンロールにおける凸状ピンの不織布11,12への針入により開孔4が形成される。開孔4の下端周縁部42においては、不織布11,12が強く加圧されて両者が結合する。
凸状ピンは加熱しておき、下端周縁部42においては、繊維同士を融着させることが好ましい。第1及び第2の押し型を用いた開孔4の形成や好ましい条件は、本出願人の先の出願に係る特開平6−330443号公報等と同様とすることができる。
【0063】
第3及び第4実施形態における表面シートを製造するためのスキンケア剤を塗工方法としては、例えば、一部が容器内のスキンケア剤に浸るように配置した第1ロールから、第1ロールの周面に接触するように配置した第2ロールにスキンケア剤を転写させ、更に、その第2ロールを、立体シートの片面にかるく接触させ、該スキンケア剤を、立体シートの低密度部に転写させる方法がある。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上記の各実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、スキンケア剤の塗工方法は、上記のもの以外の多様な方法を選択することができる。塗工方式としては、ダイスコーター方式、スロットスプレー方式、カーテンスプレー方式、メルトブローン方式、スパイラルスプレー方式、グラビア方式、ビード方式等が挙げられる。
高密度部と低密度部とは、第1及び第2実施形態とは異なる態様で平面方向に分布していても良く、第3及び第4実施形態とは異なる態様で厚み方向に分布していても良い。
また、第2実施形態におけるエンボス部、第3実施形態における熱融着部の分布は、散点状であったが、格子状等に分布していても良い。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0066】
〔実施例1〕
(立体シートの製造)
上層及び下層の不織布11,12として、何れも坪量18g/m
2のエアスルー不織布を用い、
図4に示す装置を用いて、立体シート10’を製造した。上層の不織布11としては、芯がPETで鞘がPEで太さが2.2dtexの芯鞘型複合繊維を用いてカード機で製造した第1ウエブと、芯がPETで鞘がPEで太さが4.4dtexの芯鞘型複合繊維原料を用いてカード機で製造した第2ウエブとを重ね、それらに、一体的にエアスルー方式の熱風処理を施して得た多層不織布を用いた。
不織布11として用いた多層不織布は、第2ウエブ側を不織布12側に向けた。下層の不織布12としては、芯がPETで鞘がPEで太さが2.3dtexの芯鞘型複合繊維からなるエアスルー不織布を用いた。
第1のロール及び第2のロールは、ともに135℃に加熱した。エアスルー不織布は、カード機を用いて製造したウェブにエアスルー方式の熱風処理を施し構成繊維どうしの交点を熱融着させたものである。
【0067】
また、得られた立体シート10’の各部の密度は下記の通りであった。
<凸部領域14Aにおける密度>
上層不織布の密度(凸部の頂部部分の密度):0.056g/m
3(厚み0.32mm)
下層不織布の密度:0.064g/m
3(厚み0.28mm)
凸部領域14Aの全体密度:0.030g/m
3(坪量36g/m
2、厚み1.2mm)<接合部領域13Aにおける密度>
接合部領域13Aの全体密度:0.26g/m
3(坪量36g/m
2、厚み0.14mm)
【0068】
なお、凸部領域14Aの全体密度及び接合部領域13Aの全体密度は、凸部領域14Aにおける立体シート10’の厚み(不織布11,12間の空洞部分の厚みを含めない厚み)及び接合部領域13Aにおける立体シート10’の厚みを、それぞれ、立体シート10’の坪量(36g/m
2)で除して求めた。
また、立体シート10’の凸部14の頂部部分を構成する不織布11の繊維間距離は、接合部13における不織布11の繊維間距離よりも大きかった。
【0069】
(スキンケア剤の塗工)
製造した立体シート10’に、
図5に示すようにして、下記の条件でスキンケア剤を、上層の不織布11側からスプレー塗工した。
スキンケア剤の組成:前記式(I)で表されるジアミド誘導体とステアリルアルコール(St−OH)との質量比5:5の等量混合物
前記式(I)で表されるジアミド誘導体としては、下式(II)で表される
ジアミド誘導体を用いた。
【化2】
【0070】
スキンケア剤の坪量:0.5g/m
2
立体シート10’からスプレーガンまでの距離:50mm
ガンエア圧:0.3MPa
加工速度(立体シート10’の搬送速度):50m/min
【0071】
(表面シートの保存方法)
(塗布直後サンプル)
スキンケア剤塗工後の表面シートを、巻き取ることなく剥離紙間に挟んだ状態で、23℃、50%RHの環境下に保存した。
(加圧保存後サンプル)
製品としてパック保存された状態(圧縮して包装袋に充填した市販状態)を想定し、スキンケア剤塗工後の表面シート10を、
図14に示すように、剥離紙81,81間に挟み、約5kPaの加圧下に3日間、40℃、80%RHの環境下に保存した。
図14中、82は、台紙:坪量16g/m
2 の薄紙である。そして、表面シートを取り出し、剥離紙間に挟んだ状態で23℃、50%RHの環境下に保存した。前記の 5kPaは、多数のおむつを積層し、それらを圧縮して包装袋に収容したおむつの一般的な市販状態を想定したものである。
【0072】
(スキンケア剤の測定)
非加圧保存サンプル及び加圧保存サンプルの表面シートをはさみで切断し、それぞれの表面シートから、1〜2mm角の測定片を得た。具体的には、各表面シートの凸部領域14Aから、上層の不織布11からなる第1測定片と、下層の不織布12からなる第2測定片を得ると共に、接合部領域13Aから、上層の不織布11と下層の不織布12とが一体化している第3測定片を得た。
そして、後述する第2方法〔赤外分光法(FT−IR)を用いる方法〕により、第1〜第3測定片のそれぞれについて、シート由来のC-H吸収ピーク(1400−1500cm
-1)の面積S2に対する、スキンケア剤由来のアミド基の吸収ピーク(1600−1670cm
-1)の面積S1の比(S1/S2,
図15参照)を求めた。なお、スキャンは、測定片のそれぞれについて、肌側に向けられる面側(
図3の上側)から、赤外光を照射して行った。
【0073】
その結果を、
図16に示した。
図16に示すように、本実施例で製造した表面シートにおいては、低密度部である凸部領域14Aに、高密度部である接合部領域13Aに比して相対的に多い量のスキンケア剤が存在していることが確認された。また、凸部領域14A内においては、上層の不織布11に、下層の不織布12よりも多い量のスキンケア剤が存在していることが判る。
【0074】
〔表面シートの密度の測定方法〕
表面シートの高密度部位および低密度部位は不織布を構成する繊維同士の距離を調べることによりわかる。それぞれの繊維間の距離を計測することにより繊維間距離が小さい部位が高密度部、それと比較して繊維間距離が大きなものは低密度部と判断することが可能である。
【0075】
まず、表面シートサンプルの高密度部あるいは低密度部の計測目標とする部位を通る切断面を形成する。切断面は、フェザー安全剃刀(株)の品番FAS−10等やその他の手段によって、サンプルの構造が破壊されないよう断面を作成する。特にサンプルに圧力が加わって構造が破壊されないようにサンプルを液体窒素中に入れて十分に凍結させた後に切断することが好ましい。次にこの断面の電子顕微鏡観察(SEM)を行い計測目標とする部位の撮影をする。用いるSEMはJEOL製電子顕微鏡JCM−5100を使用し、スパッター時間30秒(Pt)、加速電圧10KVの条件で行い拡大倍率500〜1000倍の断面を撮影する。高密度部および低密度部の拡大撮影画像各々の対象測定部位において画像の幅方向(平面方向)に繊維本数が3〜7本の領域において、画像解析装置(NEXUS製NEWQUBE ver.4.20)を使用して、繊維の最近接重心間距離を求める。上記計測においては、目標とする部位の厚み方向に略全体的に計測し、且つ最近接重心間距離の重複が生じないようにする。また、断面は表面シートの少なくとも3箇所、好ましくは5箇所、より好ましくは10箇所の計測し、その平均値を用いる。この際の繊維間距離の算出には最近接重心間距離を用いる。
【0076】
また、表面シートが、第1あるいは第2実施形態の表面シートのようにエンボス加工などにより圧搾して高密度部位を形成させたものに関しては同上の電子顕微鏡観察により高密度部あるいは低密度部がわかる状況とし、それぞれの部位の撮影画像より各計測部の厚みを計測することで表面シートの坪量より高密度部位ならびに低密度部位の密度を算出することが可能である。
【0077】
〔表面シートのスキンケア剤量の測定〕
表面シートの高密度部位と低密度部位におけるそれぞれのスキンケア剤の含有量を測定する方法について説明する。
【0078】
(第1方法)
高密度部位、低密度部位のスキンケア剤の量を測定する方法には赤外分光法(IR)を用いることができる。スキンケア剤が多いところと少ないところを比較する場合にはIRにより得られる赤外吸収ピークの高さの比較によりスキンケア剤が多いところと少ないところの判断が可能である。すなわち赤外吸収ピークの高い(吸収量の多い)方が存在するスキンケア剤が多いことがわかる。
また、それぞれのスキンケア剤由来の赤外吸収ピークの高さからそれぞれの相対値を導き出し、全体に塗布されたスキンケア剤の量との関係を用いることでそれぞれに存在するスキンケア剤の量を算出することができる。
赤外分光法にはATR法を用いるとよく、測定する範囲が十分に広い場合は直接測定(マクロ:2〜3mm)することで得られる吸収ピークのうち任意のもの(例えばジアミド誘導体の場合はアミド基の吸収ピークである3300cm
-1)を比較することができる。また、測定する部位が小さい場合には顕微(100μm)を用いると良い。
一例として上記測定の要領を下記に示した。
測定装置:パーキンエルマー社 Spectrum One (+ Multiscope)
マクロ測定:ATRプローブはダイヤモンドを用いて1回反射で測定
顕微測定:ATRプローブはゲルマニウムを用いて測定
波数分解能:4cm
-1
積算回数:4回(マクロ測定)、16回(顕微測定)
【0079】
(第2方法)
高密度部位、低密度部位のスキンケア剤の量を測定する方法には、赤外分光法(FT−IR)を用いることもできる。スキンケア剤が多いところと少ないところを比較する場合には、FT−IRにより得られる赤外吸収ピークの表面シート由来の吸収ピーク面積に対するスキンケア剤由来のピーク面積比の比較によりスキンケア剤が多いところと少ないところの判断が可能である。すなわち表面シート由来の吸収ピーク面積に対するスキンケア剤由来のピーク面積比の大きい方が存在するスキンケア剤が多いことがわかる。
赤外分光法にはATR法を用い、直接測定することによりで得られる吸収ピークのうち任意のもの(PET/PE表面シートにジアミド誘導体を塗付した場合には、シート由来のC-H吸収ピークである1400−1500cm
-1に対する、スキンケア剤由来のアミド基の吸収ピークである1600−1670cm
-1)の比を比較することができる。
測定装置:パーキンエルマー社 Spectrum One
波数分解能:4cm
-1
積算回数:16回
【0080】
本発明の吸収性物品は、使い捨ておむつ以外の吸収性物品、例えば、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものしーと)、失禁パッド、ハイジーンパッド、授乳パッド等であっても良い。