【実施例】
【0035】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0036】
<ポリウレタン発泡体の原料及び製造>
図1ないし
図5に示す配合の原料から、実施例1〜32および比較例1〜10のポリウレタン発泡体を製造した。以下に、各原料の詳細を示す。
【0037】
・ウレタンエマルション1;カーボネイト系ウレタンエマルション(カーボネイト基を有するウレタンの乳剤)、pH8、親水基:スルホン酸基、固形分:40質量%
・ウレタンエマルション2;カーボネイト系ウレタンエマルション、pH8、親水基:カルボキシル基、固形分:40質量%
・ウレタンエマルション3;エーテル系ウレタンエマルション(エーテル結合を有するウレタンの乳剤)、pH8、親水基:カルボキシル基、固形分:40質量%
・アニオン系起泡安定剤1;ステアリン酸アンモニウム、pH11、固形分:30質量%
・アニオン系起泡安定剤2;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、pH9.4、固形分:30質量%
・アニオン系起泡安定剤3;オレイン酸カリウム石鹸、pH11.2、固形分:30質量%
・アニオン系起泡安定剤4;ひまし油カリウム石鹸、pH9.9、固形分:30質量%
・両性起泡安定剤;ラウリルベタイン、pH7.5、固形分:30質量%
・ノニオン系起泡安定剤;アルキルアルカノールアミド、pH10.4、固形分:30質量%
・架橋剤1(A社製);疎水系HDIイソシアヌレート(ヘキサメチレンジイソシアネートから形成された疎水性のイソシアヌレート) 官能基数:3.5、3量体
・架橋剤2(B社製);疎水系HDIイソシアヌレート、官能基数:3.5、3量体
・架橋剤3;疎水系HDIビウレット(ヘキサメチレンジイソシアネートから形成された疎水性のビウレット)、官能基数:3.5、3量体
・架橋剤4(A社製);親水系HDIイソシアヌレート、官能基数:3.2、3量体
・架橋剤5(B社製);親水系HDIイソシアヌレート、官能基数:3.2、3量体
・架橋剤6;メラミン−ホルムアルデヒド(すなわち、メラミン-ホルムアルデヒト樹脂)
・架橋剤7;カルボジイミド
・架橋剤8;疎水系HDIアロファネート(すなわち、ヘキサメチレンジイソシアネートから形成された疎水性のアロファネート) 官能基数:2、2量体
・架橋剤9;HDIモノマー(ヘキサメチレンジイソシアネートのモノマー)
【0038】
上記原料を、
図1ないし
図5に示す配合(重量比)で計量し、オークスミキサ、若しくは、モンドミキサに投入する。そして、100〜1000rpmで攪拌し混合する。この際、空気又は窒素ガス等の不活性ガスが強制的に吹き込まれる。そして、攪拌され混合された原料を通気度の低いシートの表面に塗布し、ドクターナイフ等により所定の厚さに調厚した後、オーブン又は乾燥炉等により加熱し、乾燥させる。これにより、実施例1〜32および比較例1〜10のポリウレタン発泡体が成形される。
【0039】
<ポリウレタン発泡体の物性評価> 上述のように製造された実施例1〜32および比較例1〜10のポリウレタン発泡体に対して、以下の方法によって物性評価を行なった。
【0040】
具体的には、目視にて、セルの状態およびポリウレタン発泡体の表面を評価した。セルが均一である場合には、「◎」と評価し、セルがやや不均一である場合には、「○」と評価した。また、セルが荒い場合には、「△」と評価し、セルが非常に荒い場合および、セルが形成されていない場合、つまり、発泡していない場合には、「×」と評価した。この評価は、
図1ないし
図5の「外観」の欄に記されている。
【0041】
また、ポリウレタン発泡体のセル径を測定した。セル径が100μm未満である場合には、
図1ないし
図5の「セル径」の欄に「◎」と記し、セル径が100μm以上である場合には、
図1ないし
図5の「セル径」の欄に「×」と記されている。
【0042】
また、ポリウレタン発泡体の圧縮残留歪(%)を測定した。具体的には、所定の大きさのポリウレタン発泡体のサンプルを、圧縮前の厚さの50%の厚さとなるように圧縮し、70℃の条件下で放置する。22時間放置した後に、サンプルの圧縮残留歪を、JIS K6401に従って測定する。その測定値は、
図1ないし
図5の「圧縮残留歪(70℃)」の欄に記されている。また、所定の大きさのポリウレタン発泡体のサンプルを、圧縮前の厚さの50%の厚さとなるように圧縮し、室温で放置する。22時間放置した後に、サンプルの圧縮残留歪を、JIS K6401に従って測定する。その測定値は、
図1ないし
図5の「圧縮残留歪(室温)」の欄に記されている。
【0043】
また、ポリウレタン発泡体の密度(kg/m
3)を測定した。具体的には、JIS K6401に従って、50mm×50mmのポリウレタン発泡体のサンプルの重量および、体積を計測し、重量を体積で除した。この演算値は、
図1ないし
図5の「密度」の欄に記されている。
【0044】
また、ポリウレタン発泡体の硬度(MPa)を測定した。具体的には、JIS K6254に従って、直径50mmのポリウレタン発泡体のサンプルを、1mm/minの速度で厚さが25%圧縮されるように押しつぶした際の反発応力の大きさを測定した。この測定値は、
図1ないし
図5の「硬度」の欄に記されている。
【0045】
また、ポリウレタン発泡体の材料強度(N/12mm)を測定した。具体的には、12mm×70mmのポリウレタン発泡体のサンプルの両面にPETフィルムを貼着する。PETフィルムの貼着には、両面テープを用いる。PETフィルムを両面に貼着したサンプルは、85℃の条件下で24時間放置され、その後、室温にて1時間放置される。そして、サンプルの両面に貼着された各PETフィルムの一端をサンプル表面に垂直な方向に、1000mm/minの速度で引っ張り、その際の引張強度を測定した。この測定値は、
図1ないし
図5の「材料強度」の欄に記されている。
【0046】
以上の評価結果から、ポリウレタン発泡体の原料における架橋剤として、脂肪族イソシアネート(架橋剤1〜5,8,9)とメラミン誘導体(架橋剤6)との一方を採用することで、ポリウレタン発泡体の圧縮残留歪(70℃)を概ね40%以下とするとともに、圧縮残留歪(室温)を概ね10%以下とすることが可能であることが解る。具体的には、比較例3,4,8のポリウレタン発泡体では、原料に架橋剤が採用されておらず、ポリウレタン発泡体の圧縮残留歪(70℃)は41〜48%であり、圧縮残留歪(室温)は15〜21%となっている。また、比較例5,6のポリウレタン発泡体では、架橋剤として、カルボジイミド(架橋剤7)が採用されており、ポリウレタン発泡体の圧縮残留歪(70℃)は47%であり、圧縮残留歪(室温)は14〜16%となっている。
【0047】
一方、実施例1〜22,25〜32のポリウレタン発泡体では、架橋剤として脂肪族イソシアネート(架橋剤1〜5,8,9)が採用され、実施例23,24のポリウレタン発泡体では、架橋剤としてメラミン誘導体(架橋剤6)が採用されており、ポリウレタン発泡体の圧縮残留歪(70℃)は40%以下であり、圧縮残留歪(室温)は概ね10%以下となっている。このように、ポリウレタン発泡体の原料における架橋剤として、脂肪族イソシアネート(架橋剤1〜5,8,9)とメラミン誘導体(架橋剤6)との一方を採用することで、復元性の高いポリウレタン発泡体を実現することが可能となる。
【0048】
なお、実施例1〜22,25〜30のポリウレタン発泡体では、量体数が3以上かつ、官能基数が3以上の脂肪族イソシアネート(架橋剤1〜5)が採用され、実施例31,32のポリウレタン発泡体では、量体数が2以下かつ、官能基数が2以下の脂肪族イソシアネート(架橋剤8,9)が採用されているが、いずれのポリウレタン発泡体でも、圧縮残留歪(70℃)は40%以下であり、圧縮残留歪(室温)は概ね10%以下となっている。このことから、架橋剤として、量体数が3以上かつ、官能基数が3以上の脂肪族イソシアネートと、量体数が2以下かつ、官能基数が2以下の脂肪族イソシアネートの何れを採用してもよい。ただし、量体数が3以上かつ、官能基数が3以上の脂肪族イソシアネートを採用するポリウレタン発泡体の圧縮残留歪は、量体数が2以下かつ、官能基数が2以下の脂肪族イソシアネートを採用するポリウレタン発泡体の圧縮残留歪より、若干低い。このため、架橋剤として、量体数が3以上(好ましくは、3)かつ、官能基数が3以上(好ましくは、3以上4未満)の脂肪族イソシアネートを採用することが好ましい。ただし例えば量体数が2でかつ、官能基数が2以上3未満であってもよい。
【0049】
さらに、ポリウレタン発泡体の原料における起泡安定剤として、アニオン系の起泡安定剤を採用することで、ポリウレタン発泡体の圧縮残留歪(70℃)を概ね40%以下とするとともに、圧縮残留歪(室温)を概ね10%以下とすることが可能であることが解る。具体的には、比較例1のポリウレタン発泡体では、起泡安定剤として、両性の起泡安定剤が採用され、比較例2のポリウレタン発泡体では、起泡安定剤として、ノニオン系の起泡安定剤が採用されている。つまり、比較例1,2のポリウレタン発泡体では、起泡安定剤として、アニオン系の気泡安定剤が採用されていない。その比較例1,2のポリウレタン発泡体では、圧縮残留歪(70℃)は41〜48%であり、圧縮残留歪(室温)は18〜25%となっている。
【0050】
一方、実施例1〜32のポリウレタン発泡体では、起泡安定剤として、アニオン系の起泡安定剤が採用されており、ポリウレタン発泡体の圧縮残留歪(70℃)は概ね40%以下であり、圧縮残留歪(室温)は概ね10%以下となっている。特に、実施例1〜26,28,29,31,32のポリウレタン発泡体では、起泡安定剤としてアニオン系の起泡安定剤のみが採用されており、ポリウレタン発泡体の圧縮残留歪(70℃)が40%を超えることはなく、圧縮残留歪(室温)も15%を超えることは無い。このように、ポリウレタン発泡体の原料における起泡安定剤として、アニオン系の起泡安定剤を採用すること、特に、アニオン系の起泡安定剤のみを採用することで、復元性の高いポリウレタン発泡体を実現することが可能となる。
【0051】
さらに言えば、実施例1〜10,15〜24のポリウレタン発泡体では、起泡安定剤として、ステアリン酸アンモニウム(アニオン系起泡安定剤1)とジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系起泡安定剤2)との2種類の起泡安定剤が採用されており、ポリウレタン発泡体の圧縮残留歪(70℃)は36%以下であり、圧縮残留歪(室温)は6%以下である。また、実施例1〜10,15〜24,31,32のポリウレタン発泡体では、「外観」の評価に関して「○」と「◎」であり、「セル径」の評価に関して「◎」である。このことから、ポリウレタン発泡体の原料における起泡安定剤として、ステアリン酸アンモニウム(アニオン系起泡安定剤1)とジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系起泡安定剤2)の双方(2種類の起泡安定剤)を採用することが好ましい。
【0052】
ただし、起泡安定剤として、ステアリン酸アンモニウム(アニオン系起泡安定剤1)とジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系起泡安定剤2)の双方(2種類の起泡安定剤)を採用する場合であっても、起泡安定剤の配合量を適正化する必要がある。具体的には、比較例7のポリウレタン発泡体では、ウレタンエマルションの量が100質量%である際に、ステアリン酸アンモニウム(アニオン系起泡安定剤1)とジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系起泡安定剤2)との2種類の起泡安定剤の総量が、1質量%となっている。この比較例7のポリウレタン発泡体では、ポリウレタン発泡体の圧縮残留歪(70℃)が48%であり、圧縮残留歪(室温)も28%である。さらに、密度(kg/m
3)および、硬度(MPa)が比較的高い。また、比較例9および比較例10のポリウレタン発泡体では、ウレタンエマルションの量が100質量%である際に、ステアリン酸アンモニウム(アニオン系起泡安定剤1)とジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系起泡安定剤2)との2種類の起泡安定剤の総量が、80質量%以上となっている。この比較例9および、比較例10のポリウレタン発泡体では、密度(kg/m
3)および、硬度(MPa)が少し低い。さらに、材料強度(N/12mm)は、1.5N/12mm以下であり、非常に低い。
【0053】
なお、起泡安定剤としてはカチオン系起泡安定剤も存在する。しかし、ウレタンエマルションがアニオン性なので、カチオン系起泡安定剤は好ましくはない。ウレタンエマルションにカチオン系起泡安定剤を加えると、ポリウレタンの粒子同士が、カチオン系起泡安定剤を介して電気的に引き合い凝集してしまう。
【0054】
一方、実施例1〜10のポリウレタン発泡体では、ウレタンエマルションの量が100質量%である際に、ステアリン酸アンモニウム(アニオン系起泡安定剤1)とジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系起泡安定剤2)との2種類の起泡安定剤の総量が、2〜60質量%となっている。この実施例1〜10のポリウレタン発泡体では、圧縮残留歪(70℃)は35%以下であり、圧縮残留歪(室温)は5%以下である。また、密度(kg/m
3)は、54〜495kg/m
3であり、硬度(MPa)は、0.002〜0.094MPaである。つまり、適度な柔軟性を有している。さらに、材料強度(N/12mm)は、2N/12mm以上であり、適度な強度を有している。このことから、ウレタンエマルションの量が100質量%である際に、ステアリン酸アンモニウム(アニオン系起泡安定剤1)とジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系起泡安定剤2)との2種類の起泡安定剤の総量が、2〜60質量%であることが好ましい。さらに言えば、実施例1〜5,7〜10のポリウレタン発泡体では、ウレタンエマルションの量が100質量%である際に、ステアリン酸アンモニウム(アニオン系起泡安定剤1)とジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系起泡安定剤2)との2種類の起泡安定剤の量が、2〜30質量%となっている。この実施例1〜5,7〜10のポリウレタン発泡体では、圧縮残留歪(70℃)は19%以下であり、圧縮残留歪(室温)は4%以下である。さらに、材料強度(N/12mm)は、4N/12mm以上であり、非常に強靭である。このことから、ウレタンエマルションの量が100質量%である際に、ステアリン酸アンモニウム(アニオン系起泡安定剤1)とジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系起泡安定剤2)との2種類の起泡安定剤の総量は、特に2〜30質量%であることが好ましい。
【0055】
以下、本発明の諸態様について列記する。
【0056】
(1)脂肪族イソシアネートとメラミン誘導体とのいずれか一方、ウレタンエマルション、アニオン系起泡安定剤を含む原料により発泡成形され、50%圧縮された状態で70℃の条件下で22時間放置された後の圧縮永久歪(JIS K6401)が、40%以下であることを特徴とするポリウレタン発泡体。
【0057】
(2)アニオン系起泡安定剤の量は、前記ウレタンエマルションの量を100質量%とした場合に、2〜60質量%であることを特徴とする(1)項に記載のポリウレタン発泡体。
【0058】
(3)当該ポリウレタン発泡体は、 メカニカルフロス法により発泡成形されることを特徴とする(1)項または(2)項に記載のポリウレタン発泡体。
【0059】
(4)前記脂肪族イソシアネートは、
3量体以上であり、3官能以上であることを特徴とする(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のポリウレタン発泡体。
【0060】
(5)前記脂肪族イソシアネートは、
2量体以下であり、2官能以下であることを特徴とする(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のポリウレタン発泡体。
【0061】
(6)前記ウレタンエマルションのウレタン樹脂は、親水基を含むことを特徴とする(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のポリウレタン発泡体。
【0062】
(7)前記ウレタン樹脂の親水基は、
スルホン酸基とカルボキシル基と水酸基との少なくとも1つであることを特徴とする(6)項に記載のポリウレタン発泡体。
【0063】
(8)前記脂肪族イソシアネートは、疎水基を含むことを特徴とする(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のポリウレタン発泡体。
【0064】
(9)前記アニオン系起泡安定剤は、
ステアリン酸アンモニウムとアルキルスルホコハク酸ナトリウムとの少なくとも一方を含むことを特徴とする(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のポリウレタン発泡体。
【0065】
(10)前記アニオン系起泡安定剤は、
ステアリン酸アンモニウムとアルキルスルホコハク酸ナトリウムとの両方を含むことを特徴とする(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のポリウレタン発泡体。
【0066】
(11)硬度(JIS K6254)が、0.002〜0.1MPaであることを特徴とする(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のポリウレタン発泡体。
【0067】
(12)密度(JIS K6401)が、50〜500kg/m
3であることを特徴とする(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載のポリウレタン発泡体。
【0068】
(13)当該ポリウレタン発泡体の両面に両面テープによって貼着されたPETフィルムを、85℃の条件下で24時間放置し、さらに、室温にて1時間放置した後に、前記PETフィルムを、1000mm/minの速度で引っ張った際の引張強度(N/12mm)を、材料強度と定義した場合に、 前記材料強度が、2N/12mm以上であることを特徴とする(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載のポリウレタン発泡体。