特許第5933153号(P5933153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933153
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】運搬車両のタンクの取付け構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/063 20060101AFI20160526BHJP
   B60P 1/04 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B60K15/063 A
   B60P1/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-9126(P2013-9126)
(22)【出願日】2013年1月22日
(65)【公開番号】特開2014-141114(P2014-141114A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081569
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 勝一
(74)【代理人】
【識別番号】100156018
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 充史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健二
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−208510(JP,A)
【文献】 特開2010−120509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/00 − 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車両の車体の側枠部の側面にタンクを取付ける構造において、
前記タンクの両側面に固着されたブラケット前記側枠部にボルトにより固定され
前記側枠部から下方に突出させて設けられたタンク取付け板に貫通孔設けられ
前記タンクにおける前記ブラケットより下方の車体側の面に取付け枠溶接され
前記取付け枠に車体側に突出させて横並びに複数本のピン溶接され
前記各ピン前記タンク取付け板の前記貫通孔に挿通され
前記ピンの先端にボルトにより押え板取付けられ
前記押え板と前記タンク取付け板との間に防振ゴム設けられるとともに、前記防振ゴムと前記タンク取付け板との間に間隔調整用のシム設けられ
前記ピンによりタンクの荷重われると共に、前記ブラケットを前記車体に固定するボルトによりタンクの車体外側への倒れ防止される構造としたことを特徴とする運搬車両のタンクの取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の運搬車両のタンクの取付け構造において、
前記タンク取付け板に設ける貫通孔より小さい径の貫通孔を有するボス前記タンク取付け板に溶接され、前記ボスの貫通孔に前記ピン挿通されて前記ピンに当接することにより、前記タンクの荷重前記ボスを介して前記タンク取付け板われる構成としたことを特徴とする運搬車両のタンクの取付け構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の運搬車両のタンクの取付け構造において、
前記タンク取付け板と前記取付け枠との間に、両者間の間隔を調整するシム、前記ピンの下方に取外し可能に取付られていることを特徴とする運搬車両のタンクの取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラック等の運搬車両における燃料タンク等のタンクの取付け構造に係り、特に大型のダンプトラックに適用する場合に好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックは、特許文献1に示すように、エンジンにより駆動される油圧ポンプを油圧源としてベッセル起伏用のホイストシリンダを作動させる構成を有する。従来のダンプトラックは、ベッセルを載置する車体の片側に作動油タンクを取付け、他側に燃料タンクを取付けている。
【0003】
図8は従来の燃料タンクの取付け構造を示す平面図、図9はそのE−E断面図、図10はその下部構造を示す断面図である。図8ないし図10において、1は不図示のベッセルを載置するダンプトラックの車体、1aは車体1を構成するボックス構造の側枠部、1bはこの側枠部1aから下方に突出させて設けられ、不図示のベッセル起伏用のホイストシリンダの下端を取付けるホイストプレートである。2は燃料タンク、2aは燃料タンク2の上部の両側面に溶接したブラケットである。50はこのブラケット2aを車体1の側枠部1aに固定するための上部取付け部、51は燃料タンク2をホイストプレート1bに固定するための下部取付け部である。
【0004】
上部取付け部50は、ブラケット2aに挿通したボルト52を筒状のスペーサ53に通し、スペーサ53の端部に当てたナット54にボルト52を螺合し締結することにより、燃料タンク2の両側を側枠部1aに固定する。
【0005】
図10において、56は燃料タンク2の車体1側の面に溶接した取付け枠であり、下部取付け部51を構成するために設けたものである。57はボルト58に螺合するナットであり、このナット57は、取付け枠56に溶接されている。
【0006】
59,60は防振ゴムであり、これらは車体1に捻れが生じた場合にその捻れを緩和するためにホイストプレート1bの両側に設けられる。62,63はそれぞれホイストプレート1bとの間で内側防振ゴム59、外側防振ゴム60を挟持する押え板である。64はシムであり、これはホイストプレート1bと燃料タンク2との間隔を調整して燃料タンク2の上部のボルト52からなる上部取付け部50に高応力がかからないようにするために設けられる。
【0007】
65は筒状スペーサであり、これは防振ゴム59,60の圧縮が過度に行なわれないようにするために、防振ゴム59,60に設けた孔59a,60aを貫通し、かつホイストプレート1bの孔1cに貫通して押え板62,63間に設けられる。ボルト58は、押え板63の孔63a、スペーサ65、および押え板62、シム64並びに取付け枠56にそれぞれ設けた孔62a,64a,56aを貫通してナット57に螺合することにより、燃料タンク2の中間部をホイストプレート1bに固定する。
【0008】
図8ないし図10に示した従来の燃料タンクの取付け構造においては、ボルト58を締め付けてスペーサ65の両端に押え板62,63を当接させた時、防振ゴム59,60が適度の圧縮度で圧縮されるように、防振ゴム59,60の厚さに対するスペーサ65の長さが設定される。例えば防振ゴム59,60が10分の1程度圧縮されるようにスペーサ65の長さが設定される。これにより、防振ゴム59,60を介してホイストプレート1bに燃料タンク2を固定すると共に、車体1の捻れに応じて防振ゴム59,60が変形して車体1の捻れが可及的に燃料タンク2に伝達されないように構成する。この構造では、燃料タンク2の荷重は、上部取付け部50と下部取付け部51とで支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−208510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図8ないし図10に示した従来の燃料タンクの取付け構造においては、防振ゴム59,60が劣化や摩耗により薄肉化すると、図11に誇張して示すように、防振ゴム59,60と押え板62,63(またはホイストプレート1b)との間に隙間Gを生じるか、あるいは隙間Gを生じないとしても、防振ゴム59,60の弾性作用が低下する。このため、ホイストプレート1bと燃料タンク2は下部取付け部51では締結されていない状態となり、例えば燃料満タンの状態で3tにも及ぶ燃料タンク2の荷重は、上部取付け部50のボルト52で受けることになる。このため、図9に矢印Rで示すように、ボルト52を曲げる方向の力が生じ、ブラケット2aにも高応力が生じ、短寿命となってしまうという問題点がある。
【0011】
そこで、防振ゴム59,60が薄肉化した場合、運搬車両が運用されている現地において、予備品として備えられている防振ゴム59,60を新品に交換することが考えられる。しかしながら、この防振ゴム59,60を交換するためには、下部取付け部51のボルト58を抜き取る必要があり、ボルト58を抜き取ったとすると、上部取付け部50だけで燃料タンク2を支持することとなり、上部取付け部50の負担が過大となるため、防振ゴム59,60を支持する大型の台を準備する等の面倒な作業が必要となり、交換が容易ではないという問題点がある。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、運搬車両における燃料タンク等のタンクの車体への取付け部が長期にわたって防振ゴムを介して締結された状態が維持され、燃料タンクの長寿命化が達成される運搬車両のタンクの取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の運搬車両のタンクの取付け構造は、
運搬車両の車体の側枠部の側面にタンクを取付ける構造において、
前記タンクの両側面に固着されたブラケット前記側枠部にボルトにより固定され
前記側枠部から下方に突出させて設けられたタンク取付け板に貫通孔設けられ
前記タンクにおける前記ブラケットより下方の車体側の面に取付け枠溶接され
前記取付け枠に車体側に突出させて横並びに複数本のピン溶接され
前記各ピン前記タンク取付け板の前記貫通孔に挿通され
前記ピンの先端にボルトにより押え板取付けられ
前記押え板と前記タンク取付け板との間に防振ゴム設けられるとともに、前記防振ゴムと前記タンク取付け板との間に間隔調整用のシム設けられ
前記ピンによりタンクの荷重われると共に、前記ブラケットを前記車体に固定するボルトによりタンクの車体外側への倒れ防止される構造としたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の運搬車両のタンクの取付け構造は、請求項1に記載の運搬車両のタンクの取付け構造において、
前記タンク取付け板に設ける貫通孔より小さい径の貫通孔を有するボス前記タンク取付け板に溶接され、前記ボスの貫通孔に前記ピン挿通されて前記ピンに当接することにより、前記タンクの荷重前記ボスを介して前記タンク取付け板われる構成としたことを特徴とする。
【0015】
請求項3の運搬車両のタンクの取付け構造は、請求項1または2に記載の運搬車両のタンクの取付け構造において、
前記タンク取付け板と前記取付け枠との間に、両者間の間隔を調整するシム、前記ピンの下方に取外し可能に取付られていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、タンクに設けたピンをタンク取付け板の貫通孔に挿通してタンクの荷重を下部取付け部をピンで受け、上部取付け部のボルトは、外側への倒れを防止する方向、すなわちボルトの軸心方向の力を受ける役目としたので、上部取付け部の負担が軽減され、上部取付け部、ひいてはタンクが長寿命化される。
【0017】
また、防振ゴムはタンク取付け板とピン先端の押え板との間にのみ設けたので、防振ゴムが劣化して薄肉化した場合、ピンによりタンク荷重をタンク取付け板を介して車体に負担させ、かつ上部取付け部のボルトでタンクの外側への倒れを防止した状態で、ピン先端のボルトを外してピン先端を外すことにより、タンク支持用の台を準備することなく防振ゴムの交換を行なうことができ、防振ゴムの交換が容易となる。また、このため、防振ゴムの薄肉化により上部取付け部の負担が増大したままで放置されることがなく、このような理由からも上部取付け部、ひいてはタンクのさらなる長寿命化が達成される。
【0018】
また、防振ゴムの最初の取付け時、または防振ゴムの交換の際には、防振ゴムとタンク取付け板との間のシムの枚数や厚みを調整することにより、防振ゴムの圧縮状態を最適に設定することができ、車体の捻れの燃料タンクへの伝播を防止するための好適な状態を保つことができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、タンク取付け板に設ける貫通孔より小さい径の貫通孔を有するボスをタンク取付け板に溶接し、ボスの貫通孔にピンを挿通してピンに当接させることにより、タンクの荷重をボスに担わせるように構成したので、タンク取付け板に設ける貫通孔を高精度に設ける必要がなく、製造が容易となる。
【0020】
請求項3の発明によれば、タンクに溶接した取付け枠とタンク取付け板との間に設けるシムを、下方に取外し可能に取付けたので、タンクの車体への上部取付け部を車体の側枠部に取付けたままでこのシムを交換あるいは増減することが可能であり、このシムの交換あるいは増減による間隔調整作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の燃料タンクの取付け構造を適用した運搬車両の一例を示す側面図である。
図2】本発明による燃料タンクの車体への取付け構造の一実施の形態を示す側面図である。
図3】本実施の形態の車体構造およびホイストシリンダの取付け構造を示す図2のF−F断面図である。
図4】本実施の形態の燃料タンクの取付け構造を示す平面図である。
図5図4の上部取付け部におけるボルトの取付け構造を示す一部断面平面図である。
図6】本実施の形態の燃料タンクの取付け構造を示す一部断面背面図である。
図7】(A)は本実施の形態の燃料タンクの取付け構造における下部取付け部を示す断面図、(B)は下部取付け部におけるシムと押え板の形状を示す正面図である。
図8】従来の燃料タンクの取付け構造を示す平面図である。
図9】従来の燃料タンクの取付け構造を示す一部断面背面図である。
図10】従来の燃料タンクの取付け構造の下部取付け部を示す断面図である。
図11】従来の燃料タンクの取付け構造の問題点を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の燃料タンクの取付け構造を適用した運搬車両であるダンプトラックの一例を示す側面図である。このダンプトラックは頑丈なフレーム構造をなし、前輪3および後輪4を有する車体1と、車体1上に搭載された荷台としてのベッセル5とキャビン6とを備える。ベッセル5は、例えば砕石物や石炭等の重い荷物を多量に積載するため、全長が10〜13mにも及ぶ大型の容器として構成され、前側上部にキャビン6を上側から覆う庇部5aが一体に設けられている。
【0023】
ベッセル5は車体1の後部の軸7を中心として油圧シリンダでなるホイストシリンダ8により起伏される。この車体1上におけるキャビン6の下側にはエンジンとそのエンジンにより駆動される発電機や油圧ポンプ(いずれも図示せず)が搭載される。2はエンジンの燃料を蓄える燃料タンクである。
【0024】
図2は本発明による燃料タンク2の取付け構造の一実施の形態を示す側面図、図3図2のF−F断面図である。1aは車体1の左右の側枠部であり、図3に示すように、この側枠部1aは断面形状がボックス状をなす。1bは前記ホイストシリンダ8の下端を取付けるために側枠部1aから下方に突出させて溶接により設けたホイストプレートである。ホイストシリンダ8を取付けるピン9は、左右のホイストプレート1b,1bに両端部を貫通し、ピン9のホイストプレート1bから外側に突出した部分にホイストシリンダ8のボトム側端部のボス8aを嵌合して取付ける。
【0025】
この実施の形態は、このホイストプレート1bを燃料タンク取付け板として用いる。図2に示すように、燃料タンク2はその上部の両側、すなわち車体の前後方向に見て前後の端面部となる2箇所の上部取付け部10と、その上部取付け部10より下方でホイストプレート1bに対する取付け部となる下部取付け部11とにより燃料タンク2が側枠部1aおよびホイストプレート1bに固定され、支持される。
【0026】
図4は本実施の形態の燃料タンクの取付け構造を示す平面図、図5はその部分拡大図、図6図4のF−F断面図である。図4図5に示すように、燃料タンク2の両側面、すなわち、車体1の前後方向の両端面となる面に、燃料タンク2の上部を側枠部1aに固定するためのブラケット12を溶接により固定する。このブラケット12は、図4図6に示すように、上下の横板部12a,12aと、これらの横板部12a,12aの車体側の端部に、燃料タンク2と横板部12a,12aに対して溶接して設けた縦板部12bとからなる。図4に示すように、横板部12aは、平面視において、車体1側の幅が次第に広くなるようなテーパー形をなし、図6に示すように、上下の横板部12a,12aの間隔は、車体1の反対側が開くようなテーパー状をなす。
【0027】
図5に示すように、上部取付け部10は、前記ブラケット12と、ボルト13と、ボルト13を挿通させる円筒状のスペーサ14と、ボルト13を螺合するナット15とにより構成される。ブラケット12の縦板部12bと、車体1の側枠部1aの外側縦板部1a1には、ボルト13を挿通させる貫通孔17,18を設ける。これらの貫通孔17,18は、ボルト13の軸部との間に間隙が形成されて遊嵌されるように、ボルト13の軸部より大径に形成されている。また、車体1の側枠部1aの内側縦板部1a2には、スペーサ14を遊嵌させる貫通孔19を設ける。
【0028】
スペーサ14は、車体1の内外方向に見て外端側に環状板14aを溶接し、内端側にこの環状板14aより大径の環状のストッパ14bを溶接してなる。外端側の環状板14aの外径は、側枠部1aの外側縦板部1a1に設けた貫通孔18より大きく、側枠部1aの内側縦板部1a2に設けた貫通孔19より小径であり、ストッパ14bはこの貫通孔19より大径をなす。
【0029】
この上部取付け部10におけるボルト13による燃料タンク上部の取付けは、内側縦板部1a2に設けた貫通孔19からスペーサ14を挿入し、一方、ボルト13を側枠部1aの外側からブラケット12の縦板部12bに設けた貫通孔17および側枠部1aの外側縦板部1a1に設けた貫通孔18に挿通し、さらにスペーサ14に挿通してナット15に螺合し締結することにより行なう。ストッパ14bはスペーサ14がボルト13と共にタンク2側に抜け出ることを防止する。なお、スペーサ14やナット15を車体1内に挿入して取付け作業を行なうため、車体1の底板部1d(図3図6参照)には作業用開口部が設けられているが、図示を省略している。
【0030】
図7(A)は本実施の形態の燃料タンクの下部取付け部11を示す断面図である。図7(A)において、20は燃料タンク2の車体1側の面における上部取付け部10より下部に溶接された取付け枠である。22は燃料タンク2を支持するため、この取付け枠20に溶接したピンである。この取付け枠20は断面形状がコ字形をなし、図4に示すように、燃料タンク2の前後幅全体にわたる長さを有する。21はこの取付け枠20の燃料タンク2における溶接面を補強するため、燃料タンク2の車体1側の面に溶接した補強板である。ピン22は取付け枠20に設けた貫通孔20aに貫通し、取付け枠20の内部とピン22との間にリブ23を溶接して取付け枠20に取付けられる。
【0031】
24はホイストプレート1bの燃料タンク2側の面に溶接したボスであり、このボス24はホイストプレート1bに設けたピン挿通用の貫通孔25より小径のピン挿通用の貫通孔24aを有する。ピン22は貫通孔24aの下面に接するように挿着され、燃料タンク2の荷重を支持するように構成する。
【0032】
26はホイストプレート1bと燃料タンク2との間の間隔を調整するために設けたシム、27はこのシム26を取付けるために取付け枠20の下面に溶接したL字形のブラケット、28はシム26を取付け枠20との間で挟持する押え板である。シム26および押え板28は図7(B)に示すようにほぼ矩形をなし、上側中央部にピン22に嵌める半円形の凹部26a,28aをそれぞれ有し、シム26の下部の両側にシム取付け用のボルト29を挿通する貫通孔26bを有し、押え板28の下部の両側にボルト29を螺合するねじ孔28bを有する。
【0033】
シム26の取付けは、シム26と押え板28の上部に設けた凹部26a,28aをピン22に下方から嵌め、ボルト29を、ブラケット27に設けた貫通孔27aとシム26に設けた貫通孔26bに通し、押え板28に設けたねじ孔28bに螺合し締結することにより行なう。この構造により、シム26および押え板28の下方からの着脱が可能である。
【0034】
30は防振ゴムであり、この防振ゴム30はその孔30aをピン22におけるホイストプレート1bから車体内側に突出させた部分に嵌合して取付けられる。31はピン22の先端に設けたねじ孔22aに螺合するボルト32により着脱可能に取付ける押え板、33は防振ゴム30とホイストプレート1bとの間に設けたシム、34はシム33とホイストプレート1bとの間に設けた押え板である。シム33と押え板34はその中心の孔33a,34aをピン22に嵌合して取付けられる。シム33と押え板34の各中心の孔33a,34aはホイストプレート1bの貫通孔25より小径である。
【0035】
この構成において、燃料タンク2の側枠部1aやホイストプレート1bへの取付けは、燃料タンク2をクレーン(図示せず)等で吊上げ、ピン22をボス24の貫通孔24aおよびホイストプレート1bの貫通孔25に挿通し、ピン22を貫通孔24aの下面に当接させ、ブラケット12の縦板部12bを側枠部1aの外側縦板部1a1に当接させ、図6に矢印Y方向で示すタンク2の荷重をピン22に負担させる。
【0036】
この時、上部取付け部10のボルト13を挿通させる貫通孔17,18はボルト13を挿通した時に、上下に隙間が生じるように、予めボス24の位置が設定され、溶接されている。このため、ボルト13をスペーサ14に挿通し、ナット15に螺合して締結した時、ボルト13の軸部の上下面と貫通孔17,18との間には隙間が形成され、ボルト13によっては燃料タンク2の矢印Y方向の荷重は受けず、矢印X方向の燃料タンク2の倒れを防止する構造が実現される。
【0037】
このように前後の上部取付け部10で燃料タンク2の上部を固定し、かつピン22で荷重を受けた状態において、車体1の捻れ等により、前後方向に隔てた2つの下部取付け部11において、取付け枠20とボス24との隙間がそれぞれ異なることによる燃料タンク2への捻れの伝達を防止するため、シム26の厚みあるいは枚数を選択することにより、調整を行なう。
【0038】
また、防振ゴム30の取付けは、ホイストプレート1bからのピン22の車体内側への突出長Lを考慮し、例えば防振ゴム30の厚さが15mmの場合、最終的に、防振ゴム30の厚さが1.5m程度圧縮されるようにシム33の厚みや枚数を選択してピン22に挿着する。そして押え板31をボルト32によってピン22に締結することにより、防振ゴム30を適宜な圧力で圧縮した状態で取付ける。なおこの時、押え板34はその中心の貫通孔34aがホイストプレート1bに設けた貫通孔25より小径に形成されているので、ボルト32による締め付け力が押え板34によって受けられ、これによりシム33の変形が防止される。これにより、防振ゴム30を本来の弾性を有効に発揮させることができる。
【0039】
このダンプトラックの稼働中に車体1に捻れが生じた場合、前後2本のピン22のうち、燃料タンク2の一方のピン22が挿着された防振ゴム30が圧縮されることにより、捻れによる力は、防振ゴム30を介してホイストプレート1bで受けることができる。このため、車体1の捻れによる力が燃料タンク2に伝わりにくくなる。また、図2において、燃料タンク2を矢印Gで示す方向に回動させようとする力は、上部取付け部10や下部取付け部11が車体前後方向の2箇所に設けられていることによって防止することができる。
【0040】
上述のように、本実施の形態においては、図6に示すように、燃料タンク2の矢印Yで示す方向の荷重はピン22を介してホイストプレート1bで受けさせ、上部取付け部10のボルト13は矢印Xで示す外側への燃料タンク2の倒れを防止する役目を担わせているため、上部取付け部10の負担が軽減され、上部取付け部10、ひいては燃料タンク2が長寿命化される。
【0041】
また、防振ゴム30はホイストプレート1bとピン22の先端の押え板31との間にのみ設けたので、防振ゴム30が劣化して薄肉化した場合、ピン22により燃料タンク2の荷重をホイストプレート1bを介して車体1に負担させた状態で、押え板31を取外すことにより、従来のように燃料タンク2支持用の台を準備することなく防振ゴム30の交換を行なうことができる。
【0042】
このため、防振ゴム30の交換が容易となり、防振ゴム30を適宜交換することが可能となるので、防振ゴム30の薄肉化により上部取付け部10の負担が増大したままで放置されることがなく、上部取付け部10、ひいては燃料タンク2のさらなる長寿命化が達成される。
【0043】
なお、防振ゴム30が薄肉化した場合、シム33を交換することによっても防振ゴム30の作用を回復し、防振ゴム30の圧縮状態を再度最適に設定することができ、車体1の捻れの燃料タンク2への伝播を防止するための好適な状態を保つことができる。
【0044】
また本実施の形態においては、ホイストプレート1bに設ける貫通孔25より小さい径の貫通孔24aを有するボス24をホイストプレート1bに溶接し、ボス24の貫通孔24aにピン22を挿通してピン22に当接させることにより、燃料タンク2の荷重をボス24に担わせるように構成したので、ホイストプレート1bに設ける貫通孔25を高精度に設ける必要がなく、製造が容易となる。
【0045】
また、本実施の形態においては、取付け枠20とホイストプレート1bとの間に設けるシム26を、下方に取外し可能に取付けたので、燃料タンク2の荷重をピン22を介してホイストプレート1bに担わせたままでこのシム26を交換あるいは増減することが可能であり、このシム26の交換あるいは増減による間隔調整作業が容易となる。
【0046】
以上本発明を適用するタンクが燃料タンクである場合について説明したが、本発明は、タンクが作動油タンクである場合にも適用可能である。また、本発明はダンプトラック以外の運搬車両において、タンクを車体の側枠部に取付ける構造のものであれば、いずれも適用可能である。また、本発明は、上記実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1:車体、1a:側枠部、1b:ホイストプレート、2:燃料タンク、8:ホイストシリンダ、10:上部取付け部、11:下部取付け部、12:ブラケット、13:ボルト、14:スペーサ、14a:環状板、14b:ストッパ、15:ナット、20:取付け枠、21:補強板、22:ピン、22a:ねじ孔、23:リブ、24:ボス、24a:貫通孔、25:貫通孔、26:シム、27:ブラケット、28:押え板、29:ボルト、30:防振ゴム、31:押え板、32:ボルト、33:シム、34:押え板
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