(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バラ流しで搬送される被検査体(W)にX線を照射して得られるX線透過画像のX線濃度データに基づいて前記被検査体に混在する特定の異種物(Wa)を検出するX線検査装置(1)であって、
前記被検査体が複数混在して取得された前記X線透過画像の前記X線濃度データに画像処理を施して該X線透過画像を複数の塊に分離し、各塊に対しそれぞれ得られる検出すべき特定の異種物の立体形状の特徴を示す立体形状指数に基づいて前記特定の異種物の混入の有無を判別する信号処理部(6)を備えたことを特徴とするX線検査装置。
前記信号処理部(6)は、前記X線透過画像上の各被検査体(W)を各塊に分離し、分離された前記塊の輪郭長の3乗と前記塊の輪郭内の濃度を合計した値との比を前記立体形状指数とし、この立体形状指数の大きさが所定範囲内であるときに、前記被検査体に特定の異種物(Wa)が混入していると判別することを特徴とする請求項1記載のX線検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示されるX線検査装置によれば、内容物の中に混入された異物の検査や収容体内での不存在領域の欠陥を検査することができる。しかしながら、バラ流しの被検査物に対して異種物が混在した場合には、その異種物を異物または欠陥として検査することができないという課題があった。
【0006】
ところで、外観検査装置による異種物混入検査も考えられるが、バラ流しの被検査物の場合には、被検査物が接触しながら搬送されるので、外観では影が出来てしまう。このため、外観検査装置では、確実な異種物混入検査を行うことができないという課題があった。
【0007】
また、例えばゴルフ場やゴルフ練習場の近隣の田畑で農産物を栽培し、栽培された農産物を収穫する際には、ゴルフ場やゴルフ練習場の敷地内から飛び出したゴルフボールが農産物に混入する恐れがある。このため、バラ流しに搬送して農産物を袋詰めするラインでは、ゴルフボールを農産物と異なる異種物として検査する必要がある。ここで、例えば農産物がジャガイモの場合では、ジャガイモとゴルフボールの大きさが同等の大きさであり、そのX線透過量も同程度であるため、X線を用いても簡単に異種物混入検査を行うことができないという課題があった。
【0008】
さらに、飴などの製造ラインで品種が切り替わった場合には、前の形状の異なる飴が次の製品に紛れ込んでしまうことがある。その際、上述したゴルフボールとジャガイモの場合と同様に、品種の異なる飴の大きさが同等でX線透過量も同程度の場合には、X線を用いても簡単に異種物混入検査を行うことができないという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、被検査物と混在しやすい特定の異種物とが同等の大きさでも、混在しやすい特定の異種物を確実に検出して異種物混入検査を行うことができるX線検査装置を提供することである。さらに、X線透過率が同等であっても特定の異種物を確実に検出して異種物混入検査を行うことができるX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたX線検査装置は、バラ流しで搬送される被検査体WにX線を照射して得られるX線透過画像のX線濃度データに基づいて前記被検査体に混在する特定の異種物Waを検出するX線検査装置1であって、
前記被検査体が複数混在して取得された前記X線透過画像の前記X線濃度データ
に画像処理を施して該X線透過画像を複数の塊に分離し、各塊に対しそれぞれ得られる検出すべき特定の異種物の立体形状の特徴を示す立体形状指数に基づいて前記特定の異種物の
混入の有無を判別する信号処理部6を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載されたX線検査装置は、請求項1のX線検査装置において、
前記信号処理部6は、分散値フィルタを用いて得られる特定標準偏
差画像
において隣接する有値の画素からなる塊のうち、所定範囲内または所定閾値以上の塊の面積を前記立体形状指数とし、この立体形状指数が所定の大きさ以上であるときに、前記被検査体Wに特定の異種物Waが混入していると判別することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載されたX線検査装置は、請求項1のX線検査装置において、
前記信号処理部6は、前記X線透過画像上の各被検査体Wを各塊に分離し、分離された前記塊の輪郭長
の3乗と前記塊の輪郭内の濃度
を合計
した値との比を前記立体形状指数とし、この立体形状指数
の大きさが所定範囲内であるときに、前記被検査体に特定の異種物Waが混入していると判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製品ラインで被検査体に混在しやすい被検査体に類似した特定の異種物(例えばゴルフボールなどの成型品、品種切替え前後での同等の大きさで形状の異なる物)を確実に検出して異種物混入検査を行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る請求項2の発明によれば、特定の異種物が球の場合に特に有効である。さらに、本発明に係る請求項3の発明によれば、被検査物と特定の異種物の立体形状が異なっている場合に、X線画像上の輪郭形状に左右されずに異種物を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。尚、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などによりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれる。
【0017】
図1は本発明に係るX線検査装置のブロック構成図、
図2(a),(b)は本発明に係るX線検査装置の画像処理手段の内部構成の各例を示すブロック図、
図3は本発明に係るX線検査装置における特定の異種物としての成型品(ゴルフボール)の一例を示す図、
図4は本発明に係るX線検査装置により成型品を異種物として検出する場合の異種物検出処理手順を示すフローチャート図、
図5(a)〜(e)は
図4の異種物検出処理におけるX線画像の説明図、
図6は本発明に係るX線検査装置による形状の異なる飴を異種物として検出する場合の異種物検出処理手順を示すフローチャート図、
図7(a)〜(d)は
図6の異種物検出処理におけるX線画像の説明図である。
【0018】
本発明に係るX線検査装置は、製造ラインの一部に設けられ、ベルトコンベアなどの搬送手段を介して順次搬送される被検査体にX線を照射し、このX線の照射に伴うX線濃度データ(X線透過量)からなるX線透過画像に基づいて被検査体に対する異種物混入検査、異物混入検査などを行うものである。
【0019】
本例のX線異物検出装置1は、
図1に示すように、搬送部2、X線発生部3、X線検出部4、操作部5、信号処理部6、表示装置7を備えて概略構成される。
【0020】
尚、以下では、表示装置7が操作部5と別体に構成される例について説明するが、表示装置7を操作部5の操作パネルに組み込んで一体化した構成としても良い。
【0021】
搬送部2は、被検査体Wをバラ流しに順次搬送するもので、例えば装置本体に対して水平に配置されたベルトコンベアで構成される。搬送部2は、
図1に示す駆動モータMの駆動により予め設定された一定の搬送速度で搬入口から搬入された被検査体Wを搬出口側に向けてバラ流しに搬送させる(
図1の搬送方向X)。尚、搬送部2は、ベルトコンベアに限定されるものではなく、被検査体の種類に応じて適宜選択される。
【0022】
ここで、特定の異種物Waとは、被検査体Wと同等の大きさでX線透過量も同程度なものである。具体的に、ジャガイモが被検査体Wの場合は、
図3に示すようなゴルフボール等の成型品が特定の異種物Waである。また、品種切替え後の飴が被検査体Wの場合は、品種切替え後の飴と形状が異なる同等の大きさの品種切替え前の飴が特定の異種物Waである。
【0023】
X線発生部3は、搬送部2の上方に所定高さ離れて設けられる。X線発生部3は、金属製の箱体内部に設けられる円筒状のX線管を不図示の絶縁油により浸漬した構成であり、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成している。X線管は、その長手方向が被検査体Wの搬送方向(X方向)となるように配置されている。X線管により生成されたX線は、下方のX線検出部4に向けて、不図示のスリットにより略三角形状のスクリーン状となって搬送方向(X方向)を横切るように照射されるようになっている。
【0024】
X線検出部4は、搬送部2の下方にX線発生部3と対向して設けられ、被検査体WへのX線の照射領域平面上で被検査体Wの搬送方向Xと直交するY方向に複数の素子が一直線上に配置されたラインセンサで構成される。ラインセンサは、ライン状に整列して配設された複数のフォトダイオードと、ライン状のフォトダイオード上に設けられたシンチレータとからなり、被検査体WへのX線の照射に伴って被検査体Wを透過してくるX線をシンチレータで受けて光に変換し、この変換された光を対応するフォトダイオードで受光し、受光した光を電気信号に変換し、1ライン毎のX線濃度データ(X線透過量)として出力する。
【0025】
すなわち、X線検出部4は、受けたX線の強さに対応したレベルを有する電気信号を出力するものであり、Y方向に直線状に配置された複数の素子を1ラインとして各素子毎に被検査体Wを透過するX線を検出し、各素子が検出したX線透過量を1ラインのX線濃度データとして、被検査体Wの搬送に伴って1ライン毎に順次出力を繰り返している。
【0026】
操作部5は、例えば複数の操作ボタンや操作キーなどを備えた操作パネルからなる。操作部5は、ユーザの入力操作により、表示装置7に不図示の設定入力画面を表示させ、搬送部2上を搬送される被検査体Wの種類、特定の異種物Waに関する情報(種類、面積、体積、
図3の処理領域の標準偏差σ、濃度幅R、平均値Aveなど)、後述する異種物検出処理に必要な各種情報(注目領域、標準偏差上下限値、抽出面積、縮小量、ラベル抽出条件、立体形状指数の式など)、X線検出部4からX線濃度データを取得するためのサンプリング周期、搬送速度などの検査に必要な各種条件設定を行っている。
【0027】
信号処理部6は、CPUやメモリなどで構成され、操作部5からの各種情報に基づいてX線検出部4からの電気信号によるX線濃度データを取り込み、追って
図3や
図4を参照しながら説明する異種物検出処理を含む各種信号処理を行っている。
【0028】
信号処理部6は、
図1に示すように、画像記憶手段(データメモリ)11、画像処理手段12、判別手段13を備えている。
【0029】
画像記憶手段11は、X線検出部4から出力される1ライン毎のX線濃度データ(X線透過量)を、異種物Waの種類や搬送速度によって設定されるX線検出部4のスキャン周期毎に蓄積している。
【0030】
画像処理手段12は、画像記憶手段11に格納されたX線濃度データからなるX線透過画像に基づいて各種画像処理を行うもので、被検査体Wへの特定の異種物Waの混入の有無を検出するべく、例えば
図2(a),(b)の構成からなる。以下、その構成について説明する。
【0031】
図2(a)の画像処理手段12は、X線透過画像作成手段12a、平滑化画像作成手段12b、立体形状特徴量抽出手段12c、立体形状指数算出手段12dを備えて構成される。
【0032】
X線透過画像作成手段12aは、例えば特開2001−307069号公報の段落番号〔0016〕ー〔0017〕に開示されるLUT係数乗算により、X線透過量のデータを対数変換し、吸収量が大きいほど濃度が高くなるようなX線透過画像を作成している。
【0033】
尚、LUT計数乗算に関しては、例えば特開2001−307069号公報の段落番号〔0016〕ー〔0017〕を参照されたい。
【0034】
平滑化画像作成手段12bは、注目画素を中心とした所定領域(例えば3×3の領域、5×5の領域)内の平均値を注目画像の値とした平滑化画像を作成している。
【0035】
立体形状特徴量抽出手段12cは、平滑化画像作成手段12bにより作成された平滑化画像から立体的な特徴量を表す画像を作成している。本実施の形態では、立体的な特徴量として標準偏差を用いており、分散値フィルタを施して標準偏差画像を生成する標準偏差画像作成手段12c1と、標準偏差画像から所定の範囲内の標準偏差を抽出する特定標準偏差画像作成手段12c2とから立体形状特徴量抽出手段12cが構成されている。
【0036】
標準偏差画像作成手段12c1は、平滑化画像作成手段12bにより作成された平滑化画像において、注目画素を中心とする注目領域(例えば3×3の領域、5×5の領域)内の濃度の標準偏差値を注目画素の値とした標準偏差画像を作成している。尚、注目領域は、異種物Waの種類により検査開始前に予め設定しておくが、異種物Waの種類によっては操作部5からユーザ設定することもできる。
【0037】
特定標準偏差画像作成手段12c2は、分散値フィルタを用い、標準偏差画像作成手段12c1により作成された標準偏差画像において、標準偏差画像の値が標準偏差上下限値範囲(例えば1.2〜1.3)内の画像を2値として抽出した特定標準偏差画像を作成している。尚、標準偏差上下限値範囲は、異種物Waの種類により検査開始前に予め設定しておくが、異種物Waの種類によっては操作部5からユーザ設定することもできる。
【0038】
立体形状指数算出手段12dは、立体形状特徴量抽出手段12cで抽出された立体的な特徴量を表す画像、すなわち特定標準偏差画像において、隣接する有値の画素を一つの塊として捉えた場合、例えば画像の左上から右下に向かう走査方向の順番に塊を検索して番号付けしたラベリング画像を生成するラベリング処理を施して塊(ブロブ)を他の塊と区別(分離)し、ラベル毎の面積が所定範囲内または所定閾値以上のラベルの面積を抽出しその面積値を立体形状指数として、判別手段13に出力している。
【0039】
なお、本例では、立体的な特徴量として標準偏差を用いたが、濃度幅や正規化相関フィルタ等で立体的な特徴量を表す画像を作成するようにしてもよい。
【0040】
また、
図2(b)の画像処理手段12は、X線透過画像作成手段12g、平滑化画像作成手段12h、輪郭抽出手段12i、立体形状指数算出手段12jを備えて構成される。
【0041】
X線透過画像作成手段12gは、
図2(a)のX線透過画像作成手段12aと同様に、LUT係数乗算により、X線透過量のデータを対数変換し、吸収量が大きいほど濃度が高くなるようなX線透過画像を作成している。
【0042】
平滑化画像作成手段12hは、
図2(a)の平滑化画像作成手段12bと同様に、注目画素を中心とする注目領域(例えば3×3の領域、5×5の領域)内の平均値を注目画像の値とした平滑化画像を作成している。
【0043】
輪郭抽出手段12iは、平滑化画像作成手段12hにより作成された平滑化画像から被検査体の輪郭を表す輪郭画像を作成している。本実施の形態では、他の被検査体と分離するための縮小画像作成手段12i1と、他の被検査体と分離された輪郭部分の画像を生成する縮小輪郭画像作成手段12i2とから輪郭抽出手段12iが構成されている。
【0044】
縮小画像作成手段12i1は、平滑化画像作成手段12hにより作成された平滑化画像に対し、予めX線検査装置1で決まっている縮小量(例えば1〜3回「画素」)で縮小した縮小画像を作成している。
【0045】
縮小輪郭画像作成手段12i2は、縮小画像作成手段12i1により作成された縮小画像をさらに1回縮小した再縮小画像と元の縮小画像との差分から縮小輪郭画像を作成している。その際、縮小輪郭画像内濃度の合計は、縮小画像の濃度の合計から求めることができる。また、輪郭長は、縮小輪郭画像の画素数で求めることができる。但し、このとき斜め方向に連結する画素の場合には2
1/2 倍して補正する。
【0046】
立体形状指数算出手段12jは、輪郭抽出手段12iで抽出された輪郭画像、すなわち縮小輪郭画像において、ラベリング処理を施し、ラベル毎の輪郭画像について、(輪郭長)
3 /輪郭内濃度の合計を立体形状指数として算出し、その値を立体形状指数として判別手段13に出力している。尚、物品密度が均一である場合は、濃度=厚みとなるので、輪郭内濃度の合計は体積と同等になり、立体形状指数が小さいほど球に近づくことを意味する。
【0047】
判別手段13は、
図1に示すように、異種物判別手段13a、異物判別手段13b、良品判別手段13cを備えている。
【0048】
異種物判別手段13aは、
図2(a)の画像処理手段12の構成を採用した場合、立体形状指数算出手段12dからの立体形状指数に基づき、所定範囲内の立体形状指数(標準偏差)を持つラベル(塊)が所定の面積以上あるときに、被検査体Wに特定の異種物Waが混入していると判別し、異種物Wa混入の有無を示す判別信号を良品判別手段13cに出力している。
【0049】
また、異種物判別手段13aは、
図2(b)の画像処理手段12の構成を採用した場合、立体形状指数算出手段12jからの立体形状指数の値が所定の範囲内のときに、被検査体Wに特定の異種物Waが混入していると判別し、異種物Wa混入の有無を示す判別信号を良品判別手段13cに出力している。
【0050】
異物判別手段13bは、被検査体Wの収容体内の領域において、濃淡レベルが他と違う部分を異物として判断している。さらに説明すると、異物判別手段13bは、画像記憶手段11に格納されたX線濃度データから異物を強調する処理を施して異物強調画像を生成し、この異物強調画像の濃淡レベルと、操作部5により予め設定された異物検出リミット値とを比較し、異物強調画像の濃淡レベルが異物検出リミット値を越えたときに、異物が混入していると判別している。このときの判別結果は、判別信号(OK信号、又はNG信号)として良否判別手段13cに出力される。なお、異物検出リミット値は、被検査体Wの種類に応じて操作部5から適宜設定可能とされている。
【0051】
良品判別手段13cは、異種物判別手段13aからの判別信号と異物判別手段13bからの判別信号に基づき、搬送される被検査体Wが正常又は不良を示す選別信号を外部出力している。すなわち、良否判別手段13cは、異種物判別手段13a及び異物判別手段13bの両方から正常を示す判別信号(OK信号)が入力されると、その被検査体Wに異種物Wa及び異物の混入無しと判別し、正常を示す選別信号を外部出力する。これに対し、異種物判別手段13aから異種物混入を示す判別信号(NG信号)が入力されるか、異物判別手段13bから異物混入を示す判別信号(NG信号)が入力されると、被検査体Wに異種物Wa及び/又は異物の混入有りと判別し、不良を示す選別信号を外部出力する。
【0052】
表示装置7は、操作部5からの所定のキー操作により、不図示の設定入力画面の表示の他、判別手段13の判別結果に基づき、搬送部2上に搬送される被検査体Wを平面視したX線透過画像、「OK」や「NG」の良否判別結果、総検査数、良品数、NG総数などの検査結果を表示している。
【0053】
次に、上記構成によるX線検査装置1を用いて被検査体Wに異種物Waが混入しているか否かを検査する場合の信号処理部6による異種物検出処理について説明する。まず、
図2に示す成型品(ゴルフボール等)が異種物Waとしてジャガイモ(被検査体W)に混入される場合の異種物検出処理の手順について
図4及び
図5を参照しながら説明する。
【0054】
搬送部2によりバラ流しで順次搬送される被検査体WにX線発生部3からX線が照射されると(ST1)、このX線の照射に伴うX線濃度データ(
図5(a)参照)は、X線検出部4のスキャン周期毎に信号処理部6の画像記憶手段(データメモリ)11に逐次格納される(ST2)。
【0055】
そして、X線透過画像作成手段12aは、LUT係数乗算により、X線透過量のデータを対数変換し、吸収量が大きいほど濃度が高くなるようなX線透過画像を作成する(ST3)。
【0056】
続いて、平滑化画像作成手段12bは、X線透過画像作成手段12aにより作成されたX線透過画像において、注目画素を中心とした注目領域(例えば3×3の領域、5×5の領域)内の平均値を注目画像の値とする平滑化画像(
図5(b)参照)を作成する(ST4)。
【0057】
次に、立体形状特徴量抽出手段12cの標準偏差画像作成手段12c1は、平滑化画像作成手段12bにより作成された平滑化画像において、注目画素を中心とする注目領域(例えば3×3の領域、5×5の領域)内の濃度の標準偏差値を注目画素の値とする標準偏差画像(
図5(c)参照)を作成する(ST5)。
【0058】
その後、立体形状特徴量抽出手段12cの特定標準偏差画像作成手段12c2は、標準偏差画像作成手段12c1により作成された標準偏差画像において、標準偏差画像の値が所定範囲(例えば1.2〜1.3)内の画像を2値として抽出した特定標準偏差画像(
図5(d)参照)を作成する(ST6)。
【0059】
立体形状指数算出手段12dは、立体形状特徴量抽出手段12cで抽出された特定標準偏差画像において、隣接する有値の画素を一つの塊として捉えた場合、例えば画像の左上から右下に向かう走査方向の順番に塊を検索して番号付けしたラベリング画像を生成するラベリング処理を施して塊(ブロブ)を他の塊と区別(分離)し、ラベル毎の面積が所定範囲内または所定閾値以上のラベルの面積(
図5(e)参照)を抽出しその面積値を立体形状指数として、判別手段13に出力する(ST7)。
【0060】
異種物判別手段13aは、立体形状指数算出手段12dからの立体形状指数に基づき、所定範囲内の立体形状指数(標準偏差)を持つラベル(塊)が所定の面積以上あるときに、被検査体Wに特定の異種物Waが混入していると判別し、異種物Wa混入の有無を示す判別信号を良品判別手段13cに出力する。
【0061】
また、上述した処理に並行して、異物判別手段13bは、画像記憶手段(データメモリ)11に格納されたX線濃度データに基づくX線透過画像から濃淡レベルが他と違う部分を異物として判別し、判別信号を良品判別手段13cに出力する。
【0062】
そして、良品判別手段13cは、異種物判別手段13aからの判別信号と異物判別手段14bからの判別信号に基づき、その被検査体Wが正常又は不良を示す選別信号を外部出力する。
【0063】
また、表示装置7には、異種物判別手段13aや異物判別手段13bの判別結果に基づき、搬送部2上に搬送される被検査体Wを平面視したX線透過画像、「OK」や「NG」の良否判別結果、総検査数、良品数、NG総数などの検査結果が表示される。
【0064】
次に、上記X線検査装置1を用いた異種物検出処理の他の例として、品種切替え後の飴(被検査体W)に品種切替え前の形状の異なる飴が異種物Waとして混入する場合の処理手順について
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0065】
搬送部2によりバラ流しで順次搬送される被検査体WにX線発生部3からX線が照射されると(ST11)、このX線の照射に伴うX線濃度データは、X線検出部4のスキャン周期毎に信号処理部6の画像記憶手段(データメモリ)11に逐次格納される(ST12)。
【0066】
そして、X線透過画像作成手段12gは、LUT係数乗算により、X線透過量のデータを対数変換し、吸収量が大きいほど濃度が高くなるようなX線透過画像を作成する(ST13)。
【0067】
続いて、平滑化画像作成手段12hは、X線透過画像作成手段12gにより作成されたX線透過画像において、注目画素を中心とした注目領域(例えば3×3の領域、5×5の領域)内の平均値を注目画像の値とする平滑化画像(
図7(a)参照)を作成する(ST14)。ここまでの処理は、
図4のST1〜ST4の処理と同様である。
【0068】
次に、輪郭抽出手段12iの縮小画像作成手段12i1は、平滑化画像作成手段12hにより作成された平滑化画像に対し、予めX線検査装置1で決まっている縮小量(例えば1〜3回「画素」)で縮小した縮小画像(
図7(b)参照)を作成する(ST15)。
【0069】
ここで、縮小画像作成手段12i1による画像縮小処理を施さない場合には、
図7(d)に示すように、その輪郭から一つ一つの塊に分離することができない。
【0070】
その後、輪郭抽出手段12iの縮小輪郭画像作成手段12i2は、縮小画像作成手段12i1により作成された縮小画像をさらに1回縮小した再縮小画像と元の縮小画像との差分から縮小輪郭画像を作成する(ST16)。
【0071】
そして、立体形状指数算出手段12jは、輪郭抽出手段12iの縮小輪郭画像作成手段12i2により作成された縮小輪郭画像において、ラベリング処理を施し、ラベル毎の輪郭画像について、(輪郭長)
3 /輪郭内濃度の合計を立体形状指数として算出し(ST17)、その値を立体形状指数として異種物判別手段13aに出力する。
【0072】
異種物判別手段13aは、立体形状指数算出手段12jからの立体形状指数の値が所定の範囲内のときに、被検査体Wに特定の異種物Waが混入していると判別し、異種物Wa混入の有無を示す判別信号を良品判別手段13cに出力する。
【0073】
このように、本例のX線検査装置1では、バラ流しで順次搬送される被検査体WにX線を照射し、
図4又は
図6のフローチャートに示す異種物検出処理により、X線の照射に伴うX線濃度データから検出すべき特定の異種物Waの立体形状の特徴を示す立体形状指数(特定標準偏差画像)を取得し、この立体形状指数に基づいて特定の異種物Waの有無を検出している。
【0074】
さらに説明すると、
図2(a)の画像処理手段12を採用した構成では、
図4のフローチャートによる異種物検出処理を実行し、分散値フィルタを用いて得られる特定標準偏
差画像
において隣接する有値の画素からなる塊のうち、所定範囲内または所定閾値以上の塊の面積を立体形状指数として取得し、この立体形状指数が所定の大きさ以上であるときに、被検査体Wに特定の異種物Waが混入していると判別している。
【0075】
また、
図2(b)の画像処理手段12を採用した構成では、
図6のフローチャートによる異種物検出処理を実行し、X線透過画像上の各被検査体Wを各塊に分離し、分離された塊の輪郭長と塊の輪郭内の濃度
を合計
した値との比を立体形状指数として取得し、この立体形状指
数の大きさが所定範囲内であるときに、被検査体Wに特定の異種物Waが混入していると判別している。これにより、製品ラインで被検査体Wに混在しやすい被検査体Wに類似した特定の異種物Wa(例えば
図3に示すようなゴルフボールなどの成型品、品種切替え前後での同等の大きさで形状の異なる物)を確実に検出して異種物混入検査を行うことができる。
【0076】
また、本発明に係るX線検査装置1では、
図2(a)の画像処理手段12を採用した場合、特定の異種物Waが球の場合に特に有効である。また、
図2(b)の画像処理手段12を採用した場合に、被検査物Wと特定の異種物Waの立体形状が異なっていれば、X線画像上の輪郭形状に左右されずに異種物Waを検出することができる。さらに、被検査体WへのX線の照射に伴うX線濃度データを用いて被検査体Wに対する異物混入検査と並行して異種物混入検査を行うことができる。