(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部は、前記周壁の内周面に全周に亘って設けられた段差部であり、この段差部上に前記遮蔽板の外周部が載置された状態で、前記遮蔽板を支持することを特徴とする請求項3に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
前記同心円状に分割された複数のリング板の各分割ラインを挟んで隣接するリング板のうち、当該分割ラインを挟んで内側に位置するリング板の下面側の外周部に設けられた内側段差部と、当該分割ラインを挟んで外側に位置するリング板の上面側の内周部に設けられた外側段差部とが、互いの段差面を接触させた状態で係合されると共に、前記内側段差部の側面と前記外側段差部の側面との間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
前記同心円状に分割された複数のリング板のうち何れかのリング板が、前記開口部を中心に径方向に延びる分割ラインに沿って複数のリング片に分割されていることを特徴とする請求項5〜10の何れか一項に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
請求項1〜14の何れか一項に記載のエピタキシャルウェハの製造装置を用いて、ウェハの面上にエピタキシャル層を堆積成長させる工程を含むことを特徴とするエピタキシャルウェハの製造方法。
【背景技術】
【0002】
例えば、炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に対して、バンドギャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が約10倍、熱伝導度が約3倍という優れた物性を有しており、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイスなどへの応用が期待されている。
【0003】
このようなSiC半導体デバイスの製造には、通常、SiCエピタキシャルウェハが用いられる。このSiCエピタキシャルウェハは、昇華再結晶法等を用いて作製されたSiC単結晶基板(ウェハ)の面上に、SiC半導体デバイスの活性領域となるSiC単結晶薄膜(エピタキシャル層)をエピタキシャル成長させることで作製される。
【0004】
また、エピタキシャルウェハの製造装置としては、チャンバ内に原料ガスを供給しながら、加熱されたSiCウェハの面上にSiCエピタキシャル層を堆積成長させる化学的気相成長(CVD)装置が用いられる。
【0005】
このCVD装置では、SiCエピタキシャル層をエピタキシャル成長させるため、SiCウェハを高温で加熱する必要がある。このため、ウェハが載置されるサセプタや、このサセプタの上面に対向して配置されたシーリング(天板)を高周波誘導加熱により加熱し、これらサセプタやシーリングからの輻射等によりウェハを加熱する方法が用いられている(特許文献1,2を参照。)。したがって、サセプタやシーリングには、高周波誘導加熱に適したグラファイト(カーボン)製のものが用いられている。
【0006】
ところで、CVD装置では、成膜中にSiCウェハの面上だけでなく、シーリングの面上にもSiCエピタキシャル層の堆積物が堆積する。そして、成膜を繰り返すことによって、このシーリングの面上に堆積した堆積物が剥がれて、SiCウェハの面上に落下することがあった。
【0007】
この場合、SiCエピタキシャル層の面上に付着した堆積物(パーティクルという。)や、SiCエピタキシャル層の中に埋め込まれた堆積物(ダウンフォールという。)によって、SiCエピタキシャル層の膜質を著しく低下させることになる。
【0008】
このような問題は、成膜を繰り返す量産型のCVD装置において特に顕著なものとなる。このため、CVD装置では、チャンバ内のシーリング等に堆積した堆積物を除去するためのクリーニング作業を定期的に実施する必要がある。
【0009】
しかしながら、量産型のCVD装置では、チャンバのサイズが大きくなるため、上述したクリーニング作業に時間がかかるだけでなく、クリーニング作業を中途半端に行うと、逆にパーティクルやダウンフォールの増加を招くといった問題が発生してしまう。したがって、SiCエピタキシャルウェハの製品歩留りの向上を図るためには、上述したパーティクルやダウンフォールの低減を図ることが不可欠である。
【0010】
そこで、下記特許文献2に記載の発明では、サセプタに載置されたウェハと、サセプタに対向したシーリング(天板)との間に、ウェハを覆うためのカバープレートを配置して、シーリングに堆積した堆積物(パーティクル)が脱落してウェハ上に付着するのをカバープレートによって阻止することが提案されている。
【0011】
しかしながら、この場合、シーリングに堆積した堆積物がウェハ上に落下するのを防ぐことができるものの、このシーリングに堆積物が堆積するのを阻止できないため、上述したシーリングに堆積した堆積物を除去するといった面倒なクリーニング作業が必要となる。
【0012】
一方、シーリングを大型のSiC単結晶材料で構成し、このシーリングの表面に対する堆積物の密着性を向上させることによって、パーティクルの発生を抑制させるCVD装置も提案されている(特許文献3を参照。)
【0013】
しかしながら、大型のSiC単結晶材料で構成したシーリングは、成膜時の高温加熱によって反り上がったり、割れ易かったりするため、このようなSiC単結晶材料で構成したシーリングを安定的に長期間使用することは困難である。また、大型のSiC単結晶材料は、非常に高価であり且つ4インチを越えるSiC単結晶基板は入手困難といったこともあり、CVD装置を製作する上で課題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、上述したパーティクルやダウンフォールの低減を図ることによって、高品質なエピタキシャル層をウェハの面上に安定して堆積成長させることが可能なエピタキシャルウェハの製造装置、並びに、そのような製造装置を用いることによって、製品歩留まりの更なる向上を可能としたエピタキシャルウェハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、以下の手段を提供する。
(1) チャンバ内に原料ガスを供給しながら、加熱されたウェハの面上にエピタキシャル層を堆積成長させるエピタキシャルウェハの製造装置であって、
前記ウェハが載置される複数の載置部を有して、これら複数の載置部が周方向に並んで配置されたサセプタと、
前記サセプタとの間で反応空間を形成するように、前記サセプタの上面に対向して配置された天板と、
前記サセプタの下面側及び/又は前記天板の上面側に配置されて、前記載置部に載置されたウェハを加熱する加熱手段と、
前記天板の上面中央部から前記反応空間内に前記原料ガスを導入するガス導入口を有して、このガス導入口から放出された原料ガスを前記反応空間の内側から外側に向かって供給するガス供給手段と、
前記チャンバ内に着脱自在に取り付けられると共に、前記天板の下面に堆積物が堆積するのを阻止するように、前記天板の下面に近接して配置された遮蔽板とを備え、
前記遮蔽板は、前記ガス導入口を前記反応空間の内側に臨ませる開口部を中央部に有する基材と、この基材の下面を被覆する薄膜とを有し、
前記薄膜の表面は、前記基材の下面に形成された微細な凹凸を反映した凹凸形状を有し、
前記加熱手段により加熱されて前記遮蔽板が熱変形したときに、前記凹凸形状によって前記遮蔽板の下面に堆積した堆積物の脱落が抑制されることを特徴とするエピタキシャルウェハの製造装置。
(2) 前記微細な凹凸の高さが2〜50μmの範囲、前記薄膜の厚みが30〜200μmの範囲、前記微細な凹凸の互いに隣接する凸部の間隔が50〜150μmの範囲にあることを特徴とする前項(1)に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(3) 前記微細な凹凸は、前記基材の表面にテクスチャ加工、描画加工、転写加工の何れかを施すことによって形成されていることを特徴とする前項(1)又は(2)に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(4) 前記サセプタ及び前記天板の外側に位置して、前記反応空間の周囲を囲むように配置された周壁を備え、
前記周壁の内周面には、前記遮蔽板を支持する支持部が設けられていることを特徴とする前項(1)〜(3)の何れか一項に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(5) 前記支持部は、前記周壁の内周面に全周に亘って設けられた段差部であり、この段差部上に前記遮蔽板の外周部が載置された状態で、前記遮蔽板を支持することを特徴とする前項(4)に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(6) 前記遮蔽板は、前記開口部を中心に同心円状に複数のリング板に分割された構造を有することを特徴とする前項(1)〜(5)の何れか一項に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(7) 前記同心円状に分割された複数のリング板の各分割ラインを挟んで隣接するリング板のうち、当該分割ラインを挟んで内側に位置するリング板の下面側の外周部に設けられた内側段差部と、当該分割ラインを挟んで外側に位置するリング板の上面側の内周部に設けられた外側段差部とが、互いの段差面を接触させた状態で係合されると共に、前記内側段差部の側面と前記外側段差部の側面との間に隙間が設けられていることを特徴とする前項(6)に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(8) 前記同心円状に分割された複数のリング板の少なくとも下面が面一となっていることを特徴とする前項(6)又は(7)に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(9) 前記遮蔽板は、その内側から外側に向かって、内周リング板と、中央リング板と、外周リング板とに分割された構造を有し、
前記内周リング板と前記中央リング板との分割ラインが前記複数の載置部が周方向に並ぶ領域よりも内側に位置し、前記中央リング板と前記内周リング板との分割ラインが前記複数の載置部が周方向に並ぶ領域よりも外側に位置していることを特徴とする前項(6)〜(8)の何れか一項に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(10) 前記遮蔽板は、その内側から外側に向かって、内周リング板と、外周リング板とに分割された構造を有し、
前記内周リング板と前記外周リング板との分割ラインが前記複数の載置部が周方向に並ぶ領域よりも内側又は外側に位置していることを特徴とする前項(6)〜(9)の何れか一項に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(11) 前記ウェハがSiC単結晶基板であり、前記エピタキシャル層がSiC単結晶薄膜であり、
前記遮蔽板の下面に堆積するSiC堆積物において、このSiC堆積物中に含まれるSiとCの割合が同等となる領域よりも内側に、Siの割合が多くなる領域を有しており、このSiの割合が多くなる領域に前記内周リング板を配置するように、前記内周リング板と前記中央又は外周リング板との分割ラインを位置させることを特徴とする前項(9)又は(10)に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(12) 前記同心円状に分割された複数のリング板のうち何れかのリング板が、前記開口部を中心に径方向に延びる分割ラインに沿って複数のリング片に分割されていることを特徴とする前項(6)〜(11)の何れか一項に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(13) 前記ウェハがSiC単結晶基板であり、前記エピタキシャル層がSiC単結晶薄膜であり、
少なくとも前記複数の載置部が周方向に並ぶ領域と対向する位置に配置されたリング板には、表面がSiC薄膜で被覆されたグラファイト基材が用いられていることを特徴とする前項(6)〜(12)の何れか一項に記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(14) 前記サセプタは、その中心軸周りに回転駆動されると共に、前記複数の載置部が各々の中心軸周りに回転駆動される構造を有することを特徴とする前項(1)〜(13)の何れか一項に記載のエピタキシャル基板の製造装置。
(15) 前項(1)〜(14)の何れか一項に記載のエピタキシャルウェハの製造装置を用いて、ウェハの面上にエピタキシャル層を堆積成長させる工程を含むことを特徴とするエピタキシャルウェハの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、天板の下面に堆積物が堆積するのを阻止するように、天板の下面に近接して遮蔽板が配置されていることから、この遮蔽板の下面に堆積物を堆積させることができる。
【0019】
そして、このエピタキシャルウェハの製造装置では、遮蔽板がチャンバ内に着脱自在に取り付けられていることから、従来のような天板の下面に堆積した堆積物を除去するといった面倒なクリーニング作業を行わずに、遮蔽板を交換するといった簡便なメンテナンス作業を行うだけで、上述したパーティクルやダウンフォールの低減を図ることが可能である。
【0020】
さらに、このエピタキシャルウェハの製造装置では、遮蔽板が、ガス導入口を反応空間の内側に臨ませる開口部を中央部に有する基材と、この基材の下面を被覆する薄膜とを有している。また、薄膜の表面は、基材の下面に形成された微細な凹凸を反映した凹凸形状を有している。
【0021】
この場合、遮蔽板の下面(薄膜の表面)に堆積する堆積物のうち、凹凸形状の各凹部に堆積する堆積物の成長速度よりも各凸部に堆積する堆積物の成長速度の方が早まることになる。また、加熱手段により加熱されて遮蔽板が熱変形したときに、各凸部を起点に堆積成長した堆積物が凹部を挟んで互いに隣接する凸部の間で衝突することが回避される。これにより、遮蔽板の下面に堆積した堆積物の脱落を抑制することが可能である。
【0022】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、微細な凹凸の高さが2〜50μmの範囲、薄膜の厚みが30〜200μmの範囲、微細な凹凸の互いに隣接する凸部の間隔が50〜150μmの範囲であることが好ましい。
これにより、加熱手段により加熱されて遮蔽板が熱変形したときに、この遮蔽板の下面に堆積した堆積物の脱落を抑制することが可能である。
【0023】
また、上記微細な凹凸は、基材の表面にテクスチャ加工、描画加工、転写加工の何れかを施すことによって形成することが可能である。
【0024】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、サセプタ及び天板の外側に位置して、反応空間の周囲を囲むように配置された周壁を備えると共に、この周壁の内周面に設けられた支持部によって遮蔽板を支持する構成としてもよい。
この構成の場合、遮蔽板の外周部のみを支持することによって、加熱手段により加熱されて高温となる遮蔽板に対して、原料ガスを導入するために低温とされたガス導入口と、この遮蔽板の内周部(開口部が形成された中央部)との接触を回避しながら、遮蔽板をチャンバ内に着脱自在に取り付けることが可能である。
【0025】
さらに、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、上記支持部として、周壁の内周面に全周に亘って段差部を設け、この段差部上に遮蔽板の外周部が載置された状態で、遮蔽板を支持する構成としてもよい。
この構成の場合、遮蔽板の外周部が段差部と全周に亘って接触した状態となることによって、この遮蔽板の外周部側から天板との間に向かってガスが流れ込むのを防ぐことが可能である。
【0026】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、上記遮蔽板が、開口部を中心に同心円状に複数のリング板に分割された構造を有する構成としてもよい。
この構成の場合、同心円状に分割されたリング板の間で遮蔽板に加わる熱応力を緩和することが可能である。これにより、複数のリング板に分割された遮蔽板に反り(変形)や割れ等が発生することを防ぐことが可能である。また、遮蔽板の反り(変形)の発生を防ぐことによって、この遮蔽板の下面に堆積した堆積物の脱落を抑制することが可能である。さらに、複数のリング板に分割された遮蔽板のうち、一部のリング板のみを交換するといったことも可能である。
【0027】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、同心円状に分割された複数のリング板の各分割ラインを挟んで隣接するリング板のうち、当該分割ラインを挟んで内側に位置するリング板の下面側の外周部に設けられた内側段差部と、当該分割ラインを挟んで外側に位置するリング板の上面側の内周部に設けられた外側段差部とが、互いの段差面を接触させた状態で係合されると共に、内側段差部の側面と外側段差部の側面との間に隙間が設けられた構成としてもよい。
この構成の場合、内側段差部と外側段差部との係合によって、分割ラインを挟んで内側に位置するリング板の外周部を、分割ラインを挟んで外側に位置するリング板の内周部により支持することが可能である。
また、これら内側段差部の側面と外側段差部の側面との間に隙間を設けることで、加熱手段により加熱されて遮蔽板が熱膨張したときに、分割ラインを挟んで隣接するリング板の側面同士が接触することを防ぐことが可能である。
【0028】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、同心円状に分割された複数のリング板の少なくとも下面が面一となる構成としてもよい。
この構成の場合、同心円状に分割された複数のリング板の少なくとも下面が面一となることで、ガス導入口から放出された原料ガスを反応空間の内側から外側に向かってスムーズに供給しながら、高品質なエピタキシャル層をウェハの面上に安定して堆積成長させることが可能である。
【0029】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、上記遮蔽板が、その内側から外側に向かって、内周リング板と、中央リング板と、外周リング板とに分割された構造を有する構成において、内周リング板と中央リング板との分割ラインが複数の載置部が周方向に並ぶ領域よりも内側に位置し、中央リング板と外周リング板との分割ラインが複数の載置部が周方向に並ぶ領域よりも外側に位置する構成としてもよい。
この構成の場合、遮蔽板を内周リング板と中央リング板と外周リング板とに3分割することで、これら3分割されたリング板の間で遮蔽板に加わる熱応力を緩和することが可能である。特に、内周リング板と中央リング板との分割ラインを複数の載置部が周方向に並ぶ領域よりも内側に位置させる一方、中央リング板と外周リング板との分割ラインを複数の載置部が周方向に並ぶ領域よりも外側に位置させることで、熱変化の大きい遮蔽板の内周側と外周側に加わる熱応力を効率良く緩和することが可能である。
【0030】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、上記遮蔽板が、その内側から外側に向かって、内周リング板と、外周リング板とに分割された構造を有する構成において、内周リング板と外周リング板との分割ラインが複数の載置部が周方向に並ぶ領域よりも内側又は外側に位置する構成としてもよい。
この構成の場合、遮蔽板を内周リング板と外周リング板とに2分割することで、これら2分割されたリング板の間で遮蔽板に加わる熱応力を緩和することが可能である。特に、内周リング板と外周リング板との分割ラインを複数の載置部が周方向に並ぶ領域よりも内側に位置させることで、熱変化の大きい遮蔽板の内周側に加わる熱応力を効率良く緩和することが可能である。一方、内周リング板と外周リング板との分割ラインを複数の載置部が周方向に並ぶ領域よりも外側に位置させることで、熱変化の大きい遮蔽板の外周側に加わる熱応力を効率良く緩和することが可能である。
【0031】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、ウェハがSiC単結晶基板であり、エピタキシャル層がSiC単結晶薄膜である場合に、遮蔽板の下面に堆積するSiC堆積物において、このSiC堆積物中に含まれるSiとCの割合が同等となる領域よりも内側に、Siの割合が多くなる領域を有しており、このSiの割合が多くなる領域に内周リング板を配置するように、内周リング板と中央又は外周リング板との分割ラインを位置させる構成としてもよい。
この構成の場合、SiとCの割合が同等となる領域よりもSiの割合が多くなる領域の方がSiC堆積物の成長が早くなる。したがって、複数のリング板に分割された遮蔽板のうち、このSiの割合が多くなる領域に配置された内周リング板のみを交換することで、他のリング板の交換時期を延ばすことが可能である。
【0032】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、同心円状に分割された複数のリング板のうち何れかのリング板が、開口部を中心に径方向に延びる分割ラインに沿って複数のリング片に分割された構成としてもよい。
この構成の場合、遮蔽板を構成するリング板を更に複数のリング片に分割することで、これら分割されたリング片の間で遮蔽板に加わる熱応力を緩和することが可能である。
【0033】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、ウェハがSiC単結晶基板であり、エピタキシャル層がSiC単結晶薄膜である場合に、少なくとも複数の載置部が周方向に並ぶ領域と対向する位置に配置されたリング板に、表面がSiC膜で被覆されたグラファイト基板又はSiC基板を用いた構成としてもよい。
この構成の場合、当該リング板の表面をエピタキシャル層と同じSiCとすることで、堆積物の堆積性を高めることができ、このリング板の下面に堆積した堆積物の脱落を抑制することが可能である。また、当該リング板の交換時期を延ばすことが可能である。
【0034】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造装置では、上記サセプタが、その中心軸周りに回転駆動されると共に、複数の載置部が各々の中心軸周りに回転駆動される構造を有する構成としてもよい。
この構成の場合、ウェハの面上にエピタキシャル層を堆積成長させる工程を、複数の載置部に載置された各ウェハに対して均等に行うことが可能である。
【0035】
また、本発明に係るエピタキシャルウェハの製造方法では、上記何れかのエピタキシャルウェハの製造装置を用いることによって、高品質なエピタキシャル層をウェハの面上に安定して堆積成長させることが可能である。そして、メンテナンスにかかる時間も短縮できることから、エピタキシャルウェハの製品歩留まりを更に向上させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を適用したエピタキシャルウェハの製造装置及び製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0038】
(エピタキシャルウェハの製造装置)
[第1の実施形態]
先ず、本発明の第1の実施形態として
図1に示すCVD装置(エピタキシャルウェハの製造装置)1Aについて説明する。
このCVD装置1Aは、図示を省略する減圧排気可能なチャンバ(成膜室)内に、SiCの原料ガスGを供給しながら、加熱されたSiCウェハWの面上にSiCエピタキシャル層(図示せず。)を堆積成長させるものである。なお、原料ガスKには、例えば、Si源にシラン(SiH
4)、C源にプロパン(C
3H
8)を含むものを用いることができ、更にキャリアガスとして水素(H
2)を含むものを用いことができる。
【0039】
具体的に、このCVD装置1Aは、チャンバの内部において、複数のSiCウェハWが載置されるサセプタ2と、このサセプタ2との間で反応空間Kを形成するように、サセプタ2の上面に対向して配置されたシーリング(天板)3と、サセプタ2及びシーリング3の外側に位置して、反応空間Kの周囲を囲むように配置された周壁4とを備えている。
【0040】
サセプタ2は、円盤状の回転台5と、この回転台5の下面中央部に取り付けられた回転軸6とを有し、回転台5は、この回転軸6と一体に回転自在に支持されている。また、回転台5の上面には、SiCウェハWが載置される円盤状の載置台(載置部)7が設けられている。
【0041】
載置台7は、回転台5の周方向(回転方向)に等間隔に複数並んで設けられている。また、各載置台7は、各々の中心軸周りに回転自在に支持されている。そして、このサセプタ2は、いわゆるプラネタリ(自公転)方式を採用しており、図示を省略する駆動モータにより回転軸6が回転駆動されると、回転台5がその中心軸周りに回転駆動されると共に、複数の載置台7が各々の中心軸周りに回転駆動される仕組みとなっている。これにより、複数の載置台7に載置された各SiCウェハWに対して均等に成膜を行うことが可能である。
【0042】
シーリング3は、上記サセプタ2の回転台5と略一致した径を有する円盤状の部材であり、回転台5の上面と相対向しながら、サセプタ2との間で扁平状の反応空間Kを形成している。周壁4は、サセプタ2及びシーリング3の外周部を取り囲むリング状の部材である。
【0043】
CVD装置1Aは、上記載置台7に載置されたSiCウェハWを加熱する加熱手段として、高周波誘導加熱によりサセプタ2及びシーリング3を加熱するための誘導コイル8を備えている。この誘導コイル8は、サセプタ2(回転台5)の下面及びシーリング3の上面に、それぞれ近接した状態で対向配置されている。
【0044】
そして、このCVD装置1Aでは、図示を省略する高周波電源から誘導コイル8に高周波電流が供給されると、サセプタ2(回転台5及び載置台7)及びシーリング3が高周波誘導加熱により加熱されて、これらサセプタ2及びシーリング3からの輻射や、載置台7からの熱伝導等により、載置台7に載置されたSiCウェハWを加熱することが可能となっている。
【0045】
なお、サセプタ2(回転台5及び載置台7)及びシーリング3には、高周波誘導加熱に適した材料として、耐熱性に優れなお且つ熱伝導率の良いグラファイト(カーボン)材料からなるものを用いることができ、更にグラファイト(カーボン)からのパーティクル等の発生を防ぐため、表面がSiCやTaC等で被覆されたものを好適に用いることができる。また、SiCウェハWの加熱手段としては、上述した高周波誘導加熱によるものに限らず、抵抗加熱よるものなどを用いてもよい。また、加熱手段は、サセプタ2(回転台5)の下面側及びシーリング3の上面側に配置された構成に限らず、これらの何れか一方側のみに配置された構成とすることも可能である。
【0046】
CVD装置1Aは、チャンバ内に原料ガスGを供給するガス供給手段として、シーリング3の上面中央部から反応空間K内に原料ガスGを導入するガス導入管(ガス導入口)9を備えている。このガス導入管9は、円筒状に形成されて、シーリング3の中央部に設けられた円形状の開口部10を貫通した状態で、その先端部(下端部)が反応空間Kの内側に臨んで配置されている。
【0047】
また、ガス導入管9の先端部(下端部)には、拡径方向に突出されたフランジ部9aが設けられている。このフランジ部9aは、ガス導入管9の下端部から鉛直下向きに放出された原料ガスGを、その対向する回転台5との間で水平方向に放射状に流すためのものである。
【0048】
そして、このCVD装置1Aでは、ガス導入管9から放出された原料ガスGを反応空間Kの内側から外側に向かって放射状に流すことで、SiCウェハWの面内に対して平行に原料ガスGを供給することが可能となっている。また、チャンバ内で不要になったガスは、上記周壁4の外側に設けられた排気口(図示せず。)からチャンバの外へと排出することが可能となっている。
【0049】
ここで、シーリング3は、上記誘導コイル8により高温で加熱されるものの、その内周部(開口部10が形成された中央部)が原料ガスGを導入するために低温とされたガス導入管9とは非接触とされている。また、シーリング3は、ガス導入管9の外周部に取り付けられた支持リング(支持部材)11の上に、その内周部が載置されることによって、鉛直上向きに支持されている。さらに、このシーリング3は、上下方向に移動させることが可能となっている。
【0050】
CVD装置1Aは、シーリング3の下面に近接して配置された遮蔽板12を備えている。この遮蔽板12は、円盤状のグラファイト(カーボン)製の基材12aと、この基材12aの下面を被覆するSiCの薄膜12bとを有して構成されている。また、遮蔽板12(基材12a)の中央部には、上記ガス導入管9を貫通させる円形状の開口部13が設けられている。
【0051】
そして、この遮蔽板12は、チャンバ内に着脱自在に取り付けられている。具体的に、この遮蔽板12は、周壁4の内周面から突出して設けられた支持部14の上に、その外周部が載置されることによって、鉛直上向きに支持されている。この場合、遮蔽板12の外周部のみを支持することによって、上記誘導コイル8により加熱されて高温となる遮蔽板12に対して、原料ガスGを導入するために低温とされたガス導入管9と、この遮蔽板12の内周部(開口部13が形成された中央部)との接触を回避しながら、遮蔽板12をチャンバ内に着脱自在に取り付けることが可能となっている。
【0052】
また、支持部14は、周壁4の内周面に全周に亘って設けられた段差部であり、この段差部上に遮蔽板12の外周部が載置されている。この場合、遮蔽板12の外周部が支持部(段差部)14と全周に亘って接触した状態となることから、この遮蔽板12の外周部側からシーリング3との間に向かってガスが流れ込むのを防ぐことが可能である。
【0053】
一方、シーリング3の下面中央部には、上記遮蔽板12の開口部13の内側に位置するように、円筒状のスリーブ部15が突出して設けられている。このスリーブ部15は、遮蔽板12の内周部側からシーリング3との間に向かってガスを流れ込み難くするためのものである。
【0054】
ここで、
図2に示すように、遮蔽板12の上面とシーリング3の下面との間隔d
1は、0.5〜1mmの範囲に設定されていることが好ましい。これは、遮蔽板12によってシーリング3の下面にSiCの堆積物が堆積するのを阻止するためである。
【0055】
また、遮蔽板12の外周面と周壁4の内周面との間隔d
2は、1.0〜3.0mmの範囲に設定されていることが好ましい。これは、加熱時の熱膨張により遮蔽板12が周壁4に接触するのを防ぐためである。
【0056】
また、遮蔽板12の内周面とスリーブ部15の外周面との間隔d
3は、0.5〜1mmの範囲に設定されていることが好ましい。これは、加熱時の熱膨張により遮蔽板12がスリーブ部15に接触するのを防ぎつつ、遮蔽板12の内周部側からシーリング3との間に向かってガスを流れ込み難くするためである。
【0057】
また、シーリング3の内周面とガス導入管9の外周面との間隔d
4は、0.4〜0.6mmの範囲に設定されていることが好ましい。これは、原料ガスGを導入するために低温とされたガス導入管9が、上記誘導コイル8により加熱されて高温となるシーリング3からの輻射熱の影響を受けないようにするためのである。
【0058】
また、遮蔽板12の板厚は、その機械的強度を確保するためには厚い方が好ましいものの、厚くし過ぎると逆に割れが発生するため、2〜6mmの範囲とすることが好ましい。
【0059】
以上のような構造を有するCVD装置1Aでは、回転台5がその中心軸周りに回転駆動されると共に、複数の載置台7が各々の中心軸周りに回転駆動される。また、この状態で、載置台7に載置されたSiCウェハWを加熱しながら、ガス導入管9から放出された原料ガスGを反応空間Kの内側から外側に向かって放射状に流す。これにより、SiCウェハWの面内に対して平行に原料ガスGが供給される。このとき、原料ガスGの熱分解及び化学反応により、SiCウェハWの表面にSiCエピタキシャル層が堆積しながら成長する。これにより、SiCウェハWの面上にSiCエピタキシャル層を薄膜形成することが可能である。
【0060】
本発明を適用したCVD装置1Aでは、上述したように、シーリング3の下面に堆積物が堆積するのを阻止するように、このシーリング3の下面に近接して遮蔽板12が配置されている。これにより、遮蔽板12の下面に堆積物を堆積させることができる。
【0061】
そして、このCVD装置1Aでは、遮蔽板12がチャンバ内に着脱自在に取り付けられていることから、従来のようなシーリング3の下面に堆積した堆積物を除去するといった面倒なクリーニング作業を行わずに、遮蔽板12を交換するといった簡便なメンテナンス作業を行うだけで、上述したパーティクルやダウンフォールの低減を図ることが可能である。
【0062】
なお、遮蔽板12を交換する際は、上記シーリング3を上方に移動させることによって、上記周壁4の内側にある遮蔽板12を容易に取り外したり、取り付けたりすることが可能である。
【0063】
ところで、遮蔽板12は誘導コイル8により高温に加熱されるものの、ガス導入管9からは冷たい原料ガスGが反応空間Kの内側から外側に向かって供給される。このため、遮蔽板12の下面側の温度が上面側の温度よりも低くなる傾向がある。また、ガス導入管12側は低温となるため、遮蔽板12の内周部(開口部13が形成された中央部)の温度が低くなる傾向がある。さらに、遮蔽板12の内周部及び外周部には、誘導コイル8による加熱が加わり難いことから、その径方向の中央部分で温度が最も高く、この中央部分から内周側及び外周側の両端に向かうに従って、温度が低くなる傾向がある。
【0064】
したがって、遮蔽板12には、このような温度分布の違いによって、上方に向かって湾曲した反り(熱変形)が発生する。このとき、遮蔽板12の下面に堆積した堆積物同士が近接し合うため、これら堆積物が衝突して突発的に脱落する可能性が高くなる。
【0065】
これに対して、本発明を適用したCVD装置1Aでは、
図3(a),(b),(c)に示すように、遮蔽板12の下面、すなわち薄膜12bの表面が、基材12aの下面に形成された微細な凹凸31を反映した凹凸形状32を有し、この凹凸形状32によって遮蔽板12の下面に堆積した堆積物の脱落が抑制される構造となっている。
【0066】
具体的に、微細な凹凸31は、尖形の頂部を有する直線状の突条部(凸部)31aを有している。突条部31aは、基材12aの面内で一の方向に格子状に複数並んで形成されている。そして、各突条部の間には、この突条部31aとは逆の形状、すなわち尖形の底部を有する直線状の凹部31bが形成されている。また、各突条部(凸部)31a及び凹部31bの間隔は互いに等しくなっている。このような微細な凹凸31は、基材12aの表面にテクスチャ加工や、描画加工、転写加工などを用いて形成することが可能である。
【0067】
凹凸形状32は、このような微細な凹凸31の形状を反映した突条部(凸部)32aと、その間に凹部32bとを有している。なお、これら突条部(凸部)32aの頂部と凹部32bの底部は、基材12aの微細な凹凸31が形成された表面(下面)を覆う薄膜12bのため、それぞれ尖形とはならずに丸みを帯びた形状となっている。
【0068】
ここで、遮蔽板12の下面(SiC薄膜12bの表面)には、
図4に模式的に示すように、凹凸形状32を形成する凹部32bの底部よりも凸部32aの頂部に向かって堆積物Sが堆積し易い傾向にある。すなわち、遮蔽板12の下面(SiC薄膜12bの表面)に堆積する堆積物Sのうち、凹凸形状32の各凹部32bに堆積する堆積物Sの成長速度よりも各凸部32aに堆積する堆積物Sの成長速度の方が早くなる。その結果、遮蔽板12の下面に堆積する堆積物Sの厚みは、凹部32bの面上よりも凸部32aの面上で厚くなる。
【0069】
本発明は、このような知見に基づいたものであり、遮蔽板12の下面に堆積する堆積物のうち、凹凸形状32の各凸部32aを起点に堆積成長した堆積物Sが凹部32bを挟んで互いに隣接する凸部32aの間で衝突するのを回避するように、基材12aの下面に微細な凹凸31を形成する。そして、このような微細な凹凸31を反映した凹凸形状32がSiC薄膜12bの表面に形成されることによって、上述した遮蔽板12に反りが発生した場合でも、この遮蔽板12の下面(SiC薄膜12bの表面)に堆積した堆積物Sが脱落するのを抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0070】
具体的に、本発明では、
図3(c)に示すように、微細な凹凸31の高さ(凸部31aと凹部31bとの高低差)Hを2〜50μmの範囲の範囲とすることが好ましく、薄膜12bの厚みDを30〜200μmの範囲とすることが好ましく、微細な凹凸31の互いに隣接する凸部31aの間隔Wを50〜150μmの範囲とすることが好ましい。
【0071】
これにより、SiC薄膜12bの表面において、凸部32aが形成された部分での堆積物Sの堆積性(付着性及び成長速度)を高めることができ、この部分に脱落し難い堆積物Sを堆積させることが可能である。
【0072】
以上のように、本発明を適用したCVD装置1Aでは、上記誘導コイル8により加熱されて遮蔽板12が熱変形したときに、この遮蔽板12の下面(SiC薄膜12bの表面)に堆積する堆積物のうち、凹凸形状32の各凸部32aを起点に堆積成長した堆積物Sが凹部32bを挟んで互いに隣接する凸部32aの間で衝突することが回避されるため、遮蔽板12の下面に堆積した堆積物Sの脱落を抑制することが可能である。
【0073】
なお、本発明は、上記第1の実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明では、上記CVD装置1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0074】
例えば、上記微細な凹凸31は、尖形の頂部を有する突条部(凸部)31aが複数並ぶことによって形成された構成となっているが、このような構成に限らず、平坦な頂部を有する突起部(凸部)31aが複数並ぶことによって形成された構成とすることも可能である。
【0075】
この場合も、薄膜12bの表面では、突起部が形成された部分での堆積物の堆積性(付着性及び成長速度)を高めることができ、この部分に脱落し難い堆積物を堆積させることが可能である。
【0076】
また、
図5(a)〜(e)は、本発明の遮蔽板12の微細な凹凸31を形成する方向を例示した平面図である。このうち、
図5(a)は、上記
図3に示す遮蔽板12と同様に、上記凸部31aが、基材12aの面内で一の方向に格子状に並ぶように形成された構成を模式的に示している。この構成の場合、上述した堆積物の脱落抑制効果を高めることが可能である。
【0077】
一方、
図5(b)は、上記
図5(a)に示す構成に加えて、上記凸部31aが、基材12aの面内で更に一の方向と交差する方向に格子状に並ぶように形成された構成を模式的に示したものである。この構成の場合も、上述した堆積物の脱落抑制効果を高めることが可能である。
【0078】
一方、
図5(c)は、上記凸部31aが、開口部13を中心に同心円状に並ぶように形成された構成を模式的に示したものである。この構成の場合、上述した遮蔽板12の反りが発生する方向と、突条部又は突起部31aが並ぶ方向とを概略一致させることで、上述した堆積物の脱落抑制効果を高めることが可能である。
【0079】
一方、
図5(d)は、上記凸部31aが、開口部13を中心に放射状に並ぶように形成された構成を模式的に示したものである。この構成の場合、上述した堆積物の脱落抑制効果を高めることが可能である。
【0080】
一方、
図5(e)は、上記
図5(c)に示す構成に加えて、上記凸部31aが、更に開口部13を中心に放射状に並ぶように形成された構成を模式的に示したものである。この構成の場合も、上述した堆積物の脱落抑制効果を高めることが可能である。
【0081】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態として
図6に示すCVD装置(エピタキシャルウェハの製造装置)1Bについて説明する。
なお、以下の説明では、上記CVD装置1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0082】
このCVD装置1Bは、上記遮蔽板12が開口部13を中心に同心円状に複数のリング板16,17,18に分割された構造を有している以外は、上記CVD装置1Aと同様の構成を備えている。
【0083】
具体的に、この遮蔽板12は、
図7(a),(b)に示すように、その内側から外側に向かって、内周リング板16と、中央リング板17と、外周リング板18とに3分割された構造を有している。
【0084】
このうち、内周リング板16は、中央リング板17の内側に保持され、中央リング板17は、外周リング板18の内側に保持されている。また、内周リング板16と中央リング板17との分割ラインL
1は、複数の載置台7が周方向に並ぶ領域Sよりも内側に位置している。一方、中央リング板17と外周リング板18との分割ラインL
2は、複数の載置台7が周方向に並ぶ領域Sよりも外側に位置している。すなわち、これらの分割ラインL
1,L
2は、領域Sに対して平面視で重ならない位置に設定されている。これにより、中央リング板17は、領域Sに対して平面視で重なるように、この領域Sに対向して配置されている。
【0085】
また、内周リング板16の下面側の外周部には、その全周に亘って第1の内側段差部19が設けられている。これに対応して、中央リング板17の上面側の内周部には、その全周に亘って第1の外側段差部20が設けられている。そして、これら第1の内側段差部19と第1の外側段差部20とは、互いの段差面19a,20aを接触させた状態で係合されている。これにより、内周リング板16の外周部は、中央リング板17の内周部に鉛直上向きに支持されている。
【0086】
同様に、中央リング板17の下面側の外周部には、その全周に亘って第2の内側段差部21が設けられている。これに対応して、外周リング板18の上面側の内周部には、その全周に亘って第2の外側段差部22が設けられている。そして、これら第2の内側段差部21と第2の外側段差部22とは、互いの段差面21a,22aを接触させた状態で係合されている。これにより、中央リング板17の外周部は、外周リング板18の内周部に鉛直上向きに支持されている。
【0087】
また、第1の内側段差部19の側面19bと第1の外側段差部20の側面20bとの間、及び、第2の内側段差部21の側面21bと第2の外側段差部22の側面22bとの間には、それぞれ隙間t
1,t
2が設けられている。これらの隙間t
1,t
2は、上記分割ラインL
1,L
2を挟んで隣接するリング板16,17,18の側面19b,20b,21b,22b同士が加熱時の熱膨張により接触するのを防ぐためのものである。また、これらの隙間t
1,t
2は、0.3〜0.7mmの範囲で設けることが好ましい。さらに、遮蔽板12は、内側よりも外側の方が熱膨張し易いため、これを考慮して、内側の隙間t
1を外側の隙間t
2よりも
小さく設定(t
1<t
2)することも可能である。
【0088】
なお、上記分割ラインL
1,L
2は、遮蔽板12を下面側から見た中央リング板17における第1の外側段差部20の側面20bと、第2の内側段差部21の側面21bとを基準にして設定されている。これにより、上記分割ラインL
1,L
2を領域Sに対して平面視で重ならない位置に設定した場合、中央リング板17を領域Sに対して平面視で重なるように配置することが可能である。
【0089】
内周リング板15、中央リング板17及び外周リング板18は、互いに同じ厚みで形成されている。そして、これらのリング板16,17,18によって構成される遮蔽板12の下面は、互いに面一となっている。これにより、上記ガス導入管9から放出された原料ガスGを反応空間Kの内側から外側に向かってスムーズに供給しながら、高品質なSiCエピタキシャル層をSiCウェハWの面上に安定して堆積成長させることが可能である。なお、遮蔽板12は、各リング板16,17,18の上面についても互いに面一となっている。
【0090】
以上のような構造を有するCVD装置1Bでは、上記
図1に示すCVD装置1Aと同様の効果を得ることが可能である。すなわち、このCVD装置1Bでは、上述したように、シーリング3の下面に堆積物が堆積するのを阻止するように、このシーリング3の下面に近接して遮蔽板12が配置されている。これにより、遮蔽板12の下面に堆積物が堆積することになる。
【0091】
そして、このCVD装置1Bでは、遮蔽板12がチャンバ内に着脱自在に取り付けられていることから、従来のようなシーリング3の下面に堆積した堆積物を除去するといった面倒なクリーニング作業を行わずに、遮蔽板12を交換するといった簡便なメンテナンス作業を行うだけで、上述したパーティクルやダウンフォールの低減を図ることが可能である。
【0092】
なお、遮蔽板12を交換する際は、上記シーリング3を上方に移動させることによって、上記周壁4の内側にある遮蔽板12を容易に取り外したり、取り付けたりすることが可能である。
【0093】
さらに、このCVD装置1Bでは、上述したように、誘導コイル8により加熱されて遮蔽板12が熱変形したときに、この遮蔽板12の下面に堆積する堆積物のうち、凹凸形状32の各凸部32aを起点に堆積した堆積物が互いに隣接する凸部32aの間で衝突して脱落しないように、微細な凹凸31が形成されている。
【0094】
これにより、上述した凹凸形状32の各凸部32aを起点に堆積した堆積物が互いに隣接する凸部32aの間で衝突するのを回避することが可能であり、その結果、遮蔽板12の下面に堆積した堆積物の脱落を抑制することが可能である。
【0095】
さらに、本発明では、上述した開口部13を中心に同心円状に複数のリング板16,17,18に分割された遮蔽板12を用いることで、これら分割されたリング板16,17,18の間で遮蔽板12に加わる熱応力を緩和することができる。
【0096】
具体的に、このCVD装置1Bでは、内周リング板16と中央リング板17との分割ラインL
1が、複数の載置台7が周方向に並ぶ領域Sよりも内側に位置する一方、中央リング板17と外周リング板18との分割ラインL
2が、この領域Sよりも外側に位置している。
【0097】
この場合、誘導コイル8により加熱されて遮蔽板12に熱変化が加わったときに、熱変化の大きい遮蔽板12の内周側と外周側に加わる熱応力を効率良く緩和することが可能である。したがって、複数のリング板16,17,18に分割された遮蔽板12に反り(変形)や割れ等が発生することを防ぐことが可能である。
【0098】
また、本発明では、遮蔽板12の反り(変形)の発生を防ぐことによって、この遮蔽板12の下面に堆積した堆積物の脱落を抑制することが可能である。特に、上記遮蔽板12は、その表面がSiCエピタキシャル層と同じSiC膜で被覆されたグラファイト基板からなることで、堆積物の堆積性を高めることができる。これにより、遮蔽板12の下面に堆積した堆積物の脱落を抑制することが可能である。また、この遮蔽板12を構成する各リング板16,17,18の交換時期を延ばすことが可能である。
【0099】
さらに、本発明では、複数のリング板16,17,18に分割された遮蔽板12のうち、一部のリング板16(17,18)のみを交換するといったことも可能である。
【0100】
例えば、上記遮蔽板12の下面に堆積するSiC堆積物において、このSiC堆積物中に含まれるSiとCの割合が同等となる領域よりも内側に、Siの割合が多くなる領域がある。また、このSiの割合が多くなる領域は、SiとCの割合が同等となる領域よりSiC堆積物の成長が早いことがわかっている。
【0101】
そこで、本発明では、このSiの割合が多くなる領域に上記内周リング板16を配置するように、上記内周リング板16と上記中央リング板17との分割ラインL
1の位置を設定する。これにより、複数のリング板16,17,18に分割された遮蔽板12のうち、このSiの割合が多くなる領域に配置された内周リング板16のみを交換することで、他のリング板17,18の交換時期を延ばすことが可能である。
【0102】
なお、本発明は、上記第2の実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明では、上記CVD装置1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0103】
本発明では、例えば
図8に示す遮蔽板12Aのように、中央リング板17が、径方向に延びる分割ラインL
3に沿って複数のリング片12a,12bに分割された構成とすることも可能である。
【0104】
具体的に、この中央リング板17は、直径方向に延びる2つの分割ラインL
3を挟んで対称となるように、2つのリング片12a,12bに分割されている。この場合、分割されたリング片17a,17bの間で遮蔽板12Aに加わる熱応力を更に緩和することが可能である。したがって、複数のリング片17a,17bに分割された中央リング板17に反り(変形)や割れ等が発生することを更に抑制することが可能である。
【0105】
なお、本発明では、同心円状に分割された複数のリング板16,17,18のうち何れかのリング板16(17,18)が、開口部13を中心に径方向に延びる分割ラインに沿って複数のリング片に分割された構成とすることが可能である。また、分割されるリング片の数や分割ラインの位置についても、適宜変更して実施することが可能である。
【0106】
また、上記実施形態では、上記遮蔽板12が3つのリング板16,17,18に分割された構成について説明したが、開口部を中心に同心円状に分割されるリング板の数については適宜変更することが可能である。
【0107】
例えば、
図9,10に示す遮蔽板12B,12Cのように、その内側から外側に向かって、内周リング板16A(16B)と、外周リング板18A(18B)とに2分割された構成とすることも可能である。
【0108】
この場合も、これら2分割されたリング板16A(16B),18A(18B)の間で遮蔽板12に加わる熱応力を緩和することが可能である。
【0109】
また、2分割されたリング板16A(16B),18A(18B)によって遮蔽板12B(12C)を構成する場合、内周リング板16A(16B)と外周リング板18A(18B)との分割ラインL
1(L
2)は、複数の載置台7が周方向に並ぶ領域Sと重ならないように、この領域Sよりも内側又は外側に位置させることが好ましい。
【0110】
すなわち、
図9(a),(b)に示す遮蔽板12Bのように、内周リング板16Aと外周リング板18Aとの分割ラインL
1を領域Sよりも内側に位置させることで、熱変化の大きい遮蔽板12の内周側に加わる熱応力を効率良く緩和することが可能である。さらに、上記Siの割合が多くなる領域に内周リング板16Aを配置するように、分割ラインL
1の位置を設定する。これにより、上記Siの割合が多くなる領域に配置された内周リング板16Aのみを交換することができ、外周リング板18Aの交換時期を延ばすことが可能である。
【0111】
一方、
図10(a),(b)に示す遮蔽板12Cのように、内周リング板16Bと外周リング板18Bとの分割ラインL
3を領域Sよりも外側に位置させることで、熱変化の大きい遮蔽板12の外周側に加わる熱応力を効率良く緩和することが可能である。特に、遮蔽板の内周側よりも外周側の方が熱変化が大きいことから、遮蔽板12Cに反り(変形)や割れ等が発生するのを防ぐ場合に特に有効である。
【0112】
なお、本発明では、遮蔽板を複数のリング板に分割した場合に、これらリング板に材質が異なるものを用いることも可能である。この場合、上記領域Sと対向する位置(平面視で重なる位置)に配置されるリング板には、その表面がSiエピタキシャル層と同じSiC膜で被覆されたグラファイト基板を用いることが好ましいものの、上記領域Sと平面視で重なる位置に配置されるリング板については、例えば表面がTaC膜で被覆されたグラファイト基板といった異なる材質のものを組み合わせて使用することも可能である。
【0113】
(エピタキシャルウェハの製造方法)
本発明を適用したエピタキシャルウェハの製造方法は、上記本発明のCVD装置1を用いて、ウェハの面上にエピタキシャル層を堆積成長させる工程を含むことを特徴とする。
【0114】
エピタキシャルウェハを製造する際は、昇華再結晶法等を用いて作製されたSiCインゴットを円盤状にスライスした後、その表面に研磨加工等を施したSiCウェハを作製又は用意する。そして、このSiCウェハWの面上に、上記CVD装置1を用いてSiCエピタキシャル層を堆積成長(エピタキシャル成長)させることで、エピタキシャルウェハを作製することができる。
【0115】
本発明を適用したエピタキシャルウェハの製造方法では、上記CVD装置1を用いることによって、高品質なSiCエピタキシャル層をSiCウェハWの面上に安定して堆積成長させることが可能である。そして、上記CVD装置1のメンテナンスにかかる時間も短縮できることから、エピタキシャルウェハの製品歩留まりを更に向上させることが可能である。
【実施例】
【0116】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0117】
(第1の実施例)
第1の実施例では、上記
図3に示す遮蔽板と同様の遮蔽板を作製した。具体的には、直径が200mm、開口部径が60mm、板厚が2mmのグラファイト基材を用意し、この基材の表面に微細な凹凸を形成した後、この上に膜厚60μmのSiC薄膜を被覆することによって、本発明の遮蔽板を作製した。なお、微細な凹凸の高さ(凸部と凹部との高低差)は約2μm、微細な凹凸の互いに隣接する凸部の間隔は約100μmである。また、この遮蔽板の基材表面を撮像した光学顕微鏡写真を
図11に示す。
【0118】
そして、従来の微細な凹凸が形成されていない遮蔽板を用いて成膜工程を繰り返したときのダウンフォールの発生密度(DF密度)を測定した結果を
図12に示し、本発明の遮蔽板を用いて成膜工程を繰り返したときのDF密度を測定した結果を
図13に示す。
【0119】
その結果、
図12及び
図13に示すように、従来の遮蔽板を用いて成膜工程を繰り返したときは、ダウンフォールの突発的な増加が発生したのに対して、本発明の遮蔽板を用いて成膜工程を繰り返したときは、ダウンフォールの発生が抑制されていることがわかる。
【0120】
(第2の実施例)
第2の実施例では、実際に開口部を中心に同心円状に3つのリング板に分割された遮蔽板に加わる熱応力をコンピュータシミュレーションにより計算した。そのシミュレーション結果を
図14及び
図15に示す。なお、このコンピュータシミュレーションでは、直径が200mm、開口部径が60mm、板厚が2mmのSiC基板(遮蔽板)について、開口部を中心に同心円状に3つのリング板に分割し、これらリング板の分割ラインを内周及び外周の両端からそれぞれ20mmの位置(
図14)と、40mmの位置(
図15)に設定して計算を行った。また、SiCの熱膨張係数は4.5×10
−6/℃とし、その加熱温度を1700℃に設定して計算を行った。また、
図14及び
図15のグラフには、参考として遮蔽板を分割しない場合のシミュレーション結果についても併せて表記する。
【0121】
図14及び
図15に示すように、3分割されたリング板の間で遮蔽板に加わる熱応力が緩和されていることがわかる。特に、熱変化の大きい遮蔽板の内周側及び外周側に加わる熱応力を効率良く緩和することが可能である。
【0122】
次に、上記
図7に示す遮蔽板12と同様の構成において、各段差部の段差面の幅を4.0mmとし、内周リング板と中央リング板との段差部の隙間t
1を0.4mm、中央リング板と外周リング板との段差部の隙間t
2を0.6mmとした場合の加熱後の隙間t
1,t
2の変化をコンピュータシミュレーションにより計算した。そのシミュレーション結果を表1に示す。なお、表1中には、隙間t
1,t
2の他に、段差面の接触部の幅(段差面の幅から隙間t
2又はt
2を引いた値)についても併せて表記する。
【0123】
【表1】
【0124】
表1に示すように、加熱後の熱膨張により内周リング板と中央リング板との段差部の隙間t
1と、中央リング板と外周リング板との段差部の隙間t
2が狭くなるものの、分割ラインを挟んで隣接するリング板の段差部の側面同士が接触することを防ぐことが可能である。