【実施例】
【0118】
実施例1
細胞集団の精製
ヒト末梢血を10%(v/v)0.1M EDTA中に採取し、1-Step Polymorphs グラジエント(1.113±0.01g/ml、Accurate Chemical Co., Westbury, NY)上に重層し、400×gで30分間室温で遠心分離した。好中球層および単核細胞層を回収し、カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Life Technologies, Grand Island, NY)中に再懸濁し、約750×gで15分間遠心分離した。赤血球は、ペレットをE−Lyse(5ml/10
7細胞)(Cardinal Associates, Santa Fe, NM)に5分間氷上で再懸濁することにより好中球画分中に溶解した。両方の細胞画分を氷冷DPBSで2回洗浄した。単核細胞を、タンパク質でコーティングしたプラスティックに2〜3時間接着させた後、非接着性細胞を静かにプレートから洗い流した。さらに12時間後、非接着性樹状細胞をプレートから洗い流し、抗CD19および抗CD2でコーティングした磁気ビーズ(Dynabeads; Dynal, Oslo, Norway)(細胞あたり5ビーズ)でBリンパ球およびTリンパ球を枯渇させた。50ng/ml顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF、R and D Systems, Minneapolis, MN)および40ng/ml IL−4(R and D Systems)ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Gibco BRL, Grand Island, NY)10%ウシ胎仔血清(FCS、HyClone, Logan, UT)に加えて添加物:ペニシリン50U/ml、ストレプトマイシン50μg/ml、L−グルタミン2mM、HEPES 10mM、MEMピルビン酸ナトリウム10mM、MEM非必須アミノ酸0.1mMおよび2−メルカプトエタノール5.5×10
-5M(すべてGibco BRL, Grand Island, NY製)中で残った細胞を7日間培養し(Sallusto, F.および Lanzabecchia, A.,J. Exp. Med., 179:1109-1118(1994))、未熟樹状細胞(IMDC)を生じさせ、場合によっては、さらに24時間10ng/ml LPS中で培養したものを用いて該樹状細胞を成熟させた。関連するMiltenyi Beads(Millenyi Biotek, Bergisch Gladbach, Germany)により、10
7単核細胞につき20μlのビーズを用い、PBS/1%BSA/5mM EDTA中、5×10
7細胞/mlで30分間4℃で、CD4
+、CD8
+、CD14
+、CD56
+およびCD19
+集団を単核細胞から精製した。次いで、それらをスピンダウンし、PBS/1%BSA/5mM EDTA中に5×10
7細胞/mlで再懸濁し、磁場内のVSカラム(Miltenyi Biotech, Auburn, CA 95603)に通して非標識細胞を除去した。磁場外で20mlのPBS/1%BSA/5mM EDTAをVSカラムに通すことにより、細胞を取り出した。
【0119】
抗体および試薬
CD4、CD8、CD14、CD19、CD49d、CD56、CD62L、CLA、CD45RA、CD45RO、CXCR5、CD80およびCD86に結合する標識抗体をPharmingen (San Diego, CA)から入手して免疫蛍光試験に使用し、一方、抗αEおよび抗CD83はBeckman Coulter (Fullerton, CA)から入手した。OKT3、抗ヒトCD3 mAbはAmerican Type Culture Collection (ATCC,Manassas, VA)から入手し、抗ヒトCD28 mAbはBecton Dickinson (Mountain View, CA)から入手した。抗ケモカインレセプターmAbのいくつかはLeukoSite, Inc.(Cambridge, MA)で作製し、クローン名を抗CCR3(7B11)、抗CCR4(2B10)、抗CCR6(11A9)および抗CXCR3(1C6)と命名する。FACS解析で使用した数種類の抗ケモカインレセプターmAbは市販の供給源から入手した。免疫蛍光試験に使用した抗CCR2、抗CCR6および抗CXCR5 mAbはR and D Systems(Minneapolis, MN)から入手したが、抗CCR5および抗CXCR4はPharmingen (San Diego, CA )から入手した。組換えヒトケモカインは、Peprotech (Rocky Hill, NJ)および R&D Systems(Minneapolis, MN)から入手し、場合によっては、記載のように(Clark-Lewis, I. ら、Biochemistry, 30:3128-3135(1991))、最適化し、かつ完全自動ペプチド合成装置(430A型;Applied Biosystems, Foster City, CA )に適合させた固相法を用いて合成した。ヒト内皮細胞株ECV304をATCCから購入した。すべてのサイトカインは、R&D Systems (Minneapolis, MN)から入手した。
【0120】
抗GPR−9−6 mAbの作製
配列MADDYGSESTSSMEDYVNFNFTDFYC(配列番号:3)を有する、GPR−9−6のNH
2末端からなるペプチドを作製した。1日目に、完全フロイントアジュバント(FCA、Sigma, St. Louis, MO)中で調製したGPR−9−6ペプチド/KLHコンジュゲート10μgで、20日目に、不完全フロイントアジュバント(IFA、Sigma, St. Louis, MO)中で調製したGPR−9−6ペプチド/KLHコンジュゲート10μgで、そして40日目に、PBS中で調製したGPR−9−6ペプチド/KLHコンジュゲート10μgでBALB/Cマウスをi.p.免疫した。60日目、PBS中GPR−9−6ペプチド/KLH10μgでマウスを追加免疫し、4日後、脾臓を取り出し、SP2/0骨髄腫細胞(ATCC)と融合させた(Coligan ら、 Current Protocols in Immunology 2.5.1 (1992))。GPR−9−6ペプチドでコーティングしたプレートを用い、融合細胞をELISAによりスクリーニングした。抗GPR−9−6mAbを産生するハイブリドーマをGPR−9−6トランスフェクタントとの反応性について調べ、さらなる特性評価のためにサブクローニングした。ハイブリドーマLS129−3C3−E3−1とも称するマウスハイブリドーマ3C3は、FCS(10%)、IL−6(100ng/ml)、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50μl/ml)、L−グルタミン(2mM)、HEPES(10mM)、MEMピルビン酸ナトリウム(10mM)、MEM非必須アミノ酸(0.1mM)および2−メルカプトエタノール(5.5×10
-5M)を加えたDMEM中、37℃、5%CO2雰囲気で培養することができる。
【0121】
慢性的に活性化したT
H1およびT
H2リンパ球の調製
先に記載したように(Murphy, E.ら、J. Exp. Med.,183:901-913(1997))、6穴Falconプレートを10μg/mlの抗CD28および2μg/mlのOKT3で一晩コーティングした後、PBSで2回洗浄した。臍帯血CD4+リンパ球(Poietic Systems, German Town, MD)を10
5〜10
6細胞/mlで、10%FCSおよびIL−2(4ng/ml)を加えたDMEM中で培養した。IL−12(5ng/ml)および抗IL−4(1μg/ml)をT
H1に対して使用し、IL−4(5ng/ml)および抗IFNγ(1μg/ml)をT
H2に対して使用した。4〜5日後、活性化したT
H1およびT
H2リンパ球をDMEM中で1回洗浄し、10%FCSおよびIL−2(1ng/ml)を加えたDMEM中で4〜7日間培養した。この後、活性化したT
H1およびT
H2リンパ球を、アポトーシスを阻害するための抗CD95L(1μg/ml)を添加した以外は上述のようにして抗CD28/OKT3およびサイトカインで5日間再度刺激した。4〜5日後、T
H1およびT
H2リンパ球を洗浄し、次いで、IL−2とともに再度4日間培養した。活性化したT
H1およびT
H2リンパ球をこのようにして最高3回維持した。
【0122】
ECV304遊出および化学走性アッセイ
3μm孔径Transwell組織培養インサート(insert)を、コーティングせずに、または2%ゼラチンで2時間コーティングして用いた。次いで、5%FCSを加えた0.45mlのDMEMをチャンバの下側ウェルに入れ、2×10
5EVC304細胞を、0.2mlのDMEM5%FCS中の各ゼラチンコーティングインサートに加えた。2日後、ウェルおよびインサートを、0.5%HSA(ヒト血清アルブミン)、10mM HEPESを含有するRPMI−1640(Gibco BRL, Grand Island, NY)で2回洗浄し、次いで、ケモカインを下側ウェルに加えた。研究対象の細胞をRPMI中で1回洗浄し、T
H1/T
H2リンパ球、細胞株およびトランスフェクタントは4×10
6細胞/mlで、または休止CD4リンパ球は10
7細胞/mlで、RPMI0.5%HSAおよび10mM HEPES中に再懸濁した。細胞懸濁液の200μlアリコート(投入量は、それぞれ8×10
5細胞および2×10
6細胞)を各インサートに加えた。2〜4時間後、インサートを取り出し、ゲートを目的の細胞を獲得するために設定したBecton Dickinson FACScanで30秒間、ECV304単層を通って下側ウェルに移動した細胞の数を計測した。この技術を用いると、100%移動は、T
H1/T
H2細胞では25000細胞、休止CD4リンパ球では75000細胞であると考えられ、ここで、この数は、1分間にわたってFACScanで計測した下側ウェル内の細胞を表す。移動する細胞の表現型を研究するため、24mm径インサートを使用し、6ウェルプレートでCD4リンパ球を用いて同一の実験を行った。化学走性アッセイは、フィブロネクチンでコーティングしたインサート(10μg/ml)を用いたこと以外はECV304移動アッセイと同一であった。すべての場合において、データポイントは、2つ組の(duplicate)ウェルの結果であり、平均値を示し、エラーバーはサンプルの標準偏差を示す。
【0123】
Ca
2+動員(Ca
2+フラックス)アッセイ
DPBS中10
7細胞/mlをFura2色素(Molecular Probes, Eugene, OR)により2mMで30分間標識し、DPBS中で3回洗浄し、1mM CaCl
2、0.5mM MgCl
2、10mM HEPESおよび5.5mMグルコースを含有するDPBS中に10
6細胞/mlで再懸濁した。次いで、10%NP−40および10mM EDTAを用い、細胞を蛍光光度計(日立、F2000型蛍光分光光度計、励起340nm、発光510nm)で解析して最大および最低Ca
2+動員を確立した。
【0124】
組換えDNA法
QIAGENチップを用い、製造業者(QIAGEN Inc., Chatsworth, CA)が推奨するとおりにプラスミドDNAを単離した。DNAのライゲーション、制限エンドヌクレアーゼ消化およびゲル電気泳動を前述のようにして行った(Sambrook, J.ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, (Cold Spring Harbor, NY)(1989) )。アガロースゲル抽出によるDNA精製を、QIAEXII Gel Extraction Kitを用い、製造業者(QIAGEN Inc., Chatsworth, CA )が推奨するとおりに行った。プラスミドDNAを化学的形質転換(GIBCO, Inc.)により大腸菌に導入した。酵素をNew England Biolabs, Inc. (Beverly, MA)、GIBCO Bethesda Research Laboratories, Inc. (Gaitherburg, MD)または Boehringer Mannheim, Inc.(ドイツ)から購入した。RNAは、標準的なイソチオシアン酸グアニジン法(Sambrook, J.ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, (Cold Spring Harbor, NY)(1989))または推奨されるようなRNeasyキット(QIAGEN Inc., Chatsworth, CA)のいずれかを用い、凍結された組織または細胞から単離した。DNAシークエンシングは、FS DyeDeoxy Terminatorサイクルシークエンシングキットおよび377型DNAシークエンサー(Perkin Elmer Applied Biosystems, Foster City, CA)を用い、Sequi−Net(Colorado State University )により行った。配列は、SeqMan(DNASTAR, Inc., Madison WI)を用いて解析した。
【0125】
PCR
GenBankに寄託されたヌクレオチド配列(U45982)(配列番号:1)(これは参照により本明細書に取り込まれる)に基づいて、GPR−9−6の完全コード領域を増幅するためのPCRにおける使用のためのプライマーを設計した。BamHIおよびXbaI部位をプライマー対BAZ201
【0126】
【化1】
【0127】
およびBAZ202
【0128】
【化2】
【0129】
に、指向的クローニング(directional cloning)のために組み込んだ(太字:コード配列、イタリック:酵素部位)。100μl容中に、60mM Tris−HCL、pH9.5、1.5mM MgCl
2、100pmolプライマー、200μM dNTPおよび5単位のPfuIポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)とともにPfuPCRサイクルの鋳型として5μgの全ヒトゲノムDNA(Clontech, Palo Alto, CA)を用いた。サイクルパラメータは、DNAサーマルサイクラー(Perkin-Elmer Corp., Norwalk, CN)中で、初期融解95℃、2分、次いで35サイクル:95℃、30秒;55℃、30秒;72℃、2分15秒の後、最終伸長72℃、7分とした。
【0130】
公表されたヌクレオチド配列(寄託番号U86358)(これは参照により本明細書に取り込まれる)に基づいて、TECKの完全コード領域を増幅するためのプライマーを設計した。HindIIIおよびXbaI部位をプライマー対BAZ203
【0131】
【化3】
【0132】
およびBAZ204
【0133】
【化4】
【0134】
に、指向的クローニングのために組み込んだ(太字:コード配列、イタリック:酵素部位)。5μgのヒト胸腺RNAを、20μl容でオリゴdTを用いて逆転写した。cDNAを、50μl容中200μM dNTP、100pmolプライマー、60mM Tris−HCl、pH9.5、1.5mM MgCl
2および10単位のAmpliTaqポリメラーゼ(Perkin-Elmer Roche Molecular Systmems, Branchburg, NJ )と混合した。サイクルパラメータは、初期融解95℃、2分、次いで35サイクル:95℃、30秒;55℃、30秒;72℃、1分の後、最終伸長72℃、7分とした。ヒト胸腺は、Children's Hospital (Boston, MA)から入手した。
【0135】
プライマーBAZ203(配列番号:6)およびBAZ204(配列番号:7)を用いたTECKの半定量PCR増幅、ならびにプライマーBAZ201(配列番号:4)およびBAZ202(配列番号:5)を用いたGPR−9−6の半定量PCR増幅を、胸腺、小腸、結腸、脳、リンパ節および脾臓由来cDNA(500ng)鋳型ならびに500ngのゲノムDNA(ClonTech, Palo Alto, CA)を等量で用いて行った。30サイクルで行った以外は、上述のAmpliTaq PCRサイクルと同じ条件およびPCRプロフィルを用いた。グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)プライマー(ClonTech, Palo Alto, CA 、カタログ番号5840−1)を用いて鋳型の等価性を示した。
【0136】
アガロースゲル電気泳動後、UV光源を用い、エチジウムブロミドの存在下でPCR産物を可視化した。推定した大きさ(TECKは約450bp、GPR−9−6は約1kb)のDNAフラグメントを単離し、配列解析およびさらなる操作のためにpBluescript II KS+(Stratagene, Inc., La Jolla, CA)およびpcDNA3(Stratagene, Inc.)のそれぞれにクローニングした。
【0137】
発現ベクターの構築およびGPR−9−6発現安定細胞株の作製
GPR−9−6のコード領域をPCRにより増幅し、pcDNA3(Invitrogen, San Diego, CA)のBamHI/XbaI部位に指向的にクローニングした。次いで、トランスフェクタントをマウス前Bリンパ腫細胞株L1.2内で作製し、10%ウシ胎仔血清(HyClone, Logan, UT)、2mM L−グルタミン、50単位/ml Pen/Strep、0.55mM β−メルカプトエタノール、10mM HEPESおよび1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco BRL)を加えたRPMI−1640中で維持した。pcDNA3中の線状化GPR−9−6を20μg用い、次のようにして該細胞株をトランスフェクトした。L1.2細胞をPBS中で2回洗浄し、同0.8ml中に再懸濁した。プラスミドDNAを該細胞と混合し、10分間、室温でインキュベートし、0.4cmエレクトロポレーションキュベットに移した。ついでシングルパルスを250V、960μFで負荷した。エレクトロポレーションの後、10分間、室温でインキュベートした。トランスフェクションの48時間後、G418(Geneticin, Gibco BRL)を加えて終濃度を0.8mg/mlとし、薬剤選別下で2〜3週間、細胞をバルク培養(bulk culture)で成長させた。次いで、トランスフェクタントを、GPR−9−6ペプチドに対する反応性を有するmAbで染色し(下記参照)、FACScan(Becton Dickinson & Co., Mountain View, CA)で解析してGPR−9−6の表面発現を確認し、限界希釈によりクローニングした。実験の前に、トランスフェクトした細胞を5mM n−酪酸で24時間処理した(Palmero, D.P. ら、J. Biotech.,19:35-47(1991))。
【0138】
ノーザンブロット解析
ノーザンブロットは、ClonTech社から購入するか、または以下のようにして調製した。全RNAを、1.2%ホルムアルデヒドアガロースゲル上での電気泳動により分離し、上述(Sambrook, J.ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, (Cold Spring Harbor, NY)(1989))のようなキャピラリー法によりナイロン膜(Hybond-N+; Amersham Corp., Arlington Heights, IL)に移し、Stratalinker(Stratagene, Inc.)を用いて架橋した。放射標識したプローブとのハイブリダイゼーションは、ExpressHyb Solution(Clonetech )により製造業者の指示したプロトコルを用いて行った。オートラジオグラフィー暴露の長さは、対応する図の説明に記載している。完全長のゲル精製したTECKおよびGPR−9−6のDNAフラグメントをハイブリダイゼーションに用いた。
【0139】
結果
GPR−9−6に対するmAb、mAb 3C3はGPR−9−6トランスフェクタントと選択的に反応する
他の公知の白血球ケモカインレセプターとの密接な系統発生的関連性により(
図1)、本発明者らは、寄託されたGenBank配列から設計したプライマーを用いてPCRによりGPR−9−6をクローニングした。GPR−9−6/L1.2トランスフェクタントを調製し、KLHに結合したGPR−9−6のNH
2末端の最初の26個のアミノ酸(配列番号:3)でマウスを免疫した融合細胞内でGPR−9−6に対するmAbで染色した。mAb 3C3と命名したmAbは、GPR−9−6/L1.2トランスフェクタントと反応したが、親L1.2細胞とは反応しなかった。mAb 3C3は、IgG
2bアイソタイプを有することがわかった。交差反応性試験では、mAb 3C3は、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7またはCXCR1、CXCR2、CXCR3およびCXCR4トランスフェクタントと交差反応しなかった。CCR6は、GPR−9−6とより密接に関連するケモカインレセプターの1つであることから、そのデータを本明細書に示す(
図2A〜2B)。また、GPR−9−6のNH
2末端ペプチド(配列番号:3)は、mAb 3C3のGPR−9−6トランスフェクタントへの結合を完全にブロックすることがわかり(データ示さず)、さらにこのmAbの特異性を検証した。
【0140】
GPR−9−6は、末梢血中のBリンパ球のすべて、CD4リンパ球のサブセットおよびCD8リンパ球の微少量(minor)サブセット、ならびに胸腺細胞上で発現される
最初の末梢血の二色試験において、GPR−9−6は、CD4リンパ球の少量サブセット(2〜4%)上、ならびにCD8リンパ球の極少量サブセット上で発現されることがわかったが(
図3A〜3B)、Bリンパ球は低く不均一なレベルのGPR−9−6を発現した。単球、好塩基球、好酸球、好中球およびNK細胞は、使用した条件下でGPR−9−6を発現しなかった(
図3C〜3I)。TcR
highGPR−9−6
-ve胸腺細胞の少量サブセットは明白であったが、GPR−9−6は、全てのレベルのTcRを発現する胸腺細胞の大量サブセットで発現された。三色実験では、GPR−9−6は、CD4、CD8およびCD4
+veCD8
+ve胸腺細胞の大部分、および未成熟CD4
-veCD8
-ve胸腺細胞の約50%に見られた(データ示さず)。GPR−9−6の発現は、未成熟樹状細胞でも成熟樹状細胞でも認められなかった(
図4D)。しかしながら、予期したとおり、未成熟樹状細胞は、LPS活性化によりダウンレギュレートされるCCR5を発現したが、CD83およびCD86はアップレギュレートされた(
図4A〜4C)。大きな数の一群の(a large panel of)細胞株の検査では、GPR−9−6がいくつかのT細胞株上に見られた(表1)。臍帯CD4+リンパ球はGPR−9−6を発現せず(
図4E)、T
H1またはT
H2リンパ球を作製するためのIL−12およびIL−4の存在下でのこれらの細胞の慢性活性化は、GPR−9−6の発現を誘導しなかった(
図4H)。しかしながら、予期した通り、CXCR3は明らかにT
H1リンパ球においてアップレギュレートされたが(
図4F)、粘膜部位へのリンパ球輸送(trafficking)に利用されるインテグリン、α4β7は、T
H1およびT
H2の両方のリンパ球においてアップレギュレートされた(
図4G)。
【0141】
GPR−9−6のCD4リンパ球およびBリンパ球上での発現を経時的に測定すると、比較的一定であることがわかった(
図5A)。しかしながら、抗CD3 mAbでのTリンパ球の活性化により、2日間にわたってGPR−9−6の一過性ダウンレギュレーションが起こり、IL−2中での10日間の培養後に発現が回復した(
図5B)。ケモカインレセプターCCR6およびCCR5は、Tリンパ球で活性化すると発現において同様の変化を示した(
図5C)。
【0142】
GPR−9−6を発現するCD4リンパ球サブセットは、主に記憶表現型であり、高レベルの粘膜リンパ様ホーミングレセプターα4β7を発現するが、皮膚ホーミングレセプターCLAは発現しない
GPR−9−6を発現するCD4リンパ球の少量サブセットを、三色染色によってより詳細に調べた(
図6A〜6F)。GPR−9−6を発現するCD4リンパ球は主に記憶表現型であり、最も高レベルのGPR−9−6を発現する細胞はすべて記憶表現型であった。興味深いことに、皮膚に輸送される記憶CLA
+veCD4リンパ球は、GPR−9−6を発現しなかった。対照的に、粘膜部位に輸送される記憶α4β7
highCD4リンパ球のサブセットは、明らかにGPR−9−6を発現した。αEβ7の発現により定義される記憶CD4リンパ球のサブセットもまた、GPR−9−6陽性サブセットとGPR−9−6陰性サブセットに明確に細分された。GPR−9−6
highCD4リンパ球は、末梢リンパ節への輸送に関与するホーミングレセプターであるCD62Lを発現しなかったが、GPR−9−6
dullCD62L
+veリンパ球の少量サブセットは明白であった。
【0143】
また、GPR−9−6
+veCD4リンパ球を、CD4リンパ球上に発現することが知られている他のケモカインレセプターとの同時発現について調べた(
図7A〜7F)。GPR−9−6は、CCR5、CCR6、CXCR3およびCXCR5の陽性サブセット上および陰性サブセット上の両方で明白にみられたが、CCR2およびGPR−9−6のCD4リンパ球発現は互いに排他的であった。
【0144】
GPR−9−6ケモカインレセプターはTECKに特異的に結合する
試験したすべての公表されたケモカインのうち、TECKのみがGPR−9−6/L1.2トランスフェクタントの化学走性を誘導する能力を有することがわかった(
図8A)。MCP−1−4、MIP−1α、MIP−1β、エオタキシン(eotaxin)−1、エオタキシン−2、RANTES、I−309、TARC、MDC、MIP4、SLC、HCC1、フラクタルカイン(fractalkine)、リンフォタクチン(lymphotactin)、MIG、IP−10、ITAC、ADEC、IL−8、gro−α、gro−β、gro−γ、ロイコタクチン(leukotactin)、SDF−1α、SDF−1β、MIP3およびMIP4はすべて、GPR−9−6/L1.2トランスフェクタントの化学走性を誘導しえないとわかった。L1.2/GPR−9−6トランスフェクタントのTECK誘導性化学走性は、mAb 3C3によって阻害されたが、抗CCR3 mAb 7B11には阻害されなかった(
図8B)。TECKは、試験したその他のトランスフェクタント(CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7およびCXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、データ示さず)のいずれにも作用しなかった。興味深いことに、TECKはまた、GPR−9−6を発現するT細胞株MOLT−4(
図8D)およびMOLT−13(
図8F)に作用することがわかった(表1)。TECKは、GPR−9−6を発現しないSKW3(
図8E)などの他の細胞株に関しては化学走性ではなかった。T細胞株MOLT−4を用いると、TECK誘導性化学走性は、百日咳毒素により阻害されることが示された(
図8C)。さらに、抗GPR−9−6mAb 3C3は、MOLT−13細胞のTECKへの化学走性をブロックしたが、該細胞のSDF1α誘導性化学走性に対する影響はなかった(
図8F)。カルシウム動員実験では、TECKはまた、MOLT−4などのGPR−9−6
+ve細胞株におけるCa
2+フラックスを誘導することがわかったが(
図9A〜9C)、該細胞が関連レセプターを発現しないMDCなどのケモカインは効果がなかった。
【0145】
【表1】
【0146】
また、TECKに対して化学走性を示す(chemotax)か否かを調べるため、白血球サブセットを試験した(
図10A〜10F)。マウスにおいて観察されるように、好中球、単球、好酸球、CD8およびNK細胞はTECKに対する化学走性を示さなかったが、他のケモカインに対しては化学走性を示した。しかしながら、TECKは、CD4リンパ球の微少量サブセットに対して化学走性を示した。マウスTECKは胸腺細胞化学走性を誘導することから、ともに胸腺細胞化学走性を媒介する(データ示さず)TECKおよびSDF1αに対するヒト胸腺細胞の化学走性を調べた。抗GPR−9−6mAb 3C3は、胸腺細胞およびCD4リンパ球のTECKに対する化学走性をブロックした。抗GPR−9−6mAb 3C3は、CD4リンパ球のTARC誘導性化学走性に対して効果はなく、これは、効果が特異的であることを示す(
図11A〜11C)。これらの結果は、GPR−9−6がTECKの主な生理的レセプターであることを示す。
【0147】
TECK転写物およびGPR−9−6転写物の組織分布
GPR−9−6の粘膜ホーミングリンパ球上での発現により、リンパ様組織および粘膜組織におけるTECK転写物およびGPR−9−6転写物の分布を調べた(
図12A〜12B)。TECKは胸腺および小腸で選択的に発現されたが(
図12A)、GPR−9−6は、胸腺は高レベルで発現され、脾臓および末梢血白血球での発現は弱かった(
図12B)。GPR−9−6転写物は、小腸におけるノーザンブロット解析では検出されなかったが、GPR−9−6メッセージは、より感度の高いRT−PCR技術を用いて小腸、胸腺、リンパ節および脾臓で検出された(
図12C)。TECKおよびGPR−9−6の両方のメッセージは、脳でも結腸でも検出されなかった。他のノーザンブロットでは、TECKおよびGPR−9−6は、T
H1、T
H2、Tr1(Grouxら、Nature 389:737-742(1997))リンパ球、LAK細胞、単球、CD34由来樹状細胞、単球由来樹状細胞、星状細胞、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)および肺静脈内皮細胞(PUVEC)では検出されなかった(データ示さず)。最終的に、GPR−9−6転写物は、mAb 3C3で染色し、該mAbの特異性をさらに検証することにより、先にGPR−9−6
+であることが示された細胞株にのみ存在することが示された(
図12B)。
【0148】
α4β7
highCD4およびCD8リンパ球のみがTECKへと遊走する
GPR−9−6が主に記憶α4β7
highCD4リンパ球で発現されることから、α4β7を発現しないか、中レベルまたは高レベルのα4β7を発現するCD45RA
-ve記憶CD4およびCD8リンパ球を単離した。α4β7
high記憶CD8リンパ球およびα4β7
+veCLA
-ve記憶CD4リンパ球のみがTECKに対して化学走性を示した(
図13A〜13B)。
【0149】
考察
数種の異なる接着分子が、末梢リンパ節などの別の生理的位置(Gallitin, W.M.ら、Nature, 304:30-34(1983))、Peyers Patches (Hamman, A.ら、J. Immunol., 152:3282-3292(1994); Andrew, D.P.ら、Eur. J. Immunol., 26:897-905(1996))および炎症部位(Frenette, P.S.ら、Cell, 84:563-574(1996); Tietz, W.Y. ら、J. Immunol., 161(2):963-970(1998); Picker, L.J.ら、J. Immunol., 145:3247-3255(1990))へのリンパ球サブセットの輸送に関与している。これらのリンパ球サブセットで発現される特異的ケモカインレセプターは、白血球の活性化、停止(arrest)および経内皮(transendothelial)移動を媒介する領域で発現されるケモカインと相互作用しうると考えられる。したがって、ある種の接着分子の発現により規定されるCD4サブセットはまた、これらの部位へのリンパ球の輸送に重要な公知のオーファンケモカインレセプターまたはまだ発見されていないケモカインレセプターを発現しうる。本明細書に記載した研究は、粘膜部位への記憶CD4およびCD8リンパ球サブセットの選択的輸送に関与しうる、かかるケモカインレセプターの一種に関連する。
【0150】
GPR−9−6は、もともと、CCR6およびCCR7を含む他の公知のケモカインレセプターとの強い系統発生学的関連性により、興味をひく可能性のあるオーファンケモカインレセプターとして選択された。ノーザンブロット解析では、GPR−9−6は胸腺に見られ、これは、T細胞の発達におけるなんらかの役割を示す。脾臓および血液での弱い発現は、記憶Tリンパ細胞およびBリンパ細胞でのGPR−9−6の発現を反映しうる。GPR−9−6が胸腺細胞の大部分によって発現され、かつこれらのGPR−9−6
+ve胸腺細胞があらゆるレベルのTcRを発現することから、GPR−9−6は、見かけ上、T細胞発達のすべての段階で発現される。胸腺から出ると、GPR−9−6はダウンレギュレートされるはずであり、末梢のようにCD4リンパ球の少量サブセットおよびCD8リンパ球のより少量のサブセットのみがGPR−9−6を発現する。三色実験では、GPR−9−6は主に記憶CD4リンパ球に見られる。より興味深いことには、CLA
+ve記憶CD4リンパ球(Picker, L.J.ら、J. Immunol., 145:3247-3255(1990))はGPR−9−6を発現しないが、記憶α4β7
highCD4リンパ球のサブセット(Andrew, D.P.ら、Eur. J. Immunol., 26:897-905(1996))はこのケモカインレセプターを発現する。これは、粘膜部位へのリンパ球の輸送におけるGPR−9−6の役割またはそこに存在するときはそのエフェクター作用を反映しうる。GPR−9−6は粘膜輸送CD4リンパ球上で明白に発現されたが、GPR−9−6転写物はノーザンブロット解析では小腸で検出されなかった。これは、細胞の大部分が活性に分裂するGPR−9−6
+ve胸腺細胞である場合、胸腺と比べて小腸組織でのGPR−9−6
+veCD4+および/またはCD8+リンパ球の数が少ないことを反映しうる。しかしながら、より感度の高いRT−PCR技術を用いると、GPR−9−6転写物は小腸において検出されたが脳では検出されなかった。興味深いことに、GPR−9−6転写物およびTECK転写物は小腸で発現されるが、結腸ではノーザン解析およびRT−PCR解析のいずれにおいてもGPR−9−6転写物もTECK転写物も検出されなかった。
【0151】
粘膜環境に存在する因子は、Tリンパ球でのGPR−9−6の発現およびTECK発現を誘導しうる。T
H1/T
H2環境に存在するサイトカインは、T
H2上のCCR4およびT
H1リンパ球上のCXCR3などのある種のケモカインレセプターの発現、ならびにこれらのレセプターに結合するケモカインの産生を誘導する(Bonecchi, R.G.ら、J. Exp. Med., 187:129-134(1998); Sallusto, F.D. ら、J. Exp. Med., 187:875-883(1998); Sallusto, F., Science, 277:2005-2007(1997); Andrew, D.P.ら、(1998); Zingoni, A.ら、J. Immunol., 161:547-555(1998))。しかしながら、これらの条件は、Tリンパ球でのGPR−9−6発現をアップレギュレートしなかった。また、以前にTリンパ球にαEを誘導することが示された(Kilshaw, P.J.およびMurant, S.J., Eur. J. Immunol., 21:2591-2597(1991))サイトカインIL−1−18またはTGF−βを用い、活性化された臍帯CD4リンパ球でGPR−9−6の発現を誘導する試みでは、GPR−9−6の発現をアップレギュレートするサイトカインを同定することができなかった。したがって、GPR−9−6発現がCD4上で制御される機構は不明である。TcR架橋により活性化すると、ケモカインレセプターCXCR4の発現のように(Bermejo, M.ら、J. Immunol. 28:3192-3204(1998))、GPR−9−6の発現はダウンレギュレートされる。TcR架橋は抗原提示を擬態するため、本発明者らは、リンパ節に入り、APCの抗原性ペプチド+MHC−II発現に遭遇すると、Tリンパ球はGPR−9−6などのケモカインレセプターをダウンレギュレートすると結論づける。これにより、Tリンパ球はリンパ節内に保持され、そこでTリンパ球は、T:B認識相互作用によりB細胞クラススイッチなどの他の免疫機能を媒介しうる。
【0152】
試験したすべてのケモカインのうち、TECK(Vicari, A.P.ら、Immunity, 7(2):291-301(1997))のみがGPR−9−6/L1.2トランスフェクタントの化学誘引物質として作用し、150nMで至適化学走性をもたらすことがわかった。これは、他の白血球ケモカインが活性である1nM〜1μMの範囲に含まれる。しかしながら、本発明者らはペプチド合成により作成したTECKを用いていることから、CKB8の場合のように(Macphee, C.H. ら、J. Immunol., 161:6273-6279(1998))、細胞外の因子によるインビボでのTECKの翻訳後修飾またはさらなる切断によって、より活性なフラグメントが生じないとは確信できない。TECKは、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR9およびCXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4およびCXCR5 L1.2トランスフェクタントの化学誘引物質として作用しなかった。しかしながら、CCR3/L1.2トランスフェクタントでのTECKのある程度の弱い活性(エオタキシン−1で観察された化学走性活性の約20%)が検出された。この活性は、TECKが好酸球の化学誘引物質として作用しないにもかかわらず、抗CCR3mAbによりブロックされた。したがって、TECKは、おそらくCCR3レセプターの生理的ケモカインではない。この結果は、これまでの研究においてMIP−1αが、CCR4/L1.2トランスフェクタントでなく(Imai, T.M.ら、J. Biol. Chem.,272:15036-15042(1997))CCR4/HEK293トランスフェクタントの化学誘引物質として作用することが示されている(Power, C.A.ら、J. Biol. Chem., 270:19495-19500(1995) )ことから、先例がないことではない。さらなる実験では、GPR−9−6を発現するT細胞株のみがTECKに対して化学走性を示すことがわかったが、原始細胞の中では、TECKはCD4リンパ球の少量サブセットに対してのみ化学走性を示した。化学走性が抗GPR−9−6mAb 3C3によりブロックされることから、おそらく、これらの細胞は、GPR−9−6を発現するCD4リンパ球細胞の少量サブセットを表す。さらに、α4β7
+ve記憶CD4およびCD8リンパ球だけがTECKに化学走性を示し、これはGPR−9−6を発現すると予想されるサブセットである。TECKは、最初は、その発現が胸腺および小腸に限られている(Vicari, A.P.ら、Immunity, 7(2):291-301(1997))、胸腺樹状細胞により産生されるケモカインとして記載した。本発明者らのノーザンブロットデータは、この観察を確認し、TECKのレセプター、GPR−9−6はまた、これらの部位で発現されることを示す。小腸および胸腺におけるケモカインレセプターGPR−9−6およびそのリガンドTECKの両方の発現は、T細胞発達および粘膜免疫学におけるGPR−9−6およびTECKの役割が予期される。
【0153】
要約すると、オーファンケモカインレセプターGPR−9−6は、大部分の胸腺細胞上および粘膜部位へ輸送される記憶CD4リンパ球のサブセット上で発現されることが示された。胸腺および小腸でのTECKおよびGPR−9−6の選択的発現は、T細胞発達および粘膜免疫応答の両方におけるGPR−9−6の二重(dual)の役割を意味する。
【0154】
実施例2 機能的GPR−9−6は急性T細胞リンパ芽球性白血病細胞株で発現される
本明細書に記載のように、GPR−9−6発現は、mAb 3C3を用いてMOLT−4およびMOLT−13細胞上で検出された(表1)。MOLT細胞株は、急性T細胞リンパ芽球性白血病(ATL)と診断された患者由来のヒトT細胞株である。CEM、PEER、HUT78、PM1、SKW3およびJURKATを含む他のT細胞白血病細胞株はGPR−9−6を発現しなかった。さらなる研究では、T細胞株がTECK誘導性化学走性を示す能力をインビトロ化学走性アッセイで評価した。ALT細胞、MOLT−4およびMOLT−13は、TECK誘導性化学走性を示したが、他のT細胞株(CEM、PEER)では示さなかった。
【0155】
実施例3 上皮内リンパ球(IEL)およびリンパ球固有層(lamina propria lymphocyte)(LPL)はGPR−9−6(CCR9)を発現し、TECK誘導性化学走性を示す
リンパ球単離
ヒト腸の上皮および固有層由来のリンパ球を上述(Zabal, B.A. ら、J. Exp. Med.,190:1241-1256(1999))のようにして単離した。簡単には、腸の小片を切り開き、平らにして氷冷HBSSで洗浄した。はさみで粘膜から漿膜を分離し、廃棄した。粘膜を細片に切り刻み、冷0.15%(w/v)HBSS中ジチオトレイトール(dithiolthreitol)(DTT/HBSS)とともに30分間インキュベートした。次いで、冷HBSSで粘膜を洗浄し、粘液を除去した。次いで、粘膜細片を冷1mM HBSS中EDTA中、攪拌下で90分間インキュベートし、上皮および上皮内リンパ球(IEL)を取り出した。上皮細胞が該細片から脱落しなくなるまで、攪拌下、1mM EDTA含有HBSS中でのインキュベーションを数回繰り返した。残った粘膜細片を50メッシュの漉し器(Sigma. St. Louis, MO)に通して破砕し、固有層リンパ球(LPL)を単離した。
【0156】
FACS解析
単離したリンパ球をFACSバッファー中に≦1×10
6mlの濃度で再懸濁した。非特異的抗体結合をウマIgG(Sigma. St. Louis, MO)を用いてブロックした。非結合抗GPR−9−6(CCR9)抗体(mAb 3C3)を、ビオチニル化ウマ抗マウスIgG二次抗体(Vector Laboratories, Burlingame, CA)およびストレプトアビジンPerCP(Phamingen, San Diego, CA)を用いて検出した。
【0157】
腸のリンパ球の化学走性
孔径5μmのポリカーボネート膜を備えた24ウェルTranswellプレート(Corning Costar, Cambridge, MA)を用い、化学走性アッセイを行った。簡単には、0.5%BSAを有するRPMI1640中に希釈した600μlのTECKをTranswellプレートの底部チャンバに入れ、100μlの細胞(IELは1×10
6、LPLは5×10
5)を各インサートに入れた。抗体阻害実験のために、インサートをウェルに加える前に、IELまたはLPLを40μg/mlのmAb 3C3、対照マウスIgG2b(クローン49.2、PharMingen, San Diego, CA)とともに、または培地のみで10分間4℃でインキュベートした。次いで、プレートを37℃、5%CO
2中で3時間インキュベートした。アッセイ中に下側チャンバに移動した細胞の数をFACS解析により測定し、40秒間隔の間で小リンパ球の光散乱プロフィル特性により検出器を通過した数を計測した。100%細胞遊走に相当する数は、投入細胞懸濁液をFACSにより40秒間計測したときに記録された数の6分の1に等しかった。
【0158】
結果
GPR−9−6(CCR9)発現は、フローサイトメトリーにより末梢血白血球の少量サブセットのみで検出された。対照的に、実質的にすべてのIELおよびLPLが高レベルのGPR−9−6を発現した(
図16A〜16C)。さらに、インビトロ化学走性アッセイにより、IELおよびLPLの両方がTECK誘導性化学走性を示し、これは抗GPR−9−6抗体(mAb 3C3)により阻害されうるが、アイソタイプ対照抗体(IgG2b)によっては阻害されえないことが明らかになった(
図17Aおよび17B)。したがって、GPR−9−6(CCR9)は、IELおよびLPLにより発現されるTECKの主な生理的レセプターである。データは、腸の上皮内での白血球の局所輸送がTECKとGPR−9−6(CCR9)との相互作用に媒介されることを示す。
【0159】
実施例4 さらなる抗GPR−9−6mAb
C57/Blackマウスを、安定にGPR−9−6を発現するトランスフェクトL1.2細胞(GPR−9−6/L1.2)1000万個で免疫した(実施例1参照)。免疫する前に、トランスフェクトL1.2細胞をPBS(Sigma )中のマイトマイシンC(50μg/ml)で処理した。3週間後、マイトマイシンCで処理したGPR−9−6/L1.2トランスフェクタントでマウスを再度免疫した。その後、マウスをGPR−9−6/L1.2トランスフェクタント1000万個で3週間ごとに免疫した。マウスは、GPR−9−6/L1.2トランスフェクタントで最低4回免疫した。ハイブリドーマ形成のため、最後の免疫から3〜4日後の免疫化マウスから脾臓を取り出し、脾臓細胞をSP2/0骨髄腫細胞に融合した。GPR−9−6(CCR9)に特異的に結合する(すなわちGPR−9−6/L1.2トランスフェクタントを染色するが、他のケモカインレセプターを発現するL1.2細胞トランスフェクタントは染色しない)抗体を産生するハイブリドーマをFACS解析により同定した。
【0160】
mAb GPR96−1を産生するマウスハイブリドーマGPR96−1を単離し、インビトロ化学走性アッセイにおいてGPR−9−6/L1.2のTECK誘導性化学走性を阻害するmAb GPR96−1の能力を評価した。この抗体阻害アッセイのため、TECKに暴露する前に、GPR−9−6/L1.2トランスフェクタントを種々の濃度のmAb GPR96−1またはmAb 3C3とともに10分間氷上でインキュベートした。化学走性アッセイは、ECV304細胞を使用しなかった以外は実質的に上述のようにして行った。
図18にグラフで示した結果により、該アッセイ条件下では、TECK誘導性化学走性の阻害において、mAb GPR96−1はmAb 3C3よりも効率的であることが明らかになった。
【0161】
ハイブリドーマLS272 GPR96 1−5とも称するマウスハイブリドーマGPR96−1は、FCS(10%)、IL−6(100ng/ml)、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)、L−グルタミン(2mM)、HEPES(10mM)、MEMピルビン酸ナトリウム(10mM)、MEM非必須アミノ酸(0.1mM)および2−メルカプトエタノール(5.5×10
-5M)を加えたDMEM中で、37℃、5%CO
2雰囲気中で培養することができる。
【0162】
実施例5 抗TECK mAb
Balb/cマウスを、まず完全フロイントアジュバント(Sigma, F 5881)中10μgのヒトTECK(Peprotech, Rocky Hill, NJ 330-45)で腹腔内免疫した。3週間後、マウスを、不完全フロイントアジュバント(Sigma, F 5506)中10μgのヒトTECK(Peprotech, Rocky Hill, NJ 330-45)で腹腔内免疫した。その後、PBS中10μgのTECKで3週間ごとにマウスを腹腔内免疫した。各マウスは最低4回免疫した。ハイブリドーマ形成のため、最後の免疫から3〜4日後の免疫化マウスから脾臓を取り出し、脾臓細胞をSP2/0骨髄腫細胞に融合した。TECKに特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマを、2μg/mlのTECKでコーティングしたプレート用いてELISAにより同定した。次いで、インビトロアッセイにおいて、抗TECK抗体をGPR−9−6/L1.2トランスフェクタントのTECK誘導性(150nM)化学走性を阻害する能力について試験した。
【0163】
マウスハイブリドーマ11.2、11.3.1、16.2および16.3.1(ハイブリドーマ11.3.1および16.3.1はそれぞれハイブリドーマ11.2および16.2のサブクローン)を単離し、インビトロ化学走性アッセイにおいて、これらが産生するmAbの、GPR−9−6/L1.2細胞のTECK誘導性化学走性阻害能を評価した。TECKを、対照IgG1 mAb(20mg/ml)を含む培養培地中で希釈(終濃度約150nM)するか、またはTECKに結合するmAbを産生するハイブリドーマの条件培養培地中で1:4に希釈した。TECK溶液をTranswellプレートの底部に入れ、室温で10分間インキュベートした。次いで、GPR−9−6/L1.2トランスフェクタントを培養培地中に懸濁し、インサート内に入れ、これをプレートのウェル内に入れた。トランスフェクタントを2〜3時間移動させた後、下側ウェル内に蓄積した細胞をFACSCANで計測した。
【0164】
図19にグラフで示したアッセイの結果により、mAb 11.2、11.3.1、16.2および16.3.1のそれぞれは、TECK誘導性化学走性を阻害したが、同様にTECKに結合するmAb 20.2および非特異的IgGは阻害しなかった。
【0165】
ハイブリドーマLS250 11.3.1とも称するマウスハイブリドーマ11.3.1およびハイブリドーマLS250 16.3.1とも称するマウスハイブリドーマ16.3.1は、FCS(10%)、IL−6(100ng/ml)、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)、L−グルタミン(2mM)、HEPES(10mM)、MEMピルビン酸ナトリウム(10mM)、MEM非必須アミノ酸(0.1mM)および2−メルカプトエタノール(5.5×10
-5M)を加えたDMEM中で、37℃、5%CO
2雰囲気中で培養することができる。
【0166】
実施例6 天然TECK変種
Qiagen Mini Kitを用い、胸腺および炎症小腸または非炎症小腸のヒト試料からRNAを調製した。該RNAを逆転写し、BAZ203(配列番号:6)およびBAZ204(配列番号:7)を用い、記載(実施例1参照)のようにしてPCRによりTECKのコード領域を増幅した。PCR産物を酵素BamH1およびXbalで切断し、pBluescript II KSにライゲートした。pBluescript II(M13およびT3)内の配列にアニーリングするプライマーを用いて挿入物のシークエンシングを行った。シークエンシングデータにより、異なる形態のTECKがこれらの組織で発現されることが明らかになった。トレオニン(T)またはメチオニン(M)のいずれかを有するアミノ酸104の多型が見られた(配列番号:9)。アミノ酸109(アラニン)の欠損をもたらす塩基326〜328のフレームシフト欠失を有するスプライス変種も見られた。
【0167】
これに関してさらに、別個のRNA試料からPCRにより作製した挿入物の配列を調べると、フレームシフト変異により生じる2つの形態のTECKの差次的(differential)発現が明らかになり、アラニン欠損型は、胸腺よりも小腸においてより多かった。
【0168】
実施例7
TECKは小腸の表皮細胞により高度に発現される
インサイチューハイブリダイゼーション
合成オリゴヌクレオチド5プライムプライマー(t aag gat ccg caa ggt gcc ttt gaa gac tgc t;配列番号:12)およびオリゴヌクレオチド3プライムプライマー(caa gaa ttc tta att gtt ctt tct ggg cat;配列番号:13)を用いて、胸腺からRT−PCRにより調製されたマウスcDNAのプールからTECKプローブをまず増幅し、BamH1およびEcoR1によりサブクローニングした。2回目のPCR増幅工程を、RNAポリメラーゼ部位を導入するために、合成オリゴヌクレオチドプライマーm_TECK T3(aat taa ccc tca cta aag gga act gtg gct ttt tgc ctg c;配列番号:14)およびm_TECK T7(taa tac gac tca cta tag ggt gtt ggt ctt tct ggg cat c;配列番号:15)を用いて行った。DIG RNA Labeling Kit/Genius 4 Kit(Roche Molecular Biochemicals)を用い、センスおよびアンチセンスジゴキシゲニン標識プローブを合成した。
【0169】
5ミクロンのマウス小腸凍結切片を切り取り、Superfrost Plusスライド(VWR)上で解凍し、室温で1〜2時間風乾し、同日にハイブリダイゼーションに使用した。最初のキシレン工程を省略し、プロテイナーゼK(0.1μg/ml)で5分間室温で消化することを含めた以外は記載(“Nonradioactive In Situ Hybridization Application Manual" 2 nd edition Copyright 1996 Boehringer Mannheim GmbH, Biochemica の Breitschopfら、Detection of mRNA on paraffin embedded material of the central nervous system with DIG-labeled RNA probes.)のようにして該切片を前処理した。200ng/mlジゴキシゲニン標識プローブ、50%ホルムアミド(Gibco BRL)5×SSC、5×デンハート溶液(Sigma)、0.5mg/mlサケ精子DNA(Gibco BRL)および25μg/ml酵母RNA(Sigma)を含むハイブリダイゼーションバッファー中で該切片を16〜18時間60℃でハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション後、切片を0.2×SSC中で1時間60℃で、次いで0.2×SSC中で5分間室温で洗浄した。DIG Nucleic Acid Detection Kit/Genius 3(Roche Molecular Biochemicals)を用い、抗体(1:100)とのインキュベーションを4℃で一晩行い、10%70〜100kDポリビニルアルコール(Sigma)をアルカリホスファターゼ反応バッファーに加えた以外は記載のようにしてジゴキシゲニン標識プローブを検出した。
【0170】
結果
インサイチューハイブリダーゼーションを用いてマウス腸におけるTECK発現の細胞性部位を直接評価した。TECK発現は、小腸の絨毛およびリーベルキューン陰窩の上皮に局在した。絨毛での発現は、基底部で最大であり、より低レベルのTECKハイブリダイゼーションが絨毛の上部に向かって検出された。TECKの発現は小腸に接着したパイアー斑(PP)では検出されなかった(
図24A〜24C)。
【0171】
データは、TECKが小腸の上皮細胞でより高レベルで選択的に発現されることを示す。この発現パターンは、循環している「小腸ホーミング」リンパ球の漸増ならびにIELおよびLPLの局所漸増の調節におけるTECKの高度に選択的な役割をさらに支持する。
【0172】
本発明をその好ましい態様に関して具体的に示し記載したが、当業者は、添付の請求の範囲により規定される本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく本明細書において形態および詳細の種々の変更を行いうることを理解されたい。
【0173】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
〔1〕 哺乳類GPR−9−6に結合し、該GPR−9−6へのリガンドの結合を阻害する、抗体またはその抗原結合性フラグメント。
〔2〕 該哺乳類GPR−9−6がヒトGPR−9−6である、前記〔1〕記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
〔3〕 該リガンドがTECKである、前記〔1〕記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
〔4〕 GPR−9−6への該抗体または該抗原結合性フラグメントの結合が、配列番号:3のアミノ酸配列からなるペプチドにより阻害されうる、前記〔1〕記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
〔5〕 GPR−9−6への該抗体または該抗原結合性フラグメントの結合がmAb 3C3により阻害されうる、前記〔1〕記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
〔6〕 該抗体または抗原結合性フラグメントが、mAb 3C3と同一または同様のエピトープに結合する、前記〔5〕記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
〔7〕 GPR−9−6への該抗体または該抗原結合性フラグメントの結合がmAb GPR96−1により阻害されうる、前記〔1〕記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
〔8〕 該抗体または抗原結合性フラグメントが、mAb GPR−9−6と同一または同様のエピトープに結合する、前記〔7〕記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
〔9〕 マウスハイブリドーマ3C3により産生された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
〔10〕 哺乳類GPR−9−6に結合し、該GPR−9−6へのリガンドの結合を阻害する抗体またはその抗原結合性フラグメントを産生する単離された細胞。
〔11〕 該哺乳類GPR−9−6がヒトGPR−9−6である、前記〔10〕記載の単離された細胞。
〔12〕 該リガンドがTECKである、前記〔11〕記載の単離された細胞。
〔13〕 該単離された細胞が、該抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする1またはそれ以上の外来核酸分子を含有する不死化B細胞、ハイブリドーマおよび組換え細胞からなる群より選択されてなる、前記〔12〕記載の単離された細胞。
〔14〕 マウスハイブリドーマ3C3。
〔15〕 a)生物学的試料と、哺乳類GPR−9−6または該レセプターの一部に結合し、レセプターへのリガンドの結合を阻害する抗体またはその抗原結合性フラグメントとを哺乳類GPR−9−6またはその一部への該抗体またはその抗原結合性フラグメントの結合に適切な条件下で接触させる工程;および
b)該抗体またはその抗原結合性フラグメントの結合を検出する工程;
を含み、該抗体またはその抗原結合性フラグメントの結合が、該レセプターまたは該レセプターの一部の存在を示す、生物学的試料中の哺乳類GPR−9−6またはその一部の検出方法。
〔16〕 生物学的試料がヒト起源である、前記〔15〕記載の方法。
〔17〕 抗体またはその抗原結合性フラグメントが、
a)mAb 3C3;
b)哺乳類GPR−9−6への結合に関してmAb 3C3と競合しうる抗体;
c)哺乳類GPR−9−6またはその一部に結合する(a)または(b)の抗原結合性フラグメント;および
d)前述の組み合わせ、
からなる群から選択される、前記〔16〕記載の方法。
〔18〕 抗体またはその抗原結合性フラグメントが、
a)mAb GPR96−1;
b)哺乳類GPR−9−6への結合に関してmAb GPR96−1と競合しうる抗体;
c)哺乳類GPR−9−6またはその一部に結合する(a)または(b)の抗原フラグメント;および
d)前述の組み合わせ、
からなる群より選択される、前記〔16〕記載の方法。
〔19〕 a)参照薬剤、
b)試験薬剤、および
c)機能的な哺乳類GPR−9−6またはそのリガンド結合性変種を含有する組成物を、該GPR−9−6またはそのリガンド結合性変種への該参照薬剤の結合に適した条件下で組み合わせる工程;ならびに
該参照薬剤と該GPR−9−6またはそのリガンド結合性変種との複合体の形成を検出または測定する工程を含み、適切な対照と比較した該複合体の形成の減少が、該試験薬剤が該GPR−9−6またはそのリガンド結合性変種に結合することを示す、哺乳類GPR−9−6またはそのリガンド結合性変種に結合する薬剤を検出および同定する方法。
〔20〕 該参照薬剤が、放射性同位体、エピトープ、アフィニティ標識、酵素、蛍光群および化学発光群からなる群より選択される標識で標識化される、前記〔19〕記載の方法。
〔21〕 該参照薬剤がTECKである、前記〔19〕記載の方法。
〔22〕 該参照薬剤が該GPR−9−6に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントである、前記〔19〕記載の方法。
〔23〕 機能的な哺乳類GPR−9−6またはそのリガンド結合性変種を含有する該組成物が哺乳類GPR−9−6を発現する細胞である、前記〔19〕記載の方法。
〔24〕 該細胞が組換え細胞である、前記〔23〕記載の方法。
〔25〕 該細胞が細胞株である、前記〔23〕記載の方法。
〔26〕 該細胞がMOLT−4およびMOLT−13からなる群より選択される、前記〔25〕記載の方法。
〔27〕 機能的な哺乳類GPR−9−6またはそのリガンド結合性変種を含有する該組成物が、哺乳類GPR−9−6またはそのリガンド結合性変種を発現する細胞の膜調製物である、前記〔19〕記載の方法。
〔28〕 a)試験対象の薬剤、該GPR−9−6のリガンドまたはプロモーターおよび該GPR−9−6を発現する細胞を、リガンド誘導性応答またはプロモーター誘導性応答を検出するのに適した条件下で組み合わせる工程;および
b)該応答を阻害する試験化合物の能力を測定する工程、
を含み、該薬剤によるリガンド誘導性応答またはプロモーター誘導性応答の阻害が、該薬剤がインヒビターであることの指標である、哺乳類GPR−9−6レセプターのインヒビターを検出または同定する方法。
〔29〕 該細胞がヒトGPR−9−6を発現する組換え細胞である、前記〔28〕記載の方法。
〔30〕 該リガンドまたはプロモーターがTECKである、前記〔29〕記載の方法。
〔31〕 該応答が化学走性またはCa
2+フラックスである、前記〔28〕記載の方法。
〔32〕 被験体に哺乳類GPR−9−6機能のアンタゴニストの有効量を投与する工程を含む、炎症性疾患を有する被験体の治療方法。
〔33〕 該炎症性疾患がクローン病または結腸炎である、前記〔32〕記載の方法。
〔34〕 該アンタゴニストが哺乳類GPR−9−6へのリガンドの結合を阻害する、前記〔32〕記載の方法。
〔35〕 該リガンドがTECKである、前記〔34〕記載の方法。
〔36〕 該アンタゴニストが哺乳類GPR−9−6またはその抗原結合性フラグメントに結合する抗体である、前記〔34〕記載の方法。
〔37〕 被験体にGPR−9−6機能のアンタゴニストの有効量を投与する工程を含む、被験体における白血球のGPR−9−6媒介性ホーミングの阻害方法。
〔38〕 該アンタゴニストが、GPR−9−6へのリガンドの結合を阻害する、前記〔37〕記載の方法。
〔39〕 該リガンドがTECKである、前記〔38〕記載の方法。
〔40〕 該アンタゴニストが、GPR−9−6に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントである、前記〔39〕記載の方法。
〔41〕 被験体にGPR−9−6機能のアンタゴニストの有効量を投与する工程を含む、被験体における粘膜組織への白血球のGPR−9−6媒介性ホーミングの阻害方法。
〔42〕 該被験体にGPR−9−6機能のアンタゴニストの有効量を投与する工程を含む、炎症性腸疾患を有する患者の治療方法。
〔43〕 該アンタゴニストがGPR−9−6へのリガンドの結合を阻害する、前記〔42〕記載の方法。
〔44〕 該リガンドがTECKである、前記〔43〕記載の方法。
〔45〕 該アンタゴニストがGPR−9−6に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントである、前記〔44〕記載の方法。
〔46〕 GPR−9−6を発現する細胞とそれに結合する薬剤とを接触させ、それにより該GPR−9−6の機能を調節する工程を含む、GPR−9−6機能の調節方法。
〔47〕 該薬剤がGPR−9−6の機能を阻害しうる、前記〔46〕記載の方法。
〔48〕 該薬剤が抗体またはその抗原結合性フラグメントである、前記〔47〕記載の方法。
〔49〕 該機能が、リガンド結合、リガンド誘導性化学走性およびリガンド誘導性Ca
2+フラックスからなる群より選択される、前記〔48〕記載の方法。
〔50〕 該リガンドがTECKである、前記〔49〕記載の方法。
〔51〕 a)哺乳類GPR−9−6または該レセプターの一部に結合する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合性フラグメント、ここで該抗体またはその抗原結合性フラグメントがレセプターへのリガンドの結合を阻害する;および、
b)該抗体またはその抗原結合性フラグメントと該哺乳類GPR−9−6またはその一部との複合体の存在を検出するのに適切な1またはそれ以上の補助試薬、
を含有してなる、生物学的試料中の哺乳類GPR−9−6またはその一部の存在の検出に使用するための試験キット。
〔52〕 抗体が、
a)mAb 3C3;
b)哺乳類GPR−9−6への結合に関してmAb 3C3と競合しうる抗体;
c)哺乳類GPR−9−6またはその一部に結合する(a)または(b)の抗原結合性フラグメント;および
d)前述の組み合わせ、
からなる群より選択されてなる、前記〔51〕記載の試験キット。
〔53〕 抗体が、
a)mAb GPR96−1;
b)哺乳類GPR−9−6への結合に関してmAb GPR96−1と競合しうる抗体;
c)哺乳類GPR−9−6またはその一部に結合する(a)または(b)の抗原結合性フラグメント;および
d)前述の組み合わせ
からなる群より選択されてなる、前記〔51〕記載の試験キット。
〔54〕 哺乳類TECKに結合し、レセプターへの該TECKの結合を阻害する、抗体またはその抗原結合性フラグメント。
〔55〕 該哺乳類TECKがヒトTECKである、前記〔54〕記載の抗体またはその抗原フラグメント。
〔56〕 該レセプターがGPR−9−6である、前記〔54〕記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
〔57〕 TECKへの該抗体または該抗原結合性フラグメントの結合が、mAb 11.3.1および/またはmAb 16.3.1により阻害されうる、前記〔54〕記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
〔58〕 該抗体または抗原結合性フラグメントが、mAb 11.3.1と同一または同様のエピトープに結合する、前記〔57〕記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
〔59〕 該抗体または抗原結合性フラグメントが、mAb 16.3.1と同一または類似のエピトープに結合する、前記〔57〕記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
〔60〕 マウスハイブリドーマGPR96−1により産生された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
〔61〕 マウスハイブリドーマGPR96−1。
〔62〕 マウスハイブリドーマ11.3.1により産生された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
〔63〕 マウスハイブリドーマ11.3.1。
〔64〕 マウスハイブリドーマ16.3.1により産生された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
〔65〕 マウスハイブリドーマ16.3.1。
〔66〕 哺乳類TECKに結合し、レセプターへの該TECKの結合を阻害する抗体またはその抗原結合性フラグメントを産生する単離された細胞。
〔67〕 該哺乳類TECKがヒトTECKである、前記〔66〕記載の単離された細胞。
〔68〕 レセプターがGPR−9−6である、前記〔66〕記載の単離された細胞。
〔69〕 a)生物学的試料と、哺乳類TECKまたはその一部に結合し、レセプターへのTECKの結合を阻害する抗体またはその抗原結合性フラグメントとを、哺乳類TECKまたはその一部への該抗体またはその抗原フラグメントの結合に適切な条件下で接触させる工程;および
b)該抗体またはその抗原結合性フラグメントの結合を検出する工程;
を含み、該抗体またはその抗原結合性フラグメントの結合が、該レセプターまたは該レセプターの一部の存在を示す、生物学的試料中の哺乳類TECKまたはその一部の検出方法。
〔70〕 a)哺乳類TECKまたは該レセプターの一部に結合する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合性フラグメント、ここで該抗体またはその抗原結合性フラグメントがレセプターへのTECKの結合を阻害する;および
b)該抗体またはその抗原結合性フラグメントと該哺乳類TECKまたはその一部との複合体の存在を検出するのに適切な1またはそれ以上の補助試薬、
を含有してなる、生物学的試料中の哺乳類TECKまたはその一部の存在の検出に使用するための試験キット。
〔71〕 GPR−9−6機能のアンタゴニストの有効量を被験体に投与する工程を含む、癌を有する被験体の治療方法。
〔72〕 該アンタゴニストが、GPR−9−6に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントである、前記〔62〕記載の方法。
〔73〕 GPR−9−6に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効量を被験体に投与する工程を含み、該抗体またはフラグメントが補体を活性化しうる、癌を有する被験体の治療方法。
〔74〕 免疫複合体または抗原結合性融合タンパク質の有効量を被験体に投与する工程を含み、該免疫複合体または抗原結合性融合タンパク質が、さらなる治療薬剤に直接的または間接的に結合したGPR−9−6に結合する抗体の少なくとも抗原結合部分を含有する、癌を有する被験体の治療方法。
〔75〕 該さらなる治療薬剤が細胞傷害剤である、前記〔74〕記載の方法。
〔76〕 さらなる治療薬剤に直接的または間接的に結合したGPR−9−6に結合する抗体の抗原結合部分を少なくとも含有する免疫複合体。
〔77〕 さらなる治療薬剤に直接的または間接的に結合したGPR−9−6に結合する抗体の抗原結合部分を少なくとも含有し、該抗体の抗原結合部分および該さらなる治療薬剤が連続するポリペプチドの一部である、抗原結合性融合タンパク質。