【実施例】
【0045】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
<含トウガラシチンキ配合物による基礎検討>
知覚刺激原因物質(ここではトウガラシチンキ)およびカフェインと4−t−ブチルシクロヘキサノールとを配合した下記の表1に示す組成(質量部)で各配合物を調製し、また、カフェインと4−t−ブチルシクロヘキサノールのいずれも配合していない対照例1の配合物とともに、知覚刺激緩和性について評価した。表中EDTA−2Naはエチレンジアミン四酢酸2ナトリウムを示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
(調製法)表1〜2中Bに記載された成分を混合してB液とし、これに表中Aに記載された成分を混合・溶解させて調製したA液を混合し、それぞれ各配合物を得た。
【0050】
これら配合物の評価は次のように行った。
【0051】
まず、トウガラシチンキに対して刺激を感じるパネラーを次のようにして選定した。すなわち、本試験の2週間前に、スポンジアプリケーターを用い、対照例1の配合物を鼻の中心線から頬中央に亘る線状の部分、及び、頬骨から顎に亘る線状の部分に、それぞれ塗布し、その際に刺激を感じた人をパネラーとした。
【0052】
試験例1〜13と各比較例1及び2のうちの1つをそれぞれ対照例1と対にした計15の実験系を、これらの各実験系に対してそれぞれパネラー10人の被験者の顔に適用して試験を行った。
【0053】
コットン綿棒またはスポンジアプリケーターを用いて、対照例1の配合物をパネラーの顔の鼻の中心線から右または左頬中央に亘る線状の部分、及び、右または左頬骨から顎に亘る線状の部分にそれぞれ塗布し、試験例1〜13と各比較例1及び2のうちの1つの配合物は対照例1の配合物を塗布したのとは反対側の、鼻の中心線から頬中央に亘る線状の部分、及び、頬骨から顎に亘る線状の部分にそれぞれ塗布した。
【0054】
このとき、各配合物による刺激について、対照例1の配合物での刺激と比較したときに、各パネラーによるモニター結果(人数)を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3より、カフェインと4−t−ブチルシクロヘキサノールとを配合した配合物では、知覚刺激物質による皮膚の知覚刺激を大きく低減できることが理解できる。なお、試験例7と試験例13は他の試験例同様に皮膚の知覚刺激を低減することができたが、これらは配合量の増加に見合った効果の向上が得られなかった。
【0057】
<化粧品組成物への応用例>
以下に本発明のカフェインと4−t−ブチルシクロヘキサノールとを配合した化粧品組成物の処方例として実施例1〜4と各比較例3〜10を挙げ、カフェインと4−t−ブチルシクロヘキサノールを含まない対照例との刺激抑制効果の検証を行った。
【0058】
【表4】
【0059】
(調製法)表中Aの各成分、Bの各成分を80℃に加熱しながら、それぞれ混合してA剤及びB剤を得る。A剤をホモミキサーで攪拌しながらB剤を徐々に添加する。添加終了後、パドルミキサーで攪拌しながら35℃まで冷却し、日焼け止め乳液を得た。
【0060】
【表5】
【0061】
(調製法)表中Aの各成分、及び、Bの各成分をそれぞれ混合してA液及びB液を調製し、次いで、A液にB液を加えて可溶化した後、濾過して化粧水を得た。
【0062】
【表6】
【0063】
(調製法)表中Aの成分を粉砕機で混合して、70℃に加熱し溶解したBの成分に添加し、撹拌機で分散混合する。この混合物に70℃に保たれたCの成分を加えホモミキサー処理し、W/O乳化型クリームファンデーションを得た。
【0064】
【表7】
【0065】
(調製法)Aの成分を70℃で加熱溶解させて、70℃に保ったBの成分からなる混合物を徐々に加え均一化し、クレンジングジェルを得る。
【0066】
<実施例1〜4及び比較例3〜10の刺激抑制効果について>
実施例1〜4及び比較例3〜10の配合物の評価は、前記した<含トウガラシチンキ配合物による基礎検討>と同様に行った。
【0067】
まず、本試験の2週間前に対照例2〜5の化粧品組成物をそれぞれ被験者の顔に適用し、その結果、刺激を感じた被験者を敏感肌パネラーとして、以降の各試験にそれぞれ10名ずつ用いた。各パネラーには、試験当日にはメークアップせず、かつ、フェイシャルローションを用いないように指示した。
【0068】
実施例1と比較例3及び4に対して対照例2、実施例2と比較例5及び6に対して対照例3、実施例3と比較例7及び8に対して対照例4、実施例4と比較例9及び10に対して対照例5をそれぞれ対にした実験系で、顔の一方の片側には実施例もしくは比較例にかかる化粧品組成物を、他方の片側には対照例にかかる化粧品組成物をそれぞれ塗布した。
【0069】
このとき、各実施例と比較例の化粧品組成物による刺激について、対照例の化粧品組成物での刺激と比較したときに、各パネラーによるモニター結果(人数)を表8に示す。
【0070】
【表8】
【0071】
表8より、カフェインと4−t−ブチルシクロヘキサノールとを配合することにより、各種化粧品配合物による皮膚の知覚刺激を極めて低減できることが理解できる。
【0072】
<化粧品組成物への応用例2>
以下に本発明のカフェインと4−t−ブチルシクロヘキサノールとを配合した化粧品組成物の処方例として実施例5〜6と各比較例11〜14を示し、カフェインと4−t−ブチルシクロヘキサノールとを含まない対照例との刺激抑制効果の違いについて検証を行った。
【0073】
【表9】
【0074】
(調製法)Aの成分及びBの成分をそれぞれ80℃に加温して均一に溶解してA液およびB液を得た後、A液にB液を加え、攪拌を続けて室温まで冷却し、ヘアーシャンプーを得た。
【0075】
【表10】
【0076】
Aの成分とBの成分とをそれぞれ75℃で加温溶解してA液とB液とを得て、これらをよく攪拌しながら混合した後、徐々に冷却する。40℃程度となったときにCの成分を加え混合し、ヘアートリートメントを得た。
【0077】
<実施例5〜6及び比較例11〜14の刺激抑制効果について>
これら配合物の評価は次のように行った。
【0078】
まず、対照例6及び対照例7に対して、それぞれ刺激を感じるパネラーを次のようにして選定した。すなわち、本試験の2週間前に、対照例6または対照例7の化粧品組成物を被験者に常法でそれぞれ10g適用し、刺激を感じた被験者を以下それぞれパネラーとした。
【0079】
実施例5及び比較例11と12に対し対照例6、実施例6及び比較例13と14に対し対照例7をそれぞれ対にした実験系とし、これらの各実験系に対して各10人のパネラーの頭に各化粧品組成物を適用して試験を行った。
【0080】
具体的には、それぞれのパネラーの頭を頭頂部から左右それぞれ半分に区画し、一方の区画には実施例もしくは比較例の化粧品組成物を、他方の区画には対照例の化粧品組成物を、それぞれ5gずつ常法により適用した。
【0081】
このとき、各実施例と比較例の化粧品組成物による刺激について、対照例6あるいは対照例7の化粧品組成物での刺激と比較したときに、各パネラーによるモニター結果(人数)を表11に示す。
【0082】
【表11】
【0083】
表11より、カフェインと4−t−ブチルシクロヘキサノールとを配合することにより、各種化粧品配合物による皮膚の知覚刺激を極めて低減できることが理解できる。
【0084】
<化粧品用皮膚刺激緩和剤による酸化染毛剤組成物における皮膚刺激緩和効果について>
表12及び表13に配合比(質量%)を示した、実施例7〜19、比較例15及び16の計15種類の化粧品用皮膚刺激緩和剤、及び、カフェイン及び4−t−ブチルシクロヘキサノールの両者を含まない対照例8をそれぞれ前処理剤として調整した。
【0085】
【表12】
【0086】
【表13】
【0087】
(調製法)表中Bの成分を混合してB液を調製した。一方、Aの成分であるエタノールにAの他の成分を溶解してA液を調製した。B液にA液を加えて可溶化し各配合物を得た。
【0088】
上記16種類の化粧品用皮膚刺激緩和剤に対してそれぞれ、パネラー10人ずつを選び、各パネラーの頭皮を頭頂部から左右それぞれ半分に区画し、一方の区画には化粧品用皮膚刺激緩和剤を前処理剤として、他方の区画には対照例8の前処理剤を、それぞれ6gずつ塗布した。
【0089】
上記の前処理剤の塗布の20〜30分後に、表12にその配合量(質量%)を示す酸化染毛剤の第1液と第2液とを1:1で混合して酸化染毛剤組成物を調製し、得られた酸化染毛剤組成物を各モニターの毛髪に常法で塗布し、25分間常温放置することで酸化染毛処理を行い、その際の頭皮における一過性の皮膚刺激を評価した。このとき、酸化染毛処理による刺激について、実施例7〜19、及び、比較例15及び16の前処理剤による前処理区画での刺激と対照例8の前処理剤による前処理区画での刺激とを比較したときに、各パネラーによるモニター結果(人数)を表14に示す。
【0090】
【表14】
【0091】
(調製法)酸化染毛剤第1液:表中Aの成分とBの成分とを80℃に加温溶解し、よく攪拌しながら混合してそれぞれA液及びB液を得た後、徐々に冷却させる。55℃程度でCの成分を加え混合させ、45℃程度でDの成分を加え混合し、酸化染毛剤第1液を得た。
【0092】
酸化染毛剤第2液:各成分を混合し酸化染毛剤第2液を得る。
【0093】
【表15】
【0094】
表15によれば、本発明に係る化粧品用皮膚刺激緩和剤を用いた系では酸化染毛処理において皮膚刺激が効果的に緩和されることが判る。
【0095】
<化粧品用皮膚刺激緩和剤によるパーマネントウェーブ剤組成物における皮膚刺激緩和効果について>
上記の酸化染毛組成物による酸化染毛処理の代わりに表16にその配合量(質量%)を示すパーマネントウェーブ剤組成物(第1液及び第2液から構成された)によってパーマネントウェーブ処理を行い、そのときの皮膚刺激緩和効果を調べた。
【0096】
このとき、前処理剤である化粧品用皮膚刺激緩和剤としては、上記同様に、表11に配合比(質量%)を示した、実施例7〜19、比較例15及び16の計15種類の化粧品用皮膚刺激緩和剤、及び、カフェイン及び4−t−ブチルシクロヘキサノールの両者を含まない対照例8をそれぞれ用いた。
【0097】
【表16】
【0098】
(調製法)パーマネントウェーブ剤第1液:表中Aの成分を混合し60℃で加熱溶解して得たA液を、60℃に加熱したBの成分を添加し可溶化した後、さらにCの成分に加え混合し、パーマネントウェーブ剤第1液を得た。
【0099】
パーマネントウェーブ剤第2液:Aの成分を混合し60℃で加熱溶解して得たA液に、60℃で加熱したBの成分を添加し可溶化した後、さらにCの成分を加え混合し、パーマネントウェーブ剤第2液を得た。
【0100】
上記の前処理の終了の20〜30分後に、上記パーマネントウェーブ剤組成物の第1液を毛髪に塗布した15分後に2分間水洗し、タオルドライして、パーマネントウェーブ剤の第2液を毛髪に塗布し15分放置、及び、水洗を順次行った。このとき、パーマネントウェーブ剤による刺激について、実施例7〜19、及び、比較例15及び16の前処理剤による前処理領域での刺激と対照例8の前処理剤による前処理領域での刺激とを比較したときに、各パネラーによるモニター結果(人数)を表17に示す。
【0101】
【表17】
【0102】
表17によれば、本発明に係る化粧品用皮膚刺激緩和剤を用いた系ではパーマネントウェーブ処理において皮膚刺激が効果的に緩和されることが判る。
【0103】
<皮膚刺激緩和成分が配合された酸化染毛剤の検討>
上記では毛髪に対する処理に先行して本発明に係る化粧品用皮膚刺激緩和剤を用いたが、ここで、本発明に係る化粧品用皮膚刺激緩和剤があらかじめ混合された化粧品組成物の例として酸化染毛剤を示す。
【0104】
表18及び表19に示した配合比(質量%)となるように実施例20〜32、比較例17及び18、対照例9の酸化染毛剤の第1液を調製した。第2液は<化粧品用皮膚刺激緩和剤による酸化染毛剤組成物における皮膚刺激緩和効果について>で表14に示したものと同じものを用いた。
【0105】
【表18】
【0106】
【表19】
【0107】
(調製法)酸化染毛剤第1液:Aの成分とBの成分とを80℃に加温溶解し、よく攪拌しながら混合した後、徐々に冷却する。55℃程度でCの成分を加え混合し、45℃程度でDの成分を加え混合し、酸化染毛剤第1液を得た。
【0108】
それぞれパネラー10人の被験者の頭皮を頭頂部から左右に半分に区画し、一方の区画には実施例20〜32、比較例17及び18の酸化染毛剤第1液を、他方の区画には対照例9の第1液を、それぞれ第2液と1:1で混合し、酸化染毛剤組成物として使用した。
【0109】
上記の酸化染毛剤組成物を常法にて毛髪に塗布した後、25分常温放置し酸化染毛処理を行い、その際の頭皮への一過性の皮膚刺激を評価した。このとき、酸化染毛処理による刺激について、実施例20〜32、及び、比較例17及び18を用いた酸化染毛剤組成物による処理領域での刺激と対照例9を用いた酸化染毛剤組成物による処理領域での刺激とを比較したときに、各パネラーによるモニター結果(人数)を表20に示す。
【0110】
【表20】
【0111】
表20によれば、本発明に係る酸性染毛剤を用いた系では酸化染毛処理において皮膚刺激が効果的に緩和されることが判る。