(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933215
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】ストロボ装置
(51)【国際特許分類】
G03B 15/05 20060101AFI20160526BHJP
G03B 15/03 20060101ALI20160526BHJP
G03B 7/16 20140101ALI20160526BHJP
【FI】
G03B15/05
G03B15/03 X
G03B7/16
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-220562(P2011-220562)
(22)【出願日】2011年10月5日
(65)【公開番号】特開2013-80136(P2013-80136A)
(43)【公開日】2013年5月2日
【審査請求日】2014年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102186
【氏名又は名称】パナソニック フォト・ライティング 株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆浩
【審査官】
高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−188441(JP,A)
【文献】
特開2006−084608(JP,A)
【文献】
特開2000−089315(JP,A)
【文献】
特開平08−160509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 15/05
G03B 15/03
G03B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を昇圧する昇圧回路と、
前記昇圧回路によって昇圧された電圧により電荷を蓄積するメインコンデンサと、
前記メインコンデンサの蓄積電荷を消費することで発光する閃光放電管と、
前記メインコンデンサと前記閃光放電管との間に接続されたコイルと、
前記コイルに並列接続された第1のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子をオン状態またはオフ状態に設定する切替回路と、
発光モードの通常発光モードとフラット発光モードに応じて前記切替回路を制御する制御回路を有し、
前記制御回路は、
前記発光モードがフラット発光モードの場合には、前記第1のスイッチング素子をオフ状態にして、前記コイルを通じて前記閃光放電管に前記メインコンデンサから電流を流して、前記閃光放電管の発光強度を一定の発光強度に所定の発光時間が経過するまで維持するように前記切替回路を制御し、
前記発光モードが通常発光モードの場合には、前記閃光放電管に電流が流れ始めてから所定の遅延時間が経過するまで前記第1のスイッチング素子をオフ状態にして、前記コイルを通じて前記閃光放電管に前記メインコンデンサから電流を流し、前記遅延時間の経過後に前記第1のスイッチング素子をオン状態にして、前記メインコンデンサから前記第1のスイッチング素子を通じて前記閃光放電管に電流を流すように前記切替回路を制御する、
ストロボ装置。
【請求項2】
前記切替回路が、
前記発光モードに基きオン状態またはオフ状態となる第2のスイッチング素子と、
前記第2のスイッチング素子がオン状態のときに充電電荷を放電して、前記第1のスイッチング素子をオン状態に設定する第1のスイッチング素子用コンデンサと、
を備えることを特徴とする請求項1記載のストロボ装置。
【請求項3】
前記発光モードが通常発光モードのとき、前記閃光放電管に電流が流れ始めてから前記遅延時間が経過するまでの間に前記閃光放電管に流れる電流の最大値が、前記遅延時間の経過後に前記閃光放電管に流れる電流の最大値以上となることを特徴とする
請求項1もしくは2に記載のストロボ装置。
【請求項4】
前記遅延時間が変更可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のストロボ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の閃光発光とフラット(FP)発光とを切り替え可能に構成されているストロボ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ストロボ装置として、Xe(キセノン)管等の閃光放電管にメインコンデンサから発光電流(管電流)を流して閃光を発光させる構成を備えたものが知られている。
【0003】
また、通常の閃光発光とフラット発光とを切り替え可能に構成されているストロボ装置として、比較的大きなインダクタンスを持つ発光電流制限用のコイルと、該コイルに並列に接続されたサイリスタ等のスイッチング素子とが、発光電流供給用のメインコンデンサと閃光放電管との間に接続されて、発光モードが通常発光モードの場合には、発光電流制限用のコイルに並列に接続されたスイッチング素子を経由してメインコンデンサから閃光放電管へ発光電流が流れるように該スイッチング素子をオン状態にし、また、発光モードがフラット発光モードの場合には、発光電流制限用のコイルを経由してメインコンデンサから閃光放電管へ発光電流が流れるように該コイルに並列に接続されたスイッチング素子をオフ状態にし、かつ、閃光放電管を流れる発光電流を高速にスイッチングする構成が知られている。フラット発光時にコイルを使用するのは、発光電流の立ち上がり、立ち下がりを緩やかにして、より均一な発光を得るためである。
図3に、通常発光の閃光波形とフラット発光の閃光波形を示す。
【0004】
一方、マスターストロボ装置とスレーブストロボ装置からなるワイヤレスストロボシステムが知られている。マスターストロボ装置には、発光モードとして光ワイヤレス発光モードが設けられており、光ワイヤレス発光モードでは、光通信用の光パルス信号として、通常の閃光発光の開始直後の一部分である予備発光を用いるのが一般的である。
図4に通常発光の閃光波形と予備発光の閃光波形を示す。
【0005】
スレーブストロボ装置は、マスターストロボ装置が発光した光パルス信号を微分して、マスターストロボ装置からの指令を判定する構成であるのが一般的であるため、予備発光(光パルス信号)は、立ち上がりが急峻である必要がある。したがって、光通信のための閃光発光(予備発光)、ひいては通常の閃光発光には、急峻に立ち上がる発光電流を用いる必要がある。
【0006】
そのため、マスターストロボ装置として、FP発光用のコイルに並列に接続されたスイッチング素子をより迅速にオンにして、FP発光用のコイルの影響を極力小さくするものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
図5は、マスターストロボ装置として利用可能な従来のストロボ装置の構成を示す図である。
【0008】
図5に示すストロボ装置は、電源電池Eからの供給電圧を直流高圧電圧に昇圧する昇圧回路1と、昇圧回路1によって昇圧された電圧により電荷を蓄積するメインコンデンサ2と、メインコンデンサ2の蓄積電荷を消費することで発光する閃光放電管3と、閃光放電管3を流れる発光電流を制御するIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)4と、閃光放電管3を励起するためのトリガ回路5と、フラット発光時における発光電流の増加および減少を緩やかにするためのコイル6と、コイル6に並列に接続して、通常の閃光発光時および予備発光時に発光電流が流れるサイリスタ(第1のスイッチング素子)7と、信号入力端子S1に入力される信号(発光モード信号)に従い、サイリスタ7をオン状態またはオフ状態に設定する切替回路8と、を備える。
【0009】
切替回路8は、信号入力端子S1に入力される発光モード信号に従いオンまたはオフするトライアック(第2のスイッチング素子)9と、トライアック9がオフ状態で充電を行い、オン状態で放電を行うコンデンサ10と、を備える。該コンデンサ10は、コイル6を介してメインコンデンサ2と接続しており、該コンデンサ10の充電は、メインコンデンサ2の充電時に、メインコンデンサ2によって行われる。
【0010】
このストロボ装置は、フラット発光時には、信号入力端子S1に発光モード信号としてLOWレベル信号が入力されて、トライアック9がオフ状態となり、サイリスタ7がオフ状態となる。よって、メインコンデンサ2から供給される発光電流がコイル6を流れる。これにより、閃光放電管3から発光する閃光の波形は、その立ち上がりと立ち下がりが滑らかなものとなる。さらにフラット発光時には、IGBT4のオン状態とオフ状態が繰り返し切り替わる。これにより、閃光波形がフラットになる。
【0011】
一方、通常の閃光発光時には、信号入力端子S1に、発光モード信号としてHIGHレベル信号が入力される。すると、トライアック9が急速にオン状態となり、トリガ回路5がオン状態になるのと同時に、コンデンサ10がサイリスタ7のゲートを介して放電を開始して、サイリスタ7のゲートに電流を供給する。よって、メインコンデンサ2から供給される発光電流は、ほとんどコイル6を流れることなく、サイリスタ7を流れる。これにより、発光電流が、
図6に示すように立ち上がりの鋭いものとなる。
【0012】
このように、従来のストロボ装置によれば、通常の閃光発光の開始時に、直ちにサイリスタ7をオン状態に切り替えることができる。これにより、メインコンデンサ2の放電開始時においても、発光電流は、ほとんどコイル6を通過せず、該コイル6の影響を受けなくなるため、
図6に示すように立ち上がりが鋭い波形となり、その結果、閃光放電管3から発光する閃光も、立ち上がりが急峻な波形となる。
【0013】
したがって、予備発光も、コイル6の影響を受けなくなり、立ち上がりが速い閃光波形となる。よって、スレーブストロボ装置は、マスターストロボ装置からの指令を正確に判定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006―084608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上説明したように、ストロボ装置として、予備発光の閃光波形の立ち上がりが鈍くなるのを防止するために、発光モードに応じてオン状態またはオフ状態となる第2のスイッチング素子と、該第2のスイッチング素子がオン状態のときに、充電電荷を放電して、FP発光用のコイルに並列に接続された第1のスイッチング素子の制御端子に電流を供給するコンデンサと、を備えることにより、通常の閃光発光時に、直ちにサイリスタ7がオン状態に切り替わるように構成したのものが知られている。
【0016】
しかしながら、従来のストロボ装置では、通常の閃光発光時に、閃光放電管3に流れる発光電流が、
図6に示すように急激に立ち上がって最大電流となる。そのため、閃光放電管3の破裂、閃光放電管3の電極の磨耗等が発生して、閃光放電管3の寿命が短くなるという問題があった。
【0017】
本発明は、上記問題点に鑑み、閃光放電管の長寿命化を図りつつ、所定の光量を得ることができるストロボ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のストロボ装置は、電源電圧を昇圧する昇圧回路と、前記昇圧回路によって昇圧された電圧により電荷を蓄積するメインコンデンサと、前記メインコンデンサの蓄積電荷を消費することで発光する閃光放電管と、前記メインコンデンサと前記閃光放電管との間に接続されたコイルと、前記コイルに並列接続された第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子をオン状態またはオフ状態に設定する切替回路と、発光モードの通常発光モードとフラット発光モードに応じて前記切替回路を制御する制御回路を有し、前記制御回路は、前記発光モードがフラット発光モードの場合には、前記第1のスイッチング素子をオフ状態にして、前記コイルを通じて前記閃光放電管に前記メインコンデンサから電流を流して、前記閃光放電管の発光強度を一定の発光強度に所定の発光時間が経過するまで維持するように前記切替回路を制御し、前記発光モードが通常発光モードの場合には、前記閃光放電管に電流が流れ始めてから所定の遅延時間が経過するまで前記第1のスイッチング素子をオフ状態にして、前記コイルを通じて前記閃光放電管に前記メインコンデンサから電流を流し、前記遅延時間の経過後に前記第1のスイッチング素子をオン状態
にして、前記メインコンデンサから前記第1のスイッチング素子を通じて前記閃光放電管に電流を流
すように前記切替回路を制御する、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の他の側面は、前記切替回路が、前記発光モードに基きオン状態またはオフ状態となる第2のスイッチング素子と、前記第2のスイッチング素子がオン状態のときに充電電荷を放電して、前記第1のスイッチング素子をオン状態に設定する第1のスイッチング素子用コンデンサと、を備えることである。
【0020】
また、本発明の他の側面は、前記発光モードが通常発光モードのとき、前記閃光放電管に電流が流れ始めてから前記遅延時間が経過するまでの間に前記閃光放電管に流れる電流の最大値が、前記遅延時間の経過後に前記閃光放電管に流れる電流の最大値以上となることである。
【0021】
また、本発明の他の側面は、前記遅延時間が変更可能であることである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、通常の閃光発光時に、閃光放電管に流れる電流の急激な立ち上がりを防止するとともに、その電流の最大値を抑制することができるので、閃光放電管の破裂や劣化を防止することができる。また、所定の遅延時間後は、電流がコイルを流れないので、コイルによるエネルギーの損失を防止することができる。したがって本発明によれば、閃光放電管の長寿命を図りつつ、所定の光量を得ることができる。さらに、コイルによる発熱を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係るストロボ装置の構成の一例を示す図
【
図2】本発明の実施の形態に係るストロボ装置の通常発光モードにおける発光電流の一例を示す図
【
図6】従来のストロボ装置における通常の閃光発光時の発光電流を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係るストロボ装置について図面を参酌しつつ説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係るストロボ装置の回路構成を示す図である。
【0026】
本実施の形態に係るストロボ装置は、電源である電池Eから供給される電圧(電源電圧)を昇圧する昇圧回路11を備える。昇圧回路11には、電池Eから供給される電圧を、例えば数100Vの直流高電圧に変換するDC/DCコンバータを使用することができる。
【0027】
また、本実施の形態に係るストロボ装置は、昇圧回路11によって昇圧された電圧により電荷を蓄積するメインコンデンサ12を備える。このメインコンデンサ12によって蓄積された電荷が発光エネルギーとなる。
【0028】
また、本実施の形態に係るストロボ装置は、メインコンデンサ12の蓄積電荷を消費することで発光する閃光放電管13を備える。発光手段である閃光放電管13には、例えばXe管を用いることができる。閃光放電管13は、トリガ回路15によって励起される。例えば、Xe管を用いる場合は、トリガ回路15から数1000Vの高電圧が印加されて励起する。
【0029】
また、本実施の形態に係るストロボ装置は、閃光放電管13を流れる発光電流を制御するための発光電流制御回路の一例であるIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)14を備える。IGBT14が導通状態となることで、閃光放電管13に発光電流が流れ、非導通状態となることで、閃光放電管13を流れる発光電流が遮断される。IGBT14は、制御回路21に設けられたゲート駆動回路24によって駆動される。発光電流制御回路としてIGBTを用いることで、発光電流を急激に遮断することが可能となり、発光電流を高速にスイッチングして、フラット発光を得ることが容易となる。
【0030】
また、本実施の形態に係るストロボ装置は、メインコンデンサ12と閃光放電管13との間に接続されたコイル16を備える。このコイル16によって、フラット発光時に発光電流に制限をかけて、発光電流の増加と減少(立ち上がりと立ち下り)を緩やかにでき、フラット発光の波形を均一(フラット)にすることができる。コイル16のインダクタンスは、フラット発光の一様性を維持できる値に設定する。さらに、このコイル16は、通常の閃光発光時の初期に発光電流の立ち上がりを緩やかにし、かつ、発光電流の最大値を抑制することにも使用される。なお、
図1に示すように、ダイオードD1を設けて、発光停止時に、FP発光用のコイル16に蓄積されたエネルギを還流するのが好適である。
【0031】
また、本実施の形態に係るストロボ装置は、コイル16に並列接続された第1のスイッチング素子の一例であるサイリスタ17を備える。このサイリスタ17は、コイル16の両端を順方向に短絡する一方向導通性のスイッチング素子として使用されるものであり、通常の閃光発光時において発光電流のバイパスとなる。
【0032】
また、本実施の形態に係るストロボ装置は、通常発光またはフラット発光の発光モードに対応してサイリスタ17をオン状態(導通状態)またはオフ状態(非導通状態)に設定する切替回路18を備える。この実施の形態では、切替回路18は、制御回路21から信号入力端子S1に入力される信号(発光モード信号)に従い、サイリスタ17をオン状態またはオフ状態に設定する。なお、
図1に示すように、サイリスタ17の誤動作を防止するために、コンデンサC1及び抵抗R1を設けるのが好適である。
【0033】
また、本実施の形態に係るストロボ装置は、発光モードが通常発光モードのとき、閃光放電管13に発光電流が流れ始めてから所定の遅延時間が経過するまでサイリスタ17がオフ状態となって、コイル16を通じて閃光放電管13に発光電流が流れ、所定の遅延時間の経過後にサイリスタ17がオン状態となって、該サイリスタ17を通じて閃光放電管13に発光電流が流れるように切替回路18を制御する制御回路21を備える。
【0034】
この実施の形態では、制御回路21にストロボ用のマイクロコンピュータ22と、遅延タイマ23が設けられている。マイクロコンピュータ22は、所定の遅延時間があらかじめ設定されている遅延タイマ23に発光モード信号を入力する。遅延タイマ23は、マイクロコンピュータ22から入力された発光モード信号を所定の遅延時間だけ遅らせて、切替回路18の信号入力端子S1に入力する。したがって、切替回路18は、マイクロコンピュータ22から発光モード信号が発生してから所定の遅延時間が経過した後に、発光モード信号に従って、サイリスタ17をオン状態またはオフ状態に設定する。なお、遅延タイマ23は、マイクロコンピュータ22の外付け部品として設けてもよいし、マイクロコンピュータ22に内蔵させてもよい。
【0035】
また、この実施の形態では、切替回路18にトライアック19とサイリスタ駆動用のコンデンサ20が設けられている。さらに、
図1に示すように、各素子の保護や調整のために、抵抗R2〜R5及びコンデンサC2、C3を設けるのが好適である。
【0036】
トライアック19は、発光モードに基きオン状態またはオフ状態となる第2のスイッチング素子の一例である。つまり、トライアック19は、信号入力端子S1に入力される発光モード信号に従い、オン状態またはオフ状態になる。
【0037】
また、コンデンサ20は、トライアック19がオン状態のときに充電電荷を放電して、サイリスタ17をオン状態に設定する。このサイリスタ駆動用のコンデンサ20は、コイル16を介してメインコンデンサ12と接続しており、該コンデンサ20の充電は、メインコンデンサ12の充電時に、メインコンデンサ12によって行われる。
【0038】
このように、発光モードに基きオン状態またはオフ状態となる第2のスイッチング素子の一例であるトライアック19と、トライアック19がオン状態のときに充電電荷を放電して、第1のスイッチング素子の一例であるサイリスタ17をオン状態に設定するコンデンサ20と、を備えた切替回路18によれば、サイリスタ17を素早く
点弧させることができる。
【0039】
続いて、本実施の形態に係るストロボ装置の通常発光モードにおける動作の一例について説明する。
【0040】
発光モードが通常発光モードのとき、マイクロコンピュータ22からの指令により、トリガ回路15が閃光放電管13を励起させるのと同時に、マイクロコンピュータ22から、発光モード信号としてHIGHレベル信号が発生する。このとき、ゲート駆動回路24はIGBT14を導通状態に設定している。例えば、ゲート駆動回路24が、閃光放電管13の発光を検出し、その発光強度を示す信号を発生するセンサ(図示せず)を備えて、そのセンサにより閃光放電管13の発光状態をモニタし、閃光放電管13が未発光状態であることを認識することで、IGBT14を導通状態に設定する構成を採用してもよい。
【0041】
IGBT14が導通しているので、メインコンデンサ12は放電を開始する。一方、発光モード信号は、遅延タイマ23を介して所定の遅延時間後に信号入力端子S1に入力されるので、発光電流が流れ始める初期において、発光モード信号は切替回路18に入力されていない。そのため、信号入力端子S1で検出される信号はLOWレベル信号である。すると、トライアック19はオン状態とならず、閃光放電管13を励起した直後の初期において、コンデンサ20は放電を開始できない。したがって、サイリスタ17のゲートに電流を供給できないため、サイリスタ17はオフ状態となり、メインコンデンサ12から供給される発光電流はコイル16を通過することになる。
【0042】
その後、遅延タイマ23に設定されている所定の遅延時間が経過してから、信号入力端子S1にHIGHレベル信号が入力される。すると、トライアック19が急速にオン状態となり、コンデンサ20が直ちにサイリスタ17のゲートを介して放電を開始する。したがって、サイリスタ17のゲートに電流が供給されて、サイリスタ17がオン状態となる。即ち、信号入力端子S1にHIGHレベル信号が入力されると、サイリスタ17が直ちにオン状態に切り替わる。
【0043】
その後、ゲート駆動回路24がIGBT14を非導通状態にして、発光電流を遮断する。例えば、ゲート駆動回路24が、閃光放電管13の発光を検出し、その発光強度を示す信号を発生するセンサ(図示せず)を備えて、そのセンサの出力、すなわち閃光放電管13の発光強度を積算し、その発光積算量がマイクロコンピュータ22によって予め設定された所望値に到達したときに、IGBT14を非導通状態に設定する構成を採用してもよい。この発光電流の遮断によって、通常の閃光発光が停止する。
【0044】
図2に、この実施の形態に係るストロボ装置の通常発光モードにおける発光電流波形の一例を実線で示す。また、比較のために、従来のストロボ装置の通常発光モードにおける発光電流波形を、重ねて破線で示す。
【0045】
図2に示すように、従来のストロボ装置では、通常の閃光発光時に、メインコンデンサの放電開始直後においても発光電流がコイルを通過しないため、発光電流の立ち上がりが極めて急峻になる。立ち上がりピーク後は、メインコンデンサの蓄電量が減少するのに伴い、発光電流も減少していく。これに対し、この実施の形態では、通常の閃光発光の初期において発光電流がコイル16を流れるので、発光電流の立ち上がりは、従来のストロボ装置に比べて緩やかになり、そのピークも、従来のストロボ装置に比べて小さくなる。遅延タイマ23に設定された遅延時間の経過後、発光電流の経路がコイル16からサイリスタ17に切り替わると、再度、発光電流が立ち上がる。遅延時間は、
図2に示すように、発光電流がコイル16を流れる期間に、発光電流のピークが出現するように設定する。発光電流の2回目の立ち上がりピーク後は、メインコンデンサ12の蓄電量が減少するのに伴い、発光電流も減少していく。
【0046】
続いて、本実施の形態に係るストロボ装置のフラット発光モードにおける動作の一例について説明する。
【0047】
発光モードがフラット発光モードのとき、マイクロコンピュータ22からの指令により、トリガ回路15が閃光放電管13を励起させるのと同時に、マイクロコンピュータ22から、発光モード信号としてLOWレベル信号が発生する。このとき、ゲート駆動回路24は、通常発光モードと同様に、IGBT14を導通状態に設定しているので、メインコンデンサ12は放電を開始する。一方、発光モード信号は、遅延タイマ23に入力され、所定の遅延時間後に信号入力端子S1に入力するが、LOWレベル信号であるので、フラット発光モードでは、信号入力端子S1で検出される信号は常にLOWレベル信号である。したがって、トライアック19はオン状態とならず、コンデンサ20は放電を開始できない。よって、サイリスタ17のゲートに電流を供給できないため、サイリスタ17はオフ状態となり、メインコンデンサ12から供給される発光電流は常にコイル16を通過することになる。
【0048】
ゲート駆動回路24は、フラット発光モードの初期においてIGBT14を導通状態にし、閃光放電管13の発光強度が所定値に達すると、非導通状態にする。その結果、閃光放電管13を流れる発光電流が次第に減少して、発光強度が減少し所定値を下回ると、ゲート駆動回路24は、再度、IGBT14を導通状態にする。その結果、閃光放電管13の発光強度が上昇する。このIGBT14の導通状態と非導通状態の繰り返しにより、フラット発光はほぼ一定の発光強度に維持される。このIGBT14の動作を実現するために、例えば、ゲート駆動回路24が、閃光放電管13の発光を検出し、その発光強度を示す信号を発生するセンサ(図示せず)を備えて、そのセンサの出力、すなわち閃光放電管13の発光強度と、マイクロコンピュータ22によって予め設定された所望値とを比較した結果により、IGBT14を導通状態または非導通状態に設定する構成を採用してもよい。
【0049】
ゲート駆動回路24は、所定の発光時間が経過するとIGBT14を非導通状態にして、発光電流を遮断する。例えば、ゲート駆動回路24が、所定の発光時間の経過後にマイクロコンピュータ22から指令を受けて、IGBT14を非導通状態に設定する構成を採用してもよい。この発光電流の遮断によって、フラット発光が停止する。
【0050】
この実施の形態によれば、閃光放電管13に発光電流が流れ始めてから所定の遅延時間が経過するまでサイリスタ17がオフ状態となって、コイル16を通じて閃光放電管13に発光電流が流れるので、発光電流の急激な立ち上がりを防止するとともに、発光電流の最大値を抑制することができる。よって、閃光放電管13の破裂や劣化を防止することができる。また、所定の遅延時間後は、発光電流がコイル16を流れないので、コイル16によるエネルギーの損失を防止することができる。したがって、閃光放電管13の長寿命を図りつつ、所定の光量を得ることができる。さらに、コイル16による発熱を防止することもできる。
【0051】
例えば、閃光放電管13としてXe管を用い、発光電流制限用のコイル16のインダクタンスを53[μH]、直流抵抗値を195[mΩ]に設定し、発光モード信号の遅延時間を660[μs]に設定して、発光電流供給用のメインコンデンサ12を、その電圧が330[V]となるように充電し、フル発光させた場合、発光電流の最大値は166.6[A]となり、光量を示すガイドナンバーは56.06[GN]となった。また、比較のために、
図5に示す従来のストロボ装置の回路において、上記した条件と同様に、閃光放電管3としてXe管を用い、発光電流制限用のコイル6のインダクタンスを53[μH]、直流抵抗値を195[mΩ]に設定し、発光電流供給用のメインコンデンサ2を、その電圧が330[V]となるように充電し、フル発光させた場合、発光電流の最大値は215.0[A]となり、光量を示すガイドナンバーは57.32[GN]となった。以上の結果から、発光電流の最大値を低減しつつ、発光量を維持できることを確認できた。
【0052】
また、発光モードが通常発光モードのときに、サイリスタ17がオフ状態となる初期の期間を決定する遅延時間は、閃光放電管13に発光電流が流れ始めてから当該遅延時間が経過するまでの間に閃光放電管13に流れる発光電流の最大値(1回目の立ち上がりピーク)が、当該遅延時間の経過後に閃光放電管13に流れる電流の最大値(2回目の立ち上がりピーク)以上となるように設定するのが好適である。このように遅延時間を設定すれば、サイリスタ17がオフ状態となって発光電流がコイル16を流れる初期の期間に、発光電流全体の最大値として、コイル16によって抑制された発光電流のピークが出現するので、閃光放電管13の寿命が短くなるのを、より防止できるようになる。また、遅延時間が経過した後の発光電流の最大値(2回目の立ち上がりピーク)が、1回目の立ち上がりピーク(発光電流全体の最大値)に近い値となるように遅延時間を設定すれば、発光電流がコイル16を流れる時間を短くできるので、コイル16での損失を最小限に抑えることができ、発光量ロスを低減することができる。
【0053】
また、発光モード信号を遅延させる遅延時間を変更可能な構成とするのが好適である。この実施の形態では、例えば、マイクロコンピュータ22によって遅延タイマ23に遅延時間を任意に設定できる構成としてもよい。このようにすれば、遅延時間を0msに設定することで、メインコンデンサ12の放電開始時においても、発光電流が、ほとんどコイル16を通過せず、コイル16によって発光電流の増加が緩やかになることの影響を受けなくなるため、立ち上がりが速い閃光波形を得ることができる。したがって、発光モードを、通常の閃光発光の開始直後の一部分である予備発光を用いる光ワイヤレス発光モードへ切り替える際に、遅延時間を0msに設定することで、予備発光の閃光波形をその立ち上がりが急峻な波形にすることができ、スレーブストロボ装置が、マスターストロボ装置からの指令を正確に判定することが可能となる。また、遅延時間を0msに設定するだけで、急峻な立ち上がりを必要とする光通信用の閃光発光を得ることができるので、光ワイヤレス発光モードへの切り替えが容易となる。
【0054】
以上説明したように、この実施の形態によれば、通常発光モードの初期の期間に、コイル16を通じて閃光放電管13に発光電流を流し、発光の途中で、発光電流がコイル16を迂回してサイリスタ17を流れるようにすることで、閃光放電管13の長寿命を図りつつ、所定の光量を得ることができる。
【0055】
また、発光電流がサイリスタ17を流れ始めるタイミングを、発光電流の2回目のピークが、1回目のピークを超えないタイミングとすることで、閃光放電管13の寿命が短くなるのを、より防止できるようになる。
【0056】
また、発光電流がサイリスタ17を流れ始めるタイミングを、発光電流の2回目のピークが1回目のピークと同程度になるように設定することで、コイル16での損失を最小限に抑えることができるようになる。
【0057】
なお、本発明に係るストロボ装置は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では第1のスイッチング素子としてサイリスタを、第2のスイッチング素子としてトライアックを採用しているが、これらに限定されず、必要に応じて、これらに適したあらゆるスイッチング素子を採用することができる。例えば、第2スイッチング素子としては、トライアックの他にも双方向性の各種スイッチング素子を採用できる。
【0058】
以上説明した本実施の形態に係るストロボ装置は、フォーカルプレーンシャッターを備えるカメラでのストロボ撮影で使用するのが好適である。また、スレーブストロボ装置との間でワイヤレスストロボシステムを構築するのに好適である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るストロボ装置は、閃光放電管の長寿命化を図りつつ、所定の光量を得ることができ、ワイヤレスストロボシステムにおけるマスターストロボ装置への適用が特に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1、11 昇圧回路
2、12 メインコンデンサ
3、13 閃光放電管
4、14 IGBT
5、15 トリガ回路
6、16 コイル
7、17 サイリスタ
8、18 切替回路
9、19 トライアック
10、20 コンデンサ
21 制御回路
22 マイクロコンピュータ
23 遅延タイマ
24 ゲート駆動回路