(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の速さ操縦の前記パラメータを判定することは、前記ホールドなし減速操縦が前記潜在的なLOSを回避する時に前記潜在的なLOSを回避する最小の減速度を判定することをさらに含む、請求項5に記載の飛行管理システム。
前記第2の速さ操縦の前記パラメータを判定することは、前記ホールドなし減速操縦が前記潜在的なLOSを回避しない時に前記潜在的なLOSを回避する最小のホールド時間を判定することをさらに含む、請求項5に記載の飛行管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
管制間隔の喪失を回避するために、各航空機の飛行経路を記述する変数(たとえば、機首方位、速さ、高度、その他)など、多数の変数を考慮することができる。時宜を得た効率的な形で(すなわち、いずれかの航空機が過剰な燃料を費やすことも不必要な操縦を実行することもなく、両方の航空機が期待される到着時刻のできる限り近くにその目的地に到着することを可能にする形で)管制間隔の喪失を回避することが望ましい可能性がある。効率および時宜のよさが考慮される時に、管制間隔の喪失の回避は、さらにより複雑な多変量問題になる可能性がある。本明細書で開示される実施形態は、この複雑な多変量問題をより効率的な一連の単一変数問題に分解する。たとえば、この問題を、1つまたは複数の標準的な零発見問題としてモデル化することができ、「フォールスポジション」問題(挟みうち法)を使用して、副問題を解くことができる。本明細書で開示される問題の分解は、優れた処理時間を提供することができ、航空機上でのリアルタイム処理によく適する可能性がある。
【0015】
本明細書で開示される特定の実施形態は、不必要な煩わしい操縦を実行せずに管制間隔の喪失状態を回避することができる。たとえば、管制間隔の喪失が将来の時点に発生するかどうかを判定するために、各航空機が将来のその時点にどこにあるのかの予測を行うことができる。既知の制御の下の第1の航空機(たとえば、本明細書で「オウンシップ」とも呼ばれる、管制間隔の喪失判定がオンボードで行われる航空機)が将来の時点でどこにあるのかの予測は、不確実性の対象である場合がある。たとえば、気象(たとえば、変化する横風または突風)などの外部状態が、予測にある不確実性を与える場合がある。未知のまたは独立の制御の下の航空機(本明細書では、「侵入機」とも呼ばれる)が将来の時点にどこにあるのかの予測は、さらにより多くの不確実性の対象になる可能性がある。たとえば、侵入機の経路が、その意図が未知である可能性があるパイロットの自由裁量での変更の対象である場合がある。さらに、オウンシップが不必要な操縦を実行することは、望ましくない可能性がある。たとえば、不必要な操縦の実行は、操縦がオウンシップに見かけの上では誤ったまたは予測不能な形で振る舞わせる可能性があるので、リモートパイロットに煩わしいと考えられる場合があり、燃料を浪費する可能性があり、遅れを引き起こす可能性があり、安全性問題を引き起こす可能性がある。不必要な操縦を実行する尤度または頻度を下げるために、操縦を、管制間隔の喪失が発生すると予測される時刻のできる限り近くに実行することができる。この形で操縦の実行を延期することは、操縦を回避できまたは変更できるようにするために、予測のいくつかの不確実性を解決することを可能にする場合がある。
【0016】
特定の実施形態は、速度低下操縦システムを含む。速度低下操縦システムは、オウンシップの速さを変更することによって管制間隔の喪失を回避することができる。特定の実施形態では、速度低下操縦システムは、TCASまたは横操縦システムなどの他の回避操縦生成システムを置換するのではなく補足することができる。たとえば、速度低下操縦システムを、他の回避操縦生成システムと一体化し、またはこれに結合することができる。例示のために、速度低下操縦システムを、他の感知および回避システムに結合することができ、この2つのシステムは、異なる状況について適切な回避操縦を提供するために競争することができる。TCASは、管制間隔を提供するために高度変更を使用することができる。横操縦システムは、管制間隔を提供するために方向変更を使用することができる。速度低下操縦システムは、速さ変更を使用して管制間隔を提供する。いくつかの状況で、速さ操縦は、管制間隔の喪失を回避するのに十分ではない場合があり、その場合には、TCASシステムが、管制間隔の喪失を回避するために高度の変更操縦を提供することができ、あるいは、横操縦システムが、管制間隔の喪失を回避するために方向変更を提供することができる。
【0017】
横操縦システムは、地面基準旋回(ground reference turn)ではなく慣性基準旋回(inertial referenced turn)を作成するために風ベクトルを利用することができる。慣性基準旋回を使用することは、指令された経路または飛行経路に従うフライトコントローラの能力を改善することができる。たとえば、地面基準旋回を、所望の地上航跡に従うためにバンク角を変更することによって実行することができる。風および旋回半径に応じて、バンク角が、航空機の実行能力の外になる場合がある。したがって、航空機は、地面基準旋回に従うことができない場合があり、これは、管制間隔の喪失につながる可能性がある。
【0018】
次の用語が、本明細書で使用される。これらの用語は、限定であることを意図されているのではなく、単に、管制間隔の喪失を回避する開示されるシステムおよび方法の説明を単純にするために使用される。
【0019】
オウンシップ 管制間隔の喪失を回避するために操縦を実行しなければならないビークル(たとえば、航空機)を指す。すなわち、オウンシップは、第2のビークルに進路権を与えつつあるビークルである。特定の実施形態では、オウンシップは、オウンシップ上での自動化された管制間隔の喪失回避を可能にする、管制間隔の喪失を回避するためのオンボードシステムをホスティングすることができる。
【0020】
侵入機 オウンシップが回避しつつあるビークルを指す。
【0021】
衝突 所望のミスディスタンスSに基づくオウンシップと侵入機との間の予測された管制間隔の喪失(LOS)を指す。
【0022】
管制間隔領域 所望のミスディスタンスSの半分である半径を有する円形の領域を指す。
【0023】
CPA(最接近点) オウンシップと侵入機との間の距離がその最小値である位置を指す。CPAを、場所、距離、時間、またはその任意の組合せとして指定することができる。CPAは、管制間隔の喪失の後に発生する可能性がある。
【0024】
解決 実行された場合に、所望のミスディスタンスを維持させる操縦を指す。
【0025】
操縦開始時刻(または逸脱時刻) 解決を実施するために操縦が実行を開始する時点を指す。例示のために、ビークルは、解決を実行し始めるまでは、その現在の意図を変更しない(すなわち、逸脱しない)。解決が実行され始める時刻が、操縦開始時刻である。
【0026】
不必要な操縦 管制間隔の喪失を回避するために要求されるのではない(たとえば、管制間隔の喪失をずれなしで回避できた時)オウンシップによって実行される操縦(すなわち、オウンシップの割り当てられた速さまたは経路からのずれ)を指す。
【0027】
下で開示される式は、2次元デカルト座標系を使用し、この2次元デカルト座標系は、オウンシップと侵入機との両方に共通する局所接平面である。オウンシップおよび侵入機の飛行経路が、十分な垂直管制間隔がない期間にわたって共通の座標系に射影されると仮定する。FAA進路権ルールは、ビークルが降下または上昇しつつある時の特殊な命令を含み、感知および回避システム内のより高いレベルの機能は、降下ルールおよび上昇ルールに従うプロセスを呼び出すべき時を判定することができる。したがって、いくつかの実施形態(たとえば、TCASを含む実施形態)で高度変更を使用することができるが、高度変更操縦の判定は、詳細には説明されない。
【0028】
図1は、回避操縦システム128を含む航空機100のブロック図である。特定の実施形態では、航空機100を、無人航空機(UAV)とすることができる。回避操縦システム(AMS)128は、速さ回避操縦システム、横回避操縦システム、その両方を含むことができる。
【0029】
航空機100は、飛行管理システム(FMS)102をも含むことができる。FMS 102は、空対空通信システム104、空対地通信システム106、受動トラフィックセンサ108(たとえば、カメラまたは光センサ)、能動トラフィックセンサ110(たとえば、レーダー)、またはその任意の組合せを介して情報を受信することができる。空対空通信システム104は、Automatic Dependent Surveillance − Broadcast(ADS−B)システム118を含むことができる。ADS−B 118は、航空機の位置およびおそらく他の情報を地上局または他の航空機に周期的にまたは時折ブロードキャストすることができる。空対空通信システム104は、航空機衝突防止装置(TCAS)122をも含むことができる。TCAS 122は、不安全な管制間隔を予測することができ、警告または航空機100の高度を変更するための回避命令のいずれかを生成することができる。
【0030】
FMS 102は、航空機100の状態に関する情報をビークル状態データ114として受け取ることができる。ビークル状態データ114は、航空機100の位置、航空機100の速さ、航空機100の機首方位または進路、航空機100の高度、航空機100上のシステムに関する情報、またはその任意の組合せなどの情報を含むことができる。FMS 102は、空対空通信システム104、受動トラフィックセンサ108、能動トラフィックセンサ110、空対地通信システム106、ビークル状態データ114、またはその任意の組合せから受け取った情報を使用して、航空機100のフライトコントロール112に送るべきコマンドを判定することができる。たとえば、FMS 102が、潜在的な管制間隔の喪失を検出する時に、FMS 102は、回避操縦(たとえば、速さ回避操縦または横回避操縦)を実行するコマンドを判定することができ、そのコマンドをフライトコントロール112に送ることができる。
【0031】
FMS 102は、データ融合マネージャ116を含むことができる。データ融合マネージャ116は、ビークル状態データ114、センサ108および110からのデータ、ならびに空対空通信システム104からのデータを受け取ることができる。データ融合マネージャ116は、データを処理して、航空機100に対応するデータのセットと侵入機に対応するデータのセットとを生成することができる。すなわち、データ融合マネージャ116は、オウンシップの状態を表す状態データの第1セットと、侵入機の状態を表す状態データの第2セットとを出力することができる。状態データの第1セットおよび第2セットを、回避マネージャ124に供給することができる。
【0032】
回避マネージャ124は、状態データを処理して、潜在的な管制間隔の喪失を識別することができる。潜在的な管制間隔の喪失が識別される時に、回避マネージャ124は、AMS 128を使用して、管制間隔の喪失を回避するために実行できる操縦を判定することができる。その操縦を実行すべき時刻に達する時に、回避マネージャ124は、回避コマンドを代理パイロット(surrogate pilot)126に送ることができる。特定の実施形態では、回避マネージャ124は、AMS 128を実施するためにソフトウェアを実行するコンピュータシステムである。別の特定の実施形態では、回避マネージャ124は、AMS 128を実施するように適合された、特定用途向け集積回路などの回路網または他のハードウェアを含む。
【0033】
AMS 128は、横回避操縦システム(LAMS)、速さ回避操縦システム(SAMS)、またはその両方を含むことができる。AMS 128は、少なくとも2つのモードで動作することができる。たとえば、第1のモードでは、回避コマンドを、AMS 128から代理パイロット126を介してフライトディレクタ/オートパイロット130に送ることができる。フライトディレクタ/オートパイロット130は、管制間隔の喪失を回避する操縦を航空機100に実行させる命令をフライトコンピュータ132に発行することができる。したがって、第1のモードでは、航空機100は、予測された管制間隔の喪失を回避するために操縦を自動的に(すなわち、人間の介入なしで)実行することができる。
【0034】
第2のモードでは、AMS 128は、操縦を実施しなければならないことをリモートパイロット(たとえば、遠隔制御によってビークルを飛行させつつある地上のパイロット)に助言するためにメッセージを送信することができる。リモートパイロットは、その操縦を受け入れ、または拒否することができるものとすることができる。第2のモードでは、AMS 128は、操縦情報を代理パイロット126に送ることができる。代理パイロット126は、空対地通信システム106のリモートパイロットデータリンク134を介してリモートパイロットに操縦情報を送信することができる。その後、代理パイロット126は、リモートパイロットデータリンク134を介してリモートパイロットから操縦の受入または拒否を示すメッセージを受信することができる。リモートパイロットが操縦を受け入れる場合には、操縦情報を実行のためにフライトディレクタ/オートパイロット130に転送することができる。リモートパイロットが操縦を拒否する場合には、操縦情報をフライトディレクタ/オートパイロット130に転送しないものとすることができる。操縦の受入または拒否を示すメッセージが受信されない場合には、操縦情報を実行のためにフライトディレクタ/オートパイロット130に送ることができ、あるいは、操縦情報をリモートパイロットに送信するもう1つの試みを行うことができる。したがって、第2のモードでは、航空機100は、操縦がリモートパイロットによって拒否されない時に、予測された管制間隔の喪失を回避するために操縦を自動的に実行することができる。すなわち、操縦を、人間がその操縦をオーバーライドするために介入しない時に自動的に実行することができる。特定の実施形態では、AMS 128は、UAVとすることができる航空機100が1つまたは複数の他の航空機との管制間隔の喪失を回避することを可能にする。
【0035】
横操縦
図2を参照すると、航空機100の横操縦モデルが示されている。
図2の横操縦モデルは、管制間隔の喪失を回避するための横操縦を判定するために
図1のAMS 128によって実行できる計算を示す。
図2の横操縦モデルは、8つの点によって接続された7つの線分を含む。たとえば、線分は、4つの弧または旋回205〜208と3つの直線航程202〜204とを含む。各弧は、同一の旋回半径を使用することができる。たとえば、旋回半径を、航空機100の所望のバンク角および対気速度に基づいて決定することができる。旋回半径209すなわちrを、r=V
2/(g*tan(Φ))として計算することができ、ここで、r=メートル単位の旋回半径209、V=メートル/秒単位の対気速度、g=メートル/秒
2単位の重力、Φ=ラジアン単位の所望のバンク角であり、記号*は乗算を表す。
【0036】
制御変数のセットを使用して、横操縦を生成しまたは定義することができる。たとえば、横操縦の制御変数は、[θ
a,θ
c,m,p,q,d]を含むことができ、ここで、θ
aは、第1旋回205および第2旋回206の持続時間または角度値(たとえば、ラジアン単位または度単位)であり、θ
cは、第3旋回207および第4旋回208の持続時間または角度値であり、mは、第1航程202の慣性長(たとえば、メートル単位)であり、pは、第2航程203の慣性長(たとえば、メートル単位)であり、qは、初期位置からの逸脱時間(たとえば、秒単位)であり、dまたはd
bankは、初期バンク方向(たとえば、左または右)である。
【0037】
特定の実施形態では、第1および第2旋回205および206は、同一の持続時間を有し、その結果、第2航程203は、最初の経路またはベクトル201に平行になる。さらに、第3および第4の旋回を、同一の持続時間を有するものとすることができる。最後の航程204は、操縦が最初のベクトル201と交差するようにセットされる、従属値とすることができる。すなわち、最後の航程204の長さを、第4旋回208が実行された後に航空機100がもう一度最初の経路201に沿って飛んでいるようになるように選択することができる。
【0038】
制御変数の範囲を、順方向の運動だけが発生するように確立することができる。開始時刻を、管制間隔の喪失の予測された時刻までに制限することができる。制御変数または他のパラメータに関する他の制限を、構成可能とすることができる。特定の実施形態では、次の制限を制御変数に課すことができる。θ
aは、[0,90]度対地進路(ground course)変更の範囲を有することができ、θ
cは、[0,90]度対地進路変更の範囲を有することができ、mは、[0,M]メートルの範囲を有することができ、Mは、構成可能な最大オフパス(off−path)距離(すなわち、最初の経路201と第2航程203との間の最大横距離)であり、pは、[0,P]メートルの範囲を有することができ、Pは、構成可能な最大通過距離であり、qは、[0,L]秒の範囲を有することができ、Lは、管制間隔の喪失の時刻であり、d
bankは、−1または+1の値を有することができる(−1は、左バンクに対応し、+1は、右バンクに対応する)。バンク方向d
bankは、事前に決定され、制御変数として除去されるものとすることができ、これは、FAA進路権ルールのいくつかの遵守を容易にすることができる。たとえば、バンク方向d
bankを、右旋回だけを許容するように事前に決定することができる。
【0039】
制御変数[θ
a,θ
c,m,p,q,d
bank]を使用して、
図2に示された横操縦を定義する飛行経路を生成することができる。たとえば、標準的な運動方程式を使用することができる。本開示を単純にするために、飛行経路を決定するための詳細な計算を、下の飛行経路計算セクションで提供する。飛行経路を計算するのに使用できる式の要約(制御変数および航空機100の初期位置P、風ベクトル
、慣性速さs、慣性進路i、ならびに旋回半径rを与えられて)を、表1で提供する。ラジアンを使用して、表1の計算を実行することができるが、読者の便宜のために、度が示されている。表1の旋回中心計算の符号の相違は、まず右に旋回すること、左に2回旋回すること、およびもう一度右に旋回すること(すなわち、
図2の旋回205〜208)に対応する。これらの計算は、最初の旋回が左である時に異なる符号を有するはずである。
【0041】
第3航程204の持続時間を、第3旋回207の出口位置に依存するものとすることができる。第3航程204の持続時間を、操縦の終りに航空機100が最初のベクトル201にインターセプトし、これに戻るようにするために決定することができる。インターセプトは、飛行経路計算セクションの「風内での標的ベクトルとのインターセプト」という題名の部分で説明されているように計算することができる。θ
cの所与の値を使用する時には、第3旋回207と第4旋回208との両方を行うのに十分な余地がない場合がある。たとえば、第4旋回208の終りが、最初のベクトル201を「オーバーシュート」する可能性がある。この場合には、方法「平行ベクトルとのインターセプトを見つける」(やはり飛行経路計算セクションで説明される)を使用して、インターセプトを見つけることができる。
【0042】
特定の実施形態では、
図1のAMS 128は、2つのベクトルの最接近点(CPA)の時刻tをも計算する。たとえば、AMS 128は、次の式を使用することができ
【0043】
【数1】
ここで、x1は、オウンシップ(たとえば、
図2の航空機100)の初期x位置(たとえば、x−y平面内のx座標)であり、y1は、オウンシップの初期y(たとえば、x−y平面内のy座標)位置であり、vx1は、オウンシップの初期x速度であり、vy1は、オウンシップの初期y速度であり、x2は、侵入機(
図2には図示せず)の初期x位置であり、y2は、侵入機の初期y位置であり、vx2は、侵入機の初期x速度であり、vy2は、侵入機の初期y速度である。
【0044】
CPAの時刻tは、CPAが既に発生済みである(たとえば、CPAが過去にあり、オウンシップおよび侵入機が管制間隔を得つつある)時に、負になる。この場合には、初期位置での距離を、CPAと解釈することができる。有限の時間ベクトル(たとえば、旋回を通るオウンシップの経路を近似するのに使用されるベクトル)について、時刻tは、そのベクトルの終点の後(たとえば、ベクトルが、旋回を通るオウンシップの経路を近似するのに使用され終えた後)に発生し得る。この場合に、最短持続時間が、CPAの時刻を見つけるのに使用される。そうでない場合に、上の式で判定された時刻tを、CPAの時刻を定義するのに使用することができる。
【0045】
オウンシップおよび侵入機の位置を、CPAまで外挿することができ、オウンシップと侵入機との間の距離を、CPAで計算することができる。計算された距離は、オウンシップと侵入機との間で発生すると期待される最も近い距離である。計算された距離が所望の管制間隔距離Sより短い場合には、管制間隔の喪失(LOS)が発生すると予測される。
【0046】
一連の旋回および航程のCPAを計算する時には、上の手順を繰り返すことができ、最短距離を見つけることができる。検索時間枠を使用して、計算を実施することができる。たとえば、検索は、異なる時間枠を使用して実行され、各検索は、検索枠の開始時刻から検索枠の終了時刻まで計算を実行することができる。
【0047】
侵入機に対する相対的な操縦のCPAを計算するために、横操縦を使用して、旋回(たとえば、
図2の旋回205〜208)を通る一連の線形近似を作成することができる。たとえば、飛行経路計算セクションの式(3)〜(10)を使用して、旋回を通ってステップすることができる。連続する点および1つのステップ時間(すなわち、各ステップの持続時間)を使用して、対地ベクトル(ground vector)を作成することができる。この方法の近似誤差は、ステップのサイズに正比例する可能性がある。たとえば、誤差を、r*[1−cos(θ/2)]とすることができ、ここで、rは、半径であり、θは、ステップ角度値である。対応する対地枠誤差(ground frame error)が、風に伴って増加する可能性がある。対地ベクトルのシーケンスを使用して、上で説明したCPA計算技法を使用して横操縦と侵入機の対地ベクトルとの間の最小距離を見つけることができる。
【0048】
したがって、
図1のAMS 128は、複数の変数によって制約された最適化問題をより効率的な一連の単一変数問題にばらばらにする分解を使用することができる。たとえば、制御変数のセットを、検索が特定の制御変数について実行される間に一定にホールドすることができる。各検索を、標準的な零/根発見問題として行うことができる。フォールスポジション法を使用して、標準的な零/根発見問題を解くことができる。フォールスポジション法は、問題が有界である場合に収束し、したがって、問題分解は、検索に関する界を作成するように設計された。この文脈で、「有界」は、単一変数関数f(x)とxの2つの初期値x0およびx1とについて、解f(x0)および解f(x1)が反対の極性を有することを意味する。すなわち、f(x)は、f(x0)とf(x1)との間で0値を有する。上で説明したプロセスの関数f(x)は、最小CPA距離から所望のミスディスタンスSを引いたものである。この関数は、最小CPA距離と所望のミスディスタンスとが等しい時に0であり、余分な管制距離がある時(すなわち、最小CPA距離が所望のミスディスタンスより大きい時)に正であり、LOSがある時(すなわち、最小CPA距離が所望のミスディスタンスより小さい時)に負である。
【0049】
上で説明した計算を、θ
aと等しくなるようにθ
cをセットすることによって単純化することができる。さらなる単純化を、横操縦の初期旋回として特定の方向の旋回だけを使用することによって達成することができる。たとえば、初期旋回を右旋回に制約することができる。θ
aと等しくなるようにθ
cをセットし、初期旋回が特定の方向であることを要求することは、制御変数の個数を4つに減らす(θ
a、m、p、q)。計算を実行するためには、θ
aまたはmの一方(両方ではなく)が必要である。したがって、3つのフォールスポジション検索だけを実行して、完全な操縦を見つけることができる。初期テストを使用して、横操縦の制約を判定することができる。たとえば、初期テストで、
図2の第1および第2の旋回205および206の角距離に、最大値(たとえば90°)をセットすることができ、第1航程202の長さまたは持続時間に、最小値(0メートル)をセットすることができる。初期テストは、それでもLOSがあるまたはないのいずれかを見つける。初期テストでLOSがない時には、第1航程202を延ばすことが、LOSを回避するために必要ではない余分な管制間隔距離をもたらすだけなので、第1航程202の長さを延ばす理由がない可能性がある。したがって、第1航程202を、初期テストに使用される最小値に制約することができる。この場合に、第1および第2の旋回205および206の角距離を、移動される距離を減らすために最大値未満に(たとえば、90°未満に)減らすことができる。初期テストでLOSがある時には、第1および第2の旋回205および206の角距離を、最大値(たとえば、90°)のままにすることができ、θ
aの検索は、不要である。この場合に、第1航程202の長さを増やして、管制間隔を達成する(すなわち、LOSを回避する)ことができる。したがって、mの検索を実行することができる。
【0050】
図3は、横回避操縦を解く方法の特定の実施形態の流れ図である。
図3では、フォールスポジション検索が、314、316、318、および324で行われる。管制間隔距離S未満の最接近点(CPA)が識別される時に、302で、LOSを予測する。304で、検索を準備する。検索の準備は、次のように変数をセットすることを含むことができる。
【0052】
各変数の最大値および最小値は、たとえばミッション仕様に基づいて、オウンシップの特性に基づいて、または他の判断基準に基づいて、事前に決定することができる。特定の実施形態では、qの最小値を0とすることができ(すなわち、q
min=0秒)、θ
aの最大値を90度とすることができる(すなわちθ
a,max=90度)。これらの値は、即座に始まり、最大の第1旋回205を行う操縦を指定する。これらの値は、最初の経路201に平行な操縦の第2航跡203の持続時間pを延ばしもする。
【0053】
ある種の状況では、LOSを回避するための横操縦解が存在しないことが可能である(たとえば、LOSが切迫しすぎている時)。横操縦解が存在するかどうかを判定するために、306で、ミスディスタンスを、第1旋回205の初めから第2旋回206を通ってテストする。306でLOSがある時には、横操縦解は存在せず、308で、この方法は終了する。横操縦解が存在しない時には、速さの変更または高度の変更など、LOSに対する別の解を判定することができる。
【0054】
306でLOSがない時には、LOSを回避するための横操縦を判定するために1つまたは複数の検索を実行することができる。310で、検索される変数を選択するために判定を行うことができる。たとえば、上で説明した初期テストを、第1旋回205の最大値(すなわち、最大第1旋回持続時間)および第1航程202の最小持続時間(すなわち、最小第1航程持続時間)を用いてLOSが発生するかどうかを判定することによって、実行することができる。310でLOSがない時には、最大の第1および第2の旋回が十分であり、316で、検索を実行して、最小の第1航程持続時間を用いてLOSを回避する減らされた旋回持続時間を見つけることができる。310でLOSがある時には、312で、最大第1航程持続時間および最大第1旋回持続時間を用いてLOSがあるかどうかの判定を行うことができる。最大第1航程持続時間および最大第1旋回持続時間がLOSをもたらす時には、横操縦解はなく、この方法は308で終了する。最大第1航程持続時間および最大第1旋回持続時間がLOSをもたらさない時には、314で検索を実行して、最大第1旋回持続時間を使用してLOSをもたらさない、最大第1航程持続時間未満の第1航程持続時間を見つける。
【0055】
第1航程持続時間の検索314が実行されるのか第1旋回持続時間の検索316が実行されるのかにかかわらず、検索枠は、平行航程(すなわち、
図2の第2航程203)の終了時刻に終わる。フォールスポジション法が、CPAが所望のミスディスタンスと等しくなることを引き起こす第1航程持続時間または第1旋回持続時間を見つけるのに使用される。フォールスポジション法の境界となる値は、検索される変数(たとえば、第1航程持続時間または第1旋回持続時間)の最小値および最大値である。例示のために、第1旋回持続時間の検索316について、境界となる値は、最小持続時間旋回および最大持続時間旋回である。第1旋回持続時間に最小値(たとえば、0)がセットされた状態で、
図2に示された操縦は、膨らみがなくなり、経路は、単純に最初の経路201である。最初の経路201は、LOSを有する(302で識別されたように)ので、0の旋回持続時間は、LOSをもたらし、f(0)は、負の値を有する(すなわち、最小CPA距離は、所望のミスディスタンスより小さい)。最大旋回持続時間は、LOSをもたらさず(310で判定されたように)、f(max)は、正の値を有する(すなわち、最小CPA距離は、所望のミスディスタンスより大きい)。したがって、関数f(x)は、有界である。
【0056】
第1航程持続時間検索の検索314について、境界となる値は、最小航程持続時間および最大航程持続時間である。最小航程持続時間を使用すると、それでもLOSがあり(310で判定されるように)、f(min)は、負である。最大航程持続時間を使用すると、LOSはなく(312で判定されるように)、f(max)は、正の値を有する。したがって、関数f(x)は、有界である。
【0057】
図4は、横操縦解がない潜在的なケースを示す図である。
図4では、管制間隔の喪失が、遭遇1で予測される(たとえば、「最初のLOS」)。さらに、第1航程の最大持続時間を使用して横操縦を実行することも、遭遇2でLOS(すなわち、「第1航程上のLOS」)を引き起こす。
図4に示された状況を、
図3の312で実行される判断によって識別することができる。すなわち、312での判断が、第1航程持続時間が最大値を有し、第1旋回持続時間が最大値を有する時にLOSが生じることである時には、関数f(x)は、非有界であり、このプロセスは、横解がないので308で終了する。
【0058】
318で、もう1つの検索を行って、操縦開始時刻すなわち逸脱時刻qを見つける。フォールスポジション法を使用して、この検索を実行することができる。フォールスポジション検索の検索枠は、現在時刻で始まることができる。検索枠は、第2旋回206の終了時刻に終わることができる。第1航程持続時間および第1旋回持続時間は、平行航程(すなわち、
図2の第2航程203)のCPAが所望のミスディスタンスと等しくなるように、既に判定されている。したがって、平行航程が318での検索のCPA計算に含まれる場合には、関数f(x)は、
図5Aの概念的なグラフに示されているように検索をわかりにくくする大きい0領域(すなわち、CPAが所望のミスディスタンスと等しい領域)を有する。この0領域は、フォールスポジション検索に、逸脱時刻の任意の値を見つけさせる可能性がある。したがって、平行航程は、この検索から除外され、
図5Bに示された概念的なグラフに示された関数をもたらす。
【0059】
逸脱時刻の検索318が実行される時に、LOSを回避する操縦の旋回および航程の値は、既に識別されている。逸脱時刻の検索318は、操縦の開始時刻を最大にするため(すなわち、不確実性を解決することを可能にするためにできる限り長く操縦を遅らすため)のものである。より前の検索(すなわち、第1航程持続時間の検索314または第1旋回持続時間の検索316)は、最小開始時刻値を使用した。最小開始時刻値を使用するとLOSがなかったので、関数f(min)は、正の値を有する。最大開始時刻は、最初のLOS(302で識別された)が始まる時である。したがって、関数f(max)は、負の値を有し、この問題は、有界である。
【0060】
320では、最小平行航程持続時間がLOSを引き起こすかどうかの判定を行うことができる。最小平行航程持続時間がLOSを引き起こさない場合には、その最小平行航程持続時間が使用され、この方法は、解が見つかっているので326で終了する。
図6は、最小持続時間の平行航程(すなわち、平行航程なし)がLOSをもたらさない潜在的なケースを示す図である。すなわち、旋回は、単独で解決を提供し、これによって、航空機100(すなわち、オウンシップ)は、第2の航空機600(たとえば、侵入機)を回避する。この場合に、平行航程の長さの検索(324で実行される検索など)は、非有界になるはずである。しかし、この解決は、衝突なしであり、したがって、このプロセスは、326で単純に成功して終了する。平行航程は、主に「通過」に使用される可能性があり、したがって、しばしば、使用されない可能性がある。
【0061】
平行航程が、通過に使用される時には、最大平行航程持続時間が、関数を有界にするためにLOSを解決しなければならない。
図3の322では、平行航程の持続時間が最大値を有する時にLOSがあるかどうかの判定を行うことができる。平行航程持続時間の最大値を使用してLOSがある時には、関数f(max)は、負の値を有する。したがって、この関数は非有界であり、この手続きは、308で終了する。
【0062】
平行航程持続時間の最大値を使用してLOSがない時には、関数f(max)は正の値を有し、この関数は有界である。この場合には、この方法は324に進み、ここで、検索を実行して、平行航程の持続時間を見つける。フォールスポジション法を使用して、平行航程の持続時間の検索324を実行することができる。検索枠は、第3旋回の初めに開始することができる。上で説明したように、平行航程のCPAは、所望のミスディスタンスと等しい。平行航程がCPA計算に含まれる場合には、関数は、
図5Aの概念的なグラフに示されているように検索を隠す可能性がある大きい0領域を有する可能性がある。検索枠の終りは、将来の穏当に離れた時刻でなければならない。平行航程持続時間が識別される時に、このプロセスは、326で成功して終了する。
【0063】
図7は、フォールスポジション検索法の特定の実施形態の流れ図である。
図7のフォールスポジション検索法を、
図3の検索314、316、318、および324のうちの1つまたは複数に使用することができる。702で、所与の決定変数、検索開始時刻、および検索終了時刻を用いて検索関数を呼び出す。検索開始時刻および検索終了時刻は、検索の検索枠の境界を定める。704で、決定変数の最小値の入力から生じる決定値を評価する。結果の最小決定値は、f_minに格納される。例示のために、決定変数が第1旋回持続時間である時に、この関数の値を、最小第1旋回持続時間を使用して判定することができる。706で、決定変数の最大値の入力から生じる決定値を評価し、結果の最大決定値をf_maxに格納する。たとえば、値f_minおよびf_maxを、それぞれ関数(CPA
min−S)の最小値および最大値とすることができ、ここで、CPA
minは、最小CPA距離であり、Sは、所望のミスディスタンスである。
【0064】
708では、f_minおよびf_maxが反対の極性を有するかどうかの判定を行う。f_minおよびf_maxが反対の極性を有しない時には、710で検索を終了し、解が存在しないことを示すメッセージを返すことができる。f_minおよびf_maxが反対の極性を有する時には、712で、f_valueを含むフォールスポジション変数を初期化する。特定の実施形態で、f_minおよびf_maxが反対の極性を有することが前もってわかっている場合があることに留意されたい。たとえば、検索314が
図3の方法で実行される時には、第1航程持続時間が最小である(すなわち、第1航程持続時間のf(min))時にLOSがあることの判定が、310で既に行われており、したがって、関数f(min)は、負の値を有する(すなわち、LOSがある)。312では、第1航程持続時間が最大である(すなわち、第1航程持続時間のf(max))時にLOSがないことの判定も行われており、したがって、関数f(max)は、正の値を有する。f_minおよびf_maxの極性が反対になることが前もってわかっている実施形態では、
図7の方法は、712でフォールスポジション検索変数を初期化することから始めることができる。
【0065】
714では、f_valueが十分に0に近いかどうかの判定を行う。構成可能な緩衝値εを使用して、f_valueが十分に0に近い時を判定するしきい値を指定することができる。たとえば、f_value≦εの時には、f_valueが十分に0に近いと考えることができる。f_valueが十分に0に近い時には、716で、根発見問題の解を返す。f_valueが十分に0に近くはない時には、718で、フォールスポジション変数を更新し、新しい決定値をセットする。720で、新しい決定値を評価し、検索プロセスは、714でのf_valueが十分に0に近いか否かの決定に戻ることができる。このプロセスは、解が識別され、716で返されるまで、この形で反復して継続することができる。
【0066】
用語「フォールスポジション変数」は、当業者に既知の変数である、フォールスポジション検索によって使用される変数を指す。たとえば、フォールポジション変数は、決定変数と、下にリストされ、説明される変数とを含むことができる。
【0067】
入力変数
val_max
図8を参照して説明される関数など、関数に渡される最大値を格納する。たとえば、検索が第1旋回持続時間に関するものである時には、val_maxを90°とすることができる。
【0068】
val_min 関数に渡される最小値を格納する。たとえば、検索が第1旋回持続時間に関するものである時には、val_minを0°とすることができる。
【0069】
max_iterations フォールスポジション法は、通常、2つの逃げ道(すなわち、プロセスを打ち切る形)を有する。第1の逃げ道は、関数の出力が十分に0に近いと判定される(たとえば、
図7の714で判定される)時とすることができる。第2の逃げ道は、試行の最大回数に達した時とすることができる。max_iterations変数は、試行の最大回数を指定するのに使用することができる。
【0070】
局所変数
iteration 検索が反復されるたびに、iteration変数を増分して、max_iterations変数との比較のためのカウントを維持することができる。iteration変数を、0に初期化することができる。
【0071】
val_right 右側の境界を定めるのに使用される値を格納する。val_right変数を、val_max変数の値に初期化することができる。
【0072】
val_left 左側の境界を定めるのに使用される値を格納する。val_left変数を、val_min変数の値に初期化することができる。
【0073】
val_decision 決定変数の値を格納する。val_decisionの値が、関数に近似的に0を出力させる時に、val_decision変数が、フォールスポジション法によって出力される。val_decision変数を、0に初期化することができる。
【0074】
func_val_right val_right変数の値を関数に入力することによって引き起こされる関数出力の値を格納する。func_val_right変数を、val_maxの値によって引き起こされる関数出力の値に初期化することができる。
【0075】
func_val_left val_left変数の値を関数に入力することによって引き起こされる関数出力の値を格納する。func_val_left変数を、val_min変数の値によって引き起こされる関数出力の値に初期化することができる。
【0076】
func_val_decision val_decision変数の値を関数に入力することによって引き起こされる関数出力の値を格納する。func_val_decision変数を、0に初期化することができる。
【0077】
side 関数は、0を出力させる入力値を有する。0の右のx軸値を右側と呼び、他方の値を左側と呼ぶ。フォールスポジション法は、val_decision変数の現在値がどちらの側を出力させるかを追跡する。side変数を、0に初期化することができる。最初の反復の後に、side変数は、+1(すなわち、関数の出力が右側にある時)または−1(すなわち、関数の出力が左側にある時)のいずれかになることができる。
【0078】
図8は、最接近点(CPA)を判定する方法の特定の実施形態の流れ図である。
図8の方法を、関数が
図7で評価されるたびに、すなわち、
図7の704、706、および720で使用することができる。
図8の方法を使用して、単一値最小CPAを計算することができる。
【0079】
802では、
図8の評価関数が、決定値のセット、検索開始時刻、および検索終了時刻を用いて呼び出される。804では、検索開始時刻から検索終了時刻までの(たとえば、
図2の第3旋回207を経て)地上航跡を生成することができる。806では、最終旋回に最初のベクトルをインターセプトさせる最終航程(たとえば、
図2の第3航程204)の長さが存在するかどうかの判定を行う。たとえば、飛行経路計算セクションで説明される計算を使用して、この判定を行うことができる。
【0080】
最終旋回に最初のベクトルをインターセプトさせる最終航程の長さが存在する時には、808で、その最終航程距離に、インターセプトを引き起こす値をセットする。その後、評価プロセスは、814で残りの地上航跡を生成する。最終航跡長が、最終旋回に最初のベクトルをインターセプトさせない時には、810で、最終航程距離に最小値をセットする。812では、ニュートンラフソン法を使用して(飛行経路計算セクションで説明されるように)、最初のベクトルとのインターセプトが達成されるまでθ
cを減らすことができる。814では、残りの地上航跡を生成することができる。
【0081】
816では、検索時刻に所与の検索開始時刻をセットし、最小CPA値に大きい数をセットすることができる。818では、検索時刻が検索終了時刻を超えるかどうかの判定を行う。検索時刻が検索終了時刻を超えない時には、評価関数は、820で、オウンシップ位置および侵入機位置を検索時刻まで進める(すなわち、外挿する)。822では、地上航跡近似での侵入機ベクトルと現在のオウンシップベクトルとの間のCPAを計算する。824では、最小CPAに最小CPAと現在のCPA(822で判定された)とのうちの小さい方をセットする。826では、検索時刻に、検索時刻と現在のオウンシップベクトルの持続時間との和をセットする。その後、評価関数は、ループバックして、818で、検索時刻が検索終了時刻を超えるかどうかを判定する。この方法は、検索時刻が検索終了時刻を超えるまで、820、822、824、826、および818を反復して繰り返す。各反復中に、CPAが、現在のベクトルの機首方位に基づいてベクトルごとに計算される。検査時刻が検索終了時刻を超えるようになる時に、828で、最小CPAの現在値を返す。
【0082】
開示される横操縦を解くシステムおよび方法は、実行までの時間を最大化し、最初の経路からのずれを最小化し、所望のミスディスタンスを提供する操縦を判定することができる。たとえば、上で説明したシステムおよび方法を使用して、所望のミスディスタンスを達成し、無人航空機などの航空機をその最初の経路または飛行経路に戻すルート変更を出力することができる。ルート変更を、所望のミスディスタンス、所望のバンク角、航空機の状態ベクトル、風の状態ベクトル、および侵入機の状態ベクトルのうちの1つまたは複数の関数として判定することができる。
【0083】
飛行経路計算セクション
このセクションでの計算を、角度を指定するのにラジアンを使用して実行することができる。しかし、読者の便宜のために、度を示す。
【0084】
垂直(高度)速度を伴わない運動の共通の式は、次を含むことができる。
x=x
0+t*v
x+t*W
x (1)
y=y
0+t*v
y+t*W
y (2)
h=r*cos(w
0+180°)+t*W
y (3)
k=r*sin(w
0+180°)+t*W
y (4)
x=h+r*cos(w*t+w
0)+t*W
y (5)
y=k+r*sin(w*t+w
0)+t*W
x (6)
x=h+d*cos(c)+t*W
y (7)
y=k+d*sin(c)+t*W
x (8)
w
0=i−90° (左旋回) (9)
w
0=i+90° (右旋回) (10)
ここで、式(1)および(2)は、直線運動/外挿に関係し、式(3)〜(10)は、円運動に関係する。
【0085】
ウィンドトライアングルの式は、次を含むことができる。
v
xi=v
yg+W
y (11)
v
yi=v
xg+W
x (12)
i=atan2(v
xi,v
yi) (13)
慣性速さ=sqrt(v
xi*v
xi+v
yi*v
yi) (14)
c=atan2(v
xg,v
yg) (15)
式(1)〜(15)で、x
0は、初期x位置であり、y
0は、初期y位置であり、v
xは、オウンシップのx速度成分であり、v
yは、オウンシップのy速度成分であり、v
xiは、オウンシップのx慣性速度成分であり、v
yiは、オウンシップのy慣性速度成分であり、v
xgは、オウンシップのx対地速度(ground velocity)成分であり、v
ygは、オウンシップのy対地速度成分であり、w
0は、開始角すなわち中心から円の開始ヘの方向であり、wは角加速度であり、W
xは、風のx速度成分であり、W
yは、風のy速度成分であり、iは、慣性進路であり、hは、円中心x値であり、kは、円中心y値であり、cは、外挿の地上方向(進路)であり、dは、外挿の距離であり、tは、w
0またはx
0のいずれかからの時間である。
【0086】
図9は、特定の実施形態で旋回を判定するのに使用される成分を示す図である。
図9では、点Pは、初期位置であり、点Rは、初期位置Pから対地速度ベクトル
に沿った距離dである。点Qは、固定されたベクトル
に沿ってRから固定された距離である。
図9は、地上標的ベクトル
および風ベクトル
をも示す。距離dは、
図2の第3および第4の旋回207、208などの2つの旋回の間の大圏距離である。
【0087】
特定の実施形態では、最後の2つの旋回(たとえば、
図2の第3および第4の旋回207、208)は、事前にセットされ、計算される必要がない。横操縦を使用する時には、最後の旋回の後(すなわち、
図9の点Qの後)の方向は、その方向が標的ベクトルの方向と等しい時に正しい。しかし、点Qの最終位置が、標的ベクトルからオーバーシュートしまたはアンダーシュートする場合がある。したがって、距離dを、点Qが標的ベクトル上にあるように決定することができる。下で説明するプロセスは、一般的であり、最終的な方向が標的ベクトルの方向と等しい限り、使用することができる。したがって、たとえば、Pの前のベクトルが、標的ベクトルと平行である必要はない。
【0088】
解は、点Qが
に乗るまで
に沿ってRを「滑らせる」ことによって見つけられる。点Qは、点Rから固定された距離および方向であり、したがって、RおよびQは、「堅固な」関係を有する。一般に、RとQとの間の真の経路は、関連性がなく、多数の旋回および航程からなるものとすることができる。
【0089】
この問題は、標的ベクトルがx軸になるように成分を回転し、かつ/または並進させることと、その後、y
Q(すなわち、点Qのy軸座標)が0と等しい場合のd
PRの値について解くことによって、解くことができる。この解は、大圏距離なので、風は、この解を解くために必要ではない。しかし、風を、対地ベクトル
を慣性ベクトルに変換するのに使用することができる。問題陳述は、次の通りである:入力P、
、
、
、および
またはQを与えられて、dを見つけること。解を、次のように判定することができる。
・標的ベクトルがx軸になるように、
図9に示されているように系を回転し、かつ/または並進させる。回転点は、標的ベクトル上の任意の点とすることができる。
・定数fがRとQとの間の距離を表すものとする
・1)y
R=y
P+d
PR*sin(ψ
V) PからRへの外挿
・2)y
Q=y
R+f*sin(ψ
X) RからQへの外挿
・3)y
Q=y
P+d
PR*sin(ψ
V)+f*sin(ψ
X) 1を2に代入する
・4)0=y
P+d
PR*sin(ψ
V)+f*sin(ψ
X) y
Q=0をセットする
・5)
【0091】
d
PRの値は、ベクトル
の方向が、標的ベクトル
に対して相対的に0°または180°である時には定義されない。これは、ベクトル
に平行または逆平行に移動する時に、d
PRを調整することが、Qからベクトル
までの距離に影響しないことを意味する。本明細書で開示される横操縦を用いると、第3旋回は、ある持続時間を有し、したがって、ベクトル
は、ベクトル
と平行または逆平行にはならない。
【0092】
d
PRの値が負になる場合があり、これは、RをPに向かって逆方向に外挿する必要があることを示す。この状態は、「オーバーシュート」と考えられ、2つの旋回の持続時間が長すぎることを意味し、d
PRが0の時には、Qは、
未満である(負のy領域)。オーバーシュート状態に対処する方法は、下で説明する。
【0093】
風の中で平行ベクトルをインターセプトすることは、2つの対向する旋回の1つの適切な旋回持続時間を見つけることによって解くことができる。標的ベクトルは、移動されつつあるベクトルに平行なので、旋回は、持続時間において等しく、方向において反対である。この問題を、
図10に示す。
図10に示された成分は、初期位置Pと、Pから始まる対地速度ベクトル
と、地上標的ベクトル
と、風ベクトル
と、旋回半径rと、右側旋回の中心点Aと、左側旋回の中心点Cと、中心AとCとの間の中点Bと、
および
から計算される開始慣性進路iと、単一の旋回の持続時間tと、角速度wとを含む。
【0094】
この問題は、標的ベクトル
がx軸になり、第1の旋回が左になるように系を回転し、かつ/または並進させることによって解くことができる。Qのy値y
Qが0と等しくなるようにするtの値を計算することができ、ここで、tは、旋回ごとに使用される持続時間である(持続時間の和ではない)。したがって、PからQまでの持続時間は、2tである。
【0095】
逆方向の運動が望まれないと仮定すると、tの最大値を、第1の旋回が対地進路を90°だけ変更するのに要する時間とすることができる。この値は、回転の後に、180°+90°の正規化された対地進路である、270°対地ベクトルの慣性進路を見つけることによって見つけることができる。慣性進路cの変更を、制限時間s=c/wに変換することができ、ここで、角速度wは、(慣性速さ)/半径である。旋回中心は、そのそれぞれの慣性ベクトルを基準とするので、角度に伴って変化し、したがって、この問題を解くのに、風ベクトルを使用することができる。また、第2の旋回の初期角度w
0は、第1の中心点に依存する。
【0096】
この問題を解くために、ニュートンラフソン法を使用することができる。ニュートンラフソン法は、Bronshtein他、「Handbook of Mathematics」で詳細に説明されている。関数f(t)は、Qのy値である。この関数は、次の通りである。入力P、
、
、
、およびrを与えられて、sを見つける。
【0097】
解は、次のように見つけることができる。
・標的ベクトル
がx軸になるように、
図10に示されているように系を回転し、かつ/または並進させる。回転点は、標的ベクトル上の任意の点とすることができる。
・w
0A=i
A+90°
・k
A=r*sin(w
0A+180°)+t*W
y
・y
B=r*sin(w
0A−w*t)+t*W
y 中間点
・w
0C=w
0A−w*t+180° 反対の第1の最終角度
・k
C=r*sin(w
0C+180°)+t*W
y
・y
Q=k
C+r*sin(w*t+w
0C)+t*W
y
【0098】
上の最後の式を使用して、標準的な微積分ベースの導関数を計算し、ニュートンラフソン法と共に使用することができる。tの初期値には、tの範囲の1/2がセットされる。
【0099】
速さ操縦
特定の実施形態では、
図11に示されているように、管制間隔の喪失を回避するための速さ操縦を、4つのフェーズで実施することができる。
図11の図は、速さ1102の変更に対応する慣性進路1104の変更を示す。この図の左のy軸は、慣性速さを示し、この図の右のy軸は、慣性進路を示す。第1フェーズ(
図11で約0秒と約10秒との間)に、ビークル(たとえば、オウンシップ)は、速さを維持する。たとえば、オウンシップに、ミッションパラメータ、リモートパイロットからの入力、または他の要因に基づいて速さを割り当てることができる。割り当てられた速さを、管制間隔の喪失を回避するために速さ変更操縦が実行されるまで、維持することができる。第2フェーズ(
図11で約10秒と約20秒との間)に、ビークルは、減らされた速さまで減速することができる。第3フェーズ(
図11で約20秒と約32秒との間)に、ビークルは、減らされた速さをホールドする。第4フェーズ(
図11で約32秒と約42秒との間)に、ビークルは、減らされた速さから割り当てられた速さまで加速し、割り当てられた速さを維持する。
【0100】
風ベクトルがあり、ビークルがその慣性速さを遅くする時には、ビークルの対地進路も変化する可能性がある。対地進路の変化は、減らされた慣性速さおよび風ベクトルについて補償するためにウィンドトライアングルに従って慣性進路を変更することによって減らすことができる。
【0101】
特定の実施形態では、速さ操縦を、3つの制御変数すなわち、現在位置から減速が始まる位置までの距離X
S、標的速さまたは割り当てられた速さからのパーセント速度低下X
P、および減らされた速さをホールドするホールド距離X
Hを使用して指定することができる。構成可能な減速度パラメータおよび加速度パラメータを制御変数と共に使用して、オウンシップ飛行経路を見積もることができる。構成可能な減速度パラメータおよび加速度パラメータは、速さ操縦を実施するために、それぞれオウンシップが減速しまたは加速する割合を定義することができる。
【0102】
開始距離X
Sは、0(すなわち、即座に開始する)から距離d
Lまでの範囲を有することができ、この距離d
Lは、LOSが発生すると予測されるところまでの距離に対応する。したがって、ビークルは、即座からLOSが発生する時までのいつでも減速を開始することができる。パーセント速度低下X
Pは、0(すなわち、速さの低下なし)から割合p
Mまでの範囲を有することができ、この割合p
Mは、標的速さから最小の許容できる慣性速さを引き、標的速さによって割ったものに対応する。最小慣性速さを、ビークル、ビークルのミッション、または他の要因に基づいて指定することができる。たとえば、最小慣性速さを、適切な安全係数と共にビークルのストールスピードに基づいてセットすることができる。
【0103】
ホールド距離X
Hは、0(すなわち、ホールドなし)からd
L(すなわち、LOSが始まると予測されるところまでの距離)までの範囲を有することができる。たとえば、ホールド距離X
Hは、ビークルが減らされた速さまで減速し、その後、即座に標的速さまで加速を開始する時に、0とすることができる。例示のために、ある種の状況で、減速および加速を、ゆっくりと実施することができ、ホールドは、LOSを回避するために必要でないものとすることができる。しかし、類似する状況で、減速を即座にすばやく実施することができ、この場合に、ビークルは、より長い距離にわたって減らされた速さをホールドすることができる。
【0104】
制御変数を使用して、現在の対地ベクトルに沿った速度スケジュールを生成することができる。たとえば、飛行経路計算セクションにリストされた運動方程式および外挿を使用することができる。例示的な実施形態では、制御変数は、ビークルの飛行経路の線形近似を作成するのに使用される。飛行経路の近似は、一連のベクトルを含むことができ、ここで、各ベクトルは、位置、速度、および持続時間を有する。このプロセスを、
図12を参照してさらに説明する。
【0105】
図12は、ビークルの飛行経路を判定する方法の特定の実施形態の流れ図である。
図12では、各アスタリスクが、スカラ間またはスカラとベクトルとの間のいずれかの乗算演算子を表す。使用される他の記号は、次を含む。
X 制御変数ベクトル
P
0 初期オウンシップ位置
P
C 計算のための現在のオウンシップ位置
W 風ベクトル
d
S ステップ距離
s
C 現在の反復に関する速さ
t
S ベクトル持続時間
s
T 標的速さ
a
C 速さ操縦を実行するのに使用される速さの変化の割合を指定する速さ変更定数
V 計算されつつあるベクトル。ベクトルVの成分は、次を含む。
V
P ベクトルの位置
V
D ベクトルの慣性進路(方向)
V
T ベクトルの持続時間
V
S ベクトルの速さ
【0106】
図12の方法は、1202で、制御変数ベクトルX、初期位置P
0、慣性速度、減速度定数、加速度定数、風ベクトルW、およびステップ距離d
Sを用いて呼び出される。1204では、減速フェーズ(すなわち、
図11を参照して説明した第2フェーズ)を生成する方法を準備する。1204では、現在位置から開始距離X
Sを通って延びるベクトルを作成する。1206では、現在の慣性速さs
Cがパーセント速度低下X
Pだけ減らされたかどうかの判定を行う。たとえば、この判定は、現在の慣性速さs
Cの値を、パーセント速度低下X
Pに標的速さs
Tをかけた値と比較することができる。
【0107】
1208では、速度スケジュール内のベクトルを判定することができる。1208では、式V
D=direction(W,s
C)を使用して、風ベクトルおよび慣性速さを考慮して慣性進路を計算することができる。この計算は、風向き、風量(速さ)、対地進路、および慣性量(速さ)を与えられて、正弦法則を適用する(ベクトルの交差角、風ベクトルの大きさ、慣性速さ、および慣性方向を使用する)ことによって、実行することができる。ステップ距離は、構成可能であり、線形近似誤差に影響する可能性がある。s
Cの新しい値を、1206で現在の慣性速さs
Cがパーセント速度低下X
Pだけ減らされると判定されるまで、1208で反復して計算することができる。
【0108】
現在の慣性速さs
Cが、パーセント速度低下X
Pだけ減らされると判定された後に、1210で、X
Hによって示されるホールド距離を判定することができる。さらに、加速フェーズ(たとえば、
図11を参照して説明した第4フェーズ)の計算を準備することができる。
【0109】
1212では、現在の慣性速さs
Cが標的速さs
T(すなわち、最初の速さ)と等しいかどうかの判定を行うことができる。現在の慣性速さs
Cが標的速さs
Tと等しくない時には、1214で、速度スケジュール内のベクトルを生成する。1212で現在の慣性速さs
Cが標的速さs
Tと等しいと判定されるまで、1214で、追加のベクトルが反復して生成される。現在の慣性速さs
Cが標的速さs
Tと等しいと判定される時には、1216で、速度スケジュール内の最後のベクトルの持続時間が無限と仮定され、これは、オウンシップが指令された飛行経路および速さに戻ったことと、指令された飛行経路および速さに無限に留まることとを暗示する。この方法は、完全な速度スケジュールが生成された時に、1220で脱出する。
【0110】
特定の実施形態では、
図1のAMS 128などの回避操縦システムは、次の式を使用して、2つのベクトルの最接近点(CPA)の時刻を計算することができる。
【0112】
ここで、Uは、侵入機ベクトルであり、Vは、オウンシップ飛行経路を近似するベクトルのうちの1つであり、V
PおよびU
Pは、位置であり、V
GおよびU
Gは、対地速度であり、・は、ベクトル数学点乗積演算子である。対地速度は、V
S*V
D・Wとして判定することができ、ここで、V
SおよびV
Dは、
図12を参照して説明したように判定することができる。
【0113】
CPAの時刻tは、CPAが過去にあり、オウンシップおよび侵入機が管制間隔を得つつある時には負になる。この場合には、初期位置での距離を、CPAと解釈することができる。有限の時間ベクトルについて、CPAの時刻tが、ベクトル持続時間のうちの1つの後に発生する可能性がある。この場合に、最短持続時間を使用して、CPAの時刻を見つけることができる。そうではない場合には、時刻tを使用して、CPAの時刻を定義することができる。
【0114】
オウンシップおよび侵入機の位置が、CPAまで外挿され、オウンシップと侵入機との間の距離が、CPAで計算される。この計算された距離は、オウンシップと侵入機との間で発生すると期待される最短距離である。計算された距離が所望の管制間隔S未満である場合には、LOSが発生すると予測される。
【0115】
一連のベクトル(たとえば、
図11を参照して説明した速さ操縦のフェーズに対応するベクトル)についてCPAを計算する時には、CPAを、ベクトルごとに識別することができ、すべてのベクトルの間の最小距離を、一連のベクトルのCPAと解釈することができる。検索時間枠を使用して、計算を実施することができる。たとえば、検索を、異なる時間枠を使用して実行することができ、各検索は、検索枠の開始時刻から検索枠の終了時刻までの計算を実行することができる。
【0116】
図1のAMS 128などの回避操縦システムは、複数の変数によって制約された最適化問題を一連の単一変数問題にばらばらにする分解を使用することができる。この問題を、標準的な零/根発見問題としてモデル化することができ、フォールスポジション法を使用して、副問題を解くことができる。上で説明したように、フォールスポジション法は、問題が有界である場合に収束する。本明細書で説明される問題分解は、検索の境界を作成する。この文脈で、「有界」は、単一変数関数f(x)ならびにxの2つの初期値x0およびx1について、f(x0)およびf(x1)が反対の極性を有する(すなわち、f(x)が、f(x0)とf(x1)との間に0値を有する)ことを意味する。上で説明したプロセスの関数f(x)は、最小CPA距離から所望のミスディスタンスSを引いたものである。この関数は、最小CPA距離とミスディスタンスとが等しい時に0であり、余分な管制距離がある時(すなわち、最小CPA距離が所望のミスディスタンスより大きい時)に正であり、LOSがある時(すなわち、最小CPA距離が所望のミスディスタンスより小さい時)に負である。
【0117】
図13は、速さ回避操縦を解く方法の特定の実施形態の流れ図である。
図13では、フォールスポジション検索が、1310、1314、および1316で行われる。1302で、管制間隔距離Sより小さい最接近点(CPA)が識別される時には、LOSが予測される。1304では、検索を準備する。検索の準備は、次のように変数をセットすることを含むことができる。
【0119】
すなわち、初期検索を、即座に始まり(すなわち、最小の開始距離X
S)、最大減速度(すなわち、最大のパーセント速度低下X
P)を使用し、最大のホールド(すなわち、最大のホールド距離X
H)を使用する操縦に基づいて準備することができる。各変数の最大値および最小値は、たとえばミッション仕様に基づいて、オウンシップの特性に基づいて、または他の判断基準に基づいて、事前に決定することができる。
【0120】
速さ解が存在しないことがありうる。たとえば、衝突が切迫しすぎている時、減速度パラメータまたは最小速さパラメータがLOSの回避を可能にするのに十分ではない時、または侵入機が静止しているか接近する時である。1306では、速さ解が存在するかどうかの判定を行うことができる。たとえば、判定は、即座の最大減速度および最大ホールドがLOSを回避するかどうかを評価することができる。即座の最大減速度および最大ホールドがLOSを回避しない場合には、速さ解が存在しないので、この方法は1308で脱出する。速さ解が存在しない時には、LOSを回避するために別の操縦を判定することができる。たとえば、
図2〜10を参照して説明した横回避操縦を解く方法を使用して、LOSを回避するための横操縦を判定することができる。その代わりにまたはそれに加えて、TCASを使用して、LOSを回避するための高度変更を判定することができる。
【0121】
1310では、第1検索を実行して、操縦開始距離X
Sを見つける。最大減速度(すなわち、最大のパーセント速度低下X
P)および最大ホールド(すなわち、最大のホールド距離X
H)を使用して、操縦開始距離X
Sを見つけることができる。最大減速度および最大ホールドを使用することは、操縦が実行されるまでの時間を最大にすることができる。最大減速度および最大ホールドを用いると、LOSはなく(1306で判定されたように)、したがって、開始距離X
Sを、LOSが識別されるまで前進させることができる。フォールスポジション検索は、LOSを引き起こさない、最も前進された(すなわち、最も遠い将来の)開始距離X
Sの値を見つける。検索枠は、現在時刻に始まることができ、構成可能な検索枠の終りに終わることができる。
【0122】
1312では、最大減速度および最小ホールド(たとえば、ホールドなし)を使用してLOSがあるかどうかの判定を行う。最大減速度および最小ホールドがLOSを引き起こす時には、ホールドを延長する必要がある可能性がある。したがって、この方法は、1314に進んで、LOSを回避する(最大減速度を使用して)ホールド距離を見つけるために検索を実行することができる。最大減速度および最小ホールドがLOSを引き起こさない時には、減速度を減らして、不必要な遅れを回避することができる。したがって、この方法は、1316に進んで、LOSを回避する(最小ホールドを使用して)減速度を見つけるために検索を実行することができる。その後、このプロセスは、1318で成功して終了する。
【0123】
特定の実施形態では、1310、1314、および1316での検索を、上で説明したように速さ操縦について最小値および最大値を使用する
図7のフォールスポジション検索法を使用して実行することができる。たとえば、入力変数val_maxおよびval_minを、速さ操縦関連値に対応するように選択することができる。例示のために、減速度に関する検索を実行することは、val_max入力変数に最大減速度をセットすることと、val_min入力変数に最小減速度(たとえば、0)をセットすることとを含むことができる。
【0124】
図14は、航空機1400の特定の実施形態のブロック図である。航空機1400を、
図1、2、4、6、および10の航空機100とすることができる。航空機1400は、
図1のFMS 102などの飛行管理システム1402を含むことができる。飛行管理システム1402は、感知および回避システム1406を含むことができる。たとえば、感知および回避システム1406は、
図1のAMS 128などの回避操縦システム(AMS)とすることができ、あるいはこれを含むことができる。感知および回避システム1406を、潜在的な管制間隔の喪失(LOS)を識別し、LOSを回避するための操縦を判定するように適合させることができる。操縦は、高度変更操縦、横操縦、または速さ操縦とすることができる。特定の実施形態では、感知および回避システム1406は、LOSを回避するための複数の操縦を判定し、その後、選択判断基準に基づいて実施すべき特定の操縦を選択するように適合される。たとえば、感知および回避システム1406は、LOSを回避するために横操縦および速さ操縦を判定することができる。その後、感知および回避システム1406は、所定のプリファレンス(たとえば、横操縦が識別される時に横操縦を実行する所定のプリファレンスまたは速さ操縦が識別される時に速さ操縦を実行する所定のプリファレンス)に基づいて、どの操縦が最も効率的であるのか(たとえば、より少ない燃料を使用する、ミッションに対するより少ない影響を有するなど)に基づいて、他の選択判断基準に基づいて、またはその任意の組合せで、横操縦または速さ操縦のいずれかを実施することを選択することができる。
【0125】
特定の実施形態では、感知および回避システム1406は、所定の順序で特定のタイプの操縦を判定することを試みるように適合される。たとえば、潜在的なLOSが識別される時に、感知および回避システム1406は、LOSを回避するために第1のタイプの操縦(たとえば、横操縦、速さ操縦、または高度変更)を判定することを試みることができる。LOSを回避する第1タイプの操縦が識別される場合には、その操縦を実行することができる。しかし、LOSを回避する第1タイプの操縦が識別されない場合には、感知および回避システム1406は、LOSを回避するために第2のタイプの操縦を判定することを試みることができる。同様に、LOSを回避する第2タイプの操縦が識別されない場合には、感知および回避システム1406は、LOSを回避するために第3のタイプの操縦を見つけることを試みることができる。
【0126】
感知および回避システム1406は、プロセッサ1408およびプロセッサ1408からアクセス可能なメモリ1410を含むことができる。メモリ1410は、航空機1400と第2の航空機との間の潜在的な管制間隔の喪失(LOS)を識別するためにプロセッサ1408によって実行可能な命令1412を含むことができる。潜在的なLOSを、航空機1400および第2の航空機の飛行ベクトルを見積もるか外挿することによって識別することができる。たとえば、プロセッサ1408は、センサ1418からのデータを分析して、航空機1400の位置、進路、および速さと、第2の航空機の位置、進路、および速さとを判定することができる。2つの航空機の位置、進路、および速さを外挿することによって、プロセッサ1408は、この2つの航空機が将来の時に所望の管制間隔距離より近くなるかどうかを判定することができる。
【0127】
命令1412を、LOSを回避するための操縦(たとえば、速さ操縦、横操縦、または高度変更)を判定するためにプロセッサ1408によって実行可能とすることもできる。たとえば、命令1412をプロセッサ1408によって実行して、所定のパラメータ1416を使用する第1の速さ操縦を実行することが潜在的なLOSを回避するかどうかを判定することができる。たとえば、所定のパラメータ1416は、遅れなし(すなわち、操縦の即座の実行)、最大減速度、および最小ホールド持続時間を含むことができる。第1の速さ操縦が潜在的なLOSを回避しない時には、命令1412を、潜在的なLOSを回避ための現在の高度での1つまたは複数の旋回を判定するためにプロセッサ1408によって実行可能とすることができる。その代わりにまたはそれに加えて、第1の速さ操縦が潜在的なLOSを回避しない時に、命令1412を、潜在的なLOSを回避するための高度の変更を判定するためにプロセッサ1408によって実行可能とすることができる。
【0128】
第1の速さ操縦が潜在的なLOSを回避する時に、命令1412を、第2の速さ操縦のパラメータ1414を判定するためにプロセッサ1408によって実行可能とすることができる。第2の速さ操縦のパラメータ1414を判定することは、操縦開始位置を判定することを含むことができる。操縦開始位置を、最大減速度および最大ホールド時間を含む速さ操縦を使用してLOSを回避できる、航空機1400の現在位置から最も遠い点として判定することができる。
【0129】
第2の速さ操縦のパラメータ1414を判定することは、操縦開始位置で始まるホールドなし減速操縦を実行することが潜在的なLOSを回避するかどうかを判定することを含むことができる。ホールドなし減速操縦は、所定の加速度(たとえば、最大加速度)が即座に続く所定の減速度(たとえば、最大減速度)を含むことができる。第2の速さ操縦のパラメータ1414を判定することは、第2の速さ操縦のホールド時間を判定することを含むことができる。たとえば、第2の速さ操縦は、最小ホールド時間より長いホールド時間を含むことができる。第2の速さ操縦のパラメータ1414を判定することは、第2の速さ操縦の減速度を判定することを含むことができる。たとえば、第2の速さ操縦は、最大減速度より少ない減速度を含むことができる。例示のために、第2の速さ操縦のパラメータを判定することは、ホールドなし減速操縦が潜在的なLOSを回避する時に、潜在的なLOSを回避する最小の減速度を判定することを含むことができる。
【0130】
特定の実施形態では、フライトコントロールシステム1402は、第2の速さ操縦を実行するために航空機1400の他のコンポーネントに制御信号を送ることができる。
【0131】
図15は、速さ回避操縦を実行する方法の特定の実施形態の流れ図である。この方法は、1502で、第1の航空機と第2の航空機との間の潜在的な管制間隔の喪失(LOS)を第1の航空機上で自動的に(たとえば、人間の介入なしで)識別することを含む。たとえば、第1の航空機は、
図1、2、4、6、および10の航空機100または
図14の航空機1400を含むことができる。
【0132】
この方法は、1504で、所定の速さ操縦を実行することがLOSを回避するかどうかを自動的に判定することを含むことができる。1506で、所定の速さ操縦が潜在的なLOSを回避しない時には、1508で、潜在的なLOSを回避する非速さ操縦を判定することができる。
【0133】
1506で、所定の速さ操縦が潜在的なLOSを回避する時には、1510で、潜在的なLOSを回避する別の速さ操縦(たとえば、所定の速さ操縦以外の速さ操縦)のパラメータを自動的に判定することができる。速さ操縦のパラメータは、減速の量、減速の割合、およびホールド時間のうちの少なくとも1つを含むことができる。たとえば、速さ操縦のパラメータを判定することは、1512で、ホールド時間を判定することを含むことができる。別の例では、速さ操縦のパラメータを判定することは、1514で、減速の量を判定することを含むことができる。
【0134】
この方法は、1516で、パラメータに従って速さ操縦を実行することをも含むことができる。1518で、速さ操縦が実行される間に航空機の慣性進路を維持することができる。速さ操縦を実行することは、1520でパラメータに基づいて第1の速さから第2の速さに減速すること、1522でパラメータに基づいてある時間の期間にわたって第2の速さを維持すること、および1524で時間の期間の後に第1の速さまで加速することを含むことができる。
【0135】
したがって、本明細書で開示されるシステムおよび方法は、航空機上での管制間隔の喪失回避能力を提供することができる。たとえば、感知および回避システムなどの制御システムを、航空機に一体化することができる。この制御システムは、潜在的な管制間隔の喪失状態を識別することができ、管制間隔の喪失を回避するために操縦を実行することができる。この制御システムは、管制間隔の喪失を回避するために特定のタイプの操縦を実行できるかどうかを判定するために、所定のパラメータを使用して初期テストを実行することができる。特定のタイプの操縦が管制間隔の喪失を回避できる可能性があることを判定した後に、この制御システムは、やはり管制間隔の喪失を回避する、特定のタイプの過酷度の低い操縦を見つけることを試みることができる。そのような制御システムは、無人飛行機が、管制間隔の喪失に関する飛行安全ルールに違反せずに領空域を飛ぶことを可能にすることができる。
【0136】
本明細書で説明される実施形態の例示は、さまざまな実施形態の構造の全般的な理解を提供することを意図されている。これらの例示は、本明細書で説明される構造または方法を利用する装置またはシステムの要素および特徴のすべての完全な説明として働くことを意図されたものではない。多数の他の実施形態が、本開示を再検討する時に当業者に明白になる可能性がある。他の実施形態を利用し、本開示から派生させることができ、その結果構造的なおよび論理的な置換および変更を、本開示の範囲から逸脱せずに行うことができる。たとえば、方法ステップを、図面に示されたものとは異なる順序で実行することができ、あるいは、1つまたは複数の方法ステップを省略することができる。したがって、本開示および図面は、制限的ではなく例示的とみなされなければならない。
【0137】
さらに、特定の実施形態を図示し、本明細書で説明したが、同一のまたは類似する結果を達成するように設計されたすべての後続の配置を、図示の特定の実施形態と置換できることを了解されたい。本開示は、さまざまな実施形態の任意のすべての後続の適合または変形形態を包含することを意図されている。上記の実施形態の組合せおよび本明細書で具体的には説明されない他の実施形態が、この説明を再検討する時に当業者に明白になるであろう。
【0138】
要約書は、これが請求項の範囲または意味を解釈しまたは限定するのに使用されないことの理解と共に提出される。さらに、前述の発明を実施するための形態では、さまざまな特徴が、開示を簡素化するために、一緒にグループ化され、あるいは単一の実施形態で説明される場合がある。本開示は、特許請求される実施形態が各請求項で明示的に具陳されるものより多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈されてはならない。そうではなく、次の特許請求の範囲が反映するように、特許請求される主題は、開示される実施形態のいずれかの特徴のすべてより少ないものを対象とする可能性がある。