(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂発泡粒子成形体からなり、乗員の足が載置される天板と、該天板の足載置面とは反対の面に立設された凸条を有する車両用衝撃吸収部材であって、前記発泡粒子成形体を構成する複合樹脂中のポリスチレン系樹脂の割合が40〜90重量%であると共に、前記発泡粒子成形体の見掛け密度が20〜200kg/m3であり、前記凸条は、車両の前後方向に立設された複数列の主凸条と、足が載置される衝撃吸収部位の前記主凸条間に差し渡して立設された一列または二列以上の副凸条とからなり、前記衝撃吸収部位の全体厚みが20〜50mmであって、該衝撃吸収部位の天板の厚みが全体厚みの30%以下であり、前記主凸条の幅が10mm以上であると共に、前記衝撃吸収部位の全体厚みの30%を超え、前記副凸条の平均高さが主凸条の高さの30〜70%であり、かつ該副凸条の幅の合計が10〜20mmであることを特徴とする、車両用衝撃吸収部材。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両用衝撃吸収部材の実施の形態について、図面等を示して詳細に説明する。
図1〜
図4は、本発明の車両用衝撃吸収部材の要部を示した概念的な図であって、これらの図に示すように、本発明に係る車両用衝撃吸収部材(以下、単に「衝撃吸収部材」という場合もある)1は、天板10、主凸条20及び副凸条30を備えて構成されている。
【0013】
この本発明の衝撃吸収部材1は、その全体がポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂発泡粒子成形体により一体的に形成されている。かかる複合樹脂発泡粒子成形体は、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体の高弾性と、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体の粘り強さとを併せ持ち、後に説明する優れた性状の衝撃吸収部材1を形成できる。かかる観点から、この複合樹脂におけるポリスチレン系樹脂の割合は
、40〜90重量%
であり、好ましくは50〜85重量%、特に好ましくは55〜75重量%である。
【0014】
上記発泡粒子成形体を形成する複合樹脂の相構造は、(1)ポリオレフィン系樹脂が連続相(海相)を形成し、ポリスチレン系樹脂が該連続相中に分散する分散相(島相)を形成する海島構造、(2)ポリスチレン系樹脂が連続相(海相)を形成し、ポリオレフィン系樹脂が該連続相中に分散する分散相(島相)を形成する海島構造、或いは(3)ポリスチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂が共に連続相を形成する海海構造が挙げられる。
上記相構造の中でも、高弾性と粘り強さを両立する発泡粒子成形体とするためには、発泡粒子成形体を構成する複合樹脂が、上記(1)又は(3)の相構造をとることが好ましい。
【0015】
上記複合樹脂は以下のようにして製造することができる。
例えば、ポリオレフィン系樹脂粒子(以下、適宜「核粒子」という)を懸濁剤、界面活性剤、及び水溶性重合禁止剤等を含む水性媒体中に懸濁させ、懸濁液を作製し、次いで、該懸濁液にスチレン系モノマーを添加し、核粒子に該スチレン系モノマーを含浸させ、重合開始剤の存在下で懸濁重合させる。これにより、ポリオレフィン系樹脂成分とポリスチレン系樹脂成分とから構成される複合樹脂粒子を得ることができる。また、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを押出機などにより溶融混練して複合樹脂粒子を得てもよい。
【0016】
さらに、本発明の衝撃吸収部材1の成形に当たっては、上記複合樹脂粒子に発泡剤、例えばプロパン、ブタン、ペンタンなどの炭化水素等を含浸させて発泡性樹脂粒子とし、該発泡性樹脂粒子を過熱水蒸気等の加熱媒体で加熱して予備発泡させるか、或いは圧力容器内で水性媒体中に分散させた上記複合樹脂粒子に発泡剤、例えば、上記炭化水素や、窒素、二酸化炭素などの無機ガス等を含浸させ、分散媒と共に発泡剤を含んだ複合樹脂粒子を圧力容器から放出することにより予備発泡させ、次いで前記予備発泡粒子を成形型内に充填し、該成形型内において予備発泡粒子を過熱水蒸気等の加熱媒体により二次発泡、融着させ型内成形することで、本発明の衝撃吸収部材を製造することができる。
【0017】
本発明においてポリオレフィン系樹脂とは、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が例示でき、これらの樹脂の中から選択される1種又は2種以上の混合物を利用できる。ポリエチレン系樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体等がある。ポリプロピレン系樹脂としては、例えばプロピレンホモ重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・4−メチルペンテン−1共重合体等がある。好ましくは、強度の優位性の観点から、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、又はこれらの混合物を用いることがよい。
【0018】
ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・エチレン・スチレン樹脂もしくはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。好ましくは、ポリスチレン、スチレンとブチルアクリレート等のアクリル系モノマーとの共重合体が挙げられる。但し、スチレンモノマーと該スチレンモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体は、その共重合体中にスチレンモノマー成分単位が50質量%以上であることが好ましい。
【0019】
また、上記ポリスチレン系樹脂としては、スチレンモノマーの重合体、スチレンモノマーと該スチレンモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体が挙げられる。該スチレンモノマーと共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸の炭素数が1〜10のアルキルエステル、メタクリル酸の炭素数が1〜10のアルキルエステル、スチレンの誘導体、ニトリル基含有不飽和化合物等が挙げられる。本明細書では、スチレンモノマーをポリオレフィン系樹脂に含浸、重合させる場合は、当該スチレンモノマーが当然にスチレン系モノマーであり、また、スチレンモノマーと、スチレンモノマーと共重合可能なモノマーとを併用してポリオレフィン系樹脂に含浸、重合させる場合は、スチレンモノマーと、スチレンモノマーと共重合可能なモノマーとを併せてスチレン系モノマーと称する。
【0020】
本発明の衝撃吸収部材1を構成する上記複合樹脂発泡粒子成形体の見掛け密度は、20〜200kg/m
3である。これは、見掛け密度が低すぎる場合には、要求される圧縮応力を達成する物性を得ることが難しい場合があり、逆に高すぎる場合には、圧縮応力値が高くなるばかりでなく、軽量化が困難となる虞があるために好ましくない。かかる観点から、複合樹脂発泡粒子成形体の見掛け密度は25〜100kg/m
3であることがより好ましく、30〜60kg/m
3であることがさらに好ましい。
なお、上記複合樹脂発泡粒子成形体の見掛け密度とは、発泡粒子成形体の重量を該発泡粒子成形体の体積で除した値である。発泡粒子成形体の体積は、水没法などにより求めればよい。
【0021】
本発明の衝撃吸収部材1の天板10は、乗員が足を載置するもので略平板状に形成されており、該天板10の足載置面とは反対の面(車両の床面と対向する面)に、車両の前後方向に沿って複数列の主凸条20が立設され、足が載置される衝撃吸収部位Aの前記主凸条20間に該主凸条と直交する方向に差し渡して一列または二列以上の副凸条30が立設された構成に、上記複合樹脂発泡粒子成形体により一体的に形成されている。
【0022】
上記衝撃吸収部材1の衝撃吸収部位Aの全体厚みT
1は、20〜50mmであり、該衝撃吸収部位Aの天板10の厚みT
10は、前記全体厚みT
1の30%以下である。衝撃吸収部位Aの全体厚みT
1が20mmに満たないものである場合には、衝撃エネルギーを吸収する十分なストローク(ひずみ量)が得られ難く、逆に50mmを超える厚みである場合には、居住スペースの確保と軽量化が図れない。また、天板10の厚みT
10が前記全体厚みT
1の30%を超えるものである場合には、軽量化が図れないと共に、主凸条20の高さが短いものとなり、変位−荷重曲線の立ち上がりが早く、限界荷重値以下で吸収できる衝撃エネルギーの吸収が小さくなる。かかる観点から、衝撃吸収部位Aの全体厚みT
1は20〜40mmであることが好ましく、25〜35mmであることがより好ましい。また、天板10の厚みT
10は前記全体厚みT
1の27%以下であることが好ましく、20〜25%であることがより好ましい。
【0023】
また、天板10に立設された上記主凸条20は、その幅W
20が10mm以上であると共に、上記衝撃吸収部位Aの全体厚みT
1の30%を超える幅である。このような幅の広い主凸条20とすることにより、該主凸条20が折れて破壊されることを防止すると共に、荷重を大きく上げることなく弾性変形により短いストローク(ひずみ量)の中で衝撃エネルギーを効率よく吸収させることができる。かかる観点から、主凸条20の幅W
20は衝撃吸収部位Aの全体厚みT
1の35%を超える幅とすることが好ましく、37〜45%の幅とすることがより好ましい。
なお、上記主凸条20の幅W
20は、主凸条が断面台形形状のように厚みが一定割合で変化するような形状に形成されている場合は、主凸条の最も狭い幅W
minと主凸条の最も広い幅W
maxとの平均値((W
max+W
min)/2)を指す。また、主凸条の幅が主凸条ごとに異なる場合は、各主凸条の幅の平均値を指す。
【0024】
また、上記主凸条20間の間隔L
20は、10〜20mmに設計されていることが好ましく、12〜17mmに設計されていることがより好ましい。これは、主凸条20間の間隔L
20が狭すぎる場合には、軽量化が困難となり、一方、間隔が広すぎる場合には、衝撃荷重を支えきれない虞があるために好ましくない。
なお、上記主凸条20間の間隔L
20は、主凸条が断面台形形状であり、主凸条間の間隔が一定割合で変化するような場合は、主凸条間の最も狭い間隔L
minと主凸条間の最も広い間隔L
maxとの平均値((L
max+L
min)/2)を指す。また、主凸条の間隔が主凸条ごとに異なる場合は、各主凸条の間隔の平均値を指す。
【0025】
足が載置される衝撃吸収部位Aの上記主凸条20間に該主凸条と略直交する方向に差し渡して一列または二列以上立設された上記副凸条30は、その高さH
30が上記主凸条20の高さH
20の30〜70%であり、かつ該副凸条30の幅W
30の合計W
30Tが10〜20mmとなるように設計されている。このような高さ及び幅の副凸条30を主凸条20間の天板10に立設することにより、荷重が作用した場合の天板10の撓みを効果的に抑え、荷重により主凸条20を適正に弾性変形させて衝撃エネルギーを効率よく吸収させることができる。即ち、形成した副凸条30の高さH
30が高すぎると、変位−荷重吸収曲線の立ち上がりが早くなってしまい、障害限界荷重値以下で吸収できる衝撃エネルギー吸収量が小さくなってしまう。かかる観点から、副凸条30の高さH
30は主凸部の高さH
20の60%以下が更に望ましい。また、副凸部30の高さH
30が低すぎると、天板10の撓みを十分に抑えることができなくなる虞があるため、やはり衝撃エネルギー吸収量が小さくなってしまう。かかる観点から、副凸条30の高さH
30は主凸部の高さH
20の40%以上が更に望ましい。また副凸条30の幅W
30の合計W
30Tが大きすぎるとやはり変位−荷重吸収曲線の立ち上がりが早くなってしまい、一方、小さすぎると、天板10の撓みを十分に抑えることができなくなる虞がある。かかる観点から、副凸条30の幅W
30の合計W
30Tは12〜17mmに設計することがより望ましい。
なお、副凸部30の高さH
30は、形成した副凸部が高さの異なるものである場合は、平均高さを指す。また、副凸条30の幅W
30は、副凸条が台形に形成されている場合は最も狭い先端における幅を指す。また、副凸条が一列しか形成されていない場合は、その一列の副凸条の幅が合計W
30Tとなる。
【0026】
また、上記副凸条30を二列以上設けた場合には、それぞれの副凸条30の幅方向中心間の距離N
30は主凸条20の幅方向中心間の距離N
20と略同一とすることが好ましい。これは、このような正方形格子点を形成する副凸条30と主凸条20との配置とすることにより、バランス良く衝撃荷重を受けることができる。この副凸条30の幅方向中心間の距離N
30は15〜50mmとすることが望ましく、20〜35mmとすることがより望ましい。
【0027】
上記した主凸条20及び副凸条30を形成した衝撃吸収部位Aを、天板側から15mm/分の速度で圧縮した際の5%歪時圧縮荷重(F5)、50%歪時圧縮荷重(F50)及び65%歪時圧縮荷重(F65)は、F5≦F50≦F65の関係を示すように衝撃吸収部材1を設計することが望ましい。この関係は、主凸条20が折れることなく衝撃エネルギーを吸収していることを示す構成であり、5%歪時圧縮荷重(F5)の値は、変形初期の荷重を意味し、変形の初期段階で十分な衝撃エネルギー吸収量を得るためにはこのF5の値は高い方が好ましく、0.5〜2.2kNとなることが望ましい。一方、65%歪時圧縮荷重(F65)は、変形後半の荷重を意味し、許容荷重を超えない範囲で高いことが望ましく、1.5〜2.2kNとなることが望ましい。
【0028】
上記圧縮物性は、JIS K7220:2006に準拠し次のようにして測定する。
まず、衝撃吸収部材から、衝撃吸収部位を中心として縦120mm×横120mmの試験片を切り出す。次に、
図9のように、該試験片100を鋼鉄製の受け治具101上に載置し、試験片中央部の天板側から踵を模したアルミ製の圧縮子102により試験速度15mm/分の速度で圧縮試験を行い、5%歪時、50%歪時、65%歪時の各圧縮荷重(F5、F50、F65)を求める。
なお、圧縮試験時の総エネルギー吸収量は、上記圧縮試験により得られた変位―荷重曲線を元に荷重値を変位で積分することにより得ることができる。
【0029】
次に、上記の如く設計された本発明の衝撃吸収部材1の作用について説明する。
本発明の衝撃吸収部材1は、衝撃吸収部位Aの全体厚みT
1が20〜50mmであるため、全体厚みが薄く、居住スペースの確保と軽量化が図れる。さらに、該衝撃吸収部位Aの天板10の厚みT
10が前記全体厚みT
1の30%以下であるため、限られた全体厚みの中でエネルギー吸収に必要なストロークを確保することができる。また、衝撃吸収部位Aの主凸条20間に該主凸条と直交する方向に差し渡して一列または二列以上の副凸条30を立設することとし、該副凸条30は、高さH
30が主凸条20の高さH
20の30〜70%、幅W
30の合計W
30Tが10〜20mmに設計されているため、該副凸条30によって、軽量化を阻害せずに荷重が作用した場合の天板10の撓みを効果的に抑え、荷重により主凸条20を適正に弾性変形させて衝撃エネルギーを効率よく吸収させることができる。更に、本発明の衝撃吸収部材1は、その全体をポリスチレン樹脂とポリオレフィン樹脂との複合樹脂発泡粒子成形体により形成することとし、主凸条20は、幅W
20が10mm以上であると共に、衝撃吸収部位Aの全体厚みT
1の30%を超える幅に設計されているため、荷重によって該主凸条20が折れて破壊されることがなくても、荷重を大きく上げることなく弾性変形により短いストローク(ひずみ量)の中で衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。即ち、本発明の衝撃吸収部材1は、ポリスチレン樹脂とポリオレフィン樹脂との複合樹脂発泡粒子成形体がもつ衝撃吸収性能と特定の凸条構造が相乗的に働き、限られたストローク(ひずみ量)の中で十分な衝撃吸収性能を発現できる。
【0030】
なお、本発明の実施の形態を示した
図1〜
図4は、衝撃吸収部材1の一部を示したものであり、主凸条20と副凸条30の配置、形状及び数等は、適宜変更することができる。また、衝撃吸収部材1の全体の形状も、車種等に合わせて各形状に成形することができる。
【0031】
例えば、
図1〜
図4に示した衝撃吸収部材1では、すべての副凸条30の高さを同じにしているが、高さが異なる副凸条30を配置したり、副凸条30を部分的に省いて歯抜け状に構成することもできる。また、複数の副凸条30を段階的に高さを変化させて配置することもできる。また、図示した衝撃吸収部材1では、副凸条30の向きが主凸条20に対して直交しているが、副凸条30の向きを主凸条20に対して傾斜させてもよい。
【0032】
更には、主凸条20の断面形状は、台形に限らず長方形、半円形状等であってもよい。また、主凸条20は、幅が同一のものに限らず、衝撃荷重の作用方向に沿って段階的に幅が変化するものであってもよい。このようにすると、圧縮ひずみが大きくなっても急激な圧縮応力の上昇を抑制することができるという利点がある。
【0033】
次に、本発明に係る車両用下肢部衝撃吸収部材の具体例(実施例1)を、図面を示して説明する。
【0034】
図5〜
図8に示した衝撃吸収部材51は、直鎖状低密度ポリエチレン75重量%とエチレン−酢酸ビニル共重合体25重量%との混合物からなるポリオレフィン系樹脂核粒子にスチレンモノマーを含浸重合させてなるポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂(ポリスチレン樹脂の割合70重量%)を基材樹脂とする見掛け密度33kg/m
3の発泡粒子成形体により形成された、本発明に係る車両用衝撃吸収部材の具体例である。
【0035】
この図示した衝撃吸収部材51は、車両の床面に添った形状、即ち、足を載置する中間平坦面部61、その前後方向に屈曲して斜めに延びる前部平坦面部62及び後部平坦面部63で形成された天板60と、該天板60の足載置面とは反対の面に形成された、車両の前後方向全長に亘って立設された複数列の主凸条70と、足(特に踵)が載置される衝撃吸収部位Aに存在する左右それぞれ4本の主凸条70間に、該主凸条70とほぼ直交する方向に差し渡して立設された、それぞれ二列、計12本の副凸条80とから構成されている。
【0036】
上記衝撃吸収部材51の衝撃吸収部位Aの全体厚みT
51は30mmに形成され、該衝撃吸収部位Aの天板60の厚みT
60は7.5mm(前記全体厚みT
51の25%)に形成されている。また、天板60に立設された上記主凸条70は、その高さH
70が22.5mm、幅W
70が15mm(前記全体厚みT
51の50%)に形成され、主凸条70間の間隔L
70は15mmに形成されている。また、足が載置される衝撃吸収部位Aの上記主凸条70間に該主凸条と直交する方向に差し渡して立設された上記副凸条80は、その高さH
80が11.3mm(前記主凸条70の高さH
70の50%)、幅W
80が7.5mmに形成され、二列合計の幅W
80Tが15mmに形成されている。また、二列形成されたそれぞれの副凸条80の幅方向中心間の距離N
80は30mmに形成され、上記主凸条70の幅方向中心間の距離N
70の28mmと略同一に形成されている。
【0037】
上記した主凸条70及び副凸条80が形成された衝撃吸収部材51の衝撃吸収部位Aに、天板側から15mm/分の速度で圧縮荷重を加えたところ、5%歪時圧縮荷重(F5)は0.92kN、50%歪時圧縮荷重(F50)は1.58kN、そして65%歪時圧縮荷重(F65)は2.07kNであり、圧縮荷重2.2kN到達時のエネルギー吸収量は26.6Jであった。実施例1の衝撃吸収部材は、下記参考例の衝撃吸収部材よりも軽量でありながらも、同等のエネルギー吸収特性を有していた。
【0038】
以下、上記した本発明に係る車両用衝撃吸収部材を見出した試験例につき説明するが、本発明は、これらの試験例により制限されるものではない。
【0039】
表1に試験例(実施例1〜5、参考例、比較例1〜4)を開示する。
【表1】
【0040】
表1における実施例1は、上記具体例として示した衝撃吸収部材51の例である。
【0041】
表1における実施例2は、実施例1の副凸条の設計を変更した例であり、具体的には、実施例1の2列の副凸条の代わりに、衝撃吸収部位の中央部に、幅W
80が15mmの副凸条を1列だけ設けた以外は、実施例1と同形状とした衝撃吸収部材の例である。
【0042】
表1における実施例3は、実施例1の副凸条の設計を変更した例であり、具体的には、同一高さの2列の副凸条を、高さH
804.5mmと18mmの異なる高さの2列の副凸条(平均高さ11.3mm、主凸条の高さH
70の50%)に変更した以外は、実施例1と同形状とした衝撃吸収部材の例である。
【0043】
表1における実施例4は、実施例1の副凸条の設計を変更した例であり、具体的には、副凸条の高さH
80を2列とも11.3mmから9mm(主凸条の高さH
70の40%)に変更した以外は、実施例1と同形状とした衝撃吸収部材の例である。
【0044】
表1における実施例5は、実施例1の副凸条の設計を変更した例であり、具体的には、副凸条の高さH
80を2列とも11.3mmから13.5mm(主凸条の高さH
70の60%)に変更した以外は、実施例1と同形状とした衝撃吸収部材の例である。
【0045】
表1における参考例は、従来の設計による衝撃吸収部材の例であり、天板の厚みT
60が10mmであり、主凸条の高さH
70が20mmであり、副凸条を有さない以外は、実施例1と同形状とした衝撃吸収部材の例である。
【0046】
表1における比較例1は、参考例の衝撃吸収部材の天板の厚みを単に薄くした例であり、具体的には、天板の厚みをT
60を7.5mmとし、主凸条の高さH
70を22.5mmとした以外は、参考例と同形状とした衝撃吸収部材の例である。
【0047】
表1における比較例2は、副凸部を設けずに比較例1の主凸部の幅を厚くした例であり、具体的には、主凸条の幅W
70を17mmとした以外は、比較例1と同形状とした衝撃吸収部材の例である。
【0048】
表1における比較例3は、本発明で特定する高さよりも高い副凸条を設けた例であり、具体的には、副凸条の高さH
80を20mm(主凸条の高さH
70の100%)とした以外は、実施例1と同形状とした衝撃吸収部材の例である。
【0049】
表1における比較例4は、本発明で特定する高さよりも低い副凸条を設けた例であり、具体的には、副凸条の高さH
80を4.5mm(主凸条の高さH
70の20%)とした以外は、実施例1と同形状とした衝撃吸収部材の例である。
【0050】
これらの実施例、参考例及び比較例の特性を表2に示し、荷重−変位特性を
図10、
図11に示す。
【表2】
【0051】
実施例1〜5の衝撃吸収部材は、表2及び
図10のグラフで明らかなように、天板の厚みが薄く軽量であるにもかかわらず、参考例の衝撃吸収部材と遜色のないエネルギー吸収特性を示し、障害限界荷重値に対して荷重が適切であるため、最適な衝突エネルギーの吸収量が確保される。
これに対して、表2及び
図11のグラフで明らかなように、比較例1の衝撃吸収部材は障害限界荷重に対して荷重が小さ過ぎるため、十分なエネルギー吸収ができなかった。比較例3の衝撃部材は荷重−変位曲線の立ち上がりが早く、十分なストロークを確保する前に障害限界荷重値を超えてしまうため、エネルギー吸収量が不十分であった。比較例4も比較例1と同様にエネルギー吸収量が不十分であり、何れも好ましくない。また、表2から明らかなように、比較例2の衝撃吸収部材の場合には軽量化が図れない。