特許第5933256号(P5933256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933256
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20160526BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20160526BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20160526BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   A41B13/02 K
   A41B13/02 B
   A41B13/02 R
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-286901(P2011-286901)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-132537(P2013-132537A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】小縄 聡子
(72)【発明者】
【氏名】大島 彩
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−135977(JP,A)
【文献】 特開2011−218158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61F 13/15−13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性トップシートと、液不透過性シートと、これらの間に介在された主吸収体と、前記液透過性トップシート上に設けられた補助吸収部と、両側部に設けられた前後方向に延在する立体ギャザーとを備えた、吸収性物品において、
前記立体ギャザーは、側部に固定された固定部分と、この固定部分から突出する突出部分とを有するとともに、この突出部分のうち前後端部がそれぞれ倒伏状態で固定された非起立部とされ、これら非起立部間の部分が非固定の起立部とされ、且つこの起立部にギャザー弾性伸縮部材が前後方向に伸張した状態で固定されたものであり、
前記補助吸収部は、一方の前記立体ギャザーの固定部分近傍から他方の前記立体ギャザーの固定部分近傍までの幅で前後方向に延在する部分であって、かつ前後方向中間部に固定された付け根部と、この付け根部から延出する本体部とを有し、本体部のうち付け根部側の端部が吸収体を有しない液透過部分とされるとともに、先端側の部分が吸収体を有する吸収部分とされており、
前記補助吸収部の本体部のうち、前記液透過部分を前側に倒すとともに、その先端側の前記吸収部分を後側に倒した状態とすることが可能であり、かつこの状態で前記吸収部分は少なくとも前記トップシート側の面から尿を吸収可能なように構成されており、
前記液透過部分を前側に倒して前斜め上向きに傾斜させるとともに、その先端側の前記吸収部分を後側に倒した状態で、前記吸収部分の先端が立体ギャザーの非起立部の前端に当接するように構成されている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記立体ギャザーの非起立部が、前記補助吸収部の付け根部より後側に、前後方向に間隔を空けて複数設けられている、請求項記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記補助吸収部は、本体部全体が付け根部よりも前側に倒伏されて平坦とされた状態で、本体部の先端部が前記トップシートに対して分離可能に固定されており、この本体部の先端部を前記トップシートから分離することにより、前記液透過部分を前側に倒すとともに、その先端側の前記吸収部分を後側に倒すことが可能なように構成されている、請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記補助吸収部の吸収部分は表裏両面から尿を吸収可能なように構成されるとともに、先端側及び付け根部側の2つの部分に分離可能とされている、請求項記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
液透過性トップシートと、液不透過性シートと、これらの間に介在された主吸収体と、前記液透過性トップシート上に設けられた補助吸収部と、両側部に設けられた前後方向に延在する立体ギャザーとを備えた、吸収性物品において、
前記立体ギャザーは、側部に固定された固定部分と、この固定部分から突出する突出部分とを有するとともに、この突出部分のうち前後端部がそれぞれ倒伏状態で固定された非起立部とされ、これら非起立部間の部分が非固定の起立部とされ、且つこの起立部にギャザー弾性伸縮部材が前後方向に伸張した状態で固定されたものであり、
前記補助吸収部は、一方の前記立体ギャザーの固定部分近傍から他方の前記立体ギャザーの固定部分近傍までの幅で前後方向に延在する部分であって、かつ前後方向中間部に固定された付け根部と、この付け根部から延出する本体部とを有し、本体部のうち付け根部側の端部が吸収体を有しない液透過部分とされるとともに、先端側の部分が吸収体を有する吸収部分とされており、
前記補助吸収部は、本体部全体が付け根部よりも前側に倒伏されて平坦とされた状態で、本体部の先端部が前記トップシートに対して分離可能に固定されており、この本体部の先端部を前記トップシートから分離することにより、前記液透過部分を前側に倒すとともに、その先端側の前記吸収部分を後側に倒した状態とすることが可能であり、
前記補助吸収部の吸収部分は表裏両面から尿を吸収可能なように構成されるとともに、先端側及び付け根部側の2つの部分に分離可能とされており、
前記補助吸収部の吸収部分を、先端側及び付け根部側の2つの部分に分離しない状態で、前記液透過部分を前側に倒して前斜め上向きに傾斜させるとともに、その先端側の前記吸収部分を後側に倒したときの、前記吸収部分の先端が当接する位置と、
前記補助吸収部の吸収部分を、先端側及び付け根部側の2つの部分に分離した状態で、前記液透過部分を前側に倒して前斜め上向きに傾斜させるとともに、その先端側に連なる前記吸収部分の付け根部側の部分を後側に倒したときの、前記吸収部分の付け根部側の部分の先端が当接する位置とに、
前記立体ギャザーの非起立部がそれぞれ設けられている、ことを特徴する使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
成人向けの使い捨ておむつとしては、パッドタイプ(特許文献1,2参照)、テープタイプ、パンツタイプ等の形態のものが提供されている。また、パッドタイプの一形態として、表裏両面から吸収可能な補助吸収性物品も提供されている。
一般に、就寝時用の使い捨ておむつの場合、複数回の排尿に対しても繰り返し吸収可能な吸収量を持たせることが行われている。例えば、特許文献1記載のものは、補助吸収部を後側に倒すことにより、臀部の吸収量を増加させることができる。
しかしながら、就寝時には尿が臀部側に流れやすく、臀部等の背側の肌が尿で湿潤した状態となり易い。その結果、背側の肌がふやけたり、かぶれたりするおそれがあるとともに、高齢者の場合には褥瘡の原因ともなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−135977号公報
【特許文献2】特開2011−56091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の主たる課題は、背側の肌が尿で湿潤するのを効果的に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
液透過性トップシートと、液不透過性シートと、これらの間に介在された主吸収体と、前記液透過性トップシート上に設けられた補助吸収部と、両側部に設けられた前後方向に延在する立体ギャザーとを備えた、吸収性物品において、
前記立体ギャザーは、側部に固定された固定部分と、この固定部分から突出する突出部分とを有するとともに、この突出部分のうち前後端部がそれぞれ倒伏状態で固定された非起立部とされ、これら非起立部間の部分が非固定の起立部とされ、且つこの起立部にギャザー弾性伸縮部材が前後方向に伸張した状態で固定されたものであり、
前記補助吸収部は、一方の前記立体ギャザーの固定部分近傍から他方の前記立体ギャザーの固定部分近傍までの幅で前後方向に延在する部分であって、かつ前後方向中間部に固定された付け根部と、この付け根部から延出する本体部とを有し、本体部のうち付け根部側の端部が吸収体を有しない液透過部分とされるとともに、先端側の部分が吸収体を有する吸収部分とされており、
前記補助吸収部の本体部のうち、前記液透過部分を前側に倒すとともに、その先端側の前記吸収部分を後側に倒した状態とすることが可能であり、かつこの状態で前記吸収部分は少なくとも前記トップシート側の面から尿を吸収可能なように構成されており、
前記液透過部分を前側に倒して前斜め上向きに傾斜させるとともに、その先端側の前記吸収部分を後側に倒した状態で、前記吸収部分の先端が立体ギャザーの非起立部の前端に当接するように構成されている、
【0006】
(作用効果)
本発明では、単なる補助吸収部ではなく、上述のように特徴的な補助吸収部を設けたことにより、補助吸収部の本体部のうち液透過部分を前側に倒すとともに、その先端側の吸収部分を後側に倒した状態とすることができ、かつこの状態で吸収部分は少なくともトップシート側の面から尿を吸収可能となるため、後側へ移動する尿をこの吸収部分とトップシートとの間に誘導して、主に下側の吸収体により吸収することができる。この際、吸収部分は尿により濡れる部分をカバーして肌への接触を防止する機能を果たすことになる。
【0007】
【0008】
また、このような構成とすることにより、補助吸収部の吸収部分を後側に倒しつつその先端部を立体ギャザーとトップシートとの間に差し込んで非起立部の前端に当接させることにより、吸収部分の先端部を立体ギャザーとトップシートとの間に挟持させることができ、これにより、液透過部分を前斜め上向きとし、かつこれを後側の吸収部分で支える姿勢(以下、傾斜浮上姿勢ともいう)とすることができる。この傾斜浮上姿勢では、吸収部分が前側ほどトップシートから浮き上がり、液透過部分が立ち上がるため、吸収部分とトップシートとの隙間が大きくなり、液透過部分を介した吸収部分裏側への尿導入が促進される。
【0009】
<請求項記載の発明>
前記立体ギャザーの非起立部が、前記補助吸収部の付け根部より後側に、前後方向に間隔を空けて複数設けられている、請求項記載の使い捨ておむつ。
【0010】
(作用効果)
このように立体ギャザーの非起立部が複数設けられていると、補助吸収部の先端部を当接させる非起立部を適宜選択することにより、補助吸収部を前述の傾斜浮上姿勢とするときの傾斜角度を調節することが可能となる。
【0011】
<請求項記載の発明>
前記補助吸収部は、本体部全体が付け根部よりも前側に倒伏されて平坦とされた状態で、本体部の先端部が前記トップシートに対して分離可能に固定されており、この本体部の先端部を前記トップシートから分離することにより、前記液透過部分を前側に倒すとともに、その先端側の前記吸収部分を後側に倒すことが可能なように構成されている、請求項1又は2記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
このような構造とすることにより、製造時や製品使用前に補助吸収部が折れ曲がって不都合を生じることがなくなるとともに、補助吸収部の先端部をトップシートから分離して後側に倒しつつ立体ギャザーとトップシートとの間に差し込むだけで、簡単に、液透過部分を前側に倒すとともに、その先端側の吸収部分を後側に倒した状態とすることができる。
【0013】
<請求項記載の発明>
前記補助吸収部の吸収部分は表裏両面から尿を吸収可能なように構成されるとともに、先端側及び付け根部側の2つの部分に分離可能とされている、請求項記載の使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
この形態では、吸収部分を2つの部分に分離することにより、吸収部分の先端側の分離部分は先端部がトップシートに固定された状態で残り、前側へ移動する尿をこの残置分離部分とトップシートとの間に尿を誘導して主に下側の吸収体により吸収することができる。なお、この形態では残置分離部分の表面でも吸収可能ではある。また、吸収部分の付け根部側の分離部分によって、前述の本発明の特徴的な構造を形成できる。つまり液透過部分を前側に倒すとともに、その先端側の分離部分を後側に倒した状態とすることが可能であり、かつこの状態で分離部分はトップシート側の面から尿を吸収可能となる。もちろん、吸収部分は分離せずに使用することも可能である。
【0015】
<請求項記載の発明>
液透過性トップシートと、液不透過性シートと、これらの間に介在された主吸収体と、前記液透過性トップシート上に設けられた補助吸収部と、両側部に設けられた前後方向に延在する立体ギャザーとを備えた、吸収性物品において、
前記立体ギャザーは、側部に固定された固定部分と、この固定部分から突出する突出部分とを有するとともに、この突出部分のうち前後端部がそれぞれ倒伏状態で固定された非起立部とされ、これら非起立部間の部分が非固定の起立部とされ、且つこの起立部にギャザー弾性伸縮部材が前後方向に伸張した状態で固定されたものであり、
前記補助吸収部は、一方の前記立体ギャザーの固定部分近傍から他方の前記立体ギャザーの固定部分近傍までの幅で前後方向に延在する部分であって、かつ前後方向中間部に固定された付け根部と、この付け根部から延出する本体部とを有し、本体部のうち付け根部側の端部が吸収体を有しない液透過部分とされるとともに、先端側の部分が吸収体を有する吸収部分とされており、
前記補助吸収部は、本体部全体が付け根部よりも前側に倒伏されて平坦とされた状態で、本体部の先端部が前記トップシートに対して分離可能に固定されており、この本体部の先端部を前記トップシートから分離することにより、前記液透過部分を前側に倒すとともに、その先端側の前記吸収部分を後側に倒した状態とすることが可能であり、
前記補助吸収部の吸収部分は表裏両面から尿を吸収可能なように構成されるとともに、先端側及び付け根部側の2つの部分に分離可能とされており、
前記補助吸収部の吸収部分を、先端側及び付け根部側の2つの部分に分離しない状態で、前記液透過部分を前側に倒して前斜め上向きに傾斜させるとともに、その先端側の前記吸収部分を後側に倒したときの、前記吸収部分の先端が当接する位置と、
前記補助吸収部の吸収部分を、先端側及び付け根部側の2つの部分に分離した状態で、前記液透過部分を前側に倒して前斜め上向きに傾斜させるとともに、その先端側に連なる前記吸収部分の付け根部側の部分を後側に倒したときの、前記吸収部分の付け根部側の部分の先端が当接する位置とに、
前記立体ギャザーの非起立部がそれぞれ設けられている、ことを特徴する使い捨ておむつ。
【0016】
(作用効果)
このように構成することにより、前述の補助吸収部の吸収部分を分離可能とした形態において、その分離に関係なく、補助吸収部を前述の傾斜浮上姿勢とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、背側の肌が尿で湿潤するのを効果的に防止することができる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの表面側を示す平面図である。
図2】立体ギャザーを取り外し、展開した状態のパッドタイプ使い捨ておむつの表面側を示す平面図である。
図3図1のY−Y断面図である。
図4図1のZ−Z断面図である。
図5図1のX−X断面における補助吸収部等を示す図である。
図6】補助吸収部を傾斜浮上姿勢とする前のパッドタイプ使い捨ておむつを概略的に示す斜視図である。
図7】補助吸収部を傾斜浮上姿勢とした状態の断面図である。
図8】補助吸収部を傾斜浮上姿勢とした装着状態のパッドタイプ使い捨ておむつの要部を概略的に示す斜視図である。
図9】補助吸収部を分離した状態の断面図である。
図10】補助吸収部を分離した装着状態のパッドタイプ使い捨ておむつの要部を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面に示されるパッドタイプ使い捨ておむつの例を参照しながら詳説する。
図1図6は、パッドタイプ使い捨ておむつ200を示している。このパッドタイプ使い捨ておむつ200は、股間部C2と、その前後両側に延在する前側部分F2及び後側部分B2とを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、おむつ全長L(前後方向長さ)は350〜700mm程度、おむつ全幅W1は130〜400mm程度(ただし、おむつの吸収面の幅より広い)とすることができ、この場合における股間部C2の前後方向長さは10〜150mm程度、前側部分F2の前後方向長さは50〜350mm程度、及び後側部分B2の前後方向長さは50〜350mm程度とすることができる。なお、「股間部」とは使用時に身体の股間と対応させる部分を意味し、製品によって、図示形態のように物品の前後方向中央若しくはその近傍から前側の所定部位までの範囲であったり、物品の前後方向中央の所定範囲であったりするものである。図示形態のように、物品の前後方向中間あるいは吸収体の前後方向中間に幅の狭い括れ部分を有する場合は、「股間部」は括れ部分の最小幅部位を前後方向中央とする所定の前後方向範囲を意味する。また、「前側部分(腹側部分)」は股間部よりも前側の部分を意味し、「後側部分(背側部分)」は股間部よりも後側の部分を意味する。
パッドタイプ使い捨ておむつ200は、不透液性シート21の内面と、透液性トップシート22との間に、主吸収体23が介在された基本構造を有している。なお、断面図等における点模様部分は各構成部材を接合する接合部分を示しており、ホットメルト接着剤などのベタ、ビード、カーテン、サミットまたはスパイラル塗布などにより形成されるものである。
【0020】
(主吸収体)
主吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。主吸収体23における繊維目付け及び高吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0〜400g/m2程度とするのが好ましい。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、必要に応じて、主吸収体23はクレープ紙等の包装シート(図示せず)により包むことができる。また、主吸収体23の形状は、相対的に後側の部分が前側の部分よりも幅広な帯状、あるいは長方形状、台形状等、適宜の形状とすることができる。
主吸収体23は、股間部C2を含む前後方向中間の所定部分が幅の狭い括れ部分23nとして形成されている。この括れ部分23nの最小幅W3は、括れ部分23nの前後に位置する非括れ部分の幅(主吸収体23の全幅)W2の50〜65%程度であるのが好ましい。また、おむつ前端を0%としおむつ後端を100%としたとき、括れ部分23nの前端は10〜25%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの後端は40〜65%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの最小幅W3となる部位(最小幅部位)は25〜30%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0021】
(不透液性シート)
主吸収体23の裏側には、不透液性シート21が主吸収体23の周縁より若干食み出すように設けられている。不透液性シート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
また、不透液性シート21の外面は、不織布からなる外装シート26により被覆することができ、この場合、不透液性シート21の幅を主吸収体23の幅と同程度とすることができる。外装シートとしては各種の不織布を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0022】
(透液性トップシート)
主吸収体23の表側は、透液性トップシート22により覆われている。図示形態ではトップシート22の側縁から主吸収体23が一部食み出しているが、主吸収体23の側縁が食み出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
トップシート22と主吸収体23との間には、中間シート25を介在させるのが望ましい。この中間シート25は、主吸収体23により吸収した尿の逆戻りを防止するために設けられるものであり、保水性が低く、且つ透液性の高い素材、例えばメッシュフィルム等を用いるのが望ましい。トップシート22の前端を0%としトップシート22の後端を100%としたとき、中間シート25の前端は0〜11%の範囲に位置しているのが好ましく、中間シート25の後端は92〜100%の範囲に位置しているのが好ましい。また、中間シート25の幅は主吸収体23の幅W2の50〜90%程度であるのが好ましい。
【0023】
(エンドフラップ部・サイドフラップ部)
パッドタイプ使い捨ておむつ200の前後方向両端部では、外装シート26および透液性トップシート22が主吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、主吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。パッドタイプ使い捨ておむつ200の両側部では、外装シート26が主吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在され、この延在部からトップシート22の側部までの部分の内面には立体ギャザーシート31の幅方向外側の部分34が前後方向全体にわたり貼り付けられ、主吸収体23の存在しないサイドフラップ部SFを構成している。これら貼り合わせ部分は、図1では斜線で示されており、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより形成できる。外装シート26を設けない場合、外装シート26に代えて不透液性シート21をサイドフラップ部SFまで延在させ、サイドフラップ部SFの外面側を形成することができる。
【0024】
(立体ギャザー)
表面における両側部には、前後方向に延在する立体ギャザー30がそれぞれ設けられている。立体ギャザー30は上述の立体ギャザーシート31により形成されている。立体ギャザーシート31の幅方向中央側の部分32はトップシート22上にまで延在しており、その幅方向中央側の端部には、立体ギャザー弾性部材33が前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。
立体ギャザーシート31の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。この立体ギャザー弾性部材33としては、糸状、紐状、帯状等の細長状に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
また、両立体ギャザーシート31は、幅方向外側の部分34が前後方向全体にわたりおむつ内面(図示形態ではトップシート22表面および外装シート26内面)に貼り合わされて固定部分34とされるとともに、幅方向中央側の部分32がこの固定部分から突出する突出部分32とされている。そして、この突出部分32のうち、前後方向の両端部では倒伏状態でおむつ表面(図示形態ではトップシート22表面)に貼り合わされて非起立部35とされ、かつこれら非起立部35間の部分はおむつ表面(図示形態ではトップシート22表面)に固定されていない起立部36とされている。この起立部36は、立体ギャザー弾性部材33の収縮力が作用することにより、図4に二点差線で示されるように、おむつ表面(図示形態ではトップシート22表面)から起立して鼠径部等に接触する部分であり、その起立基端37は立体ギャザーシート31における固定部分34と突出部分32との境に位置する。
【0025】
(補助吸収部)
トップシート22上には、一方の立体ギャザー30の固定部分34近傍から他方の立体ギャザー30の固定部分34近傍までの幅で前後方向に延在する補助吸収部10が設けられている。この補助吸収部10は、長方形状等の適宜の形状とすることができる。
特徴的には、補助吸収部10は、前後方向中間部(図示形態のように中央部及びその近傍が望ましいが、これに限定されない)のトップシート22表面にホットメルト接着剤5等により固定された付け根部11と、この付け根部11から延出する本体部12,13とを有し、本体部12,13のうち付け根部11側の端部が吸収体3を有しない液透過部分12とされるとともに、先端側の部分が吸収体3を有する吸収部分13とされている。また、図7に示すように、補助吸収部10は、本体部12,13における液透過部分12を前側に倒すとともに、その先端側の吸収部分13を後側に倒した状態とすることが可能なように構成される。
【0026】
補助吸収部10は付け根部11以外を非固定としても良いが、製造時や製品使用前に補助吸収部10が折れ曲がって不都合を生じるおそれがある。よって、補助吸収部10は、本体部12,13全体が付け根部11よりも前側に倒伏されて平坦とされた状態で、本体部の先端部14がトップシート22に対して分離可能に固定されているのが好ましい。このような構造とすることにより、補助吸収部10の先端側をトップシート22から分離して後側に倒しつつ立体ギャザー30とトップシート22との間に差し込むだけで、簡単に、液透過部分12を前側に倒すとともに、その先端側の吸収部分13を後側に倒した状態とすることができる。具体的に図示形態では、本体部の先端部14がトップシート22に対してホットメルト接着剤5等により接合され、この接合部分14の後側近傍に幅方向に沿って先端部ミシン目15を形成しており、この先端部ミシン目15を切り離すことにより、本体部12,13の先端部14をトップシート22から分離できるようになっている。
【0027】
補助吸収部10の付け根部11の固定位置及び前後方向長さは適宜定めることができるが、図示形態のように、液透過部分12を前側に倒して前斜め上向きに傾斜させるとともに、その先端側の吸収部分13を後側に倒した状態で、吸収部分13の先端が立体ギャザー30の非起立部35の前端に当接するように構成する。このような構成とすることにより、補助吸収部10の吸収部分13を後側に倒しつつその先端部を立体ギャザー30とトップシート22との間に差し込んで非起立部の前端に当接させることにより、図7に示すように、吸収部分13の先端部を立体ギャザー30とトップシート22との間に挟持させることができ、これにより、液透過部分12を前斜め上向きとし、かつこれを後側の吸収部分13で支える傾斜浮上姿勢とすることができる。この傾斜浮上姿勢では、吸収部分13が前側ほどトップシート22から浮き上がり、液透過部分12が立ち上がるため、吸収部分13とトップシート22との隙間が大きくなり、液透過部分12を介した吸収部分13裏側への尿導入が促進される。具体的には、液透過部分の長さをY1、吸収部分の長さをY2、付け根部11から立体ギャザー30の非起立部35の前端までの前後方向長さをY3としたとき、
Y2−Y1 < Y3 < (Y22−Y121/2
の関係を満たすように構成すると、上述の傾斜浮上姿勢とすることができる。
【0028】
また、本体部12,13における液透過部分12を前側に倒すとともに、その先端側の吸収部分13を後側に倒した状態で、吸収部分13は少なくともトップシート22側の面から尿を吸収可能なように構成される。この限りにおいて、補助吸収部10の内部構造は特に限定されず、形状維持性に優れるものであれば吸収性素材単独で構成することもできるが、図4図5及び図7に示すように、吸収体3と、吸収体3の表裏いずれか一方の面を被覆する透液性第一シート1と、吸収体3の裏面を被覆する透液性第二シート2とを備えた構造が簡素であり好ましい。この場合、第一シート1及び第二シート2の両面から吸収が可能であるため、補助吸収部10の姿勢に関係なくその表裏両側から尿吸収が可能となる。
【0029】
第一シート1及び第二シート2としては、有孔または無孔の不織布や有孔プラスチックシートなどが用いられる。不織布を用いる場合、その繊維は特に限定されず、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、また製法も特に限定されず、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。第一シート1及び第二シート2に多数の透孔を形成したプラスチックシートを用いると、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。ただし、図示例と異なり、部分的に公知の不透液性シートを配置したり、外部露出面の一部のみ透液性としたりすることも可能である。
【0030】
第一シート1及び第二シート2は、図示例では吸収体3の周囲からはみ出した部分を接合しているため吸収体3を有しないフラップ部が形成されているが、いずれか一方のシートを吸収体3の周縁部を巻き込むように延在させることで周囲の一部又は全部にフラップ部を有しない構造とすることもできる。また、図示例ではこのフラップ部により付け根部11及び液透過部分12を形成しているが、これらの部分は別のシート状等の液透過性素材を連結することにより形成しても良い。
【0031】
吸収体3としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。吸収体3は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート(図示略)によって包装することができる。吸収体3の形状は、図示形態のように長方形状とする他、適宜の形状とすることができる。吸収体3における繊維目付け及び吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは250〜500g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付けは50〜250g/m2程度とするのが好ましい。
【0032】
以上のように構成されたパッドタイプ使い捨ておむつ200は、図7に示すように、補助吸収部10の本体部12,13のうち液透過部分12を前側に倒すとともに、その先端側の吸収部分13を後側に倒した状態とすることができ、かつこの状態で吸収部分13は少なくともトップシート22側の面から尿を吸収可能となるため、後側へ移動する尿を図中に二点鎖線矢印で示すように液透過部分12を透過させて吸収部分13とトップシート22との間に誘導し、トップシート22を透過させて主に下側の吸収体23により吸収することができる。この際、吸収部分13は尿により濡れる部分(トップシート22や液透過部分12)をカバーして肌への接触を防止する機能を果たすことになる。特に、図示形態では、補助吸収部10が前述の傾斜浮上姿勢となるため、吸収部分13が前側ほどトップシート22から浮き上がり、液透過部分12が立ち上がるため、吸収部分13とトップシート22との隙間が大きくなり、液透過部分12を介した吸収部分13裏側への尿導入が促進される。
【0033】
他方、補助吸収部10の吸収部分13は、図示形態のように先端側及び付け根部11側の2つの部分に分離可能とすることができる。具体的に図示形態では、吸収部分13に含まれる吸収体3を2つに分割して先端側及び付け根部11側にそれぞれ設けるとともに、両吸収体3間の部分における第一シート1及び第二シート2をホットメルト接着剤5等により接合し、かつ両吸収体3間の部分に中間部ミシン目16を設け、この中間部ミシン目16を切り離すことにより、吸収部分13を先端側と付け根部11側とに分離できるようになっている。このような構造を採用すると、図9及び図10に示すように、吸収部分13を2つの部分に分離することにより、吸収部分13の先端側の分離部分13Tは先端部がトップシート22に固定された状態で残り、前側へ移動する尿をこの残置分離部分13Tとトップシート22との間に尿を誘導して主に下側の吸収体23により吸収することができる。一方、吸収部分13の付け根部11側の分離部分13Bは、液透過部分12を前側に倒しつつ後側に倒した状態とすることが可能であり、かつこの状態でトップシート22側の面から尿を吸収可能となる。もちろん、吸収部分13は分離せずに使用することも可能である(図7及び図8参照)。
【0034】
さらに、この補助吸収部10の吸収部分13を分離可能とした形態において、その分離に関係なく、補助吸収部10を前述の傾斜浮上姿勢とするために、図示形態のように、非分離状態で傾斜浮上姿勢としたときの吸収部分13の先端が当接する位置と、分離状態で傾斜浮上姿勢としたときの、吸収部分13の付け根部11側の部分の先端が当接する位置とに、立体ギャザー30の非起立部35をそれぞれ設けるのも好ましい形態である。
【0035】
図示しないが、この形態を応用し、補助吸収部10の付け根部11より後側に、立体ギャザー30の非起立部35を前後方向に間隔を空けて複数設けて、補助吸収部10の先端部を当接させる非起立部35を適宜選択することにより、補助吸収部10を傾斜浮上姿勢としたときの傾斜角度を調節する構造とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、パッドタイプ、パンツタイプ若しくはテープタイプ等、使い捨ておむつ全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0037】
200…パッドタイプ使い捨ておむつ、1…第一シート、2…第二シート、3…吸収体、10…補助吸収部、11…付け根部、12,13…本体部、12…液透過部分、13…吸収部分、14…本体部の先端部、15…先端部ミシン目、16…中間部ミシン目、21…不透液性シート、22…トップシート、23…主吸収体、23n…括れ部分、25…中間シート、26…外装シート、30…立体ギャザー、31…立体ギャザーシート、33…立体ギャザー弾性部材。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10