【文献】
▲高▼森 寛子,医療を支える自動認識,月刊自動認識 ,日本,日本工業出版株式会社,2011年 7月10日,第24巻 第7号,第40−43ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
医師は、患者の症状を四六時中観察できるわけではなく、週に1回などの所定の期間ごとでしか診察できない。しかも患者を実際に診察する場合も、診察の時間は数分程度に限られていることが多い。このため、問診による患者の回答に基づいて、治療の方針を決定するのがほとんどである。
【0007】
ところが、通常の患者は、前回の診察時から今回の診療時までの自らの症状の変化を事細かく覚えてはいないため、処方された薬を服用した後、あるいは食事や運動などの行為をした後に、どのような症状がどの程度現れて、時間とともに症状がどのように変化したか等の詳細な情報を、医師に的確に伝えることは困難である。これらの情報は、医師が患者を治療する上で重要であり、従来はこれらの情報を患者から医師に的確に伝達する手段がなかったため、結局、医師の経験と勘に頼る部分が大きかった。
【0008】
上述した特許文献1は、血液などの検査情報をRFIDで送信することが記載されているが、シート状の検定装置を医師が患者の治療に生かす手法については何ら記載されていない。
【0009】
また、特許文献2のアセスメントファイルは、患者が作成するものではなく、患者への聞き取りによって作成されるため、患者の記憶に頼る度合いが大きく、データの信頼性に問題がある。
【0010】
本発明は、上述した問題点を考慮に入れてなされたものであり、患者が記録した治療経過情報を簡易な手順で医師が治療に役立てることが可能な治療経過記録システムおよび治療経過記録方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、患者が自ら治療経過情報を記録可能なシート状の治療経過記録カードと、
前記治療経過記録カードとの間で近接無線通信を行って、前記治療経過記録カードに記録された治療経過情報を読み出すリーダと、
前記リーダで読み出した治療経過情報を表示装置に表示する制御を行うとともに、前記治療経過記録カードの初期化処理を行う制御装置と、
前記治療経過記録カードの情報入力面に配置され、少なくとも患者の症状を選択するための複数のボタンと、
前記治療経過記録カードに内蔵される通信モジュールと、を備え、
前記通信モジュールは、患者が押圧した前記ボタンを特定する情報と押圧した時刻情報とを組にして記憶する記憶部と、前記リーダとの近接無線通信を行う無線通信部と、電池と、を有することを特徴とする治療経過記録システムが提供される。
【0012】
また、本発明の一態様では、患者が登録されているか否かを検索して、まだ登録されていなければ登録処理を行うステップと、
患者に渡されるべき治療経過記録カードを初期化するステップと、
前記治療経過記録カードに設けられる複数のボタンの少なくとも一つを患者自ら押圧して、押圧したボタンを特定する情報とボタンを押圧した時刻情報とを組にして前記治療経過記録カードに内蔵される通信モジュール内の記憶部に記憶するステップと、
患者から預かった前記治療経過記録カードをリーダに近接配置させて、近接無線通信により前記治療経過記録カード内の前記記憶部に記憶された情報を前記リーダで読み取って、制御装置に伝送するステップと、
前記制御装置に伝送された情報を表示装置に表示させるステップと、を備えることを特徴とする治療経過記録方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、患者が治療経過情報を正確かつ具体的に記録するようにして、この情報を簡易に医師に伝送できるため、この情報を利用して医師はよりきめの細かくて信頼性の高い診療を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の実施の形態に係る治療経過記録システムは、特定の病気に関する治療経過記録カードを用いることを前提としている。このカードが対象とする病気の種類は特に問わないが、以下では、代表的な例として、糖尿病用の治療経過記録カードを用いた治療経過記録システムと、リウマチ用の治療経過記録カードを用いた治療経過記録システムとを順に説明する。
【0016】
どのような病気の治療経過記録カードを用いる場合であっても、本実施の形態に係る治療経過記録システムは、
図1のような概略構成になる。すなわち、
図1の治療経過記録システム1は、治療経過記録カード2との間で近接無線通信を行うリーダ3と、このリーダ3に接続されたホストコンピュータ(制御装置)4とを備えている。ホストコンピュータ4には、表示装置5が内蔵または外付けされ、またマウスやキーボード等の入力デバイス6も内蔵または外付けされる。
【0017】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、リウマチ用の治療経過記録カード2を用いることを特徴とする。この治療経過記録カード2は、後述するように、患者の治療を行う医療機関から患者に渡されるものである。患者は、この治療経過記録カード2に必要な情報を記録して、後日、上述の医療機関に提出する。その医療機関の医師は、患者が治療経過記録カード2に記録した情報を読み出して、診療に役立てることを意図している。
【0018】
図2はリウマチ用の治療経過記録カード2の情報入力面を示す図である。
図2の治療経過記録カード2には、縦方向に三等分されるように折り目31が付けられており、これらの折り目31で折り畳んで三つ折り構造にすることができ、携帯しやすくしている。同カードは、紙またはプラスチックからなるシート状であり、三つ折りにしても、5mm以下の厚さである。
【0019】
この治療経過記録カード2の情報入力面32は、第1面32aから第3面32cまでの3面構成である。第1面32aには、スタートボタン33と取り消しボタン34が配置されている。
【0020】
スタートボタン33は、患者が治療経過記録カード2に各種情報の記録を開始する前に、患者によって押圧される。
【0021】
取り消しボタン34は、取り消しボタン34が押圧される直前に押圧されたボタンの情報を取り消すことを意図したものである。このような取り消しボタン34を設けることで、その直前に押圧したボタンの情報を実質上取り消すことができる。実際には、一度押圧されたボタンの情報を削除したり、上書きすることはできないが、誤った情報を記憶してしまったときは、取り消しボタン34を押圧することで、その情報が誤っている旨の情報を追加で記憶するようにしている。これにより、ホストコンピュータ4で読み出したときには、情報が正しいかどうかを簡易かつ正確に判別できる。また、患者は、何度でも、ボタン操作をやり直すことができ、間違いが許されないという精神的な負担から解放される。
【0022】
治療経過記録カード2の情報入力面32の第2面32bには、患者が種々の行為を行ったか否かを選択するボタン35が設けられている。
図2の例では、服薬を行ったか否かを選択するボタンと、注射を行ったか否かを選択するボタンとが設けられている。これらのボタン35は、患者が服薬または注射を行うたびに押されることが要求される。
【0023】
また、この第2面32bには、各行為を行った後に、体のどの部位に痛みが生じたかを選択するボタン36が設けられている。具体的には、左肩、右肩、左手首、右手首、左ひざ、右ひざ、左足首、右足首に痛みが生じたか否かを選択する計8つのボタン36が設けられている。
【0024】
情報入力面32の第3面32cには、患者が服薬や注射などの行為を行うたびに、手足のどの部位に痛みが生じたかを選択するボタン37が設けられている。具体的には、左手、右手、左足、右足のそれぞれごとに、5本の指の中から痛みがある指を選択する計20個のボタン37が設けられている。
【0025】
情報入力面32に設けられるこれらの行為や症状、およびそれらを選択するボタンの種類は、あくまで一例であり、任意に変更して構わない。また、各ボタンの配置も図示したものに限定されない。
【0026】
治療経過記録カード2の内側の面には、各ボタンの位置に対応づけて、スイッチ接点と、ボタンを押したときだけスイッチ接点を導通させる接点切替パターンとが例えばシルク印刷により形成されており、各スイッチ接点の一端は導電パターンを介して端子部の対応する端子に接続され、他端は導電パターンを介して端子部の接地端子に接続されている。したがって、患者がいずれかのボタンを押圧すると、押圧している間だけスイッチ接点が接点切替パターンを介して導通して、対応する端子にボタンの押圧情報が端子部を介して通信モジュールに伝達される。この通信モジュールは、後述するように、治療経過記録カード2に内蔵されている。通信モジュールは、複数のパッドを有し、これらパッドは、導電性接着剤や導電性テープを介して端子部と接合されている。
【0027】
図3は通信モジュール10の概略構成を示すブロック図である。
図3の通信モジュール10は、紙厚よりも薄い薄膜状であり、フィルム基板11の上に実装されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)12と、水晶振動子13と、ボタン電池14と、スピーカ15と、フィルム基板11の長辺に沿って形成される複数のパッド16と、フィルム基板11の外縁部に沿って形成されるアンテナパターン17と、フィルム基板11上に形成される導電パターン18とを有する。
【0028】
図3は通信モジュール10の内部構成を機能化したブロック図であり、実際の各回路部品やパターンの配置やサイズ、形状、個数は任意に変更可能である。
【0029】
図4はASIC12の内部構成の一例を示すブロック図である。
図4のASIC12は、患者が押圧したスタートボタン33、取り消しボタン34、および各選択ボタンの情報を時刻情報とともに時系列で記憶する記憶部21と、記憶部21に押圧情報を記憶する制御を行う制御部22と、不図示のホストコンピュータ4との間で無線通信を行う無線通信部23とを有する。
【0030】
制御部22はさらに、ホストコンピュータ4を操作する医療関係者の認証を行う認証部22aと、患者が登録されているか否かを検索して、まだ登録されていなければ登録処理を行う患者登録部22bと、患者に渡されるべき治療経過記録カード2を初期化するカード初期化部22cと、記録済みの治療経過記録カード2内の記憶部21に記憶された情報をリーダ3を介して読み出す読み出し制御部22dとを有する。さらに場合によっては、制御部22の内部に、カード初期化部22cでカード2を初期化する前に通信モジュール10内の電池14のバッテリ残量チェックを行うバッテリ残量チェック部22eを設けてもよい。
【0031】
記憶部21は、患者が押圧したボタンを特定する情報と、そのボタンが押圧された時刻情報とを組にして記憶する。取り消しボタン34は、取り消しボタン34が押圧される直前に押圧されたボタンの情報を取り消すことを意図したものである。ホストコンピュータ4は、記憶部21に取り消しボタン34の押圧を特定する情報と、そのボタンが押圧された時刻情報とが記憶されている場合は、取り消しボタン34の直前に押圧されたボタンの情報を取り消す。
【0032】
無線通信部23は、ホストコンピュータ4との間で、いわゆるNFC(Near Field Communication、近接無線通信)を行って、情報の送受を行う。無線通信部23が無線通信に用いる方式や周波数帯域は特に制限されるものではなく、例えば13.56MHzの帯域でISO14443に準拠した無線方式で無線通信を行う。
【0033】
NFCでは、規格上電力の送受もできるため、電池なしで通信モジュール10を駆動することも原理的には可能である。ただし、本実施形態の通信モジュール10は、スピーカ15も備えており、電力の消費量が比較的大きいため、ボタン電池14を搭載している。
【0034】
ボタン電池14を搭載する以上、長期間使用すると、バッテリ切れを起こすが、本実施形態に係る服薬記録カード1が紙製の場合には、長期間の使用には耐えられないことから、バッテリ切れを起こしたら、服薬記録カード1自体を交換することを念頭に置いている。
【0035】
図5は本実施形態に係る治療経過記録システム1におけるホストコンピュータ4の処理手順と患者のカード操作手順の一例を示すフローチャートである。まず、医療機関の医師または操作者(以下、医療関係者と呼ぶ)は、ホストコンピュータ4上で治療経過記録システム1用のアプリケーションソフトウェアを起動して、認証処理を行う(ステップS1)。この認証処理では、医療関係者が入力したログインIDとパスワードが登録されている情報と一致するか否かを認証する。
【0036】
認証処理に成功すると、次に、
図1の治療経過記録カード2を渡すべき患者の氏名や識別番号等を入力して、この患者が治療経過記録システム1のデータベースにすでに登録されているか否かを検索する(ステップS2)。ここでは、
図6に示すように、すでに登録されているすべてまたは一部の患者のリストを表示してもよい。
【0037】
まだ、このデータベースに登録されていなければ、患者の情報を登録する(ステップS3)。患者の個人情報保護のため、必要最小限の情報のみを登録してもよい。例えば、患者を一意に識別可能な管理番号(カルテ番号)と、患者の氏名およびふりがなとだけを登録してもよい。性別や生年月日、職業など、登録に必要な情報は任意に変更して構わない。
【0038】
ステップS3の登録処理が終了した場合、あるいはステップS2で患者の登録情報が検索された場合は、治療経過記録カード2を渡す予定の患者の詳細画面を表示する(ステップS4)。
図7は詳細画面の一例を示す図である。図示のように、詳細といっても、患者を一意に識別可能な最低限の情報(例えば、カルテ番号、氏名、およびふりがなど)のみを表示すればよい。また、この詳細画面内には、治療経過記録カード2を初期化・配布するためのボタン20aと、同カードを回収するためのボタン20bと、同カードに記録された治療記録を画面上で参照するためのボタン20cと、同カードに記録された治療記録をファイルとして出力するためのボタン20dとが設けられている。
【0039】
次に、医療関係者は、カード初期化・配布用のボタン20aをクリックする。これにより、
図8のようなカード配布画面が表示され、その表示にしたがって、医療関係者は患者に渡す予定の治療経過記録カード2をリーダ3にかざす。これにより、ホストコンピュータ4は、このカードの初期化処理を行う(ステップS5)。
【0040】
この初期化処理では、まず、ホストコンピュータ4は、リーダ3を介して治療経過記録カード2と無線通信を行い、このカードをスリープ状態に設定する。スリープ状態に設定される以前は、カードは完全に停止状態であり、この停止状態では、電池14は自然放電以外には電力を消費していない。スリープ状態に設定することで、カード内に必要最小限の電流が流れて、電池14の電力消費量もわずかに増える。ここで、スリープ状態に設定する理由は、患者が少なくともスタートボタン33の操作をしたことを確実に検出できるように、端子部の必要最小限の端子に電圧を印加する必要があるためである。
【0041】
また、初期化処理では、通信モジュール10内の電池14のバッテリ残量を計測する処理も行う。この計測を行う理由は、通信モジュール10は、停止状態であっても、電池14の自然放電によりバッテリ残量が次第に減っていくため、カードの通常使用期間(例えば1年)の間、電池14が持つかどうかを予め推測するために、バッテリ残量を計測し、その結果をホストコンピュータ4の画面に表示する。医療関係者は、電池14のバッテリ残量の計測結果を確認して、このカードを患者に渡してよいかどうかを判断する。
【0042】
なお、バッテリ残量の計測は、電池14の両端子電圧を直接測定するためのパッド16が通信モジュール10に設けられていれば、そのパッド16を用いて電池14の両端子電圧を測定すればよいが、このようなパッドがない場合は、通信モジュール10内の記憶部21に通信モジュールの識別番号や製造日の情報を予め記憶しておき、これらの情報を読み出して、計算によりバッテリ残量を推測してもよい。
【0043】
以上のステップS1〜S5は医療関係者の操作の下でホストコンピュータ4が行う処理手順である。ステップS5の初期化処理が終わると、医療関係者は、初期化処理済みの治療経過記録カード2を患者に渡す(ステップS6)。
【0044】
その後、患者は、ボタンの押圧動作を開始する直前に、治療経過記録カード2内のスタートボタン33を押圧する(ステップS7)。これにより、通信モジュール10は、スリープ状態からアクティブ状態に移行する。このアクティブ状態は、スリープ状態よりも電力の消費量が多い状態であり、各スイッチ接点につながる端子部の各端子に電圧が印加され、いずれかのスイッチ接点の状態が変化したことを瞬時に検出できるようになる。
【0045】
患者が一通りのボタンの選択動作を終えて(ステップS8)、各種情報を記録済みの治療経過記録カード2を医療関係者に返却すると、医療関係者は、ホストコンピュータ4の
図7の画面からカード回収用のボタン20bをクリックする。これにより、
図9のようなカード回収画面が表示され、この表示に従って、医療関係者が治療経過記録カード2をリーダ3にかざすと、カード2内に記録された情報がリーダ3を介してホストコンピュータ4に読み込まれる(ステップS9)。
【0046】
次に、医療関係者が
図7の画面から治療記録参照用のボタン20cをクリックすると、
図10のようなリウマチの治療記録参照画面が表示される。この画面には、患者が治療経過記録カード2でボタン操作を行った情報が漏れなく表示される。したがって、医師は、この画面を見ながら、患者が行った各行為と症状との関係、具体的な症状として痛みのある部位などの詳細な情報を時系列的に確認でき、患者の診療に役立てることができる。
【0047】
治療経過記録カード2内の記憶部21に記憶された情報は削除できないため、記憶部21の記憶容量が満杯になったら、そのカードは新たな情報の記憶はできないことになる。逆に、記憶部21の記憶容量に余裕がある限りは、患者は新たな情報を記憶部に記憶することができる。したがって、
図10の例では、ある一日分の情報のみを記憶している例を示しているが、記憶部21の記憶容量に余裕があって、かつ電池14のバッテリ残量にも余裕がある場合には、患者は複数日にわたるボタン選択情報を記憶部に記憶することができる。
【0048】
このように、第1の実施形態では、リウマチの治療に役立つ患者の種々の行為と種々の症状との相関関係を時系列で記録可能な治療経過記録カード2を用いて、このカードに記録された情報を近接無線通信でホストコンピュータ4に伝送して表示するため、医師は、服薬や注射を行った後に患者の症状がどのように変化したかを詳細かつ正確に把握でき、リウマチの治療を的確に行うことができる。すなわち、医師は、服薬状況と患者の健康状態の相関を簡易かつ詳細に確認でき、新たな処方に役立てることができる。
【0049】
また、表示された情報を電子カルテに取り込む作業を自動化することも可能であり、効率的な診療を行うことができる。
【0050】
さらに、医師は、治療経過記録カード2の記録情報を有効活用することで、患者に問診する時間を短縮でき、結果として、トータルでの診察時間も短縮でき、患者の診察待ち時間が少なくなる可能性がある。
【0051】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、糖尿病用の治療経過記録カード2を用いることを特徴とする。この治療経過記録カード2は、第1の実施形態と同様に、患者の治療を行う医療機関から患者に渡されるものであり、第2の実施形態に係る治療経過記録システム1は、
図1と同様の構成を備え、
図5と同様の処理を行う。
【0052】
図11は第2の実施形態に係る糖尿病用の治療経過記録カード2の情報入力面32を示す図である。この治療経過記録カード2の情報入力面32は、第1の実施形態と同様に、第1面32aから第3面32cまでの3面構成である。第1面32aには、スタートボタン33と取り消しボタン34が配置されている。
【0053】
情報入力面32の第2面32bには、患者が行った基本項目の行為を選択するための8つのボタン41〜43が配置されている。より詳細には、この第2面32bには、食事の量を選択する3つのボタン41と、飲酒、間食、服薬、注射のそれぞれをしたか否かを選択する4つのボタン42と、低血糖発作対応(糖分摂取)をしたか否かを選択する1つのボタン43とが設けられている。
【0054】
情報入力面32の第3面32cには、患者のその他の症状、具体的には、発汗、口渇、動悸、多尿、頭痛、全身倦怠感のそれぞれの症状が現れたか否かを選択する計6つのボタン44と、血糖値の数値を選択する計6つのボタン45とが設けられている。
【0055】
第2の実施形態に係る治療経過記録システム1においても、
図5と同様の処理動作が行われて、最終的に
図12に示すような治療記録参照画面がホストコンピュータ4に表示される。この画面には、患者が治療経過記録カード2でボタン選択を行ったすべての情報が時系列的に表示される。
【0056】
このように、第2の実施形態では、糖尿病の治療に役立つ患者の種々の行為と種々の症状との相関関係を時系列で記録可能な治療経過記録カード2を用いて、このカードに記録された情報を近接無線通信でホストコンピュータ4に伝送して表示するため、医師は患者が食事や飲酒等の各行為を行った後にどのような症状が現れたのかを時系列的に詳細に把握でき、糖尿病の治療を的確に行うことができる。
【0057】
(その他の変形例)
上述した第1および第2の実施形態における各種ボタンの配置および数、通信モジュール内部の構成やパッド16の数等は一例であり、情報収集装置の使用目的に応じて、任意に変更して構わない。
【0058】
すなわち、治療経過記録カード2は、患者が行った行為を選択する2以上のボタンからなる第1ボタン群と、患者の症状を選択する2以上のボタンからなる第2ボタン群と、患者の検査値を選択する2以上のボタンからなる第3ボタン群と、の少なくとも一つのボタン群を備えていればよい。
【0059】
第1の実施形態の特徴と第2の実施形態の特徴は任意に組み合わせてもよい。例えば第2の実施形態に係る糖尿病用の治療経過記録カード2に、体の痛みや手足の痛みを選択するボタンを設けてもよい。
【0060】
上述した治療経過記録システムで使用する治療経過記録カードは、リウマチや糖尿病の治療を目的としたカードに限定されるものではなく、種々の病気(例えば、がん、てんかん、パーキンソン病など)の治療用に適用可能である。また、各病気ごとに、医師が必要とする情報が異なるため、各病気に応じた行為や症状を選択するためのボタンを設けるのが望ましい。
【0061】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。