(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
(
参考例)
図1は、
参考例による油圧ダンパ(以下「ダンパ」という)1を備えるキャスタ2の側面図である。
【0013】
図1に示すように、キャスタ2は、荷物を運搬する台車や車椅子、ベビーカ等の車体に締結されるブラケット21と、ブラケット21に回動可能に支持されるリンク22と、リンク22の先端部に回動可能に支持される車輪23と、を備える。車輪23は、リンク22の先端部に連結されるボルト221によって、図示しないベアリングを介して回転可能に支持される。
【0014】
ブラケット21は、その上部を垂直方向に貫通するボルト211によってベアリング212を介して車体に連結される。これにより、ブラケット21がボルト211の軸回りに回動し、車輪23が進行方向を向くようになっている。
【0015】
リンク22は、回動基端部がボルト222を介してブラケット21に対して水平軸回りに回動可能に支持される。リンク22の回動基端部にはスリーブ223が固着され、スリーブ223はボルト222を介してブラケット21に回転可能に連結される。
【0016】
ブラケット21とリンク22との間には、ダンパ1が介装される。ダンパ1は、リンク22の回動に伴って伸縮し、車体に加わる荷重を支持するスプリングの機能と、リンク22の振動を減衰するダンパの機能と、を併せ持つ。以下、
図2〜4を参照してこのダンパ1の詳細な構成について説明する。
【0017】
ダンパ1は、片ロッド型油圧シリンダの構成を有する。
図2は、ダンパ1が最も伸張した状態を示す断面図である。これに示すように、ダンパ1は、ブラケット21にピン213を介して連結されるシリンダチューブ11と、一端側がリンク22にピン224を介して連結されるロッド12と、ロッド12の他端側にワッシャ13を介してボルト14によって結合されて、シリンダチューブ11内に摺動可能に収められるピストン15と、を備える。
【0018】
シリンダチューブ11の開口端内周面には、ねじ部111が設けられる。このねじ部111に円筒状のヘッド(シリンダヘッド)16が螺合され、ヘッド16の内側にロッド12が摺動可能に嵌合する。ロッド12は、ヘッド16によってシリンダチューブ11と同軸上にて移動するように支持される。
【0019】
ロッド12とヘッド16との間には、オイルシール(Uパッキン)17が介装され、ヘッド16とシリンダチューブ11との間には、Oリング18が介装され、シリンダチューブ11内の密封が図られる。
【0020】
シリンダチューブ11内の油室112には、圧縮性の高粘度作動油としてのシリコンオイル(以下「作動油」という)が充填される。作動油は、ジメチルポリシロキサン構造を持った合成油で、圧力を受けると粘度が急速に増加し、有機系オイルに比べて非常に大きな圧縮率を示す。
【0021】
図3は、ダンパ1があるストローク量Sだけ収縮した状態を示す断面図である。これに示すように、ピストン15は、ダンパ1の収縮状態にて、油室112をヘッド側室112aとボトム側室112bの2つに仕切る。ヘッド側室112aとボトム側室112bとは、ピストン15の外周面115と、シリンダチューブ11の内周面との間に形成される環状の間隙19によって連通している。この間隙19を介して、作動油がヘッド側室112aとボトム側室112bとを往来可能になっている。
【0022】
そして、車体に加わる荷重に応じてロッド12が作動油を圧縮させながらシリンダチューブ11内に進入し、リンク22の傾きが決まる。車体に加わる荷重が大きい場合、ロッド12がシリンダチューブ11内に進入するのに伴って作動油の圧力が急上昇する。これにより、キャスタ2の沈み込みが抑えられ、リンク22の動きを確保できる。
【0023】
また、車輪23が路面から受ける入力に応じてロッド12が伸縮作動し、間隙19を通過する作動油の粘性抵抗が作動速度に応じて発生することによってリンク22の振動が有効に減衰される。
【0024】
このようにして、ダンパ1は、車体に加わる荷重を支持するスプリングの機能と、リンク22の振動を減衰する緩衝器の機能を果たす。
【0025】
ダンパ1は、所定のピストン移動範囲(ストローク範囲)を有する。このロッド12のストローク可能量(ピストン移動範囲)は、
図2に示すようにストロークが零の最伸長状態と、ロッド12の突出側端部がヘッド16の端面に当接する最収縮状態との間となる。
【0026】
本実施形態のようにダンパ1をキャスタ2に取り付ける場合に、スペースを十分に確保できない箇所での取り付けになるため、ダンパ1の小型化が必須であり、ロッド12のストローク量を小さくする必要がある。その上で、作動油の圧縮性を利用してダンパ1にスプリングとしての十分な機能を持たせるためには、収縮状態におけるシリンダチューブ11内の油室112の作動油圧をかなり高い圧力に設定する必要がある。
【0027】
このとき、シリコンオイルは、通常作動油として使用される有機系のオイルと比べて粘度が高いので、ロッド12の収縮速度が速いと、ヘッド側室112aとボトム側室112bとの間でシリコンオイルの往来がスムーズに行われないおそれがある。そのため、収縮状態において、シリンダチューブ11内の油室112の作動油圧が過渡的に非常に高くなる可能性がある。そうすると、シリンダチューブ11内の密封性を確保しているオイルシール17にかかる負荷が大きくなり、オイルシール17の劣化を早めるおそれがある。
【0028】
また、シリコンオイルは、温度変化による体積変化が通常の有機系オイルと比べて大きいので、キャスタ2が使用される雰囲気環境温度が高い場合にも、シリンダチューブ11内の油室112の作動油圧が高くなって、シリンダチューブ11内を密封しているオイルシール17にかかる負荷が大きくなり、オイルシール17の劣化を早めるおそれがある。
【0029】
そこで、ダンパ1は、ピストン移動範囲のシリンダチューブ11内の油室112の内径に比べて、ピストン移動範囲外の油室112の内径を大きくしている。
【0030】
ダンパ1は、シリンダチューブの内径がピストン移動範囲とピストン移動範囲外で等しく形成される従来装置に比べて、ピストン移動範囲外の油室112の内径を大きくしている分だけ、ストロークが零の最伸長状態における油室112の体積が大きくなるため、収縮作動時における内部圧力上昇値を小さくすることができる。したがって、ロッド12の収縮速度が速くなったり、雰囲気環境温度が高くなった場合においても、作動油圧が高くなり過ぎることを抑制できる。
【0031】
こうしてストロークが零の最伸長状態における油室112の体積を大きくすると、その分だけ、収縮作動時におけるシリコンオイルの圧縮率が低下するため、ダンパ1のスプリング特性が減少する。
【0032】
そこで、このスプリング特性の減少分を補うために、シリンダチューブ11の油室112内に、ピストン15を常に
へッド16側に付勢するコイル状のスプリング20が設られる。これにより、従来通りのスプリング特性を確保しつつ、油室112内の作動油圧が過剰に高くなることを抑えられる。
【0033】
ダンパ1は、ストロークが零の最伸長状態に、ピストン15の背面150がヘッド16の端面(内面)116に当接することによってロッド12のストロークが規制され、それ以上に伸長作動しないようになっている。
【0034】
しかし、上記のストロークが零の最伸長状態に、ピストン15の背面150がヘッド16の端面116に対して広い範囲で当接すると、この当接部分が油室112の作動油圧を受けないため、収縮作動時にピストン15の背面150をヘッド16の端面116から離すのに大きな力を必要とする。この場合に、ダンパは、収縮作動時の入力に対する反力が不連続的に生じるため、車体に衝撃を伝える可能性があった。
【0035】
そこで、本発明のダンパ1は、ピストン15の背面150がヘッド16の端面116に当接してストロークが零になる最伸長状態に、ピストン15とヘッド16の間にシリンダチューブ11内の油室112に連通する導油空間100が画成され、収縮作動時に入力に対する反力が連続的に生じる構成とする。導油空間100は、ヘッド側室112aの一部を構成している。
【0036】
図4の(A)はピストン15の背面図、(B)は(A)のA−A線に沿うピストン15の断面図、(C)はピストン15の正面図である。これについて説明すると、円盤状のピストン15は、外周面115と、ヘッド16に対峙する背面(端面)150と、シリンダチューブ11のボトム側に対峙する正面(端面)120と、を有する。
【0037】
ピストン15の背面150は、ピストン15の中心線Oに直交する平面状に形成される。ヘッド16の端面116も、同じく中心線Oに直交する平面状に形成される。ピストン15の背面150とヘッド16の端面116は、互いに平行に対峙している。
【0038】
ピストン15には、その背面150と外周面115に開口する導油溝101が形成され、この導油溝101によってヘッド16との間に導油空間100が画成される。
【0039】
導油溝101は、ピストン15の背面150には、中心線Oと同軸の環状に延びる環状溝部102と、この環状溝部102から放射状(十字状)に延びる4本の放射状溝部103とが開口される。このように、導油溝101は、中心線Oについて対称的に形成される。
【0040】
各放射状溝部103は、ピストン15の外周面115にそれぞれ開口している。各放射状溝部103は、ピストン15の周方向について互いに等間隔を持つように配置される。
【0041】
なお、放射状溝部103は、4つであるが、これに限らず、1つ以上形成すればよい。
【0042】
ピストン15の背面150は、外周面115と環状溝部102と各放射状溝部103の間にて円弧状に延びる外周背面部(円弧状凸部)151と、環状溝部102とロッド12の間にて環状に延びる内周背面部(環状凸部)152とを有する。この外周背面部151と内周背面部152とは、中心線Oについて対称的に形成される。
【0043】
ピストン15の背面150は、環状の中央凹部153が形成される。この中央凹部153にロッド12の基端部が着座する。
【0044】
一方、シリンダチューブ11のボトム側に対峙するピストン15の正面120は、環状の中央凹部123が形成される。この中央凹部123にワッシャ13が着座する。
【0045】
ピストン15の中央部には貫通穴154が形成される。この貫通穴154にボルト14が挿入される。
【0046】
ダンパ1の収縮作動時に、ロッド12を移動させるのに必要な入力は、スプリング20のバネ力と、ロッド12とピストン15が受ける作動油圧と、を合わせた力の反力となる。このとき、ピストン15がヘッド16に対峙する側に受ける作動油圧と、シリンダチューブ11のボトムに対峙する側に受ける作動油圧と、が互いに相殺し、ピストン15の両側の受圧面積差に受ける作動油圧によって生じる押圧力がロッド12を伸長方向に付勢する力となる。
【0047】
ダンパ1は、ストロークが零の最伸長状態において、ピストン15の外周背面部151がヘッド16の端面116に押し付けられることにより、シリンダチューブ11に対してロッド12が支持され、ロッド12がヘッド16と同軸上に延びる姿勢が保たれる。
【0048】
ダンパ1は、ストロークが零の最伸長状態において、ピストン15とヘッド16の間に導油空間100(ヘッド側室112a)が画成されるため、油室112の作動油圧がヘッド16に対峙する導油溝101にも作用し、ピストン15の両側の受圧面積差が拡大することが抑えられる。これにより、ダンパ1は、ロッド12の移動を開始させるのに必要な力が抑えられるため、車輪23が路面から受ける衝撃を有効に吸収し、車体に衝撃を伝えることを抑えられる。
【0049】
これについて詳述すると、ダンパ1は、収縮作動して、
図3に示すように、ピストン15の背面150がヘッド16の端面116から離れた状態では、この背面150にも油室112の作動油圧が導かれるため、ピストン15の両側の受圧面積差は、ロッド12の断面積となる。一方、ダンパ1は、
図2に示すように、ストロークが零の最伸長状態に、ピストン15の背面150がヘッド16の端面116に当接する状態では、ピストン15の導油溝101によって画成される導油空間100に油室112の作動油圧が導かれているため、ピストン15の両側の受圧面積差は、ロッド12の断面積と、ピストン15の背面150がヘッド16の端面116に当接している面積の和となる。ピストン15に導油溝101が形成されることにより、ピストン15の背面150がヘッド16の端面116に当接する面積は、小さく抑えられる。このため、ダンパ1は、ストロークが零でない収縮作動状態と、ストロークが零の最伸長状態とで、油室112の作動油圧を受ける受圧面積の変化が抑えられ、最伸長状態から収縮作動するときからロッド12に働く反力が不連続になることが抑えられる。
【0050】
上記のようにダンパ1の収縮作動時に、ボトム側室112bの作動油が、
図4の(B)に矢印で示すように、ピストン15の外周面115とシリンダチューブ11の間に画成される環状の間隙19と導油溝101を通って導油空間100(ヘッド側室112a)へと円滑に流入する。
【0051】
ダンパ1は、ヘッド16がロッド12を摺動可能に支持するとともに、シリンダチューブ11がピストン15の外周面115を摺動可能に支持することにより、ロッド12がヘッド16と同軸上に延びる姿勢が保たれる。
【0052】
(
第1実施形態)
次に
図5に示す本発明の
第1実施形態を説明する。
図5の(A)はピストン35の背面図、(B)は(A)のA−A線に沿うピストン35の断面図、(C)はピストン35の正面図である。このピストン35が介装されるダンパ1は
参考例と基本的に同じ構成を有するので、相違する部分のみを説明する。なお
参考例と同一構成部には同一符号を付す。
【0053】
ピストン35は、シリンダチューブ11に摺接する外周面135と、この外周面135に形成される切欠部136と、ヘッド16に対峙する背面(端面)160と、シリンダチューブ11のボトム側に対峙する正面(端面)170と、を有する。
【0054】
外周面135の外径は、シリンダチューブ11の内径に対して所定のハメアイスキマを持つように設定される。外周面135は、シリンダチューブ11に微少隙間を持ち、シリンダチューブ11に摺接するようになっている。
【0055】
切欠部136は、外周面135の4カ所を切り欠いて形成される。各切欠部136は、ピストン35の周方向について互いに等間隔を持つように配置される。
【0056】
ピストン35の切欠部136とシリンダチューブ11の間に間隙139が画成される。この間隙139は、中心線Oと平行に延び、ボトム側室112bとヘッド側室112aを連通する。
【0057】
ピストン35には、その背面160と切欠部136に開口する導油溝131が形成され、この導油溝131によってヘッド16との間に導油空間180が画成される。
【0058】
導油溝131は、ピストン35の背面160上にて、中心線Oと同軸の環状に延びる環状溝部132と、この環状溝部132から放射状(十字状)に延びる4つの放射状溝部133とが形成される。このように、導油溝131は、中心線Oについて対称的に形成される。
【0059】
各放射状溝部133は、ピストン35の各切欠部136に中央部にそれぞれ開口している。各放射状溝部133は、ピストン35の周方向について互いに等間隔を持つように配置される。
【0060】
これにより、ダンパ1のストロークが零になる最伸長状態に、ピストン35の背面160がヘッド16の端面116に当接した状態において、間隙139が導油空間180(ヘッド側室112a)に連通される。
【0061】
なお、切欠部136と放射状溝部133は、これに限らず、それぞれ2カ所以上に形成すればよい。
【0062】
ピストン35の背面160は、外周面135と環状溝部132と各放射状溝部133の間にて円弧状に延びる外周背面部161と、環状溝部132とロッド12の間にて環状に延びる内周背面部162とを有する。この外周背面部161と内周背面部162とは、中心線Oについて対称的に形成される。
【0063】
ピストン35の背面160は、環状の中央凹部163が形成される。この中央凹部163にロッド12の端部が着座する。
【0064】
一方、シリンダチューブ11のボトム側に対峙するピストン35の正面170は、環状の中央凹部173が形成される。この中央凹部173にワッシャ13が着座する。
【0065】
ピストン35の中央部には貫通穴164が形成される。この貫通穴164にボルト14が挿入される。
【0066】
ダンパ1は、ヘッド16がロッド12が摺動可能に支持されるとともに、ピストン35の外周面135がシリンダチューブ11に摺動可能に支持されることにより、ロッド12がヘッド16と同軸上に延びる姿勢が保たれ、オイルシール17によるヘッド16とロッド12間の密封性が維持される。
【0067】
ダンパ1がストロークが零の最伸長状態から収縮作動するとき、ボトム側室112bの作動油が、
図5の(B)に矢印で示すように、間隙139を通って導油空間180(ヘッド側室112a)へと円滑に流入する。これにより、導油空間180の圧力が速やかに上昇し、安定したダンパ特性が得られる。
【0068】
切欠部136の大きさと形状によって、ダンパ1の伸縮作動時にボトム側室112bとヘッド側室112aの間を流れる作動油に間隙139が付与する抵抗が任意に設定され、ダンパ1の特定稼働周波数における減衰力をコントロールすることができる。
【0069】
(
第2実施形態)
次に
図6の(A)、(B)に示す本発明の
第2実施形態を説明する。
図6の(A)はピストン55の背面図であり、
図6の(B)は
図6の(A)のA−A線に沿う断面図である。このピストン55が介装されるダンパ1は
参考例と基本的に同じ構成を有するので、相違する部分のみを説明する。なお
参考例と同一構成部には同一符号を付す。
【0070】
ピストン55は、シリンダチューブ11に摺接する外周面185と、この外周面185に形成される切欠部186と、ヘッド16に対峙する背面(端面)195と、シリンダチューブ11のボトム側に対峙する正面170と、を有する。
【0071】
外周面185の外径は、シリンダチューブ11の内径に対して所定のハメアイスキマを持つように設定される。外周面185は、シリンダチューブ11に微少隙間を持ち、シリンダチューブ11に摺接するようになっている。
【0072】
切欠部186は、外周面185の2カ所を切り欠いて形成される。各切欠部186は、ピストン55の周方向について互いに等間隔を持つように配置される。
【0073】
ピストン18の切欠部186とシリンダチューブ11の間に間隙189が画成される。この間隙189は、中心線Oと平行に延び、ボトム側室112bとヘッド側室112aを連通する。
【0074】
ピストン55には、その背面195に開口する螺旋状の導油溝181が形成される。背面195は、導油溝181の開口部の間に残される部位として螺旋状に形成される。
【0075】
導油溝181によってヘッド16との間に導油空間190が画成される。導油溝181は、各切欠部186に開口している。
【0076】
これにより、ダンパ1のストロークが零になる最伸長状態に、ピストン55の背面195がヘッド16の端面116に当接した状態において、間隙189が導油空間190(ヘッド側室112a)に連通される。
【0077】
ピストン55の背面195は、環状の中央凹部193が形成される。この中央凹部193にロッド12の端部が着座する。
【0078】
一方、シリンダチューブ11のボトム側に対峙するピストン55の正面170は、環状の中央凹部173が形成される。この中央凹部173にワッシャ13が着座する。
【0079】
ピストン55の中央部には貫通穴194が形成される。この貫通穴194にボルト14が挿入される。
【0080】
ダンパ1は、ヘッド16がロッド12が摺動可能に支持されるとともに、ピストン55の外周面185がシリンダチューブ11に摺動可能に支持されることにより、ロッド12がヘッド16と同軸上に延びる姿勢が保たれ、オイルシール17によるヘッド16とロッド12間の密封性が維持される。
【0081】
ダンパ1がストロークが零の最伸長状態から収縮作動するとき、ボトム側室112bの作動油が、
図6の(B)に矢印で示すように、間隙189を通って導油空間190(ヘッド側室112a)へと円滑に流入する。これにより、導油空間190の圧力が速やかに上昇し、安定したダンパ特性が得られる。
【0082】
切欠部186の大きさと形状によって、間隙189がダンパ1の伸縮作動時にボトム側室112bとヘッド側室112aの間を流れる作動油に付与する抵抗が任意に設定され、ダンパ1の特定稼働周波数における減衰力をコントロールすることができる。
【0083】
なお、ピストン55に切欠部186を形成することなく、ピストン55の外周面185とシリンダチューブ11の間に環状の間隙を画成してもよい。この場合に、螺旋状の導油溝181を外周面185に開口することにより、ダンパ1のストロークが零になる最伸長状態に、ピストン55の背面195がヘッド16の端面116に当接した状態において、環状の間隙が導油空間190(ヘッド側室112a)に連通される。
【0084】
また、他の実施形態として、ピストンの背面に凹凸部(図示せず)を形成し、ダンパ1のストロークが零になる最伸長状態に、ピストンヘッド16の端面116とピストンの背面の間に油室112に連通する導油空間が画成される構成としてもよい。
【0085】
さらに、他の実施形態として、ヘッド16の端面116に開口する導油溝(図示せず)を形成し、ダンパ1のストロークが零になる最伸長状態に、この導油溝とピストンの間に油室112に連通する導油空間が画成される構成としてもよい。
【0086】
以下、本発明の要旨と作用、効果を説明する。
【0087】
(ア)本発明は、作動油が充填される油圧ダンパ1であって、一端側から荷重が入力されるロッド12と、ロッド12の他端側に連結されるピストン
35、55と、ロッド12が貫通するヘッド16と、ロッド12とヘッド16との間に作動油が充填される油室112を画成するシリンダチューブ11と、を備え、ピストン15は、シリンダチューブ11に対峙する外周面
135、185と、ヘッド16に当接してロッド12の移動を規制する背面
160、195と、外周面
135、185と背面
160、195に渡って開口する導油
溝131、181と、を備える構成とする(
図1〜5参照)。
【0088】
上記構成に基づき、油圧ダンパ1は、ストロークが零となり、ピストン
35、55がヘッド16に当接した最伸長状態では、導油溝
131、181とピストン
35、55とヘッド16の間に導油空間
180、190が画成されるため、ストロークが零の最伸長状態と、ストロークが零でない収縮作動状態とで、油室の作動油圧を受けるピストン
35、55の受圧面積が変化することが抑えられ、最伸長状態からロッド12の移動を開始させるのに必要な力が抑えられる。これにより、油圧ダンパ1は、ストロークに対する反力が最伸長状態から連続的に生じるダンパ特性が得られ、車輪23が路面から受ける衝撃を有効に吸収し、車体に衝撃を伝えることを抑えられる。
【0089】
(イ)ピストン35、55は、シリンダチューブ11に摺接する外周面135と、この外周面135に形成される切欠部136、186と、を備える構成とする(
図5、6参照)。
【0090】
上記構成に基づき、この切欠部136、186とシリンダチューブ11の間に作動油が流れる間隙139、189が画成されるため、切欠部136、186の大きさと形状によって、間隙139、189が油圧ダンパ1の伸縮作動時にボトム側室112bとヘッド側室112aの間を流れる作動油に付与する抵抗が任意に設定され、ダンパ1の特定稼働周波数における減衰力をコントロールすることができる。
【0091】
(ウ)導油溝
131、181が切欠部136、186に開口される構成とする(
図5、6参照)。
【0092】
上記構成に基づき、油圧ダンパ1は、ストロークが零の最伸長状態にも、間隙139、159が導油空間180、190に連通され、最伸長状態から収縮作動するとき、ボトム側室112bの作動油が間隙139を通って導油空間180(ヘッド側室112a)へと円滑に流入する。これにより、導油空間180の圧力が速やかに上昇し、安定したダンパ特性が得られる。
【0093】
(エ)ピストン55は、ヘッド16に当接してロッド12の移動を規制する背面195と、この背面195に開口し螺旋状に延びる導油溝181と、を備える構成とする(
図6参照)。
【0094】
上記構成に基づき、油圧ダンパ1は、ピストン55の背面195がヘッド16に当接するストロークが零の最伸長状態にて、ヘッド16と導油溝181の間に螺旋状の導油空間190が画成されるため、油室112に対するピストン15の受圧面積の変化が抑えられる。
【0095】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。