特許第5933302号(P5933302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5933302タイヤ用ゴム組成物、その製造方法及び空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933302
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物、その製造方法及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20160526BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20160526BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20160526BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20160526BHJP
【FI】
   C08L21/00ZBP
   C08L1/00
   C08L67/00
   !C08L101/16
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-60382(P2012-60382)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-194088(P2013-194088A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 慶太郎
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/096399(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/096393(WO,A1)
【文献】 特開2011−231204(JP,A)
【文献】 特開2009−249449(JP,A)
【文献】 特開2009−084564(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/059386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
B60C 1/00− 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーを含み、
前記バイオベースポリマーが、脂肪族ポリエステル樹脂であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分が、天然ゴム、改質天然ゴム、合成ゴム及び変性合成ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ミクロフィブリル化植物繊維がセルロースミクロフィブリルである請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径が10μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1〜100質量部である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記バイオベースポリマーが、生物由来のモノマーを重合して得られたポリマー、又は微生物によって生産されたポリマーである請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記バイオベースポリマーが、ポリ乳酸である請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記バイオベースポリマーの含有量が、前記ミクロフィブリル化植物繊維100質量部に対して0.05〜50質量部である請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
前記ミクロフィブリル化植物繊維及び前記バイオベースポリマーを混合する工程(I)と、該工程(I)で得られた混合物に前記ゴム成分を添加して更に混合する工程(II)とを含む請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、その製造方法、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物に充填剤としてセルロース繊維等のミクロフィブリル化植物繊維を配合することにより、ゴム組成物の物理的特性を向上できることが従来から知られている。しかしながら、ミクロフィブリル化植物繊維はゴム成分との相溶性が悪いため、ゴム組成物に配合した場合、破断伸びが低下したり、ゴム成分との界面におけるエネルギーロスによって低燃費性が低下する傾向がある。従って、これらの特性を改善しなければ、各種用途、特に過酷な条件下で長期間使用されるタイヤへの適用は困難である。
【0003】
特許文献1では、セルロース繊維の表面を化学的に処理して疎水基を導入することにより、ゴム成分との相溶性を向上させる手法が提案されている。また、近年では、アミノ基を有するシランカップリング剤でパルプを化学処理することにより、ゴム成分との相溶性を向上させる手法が提案されている。しかしこれらの手法はいずれも化学反応プロセスを必要とすることから、より簡便な手法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−84564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、石油資源の使用を極力抑えながら、簡便な手法でミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分との相溶性を向上させ、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性をバランス良く改善できるタイヤ用ゴム組成物、その製造方法、及び該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが検討したところ、バイオベースポリマーを用いることで、石油資源の使用を極力抑えながら、簡便な手法でミクロフィブリル化植物繊維の表面処理を行うことができ、これにより、ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分との相溶性が改善され、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0007】
上記ゴム成分が、天然ゴム、改質天然ゴム、合成ゴム及び変性合成ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0008】
上記ミクロフィブリル化植物繊維がセルロースミクロフィブリルであることが好ましい。
【0009】
上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径が10μm以下であることが好ましい。
【0010】
上記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましい。
【0011】
上記バイオベースポリマーが、生物由来のモノマーを重合して得られたポリマー、又は微生物によって生産されたポリマーであることが好ましい。
【0012】
上記バイオベースポリマーが、脂肪族ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0013】
上記バイオベースポリマーが、ポリ乳酸であることが好ましい。
【0014】
上記バイオベースポリマーの含有量が、上記ミクロフィブリル化植物繊維100質量部に対して0.05〜50質量部であることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、上記ミクロフィブリル化植物繊維及び上記バイオベースポリマーを混合する工程(I)と、該工程(I)で得られた混合物に上記ゴム成分を添加して更に混合する工程(II)とを含む上記ゴム組成物の製造方法に関する。
【0016】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーを含むタイヤ用ゴム組成物であり、バイオベースポリマーを添加するという簡便な手法でミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分との相溶性を向上させることができるため、良好な低燃費性を維持しながら、剛性と破断伸びとを両立できる。これにより、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性をバランス良く改善された空気入りタイヤを提供できる。また、ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーは石油を原料としない材料であることから、石油資源の使用量を低減して、環境に配慮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーを含む。ミクロフィブリル化植物繊維に対して親和性の高いバイオベースポリマーを添加することで、ゴム成分とミクロフィブリル化植物繊維との界面での接着性が改善され、該界面でのエネルギーロスが低下する。また、ミクロフィブリル化植物繊維同士が絡み合った接点がバイオベースポリマーによって補強され、破断強度が向上する。これらの作用により、エネルギーロスの増大を抑制しながら、剛性及び破断伸びを両立できる。従って、上記ゴム組成物をタイヤに用いることで、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性がバランス良く改善された空気入りタイヤを提供できる。
【0019】
また、ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーは、いずれも石油を原料としない材料(石油外資源)であるため、石油資源の使用量を低減することができる。
【0020】
本発明のゴム組成物の製造方法は、ゴム成分、ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーを混合する方法であれば特に限定されないが、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーを混合する工程(I)と、該工程(I)で得られた混合物にゴム成分を添加して更に混合する工程(II)とを含む製造方法が好適である。
【0021】
(工程(I))
工程(I)では、ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーを混合する。このように、予めミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーを混合することで、後述する工程(II)でゴム成分と工程(I)で得られた混合物とを混合した際、ゴム成分中にミクロフィブリル化植物繊維を充分に分散できる。ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーを容易に混合できるという点から、工程(I)では、ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーを水等の溶媒中で混合することが好ましい。
【0022】
工程(I)で使用するミクロフィブリル化植物繊維としては、良好な補強性が得られるという点から、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物、布、再生パルプ、古紙、バクテリアセルロース、ホヤセルロース等の天然物に由来するものが挙げられる。
【0023】
ミクロフィブリル化植物繊維の製造方法としては特に限定されないが、例えば、上記セルロースミクロフィブリルの原料を水酸化ナトリウム等の薬品で化学処理した後、リファイナー、二軸混錬機(二軸押出機)、二軸混錬押出機、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー、振動ミル、サンドグラインダー等により機械的に磨砕ないし叩解する方法が挙げられる。この方法では、化学処理によって原料からリグニンが分離されるため、リグニンを実質的に含有しないミクロフィブリル化植物繊維が得られる。
【0024】
ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径は、ゴム補強効果と破断伸びのバランスが良好であるという観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径の下限は特に限定されないが、工程(I)で水等の溶媒を用いた場合に、濾水性の悪化による作業性の悪化を抑制できる観点から、4nm以上であることが好ましい。
【0025】
ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維長は、好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下であり、また、好ましくは1μm以上、より好ましくは50μm以上である。平均繊維長が下限未満の場合や上限を超える場合は、前述の平均繊維径と同様の傾向がある。
【0026】
ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、走査型電子顕微鏡写真の画像解析、透過型顕微鏡写真の画像解析、X線散乱データの解析、細孔電気抵抗法(コールター原理法)等によって測定できる。
【0027】
工程(I)では、ミクロフィブリル化植物繊維の水分散液を使用することが好ましい。これにより、ミクロフィブリル化植物繊維とバイオベースポリマーとを短時間で均一に混合できる。ミクロフィブリル化植物繊維の水分散液中、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量(固形分)は、好ましくは2〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
【0028】
工程(I)で使用するバイオベースポリマーとしては、生物由来のモノマーを重合して得られたポリマー、又は微生物によって生産されたポリマーであれば特に限定されない。なお、生物由来のモノマーを重合して得られたポリマーには、石油資源由来のモノマー成分が含まれていてもよい。また、生物由来のモノマーには、生物から直接得られる乳酸、コハク酸等のモノマーだけではなく、生物から得られるエタノール、グリセリン等の生物由来物質を化学処理等することにより得られるモノマーも含まれる。また、生物由来のモノマーを重合する方法としては、特に限定されないが、触媒や酵素を用いる方法が挙げられる。なお、本明細書において、バイオベースポリマーには、ミクロフィブリル化植物繊維は含まれない。
【0029】
バイオベースポリマーの具体例としては、ポリヒドロキシアルカノエート(たとえばカネカ(株)製のカネカPHBH)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2−オキセタノン)、ポリヒドロキシ酪酸等の脂肪族ポリエステル樹脂;ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート等の脂肪族芳香族コポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、本発明の効果が好適に得られ、大量に入手できることなどから、脂肪族ポリエステル樹脂が好ましく、ポリ乳酸がより好ましい。
【0030】
工程(I)では、本発明のゴム組成物において後述する含有量となるように各成分を配合することが好ましい。これにより、ゴム補強効果、破断伸び及びエネルギーロスのバランスが良好となる。
【0031】
工程(I)において各成分を混合する方法としては特に限定されず、例えば、プロペラ式攪拌装置、ホモジナイザー、ロータリー攪拌装置、電磁攪拌装置、手動による攪拌等の一般的な方法を用いることができる。
【0032】
(工程II)
工程(II)では、工程(I)で得られた混合物にゴム成分を添加して更に混合する。この工程で、ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分とが複合化される。
【0033】
工程(II)で使用するゴム成分は、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム、合成ゴム及び変性合成ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。上記改質天然ゴムとしては、例えば、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム、脱タンパク天然ゴム等が挙げられる。上記合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等のジエン系ゴムが挙げられる。また、ジエン系ゴム以外の合成ゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。上記変性合成ゴムとしては、上記合成ゴムに官能基を付加したゴム等が挙げられる。これらのゴム成分は、単独で使用してもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。ブレンドする場合のブレンド比においても、各種用途に応じて適宜配合すればよい。なかでも、汎用性やコストの面で有利であること、及び、ミクロフィブリル化植物繊維と混合する際の作業性が良好であるという観点から、NR、BR、SBR、IR、IIR及びENRが好ましく、石油資源の使用量を低減し、環境に配慮することができるという観点から、石油外資源由来の材料であるNR及びENRがより好ましい。
また、ミクロフィブリル化植物繊維とゴム成分とを短時間で均一に混合できるという点から、上記ゴム成分は、ラテックスの状態で使用することが好ましい。ゴムラテックス中、ゴム成分の含有量(固形分)は、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%である。
【0034】
工程(II)では、本発明のゴム組成物において後述する含有量となるように各成分を配合することが好ましい。これにより、ゴム補強効果、破断伸び及びエネルギーロスのバランスが良好となり、また、各種材料の歩留りや作業性も良好となる。
【0035】
工程(II)において各成分を混合する方法としては特に限定されず、工程(I)と同様の方法を用いることができる。
【0036】
工程(I)、(II)により、ミクロフィブリル化植物繊維がゴムマトリクス中に均一に分散したマスターバッチを調製できる。なお、工程(II)で得られた混合物がスラリー状態である場合は、上記混合物を公知の方法で凝固、乾燥した後、バンバリーミキサー等で混練りすることにより、マスターバッチを調製できる。
【0037】
本発明のゴム組成物は、上記マスターバッチを用いて公知の方法で製造される。例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロール等で上記マスターバッチと他の成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。他の配合剤としては、例えば、補強剤(カーボンブラック、シリカ等)、シランカップリング剤、加硫剤、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤等が挙げられる。
【0038】
本発明のゴム組成物において、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であれば、ミクロフィブリル化植物繊維が良好に分散され、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性をバランス良く改善できる。
【0039】
本発明のゴム組成物において、バイオベースポリマーの含有量は、ミクロフィブリル化植物繊維100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であれば、ミクロフィブリル化植物繊維を良好に分散させ、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性をバランス良く改善できる。
【0040】
本発明のゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であれば、ミクロフィブリル化植物繊維が良好に分散され、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性をバランス良く改善できる。
【0041】
ゴム組成物100質量%中の石油外資源の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは97質量%以上である。本発明によれば、上述の成分を併用しているため、石油外資源の含有量を高くした場合であっても、破壊特性、操縦安定性及び低燃費性がバランス良く得られる。
なお、石油外資源の含有量は、ゴム組成物を燃焼させた排気ガス中の二酸化炭素の炭素同位体14Cの存在量を計測し、石油外資源由来材料と石油資源由来材料の14Cの存在量の差異を比較する等の方法により判別可能である。
【0042】
本発明のゴム組成物は、タイヤ部材に使用することができ、なかでも、トレッド、サイドウォールに好適に使用できる。
【0043】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて公知の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成型することにより未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【0044】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車、トラック・バス等に好適に使用できる。
【実施例】
【0045】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0046】
以下、実施例、比較例及び参考例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
天然ゴムラテックス:HYTEX HA(Golden Hope Plantations(ゴールデン・ホープ・プランテーションズ)社製の天然ゴムラテックス、固形分:60質量%、平均粒径:1μm)
ミクロフィブリル化植物繊維:ダイセル化学工業(株)製のセリッシュKY−100G(平均繊維長:0.5mm、平均繊維径:0.02μm、固形分:10質量%、セルロースミクロフィブリル)
ポリ乳酸:三井化学(株) 製のレイシア(バイオベースポリマー)
マスターバッチ1〜3:下記製造例で調製
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM
【0047】
<製造例1:マスターバッチ1の調製>
表1の配合に従い、高速ホモジナイザー(IKA社製のバッチ式ホモジナイザーT65Dウルトラタラックス(Ultraturrax T25))を用いて、24,000rpmの条件でミクロフィブリル化植物繊維及びポリ乳酸を水中で1時間撹拌分散させ、ついで天然ゴムラテックスを添加し、更に30分撹拌分散させた。得られた混合液を5質量%ギ酸水溶液で凝固し、水洗後、40℃の加熱オーブン中で乾燥させることでマスターバッチ1を得た。
【0048】
<製造例2:マスターバッチ2の調製>
ポリ乳酸を使用しない点以外はマスターバッチ1と同様の方法でマスターバッチ2を得た。
【0049】
<製造例3:マスターバッチ3の調製>
天然ゴムラテックスをそのまま5質量%ギ酸水溶液で凝固し、水洗後、40℃の加熱オーブン中で乾燥させることでマスターバッチ3を得た。
【0050】
【表1】
【0051】
<加硫ゴム組成物の調製>
表2の配合に従い、135℃に加熟した250ccインターナルミキサーを用いて、88rpmの条件で加硫促進剤及び硫黄以外の薬品と各種マスターバッチとを3分間混練りした後、混練りしたゴムを排出して、60℃、24rpmの条件で6インチオープンロールにより加硫促進剤と硫黄を添加、5分間混練し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃でプレス加熱することで、実施例1、比較例1、参考例1に対応する加硫ゴム組成物を得た。
【0052】
<実施例、比較例及び参考例>
上記の方法で作製した加硫ゴム組成物を用い、以下に示す評価を行った。なお、表2に示す特性データ中の各指数については、参考例1を基準配合とし、下記記載の計算式で算出した。表2において、石油外資源の含有量とは、ゴム組成物100質量%中の石油外資源の含有量(質量%)である。
【0053】
(引張試験)
JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、100%引張応力、300%引張応力、引張強度、破断伸び、破壊エネルギーを測定した。下記の計算式、
100%引張応力指数=(各配合の100%引張応力)/(基準配合の100%引張応力)×100
300%引張応力指数=(各配合の300%引張応力)/(基準配合の300%引張応力)×100
引張強度指数=(各配合の破断応力)/(基準配合の破断応力)×100
破断伸び指数=(各配合の破断伸び)/(基準配合の破断伸び)×100
破壊エネルギー指数=(各配合の破壊エネルギー)/(基準配合の破壊エネルギー)×100
により100%引張応力指数、300%引張応力指数、引張強度指数、破断伸び指数、破壊エネルギー指数を算出した。指数が大きい程、加硫ゴム組成物が良好に補強されており、ゴムの機械強度が大きく、破壊特性に優れることを示す。
【0054】
(操縦安定性指数及び転がり抵抗指数)
前述の方法で調製された加硫ゴム組成物の2mmゴムスラブシートから測定用試験片を切り出し、粘弾性スペクトロメータVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、各測定用試験片のE(複素弾性率)及びtanδ(損失正接)を測定した。下記の計算式、
操縦安定性指数=(各配合のE)/(基準配合のE)×100
転がり抵抗指数=(各配合のtanδ)/(基準配合のtanδ)×100
により操縦安定性指数、転がり抵抗指数を算出した。操縦安定性指数が大きい程、空気入りタイヤとして用いた場合に良好な操縦安定性を与え、転がり抵抗指数が小さい程、空気入りタイヤとして用いた場合に良好な転がり抵抗特性(低燃費性)を与えることを示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2より、ミクロフィブリル化植物繊維を含有し、バイオベースポリマーを含有しない比較例1は、参考例1と比較して、引張応力等は改善したが、破断伸び、低燃費性が悪化した。一方、ミクロフィブリル化植物繊維及びバイオベースポリマーを含有する実施例1は、比較例1と比較して、低燃費性を維持しながら、破断伸びが改善した。また、その他の性能も比較例1より優れていた。