特許第5933307号(P5933307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大王製紙株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5933307-香り付きティシュペーパー製品 図000002
  • 特許5933307-香り付きティシュペーパー製品 図000003
  • 特許5933307-香り付きティシュペーパー製品 図000004
  • 特許5933307-香り付きティシュペーパー製品 図000005
  • 特許5933307-香り付きティシュペーパー製品 図000006
  • 特許5933307-香り付きティシュペーパー製品 図000007
  • 特許5933307-香り付きティシュペーパー製品 図000008
  • 特許5933307-香り付きティシュペーパー製品 図000009
  • 特許5933307-香り付きティシュペーパー製品 図000010
  • 特許5933307-香り付きティシュペーパー製品 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933307
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】香り付きティシュペーパー製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20160526BHJP
   A47K 10/42 20060101ALI20160526BHJP
   A47K 10/20 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B65D83/08 B
   A47K10/42 B
   A47K10/42 D
   A47K10/20 B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-68860(P2012-68860)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-199305(P2013-199305A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】中野 祐希
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信義
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−146285(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0224513(US,A1)
【文献】 特表平10−503992(JP,A)
【文献】 特開平11−292173(JP,A)
【文献】 米国特許第05577612(US,A)
【文献】 特開2007−050905(JP,A)
【文献】 特開2009−001334(JP,A)
【文献】 特開平11−130167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/08
B65D 25/52
A47K 7/00
A47K 10/18
A47K 10/20
A47K 10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に取出し口形成用の環状の裂開用ミシン目線が形成された紙箱の前記上面の内側面に、複数のスリットを有するシート材を、その複数スリットが前記裂開用ミシン目線で囲まれる範囲内に位置するようにして貼付した収納箱と、この収納箱内に収納されたティシュペーパーが折り畳み積層されたティシュペーパー束と、を有し、
前記シート材が、紙箱上面側から第1フィルムシートと第2フィルムシートとがこの順で重ねられたものであり、
前記第1フィルムシートが、紙箱底面に対向する面に香料層と、切り取り線で囲まれた第1分離部と、複数のスリットとを有し、
その複数のスリットは同一直線上にあり、前記第1分離部が、そのスリット間でスリットに連接して位置し、
第2フィルムシートは、切り取り線で囲まれる第2分離部を有し、
その第2分離部は、前記第1分離部に重なる部分を有し、かつ第1分離部よりも広範な領域であり、
前記第1分離部は、環状の裂開用ミシン目線で囲まれる部分と重なる部分でその裂開用ミシン目線で囲まれる部分と接着され、かつ、第2分離部と重なる部分でその第2分離部と接着されている、ことを特徴とする香り付きティシュペーパー製品。
【請求項2】
第1分離部が収納箱の長手方向中央を挟んで間隔を開けて2箇所に設けられ、前記第2分離部が、それら2箇所の第1分離部と各スリットが重なる位置を含む領域である、請求項1記載の香り付きティシュペーパー製品。
【請求項3】
紙箱の上面の内側面は、ガスバリア性樹脂又はガスバリア性シートにより被覆されている請求項1又は2記載の香り付きティシュペーパー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパー製品、特に香りを発する香り付きのティシュペーパー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚のティシュペーパーからなる束が収納箱内に収納され、その収納箱(カートン箱或いはカートンとも称される)の上面に設けられた取出し口からティシュペーパーを順次一枚(一組とされたものも含む)ずつ引き出して使用するティシュペーパー製品はよく知られる。その取り出し方法は、一枚を取り出すとそれに連続して次ぎの一枚が取出し口から引き出されるポップアップ式となっている。
【0003】
このティシュペーパー製品の中には、香りを発するようにした製品があり、消費者に受け入れられている。この香り付きのティシュペーパー製品は、一時的に強い香りがするものより、継続的にほのかに香るものを消費者が好む傾向にあり、よって香り付きティシュペーパー製品では、製造されてから使用者がティシュペーパーを使いきるまで安定して継続的にほのかに香りがすることが求められる。
【0004】
従来の香り付きのティシュペーパー製品は、ティシュペーパー自体に香料を塗布した製品や、ティシュペーパー取り出し時にティシュペーパーと収納箱とが摺れる部分にマイクロカプセルに封入した香料を担持させ、取り出し時にマイクロカプセルが壊れて内部の香料をティシュペーパーに付着させるとともに周囲に蒸散させるようにした製品がある。
【0005】
しかし、前者のティシュペーパー自体に薬液を付与した製品は、当該ティシュペーパーを製造するにあたり製造設備全体に香料の香りが付着することになるため、香り付きティシュペーパーを製造する専用ラインが必要であり、製造コストが高くなるという問題がある。また、ティシュペーパーに香料成分を直接的に付与すると、収納箱内で蒸散した香料成分がカートン原紙にも吸収されてしまうために、保管期間が長期に渡る場合など、開封時には十分な香りが既に得られなくなっていることがあった。
【0006】
一方、後者のマイクロカプセルを摺れる位置に付与した製品は、ティシュペーパーと収納箱とが摺れる位置が使用開始から使用を終えるまでさほど変化しないため、開封後の初期に香り強く使用するにつれて香りが急激に弱くなり、継続的に安定した香りの強さを発現させることが難しかった。また、マイクロカプセル内に香料を封入する煩雑な製造工程を要するうえ、その香料をマイクロカプセルに封入する際の歩留まりが低くコスト高となる問題がある。
【0007】
このように従来の香り付きティシュペーパー製品については、製造が煩雑で製造コストが高い、ある程度保管した後の香りの発現が不十分である、ほのかな香りを継続的に安定して発することに関し十分に満足するものとはいえないという問題があり、これらの問題の改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−50905号公報
【特許文献2】特開2009−1334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、製造がし易く、製造コストも安く、ある程度の保管期間後においても香りが十分に感じられ、しかも、ほのかな香りが継続的に安定して発せられる香り付きティシュペーパー製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は以下のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
上面に取出し口形成用の環状の裂開用ミシン目線が形成された紙箱の前記上面の内側面に、複数のスリットを有するシート材を、その複数スリットが前記裂開用ミシン目線で囲まれる範囲内に位置するようにして貼付した収納箱と、この収納箱内に収納されたティシュペーパーが折り畳み積層されたティシュペーパー束と、を有し、
前記シート材が、紙箱上面側から第1フィルムシートと第2フィルムシートとがこの順で重ねられたものであり、
前記第1フィルムシートが、紙箱底面に対向する面に香料層と、切り取り線で囲まれた第1分離部と、複数のスリットとを有し、
その複数のスリットは同一直線上にあり、前記第1分離部が、そのスリット間でスリットに連接して位置し、
第2フィルムシートは、切り取り線で囲まれる第2分離部を有し、
その第2分離部は、前記第1分離部に重なる部分を有し、かつ第1分離部よりも広範な領域であり、
前記第1分離部は、環状の裂開用ミシン目線で囲まれる部分と重なる部分でその裂開用ミシン目線で囲まれる部分と接着され、かつ、第2分離部と重なる部分でその第2分離部と接着されている、ことを特徴とする香り付きティシュペーパー製品。
【0011】
〔請求項2記載の発明〕
第1分離部が収納箱の長手方向中央を挟んで間隔を開けて2箇所に設けられ、前記第2分離部が、それら2箇所の第1分離部と各スリットが重なる位置を含む領域である、請求項1記載の香り付きティシュペーパー製品。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
紙箱の上面の内側面は、ガスバリア性樹脂又はガスバリア性シートにより被覆されている請求項1又は2記載の香り付きティシュペーパー製品。
【0013】
〔作用効果〕
本発明のティシュペーパー製品は、環状の裂開用ミシン目線で囲まれる範囲を上面の他の部分から引き剥がすと、これに接着される第1分離部が切り取り線で他の部分から分離され、それとともにその第1分離部と接着されている第2分離部も切り取り線で他の部分から分離される。そして、その際、第1のフィルムシートの複数のスリットが第1分離部の分離によって連続するようになるとともに、第2分離部は、第1フィルムシートに形成され、一体化されたスリットを介して引き抜かれるようにして収納箱から分離される。
【0014】
そして、第2フィルムシートの分離部が収納箱から分離されることにより、第1フィルムシートの紙箱底面側に設けた香料層がティシュペーパー束に対面するようにして露出される。
【0015】
そして、本発明では、ティシュペーパー自体に香料を付与するのではなく、香料層から蒸散する香料がティシュペーパー束に付与され、その香料が付与されたティシュペーパー束からティシュペーパーを引き出すことで、当該ティシュペーパーとそのティシュペーパーを引き出す際の操作により収納箱内から収納箱外へ放出される香料によって香りが感じられるようにしたものであるから、香りが強すぎずほのかな香りを発するものとなる。
【0016】
また、ティシュペーパー製品を使用しない状態、すなわち、裂開用ミシン目線を切り剥がしていない状態では、香料層がガスバリア性のある第1フィルムシートと第2フィルムシートとの間に挟まれ香料の蒸散が発現しないため、ある程度保管期間が長い場合においても、使用開始と同時に香りが感じられるものとなる。
【0017】
特に本発明では、紙箱の上面の内側面をガスバリア性樹脂により被覆するのがよい。このようにすると、香料層から蒸散した香料が紙箱に吸収されず、紙箱内に留まるようになり、ティシュペーパー束へ香りがより継続的に安定的に付与されることになる。
【0018】
また、本発明のティシュペーパー製品は、ティシュペーパー自体ではなく、シート材に香料を担持させたため、ティシュペーパー自体に香料を付与する際の問題は存在しない。シート材に香料を塗布する設備は、ティシュペーパーの製造設備と比較すると小規模にすることができ、製造コストは格段に低減する。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、製造がし易く、製造コストも安く、ある程度の保管期間後においても香りが十分に感じられ、しかも、ほのかな香りが継続的に安定して発せられる香り付きティシュペーパー製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る衛生薄葉紙収納箱の斜視図である。
図2】本発明に係る衛生薄葉紙収納箱の展開図の例である。
図3】本発明に係る衛生薄葉紙収納箱の特に側短面の構成と取出し口を説明するための斜視図である。
図4】本発明に係る衛生薄葉紙収納箱の使用時の斜視図である。
図5】本発明に係るシート材を説明するための箱内側から上面をみた図である。
図6図1のA−A断面図である。
図7】本発明に係るシート材を説明するための紙箱上面を内側からみた図である。
図8】本発明に係るシート材を説明するための第1フィルムシートを収納箱内側からみた図である。
図9】本発明に係るシート材を説明するための第2フィルムシートを収納箱内側からみた図である。
図10図4のB−B断面を模試的に示した断面図であり、本発明に係る衛生薄葉紙収納箱の取出し口の形成時を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次いで、本発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に詳述する。図1〜10に、本発明に係るティシュペーパー製品100を示す。
【0022】
本発明に係るティシュペーパー製品1は、複数枚のティシュペーパー2t,2t…が、折り畳まれ重層されてなるティシュペーパー束2が、上面11に取出し口形成用の環状の裂開用ミシン目線20が形成された収納箱1に収納され、使用時に当該取出し口20Xからティシュペーパー2tを取り出すと、隣接して積層されている下層のティシュペーパーの一部が取出し口20Xから露出されるように構成したものである。
【0023】
本発明に係る収納箱1は、カートン箱とも呼ばれる直六面体形状の箱体であり、製品外観をなすものである。この収納箱1は、上面11に取出し口20Xを形成するための環状の裂開用ミシン目線20を有する紙箱10と、前記ミシン目線20により囲まれる範囲20aを紙箱内側から覆うシート材30とを有する。
【0024】
紙箱10は、収納箱1の外郭をなす概ね紙製の箱体であり、その大きさ、形状、展開形状等は既知の収納箱の紙箱の構成が採用される。一般的な収納箱の大きさは、概ね長手縁L1が110〜320mm、短手縁L2が70〜200mm、高さL3が40〜150mm程度であり、本発明に係る収納箱1もこの大きさとすることができる。
【0025】
また、紙箱10の基材は、バージンパルプ、古紙パルプ等の各種のパルプを主原料とする既知の紙素材が採用でき、好適な紙箱10の素材は、坪量250〜500g/m2のコートボール紙である。
【0026】
本実施形態の紙箱10の構造は、図2図3に示すように、底面12と一方の長側面13を糊代部12Aで糊付けして筒状とした後、上面11、底面12及びこれらを連接する長側面13から延出する各フラップF,F…を箱内面側に折り返し、各フラップF,F…の当接部分をホットメルト接着剤等により接着して短側面14を構成した構造となっている。なお、本発明の紙箱10は、この構造に限定されるわけではない。
【0027】
他方、紙箱10の上面に形成される裂開用ミシン目線20は環状をなし、適宜のカットタイ比で構成される。裂開用ミシン目線20は、通常のミシン目線の他、二重ミシン目線、ジッパーミシン目線等で構成することができる。一部分のみ二重ミシン目線としてもよい。
【0028】
本実施形態に係る裂開用ミシン目線20は、紙箱長手方向に延在する長辺21,21とこの長辺21,21の端同士を繋ぐ短手縁に平行な短辺22,22とを有し、裂開用ミシン目線20に囲まれる範囲20aの形状は、収納箱1の長手方向に沿う方向が長い適宜の形状である。一般的には、収納箱1の長手方向に沿うやや細長い角取り矩形、或いはその矩形の長辺21,21の中央部を外方に向かってやや膨張させてアーチ状とし、楕円に近い形状としたものである。図示の形態は後者の例である。
【0029】
他方、シート材30は、前記裂開用ミシン目線20により囲まれる範囲21aより大きく、例えば、矩形や楕円形であり、紙箱上面の内面側において、特に裂開用ミシン目線20の切り剥がしに影響がないように、裂開用ミシン目線20の外側で接着剤23によって接着されている。本発明では、そのシート材30は、紙箱上面側からガスバリア性を有する第1フィルムシート31とガスバリア性を有する第2フィルムシート32とがこの順で重ねられた複層構造となっている。シート材30の厚みは、10〜200μmが適し、10μm未満では、強度的に不足し、ティシュペーパー2tの取り出し時において裂けあるいは破断の確率が高くなり、逆に、100μmを超えると、強度の問題はないものの、取り出し難くなり、またコスト高となる。
【0030】
第1フィルムシート31と第2フィルムシート32とは、周縁部分に配置した接着部33により接着されて一体化されている。その接着部33は、接着剤による接着、熱融着、熱圧着、超音波融着等適宜のフィルム接着手段が採用できる。
【0031】
シート材30を構成する第1フィルムシート31には、切り取り線で囲まれた第1分離部31A,31Aと、複数のスリット31S,31S…とが設けられている。それら複数のスリット31S,31S…は同一直線上に並ぶように配され、前記第1分離部31A,31Aは、そのスリット間でスリット31S,31S…に連接するようにして配置されている。これらのスリット31S,31S…及び第1分離部31A,31Aは、裂開用ミシン目線20により囲まれる範囲20aで長手方向に沿って位置されている。
【0032】
第1分離部31Aの外縁をなす切り取り線31aは、ミシン目線、アンカット部を設けたスリット線等が例示できる。この切り取り線により、第1分離部31Aが、他の部分と完全に分離されずかつ意図的には容易に分離ができる態様となっている。本発明では、第1分離部31Aの形状、大きさは、特に限定されないが、意図的な分離がし易い観点から角取り矩形、楕円形、円形が望ましい。また、第1分離部31Aの大きさも、特に限定されない。但し、本発明に係る第1分離部31Aはスリット間でスリット31S,31S…に連接するようにして配置されているため、第1分離部31Aを分離することで各スリット31S,31Sが一体化される。したがって、第1分離部が過度に大きいと、十分な長さのスリットが形成されず、スリットによるティシュペーパー引き出し時に適度な抵抗を与える、一部露出するティシュペーパーを支持する、といった効果が得られなくなる。一般的なティシュペーパー製品の大きさでは、第1分離部31Aの大きさは、0.3〜2.0cm2であるのが望ましい。
【0033】
他方、各スリット31S,31Sの長さは、第1分離部31Aの大きさ、個数と、環状ミシン目線20との大きさの関係で適する適宜の長さが採用できる。
【0034】
なお、図示の本実施形態では、好ましい例として、第1分離部31Aが、環状の裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの長手方向中央を挟んで間隔を開けて2箇所に設けた例を示しているが、この形態に限定されない。第1分離部31Aは一箇所であってもよい。
【0035】
他方、第1フィルムシート31は、前記第1分離部31Aが、環状の裂開用ミシン目線20で囲まれる部分20aと重なる部分でその裂開用ミシン目線20で囲まれる部分20aと接着部24を介して接着されている。したがって、本発明に係るシート材30は、裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aを切り剥がして分離する際に、同時に第1分離部31Aが第1フィルムシート31の他の部分から分離されるようになっている。第1分離部31Aと環状の裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aを接着する接着部は、接着剤による接着が望ましいが、その他、熱融着等とすることもできる。接着剤としては、ホットメルト接着剤などの既知の接着剤とすることができる。
【0036】
他方、第1フィルムシート31は、紙箱底面に対向する面に香料層31xが設けられている。この香料層31xは、グラビア印刷等の適宜の印刷機を用いて第1フィルムシート31に係るフィルム基材上にバインダーを用いて固形香料を定着させたり、香料インキを塗工したりすることで形成される。塗布量等は、用いる香料やバインダー等によって適宜定めることができ、本発明では特に限定はされないが、十分な香りが得られかつシート材が硬く成りすぎないようにする必要があることから、固形分量でたとえば2.3〜23g/m2の塗布量が例示できる。固形香料を定着させるバインダーとしては、でんぷん、PVA、ウレタン樹脂、アクリル樹脂を使用できる。香料インキとしては、既知の印刷インキの顔料成分の一部を香料に置き換えた公知のものを用いることができる。香料インキに用いるバインダーの具体例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、マレイン酸エステル共重合体等が例示でき、香料インキに用いられる油性溶剤としては、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、プロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル類、フェノキシエタノール等の高級アルコール類、グリセリン脂肪酸エステル等のエステル類が例示できる。
【0037】
第1フィルムシートのフィルム基材は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、塩化ビニリデンフィルム、それらのフィルムを適宜積層したラミネートフィルムが例示できる。好ましくは、ガスバリア性に優れる塩化ビニリデンフィルム或いは塩化ビニリデンフィルム層を含む積層フィルムである。フィルム基材をガスバリア性に優れたものとすると、香料層からの香料が裏抜けして紙箱外へ透過し難くなる。このフィルム基材の厚みは、5〜100μmが適し、5μm未満では、強度的に不足し、第1分離部31Aの分離時やティシュペーパー2tの取り出し時において裂けあるいは破断の確率が高くなり、逆に、100μmを超えると、強度の問題はないものの、硬いシート材となりティシュペーパー2tが取り出し難くなり、またコストも高くなる。
【0038】
第1フィルムシート31の香料層31xに担持させる香料は、特に限定されるものではないが、具体例として、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然香料、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料あるいはこれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。市販品を使用することもできる。
【0039】
他方、第2フィルムシート32は、切り取り線32aで囲まれる第2分離部32Aを有する。第2分離部32Aの外縁をなす前記切り取り線32aは、第1分離部31Aに係る切り取り線31aと同様にミシン目線、アンカット部を設けたスリット線等が例示される。
【0040】
前記第2分離部32Aは、前記第1分離部31Aと重なる位置にあり、かつ第1分離部31Aより広範な領域を有している。この第2分離部32Aの役割は、分離前においては第1フィルムシート31に設けられた香料層31xを被覆して香料の蒸散を防止し、分離後に香料層31xを適当範囲ティシュペーパー束2に対面するように露出することにある。したがって、第2分離部32Aの大きさは後述の分離操作を可能とする範囲で、適当な範囲の香料層を露出させる大きさとすればよい。分離操作の点では、一般的なティシュペーパー製品の大きさでは、第2分離部32Aの大きさは、3〜12cm2であるのが望ましい。
【0041】
なお、第2フィルムシート32は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、塩化ビニリデンフィルム、それらのフィルムを適宜積層したラミネートフィルムが例示できる。第2フィルムシートは、上記のとおり未使用時における香料層からの香料の蒸散を防止する役割を担うことから、特に好ましくは、ガスバリア性に優れる塩化ビニリデンフィルム或いは塩化ビニリデンフィルム層を含む積層フィルムである。第2フィルムシートの厚みは、5〜100μmが適し、5μm未満では、強度的に不足し、第2分離部の分離時やティシュペーパー2tの取り出し時において裂けあるいは破断の確率が高くなり、逆に、100μmを超えると、強度の問題はないものの、硬いシート材となりティシュペーパー2tが取り出し難くなり、またコストも高くなる。
【0042】
他方、第2フィルムシート32は、第2分離部32Aが、前記第1分離部31Aと接着部34を介して接着されている。したがって、本発明に係るシート材30は、第1分離部31Aが分離されると同時に第2分離部32Aも分離される。すなわち、本発明に係るシート材30は、裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aを切り剥がして分離する際に、同時に第1分離部31Aが第1フィルムシート31の他の部分から分離され、その際に第2分離部32Aも第2フィルムシート32の他の部分から分離される。なお、第2分離部32Aは、第1分離部31Aの分離によって一体化されるスリットを介して、裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20a及び第1分離部31Aとともに取り除かれる。第2分離部32Aと第1分離部31Aとを接着する接着部34は、接着剤による接着が望ましいが、その他、熱融着等とすることもできる。接着剤としては、ホットメルト接着剤などの既知の接着剤とすることができる。
【0043】
図示の本実施形態では、好ましい例として、第1分離部31Aが、環状の裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの長手方向中央を挟んで間隔を開けて2箇所に設けられており、第2分離部32Aは、第1フィルムシート31のそれら2箇所の第1分離部31A,31Aと各スリット31S,31S…を包含する領域となっているが、この形態に限定はされない。なお、この好ましい形態では、環状の裂開用ミシン目線20のいずれの短辺側から裂開する操作を行なっても効果的に各分離部31A,32Aが他の部分から分離除去でき、しかも広範な範囲の香料層31xを露出することができる。
【0044】
本発明に係るティシュペーパー製品100は、上記紙箱10及びシート材30の構成により、図3図4に示すとおり、裂開用ミシン目線20に沿ってその裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aを切り剥がすことにより、紙箱上面11に取出し口20Xが形成されるとともに、前記シート材30が取出し口20Xを介して露出される。その際に、図10に示すように、収納箱内では香料層31xがティシュペーパー束2の対面するようにして露出される。
【0045】
そして、収納箱1に束として収納されているティシュペーパー2t等は、図示例のとおり、前記スリット31S,31S…を介して取出し口20Xから一枚ずつ取り出され、当該スリット31S,31S…は、取出し口20Xから露出するティシュペーパー2tの一部を支持して収納箱内部に落ち込むことを防止する。
【0046】
ここで、本発明に係る収納箱1においては、上述のとおりティシュペーパー束2に対面するようにして香料層31xが露出され、その香料層31xから蒸散された香料によってティシュペーパー束2に香りが付与される。よって、紙箱10自体に香料が吸収されたり、紙箱10を透過して香料が漏出しないようにして、ティシュペーパー束2に香りが確実に付与されるようにすべく、少なくとも紙箱10の上面11の内側面11iをガスバリア性樹脂又はガスバリア性シートにより被覆するのが望ましい(図中、ガスバリア樹脂層を符号50で示す)。未使用時においてティシュペーパー束2と紙箱上面11の内側面11との間に空間が存在する場合には、紙箱10の短側面14及び長側面13の少なくとも一方についても、未使用時におけるティシュペーパー束2の上面よりも紙箱底面側位置に至るまでガスバリア性樹脂等によって被覆するのがよい。なお、この場合、香料の紙箱10への吸収や透過を抑制する点では短側面14、長側面13の双方に設けるのがよいが、短側面14が各フラップF,F…により組立てられることを考慮して、製造の容易性を重視するのであれば、面積の広い長側面13のみでも効果を奏する。もちろん、底面も含め紙箱の内面すべてをガスバリア性樹脂等で被覆してもよい。
【0047】
このように上面等をガスバリア性樹脂等で被覆すると、例えば、本実施形態であれば、香料層から蒸散した香料が、紙箱に対して吸収されたり、紙箱を透過したりせず、収納箱内に留まりやすく、その香料がティシュペーパー束に多く付着されるようになる。
【0048】
紙箱10の当該所定位置をガスバリア樹脂等で被覆する方法は、紙箱組立て前のカートンブランクに対してガスバリア性樹脂を塗布したり、ガスバリア性シートを貼付して積層したりすればよい。ここで、ガスバリア性樹脂としては、エチレン/ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン等が例示でき、ガスバリア性シートとしては、上記ガスバリア性樹脂からなるフィルムシートやこれらの樹脂層を含むラミネートシート、さらに、アルミラミネート層やアルミ蒸着層を有するラミネートフィルムシートが例示できる。好ましくは、製造が容易でありかつコスト安である、塩化ビニリデン樹脂膜を形成するものである。
【0049】
他方、収納箱内に収納される本発明に係るティシュペーパー束2は、方形のティシュペーパー2tが実質的に二つ折りされ、その折り返し片の縁が上下に隣接するティシュペーパーの折り返し内面に位置するようにして、互い違いに重なり合いつつ積層されたものである。なお、ここで実質的にとは、製造上の形成される縁部の若干の折り返しを許容する意味である。
【0050】
この積層構造のティシュペーパー束2は、最上位に位置する一枚の折り返し片を上方に引き上げると、その直下で隣接する他の一枚の折り返し片が、摩擦により上方に引きずられて持ち上げられる。そして、かかる構造のティシュペーパー束2は、その最上面が上述の上面11に取出し口20Xを有する収納箱1の当該上面に向かいあって収納され、前記取出し口20X、特に一体化されたスリット31S…から最初の一組(最上面に位置する一組)が引き出されたときに、その直近下方に位置する他の一組の一部が露出される。なお、本発明のおけるティシュペーパー2tの積層枚数が限定されないが、この種の製品の一般的な積層枚数を例示すれば、120〜240組である。
【0051】
このティシュペーパー束2は、マルチスタンド式、ロータリ式の既知のインターフォルダにより製造することができる。
【0052】
他方、ティシュペーパー束2を構成するティシュペーパー2tは、2枚〜3枚の薄葉紙が積層されたプライ構造を有している。
【0053】
その薄葉紙の原料パルプとしては、NBKPとLBKPとを配合したものであり、適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。その場合配合割合としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
【0054】
本発明に係るティシュペーパー2tの各プライを構成する薄葉紙1枚あたりの米坪は、好ましくは10〜25g/m2、より好ましくは11〜16g/m2である。米坪が10g/m2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となる。逆に米坪が25g/m2を超えると紙全体が硬くなるとともに、ゴワ付き感が生じてしまい肌触りが悪くなる。なお、米坪は、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法による。
【0055】
他方、本発明に係るティシュペーパーの紙厚は、2プライの状態で100〜140μm、より好ましくは120〜140μmであるのが望ましい。紙厚が100μm未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、ティシュペーパーとしての強度を適正に確保することが困難となる。また、140μm超では、ティシュペーパーの肌触りが悪化するとともに、使用時にゴワツキ感が生じるようになる。
【0056】
紙厚の測定方法としては、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて2プライの状態で測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。
【符号の説明】
【0057】
100…ティシュペーパー製品、1…収納箱、2…ティシュペーパー束、2t…ティシュペーパー、10…紙箱、30…シート材、20…裂開用ミシン目線、20X…取出し口、L1…収納箱の長手縁、L2…収納箱の短手縁、L3…収納箱の高さ、11…収納箱(紙箱)上面、11i…収納箱(紙箱)上面の内側面、12…収納箱(紙箱)底面、12A…糊代部、13…収納箱(紙箱)長側面、14…収納箱(紙箱)短側面、F…フラップ、21…裂開用ミシン目線の長辺、22…裂開用ミシン目線の短辺、20a…取出し口形成部(裂開用ミシン目線で囲まれる範囲)、23…接着剤、24…接着部、31…第1フィルムシート、31A…第1分離部、31a…切り取り線、31x…香料層、32…第2フィルムシート、33…接着部、34…接着部、31S…スリット、50…ガスバリア性樹脂層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10