特許第5933309号(P5933309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933309
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】直線カット性ガスバリア包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20160526BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20160526BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20160526BHJP
   B65D 65/26 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   B32B27/34
   B32B27/36
   B65D65/26
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-72639(P2012-72639)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-203414(P2013-203414A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 康平
(72)【発明者】
【氏名】湊 憲司
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−200958(JP,A)
【文献】 特開平07−251487(JP,A)
【文献】 特開平11−310712(JP,A)
【文献】 特開2011−201280(JP,A)
【文献】 特開平07−113015(JP,A)
【文献】 特開平11−309819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 27/34
B32B 27/36
B65D 65/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの長手方向に直線カット性を有する二軸延伸フィルム(I)と、ガスバリア層(II)と、ラミネート接着剤層(III)と、シーラント層(IV)とがこの順に積層されてなる包装体であり、二軸延伸フィルム(I)がナイロン6とポリ(メタキシリレンアジパミド)とを含有し、それらの質量比[ナイロン6/ポリ(メタキシリレンアジパミド)]が80/20〜95/5であるフィルムであるかまたは、二軸延伸フィルム(I)がポリエチレンテレフタレート(PET)と変性ポリブチレンテレフタレート(変性PBT)とを含有し、それらの質量比[PET/変性PBT]が70/30〜95/5であり、変性PBTが分子量600〜4000のポリテトラメチレングリコール単位5〜20質量%を含有するポリブチレンテレフタレートであるフィルムであり、ガスバリア層(II)が無機層状化合物(A)と樹脂(B)とを含有し、それらの体積比[無機層状化合物(A)/樹脂(B)]が、3/97〜7/93であることを特徴とする直線カット性ガスバリア包装体。
【請求項2】
二軸延伸フィルム(I)とガスバリア層(II)とを含む積層体において、ガスバリア層(II)の厚み1μm当たりに換算した酸素透過度が、20℃、65%RH下で、2ml/m・day・MPa以下であることを特徴とする請求項1記載の直線カット性ガスバリア包装体。
【請求項3】
ガスバリア層(II)の厚みが0.1〜1μmであることを特徴とする請求項1または2記載の直線カット性ガスバリア包装体。
【請求項4】
包装体のラミネート強力が3.5N/cm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直線カット性ガスバリア包装体。
【請求項5】
無機層状化合物(A)の平均粒径が5μm以下であり、アスペクト比が50〜5000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の直線カット性ガスバリア包装体。
【請求項6】
樹脂(B)が高水素結合性樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の直線カット性ガスバリア包装体。
【請求項7】
高水素結合性樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項6記載の直線カット性ガスバリア包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素バリア性、直線カット性およびラミネート強力に優れる包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の劣化を防いで長期間保存するために、その包装には、ガスバリア性に優れた包装体を用いることが不可欠である。食品を包装する材料として、一般にプラスチックフィルムが多く用いられているが、単体ではガスバリア性能が不十分であるプラスチックフィルムにおいては、プラスチックフィルム自体にガスバリア性能を付与したものを他のフィルムと積層して包装体を作製したり、あるいはガスバリア性能が高いフィルムと貼り合わせて包装体が作製されている。
しかし、プラスチックフィルムを積層して得られる包装体は、直線的に引裂いて開封できないことがあり、斜めに開封された際に、内容物が液状である場合には、漏れ出すことがあった。
【0003】
このため、引裂き性を向上させたフィルムとして、二軸延伸ポリアミドフィルム(特許文献1)や二軸延伸ポリエステルフィルム(特許文献2)が提案されている。これらのフィルムを使用することによって包装体の開封性は向上するものの、これらのフィルム自体がガスバリア性を有していないため、包装体に使用する際には、ガスバリア性能を有するフィルムと積層する必要があり、コストアップの問題があった。また積層時にラミネート強力が低くなり、引裂き時にデラミネーションが発生し、引裂き抵抗が大きくなるといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−230540号公報
【特許文献2】特開平10−168293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記問題を解決しようとするものであり、酸素バリア性、直線カット性およびラミネート強力に優れる包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の樹脂組成からなり直線カット性を有する二軸延伸フィルム上に、特定の組成を有するガスバリア層を積層することで上記の課題が解決されることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)フィルムの長手方向に直線カット性を有する二軸延伸フィルム(I)と、ガスバリア層(II)と、ラミネート接着剤層(III)と、シーラント層(IV)とがこの順に積層されてなる包装体であり、二軸延伸フィルム(I)がナイロン6とポリ(メタキシリレンアジパミド)とを含有し、それらの質量比[ナイロン6/ポリ(メタキシリレンアジパミド)]が80/20〜95/5であるフィルムであるかまたは、二軸延伸フィルム(I)がポリエチレンテレフタレート(PET)と変性ポリブチレンテレフタレート(変性PBT)とを含有し、それらの質量比[PET/変性PBT]が70/30〜95/5であり、変性PBTが分子量600〜4000のポリテトラメチレングリコール単位5〜20質量%を含有するポリブチレンテレフタレートであるフィルムであり、ガスバリア層(II)が無機層状化合物(A)と樹脂(B)とを含有し、それらの体積比[無機層状化合物(A)/樹脂(B)]が、3/97〜7/93であることを特徴とする直線カット性ガスバリア包装体。
(2)二軸延伸フィルム(I)とガスバリア層(II)とを含む積層体において、ガスバリア層(II)の厚み1μm当たりに換算した酸素透過度が、20℃、65%RH下で、2ml/m・day・MPa以下であることを特徴とする(1)記載の直線カット性ガスバリア包装体。
(3)ガスバリア層(II)の厚みが0.1〜1μmであることを特徴とする(1)または(2)記載の直線カット性ガスバリア包装体。
(4)包装体のラミネート強力が3.5N/cm以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の直線カット性ガスバリア包装体。
(5)無機層状化合物(A)の平均粒径が5μm以下であり、アスペクト比が50〜5000であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の直線カット性ガスバリア包装体。
(6)樹脂(B)が高水素結合性樹脂であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の直線カット性ガスバリア包装体。
(7)高水素結合性樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする(6)記載の直線カット性ガスバリア包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の包装体は、特定の樹脂組成からなる二軸延伸フィルム(I)が積層されているので、フィルム長手方向の直線カット性が優れる。また、本発明の包装体に積層されているガスバリア層(II)は、無機層状化合物(A)と樹脂(B)とが特定の体積比で含有されているので、包装体に優れたガスバリア性を付与することができ、また耐屈曲性を有しており、包装体を引裂く際に、包装体にデラミネーションが発生することがない。
したがって本発明の包装体は、ガスバリア性に優れ内容物の劣化を防ぐことができ、また開封する際に、直線的に容易に引き裂くことができ、デラミネーションが発生することがない。
また、本発明の包装体は、積層体を構成するフィルムを特定組成としたものであるため、設備投資したり加工の手間を増やす必要がなく、これらによるコストアップの問題を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の包装体は、フィルムの長手方向に直線カット性を有する二軸延伸フィルム(I)と、ガスバリア層(II)と、ラミネート接着剤層(III)と、シーラント層(IV)とがこの順に積層された積層体である。
【0009】
[フィルムの長手方向に直線カット性を有する二軸延伸フィルム(I)]
本発明の包装体において、フィルムの長手方向に直線カット性を有する二軸延伸フィルム(I)としては、包装体としての強度などの観点から、長手方向に直線カット性を有する二軸延伸ポリアミドフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルムを使用することができる。
なお、本発明において、長手方向とは、フィルムの幅方向(TD)と垂直な方向、すなわち製膜時の生産ラインの方向(MD)を意味する。本発明における二軸延伸フィルム(I)は、MD方向に直線的に引き裂け易いものである。
【0010】
本発明における長手方向に直線カット性を有する二軸延伸ポリアミドフィルムとしては、ナイロン6とポリ(メタキシリレンアジパミド)(MXD6)とを含有する二軸延伸ポリアミドフィルムであることが必要である。
そして二軸延伸ポリアミドフィルムにおけるナイロン6とMXD6の質量比は、ナイロン6/MXD6=80/20〜95/5であることが必要である。MXD6が20質量%より多い場合は、フィルムの厚み変動等の操業的な問題が発生しやすく、また、MXD6が5質量%より少ない場合は、フィルムに直線カット性が得られない。
【0011】
二軸延伸ポリアミドフィルムを構成するナイロン6は、相対粘度が2.5〜4.0であることが好ましく、2.9〜3.3であることがより好ましい。相対粘度が2.5未満の場合にはMXD6の分散粒子径が大きくなり、得られるフィルムの直線カット性が低下し、また、相対粘度が4.0より大きい場合には、フィルムの押出製膜性が低下する。
【0012】
また二軸延伸ポリアミドフィルムを構成するポリ(メタキシリレンアジパミド)(MXD6)は、相対粘度が2.0〜3.0であることが好ましく、2.3〜2.5であることがより好ましい。相対粘度が2.0未満の場合には、ナイロン6中でのMXD6の分散粒子の生成が阻害され、得られるフィルムの直線カット性が低下し、また、相対粘度が3.0より大きい場合には、MXD6の分散粒子径が大きくなり、直線カット性が低下する。
なお、本発明の効果を損ねない範囲であれば、MXD6は、パラキシリレンアジパミド成分を5質量%以下程度含有してよい。
【0013】
二軸延伸ポリアミドフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、他のポリアミドを配合しても、またポリアミド樹脂に通常用いられる各種の無機及び有機系の添加剤を配合してもよい。無機系添加剤としてはタルク、シリカ、アルミナ、マグネシア、炭酸カルシウムなどの滑剤やハロゲン化銅などの酸化防止剤が挙げられ、有機系添加剤としてはε−カプラミド二量体、グラファイトなどの結晶核剤、芳香族アミン、ヒンダードフェノールなどの酸化防止剤、変性ポリオレフィンなどのフィルム改質剤が例示される。
【0014】
上記長手方向に直線カット性を有する二軸延伸ポリアミドフィルムを製造するには、例えば、ナイロン6とMXD6を混合したものを押出機に投入し、加熱溶融した後、Tダイからフィルム状に押し出し、未延伸フィルムを製造する。次に、Tダイから押し出されたフィルムを、エアーナイフキャスト法、静電印加キャスト法など公知のキャスティング法により回転する冷却ドラムに密着して巻きつけて冷却し、延伸温度160〜190℃で、縦横にそれぞれ2.8〜3.8倍程度の倍率で延伸し、さらに温度150〜220℃で熱処理することにより得られる。二軸延伸方法としては特に限定せず、テンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法のいずれでもよい。また、チューブラー法で二軸延伸フィルムを製造してもよい。
【0015】
本発明において、フィルムの長手方向に直線カット性を有する二軸延伸フィルム(I)としては、上記二軸延伸ポリアミドフィルム以外に、二軸延伸ポリエステルフィルムを使用することもできる。
本発明における長手方向に直線カット性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、ポリブチレンテレフタレート(変性PBT)とを含有する二軸延伸ポリエステルフィルムであることが必要である。
そして二軸延伸ポリエステルフィルムにおけるPETと変性PBTの質量比は、PET/変性PBT=70/30〜95/5であることが必要であり、80/20〜90/10であることが好ましく、85/15〜90/10であることがさらに好ましい。変性PBTが30質量%より多い場合は、フィルムの厚み変動が大きくなったり、得られるフィルムの直線カット性が低下するのみならず、機械的強度、寸法安定性、ヘーズなどの性能が低下して実用性能に問題が生じる。また、変性PBTが5質量%より少ない場合は、フィルムに直線カット性が得られない。
【0016】
二軸延伸ポリエステルフィルムを構成するPETは、公知の製法、すなわち、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとからのエステル交換反応法、あるいは、テレフタルとエチレングリコールとからの直接エステル化法によりオリゴマーを得た後、溶融重合、あるいは、さらに固相重合して得られたものであり、さらに他の成分を共重合して得られたものであってもよい。
他の共重合成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸などのオキシカルボン酸、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコールや、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物が挙げられる。
【0017】
二軸延伸ポリエステルフィルムを構成する変性PBTは、分子量600〜4000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)単位5〜20質量%を含有するポリブチレンテレフタレートであることが必要である。
【0018】
PTMGの分子量は、600〜4000であることが必要であり、1000〜3000であることが好ましく、1000〜2000であることがさらに好ましい。PTMGの分子量が600未満の場合には直線カット性が得られず、分子量が4000を超える場合には、機械的強度、寸法安定性、ヘーズなどの性能が低下し、また、安定したフィルムの直線カット性が発現しない。
【0019】
変性PBTにおけるPTMG単位の含有量は5〜20質量%であることが必要であり、10〜20質量%であることが好ましく、10〜15質量%であることがさらに好ましい。PTMGの含有量が5質量%未満の場合には、得られるフィルムに直線カット性が発現せず、含有量が20質量%を超える場合には、得られるフィルムの機械的強度、寸法安定性、ヘーズなどの性能が低下し、また、安定したフィルムの直線カット性を得ることが困難となる。また、PTMGの含有量が20質量%を超える場合には、特に量産スケールで生産した場合に押出時にフィルムが脈動する現象(いわゆるバラス現象)が発現することがありフィルムの厚み斑が大きくなるという問題が発生する。
【0020】
変性PBTは、PBTの重合工程においてPTMGを添加して重縮合して得ることができるが、より簡便な方法として、PBTとPTMGを押出機で溶融混練することによっても得ることができる。
【0021】
本発明において二軸延伸ポリエステルフィルムは、本発明の効果を損ねない範囲であれば、公知の各種添加材、例えば他の高分子、滑剤、無機粒子、有機粒子、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤などを含んでもよい。他の高分子としては、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートなどが挙げられ、滑剤としては、フィルムのアンチブロッキング性、透明性の観点から平均粒子径0.1〜4μmの不活性粒子、例えばシリカなどを0.005〜1.0質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%添加することが挙げられ、無機粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられ、有機粒子としては、アクリル、スチレン等が挙げられる。
【0022】
上記長手方向に直線カット性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを製造するには、例えば、PETと変性PBTを混合したものを押出機に投入し、加熱溶融した後、Tダイからフィルム状に押し出し、未延伸フィルムを製造する。次に、Tダイから押し出されたフィルムを、エアーナイフキャスト法、静電印加キャスト法など公知のキャスティング法により回転する冷却ドラムに密着して巻きつけて冷却し、温度90〜140℃で、縦横にそれぞれ3.0〜5.0倍の倍率で延伸し、さらに温度210〜245℃で熱処理することにより得られる。二軸延伸方法としては特に限定せず、テンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法のいずれでもよい。また、チューブラー法で二軸延伸フィルムを製造してもよい。
【0023】
上記二軸延伸ポリアミドフィルムや二軸延伸ポリエステルフィルムなどの二軸延伸フィルム(I)の厚さは、特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性、他の層を積層する場合もあることを考慮すると、実用的には3〜200μmとすることが好ましく、用途によっては6〜30μmとすることが好ましい。
【0024】
[アンカーコート層]
本発明の包装体は、二軸延伸フィルム(I)上にガスバリア層(II)が積層されるが、二軸延伸フィルム(I)上にアンカーコート層を形成してからガスバリア層(II)が積層されてもよい。アンカーコート層を介することにより、二軸延伸フィルム(I)とガスバリア層(II)との密着性を向上することができる。
【0025】
アンカーコート層を二軸延伸フィルム(I)上に形成する方法としては、特に限定されないが、アンカーコート層を形成する材を溶媒に分散または溶解させた液であるアンカーコート剤を用いてコーティング法で形成することが好ましい。
【0026】
アンカーコート剤としては、公知のものを特に制限されず使用することができ、例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等が挙げられる。これらの中で本発明の効果を勘案すると、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系のアンカーコート剤が好ましく、イソシアネート化合物、ポリウレタンおよびウレタンプレポリマーの1種または2種以上の混合物および反応生成物、ポリエステル、ポリオールおよびポリエーテルの1種または2種以上とイソシアネートとの混合物および反応生成物、またはこれらの溶液または分散液であることが好ましい。
アンカーコート剤を構成する溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、トルエン、MEK、シクロヘキサノン、ソルベッソ、イソホロン、キシレン、MIBK、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどの有機溶剤などが挙げられる。
【0027】
アンカーコート剤を二軸延伸フィルム(I)上に塗布する方法としては、ダイレクトグラビア法やリバースグラビア法及びマイクログラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、及びドクターナイフ法やダイコート法、ディップコート法、バーコーティング法やこれらを組み合わせたコーティング法などの方法が挙げられる。塗布後、乾燥する方法としては、特に限定されないが、オーブン中で乾燥させる方法や各種ドライヤーなどの乾燥機を使用する方法が挙げられ、乾燥条件としては、30〜260℃、0.5〜60分が挙げられる。
【0028】
アンカーコート剤の塗布厚みは、特に限定されないが、乾燥厚みが0.02〜0.2μmであることが好ましく、0.04〜0.1μmであることがより好ましい。
【0029】
[ガスバリア層(II)]
本発明におけるガスバリア層(II)は、無機層状化合物(A)と樹脂(B)とを含有することが必要であり、無機層状化合物(A)と樹脂(B)の体積比[無機層状化合物(A)/樹脂(B)]が3/97〜7/93であることが必要であり、3/97〜5/95であることが好ましく、4/96〜5/95であることがさらに好ましい。
無機層状化合物(A)の体積比が多ければ多いほど、ガスバリア層(II)の酸素バリア性は優れる。しかし、ガスバリア層(II)中の無機層状化合物(A)の体積比が7体積%を超えると、ガスバリア層(II)が硬く脆くなることで耐屈曲性が低下する。その結果、このガスバリア層(II)上にラミネート接着剤層(III)、シーラント層(IV)を順次積層してなる包装体は、引き裂く時に、デラミネーションが発生し、容易に引き裂くことができなくなる。本発明においてガスバリア層(II)中の無機層状化合物(A)の体積比を7体積%以下とすることにより、得られる包装体のラミネート強力(X)を3.5N/cm以上とすることができ、好ましくは3.55N/cm以上、さらに好ましくは3.6N/cm以上とすることができる。包装体のラミネート強力(X)が3.5N/cm以上であると、包装袋を開封した際にデラミネーションや開封不良などが起こりにくく、また、包装袋を形成し内容物を充填、密封した後の殺菌処理中や輸送中にデラミネーションや破袋が発生することがない。
一方、無機層状化合物(A)の体積比が3体積%より少ないと、ガスバリア層(II)の厚みを厚くしても、高い酸素バリア性を得ることができない。すなわち、二軸延伸フィルム(I)とガスバリア層(II)とを含む積層体において、ガスバリア層(II)の厚み1μm当たりに換算した酸素透過度が、20℃、65%RH下で、2ml/m・day・MPa以下にならないことがあり、本発明の特徴である高い酸素バリア性を得ることができない。なお、食品を長期間保存するには、酸素透過度が2ml/m・day・MPa以下であることが好ましい。
【0030】
ガスバリア層(II)の厚みは特に規定されないが、ガスバリア性の観点から、0.1〜1μmであることが好ましく、0.2〜0.7μmであることがより好ましく、0.25〜0.5μmであることがさらに好ましい。ガスバリア層(II)の厚みが0.1μm未満であると、ガスバリア性の発現が不十分となることがあり、厚みが1μmを超えると、用途によっては必要な透明性を得ることができず、かつ製造コストが増大し好ましくない。
なお、ガスバリア層(II)は、必要に応じてその層数を増やしてもよい。
【0031】
また、ガスバリア層(II)には、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤等のさまざまな添加剤を混合してもよい。
【0032】
<無機層状化合物(A)>
ガスバリア層(II)を構成する「無機層状化合物」とは、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を形成している無機化合物をいう。換言すれば、「層状化合物」とは、層状構造を有する化合物ないし物質であり、「層状構造」とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって平行に積み重なった構造をいう。
【0033】
無機層状化合物(A)としては、溶媒への膨潤性および劈開性を有する粘土鉱物を特に好ましく用いることができる。そのような粘土鉱物としては、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ベントナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等が挙げられる。なかでも、スメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族の粘土系鉱物が好ましく、スメクタイト族が特に好ましい。スメクタイト族としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライトが挙げられる。しかし、特に限定されるものではない。また、これら粘土鉱物に有機物でイオン交換等の処理を施して分散性等を改良したものも、無機層状化合物として用いることができる。無機層状化合物(A)が膨潤性を有する粘土鉱物であると耐水性(耐水環境テスト後のバリア性)に優れる。
【0034】
無機層状化合物(A)は、ガスバリア性、透明性、製膜性の点から、平均粒径が5μm以下であることが好ましい。特に透明性が求められる用途では、平均粒径が1μm以下であることがより好ましい。
また無機層状化合物(A)のアスペクト比は、50〜5000であることが好ましく、200〜3000であることがさらに好ましい。アスペクト比が50未満では、ガスバリア性の発現が不十分となる。一方、アスペクト比が5000を超える無機層状化合物は、得ることが技術的に難しく、またコストないし経済的にも高価なものとなる。そのため、製造容易性の点からは、このアスペクト比は3000以下であることが好ましい。
【0035】
<樹脂(B)>
ガスバリア層(II)を構成する樹脂(B)は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、多糖類、ポリアクリル酸およびそのエステル類などを挙げることができる。
【0036】
樹脂(B)の好ましい例としては、水素結合性基またはイオン性基を有する樹脂が挙げられ、水素結合性基またはイオン性基の含有量が、樹脂に対して20〜60質量%である高水素結合性樹脂が好ましく、水素結合性基またはイオン性基の含有量は、樹脂に対して30〜50質量%であることがさらに好ましい。樹脂(B)が高水素結合性樹脂であると耐水性(耐水環境テスト後のバリア性)に優れる。
なお、「水素結合性基」とは、炭素以外の原子(ヘテロ原子)に直接結合した水素を少なくとも1個有する基をいう。また「イオン性基」とは、水中において水分子の水和が可能な程度に局在化した「正または負」の少なくとも一方の電荷を有する基をいう。
水素結合性基としては、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基などが挙げられ、イオン性基としては、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、燐酸イオン基、アンモニウム基、ホスホニウム基などが挙げられ、さらに好ましいものとしては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、アンモニウム基などが挙げられる。
【0037】
高水素結合性樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびその類縁体、ビニルアルコール分率が40モル%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂;セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン、セルロース等の多糖類;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、エチレン−アクリル酸共重合体およびその塩などのアクリル系樹脂;ジエチレントリアミン−アジピン酸重縮合体などポリアミノアミド系樹脂、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルピリジンおよびその塩、ポリエチレンイミンおよびその塩、ポリアリルアミンおよびその塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルスルホン酸およびその塩、ポリビニルチオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等の水素結合性基やイオン性基を分子中に有する樹脂が挙げられる。
高水素結合性樹脂は、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール分率が40〜80モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体であることが好ましい。
【0038】
ポリビニルアルコールとは、ビニルアルコールのモノマー単位を主成分として有するポリマーである。このような「ポリビニルアルコール」としては、例えば、酢酸ビニル重合体の酢酸エステル部分を加水分解ないしエステル交換(けん化)して得られるポリマー(正確にはビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体となったもの)や、トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、ピバリン酸ビニル重合体、t−ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体等をけん化して得られるポリマーが挙げられる(「ポリビニルアルコール」の詳細については、例えば、ポバール会編、「PVAの世界」、1992年、(株)高分子刊行会;長野ら、「ポバール」、1981年、(株)高分子刊行会を参照することができる)。ポリビニルアルコールにおける「けん化」の程度は、モル百分率で70%以上が好ましく、85%以上のものがより好ましく、98%以上のいわゆる完全けん化品がさらに好ましい。また、重合度は100〜5000、200〜3000がより好ましい。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、ビニルアルコール分率が40〜80モル%であることが好ましく、45〜75モル%であることがより好ましい。またEVOHのメルトインデックス(温度190℃、荷重2160gの条件で測定した値、以下、MIと記す)は、特に限定されないが、0.1〜50g/10分であることが好ましい。EVOHは、本発明の目的が阻害されない限り、少量の共重合モノマーで変性されていてもよい。
多糖類とは、上述したような、種々の単糖類の縮重合によって生体系で合成される生体高分子であり、ここではそれらをもとに化学修飾したものも含まれる。
【0039】
本発明で用いられる樹脂(B)が高水素結合性樹脂であるときには、その耐水性(耐水環境テスト後のバリア性)を改良する目的で、架橋剤を用いることができる。
架橋剤の好適な例としては、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、メラミン系カップリング剤、エポキシ系カップリング剤、イソシアネート系カップリング剤、銅化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。耐水性向上の点からは、ジルコニウム化合物が特に好ましく用いられる。ジルコニウム化合物の具体例としては、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム等のハロゲン化ジルコニウム;硫酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等の鉱酸のジルコニウム塩;蟻酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウム、カプリル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム等の有機酸のジルコニウム塩;炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、蓚酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム錯塩;等が挙げられる。
架橋剤の添加量は特に限定されないが、架橋剤の架橋生成基のモル数(CN)と樹脂の水素結合性基のモル数(HN)との比(K=CN/HN)が、0.001〜10の範囲になるように用いることが好ましく、0.01〜1の範囲になるように用いることがさらに好ましい。
【0040】
<ガスバリア層形成用塗料(C)>
上記無機層状化合物(A)と樹脂(B)とを含有するガスバリア層(II)を二軸延伸フィルム(I)上に積層する方法としては、無機層状化合物(A)と樹脂(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)を、二軸延伸フィルム(I)の表面に塗布し、熱処理する方法が挙げられる。
【0041】
無機層状化合物(A)と樹脂(B)とを配合し、ガスバリア層形成用塗料(C)を製造する方法は、特に限定されない。配合時の均一性ないし操作容易性の点からは、例えば、無機層状化合物(A)を予め膨潤、へき開させた分散液と、樹脂(B)を溶解させた液とを混合後、溶媒を除く方法(方法1)、無機層状化合物(A)を膨潤、へき開させた分散液を樹脂(B)に添加し、溶媒を除く方法(方法2)、樹脂(B)を溶解させた液に無機層状化合物(A)を加え膨潤、へき開させた分散液とし、溶媒を除く方法(方法3)、また無機層状化合物(A)と樹脂(B)とを熱混練する方法(方法4)などが使用可能である。無機層状化合物(A)の大きなアスペクト比が容易に得られる点からは、前3者が好ましく用いられる。なお、ガスバリア層形成用塗料(C)における無機層状化合物(A)と樹脂(B)の体積比は、形成されるガスバリア層(II)におけるそれらの体積比に合せて調整される。
【0042】
無機層状化合物(A)を膨潤かつ劈開させる分散媒としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられる。とりわけ、水、アルコール、水−アルコール混合物が好ましい。
【0043】
無機層状化合物(A)および樹脂(B)の混合には、ホモジナイザー等の公知の装置を用いることができる。無機層状化合物(A)の分散性の観点から、高圧分散装置を用いて高圧分散処理することが好ましい。
【0044】
ガスバリア層形成用塗料(C)は、塗工性の観点から、ザーンカップ粘度[(株)離合社:ザーンカップ粘度:No.3で測定]が20〜50Sの範囲になるよう調整することが好ましく、25〜45Sの範囲になるよう調整することがより好ましい。20S未満であると、乾燥炉の長さによっては塗料(C)が未乾燥となることがあり、50Sを超えると、塗工時において液のレベリング性が低下するなど、塗工性に問題が生じやすい。
【0045】
また、ガスバリア層形成用塗料(C)の固形分濃度は、塗工装置や乾燥、加熱装置の仕様によって適宜変更され得るものであるが、あまりに希薄な溶液ではガスバリア性を発現するのに充分な厚みの層を塗布することが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要するという問題を生じやすい。他方、塗料(C)の濃度が高すぎると、均一な塗料を得にくく、塗工性に問題を生じ易い。この様な観点から、塗料(C)の固形分濃度は、4〜8質量%であることが好ましく、5〜7質量%であることがより好ましい。
【0046】
上記の方法1〜方法3の方法において調製されたガスバリア層形成用塗料(C)を、ダイレクトグラビア法やリバースグラビア法及びマイクログラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、及びドクターナイフ法やダイコート法、ディップコート法、バーコーティング法やこれらを組み合わせたコーティング法などで二軸延伸フィルム(I)に塗布後、オーブン中で乾燥させる方法や各種ドライヤーなどの乾燥機を使用する方法で、30〜260℃、0.5〜60分の条件で溶媒を除去することによって、ガスバリア層(II)を形成することができる。
また、溶媒を系から除去した後、110〜220℃で熱エージングすることにより、とりわけ耐水性(耐水環境テスト後のバリア性)を向上させることができ好ましい。エージング時間に限定はないが、設定温度に到達する必要があり、例えば熱風乾燥機のような熱媒接触による方法の場合、1秒〜100分が好ましい。熱源についても特に限定はなく、熱ロール接触、熱媒接触(空気、オイル等)、赤外線加熱、マイクロ波加熱など種々の方法が適用できる。
【0047】
[ラミネート接着剤層(III)]
本発明の包装体は、上記二軸延伸フィルム(I)上に積層されたガスバリア層(II)とシーラント層(IV)とが、ラミネート接着剤層(III)を介して積層されたものである。
【0048】
ガスバリア層(II)上にラミネート接着剤層(III)を形成する際に使用されるコート剤としては、公知のものが使用される。例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のコート剤が挙げられる。これらの中で密着性、耐熱性、耐水性などの効果を勘案すると、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系のコート剤が好ましく、イソシアネート化合物、ポリウレタンおよびウレタンプレポリマーの1種または2種以上の混合物および反応生成物、ポリエステル、ポリオールおよびポリエーテルの1種または2種以上とイソシアネートとの混合物および反応生成物、またはこれらの溶液または分散液であることが好ましい。
【0049】
上記コート剤をガスバリア層(II)に塗布する方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング等の通常の方法を用いることができる。塗布後、乾燥する方法としては、特に限定されないが、オーブン中で乾燥させる方法や各種ドライヤーなどの乾燥機を使用する方法が挙げられ、乾燥条件としては、30〜260℃、0.5〜60分が挙げられる。
【0050】
ラミネート接着剤層(III)の厚みは、シーラント層(IV)との密着性を充分高めるためには、乾燥厚みで0.05〜10g/mであることが好ましく、0.1〜5g/mであることがより好ましく、0.5〜3g/mであることがさらに好ましい。乾燥厚みが10g/mを超えたり、0.05g/m未満であると、十分な密着性を得ることができない。
【0051】
[シーラント層(IV)]
シーラント層(IV)は、袋状包装袋などを形成する際の熱接着層として設けられるものであり、熱シール、高周波シールなどが可能な材料が使用される。例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸塩共重合体、エチレン−アクリレート共重合体などが挙げられる。厚みは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmである。
【0052】
ラミネート接着剤層(III)上にシーラント層(IV)を積層する方法としては、公知の方法が用いられる。例えば、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、無溶剤ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法などのラミネーション法や、二つ以上の樹脂層を同時に押出し積層する共押し出し法、コーターなどで膜を生成するコーティング法などが挙げられるが、密着性、耐熱性、耐水性などを勘案するとドライラミネーション法が好ましい。
【0053】
[包装体]
本発明の包装体は、二軸延伸フィルム(I)と、ガスバリア層(II)と、ラミネート接着剤層(III)と、シーラント層(IV)とがこの順に積層されたものであり、例えば、(I)(II)(III)(IV)の層構成や、(I)(II)(II)(III)(IV)の層構成を有するものである。さらに場合によっては、ガスバリア層(II)とラミネート接着剤層(III)との間に、プライマー層や帯電防止層などの機能性層が積層されてもよい。またガスバリア層(II)とラミネート接着剤層(III)は、それらの間の密着性を向上させるために、コロナ処理、オゾン処理などの表面処理が施されてもよい。さらに、ガスバリア層(II)面上や、ガスバリア層(II)等を積層していない二軸延伸フィルム(I)面上に、必要に応じて公知の方法で印刷を施すことができる。
【0054】
本発明の包装体は、酸素バリア性やラミネート強力を必要とする様々な分野に適用することができ、かつ直線カット性に優れるため、特に食品分野に好適なものである。
【実施例】
【0055】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
物性の測定方法、評価方法を以下に記す。
[厚み測定]
0.5μm以上の厚みは、市販のデジタル厚み計(接触式厚み計、商品名:超高精度デシマイクロヘッド MH−15M、日本光学社製)により測定した。一方、0.5μm未満の厚みは、重量分析法(一定面積のフィルムの重量測定値をその面積で除し、更に組成物の比重で除した)によった。
【0057】
[無機層状化合物の粒径]
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA910)を使用し、ポリビニルアルコールおよび無機層状化合物を含むガスバリア層形成用塗工液C−1における、無機層状化合物とみられる粒子の体積基準のメジアン径を粒径として、フローセル法にて光路長4mmで測定した。
【0058】
[無機層状化合物のアスペクト比]
X線回折装置(島津製作所社製、XD−5A)を用い、無機層状化合物単独と、ポリビニルアルコールおよび無機層状化合物を含むガスバリア層形成用塗工液を乾燥したものとについて、粉末法による回折測定し、無機層状化合物の単位厚さaを求めた。上述の方法で求めた粒径Lを用いて、アスペクト比Zを、Z=L/a の式により算出した。なお、ガスバリア層形成用塗工液を乾燥したものについての回折測定から、無機層状化合物の面間隔が広がっている部分があることを確認した。
【0059】
[酸素バリア性]
モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20MH)を用いて、JIS K7126−2法に基づいて、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下における二軸延伸フィルム(I)とガスバリア層(II)とを含む積層体の酸素透過度を測定した。
【0060】
[ラミネート強力]
得られた包装体から、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で長さ100mm×幅15mmの大きさの試験片を作製し、二軸延伸フィルム(I)とシーラント層(IV)間をピンセットにてMD方向に30mm以上の長さを剥離することで非接着部を作製し、その非接着部をつかみとして、引張試験機(島津製作所社製オートグラフAG−1S)にて、300mm/minの剥離速度でMD方向に50mm長さをT型剥離した時の平均剥離強力をサンプル数5点測定し、その平均値をラミネート強力とした。
【0061】
[直線カット性評価]
得られた包装体から、MD方向200mm、TD方向300mm、シール幅10mmの横取り3方袋を作製した。TD方向のシール部に5mmの切込み(ノッチ)を設け、3方袋のMD方向に右手前、左手前方向にそれぞれ引き裂いた際の、3方袋を構成する表裏の包装体のズレ幅を測定した。この操作を5回繰り返しズレ幅の平均値を算出し、右手前、左手前ともに表裏のズレ幅が2mm未満の場合を○、2mm以上の場合を×とした。
【0062】
[開封時のデラミネーション発生評価]
包装体から作製した3方袋による直線カット性評価における、開封時のデラミネーション発生有無を評価し、開封時にデラミネーションが生じなかったものは○、デラミネーションが生じたものを×とした。
【0063】
包装体の製造に使用した材料は下記のとおりである。
[二軸延伸ポリアミドフィルム]
ナイロン6とMXD6を、ナイロン6/MXD6=85/15、80/20、95/5、97/3、75/25または100/0(質量比)の割合で混合した原料を用いて、樹脂温度260℃で押出し、15℃の冷却ドラムに密着急冷させ、テンター式同時二軸延伸機にて延伸温度185℃下で縦及び横方向に3×3.3倍に同時二軸延伸した後、205℃で4秒間熱処理して製造した、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを使用した。
【0064】
[二軸延伸ポリエステルフィルム]
PETと変性PBTを、PET/変性PBT=87/13、70/30、95/5、60/40または100/0(質量比)の割合で混合した原料を用いて、樹脂温度280℃で押出し、20℃の冷却ドラムに密着急冷させ、ロール縦延伸機で90℃で3.5倍に、テンター横延伸機で120℃で4.5倍に延伸した後、235℃で4秒間熱処理して製造した、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを使用した。
【0065】
[アンカーコート剤]
東洋モートン社製EL−510−1−17K、CAT−87RT(EL−510−1−17K/CAT−87RT=5/1(質量比))を、溶剤(トルエン/MEK/MIBK=5/4/1(質量比))で、濃度が4質量%となるよう調整したアンカーコート剤を使用した。
【0066】
[ガスバリア層形成用塗料(C)]
[塗工液C−1]
分散釜に、イオン交換水(0.7μS/cm以下)と、ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA−117H、ケン化度99.6%,重合度1700)とを投入し、低速攪拌(800rpm、周速度2m/分)下で95℃に昇温し、同温度で30分間攪拌してポリビニルアルコールを溶解させたのち、60℃に冷却し、9.0質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。このポリビニルアルコール水溶液に、イオン交換水および2−プロパノールを混合したアルコール水溶液(イオン交換水/2−プロパノール=4/1(質量比))を10分間かけて添加し、高速攪拌(1600rpm,周速度4m/分)に切り替え20分間攪拌し、6質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。
得られたポリビニルアルコール水溶液に、無機層状化合物(モンモリロナイト、クニミネ工業社製クニピアRG)を徐々に加え、添加終了後、60℃で60分間高速攪拌(1600rpm、周速度4m/分)を続けた。その後、さらに2−プロパノールを10分間かけて添加し、その混合液を室温まで冷却し、C−1準備液を得た。
この準備液0.01質量部に、非イオン性界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製SH3746)0.1質量部を添加し、高圧分散装置(マイクロフルイダイザー社製 超高圧ホモジナイザー)を用いて、1000kgf/cmの条件で処理した。次いで、最終固形分濃度が5.8質量%になるように、イオン交換水と2−プロパノールを混合したアルコール水溶液(イオン交換水/2−プロパノール=1/1.2(質量比))を10分かけて添加し、20分間高速攪拌(1600rpm、周速度4m/分)して塗工液C−1を得た。
得られた塗工液C−1における、無機層状化合物と樹脂との体積比(無機層状化合物/樹脂)は、5/95である。劈開した無機層状化合物(モンモリロナイト)の平均粒径は560nmであり、粉末X線回折から得られる単位厚さ、すなわちa値は1.2156nmであり、アスペクト比は460であった。
【0067】
[塗工液C−2]
無機層状化合物の添加量を変更して、体積比(無機層状化合物/樹脂)が3/97になるようにし、またアルコール水溶液の添加量を変更して、最終固形分濃度が6質量%になるようにした以外は塗工液C−1の作液方法と同様にして、塗工液C−2を作製した。
【0068】
[塗工液C−3]
無機層状化合物の添加量を変更して、体積比(無機層状化合物/樹脂)が7/93になるようにし、またアルコール水溶液の添加量を変更して、最終固形分濃度が5.6質量%になるようにした以外は塗工液C−1の作液方法と同様にして、塗工液C−3を作製した。
【0069】
[塗工液C−4]
無機層状化合物の添加量を変更して、体積比(無機層状化合物/樹脂)が10/90になるようにし、またアルコール水溶液の添加量を変更して、最終固形分濃度が5.4質量%になるようにした以外は塗工液C−1の作液方法と同様にして、塗工液C−4を作製した。
【0070】
[塗工液C−5]
無機層状化合物の添加量を変更して、体積比(無機層状化合物/樹脂)が20/80になるようにし、またアルコール水溶液の添加量を変更して、最終固形分濃度が4.9質量%になるようにした以外は塗工液C−1の作液方法と同様にして、塗工液C−5を作製した。
【0071】
[塗工液C−6]
無機層状化合物の添加量を変更して、体積比(無機層状化合物/樹脂)が2/98になるようにし、またアルコール水溶液の添加量を変更して、最終固形分濃度が6.2質量%になるようにした以外は塗工液C−1の作液方法と同様にして、塗工液C−6を作製した。
【0072】
実施例1
二軸延伸フィルム(I)として、ナイロン6/MXD6が85/15(質量比)であり、片面コロナ処理した二軸延伸ポリアミドフィルムを用い、処理面上にアンカーコート剤を、バーコーターNo3を用いて塗布し、熱風乾燥機で80℃1分間乾燥し、アンカーコート層を形成した。このアンカーコート層の乾燥厚みは0.07μmであった。
上記アンカーコート層の上に、ガスバリア層形成用塗料(塗工液C−1)をグラビア塗工(ヒラノテクシード社製テストコーター、マイクログラビア塗工法、塗工速度5m/分、乾燥温度80℃)し、ガスバリア層(II)を得た。ガスバリア層(II)の膜厚(乾燥厚み)は0.3μmであった。得られた、二軸延伸フィルム(I)とガスバリア層(II)とを含む積層体について、酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
次いで、ガスバリア積層体(II)上に、ラミネート接着剤層(III)形成用コート剤(東洋モートン社製TM−329/CAT−8B)を、乾燥膜厚が2g/mになるように塗布し、80℃の熱風乾燥機で10秒乾燥させて、ラミネート接着剤層(III)を形成した。
形成したラミネート接着剤層(III)面に、シーラント層(IV)用フィルム(三井化学東セロ社製LLDPE−40μm TUX−FCSのコロナ面側)をニップロールにて貼り合わせた(ニップ条件80℃)。40℃3日間養生し、ラミネート接着剤層(III)を硬化させ、(I)(II)(III)(IV)の順に積層された包装体を得た。
得られた包装体のラミネート強力の測定結果、および開封時の直線カット性とデラミネーション発生の評価結果を表1に示す。
【0073】
実施例2〜3
ガスバリア層形成用塗料を、塗工液C−2(実施例2)、塗工液C−3(実施例3)に変更し、またガスバリア層(II)の厚みを変更した以外は実施例1と同様にして、積層体や包装体を得た。
【0074】
実施例4〜5
二軸延伸フィルム(I)を、ナイロン6/MXD6が80/20(質量比)である二軸延伸ポリアミドフィルム(実施例4)、95/5(質量比)である二軸延伸ポリアミドフィルム(実施例5)に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体や包装体を得た。
【0075】
実施例6
二軸延伸フィルム(I)を、PET/変性PBTが87/13である二軸延伸ポリエステルフィルムに変更した以外は実施例1と同様にして、積層体や包装体を得た。
【0076】
実施例7〜8
ガスバリア層形成用塗料を、塗工液C−2(実施例7)、塗工液C−3(実施例8)に変更し、またガスバリア層(II)の厚みを変更した以外は実施例6と同様にして、積層体や包装体を得た。
【0077】
実施例9〜10
二軸延伸フィルム(I)を、PET/変性PBTが70/30(質量比)である二軸延伸ポリエステルフィルム(実施例9)、95/5(質量比)である二軸延伸ポリエステルフィルム(実施例10)に変更した以外は実施例6と同様にして、積層体や包装体を得た。
【0078】
比較例1〜2
二軸延伸フィルム(I)を、PET/変性PBTが60/40(質量比)である二軸延伸ポリエステルフィルム(比較例1)、100/0(質量比)である二軸延伸ポリエステルフィルム(比較例2)に変更した以外は実施例6と同様にして、積層体や包装体を得た。
【0079】
比較例3〜4
二軸延伸フィルム(I)を、ナイロン6/MXD6が97/3(質量比)である二軸延伸ポリアミドフィルム(比較例3)、100/0(質量比)である二軸延伸ポリアミドフィルム(比較例4)に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体や包装体を得た。
【0080】
比較例5〜7
ガスバリア層形成用塗料を、塗工液C−4(比較例5)、塗工液C−5(比較例6)、塗工液C−6(比較例7)に変更し、またガスバリア層(II)の厚みを変更した以外は実施例1と同様にして、積層体や包装体を得た。
【0081】
比較例8
二軸延伸フィルム(I)として、ナイロン6/MXD6が75/25(質量比)の割合で混合した原料を用いて、二軸延伸ポリアミドフィルムを製造しようとしたところ、生産時の厚み変動が激しく厚み調整が困難であったため、フィルムを採取することができなかった。
【0082】
実施例、比較例において得られた積層体の酸素透過度を測定した結果、ならびに包装体のラミネート強力の測定結果、および開封時の直線カット性とデラミネーション発生の評価結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例1〜10では、ガスバリア層は優れた酸素バリア性を有し、また包装体において、直線カット性とラミネート強力とが優れ、開封時にデラミネーションが発生することがなかった。
比較例1〜2は、優れたラミネート強力、酸素バリア性を有するものの、二軸延伸フィルム(I)を構成する変性PBTの含有量が本発明で規定する範囲を超えるため、直線カット性を得ることができなかった。
比較例3〜4は、優れたラミネート強力、酸素バリア性を有するものの、二軸延伸フィルム(I)を構成するMXD6の含有量が本発明で規定する量より少ないため、直線カット性を得ることができなかった。
比較例5〜6は、優れた酸素バリア性・直線カット性を有するものの、ガスバリア層(II)における体積比[無機層状化合物(A)/樹脂(B)]が本発明で規定する範囲外であるため、ラミネート強力が低下し、開封時にデラミネーションが発生した。
比較例7は、優れた直線カット性とラミネート強力を有するものの、ガスバリア層(II)における体積比[無機層状化合物(A)/樹脂(B)]が本発明で規定する範囲外であるため、十分な酸素バリア性が得られなかった。
比較例8は、二軸延伸ポリアミドフィルムを構成する樹脂のMXD6の含有量が本発明で規定する量より多いため、二軸延伸ポリアミドフィルム自体を採取できず、評価するまでには至らなかった。