(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、電気機械結合係数Kp、比誘電率εr、機械品質係数Qmがそれぞれ、Kp≧30%、εr≧900、Qm≧900であることを特徴とする圧電材料。
【背景技術】
【0002】
圧電材料としては、PZT(PbTiO
3−PbZrO
3)組成系セラミックスがよく知られている。PZTは、電気機械結合係数や圧電定数などの圧電特性に優れ、このPZTは、センサー、超音波モーター、フィルターなどの圧電素子に広く使用されている。
【0003】
ところで、近年では、環境に対する要請から工業製品の「鉛フリー」化が急務となっている。当然、PZTも最終的に工業製品に使用されるため、圧電材料も、鉛(Pb)が含まれているPZTから、鉛を含まない他の圧電材料に置換していく必要がある。
【0004】
そして、鉛を含まない圧電材料(非鉛圧電材料)としては、一般式K
xNa
(1−x)NbO
3で表される化合物(KNN)、チタン酸バリウム(Ba
nTiO
3)系の圧電材料などがある。なお、KNNを主成分として含む圧電材料(以下、KNN系圧電材料)については、例えば、以下の特許文献1に記載されている。また、圧電材料に関する一般的な技術については、以下の非特許文献1や2に詳しく記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に関わる一部の発明者(以下、本発明者)は、以前、一般式{(K
1-aNa
a)
1−bLi
b}(Nb
1−c−dTa
cSb
d)O
3で表される化合物の耐湿性能についての検討を行い、その検討過程で、当該化合物を構成する各組成の配合(一般式中のa〜d)を適切に設定するとともに、ガラスを添加することで、実用に耐える圧電特性を維持しつつ、耐湿性を向上させた圧電材料を発明し、これを特許出願した(特願2010−57735:先発明1,特願2010−161856:先発明2)。
【0008】
しかしながら、その後の研究過程で、圧電性発現の起源となる物質として上記化合物を含む圧電材料では、各種圧電特性(電気機械結合係数Kp、比誘電率εr)をさらに向上させようとすると、その全てをバランス良く向上させることが難しい、ということが判明した。すなわち、上記化合物単体からなる圧電材料、あるいは先発明1や2に係る圧電材料では、Qmとεrの特性が相反関係にあった。そして、先発明1や2の延長線上では、Qmとεrの双方の特性をさらに向上させることが極めて困難であった。
【0009】
そして、上記目的を達成するための本発明は、一般式(K
aNa
bLi
c)(Nb
B−d−eTa
dSb
e)O
3+xmol%BaTiO
3+ymol%CuOで表される圧電材料であって、
B=1.1、a+b≧0.96であるとともに、
0.4≦a≦0.52、0.46≦b≦0.54、
0.040≦c≦0.057、0.1≦d≦0.2、0.005≦e≦0.04、3≦x<7、2≦y≦4である、
ことを特徴とする圧電材料としている。
【0010】
この上記先発明3に係る圧電材料は、センサーなどの受動的な圧電装置に採用する場合には十分に実用可能であった。また、条件によっては、ブザーや超音波モーター、バイモルフなどの能動的な圧電装置に利用できるほどの特性も得た。そして、その後の研究では、先発明3の圧電材料の組成をさらに最適化し、この先発明3で得た特性をより安定して得られるようにしたり、さらに特性を向上したりすることを試みた。しかし、先発明3を含め、組成の最適化、という従来の開発手法では特性向上に限界があった。そこで、開発手法の原点となる技術的思想を根本から変えることとした。
【0011】
本発明は、圧電材料の開発手法に関わる技術思想を転換することを出発点として創作されたものであり、環境に優しく、各種圧電特性が、バランス良く、超音波モーターなどの能動的な圧電装置への適用も可能な「極めて」優れた圧電材料を提供することを目的としている。なお、その他の目的については以下の記載で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明は、一般式(K
aNa
bLi
c)(Nb
B−d−eTa
dSb
e)O
3+xmol%BaTiO
3+ymol%CuOで表される圧電材料であって、
B=1.1、a+b≧0.96であるとともに、
0.4≦a≦0.52、0.46≦b≦0.54、0.004≦c≦0.057、0.1≦d≦0.2、0.005≦e≦0.04、3≦x<7、2≦y≦4である、
ことを特徴とする圧電材料としている。
【0013】
また、上記圧電材料において、電気機械結合係数Kp、比誘電率εr、機械品質係数Qmがそれぞれ、Kp≧30%、εr≧900、Qm≧900である圧電材料も本発明の範囲としている。
【0014】
本発明は、上記圧電材料の製造方法にも及んでおり、当該製造方法は、
前記圧電材料となる化合物の原料と溶媒とを混合する混合ステップと、
前記化合物と前記溶媒との混合物を、焼結温度より低い所定の温度で焼成する仮焼成ステップと、
前記仮焼成ステップ後の前記混合物にバインダーを添加したものを所定の形状に成形する成形ステップと、
前記成形ステップにて得た成形物を酸素雰囲気中で焼結させる焼成ステップと、
を含むことを特徴とする圧電材料の製造方法としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の圧電材料によれば、環境負荷を低減させ、各種圧電特性がバランス良く、かつ極めて優れ、様々な用途に広く採用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
===本発明の技術的思想===
上記先発明3は、一般式{(K
1-aNa
a)
1−bLi
b}(Nb
1−c−dTa
cSb
d)O
3+xmol%Ba
nTiO
3+ymol%CuOで表される圧電材料であり、当該発明3では、x、y、a、b、c、d、nの値を適正な数値範囲に設定することにより、従来、相殺関係にあった比誘電率εrと機械的品質係数Qmをともに向上させることに成功した。そして、上述したように、先発明3に係る圧電材料は、各種圧電特性がバランス良く優れ、一部の用途においては、従来の鉛を含んだ圧電材料に代替することが可能となった。しかし、全ての用途において代替できるものではなかった。そこで、本発明者は、圧電特性を向上させるための手法について考察してみた。そして、圧電材料が原材料を焼成することで作製されるセラミックスであり、その焼成の過程で、圧電特性に寄与するアルカリ成分が揮発していれば、上記一般式における組成を最適化したとしても、特性を大きく向上させることは難しい、と考えた。
【0018】
具体的には、先発明3の圧電材料を表現する上記一般式において、{(K
1−aNa
a)
1−bLi
b}(Nb
1−c−dTa
cSb
d)O
3で表現される組成は、(1−a)(1−b)をa、a(1−b)をb、bをcと表記し直し、cをd、dをeと表記し直すと、(KaNa
bLi
c)(Nb
1−d−eTa
dSb
e)O
3と表記し直すことができる。そして、この(K
aNa
bLi
c)(Nb
1−d−eTa
dSb
e)O
3を構成する元素がアルカリ成分である。
【0019】
ところで、(K
aNa
bLi
c)(Nb
1−d−eTa
dSb
e)O
3で示される化合物において、(K
aNa
bLi
c)をAサイト、(Nb
1−d−eTad
dSb
e)をBサイトとすると、当該化合物は、AとBを異なる組成として、ABO
3表現されるペロブスカイト型の結晶構造を有する物質である。そして、AサイトとBサイトの割合は、1:1である。すなわち、各サイトを構成する元素の比の合計が1となるように、a+b+c=1、(1−d−e)+d+e=1となっている。
【0020】
なお、このように、AサイトとBサイトとの割合が1:1となることは、(K
aNa
bLi
c)(Nb
1−d−eTa
dSb
e)O
3に限らず、圧電材料中のペロブスカイト全般に対して広く適用されている。ここで本発明者は、先発明3の延長線上、すなわち、AサイトとBサイトとの割合が1:1であることを前提として、組成中のa〜e、x、y、nの値の最適値を絞り込むだけでは、圧電特性の向上に限界がある、と判断した。
【0021】
つぎに、本発明者は、ペロブスカイトにおけるAサイトとBサイトの割合、すなわち、a+b+cの値と、Bの値とについて見直してみたところ、まず、各サイトにいずれか、あるいは両方に含まれるアルカリ成分が焼成に際して揮発し、実際は、a+b+cもBも1より少ないのではないか、と予想した。そして、その揮発したアルカリ成分を補償する、という技術思想に想到した。もちろん、その補償量に過不足があっては、却って特性が劣化する可能性もある。また、BaTiO
3やCuOなどの圧電材料を構成する他の組成との割合によっても特性が変化することが容易に予想される。本発明は、先発明3に係る圧電材料の組成を基本としながら、上記の技術思想に基づいて鋭意研究を重ねた結果、想到したものである。以下では、本発明の実施例に係る圧電材料について、その作製手順や組成、および特性などについて説明する。
【0022】
===圧電材料の作製手順===
図1は、本発明の実施例における圧電材料の作製手順を示している。まず、圧電材料の原料を所定量秤量して配合し、ボールミル中に、その原料と溶媒となるアルコール(エタノールなど)を入れて湿式混合する(s1)。それによって、サンプルとなる圧電材料の原料が混合されるとともに粉体状に粉砕される。そして、この混合物を950℃の温度で2.5時間(h)仮焼成し(s2)、その仮焼成後の粉末を24h、湿式混合し、その混合物を解砕する(s3)。次いで、その解砕した混合物にバインダーとしてPVA水溶液を加えて混合することで、適宜な大きさの粒子径の粉末に造粒する(s4)。さらに、その造粒された粉末を目的とする形状に成形する(s5)。ここでは、直径21.5mmのダイスを用いて約300MPaの圧力で所定の形状に成形した。そして、上記成形物を大気中で1000℃〜1100℃の温度で1h焼成し(s6)、セラミックスである圧電材料を得る。
【0023】
最後に、その圧電材料の特性を測定するために、圧電素子に形成する。具体的には、
図2に示した側面図のように、圧電材料を、直径Φ=17mm±1mmで、厚さt=1.0mm±0.05mmとなる円板状に加工するとともに、その円板状の圧電材料2の両面にAg電極3を焼き付けたのち(s7,s8)、120℃のシリコンオイル中において、4Kv/mmの電界で分極処理を30分間行って圧電素子1とした(s9)。
【0024】
===本発明の実施例について===
本発明では、圧電材料の主体となる(K
aNa
bLi
c)(Nb
B−d−eTa
dSb
e)O
3で表される化合物を母材として、この母材にCuOとBa
nTiO
3の双方を助剤として添加することで、双方の欠点を補完し、各種圧電特性を総合的に向上させる、という先発明3の技術思想をさらに発展させ、母材を構成するアルカリ成分を過剰に添加することで、さらなる特性向上を目指している。
【0025】
本発明の実施例に係る圧電材料は、一般式(K
aNa
bLi
c)(Nb
B−d−eTa
dSb
e)O
3+xmol%Ba
nTiO
3+ymol%CuOによって表現されるものである。以下では、特に断りがない限り、「一般式」とはこの式を指すこととする。この上記一般式自体は、a+b+c=Aとして、A=1、かつB=1であれば、先発明3において規定したものと同一である。しかし、先発明3に対して異なる点は、上述したように、AサイトとBサイトが1:1の割合ではない、という点である。そして、一般式におけるa〜e、x、y、nの組み合わせ異なる各種圧電材料をサンプルとして作製し、各サンプルについての圧電特性を評価することで、実施例に係る圧電材料の具体的な組成を規定する。
【0026】
ところで、本発明の実施例に対する比較例で、所謂「ベンチマーク」となる圧電材料は、先発明3において規定したa〜d、x、y、nの数値範囲おいて、最も優れた特性を有するものとなる。具体的には、(K
0.48Na
0.48Li
0.04)(Nb
1−0.10−0.04Ta
0.10Sb
0.04)O
3+3mol%BaTiO
3+2mol%CuOで表される圧電材料である。すなわち、上記一般式において、a=b=0.48、c=0.04、d=0.10、e=0.04、B=1、x=3、y=2、n=1となる圧電材料である。そして、上記技術思想に基づく各種圧電材料を作製し、基準サンプルよりも特性が向上した圧電材料が本発明の実施例となる。ここでは、上記一般式におけるBa
nTiO
3の組成を、先発明3において実績があるn=1に規定した上で、上記一般式におけるa〜e、Bの値が異なる各種サンプルを作製し、これらの値の適正値を規定することとしている。
【0027】
===サンプルについて===
圧電材料の特性、とくに実験室レベルの製造設備で作製した圧電材料の特性は、工業的に大量生産するための製造設備と比較すると、製造ロットごとのバラツキが大きい。すなわち、組成が同じ基準サンプルであっても、作製機会が異なれば、特性が変化し、実施例との正確な特性比較ができない可能性がある。したがって、基準サンプルについても、先発明3で得た特性を流用するのではなく、上述した作製手順にて他のサンプルと同時期に新たに作製した。
【0028】
以下の、表1にサンプル(No.1〜No.42)の作製条件を示した。
【表1】
【0029】
表1において、No.1が基準サンプルである。No.2は、No.1に対してBサイトの割合を1.0より大きなB=1.1としたサンプルである。すなわち、Bの値を1より大きくすることで、Bサイトを構成する元素がどのような割合であっても、Bサイトには、アルカリ成分が自ずと過剰に添加されることになる。
【0030】
No.3〜No.40は、B=1.1とした上で、上記一般式におけるa〜e、x、yの値を変えたサンプルである。なお、No.1〜No.30のサンプルでは、BaTiO
3とCuOの添加量が基準サンプルと同じで、x=3.0mol%、y=2.0mol%としている。また、No.21,29、32、37のサンプルは、No.17のサンプルと同じ組成であり、サンプル番号の欄には、そのことがわかるように「(17)」が付記されている。
【0031】
ところで、基準サンプルでは、a+b=0.96となっている。そして、本発明では、焼成によって揮発するアルカリ成分を補償することで特性を向上させることを趣旨としていることから、No.2〜No.40では、a+b<0.96とならないように、AサイトにおけるK、あるいはNaの一方を0.48よりも少ないサンプルについては、a+b≧0.96となるように他方の割合を増加させている。具体的にはNo.9、10、14、15のサンプルがそれに当たる。表中では、これらのサンプルに対応するa、あるいはbの欄にa+b≧0.96となる数値を記載している。したがって、本発明の実施例に係る圧電材料は、a+b≧0.96が条件の一つとなる。
【0032】
===圧電特性===
表1に示した、No.1〜No.40のサンプルについて、圧電特性の指標となる電気機械結合係数Kp(%)、および機械的品質係数Qm(%)を測定した。また、誘電率ε
33Tを測定するとともに、比誘電率εrをεr=ε
33T/ε
0の式によって求めた。なお、圧電特性の測定は、
図1に示した工程によって作製したサンプルを大気中で24h放置した後に行った。
【0033】
表2にサンプル(No.1〜No.40)の圧電特性を示した。
【表2】
【0034】
===Bサイトの割合について===
表2において、基準サンプルであるNo.1の特性をみると、Kp=27.83%、Qm=594.83、εr=757.90であり、十分にすぐれた特性を備えていることがわかる。それに対し、No.2は、Bサイトの割合を1から1.1にしたものであり(B=1.1)、Kp、Qm、εrの全てについて特性が向上した。とくにεrの特性が大きく向上した。したがって、Bサイトの割合を1.1とすることに優位性が確認された。そこで、サンプルNo.3〜No.40では、B=1.1と規定し、その上で、当該サンプルNo.3〜No.40の特性を評価することで、a〜e、x、yの適正値を特定することとする。
【0035】
===Aサイトの組成について===
<Liの割合>
表1に示したように、No.3〜No.8のサンプルは、AサイトにおけるLiの割合が異なる。そして、表2に示したように、No.4〜No.7のサンプルでは、基準サンプルよりも特性が優れていた。そして、このときのLiの割合cは、0.050≦c≦0.057であり、No.2の組成から、0.040≦c≦0.057がAサイトにおけるLiの適正値であると言える。
【0036】
<Kの割合>
No.9〜No.13のサンプルは、AサイトにおけるKの割合が異なる。そして、No.10〜No.12のサンプルが、基準サンプルよりも特性が優れており、このときのKの割合cは、0.40≦a≦0.52であった。すなわち、この数値範囲がAサイトにおけるKの適正値であると言える。
【0037】
<Naの割合>
上記のLi、およびKと同様に、表2におけるNo.14〜No.19のサンプルの特性より、AサイトにおけるNaの適正値を求める。No.15〜No.18のサンプルが、基準サンプルよりも特性が優れており、このときのNaの割合cは、0.46≦b≦0.54であった。すなわち、この数値範囲がAサイトにおけるNaの適正値であると言える。なお、No.15〜17では、Qmとεrがともに1000以上であり、Kpの値も優れていた。また、No.16とNo.17では、Kpが30を超えていた。
【0038】
===Bサイトの組成について===
No.3〜No.19は、Aサイトの組成が異なる圧電材料であった。つぎに、Aサイトについては、No.3〜No.19のうち、最も特性に優れたNo.17のサンプルと同じ組成とし、その上でBサイトの組成を変えたサンプルがNo.20〜30である。
【0039】
<Taの割合>
No.20〜23は、表1に示したように、BサイトにおけるTaの割合を変えたサンプルである。すなわち、Sbの割合を固定しておいて、NbとTaの割合を変化させたサンプルである。なお、Sbの割合は、基準サンプルと同じe=0.04としている。そして、No.21、22のサンプルが、基準サンプルよりも特性が優れており、このときのTaの割合dは、0.10≦d≦0.20であった。すなわち、この数値範囲がBサイトにおけるTaの適正値であると言える。
【0040】
<Sbの割合>
No.24〜30は、表1に示したように、BサイトにおけるSbの割合を変えたサンプルである。Taの割合については、基準サンプルと同じe=0.10としている。そして、No.25〜29のサンプルが、基準サンプルよりも特性が優れており、このときのSbの割合eは、0.005≦e≦0.04であった。すなわち、この数値範囲がBサイトにおけるSbの適正値であると言える。
【0041】
===BaTiO
3、CuOの添加量について===
No.1〜No.40のサンプルの内、No.1〜No.30は、全て、BaTiO
3とCuOの添加量が基準サンプルと同じであった(x=3,Y=2)。それに対し、No.31〜40では、BaTiO
3とCuOの添加量を変化させている。
【0042】
<BaTiO
3の添加量>
表1に示したように、No.31〜35は、AサイトとBサイトの組成とCuOの添加量を、No.1〜No.30のうち、最も特性に優れたNo.17(No.21,29、)と同じとしつつ、BaTiO
3の添加量を変えたサンプルである。そして、表2に示したように、No.32〜34のサンプルが、基準サンプルよりも特性が優れていた。このときのBaTiO
3の添加量xは、3.0≦x≦7.0であった。すなわち、この数値範囲がBaTiO
3の適正添加量であると言える。
【0043】
<CuOの添加量>
一方、CuOの添加量を変えたサンプルがNo.36〜40である。当該No.36〜40では、AサイトとBサイトの組成とBaTiO
3の添加量がNo.17のサンプルと同じである。そして、表2に示したように、No.37〜39のサンプルが、基準サンプルよりも特性が優れていた。このときのCuOの添加量yは、2.0≦y≦4.0であった。すなわち、この数値範囲がCuOの適正添加量である。
【0044】
===Aサイトの最適組成について===
以上より、本発明の実施例に係る圧電材料は、以下の事項(1)〜(4)を要件として備えていることが条件となる。
【0045】
(1)一般式(K
aNa
bLi
c)(Nb
B−d−eTa
dSb
e)O
3+xmol%BaTiO
3+ymol%CuOで表される圧電材料であること。
(2)B=1.1であること。
(3)a+b≧0.96であること。
(4)0.40≦a≦0.52、0.46≦b≦0.54、0.040≦c≦0.057、0.10≦d≦0.20、0.005≦e≦0.04、3.0≦x≦7.0、2.0≦y≦4.0であること。
【0046】
ここで、表2に示した結果を再検討すると、No.6、10、15〜17のサンプルの特性が極めて優れていることがわかる。Qmとεrがともに900以上であり、Kpも30〜35%程度と高い。さらに、これらのサンプルに対して前後の番号のサンプルの特性をみると、例えば、No.10〜12は、Aサイト中のNaの割合がa+b≧0.96である限り一定で、Kの割合を変えている。そして、No.10〜12のサンプルでは、Kの割合によって、Qmとεrの特性がトレードオフとなっている傾向がある。具体的には、Kの割合が大きいほどεrの特性が向上し、Qmの特性が低下している。Kpについては、Kの割合が大きいほど向上している。
【0047】
一方、Aサイト中のNaの割合を変えているNo.15〜18のサンプルのうち、No.15〜17では、Kp、Qm、εrの全特性が揃って向上している。とくに、No.16、17ではQmが1000以上であった。
【0048】
そこで、No.16のサンプルに対し、Kの割合を若干増加させて、Aサイトの組成をa=b=0.50、c=0.056としたNo.41のサンプルを製造し、特性を測定した。
【0049】
表3と表4に、それぞれ、No.41のサンプルの組成と圧電特性を示した。
【表3】
【表4】
【0050】
表3に示した組成のNo.41は、表4に示したように、Kpが35以上で、Qmとεrについては1000以上を得た。
【0051】
===焼成条件について===
本発明者は、先に、同じ組成の圧電材料であっても、大気中で焼成させたものより、酸素雰囲気中で焼成されたもののほうが特性に優れている、ということを知見し、これを特許出願した(特願2011−256486)。そこで、本発明の実施例に係る圧電材料についても、酸素雰囲気中で焼成することで特性が向上するか否かを検討した。当該検討に当たっては、Aサイトの組成が異なるNo.11,17,41を比較対象として抽出し、この抽出したサンプルと同じ組成の圧電材料を酸素雰囲気中で焼成し、その圧電材料の特性を測定することとした。
【0052】
表5に比較対象となったサンプルの組成を示した。
【表5】
【0053】
表6に焼成条件による圧電特性の比較結果を示した。
【表6】
【0054】
表6において、サンプル番号の後に「B」が記載されているサンプルが酸素雰囲気中で焼成した圧電材料であり、比較対象となった全ての圧電材料に対し、Kp、Qm、εrの全ての特性が向上した。以上の結果より、比較対象となったサンプルの組成に限らず、上記(1)〜(4)によって特定される圧電材料は、酸素雰囲気中で焼成することにより、さらなる特性向上が十分に期待できる。