(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ローション薬液をティシュペーパーに塗布したローションティシュー(以下、ローションティシューと呼ぶ。)などの紙シートの製造には、一般に、長尺の紙シートが巻かれた原反ロールが用いられる。原反ロールは、通常、折り加工機などの加工機にセットされるまでの間、保管庫に保管される。
【0003】
図14は、保管庫に保管された原反ロールを示す図である。
図14に示すように、この原反ロール100は、巻き芯101に紙シートが巻かれたものであり、巻き芯101を設置面102に対して水平方向に向けて保管される。紙シートからなる原反ロール100は、吸湿性を有するため、保管庫内の湿気を吸収する。原反ロール100が多量の湿気を吸収すると、紙シートの巻き付け力が弱まると同時に質量も増えるため、二点鎖線で示すように、原反ロール100が非円筒形状に変形する。このように、原反ロール100が変形すると、紙シートに皺が発生するなど製品品質が低下する。また、原反ロール100が過度に変形してしまうと、加工機に原反ロール100が適合しなくなり、加工機を運転できなくなる不具合が生ずる。
【0004】
特に、薬液が紙シートに塗布される場合、薬液を含む分、原反ロール100は、質量が大きいため、変形し易い。さらに、薬液が保湿剤を含む場合、保湿剤が湿気を吸収するため、原反ロール100は、より変形し易くなる。なお、原反ロール100を長期間保管する場合や、夏場など湿度の高い環境下で原反ロール100を保管する場合、あるいは、大型の原反ロール100を保管する場合は、薬液を含まない原反ロール100であっても、大きく変形するおそれがある。
【0005】
そこで、従来、原反ロールの吸湿を防ぐ技術が各種提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
特許文献1には、紙材が巻かれた原反を収納し得る保管庫本体と、原反を保管庫本体内に挿入する際に原反を案内する案内部材と、保管庫本体を開閉可能とすると共に閉鎖時に保管庫本体内の空間を密閉し得る蓋部材とを含む原反用保管庫が開示されている。この原反用保管庫によれば、保管庫本体内に原反を案内部材で案内しながら挿入し、蓋部材で保管庫本体内の空間を密閉することにより、原反が外気の水分を吸湿することが防止され、巻ずれの発生が抑制される。
【0007】
また、特許文献2には、紙ロールの円筒形部分の周りをラップで包装する包装技術が開示されている。この特許文献2の技術によれば、紙ロールは、ラップで包装されるため、湿気から保護される。
【0008】
ところで、近年、原反ロールの大型化が進む中、原反ロールを保管する装置や方法には、簡便性が求められている。また、簡便性に加え、紙シートの品質向上の観点から、より効果的に原反ロールの変形を抑制できる技術も求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の原反用保管庫は、原反よりも大きな装置であることに加え、合金製の重量物であることから、装置の製造コストが高く、取り扱い性も悪い。したがって、特許文献1の原反用保管庫では、求められる簡便性に応えることはできない。また、特許文献2の包装技術のように、紙ロールをラップで単に包むだけの構成では、原反ロールの変形の抑制に限界がある。
【0011】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、原反ロールの変形を簡便且つ効果的に抑制できる原反ロールの保管装置および原反ロールの保管方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の構成によって把握される。
本発明の原反ロールの保管装置は、紙シートの原反ロールを保管する原反ロールの保管装置であって、前記原反ロールは、設置面に対して巻き芯を水平方向に向けた姿勢で保管されるものであり、前記保管装置は、前記原反ロールの外周面に隙間無く巻き付けられ、前記外周面を締め付けるラッピングフィルムと、前記ラッピングフィルムの上に巻き掛けられ、前記外周面をさらに締め付ける締め付けバンドと、を有することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、原反ロールの外周面に隙間無く巻き付けられたラッピングフィルムにより、原反ロールが湿気から保護されるため、原反ロールの吸湿を抑制することができる。また、原反ロールの外周面は、ラッピングフィルムに加え、締め付けバンドによっても締め付けられるため、単にラッピングフィルムで包んだ従来の包装技術に比べ、原反ロールの形態安定性が格段に高まる。したがって、原反ロールの変形を効果的に抑制することができる。しかも、本発明では、大型の保管庫を用いる必要がないため、原反ロールの変形を簡便に抑制することができる。
【0014】
上記発明の原反ロールの保管装置は、前記締め付けバンドが巻かれた前記原反ロールを載せるロールホルダーを有し、前記ロールホルダーは、前記原反ロールの下部を受けて保持する受け面を有し、前記受け面は、前記原反ロールの外周面に沿って曲面状に形成されることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、自重によって最も変形し易い原反ロールの下部を、曲面状の受け面で安定的に受けて保持することにより、原反ロールの下部の変形を防ぐことができる。これにより、原反ロールの変形をより効果的に抑制することができる。
【0016】
上記発明の原反ロールの保管装置では、前記ロールホルダーは、前記受け面を上面に備える支持部を有し、前記支持部は、芯材および前記芯材の反りを防ぐ面材を積層した紙製の積層板で構成され、前記支持部の上面には、前記受け面を形成する前記面材が設けられる一方、前記支持部の下面には、前記面材が設けられないことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、紙製の軽い積層板で支持部を構成することで、ロールホルダーの軽量化および取り扱い性の向上を図ることができる。また、原反ロールを支持する支持部の下面に面材が無いため、原反ロールから荷重を受けると、支持部が良好に湾曲する。これに対して、支持部の下面に面材があると、支持部の下面の剛性が増すため、支持部の下面の変形が抑えられてしまう。この点、本発明では、面材の無い支持部の下面が良好に湾曲するので、原反ロールをより安定的に保管することができる。
【0018】
上記発明の原反ロールの保管装置では、前記原反ロールは、薬液が塗布された紙シートを巻き取ったものであることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、薬液を塗布した紙シートの原反ロールを保管する場合において、原反ロールの変形を簡便且つ効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明の原反ロールの保管方法は、紙シートの原反ロールを設置面に対して巻き芯を水平方向に向けた姿勢で保管する原反ロールの保管方法であって、前記原反ロールの外周面にラッピングフィルムを隙間無く巻き付けて、前記ラッピングフィルムで前記外周面を締め付けるラッピング工程と、前記ラッピングフィルムの上に締め付けバンドを巻き掛け、前記締め付けバンドで前記外周面をさらに締め付けるバンド締め付け工程と、を含むことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、原反ロールの外周面に隙間無く巻き付けられたラッピングフィルムにより、原反ロールが湿気から保護されるため、原反ロールの吸湿を抑制することができる。また、原反ロールの外周面は、ラッピングフィルムに加え、締め付けバンドによっても締め付けられるため、単にラッピングフィルムで包んだ従来の包装技術に比べ、原反ロールの形態安定性が格段に高まる。したがって、原反ロールの変形を効果的に抑制することができる。しかも、本発明では、大型の保管庫を用いる必要がないため、原反ロールの変形を簡便に抑制することができる。
【0022】
上記発明の原反ロールの保管方法は、前記原反ロールの外周面に沿って曲面状に形成される受け面を有するロールホルダーを用い、前記締め付けバンドを巻き掛けた前記原反ロールの下部を前記ロールホルダーの前記受け面に載せて保持するロール保持工程を含むことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、自重によって最も変形し易い原反ロールの下部を、曲面状の受け面で安定的に受けて保持することにより、原反ロールの下部の変形を防ぐことができる。これにより、原反ロールの変形をより効果的に抑制することができる。
【0024】
上記発明の原反ロールの保管方法は、前記ラッピング工程において、前記原反ロールの外周面から前記原反ロールの端面にかけて前記ラッピングフィルムを巻き付けることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、原反ロールの外周面に加えて、原反ロールの端面にもラッピングフィルムが巻き付けられるため、原反ロールの露出面が減り、原反ロールの吸湿をより一層低減することができる。同時に、原反ロールの端面においてもラッピングフィルムによる締め付け力が加わるため、原反ロールの形態安定性がさらに高まる。結果、原反ロールの変形をより一層効果的に抑制することができる。
【0026】
上記発明の原反ロールの保管方法は、前記ラッピング工程において、薬液が塗布された紙シートを巻き取った原反ロールの外周面に、前記ラッピングフィルムを隙間無く巻き付けることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、薬液を塗布した紙シートの原反ロールを保管する場合において、原反ロールの変形を簡便且つ効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、原反ロールの変形を簡便且つ効果的に抑制できる原反ロールの保管装置および原反ロールの保管方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する。)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、図面は、符号の向きに見るものとする。
【0031】
(原反ロールの保管装置の全体構成)
まず、実施形態の原反ロールの保管装置(以下、「保管装置」と称する。)の全体構成を
図1に基づいて説明する。
【0032】
図1に示すように、実施形態の保管装置10は、紙シートが巻かれた原反ロール11を保管する装置である。原反ロール11は、塗工設備で薬液を塗布した紙シート(例えば、ローションティシュー)をロール状に巻き取ったものであり、保管庫で一旦保管された後、保管庫から搬出されて、次工程の折り加工機にセットされる。折り加工機では、原反ロール11から紙シートを引き出して折り畳み、折り畳まれた紙シートは、箱詰めされる。原反ロール11は、保管庫において、設置面12に対して巻き芯13を水平方向に向けた姿勢で保管される。原反ロール11の寸法を例示すると、胴径Dは1200mm、巻き芯13の軸方向の長さL1は1130mmである。
【0033】
薬液には、保湿剤(例えば、グリセリン)、柔軟剤、平滑剤などが含まれる。また、原反ロール11の巻き取り長さは、例えば、1万m以上になる場合があり、この場合、原反ロール11の質量は、薬液の質量を含めて約400kg以上になる。なお、実施形態では、紙シートの一例として、薬液を塗布した紙シートを示したが、本発明において、紙シートは、薬液が塗布されないものでもよく、紙シートの種類は任意である。
【0034】
(保管装置の各部の構成)
保管装置10は、ラッピングフィルム15、締め付けバンド16、ロールホルダー20を有する。
【0035】
ラッピングフィルム15は、原反ロール11の外周面11aに隙間無く巻き付けられ、外周面11aを締め付ける。ラッピングフィルム15の寸法を例示すると、厚みは14μm、幅w1は500mmであり、外周面11aに実際に巻き付けるラッピングフィルム15の使用長さは20m〜30m程度である。ラッピングフィルム15は、各種のフィルムから選択可能であるが、一般に広く普及しているポリエチレン製のストレッチフィルムが好適である。
【0036】
締め付けバンド16は、ラッピングフィルム15の上に巻き掛けられ、外周面11aをさらに締め付ける。締め付けバンド16の固定には、いわゆるストッパー等の留め具17を用いることができる。締め付けバンド16の寸法を例示すると、厚みは1.7mm、幅w2は50mm、長さは5mである。締め付けバンド16の本数は、任意であるが、ここでは、2本の締め付けバンド16を用い、巻き芯13の軸方向において、外周面11aをできるだけ均等に締め付ける。締め付けバンド16は、各種の部材から選択可能であるが、コストを考慮すると、安価なポリプロピレン製のバンド(いわゆるPPバンド)を用いることが好適である。
【0037】
次に、ロールホルダー20の構成を
図1〜
図7に基づいて説明する。
図1に示すように、ロールホルダー20は、締め付けバンド16が巻かれた原反ロール11を載せるものであり、支持部21および脚部22を有する。ロールホルダー20の寸法を例示すると、幅Wは1095mm、長さL2は1120mm、高さHは240mmである。
【0038】
図2(a)および(b)に示すように、支持部21は、断面形状が円弧状に形成され、受け面21aを上面に備える。受け面21aは、原反ロール11の外周面11aに沿って曲面状に形成される滑らかな面であって、原反ロール11の下部を受けて保持する。
図2(a)では、受け面21aの曲率半径R2を原反ロール11の半径R1と同程度に設定したが、曲率半径R2の大きさは、ロールホルダー20に求められる性能に応じて、任意に設定可能である。また、
図2(a)では、支持部21の幅(ロールホルダー20の幅)Wを原反ロール11の胴径Dよりも小さく設定し、
図2(b)では、支持部21の長さ(ロールホルダー20の長さ)L2を原反ロール11の長さL1と同程度に設定したが、これら幅Wおよび長さL2の大きさについても、ロールホルダー20に求められる性能に応じて、任意に設定可能である。例えば、長さL2は、長さL1の半分程度に設定しても差し支えない。
【0039】
図3に示すように、支持部21は、芯材23、および、芯材23の反りを防ぐ面材25を積層した紙製の積層板で構成することができる。この場合、支持部21の上面には、受け面21aを形成する面材25を設ける一方、支持部21の下面21bには、面材を設けない構成とすることが好ましい。このように支持部21を構成すると、原反ロール11から受ける荷重(白抜きの矢印で示す)に対し、二点鎖線で示すように、面材の無い下面21bを良好に湾曲させることができる。
【0040】
図2に戻る。
図2(a)および(b)に示すように、脚部22は、支持部21を設置面12(
図1参照)から浮かして支持する。脚部22は、巻き芯13の軸直角方向に沿って延びる複数(この例では、10枚)の第1板材22aと、巻き芯13の軸方向に延びる複数(この例では、2枚)の第2板材22bとを有する。
【0041】
複数の第1板材22aは、巻き芯13の軸方向に等間隔に並んで設けられる。各第1板材22aは、下端が設置面12(
図1参照)に接地する。各第1板材22aの上端は、支持部21の下面21bに沿って円弧状に形成されており、下面21bに固定される。第1板材22aの上端を下面21bに固定する手段は、接着や嵌合など各種の手段から選択可能である。また、第1板材22aの上端を下面21bに着脱可能に取り付けてもよい。
【0042】
図4に示すように、複数の第2板材22bは、支持部21の幅方向中心21cに対して左右対称位置に設けられる。第2板材22bは、複数の第1板材22aと交差するように第1板材22aに下から嵌合すると共に、設置面12(
図1参照)に下端が接地する。
【0043】
図5に示すように、これら第1板材22aおよび第2板材22bは、支持部21と同様に、芯材23および面材25を積層した紙製の積層板で構成することができる。この場合、芯材23の厚み方向の両面に面材25を設けることが好ましく、芯材23の厚み方向の両面に面材25を設けることより、脚部22の耐圧縮強度を高めることができる。
【0044】
支持部21および脚部22を構成する積層板には、一般に普及しているサンドイッチパネルを使用することができる。例えば、支持部21用の積層板には、段ボール中芯を連続積層した芯材23の厚み方向片面に、ポリサンド五層紙からなる面材25を設けたパネルを使用する。また、脚部22用の積層板には、段ボール中芯を連続積層した芯材23の厚み方向両面に、ポリサンド五層紙からなる面材25を設けたパネルを使用することができる。本実施形態のロールホルダー20では、支持部21および脚部22を積層板で構成することにより、1200kg以上の荷重に耐える性能を得ることができる。
【0045】
さらに、
図6に示すように、芯材23には、芯材23の厚み方向に貫通する多数の孔部26を、隔壁27を介して設けてもよい。多数の孔部26を芯材23に設けることにより、芯材23の強度を高めることができ、これにより、ロールホルダー20の一層の軽量化および強度向上を実現することができる。また、孔部26を平面充填形状(例えば、三角形や六角形など)に形成することで、孔部26を効率的に配置した構造(例えば、ハニカム構造)を得ることができる。これにより、芯材23の強度をさらに高めることができる。
【0046】
以上のように構成されるロールホルダー20は、全体として、平らな形態であるため、使用しないときは、コンパクトに収納・保管することができる。例えば、
図7に示すように、互いの受け面21aを幅方向に若干ずらして向き合わせ、このように向き合わせたロールホルダー20を積み上げたり、さらに、積み上げたロールホルダー20との壁との隙間に、別のロールホルダー20を垂直に立てて積み上げたりすることができる。
【0047】
(原反ロールの保管方法)
続いて、実施形態の原反ロールの保管方法(以下、「保管方法」と称する。)を
図8〜
図11に基づいて説明する。
【0048】
本実施形態において、保管方法は、保管装置10(
図1参照)を用いて、原反ロール11を保管庫に保管する方法であり、ラッピング工程、バンド締め付け工程、ロール保持工程を含む。
【0049】
図8に示すように、ラッピング工程では、1対の支柱31と、1対の支柱31の上部に取り付けられる支軸32とからなるロール支持手段30を用いる。まず、支軸32を巻き芯13に通して、ロール支持手段30に原反ロール11をセットする。次に、矢印(1)で示す向きに、原反ロール11を回転させながら、ラッピングフィルム15を巻き芯15aから引き出して、原反ロール11の外周面11aに巻き付ける。このとき、ラッピングフィルム15を引っ張りながら巻くことで、ラッピングフィルム15によって外周面11aを締め付ける。そして、ラッピングフィルム15を巻き芯13の軸方向(矢印(2)で示す向き)に、移動させながら、ラッピングフィルム15同士が外周面11a上で重なるように隙間無く巻き付ける。さらに、原反ロール11の外周面11aから端面11bにかけても、ラッピングフィルム15を巻き付ける。
【0050】
図9に示すように、バンド締め付け工程では、ラッピングフィルム15の上から原反ロール11の周方向に沿って、締め付けバンド16を巻き掛けた後、締め付けバンド16を締め上げ、締め付けバンド16の両端部を留め具17で固定する。これにより、原反ロール11の外周面11aを締め付けバンド16でさらに締め付ける。
【0051】
図10に示すように、ロール保持工程では、まず、保管庫の設置面12にロールホルダー20を置く。そして、ロール支持手段30(
図9参照)から外した原反ロール11を、フォークリフトなどを用いて運搬し、原反ロール11の下部をロールホルダー20の受け面21aに載せて保持する。これで、原反ロール11の保管作業が完了となる。なお、ロールホルダー20の長さL2(
図2(b)参照)を原反ロール11の長さL1(
図2(b)参照)と同程度に設定すれば、フォークリフトなどを用いて原反ロール11の下部を受け面21aに載せる際、ロールホルダー20の端部と原反ロール11の端部を揃えるようにして原反ロール11を載せればよいので、作業者が原反ロール11の置く位置を認識し易くなる。
【0052】
(実験例)
続いて、ラッピングフィルム15の引張強度、張力、収縮力を調べた実験例について述べる。なお、本発明は実験例に限定されるものではない。
【0053】
○試料
ラッピングフィルム15の種類:ストレッチフィルム
ラッピングフィルム15の材質:ポリエチレン
ラッピングフィルム15の寸法:厚み1.4μm、幅500mm
○方法
図11に示すように、予め、ラッピングフィルム15を100mm引き出しておき、引き出したラッピングフィルム15の先端に、フィルム巻き付け板33を介してばね秤35を連結する。ラッピングフィルム15をばね秤35で引っ張り、ラッピングフィルム15の引張強度、張力、収縮力をばね秤35で測定する。
【0054】
○結果
測定結果(N=5)を表1に示す。
【0056】
表1に示されるように、ラッピングフィルム15の切断に必要な力(引張強度)は、8.4kgfであった。また、張力の最大値から判断すると、ラッピングフィルム15を引っ張りながら原反ロール11に巻き付けるには、7.1〜7.5kgfが必要であると言える。また、原反ロール11に対するラッピングフィルム15の締め付け力は、収縮力の測定結果から、6.32kgfと推定される。また、ラッピングフィルム15を原反ロール11に2重に巻いた場合、ラッピングフィルム15の締め付け力は、6.32×2=12.64kgf程度になると推定される。
【0057】
以上、説明した実施形態の作用・効果を
図12に基づいて説明する。
図12に示すように、原反ロール11の外周面11aに隙間無く巻き付けられたラッピングフィルム15により、原反ロール11が湿気から保護されるため、原反ロール11の吸湿を抑制することができる。また、原反ロール11の外周面11aは、ラッピングフィルム15に加え、締め付けバンド16(
図10参照)によっても締め付けられるため、ラッピングフィルム15で単に包んだ従来の包装技術に比べ、原反ロール11の形態安定性が格段に高まる。したがって、大型で質量の大きい原反ロール11の変形を効果的に抑制することができる。しかも、大型の保管庫を用いる必要がないため、原反ロール11の変形を簡便に抑制することができる。
【0058】
また、自重によって最も変形し易い原反ロール11の下部を、ロールホルダー20の曲面状の受け面21aで安定的に受けることにより、原反ロール11の下部の変形を防ぐことができる。これにより、原反ロール11の変形をより効果的に抑制することができる。
【0059】
また、ロールホルダー20では、滑らかな曲面である受け面21aにより原反ロール11の下部を受ける。これ対して、受け面に折り曲げ線を設けるなどして受け面を積極的に変形させる構成を採用することも可能である。しかし、この場合、受け面の柔軟性は得られるものの、受け面の折り曲げた角部によって原反ロールの表面が凹んでしまい、原反ロールの表面に凹んだ跡が残ってしまう。この点、本実施形態によれば、滑らかな曲面である受け面21aで原反ロール11の下部を受けるので、原反ロール11の表面を滑らかな面に維持することができる。
【0060】
また、ロールホルダー20では、脚部22によって、支持部21を設置面12から浮かして支持する。仮に、脚部が無く、支持部を設置面に直接に置いた場合、自重によって最も変形し易い原反ロール11の下部が設置面12から大きな抗力を受ける。これでは、原反ロール11の下部が潰れてしまう。この点、本実施形態によれば、脚部22によって、支持部21を設置面12から浮かして支持するので、原反ロール11の下部が潰れる心配がない。これにより、原反ロール11の変形をより効果的に抑制できる
【0061】
また、紙製の軽い積層板で支持部21および脚部22を構成することで、ロールホルダー20の軽量化および取り扱い性の向上を図ることができる。そして、原反ロール11を支持する支持部21の下面21bに面材を設けないことにより、支持部21を良好に湾曲させることができる。これに対して、支持部21の下面に面材を設けると、支持部21の下面の剛性が増すため、支持部21の下面の変形が抑えられてしまう。この点、本実施形態では、支持部21の下面21bが良好に湾曲するので、原反ロール11をより安定的に保管することができる。
【0062】
さらに、原反ロール11の外周面11aに加えて、原反ロール11の端面11bにもラッピングフィルム15が巻き付けられるため、この端面11b側に形成されるラッピングフィルム15の端部15bにより、原反ロール11の露出面が減り、原反ロール11の吸湿をより一層低減することができる。同時に、原反ロール11の端面11bにおいても、端部15bによる締め付け力が加わるため、原反ロール11の形態安定性がさらに高まる。結果、原反ロール11の変形をより一層効果的に抑制することができる。
【0063】
(ロールホルダーの変形例)
次に、ロールホルダーの変形例を
図13に基づいて説明する。
図13(a)に示すように、変形例のロールホルダー40は、原反ロール11を俵積み状に積み上げるときに用いるものである。ここでは、下段側で隣接する2本の原反ロール11の谷間41の上方に、上段側の1本の原反ロール11を配置する。
【0064】
ロールホルダー40は、上段側の原反ロール11の下部を受ける受け面21aと、谷間41に上から嵌合する嵌合部42とを有する。嵌合部42は、谷間41においてラッピングフィルム15に接触する1対の接触面42aを有する。各接触面42aは、原反ロール11の外周面11aに沿って曲面状に形成される。
【0065】
このように、受け面21aと嵌合部42を上下に有するロールホルダー40を用いることにより、原反ロール11を俵積み状に安定的に複数段積み上げることができる。すなわち、下段側の2本の原反ロール11と上段側の1本の原反ロール11とによって形成される略三角形状の隙間に、略三角形状のロールホルダー40を配置することで、隣接する2本の原反ロール11の上に原反ロール11を安定的に積むことができる。これにより、例えば、
図13(b)に示すように、原反ロール11を3段以上積み上げて保管することも可能である。また、原反ロール11を隙間無く配置できるので、原反ロール11の保管効率を高めることもできる。
【0066】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0067】
例えば、実施形態では、ロールホルダーを用いて原反ロールを保管したが、原反ロールの仕様や保管条件によっては、ロールホルダーは使用しなくてもよい。
【0068】
また、実施形態では、紙製のロールホルダーを用いたが、ロールホルダーの材質は、紙に格別に限定されるものではなく、合成樹脂など各種の材料から選択可能である。