(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダンパ部材が、前記第1タング部に配置され該第1タング部の幅方向に延びる第1ダンパと、前記第2タングに配置され該第2タング部の幅方向に延びる第2ダンパとを含むことを特徴とする請求項4に記載のディスク装置用サスペンション。
前記ダンパ部材が、一対の前記マイクロアクチュエータ素子のうちの一方のマイクロアクチュエータ素子の長手方向に沿って前記第1タング部と前記第2タング部とにわたって配置された第1ダンパと、他方のマイクロアクチュエータ素子の長手方向に沿って前記第1タング部と前記第2タング部とにわたって配置された第2ダンパとを含むことを特徴とする請求項4に記載のディスク装置用サスペンション。
前記ダンパ部材が、前記第1タング部と前記第2タング部とにわたって設けられ、該ダンパ部材の前記ヒンジ部と対応する位置に、前記ディンプルが挿入されるディンプル用開口を有したことを特徴とする請求項4に記載のディスク装置用サスペンション。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に第1の実施形態に係るディスク装置用サスペンションについて、
図1から
図12を参照して説明する。
図1に示すディスク装置(HDD)1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転するディスク4と、ピボット軸5を中心に旋回可能なキャリッジ6と、キャリッジ6を駆動するためのポジショニング用モータ(ボイスコイルモータ)7などを有している。ケース2は、図示しない蓋によって密閉される。
【0019】
図2はディスク装置1の一部を模式的に示す断面図である。
図1と
図2に示されるように、キャリッジ6にアーム(キャリッジアーム)8が設けられている。アーム8の先端部にサスペンション10が取付けられている。サスペンション10の先端部に、磁気ヘッドを構成するスライダ11が設けられている。ディスク4が高速で回転すると、ディスク4とスライダ11との間に空気が流入することによって、エアベアリングが形成される。
【0020】
ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6が旋回すると、サスペンション10がディスク4の径方向に移動することにより、スライダ11がディスク4の所望トラックまで移動する。
【0021】
図3は、DSAタイプのサスペンション10を示している。DSAはデュアルステージアクチュエータ(Dual Stage Actuator)の略である。このサスペンション10は、キャリッジ6のアーム8(
図1と
図2に示す)に固定されるベースプレート20と、ロードビーム21と、配線付きフレキシャ(flexure with conductors)22と、サスペンション10の先端付近に配置されたマイクロアクチュエータ搭載部23などを備えている。ベースプレート20には、前記アーム8に形成された孔8a(
図2に示す)に挿入されるボス部20aが形成されている。
【0022】
図3に矢印Xで示す方向がロードビーム21の長手方向すなわちサスペンション10の長手方向(前後方向)である。矢印Yがスウェイ方向(スライダ11の幅方向)である。ロードビーム21の基部(後端部)には、厚さ方向に弾性的に撓むことができるばね部25が形成されている。フレキシャ22はロードビーム21に沿って配置されている。
【0023】
図4は、サスペンション10の先端部に配置されたマイクロアクチュエータ搭載部23をスライダ11側から見た斜視図である。磁気ヘッドをなすスライダ11の端部には、例えばMR素子のように磁気信号と電気信号とを変換可能な素子28が設けられている。これらの素子28によって、ディスク4に対するデータの書込みあるいは読取り等のアクセスが行なわれる。スライダ11と、ロードビーム21と、フレキシャ22などによって、ヘッドジンバルアセンブリ(head gimbal assembly)が構成されている。
【0024】
マイクロアクチュエータ搭載部23は、フレキシャ22の先端部に形成されたジンバル部30と、このジンバル部30のスライダ11の両側に配置された一対のマイクロアクチュエータ素子31,32とを含んでいる。マイクロアクチュエータ素子31,32は、それぞれPZT等の板状の圧電体からなり、後に詳しく説明する構成によってスライダ11を前記スウェイ方向に回動させる機能を有している。
【0025】
図5は、フレキシャ22の先端部に形成されたジンバル部30とマイクロアクチュエータ素子31,32を、
図4とは反対側から見た斜視図である。
図6は、ジンバル部30とマイクロアクチュエータ素子31,32等を示す平面図である。
図7は、マイクロアクチュエータ搭載部23を
図6とは反対側から見た底面図である。
【0026】
フレキシャ22は、ステンレス鋼板からなるメタルベース40と、メタルベース40に沿って配置された配線部41とを有している。配線部41は、メタルベース40に重なる部分と、メタルベース40とは重ならない部分とを含んでいる。
【0027】
メタルベース40は、例えばレーザ溶接によって形成された第1の溶接部W1(
図3と
図6等に示す)と、第2の溶接部W2(
図3〜
図7に示す)等の固定手段によって、ロードビーム21に固定されている。すなわちこのフレキシャ22は、サスペンション10の前後方向の中間部において溶接部W1によってロードビーム21に固定された第1の固定側部分22aと、フレキシャ22の先端寄りの位置において溶接部W2によってロードビーム21に固定された第2の固定側部分22bとを含んでいる。フレキシャ22の後部22c(
図3に示す)はベースプレート20の後方に延びている。
【0028】
図5から
図7等に示されるように、フレキシャ22のメタルベース40は、第1の固定側部分22aに連なる一対の第1アーム51,52と、第2の固定側部分22bに連なる一対の第2アーム53,54とを有している。第1アーム51,52の先端部51a,52aは、それぞれU形に形成されている。これら先端部51a,52aの近傍に、それぞれ第2アーム53,54の後端が接続されている。第1アーム51,52と第2アーム53,54とによって、ジンバル部30を弾性的に支持するためのアーム部55が構成されている。
【0029】
図8はメタルベース40と配線部41の断面の一例を示している。配線部41は、ポリイミド等の電気絶縁性の樹脂からなる絶縁層60と、絶縁層60上に形成された書込用導体61および読取用導体62と、ポリイミド等の電気絶縁性の樹脂からなるカバー層63などを含んでいる。書込用導体61と読取用導体62とは、スライダ11の前記素子28(
図4に示す)に電気的に接続されている。メタルベース40の厚さの一例は20μm(12〜25μm)、絶縁層60の厚さの一例は10μm(5〜20μm)、導体61,62の厚さの一例は9μm(4〜15μm)、カバー層63の厚さの一例は5μm(2〜10μm)である。メタルベース40の厚さはロードビーム21の厚さ(例えば30μm)よりも小さい。
【0030】
フレキシャ22のジンバル部30に一対のマイクロアクチュエータ素子31,32が配置されている。この実施形態のジンバル部30は、ロードビーム21と対向する第1の面30a(
図5と
図10に示す)と、第1の面30aとは反対側の第2の面30b(
図4と
図10に示す)とを有している。第1の面30aに、下記のダンパ部材115が配置されている。第2の面30bに、スライダ11とマイクロアクチュエータ素子31,32とが配置されている。
【0031】
マイクロアクチュエータ素子31,32は、それぞれ第1の端部31a,32aと、第2の端部31b,32bとを有している。
図4と
図6および
図7に矢印X1で示す方向がマイクロアクチュエータ素子31,32の前側、矢印X2が後側である。マイクロアクチュエータ素子31,32の第1の端部31a,32aは、ジンバル部30に形成された一対の第1支持部70,71に固定されている。第1支持部70,71は、可撓性の一対の第1アーム51,52を介して、フレキシャ22の第1の固定側部分22aに連なっている。第1アーム51,52の先端部51a,52aは、第2アーム53,54を介して、フレキシャ22の第2の固定側部分22bに連なっている。すなわちジンバル部30の第1支持部70,71は、ロードビーム21に対し、弾性的に撓むことができるアーム部55(第1アーム51,52と第2アーム53,54)を介して、固定側部分22a,22bに支持されている。マイクロアクチュエータ素子31,32の第2の端部31b,32bは、それぞれジンバル部30の第2支持部72,73に固定されている。
【0032】
図9は、一方のマイクロアクチュエータ素子31の端部31a,31bの機械的な固定と電気的接続をなすジョイント部分の断面を示している。他方のマイクロアクチュエータ素子32の端部32a,32bのジョイント部分も
図9と同様の構成であるため、以下に一方のマイクロアクチュエータ素子31を代表して説明する。
【0033】
図9に示されるように、マイクロアクチュエータ素子31は、PZT80と、PZT80の周面に形成された第1の電極81と、第2の電極82とを有している。第1の電極81は、PZT80の一方の端面から上面にわたって形成されている。第2の電極82は、PZT80の他方の端面から下面にわたって形成されている。マイクロアクチュエータ素子31の第1の端部31aは、電気絶縁性の接着材85によって、ジンバル部30の第1支持部70に固定されている。マイクロアクチュエータ素子31の第2の端部31bは、電気絶縁性の接着材85によって第2支持部72に固定されている。
【0034】
図9に示された第1の電極81は、第1支持部70上に設けられた導電性ペースト(例えば銀ペースト)86を介して、前記配線部41の導体87に導通している。第2の電極82は、第2支持部72上に設けられた導電性ペースト(例えば銀ペースト)86を介して、グランド側の導体88に導通している。グランド側の導体88はメタルベース40に固定され、メタルベース40に導通している。
【0035】
図5と
図6等に示されるように、フレキシャ22のジンバル部30はタング90を含んでいる。タング90は、固定側の第1タング部91と、移動側の第2タング部92と、これらタング部91,92間に形成されたヒンジ部93とを含んでいる。第1タング部91は、一対の第1支持部70,71間に形成されている。第2タング部92は、一対の第2支持部72,73間に形成されている。ヒンジ部93は、第1タング部91と第2タング部92との間に形成されている。これら支持部70,71,72,73と、タング部91,92と、ヒンジ部93とは、いずれもメタルベース40の一部であり、例えばエッチングによってそれぞれの輪郭が形成されている。第1タング部91と第2タング部92とヒンジ部93とによって、スライダ11を搭載するためのタング90が構成されている。
【0036】
図7に示されるように、配線部41は左右二手に分かれて第1タング部91と第2タング部92上を通っている。配線部41の先端にスライダ11用の端子41aが形成されている。これら端子41aは、配線部41の前記導体61,62に導通している。また、端子41aは、スライダ11の素子28(
図4に示す)に電気的に接続されている。配線部41の左右両側にそれぞれマイクロアクチュエータ素子31,32用の前記導体87が設けられている。これら導体87は、第1支持部70,71上において、マイクロアクチュエータ素子31,32のそれぞれの電極81に接続されている。
【0037】
配線部41は、マイクロアクチュエータ素子31,32間に配置された第1の配線パターン部41bと、第1の配線パターン部41bからジンバル部30の後方に延びる第2の配線パターン部41cとを有している。第2の配線パターン部41cの長手方向の一部には、第1アーム51,52間の配線部41の曲げ剛性を小さくするために湾曲部41dが形成されている。
【0038】
図10は、ロードビーム21の一部とジンバル部30の一部を、ヒンジ部93のところで切断した断面図である。
図11は、フレキシャ22の一部のジンバル部30を示す平面図である。ヒンジ部93の幅L1は、第1タング部91と第2タング部92の幅L2よりも十分小さい。ヒンジ部93の両側には、第1タング部91と第2タング部92との間にスリット94,95が形成されている。このような幅狭形状のヒンジ部93によって、第1タング部91と第2タング部92とが互いに回動可能につながれている。すなわち固定側の第1タング部91に対して、移動側の第2タング部92が、
図11に矢印A,Bで示す方向に回動することができるようになっている。
【0039】
第1タング部91と第2タング部92の上にスライダ11が配置されている。しかもスライダ11のリーディング側部分11aは、第1タング部91に対して移動可能に配置されている。第2タング部92には、スライダ11のトレーリング側部分11bが固定されている。ここで言う「リーディング側」とは、ディスク4が回転したときにスライダ11とディスク4との間に流入する空気の流入側である。これに対し「トレーリング側」とは、スライダ11とディスク4との間に流入した空気の流出側である。ヒンジ部93は、スライダ11の中心、例えばスライダ11の重心位置あるいは幅方向の中央と長さ方向の中央に形成されている。
【0040】
ロードビーム21の先端付近に、凸形のディンプル100(
図10に示す)が形成されている。ディンプル100は支持凸部の一例であり、フレキシャ22のジンバル部30の第1の面30aに向かって突出する凸面を有している。この凸面の頂部(ディンプル100の先端)がヒンジ部93に当接している。ヒンジ部93は、ディンプル100の先端によって、揺動可能に支持されている。このためジンバル部30は、ディンプル100の先端とヒンジ部93との接点P1を中心として、ロードビーム21に対して揺動可能に支持されている。
【0041】
なお、ディンプルをヒンジ部93に形成し、このディンプルの先端をロードビーム21に当接させてもよい。要するに凸形のディンプルがロードビーム21とヒンジ部93との対向面の一方の面に形成され、他方の面に前記ディンプルの先端が当接するように構成されていればよい。
【0042】
図11等に示すように、一方(
図11において右側)の第1支持部70と第2支持部72との間に、開口110が形成されている。この開口110は一方のスリット94に連通している。他方(
図11において左側)の第1支持部71と第2支持部73との間にも、開口111が形成されている。この開口111は他方のスリット95に連通している。
【0043】
このようにタング部91,92の両側に開口110,111が形成されているため、マイクロアクチュエータ素子31,32の前後方向の中間部がタング部91,92と接触することを回避できる。このため、サスペンション10に外部から機械的な衝撃が入力したときに、マイクロアクチュエータ素子31,32の前後方向の中間部がタング部91,92によって叩かれることによるマイクロアクチュエータ素子31,32の損傷を防止できる。
【0044】
マイクロアクチュエータ搭載部23はダンパ部材115を備えている。ダンパ部材115は、ジンバル部30のメタルベース40の前記第1の面30aに取付けられている。本実施形態のダンパ部材115は、第1ダンパ115aと第2ダンパ115bとを含んでいる。第1ダンパ115aと第2ダンパ115bとは、それぞれ、粘弾性層(viscoelastic material layer)116と拘束板(constrained plate)117とを有している。
【0045】
粘弾性層116は、弾性変形したときの変形の大きさに応じた粘性抵抗を発揮することができる高分子材料(例えばアクリル系樹脂)からなり、ある程度の流動性と粘着性とを有している。拘束板117は、ポリイミド等の合成樹脂からなり、粘弾性層116の厚さ方向に積層されている。ダンパ部材115の厚さT(
図10に示す)は、ディンプル100の突出高さH(例えば50〜70μm)よりも小さい。例えばディンプル100の突出高さHが60μmの場合、ダンパ部材115の厚さTの一例は50μmである。粘弾性層116と拘束板117の厚さは、それぞれ、例えば25μmである。
【0046】
図5と
図6に示すように、第1ダンパ115aは第1タング部91に配置されている。第2ダンパ115bは第2タング部92に配置されている。第1ダンパ115aと第2ダンパ115bの形状は例えば長方形である。第1ダンパ115aと第2ダンパ115bとは、ロードビーム21の長手方向Xと直角な方向(タング90の幅方向)に互いに平行に配置されている。第1ダンパ115aと第2ダンパ115bとは、それぞれ粘弾性層116自身の接着力により、ジンバル部30のメタルベース40に固定されているが、図示しない接着材によってメタルベース40に固定されていてもよい。
【0047】
第1ダンパ115aと第2ダンパ115bとは、ジンバル部30の第1の面30aにおいて、ディンプル100と重ならない位置に配置されている。第1ダンパ115aの一部は第1支持部70,71上に配置され、第2ダンパ115bの一部は第2支持部72,73上に配置されている。第1ダンパ115aと第2ダンパ115bとの間に、前記ヒンジ部93が露出している。ディンプル100(
図10に示す)は、接点P1においてヒンジ部93と接する。
【0048】
本実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23は、リミッタ部材120,121を備えている。
図4と
図7に示されるように一方のリミッタ部材120は、第1アーム51の先端部51aと、第2アーム53と、第2支持部72とに接続されている。他方のリミッタ部材121は、第1アーム52の先端部52aと、第2アーム54と、第2支持部73とに接続されている。
【0049】
リミッタ部材120,121は、サスペンション10に外部から機械的な衝撃が入力したときに、タング部91,92が過剰に揺れたり、ヒンジ部93がディンプル100から離れること(ディンプルセパレーション)を抑制する機能を有している。リミッタ部材120,121は、配線部41の絶縁層60(
図8と
図9に示す)と共通のポリイミド等の電気絶縁性の樹脂からなり、マイクロアクチュエータ素子31,32が作動する際の動きを妨げないようにするために、波形に成形されている。
【0050】
以下に本実施形態のサスペンション10の動作について説明する。
ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6(
図1と
図2に示す)が旋回すると、サスペンション10がディスク4の径方向に移動することにより、磁気ヘッドのスライダ11がディスク4の記録面の所望トラックまで移動する。マイクロアクチュエータ素子31,32に電圧が印加されると、電圧に応じてマイクロアクチュエータ素子31,32が互いに反対方向に歪むことにより、ロードビーム21をスウェイ方向(
図3に矢印Yで示す方向)に微小量移動させることができる。
【0051】
例えば
図12に模式的に示すように、一方のマイクロアクチュエータ素子31が縮み、他方のマイクロアクチュエータ素子32が伸びることにより、第2タング部92が矢印Aで示す方向に移動する。このためスライダ11に設けられている素子28(
図4に示す)をスウェイ方向に高速かつ高精度に位置決めすることができる。スライダ11がスウェイ方向に移動する距離は、実際には数ナノメートルから数十ナノメートル程度であるが、
図12ではスライダ11と第2タング部92の動きを理解しやすくするためにジンバル部30の変形の度合いを誇張して描いている。
【0052】
本実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23は、マイクロアクチュエータ素子31,32が作動すると、固定側の第1タング部91に対して、移動側の第2タング部92がヒンジ部93を境にスライダ11の幅方向に回動する。スライダ11のトレーリング側部分11bは第2タング部92に固定されているが、スライダ11のリーディング側部分11aは第1タング部92に対して移動自在である。
図10に示すようにディンプル100の先端が接点P1においてヒンジ部93に当接している。
【0053】
このためマイクロアクチュエータ素子31,32が電圧の印加によって作動すると、第2タング部92とスライダ11とが、ディンプル100との接点P1を中心に回動する。すなわちスライダ11の回動中心と、ディンプル100の接点P1の位置とを対応させることができる。このため、マイクロアクチュエータ素子31,32の作動時(スライダ11の回動時)にディンプル100の先端がフレキシャ22と擦れることによって大きな摩擦抵抗が生じたり、コンタミネーションの原因物質が発生したりすることを抑制できるものである。
【0054】
しかもマイクロアクチュエータ素子31,32がジンバル部30においてスライダ11と同じ側の第2の面30bに配置されているため、マイクロアクチュエータ素子31,32の厚さをディンプル100の突出高さ以下にする必要がない。このため厚さの大きいマイクロアクチュエータ素子31,32を使用することができる。すなわち、出力荷重が大きく、機械的強度が大きく、破損しにくいマイクロアクチュエータ素子31,32を使用することが可能となる。
【0055】
本実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23はジンバル部30にダンパ部材115を備えており、しかもダンパ部材115の粘弾性層116がメタルベース40に粘着している。粘弾性層116は、ある程度の流動性と弾性とを有しているため、ジンバル部30を振動させるエネルギーが入力したとき、振動するメタルベース40および拘束板117と共に粘弾性層116が変位する。粘弾性層116が変形すると、粘弾性層116を構成する分子の摩擦による内部抵抗を生じ、拘束板117等の振動エネルギーが熱エネルギーに変換される。これにより粘弾性層116は、ジンバル部30の振動を抑制することができ、共振によるゲインを下げることができる。
【0056】
図13は第2の実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23Aを示している。この実施形態は、第1ダンパ115aと第2ダンパ115bの配置が第1の実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23とは異なっている。このマイクロアクチュエータ搭載部23Aの第1ダンパ115aは、一対のマイクロアクチュエータ素子31,32のうち一方のマイクロアクチュエータ素子31の長手方向に沿って、第1タング部91と第2タング部92とにわたって設けられている。第2ダンパ115bは、他方のマイクロアクチュエータ素子32の長手方向に沿って、第1タング部91と第2タング部92とにわたって設けられている。第1ダンパ115aと第2ダンパ115bは互いに略平行に配置され、第1ダンパ115aと第2ダンパ115b間にヒンジ部93が露出している。このヒンジ部93の接点P1において、ディンプル100(
図10に示す)が当接するようになっている。それ以外の構成と効果は第1の実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23と共通であるため、両者に共通の部位に共通の符号を付して説明を省略する。
【0057】
図14は第3の実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23Bを示している。この実施形態のダンパ115a,115bの幅は、第2の実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23A(
図13)のダンパ115a,115bの幅よりも大きい。すなわち第1ダンパ115aは、第1支持部70と第2支持部72との間の開口110をほぼ覆う大きさである。第2ダンパ115bは、第1支持部71と第2支持部73との間の開口111をほぼ覆う大きさである。なお、各ダンパ115a,115bのそれぞれの側部に延出部130を形成し、これら延出部130をアーム51,52の先端付近の低剛性部51b,52b(ジンバル運動に与える影響が少ない部分)に重ねてもよい。それ以外の構成と効果は第2の実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23A(
図13)と共通であるため、両者に共通の部位に共通の符号を付して説明を省略する。
【0058】
図15は第4の実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23Cを示している。この実施形態のダンパ部材115は、タング部91,92と支持部70,71とにわたって配置されている。このダンパ部材115には、ヒンジ部93と対応する位置に、ディンプル100(
図10に示す)が挿入される円形のディンプル用開口140が形成されている。それ以外の構成と効果は前記マイクロアクチュエータ搭載部23,23A,23Bと共通であるため、互いに共通の部位に共通の符号を付して説明を省略する。
【0059】
図16は、
図15に示されたダンパ部材115を有するマイクロアクチュエータ搭載部と、ダンパ部材を有しないマイクロアクチュエータ搭載部のPZT加振による周波数応答特性を示している。
図16中の実線S3はダンパ部材115を有するマイクロアクチュエータ搭載部の周波数応答特性、1点鎖線S4はダンパ部材を有しないマイクロアクチュエータ搭載部の周波数応答特性である。ダンパ部材115を備えたマイクロアクチュエータ搭載部は、ダンパ部材を有しないマイクロアクチュエータ搭載部と比較して、12KHz付近のトーションモードと、20KHz付近のトーションモード等において、ゲインが低く抑えられている。
【0060】
図17は、第5の実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23Dを示している。この実施形態のダンパ部材115の両側部に、それぞれ延出部130が形成されている。これら延出部130がアーム51,52の先端付近の低剛性部51b,52b(ジンバル運動に与える影響が少ない部分)と重なっている。それ以外の構成と効果は第4の実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23C(
図15)と共通であるため、両者に共通の部位に共通の符号を付して説明を省略する。
【0061】
図18は、
図17に示されたダンパ部材115を有するマイクロアクチュエータ搭載部と、ダンパ部材を有しないマイクロアクチュエータ搭載部のPZT加振による周波数応答特性を示している。
図18中の実線S5はダンパ部材115を有するマイクロアクチュエータ搭載部の周波数応答特性、1点鎖線S4はダンパ部材を有しないマイクロアクチュエータ搭載部の周波数応答特性である。ジンバル部にダンパ部材115を備えたマイクロアクチュエータ搭載部は、ダンパ部材を有しないマイクロアクチュエータ搭載部と比較して、12KHz付近のトーションモードと、20KHz付近のトーションモード等においてゲインが低く抑えられている。
【0062】
図19〜
図22は、第6の実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23Eの一部、すなわち一対のマイクロアクチュエータ素子うち一方のマイクロアクチュエータ素子32が配置される部分を示している。他方のマイクロアクチュエータ素子が配置される側も同様の構成である。
【0063】
図19に示されるように、ジンバル部30のタング90の第1支持部71と第2支持部73との間に開口111が形成されている。開口111は、マイクロアクチュエータ素子32(
図21に示す)を収容できる大きさを有している。
図20に示すように、粘弾性層116が開口111に臨むような向きで、開口111の下側からダンパ部材115をジンバル部30の第1の面30aに固定する。
【0064】
図21に示すようにマイクロアクチュエータ素子32を開口111に挿入し、粘弾性層116の上に載置する。このマイクロアクチュエータ素子32は、粘弾性層116の接着力によってダンパ部材115に固定される。またマイクロアクチュエータ素子32の両端部32a,32bを電気絶縁性の接着材(図示せず)によって、それぞれ、第1支持部71と第2支持部73に固定する。
【0065】
さらに
図22に示すように、マイクロアクチュエータ素子32の第1の端部32aと導体87とを、銀ペースト等の導電性ペースト86によって電気的に接続する。またマイクロアクチュエータ素子32の第2の端部32bとグランド側導体88とを、導電性ペースト86によって電気的に接続する。この実施形態のように、マイクロアクチュエータ素子32をダンパ部材115の粘弾性層116に接着させた場合、
図16あるいは
図18に示す周波数応答特性のトーションモードMのゲインをさらに下げることができた。それ以外の構成と効果は、第2および第3の実施形態のマイクロアクチュエータ搭載部23A,23B(
図13,
図14)と共通である。
【0066】
なお本発明を実施するに当たって、ダンパ部材やマイクロアクチュエータ素子の形状、配置などの具体的な態様をはじめとして、マイクロアクチュエータ搭載部を構成する要素の具体的な態様を種々に変更して実施できることは言うまでもない。例えば、
図6に示す横置きタイプのダンパ115a,115bと、
図13に示す縦置きタイプのダンパ115a,115bとの両方をジンバル部30に設けてもよい。