【実施例】
【0042】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0043】
(実施例1)
(1)ステビア乳酸産生菌発酵物の調製
日本国北海道産のステビア植物(学名:Stevia rebaudiana)の茎と葉とを乾燥させた乾燥ステビア植物を約1cm以下に粉砕した。粉砕ステビア植物2kgに乳酸産生菌(Bacillus coagulans)45g、水4,500gを加えて温度25〜30℃の条件下に撹拌すると、発酵が開始した。これを温度25〜30℃、14日間放置した。発酵物から甘味が消失しており、これを発酵終期とした。上記した発酵物を室温で2週間乾燥させ、乳酸菌発酵を停止した。
【0044】
(2)含水エタノール抽出
乾燥発酵物の全量に対し、10質量倍量の28.5(v/v)%エタノールを添加し、2週間、常温で浸潤し、ついで150〜200メッシュのステンレス篩でろ過した。ろ液を60℃で減圧濃縮(60mmHg)し、ダイヤイオンHP20カラムに吸着させた後に66.5%含水エタノール液で溶出し、これを含水エタノール抽出液とした。
【0045】
(3)クロロホルム抽出
上記含水エタノール抽出液の溶媒を除去し、この抽出物にクロロホルムを3質量倍添加し、温度23〜28℃(室温)で抽出した。残渣をろ過により除き、クロロホルム層を分取し、溶媒を除去したものをクロロホルム抽出液(1.2g)とした。
【0046】
(4)目的物の単離
上記(3)で得たクロロホルム抽出液(1.2g)を、下記分離条件(1)に示すシリカゲルカラムクロマトグラフィーより8つの画分に分離した。
分離条件(1):
カラム:内径2.5cm、高さ15cm
充填物:シリカゲル(KANTO CHEMICAL社製、Silica Gel 60N(球状,中性)、粒子径63〜210μm)、45g、
溶出溶媒:クロロホルム:メタノール=100:1(500mL)→50:1(500mL)→20:1(300mL)→7:1(300mL)→0:1(300mL)の混合溶液を溶離液とし、250mLずつ分取した。
分取物:上記溶出溶媒毎に第1〜8の8つの画分に分画した。各画分の収量を
図1に示す。
【0047】
第3画分を、下記分離条件(2)に示すシリカゲルカラムクロマトグラフィーより3つの画分に分離した。
分離条件(2):
カラム:内径2cm、高さ21cm
充填物:シリカゲル(KANTO CHEMICAL社製、Silica Gel 60N(球状,中性)、粒子径63〜210μm)、20g、
溶出溶媒:クロロホルム:メタノール=100:1(400mL)→50:1(400mL)→0:1(40mL)の混合溶液を溶離液とし、順次カラムに流し、40mLずつ分取した。溶出した各画分についてTLC(MERCK Silica Gel 60 F
254)を行った。TLCは、n−ヘキサン:アセトン=1:1の溶媒で展開後、50%硫酸を噴霧し、110℃で加熱して検出した。TLCの結果に基づき、フラクション3−1から3−3の3つに分画した。
【0048】
第3−2画分を下記分離条件(3)に示すシリカゲルカラムクロマトグラフィーより4つの画分に分離した。
分離条件(3):
カラム:内径2cm、高さ18cm
充填物:シリカゲル(YMC GEL ODS−A、12nm、S−75μm、AA12S75)、20g、
溶出溶媒:水:メタノール=3:7(350mL)→0:1(300mL)の混合溶液を溶離液とし、順次カラムに流し、40mLずつ分取した。溶出した各画分についてTLC(MERCK Silica Gel 60 F
254)を行った。TLCは、水:メタノール=2:8の溶媒で展開後、50%硫酸を噴霧し、110℃で加熱して検出した。TLCの結果に基づき、第3−2−1から3−2−4の4つに分画した。
【0049】
第3−2−2画分を下記分離条件(4)に示すシリカゲルカラムクロマトグラフィーより4つの画分に分離した。
分離条件(4):
カラム:内径1cm、高さ20cm
充填物:シリカゲル(KANTO CHEMICAL社製、Silica Gel 60N(球状,中性)、粒子径63〜210μm)、10g、
溶出溶媒:クロロホルム:メタノール=30:1(1200mL)→10:1(100mL)→0:1(100mL)の混合溶液を溶離液とし、順次カラムに流し、30mLずつ分取した。溶出した各フラスコ内容物についてTLC(MERCK Silica Gel 60 F
254)を行った。TLCは、n−ヘキサン:アセトン=1:1の溶媒で展開後、50%硫酸を噴霧し、110℃で加熱して検出した。TLCの結果に基づき、第3−2−2−1から3−2−2−4の4つに分画した。第3−2−2−3画分は、TLC上単一スポットとして得られた。これを化合物Aとする。化合物Aの収量は2.0mgであった。なお、第3−2−2−2画分(10mg)にはTLC上、化合物Aのほかにもスポットが認められた。
【0050】
前記第3−2−2−2画分を下記分離条件(5)に示すシリカゲルカラムクロマトグラフィーより3つの画分に分離した。
分離条件(5):
カラム:内径1cm、高さ18cm
充填物:シリカゲル(YMC GEL ODS−A、12nm、S−75μm、AA12S75)、9g、
溶出溶媒:水:メタノール=3:7(400mL)→0:1(100mL)の混合溶液を溶離液とし、順次カラムに流し、20mLずつ分取した。溶出した各画分についてTLC(MERCK Silica Gel 60 F
254)を行った。TLCは、水:メタノール=2:8の溶媒で展開後、50%硫酸を噴霧し、110℃で加熱して検出した。TLCの結果に基づき、第3−2−2−2−1から3−2−2−2−3の3つに分画した。TLC上フラクション3−2−2−3−2に化合物Aとは異なるスポットが認められたことから、これを化合物Bとした。化合物Bの収量は3.0mgであった。
【0051】
(5)構造決定
分離条件(4)で得た化合物Aは、pos. HRFABMS m/z 339.2552 ([M+H]
+,calcd for 339.2535)より分子式をC
20H
34O
4と決定した。
次いで、化合物Aについて、
1H−NMRおよび
13C−NMRを測定したところ、これらのシグナルからもC
20H
34が支持され、炭素数20であるジテルペン誘導体であることが推測された。
1H−NMRおよび
13C−NMRのシグナルパターンより炭素数20であり、すでにステビアより単離報告のあるステレビンAと類似することが推定された。そこで、HMQCとHMBCの相関を詳細に検討したところ、表1に示すHMBC相関が認められた。
絶対構造を明らかにする目的で結晶を作成し、X線結晶解析を行った。この結果、化合物Aの絶対立体配置を含む構造を、(2R,3R,4aS,5S,6R,6aS,10aS,10bR)−3,4a,7,7,10a−pentamethyl−3−vinyldodecahydro−1H−benzo[f]chromene−2,5,6−triolと決定した。表1の下部に当該化合物の基本骨格と位置番号とを示す。これは、下記式(IV)で示される構造である。
【0052】
【表1】
【0053】
【化3】
【0054】
【化4】
【0055】
分離条件(5)で得た化合物Bは、pos. HRFABMS m/z 339.2543 ([M+H]
+,calcd for 339.2535)より分子式をC
20H
34O
4と決定した。
次いで、化合物Bについて、
1H−NMRおよび
13C−NMRを測定したところ、これらのシグナルからもC
20H
34が支持され、化合物Aと同様に炭素数20であるジテルペン誘導体であることが推測された。
1H−NMRおよび
13C−NMRのシグナルパターンは化合物Aと酷似しており、同様の構造を有することが推定された。そこで、HMQCとHMBCの相関を詳細に検討したところ、表2に示すHMBC相関が認められ、各炭素と水素の結合様式が明らかになった。さらに、NOESYの相関、および化合物Aの絶対配置との比較から相対立体配置を求め、化合物Bの構造を化合物Aの2位の水酸基の立体のみが異なる(2S,3R,4aS,5S,6R,6aS,10aS,10bR)−3,4a,7,7,10a−pentamethyl−3−vinyldodecahydro−1H−benzo[f]chromene−2,5,6−triolと決定した。表2の下部に当該化合物の基本骨格と位置番号とを示す。これは、下記式(V)で示される構造である。
【0056】
【表2】
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
(実施例2)
実施例1で得た式(IV)で示される化合物および比較のためにコウジ酸について、下記測定方法に従って、生細胞数、細胞数当たりのメラニン産生、および対照に対するメラニン産生率を算出した。生細胞数と対照に対するメラニン濃度(%)の結果を表3に示す。なお、化合物の濃度は、0.01%とし、比較のため同濃度のコウジ酸も同様に処理した。
【0060】
生細胞当たりのメラニン産生率は、コウジ酸が34.4%であるのに対し、式(IV)の化合物は22.8%とコウジ酸より1.5倍も低値であった。
【0061】
(測定方法)
生細胞数、細胞数当たりのメラニン産生、および対照に対するメラニン産生率の算出方法は、以下に従った。
6ウェルプレートで一晩培養したB16メラノーマ細胞の培地を除去し、各ウェルにテオフィリンの濃度が1mM、評価成分の濃度が0.01%、DMSOの濃度が0.5%となるように調製した培養培地を全量が2ml/ウェルとなるように添加した。37℃、5%二酸化炭素存在下で72時間培養した後に培地を除去し、pH7.4のリン酸緩衝液(PBS)で2回、細胞をリンスした。各ウェルに0.25%トリプシン−EDTA溶液を200μlずつ加えてトリプシン処理し、培地1mlを添加して細胞液全量を15ml遠沈管に回収した。細胞液を1000rpm、5分間遠心分離し、上清を除去した細胞にPBSを2ml加えて再懸濁させ、このうち200μlをマイクロチューブに移し、セルカウンター(BIO−RAD社製、TC10)を用いて細胞数を計測した。
残りの細胞液を再び同条件で遠心分離し上清を除き、1MのNaOHを500μl添加して80℃の水浴で30分間処理した。NaOHによる細胞融解液の波長475nmの吸光度を蛍光マイクロプレートリーダー(TECAN社製、infiniteM1000)を用いて測定し、溶液当たりのメラニン産生量を測定した。検量線には1M NaOHに溶解した合成メラニン(シグマアルドリッチコーポレーション製)を用いた。上記した溶液当たりのメラニン産生量と前記細胞数とから、細胞数当たりのメラニン産生量を算出した。これらはいずれも、n=2の平均値にて表した。
対照(1mMテオフィリン添加培地適用)群の値を100%とし、細胞数あたりのメラニン産生率を算出した。
【0062】
【表3】
【0063】
(実施例3)
実施例1で得た式(V)で示される化合物および比較のためにコウジ酸について、下記測定方法に従って、生細胞数、細胞数当たりのメラニン産生、および対照に対するメラニン産生率を算出した。生細胞数と対照に対するメラニン濃度(%)の結果を表4に示す。なお、化合物の濃度は、100μMとし、比較のため1000μMのコウジ酸も同様に処理した。
【0064】
生細胞当たりのメラニン産生率は、コウジ酸1000μM(濃度0.014%)が42.2%であるのに対し、式(V)の化合物100μM(濃度0.0034%)は43.8%であった。なお、コウジ酸と式(V)で示す化合物の投与濃度を考察すると、式(V)で示される化合物のメラニン産生抑制効果は、コウジ酸より極めて高いものと推察される。
【0065】
(測定方法)
生細胞数、細胞数当たりのメラニン産生量、および対照に対するメラニン産生率の算出方法は、以下に従った。
6ウェルプレートで一晩培養を行ったB16マウスメラノーマ細胞の培地を除去し、各ウェルにテオフィリン(最終濃度として10mM)、目的濃度のサンプルを加えた10%−FBS−DMEM培地(サンプル溶解のためのDMSOの最終濃度は0.1%)を2mLずつ加えた。
37℃、5%CO
2存在下で72時間培養した後、培地を除去し、pH7.4等張リン酸緩衝液(PBS)で細胞を2回リンスした。各ウェルに0.25%トリプシン−EDTA溶液を200μlずつ加えてトリプシン処理をし、培地を1mlずつ添加して全量を15ml遠沈管に回収した。細胞液を1000rpm、5分間遠心分離し、上清を除去した細胞にPBSを2ml加えて再懸濁させ、このうち200μlをマイクロチューブに移し、セルカウンター(ミリポアコーポレーション製、Sceptor(登録商標))を用いて細胞数を計測した。
残りの細胞液を再び同条件で遠心分離し上清を取り除き、1MのNaOHを1ml添加して80℃の水浴で1時間処理した。細胞融解液の濃度の吸光度をImmuno Mini NJ−2300(コスモバイオコーポレーション製)を用いて波長475nmにて測定し、細胞数あたりのメラニン産生量を算出した。検量線には1M NaOHに融解した合成メラニン(シグマアルドリッチコーポレーション製)を用いた。
対照(1mMテオフィリン添加培地適用)群の値を100%とし、細胞数あたりのメラニン産生率を算出した。データは、それぞれn=3の平均値±標準偏差にて表した。また、統計学的解析には分散分析(ANOVA)及び多重比較検定(Dunnet法)を用いた。
【0066】
【表4】