【文献】
European Journal of Biochemistry,1995年,Vol.232,No.1,p19−27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義:
第VIII因子分子: FVIII/第VIII因子は、主として肝細胞で産生される大きい複雑な糖タンパク質である。FVIIIは、シグナルペプチドを含む2351のアミノ酸からなり、相同性により定められる、いくつかの特徴的なドメインを含む。3つのAドメイン、唯一のBドメイン、及び2つのCドメインが存在する。該ドメインの順序は、NH2-A1-A2-B-A3-C1-C2-COOHのように列挙することができる。FVIIIは、B-A3ボーダーで分離される2つの鎖として血漿中を循環する。該鎖は二価の金属イオン結合により結合している。A1-A2-B鎖は重鎖(HC)と称される一方、A3-C1-C2は軽鎖(LC)と称される。
【0009】
内在性の第VIII因子分子は、様々なサイズのBドメインを有する分子のプールとしてインビボで循環する。インビボでおそらく生じているものは、Bドメインの漸次的酵素的除去であり、様々なサイズのBドメインを有する分子のプールが生じる。Bドメインの少なくとも一部が除去される740位での切断がトロンビン活性化に関連して生じると一般に考えられている。しかし、例えば740位の切断部位が損なわれた第VIII因子変異体が活性でありうる可能性を排除することはできない。
【0010】
ここで使用される「第VIII因子」又は「FVIII」は、内因性の凝固経路のメンバーで、血液凝固に必須であるヒト血漿糖タンパク質を意味する。「天然FVIII」は、配列番号1(アミノ酸1−2332)に示されるような完全長ヒトFVIII分子である。Bドメインは、配列番号1中のアミノ酸741−1648にわたる。
【0011】
配列番号1:
ATRRYYLGAVELSWDYMQSDLGELPVDARFPPRVPKSFPFNTSVVYKKTLFVEFTDHLFNIAKPRPPWMGLLGPTIQAEVYDTVVITLKNMASHPVSLHAVGVSYWKASEGAEYDDQTSQREKEDDKVFPGGSHTYVWQVLKENGPMASDPLCLTYSYLSHVDLVKDLNSGLIGALLVCREGSLAKEKTQTLHKFILLFAVFDEGKSWHSETKNSLMQDRDAASARAWPKMHTVNGYVNRSLPGLIGCHRKSVYWHVIGMGTTPEVHSIFLEGHTFLVRNHRQASLEISPITFLTAQTLLMDLGQFLLFCHISSHQHDGMEAYVKVDSCPEEPQLRMKNNEEAEDYDDDLTDSEMDVVRFDDDNSPSFIQIRSVAKKHPKTWVHYIAAEEEDWDYAPLVLAPDDRSYKSQYLNNGPQRIGRKYKKVRFMAYTDETFKTREAIQHESGILGPLLYGEVGDTLLIIFKNQASRPYNIYPHGITDVRPLYSRRLPKGVKHLKDFPILPGEIFKYKWTVTVEDGPTKSDPRCLTRYYSSFVNMERDLASGLIGPLLICYKESVDQRGNQIMSDKRNVILFSVFDENRSWYLTENIQRFLPNPAGVQLEDPEFQASNIMHSINGYVFDSLQLSVCLHEVAYWYILSIGAQTDFLSVFFSGYTFKHKMVYEDTLTLFPFSGETVFMSMENPGLWILGCHNSDFRNRGMTALLKVSSCDKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFSQNSRHPSTRQKQFNATTIPENDIEKTDPWFAHRTPMPKIQNVSSSDLLMLLRQSPTPHGLSLSDLQEAKYETFSDDPSPGAIDSNNSLSEMTHFRPQLHHSGDMVFTPESGLQLRLNEKLGTTAATELKKLDFKVSSTSNNLISTIPSDNLAAGTDNTSSLGPPSMPVHYDSQLDTTLFGKKSSPLTESGGPLSLSEENNDSKLLESGLMNSQESSWGKNVSSTESGRLFKGKRAHGPALLTKDNALFKVSISLLKTNKTSNNSATNRKTHIDGPSLLIENSPSVWQNILESDTEFKKVTPLIHDRMLMDKNATALRLNHMSNKTTSSKNMEMVQQKKEGPIPPDAQNPDMSFFKMLFLPESARWIQRTHGKNSLNSGQGPSPKQLVSLGPEKSVEGQNFLSEKNKVVVGKGEFTKDVGLKEMVFPSSRNLFLTNLDNLHENNTHNQEKKIQEEIEKKETLIQENVVLPQIHTVTGTKNFMKNLFLLSTRQNVEGSYDGAYAPVLQDFRSLNDSTNRTKKHTAHFSKKGEEENLEGLGNQTKQIVEKYACTTRISPNTSQQNFVTQRSKRALKQFRLPLEETELEKRIIVDDTSTQWSKNMKHLTPSTLTQIDYNEKEKGAITQSPLSDCLTRSHSIPQANRSPLPIAKVSSFPSIRPIYLTRVLFQDNSSHLPAASYRKKDSGVQESSHFLQGAKKNNLSLAILTLEMTGDQREVGSLGTSATNSVTYKKVENTVLPKPDLPKTSGKVELLPKVHIYQKDLFPTETSNGSPGHLDLVEGSLLQGTEGAIKWNEANRPGKVPFLRVATESSAKTPSKLLDPLAWDNHYGTQIPKEEWKSQEKSPEKTAFKKKDTILSLNACESNHAIAAINEGQNKPEIEVTWAKQGRTERLCSQNPPVLKRHQREITRTTLQSDQEEIDYDDTISVEMKKEDFDIYDEDENQSPRSFQKKTRHYFIAAVERLWDYGMSSSPHVLRNRAQSGSVPQFKKVVFQEFTDGSFTQPLYRGELNEHLGLLGPYIRAEVEDNIMVTFRNQASRPYSFYSSLISYEEDQRQGAEPRKNFVKPNETKTYFWKVQHHMAPTKDEFDCKAWAYFSDVDLEKDVHSGLIGPLLVCHTNTLNPAHGRQVTVQEFALFFTIFDETKSWYFTENMERNCRAPCNIQMEDPTFKENYRFHAINGYIMDTLPGLVMAQDQRIRWYLLSMGSNENIHSIHFSGHVFTVRKKEEYKMALYNLYPGVFETVEMLPSKAGIWRVECLIGEHLHAGMSTLFLVYSNKCQTPLGMASGHIRDFQITASGQYGQWAPKLARLHYSGSINAWSTKEPFSWIKVDLLAPMIIHGIKTQGARQKFSSLYISQFIIMYSLDGKKWQTYRGNSTGTLMVFFGNVDSSGIKHNIFNPPIIARYIRLHPTHYSIRSTLRMELMGCDLNSCSMPLGMESKAISDAQITASSYFTNMFATWSPSKARLHLQGRSNAWRPQVNNPKEWLQVDFQKTMKVTGVTTQGVKSLLTSMYVKEFLISSSQDGHQWTLFFQNGKVKVFQGNQDSFTPVVNSLDPPLLTRYLRIHPQSWVHQIALRMEVLGCEAQDLY
【0012】
本発明の第VIII因子分子は、Bドメイン切断型第FVIII因子分子であり、残存するドメインは、配列番号1のアミノ酸番号1−740及び1649−2332に記載の配列に対応する。したがって、本発明の分子は、形質転換した宿主細胞、好ましくは哺乳動物由来のものにおいて産生される組換え分子であると言うことになる。しかしながら、残存するドメイン(すなわち、3つのAドメインと2つのCドメイン)は、配列番号1(アミノ酸1−740及び1649−2332)に記載のアミノ酸配列と、わずかに、例えば約1%、2%、3%、4%又は5%異なっている場合がある。特に、アミノ酸修飾(置換、欠失等)は、例えば種々の他の成分、特にvW因子、LPR、種々のレセプター、他の凝固因子、細胞表面等との第VIII因子の結合能を改変するために、残存するドメインに導入されることもありうる。さらに、本発明の第VIII因子分子は、例えば切断Bドメイン及び/又は分子の他のドメインの一又は複数に他の翻訳後修飾を含む。これらの他の翻訳後修飾は、例えばポリマー化合物、ペプチド化合物、脂肪酸誘導化合物等、本発明の第VIII因子分子に結合した種々の分子の形態であってもよい。
【0013】
本発明の第VIII因子分子は、それらがBドメインの外側で修飾されているか否か、他の翻訳後修飾を有しているか否かにかかわらず、全て、FVIIIに機能的に類似又は等価な方式で、凝固カスケードにおいて機能し、活性化血小板にFIXaとの相互作用を介したFXaの形成を誘導し、血餅の形成をサポートする能力を意味する、第VIII因子活性を有する。活性は、当該分野でよく知られている技術、例えば血餅分析、内在性トロンビン電位解析等により、インビトロで評価することができる。本発明の第VIII因子分子は、天然ヒトFVIIIの少なくとも約10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、及び100%、又は100%以上のFVIII活性を有する。
【0014】
Bドメイン: 第VIII因子のBドメインは、配列番号1のアミノ酸741−1648に及ぶ。Bドメインはいくつかの異なる部位で切断され、循環血漿FVIII分子に大きな不均一性を生じる。大きくグリコシル化されたBドメインの正確な機能は未知である。知られているものは、該ドメインが凝固カスケードにおけるFVIII活性に対して重要ではないことである。このありうる機能の欠如は、Bドメイン欠失/切断型FVIIIが、完全長天然FVIIIに対して見られるものと同一のインビボ特性を有していると思われれることによって裏付けられる。それはそれとして、Bドメインは、少なくとも無血清条件下で、細胞膜との結合性を低下させうるという指摘がある。
【0015】
Bドメインが切断された/欠失した第VIII因子分子: 内在性の完全長FVIIIは、単鎖前駆体分子として合成される。分泌前、前駆体は重鎖と軽鎖に切断される。組換え型Bドメイン欠失型FVIIIは、2つの異なる方法により生産可能である。Bドメインを持たない重鎖と軽鎖が2つの異なるポリペプチド鎖として個々に合成されるか(2本鎖法)、又はBドメイン欠失型FVIIIが、完全長FVIII前駆体と同じ方法で重鎖と軽鎖に切断される、単一の前駆体ポリペプチド鎖として合成される(単鎖法)。
【0016】
Bドメイン欠失型FVIII前駆体ポリペプチドにおいて、重鎖部分と軽鎖部分は、通常はリンカーにより分離している。Bドメイン欠失型FVIIIに免疫原性エピトープが導入される危険性を最小にするため、リンカーの配列は、好ましくはFVIIIのBドメインから誘導される。リンカーは、Bドメイン欠失型FVIII前駆体ポリペプチドを軽鎖及び重鎖に分離するプロテアーゼに対する認識部位を含んでいなければならない。完全長FVIIIのBドメインにおいて、アミノ酸1644−1648がこの認識部位を構成する。Bドメイン欠失型FVIIIの活性化の際のリンカーの除去に至るトロンビン部位は重鎖に位置する。よって、リンカーの大きさ及びアミノ酸配列は、トロンビン活性化による、残存FVIII分子からのその除去に影響を及ぼすとは思われない。Bドメインの欠失は、FVIIIの生産に有利である。それにもかかわらず、Bドメインの一部は、生産性を減じることなく、リンカーに含めることができる。生産性に対するBドメインのネガティブな効果は、Bドメインの任意の特定の大きさ又は配列に起因してはいなかった。
【0017】
切断されたBドメインは、いくつかのO-グリコシル化部位を含んでいてもよい。しかしながら、好ましい実施態様では、分子は、切断されたBドメイン中における唯一の、又は2、3又は4のO-結合オリゴ糖を含む。
【0018】
好ましい実施態様では、切断されたBドメインは、唯一の潜在的O-グリコシル化部位を含有し、親水性ポリマーはこのO-グリコシル化部位に共有的に結合される。
【0019】
本発明のBドメイン切断型分子中のO-結合オリゴ糖は、Bドメインの切断により「隠された」O-グリコシル化部位の暴露により、及び/又は組換え手段により人工的につくり出されたO-グリコシル化部位に結合させられうる。双方の場合、このような分子は、Bドメイン切断型第VIII因子アミノ酸配列を設計し、続いて、切断されたBドメイン中のO-グリコシル化部位の可能性を予測するコンピュータ解析を該アミノ酸配列に施すことによって、作製され得る。このようなグリコシル化部位を有する比較的高い可能性のある分子は、適切な宿主細胞中で合成可能であり、続いてグリコシル化パターンが分析され、切断されたBドメイン中のO-結合グリコシル化を有する分子が選択される。組換え第VIII因子タンパク質を生産するために適した宿主細胞は、分子がグリコシル化されることを確実にするために、好ましくは哺乳動物由来である。本発明の実施においては、細胞は哺乳動物細胞、好ましくは樹立された哺乳動物細胞株であり、限定されるものではないが、CHO(例えば、ATCC CCL 61)、COS-1(例えば、ATCC CRL 1650)、ベビーハムスター腎臓(BHK)、及びHEK293(例えば、ATCC CRL 1573; Grahamら, J. Gen. Virol. 36:59-72, 1977)の細胞株が含まれる。好ましいBHK細胞株は、tk-ts13 BHK細胞株(Waechter及びBaserga, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:1106-1110, 1982)であり、以下、BHK570細胞と称する。BHK570細胞は、ATCC受入番号CRL 10314として、American Type Culture Collection, 12301 Parklawn Dr., Rockville, MD 20852から入手可能である。また、tk-ts13 BHK細胞株は、受託番号CRL 1632として、ATCCからも入手可能である。好ましいCHO細胞株は、受託番号CCl61として、ATCCから入手可能なCHO K1細胞株、並びに細胞株CHO-DXB11及びCHO-DG44である。
【0020】
他の適切な細胞株には、限定されるものではないが、Rat Hep I(ラット肝細胞腫;ATCC CRL 1600)、Rat Hep II(ラット肝細胞腫;ATCC CRL 1548)、TCMK(ATCC CCL 139)、ヒト肺(ATCC HB 8065)、NCTC1469(ATCC CCL 9.1);DUKX細胞(CHO細胞系)(Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980)(DUKX細胞はDXB11細胞とも称される)、及びDG44(CHO細胞系)(Cell, 33: 405, 1983, 及びSomatic Cell and Molecular Genetics 12: 555, 1986)が含まれる。さらに、3T3細胞、ナマルバ(Namalwa)細胞、ミエローマ、及びミエローマと他の細胞との融合体も有用である。いくつかの実施態様では、細胞は、変異又は組換え細胞、例えばそれらが誘導される細胞腫よりも、タンパク質の翻訳後修飾を触媒する定性的及び定量的に異なるスペクトルの酵素(例えば、グリコシル化酵素、特にグリコシルトランスフェラーゼ及び/又はグルコシダーゼ、又はプロセシング酵素、特にプロペプチド)を発現する細胞であってもよい。DUKX細胞(CHO細胞株)が特に好ましい。
【0021】
現在好ましい細胞は、HEK293、COS、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)及びミエローマ細胞、特にチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0022】
しかして、本発明の発明者は、Bドメインを切断することにより、第VIII因子Bドメイン中の「隠された」O-グリコシル化部位を活性化させることができることを示した。如何なる理論にも縛られることを望むものではないが、この現象は、改変されている切断されたBドメインにおける分子の三次構造に起因している可能性がある。よって、「隠された」O-グリコシル化部位が、切断されたBドメインにおけるグリコシル化に「アクセス可能」にする。このアプローチの一つの利点は、例えばアレルゲン性等に対し、有利な安全性プロファイルを持つ組換え分子が提供されることである。他の利点は、組換えタンパク質において人工的なO-グリコシル化部位を操作することが困難であることが以前から分かっているので、Bドメイン中のグリコシル化部位の内在的な豊富さのため、Bドメイン中のO-結合オリゴ糖を有するBドメイン切断型変異体を得るためのより簡単なアプローチを提供しうることである。
【0023】
wtFVIII中のBドメインの長さは約907アミノ酸である。本発明の分子における切断型Bドメインの長さは、約10アミノ酸から約700酸、例えば約12−500アミノ酸、12−400アミノ酸、12−300アミノ酸、12−200アミノ酸、15−100アミノ酸、15−75アミノ酸、15−50アミノ酸、15−45アミノ酸、20−45アミノ酸、20−40アミノ酸、又は20−30アミノ酸で変わり得る。切断されたBドメインは、wtFVIIIに見出されない重鎖及び/又は軽鎖及び/又は人工的に導入された配列の断片を含んでいてもよい。「Bドメイン切断型」及び「Bドメイン欠失型」なる用語は、ここでは交換可能に使用されうる。
【0024】
変更された循環半減期: 本発明の分子は、野生型の第VIII因子分子と比較して、変更された循環半減期、好ましくは増加した循環半減期を有する。循環半減期は、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも125%、より好ましくは少なくとも150%、より好ましくは少なくとも175%、より好ましくは少なくとも200%、及び最も好ましくは少なくとも250%又は300%増加する。より好ましくは、このような分子は、野生型FVIIIの循環半減期に対して、少なくとも400%、500%、600%、又は700%増加した循環半減期を有する。
【0025】
親水性ポリマー: 本発明の修飾基/親水性ポリマーは、好ましくは自然に生じたものではない。一例では、「自然に生じたものではない修飾基」は、少なくとも一のポリマー部分が自然に生じたものではないポリマー修飾基である。他の例では、自然に生じたものではない修飾基は修飾された炭水化物である。修飾基を用いた機能付与の座位は、「修飾された糖」がポリペプチドへ酵素的に付加されることが妨げられないように選択される。また、「修飾された糖」とは、修飾基で機能付与され、天然又は修飾された酵素、例えばグリコシルトランスフェラーゼの基質である任意のグリコシル模倣部分を意味する。
【0026】
ポリペプチドに付加されるポリマー修飾基は、このようなポリペプチドのある性質、例えばその生物学的利用能、生物活性、又は体内中におけるその半減期を改変することができる。本発明の例示的なポリマーは、直鎖状又は分枝状であってよく、一又は複数の独立して選択されるポリマー部分、例えばポリ(アルキレングリコール)及びその誘導体を含みうる水溶性ポリマーを含む。本発明のポリマー修飾基には、水溶性ポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)及びその誘導体(PEG、m-PEG)、ポリ(プロピレングリコール)及びその誘導体(PPG、m-PPG)等が含まれる。
【0027】
「水溶性」なる用語は、水中においてある検出可能な程度の溶解度を有する部分を意味する。水溶性度を検出及び/又は定量する方法は、当該分野でよく知られている。本発明の例示的な水溶性ポリマーには、ペプチド、糖類、ポリ(エーテル)、ポリ(アミン)、ポリ(カルボン酸)等が含まれる。ペプチドは混合配列を有することも可能で、単一のアミノ酸からなるもの、例えばポリ(リジン)であってもよい。例示的な多糖類はポリ(シアル酸)である。例示的なポリ(エーテル)はポリ(エチレングリコール)、例えばm-PEGである。ポリ(エチレンイミン)は例示的なポリアミンであり、ポリ(アクリル酸)は代表的なポリ(カルボン酸)である。
【0028】
本発明の水溶性ポリマーのポリマー骨格は、ポリ(エチレングリコール)(すなわちPEG)でありうる。本発明に関連してPEGなる用語には、任意の形態のポリ(エチレングリコール)、例えばアルコキシPEG、二官能性PEG、多分岐PEG、フォーク状PEG、分枝状PEG、ペンダントPEG(すなわち、PEG又はポリマー骨格にペンダントして一又は複数の官能基を有する関連ポリマー)、又はそこに分解性連鎖を有するPEGが含まれる。
【0029】
ポリマー骨格は直鎖状又は分枝状であってよい。分枝状のポリマー骨格は、当該分野で一般的に知られている。典型的には、分枝状ポリマーは、中央の分枝コア部分と、中央の分枝コアに結合する複数の直鎖状ポリマー鎖を有する。PEGは、種々のポリオール、例えばグリセロール、ペンタエリトリトール及びソルビトールにエチレンオキシドを添加することにより調製することができる分枝状形態で一般に使用される。また、中央の分枝部分は、いくつかのアミノ酸、例えばリジン又はシステインから誘導可能である。一例では、分枝状ポリ(エチレングリコール)は、R(-PEG-OH)mとして一般式で表すことができ、ここで、Rはコア部分、例えばグリセロール又はペンタエリトリトールを表し、mはアームの数を表す。多分岐PEG分子、例えばその全体が出典明示によりここに援用される米国特許第5932462号に記載されているものを、ポリマー骨格として使用することもできる。
【0030】
図8は、ここで「SA-グリセロール-PEG」と称される、本発明の実施態様で使用される代表的な分枝状PEGポリマーを示す。
図8Aは、ポリペプチドのアミノ酸又はグリカンに結合するSA-グリセロール-PEG又はCMP-SA-グリセロール-PEGの、例示的なSA-グリセロール-PEG成分を示す。
図8Bは、Gal残基を介してポリペプチド又はグリカンに結合するSA-グリセロール-PEG部分を示す。
図8Cは、Gal-GalNAc残基を介してポリペプチド又はグリカンに結合するSA-グリセロール-PEG部分を示す。
図8Dは、Gal-GalNAc部分を介してポリペプチドのアミノ酸に結合するSA-グリセロール-PEG部分を示す。種々の実施態様では、AAはスレオニン又はセリンである。例示的な実施態様では、AAは、FVIIIポリペプチドのBドメインの欠失により、O-結合したグリコシル化部分に転換される。以下の段落[0032]のポリマーの分子量に関する検討は、一般的に、
図8に示される分枝状PEGに当てはまる。
図8において、添え字「n」は、段落[0032]で論議される所望の分子量の直鎖状(及び分枝状)m-PEGをもたらす任意の整数を表す。種々の実施態様では、「n」は、直鎖状のm-PEG部分が約20KDa〜約40KDa、例えば約20KDa、約30KDa又は約40KDaであるように選択される。これらのm-PEGの分子量に相当する整数は、約400(例えば、約455)〜約900(例えば、約910)に相当する。従って、「n」は、約40KDa〜約80KDa、例えば約40KDa、約50KDa、約60KDa、約70KDa、又は約80KDaの分枝状PEGが提供されるように選択される。
【0031】
多くの他のポリマーがまた本発明に適している。非ペプチド性で水溶性であるポリマー骨格は、特に本発明で有用である。適切なポリマーの例には、限定されるものではないが、他のポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(プロピレングリコール) (「PPG」)、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー等、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィン性アルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ([アルファ]-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、例えばその全体が出典明示によりここに援用される米国特許第5629384号に記載されているもの、並びにコポリマー、ターポリマー、及びその混合物が含まれる。
【0032】
ポリマー骨格の各鎖の分子量は変わりうるが、典型的には、約100Da〜約160000Da、例えば約5000Da〜約100000Daの範囲である。特に、本発明の各結合した親水性ポリマーの大きさは、約500Da〜約80000Da、例えば約1000Da〜約80000Da;約2000Da〜約70000Da;約5000〜約70000Da;約5000〜約60000Da;約10000〜約70000Da;約20000〜約60000Da;約30000〜約60000Da;約30000〜約50000Da;又は約30000〜約40000Daで変化しうる。これらの大きさは、正確な測定値というよりも推定値を表すと理解すべきである。好ましい実施態様では、本発明の分子は、親水性ポリマーの不均一集団、例えば10000、40000、又は80000Da+/−約5000、約4000、約3000、約2000、又は約1000Daの大きさのPEGと結合される。
【0033】
O-結合オリゴ糖: N-グリカンとO-グリカンの双方が、タンパク質を産生する細胞により、タンパク質に結合される。新生タンパク質がリボソームから小胞体に転位置すると、細胞N-グリコシル化機構がアミノ酸鎖におけるN-グリコシル化シグナル(N-X-S/Tモチーフ)を認識し、グリコシル化する(Kielyら 1976; Glabeら 1980)。
【0034】
同様に、O-グリカン類は、アミノ酸鎖における特定のO-グリコシル化部位に結合されるが、O-グリコシル化を惹起するモチーフは、N-グリコシル化シグナルよりもさらに不均一であり、アミノ酸配列中のO-グリコシル化部位を予測する我々の能力は、未だ不十分である(Juleniusら 2004)。よって、人工的なO-グリコシル化部位の構築は、ある程度の不確実さを伴う。一般的な仮定は、天然FVIII分子がO-グリコシル化部位を何ら含んでいないことであり、よって、当業者は、少なくとも一の人工的なO-グリコシル化部位が構成され、本発明の実施に関連してBドメイン中に挿入されなければならないであろうことを予想するであろう。
【0035】
よって、切断された第VIII因子のBドメイン中におけるO-結合オリゴ糖が、自然に生じたO-結合グリコシル化配列、又は組換え技術により人工的に構築されたO-結合グリコシル化配列に共有的に結合されうる。
【0036】
本発明の好ましい実施態様では、O-結合オリゴ糖は、野生型第VIII因子分子におけるグリコシル化に暴露されていないが、Bドメイン切断の結果としてO-グリコシル化にアクセス可能になる自然に生じるO-結合グリコシル化配列に結合している。その具体例を実施例及び配列番号2に示す(切断されたB-ドメインは、アミノ酸742−763に対応する)。また、たとえBドメインが幾分異なる場所で切断されていても、すなわち配列番号2と比較して、切断されたBドメインが幾分短いか(例えば、配列番号2よりも1、2、3、4、又は5アミノ酸短い)、又は長くても(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50アミノ酸)、配列番号2における「隠された」O-グリコシル化部位がグリコシル化されるであろうことは、もっともだと思われる。人工的なO-グリコシル化部位を生成させるよりもむしろ、Bドメインを切断することで「隠された」O-グリコシル化部位を活性化させることによるこのアプローチは、有利な安全性プロファイル(すなわち、アレルゲン性の低下)を有する分子が生成されるという利点を有する。同様に、第VIII因子のBドメインにおける他のO-グリコシル化部位は、異なった方法で分子を切断することにより活性化されるようになりうる。
【0037】
O-結合オリゴ糖のグリコ-ペグ化: O-グリカンの生合成は、生合成の比較的初期に、シアル酸残基を付加することにより、修飾し終結させることができる。ある種のシアリルトランスフェラーゼ酵素は、GalNAcα-Ser/Thr、又はコア1 GalT作用後の初期のO-グリカンコアサブタイプに作用可能である。T抗原なる用語は、Galβ1-3GalNAcα-Ser/Thr二糖類の存在に関連している。このような構造体の生成は、同じ基質に対するグリコシルトランスフェラーゼ間の競合を含み、よってゴルジ体内のグリコシルトランスフェラーゼの発現レベル及び細胞内分布が、O-グリカンの生合成及び多様化における構造の結果を決定する。
図1に例証するように、Galβ1-3GalNAcα-Ser/Thr二糖類のみが、グリコペグ化の影響を受けやすい。
【0038】
しかしながら、この構造体の利用可能な量は、シアリダーゼ又はコア1 GalT又はその組合せを用いたタンパク質の処理を介して大きく高められうる。グリコペグ化プロセスの結果として、シアル酸PEGを、標的タンパク質のGalβ1-3GalNAcα-Ser/Thr二糖類に結合するα3を介して天然構造体に付与する(
図1)。
【0039】
他の親水性ポリマーもまたO-結合オリゴ糖類に結合させうる。O-グリカンを介してFVIIIに他の親水性ポリマーを酵素的にコンジュゲートさせるのに基本的な要件は、国際公開第03031464号に開示されているような、遊離のアミノ基を介してグリシル-シアル酸誘導体にそれらをカップリングさせる能力である。これは、当業者に知られている非常に多様なカップリングケミストリーを介して達成されうる。活性化された生体適合性ポリマーの例には、ポリアルキレンオキシド類、例えば限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン(mPC)ポリマー(国際公開第03062290号に記載)、デキストラン類、コロミン酸、又は他の炭水化物ベースのポリマー、アミノ酸又は特定のペプチド配列のポリマー、ビオチン誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン-コ-マレイン酸無水物、ポリスチレン-コ-リンゴ酸無水物、ポリオキサゾリン、ポリ-アクリロイルモルホリン、ヘパリン、アルブミン、セルロース、キトサンの加水分解物、デンプン、例えばヒドロキシエチル-デンプン及びヒドロキシプロピル-デンプン、グリコーゲン、アガロース及びその誘導体、グアーガム、プルラン、イヌリン、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、アルギニン酸の加水分解物、他のバイオポリマー、及びその任意の等価物が含まれる。
【0040】
薬学的組成物: 薬学的組成物は、ここでは、非経口投与に適した本発明の第VIIII因子分子を含有する組成物、例えば使用準備が整った水性の滅菌組成物、又は水又は水性バッファーで再構成可能な乾燥した滅菌組成物を含むことを意味する。本発明の組成物は、種々の製薬的に許容可能な賦形剤、安定剤等を含有しうる。
【0041】
このような組成物における付加的な成分には、湿潤剤、乳化剤、酸化防止剤、増量剤、張力修正剤、キレート剤、金属イオン、油性ビヒクル、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えばアミノ酸、特にベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジン及びヒスチジン)を含んでよい。もちろん、このような付加的な成分は、本発明の製薬用製剤の全体的な安定性に悪影響が及ばないようにすべきである。非経口投与は、シリンジ、場合によってはペン様シリンジにより、皮下、筋肉内、腹膜内又は静脈内注射で実施されてよい。また非経口投与は、注入ポンプにより実施することもできる。さらなる選択肢は、鼻用又は肺用のスプレーの形態で、FVIII化合物を投与するための溶液又は懸濁液であってよい組成物にある。さらなる選択肢としては、本発明のFVIII化合物を含有する薬学的組成物を、例えば針のない注射、又はパッチ、場合によってはイオン導入パッチによる経皮投与用、又は頬等の経粘膜投与用に適合させてもよい。
【0042】
よって、本発明の第1の態様は、改変された循環半減期を有するBドメイン切断型第VIII因子分子に関し、該分子は、切断されたBドメイン中のO-結合オリゴ糖を介して、親水性ポリマーと共有的に結合しており、ここで、第VIII因子の活性化(分子の活性化)により、共有的に結合した親水性ポリマーの除去が生じる。
【0043】
一実施態様では、親水性ポリマーはPEGである。PEGポリマーの大きさは、約10000〜約160000Da;例えば10000〜80000Da、例えば約10000;15000、20000;25000;30000;35000;40000;45000;50000;55000;60000;65000、70000;75000;又は80000Daで変化し得る。好ましくは、O-結合オリゴ糖は、wtFVIII分子に見出されない人工的なO-グリコシル化部位を挿入するのではなく、Bドメインを切断することにより作製されるO-グリコシル化部位に結合される。
【0044】
特に好ましい実施態様では、本発明の分子は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む。このような分子は、活性化FVIII分子が、天然の活性FVIII分子と同一であるという独特の特徴を有する。この特徴は、安全性評価において有利な特性であると思われる。
【0045】
また本発明は、本発明の分子を含有する薬学的組成物に関する。
【0046】
さらに本発明は、本発明の分子を得るための方法に関し、該方法は、Bドメイン切断型第VIII分子と親水性ポリマー、例えばPEG基を、切断されたBドメイン中のO-結合オリゴ糖を介してコンジュゲートさせることを含む。したがって、本発明は、このような方法により得られた又は得られうる分子にもまた関することになる。
【0047】
他の態様では、本発明は、治療的有効量の本発明の分子を、それを必要とする患者に投与することを含む出血性疾患を治療する方法に関する。
【0048】
ここで使用される「治療(処置)」なる用語は、それを必要とする任意のヒト又は他の動物被験者の医学療法を意味する。前記被験者は、前記特定の治療の使用が、前記ヒト又は他の動物被験者の健康に有益であることを示す仮の又は最終的な診断を与えた医師により身体検査を受けなければならないことが予期される。前記治療のタイミング及び目的は、被験者の健康状態の現状に応じて、個人によって異なる。よって、前記治療は、予防的、対症的、症候性及び/又は治癒的でありうる。
【0049】
他の態様では、本発明は、本発明の分子の医薬としての使用、並びに血友病を治療するための医薬の製造のための本発明の分子の使用に関する。
【0050】
最後の態様では、本発明は、本発明のBドメイン切断型第VIII因子分子を操作する方法に関し、該方法は、(i)Bドメインを切断し、場合によっては、この切断型第VIII因子分子のアミノ酸配列に、潜在的なO−グリコシル化部位を同定する解析を施し、(ii)適切な宿主細胞において分子を産生させ、及び(iii)切断されたBドメイン中のO−結合グリカンを有する分子を選択することを含む。
実施態様
1. 変更された循環半減期を有するBドメイン切断型第VIII因子分子であって、該分子が、切断されたBドメイン中のO-結合オリゴ糖を介して親水性ポリマーと共有的に結合され、第VIII因子の活性化により、共有的に結合した親水性ポリマーが除去される分子。
2. O-結合オリゴ糖が、Bドメインの切断により作製されるO-グリコシル化部位に結合している実施態様1に記載の分子。
3. 親水性ポリマーがPEGである実施態様1又は2に記載の分子。
4. PEGサイズが約10000〜約160000Daである実施態様3に記載の分子。
5. PEGサイズが約40000Daである実施態様4に記載の分子。
6. 配列番号2に記載のアミノ酸配列を含んでなる実施態様1から5のいずれか一項に記載の分子。
7. 実施態様1から6のいずれか一項に記載の分子を含有する薬学的組成物。
8. Bドメイン切断型第VIII分子を親水性ポリマーと、切断されたBドメイン中のO-結合オリゴ糖を介してコンジュゲートさせることを含む実施態様1から6のいずれか一項に記載の分子の作製方法。
9. 実施態様8の方法により得ることができる分子。
10.実施態様1から6のいずれか一項に記載の分子の治療的有効量を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、出血性疾患の治療方法。
11.実施態様1から6のいずれか一項に記載の分子の医薬としての使用。
12.血友病を治療するための医薬の製造のための、実施態様1から6のいずれか一項に記載の分子の使用。
13.実施態様1から6のいずれか一項に記載のBドメイン切断型第VIII因子分子を操作する方法であって、(i)Bドメインを切断し、場合によっては、この切断された第VIII因子分子のアミノ酸配列に、潜在的なO-結合グリコシル化部位を同定する分析を施し、(ii)適切な宿主細胞中で分子を産生させ、及び(iii)切断されたBドメイン中のO-結合グリカンを有する分子を選択する、ことを含む方法。
【実施例】
【0052】
実施例1
組換え型Bドメイン切断型O-グリコシル化第VIII因子の製造
Bドメイン欠失型第VIII因子分子のアミノ酸配列の例を配列番号2に付与する。このポリペプチドはまた「N8」と称することができる。この分子は、21のアミノ酸残基リンカー配列(SFSQNSRHP
SQNPPVLKRHQR−下線が付された
Sは、実施例2でペグ化されたO-グリカンを有するセリン残基である)を含む。
【0053】
本発明の第VIII因子分子は、実施例において、様々な形で言及される−しかし第VIII因子分子に対する全ての参照が、本発明の第VIII因子分子、又は本発明の第VIII因子分子へ転換されるプロセスにおける第VIII因子分子を意味する。
【0054】
配列番号2:
ATRRYYLGAVELSWDYMQSDLGELPVDARFPPRVPKSFPFNTSVVYKKTLFVEFTDHLFNIAKPRPPWMGLLGPTIQAEVYDTVVITLKNMASHPVSLHAVGVSYWKASEGAEYDDQTSQREKEDDKVFPGGSHTYVWQVLKENGPMASDPLCLTYSYLSHVDLVKDLNSGLIGALLVCREGSLAKEKTQTLHKFILLFAVFDEGKSWHSETKNSLMQDRDAASARAWPKMHTVNGYVNRSLPGLIGCHRKSVYWHVIGMGTTPEVHSIFLEGHTFLVRNHRQASLEISPITFLTAQTLLMDLGQFLLFCHISSHQHDGMEAYVKVDSCPEEPQLRMKNNEEAEDYDDDLTDSEMDVVRFDDDNSPSFIQIRSVAKKHPKTWVHYIAAEEEDWDYAPLVLAPDDRSYKSQYLNNGPQRIGRKYKKVRFMAYTDETFKTREAIQHESGILGPLLYGEVGDTLLIIFKNQASRPYNIYPHGITDVRPLYSRRLPKGVKHLKDFPILPGEIFKYKWTVTVEDGPTKSDPRCLTRYYSSFVNMERDLASGLIGPLLICYKESVDQRGNQIMSDKRNVILFSVFDENRSWYLTENIQRFLPNPAGVQLEDPEFQASNIMHSINGYVFDSLQLSVCLHEVAYWYILSIGAQTDFLSVFFSGYTFKHKMVYEDTLTLFPFSGETVFMSMENPGLWILGCHNSDFRNRGMTALLKVSSCDKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFSQNSRHPSQNPPVLKRHQREITRTTLQSDQEEIDYDDTISVEMKKEDFDIYDEDENQSPRSFQKKTRHYFIAAVERLWDYGMSSSPHVLRNRAQSGSVPQFKKVVFQEFTDGSFTQPLYRGELNEHLGLLGPYIRAEVEDNIMVTFRNQASRPYSFYSSLISYEEDQRQGAEPRKNFVKPNETKTYFWKVQHHMAPTKDEFDCKAWAYFSDVDLEKDVHSGLIGPLLVCHTNTLNPAHGRQVTVQEFALFFTIFDETKSWYFTENMERNCRAPCNIQMEDPTFKENYRFHAINGYIMDTLPGLVMAQDQRIRWYLLSMGSNENIHSIHFSGHVFTVRKKEEYKMALYNLYPGVFETVEMLPSKAGIWRVECLIGEHLHAGMSTLFLVYSNKCQTPLGMASGHIRDFQITASGQYGQWAPKLARLHYSGSINAWSTKEPFSWIKVDLLAPMIIHGIKTQGARQKFSSLYISQFIIMYSLDGKKWQTYRGNSTGTLMVFFGNVDSSGIKHNIFNPPIIARYIRLHPTHYSIRSTLRMELMGCDLNSCSMPLGMESKAISDAQITASSYFTNMFATWSPSKARLHLQGRSNAWRPQVNNPKEWLQVDFQKTMKVTGVTTQGVKSLLTSMYVKEFLISSSQDGHQWTLFFQNGKVKVFQGNQDSFTPVVNSLDPPLLTRYLRIHPQSWVHQIALRMEVLGCEAQDLY
【0055】
細胞株及び培養プロセス:
第VIII因子のcDNAを使用し、配列番号2に記載したアミノ酸配列を有するBドメイン欠失型第VIII因子をコードする哺乳動物の発現プラスミドを構築した。プラスミドは、完全長ヒト第VIII因子のアミノ酸1−740を含む第VIII因子重鎖と、完全長ヒト第VIII因子のアミノ酸1649−2332を含む第VIII因子軽鎖をコードする。重鎖及び軽鎖配列は、完全長ヒト第VIII因子のアミノ酸741−750及び1638−1648の配列を有する21のアミノ酸リンカーにより連結している。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、BDD第VIII因子をコードするプラスミドで形質移入し、動物成分を含有しない培地で培養されたクローン懸濁産生細胞に最終的に至るジヒドロ葉酸還元酵素システムを用いて選択する。
【0056】
本方法の第1工程は、作業細胞バンクバイアルから、化学的に定まり動物成分を含有しない増殖培地への、細胞バイアルの播種である。まず、解凍後に細胞をT-フラスコ中でインキュベートする。解凍の1又は2日後、細胞を振盪フラスコに移し、0.2−3.0×10
6細胞/mlの細胞密度を維持するために、連続希釈により、培養容量を大きくする。次の工程は、振盪フラスコ培養物のシードバイオリアクターへの移動である。ここで、培養容量は、生成用バイオリアクターへの最終移動の前にさらに大きくなっている。同様に化学的に定まり動物成分を含有しない培地を、全ての播種増殖工程に使用する。生産用バイオリアクターへの移動後、産物の濃度を増加させる成分を培地に補填する。生産用バイオリアクター中で、細胞を、3日間のサイクルタイムの繰返しバッチプロセスで培養する。収集時、培養容量の80−90%を収集用タンクに移動させる。ついで、最初の細胞密度にするために、残った培養液を新鮮培地で希釈し、新たな増殖期間を開始させる。
【0057】
収集バッチを、遠心分離及び濾過により浄化し、精製工程を開始する前に、貯蔵タンクに移動させる。貯蔵タンク中の細胞を含有しない収集物にバッファーを添加し、pHを安定化させる。
【0058】
生産工程の終了までに、生産細胞バンクを終了させるために、細胞を収集し、凍結させる。この細胞バンクを、マイコプラズマ、無菌性、及びウイルス汚染性について試験する。
【0059】
精製:
細胞培養培地からのBドメイン欠失型第VIII因子の単離では、Capto MMCカラムでの濃縮工程、免疫吸着剤クロマトグラフィー工程、アニオン交換クロマトグラフィー、及び最後にゲル濾過工程を含む4工程の精製手順を使用した。典型的には次の手順を使用した:11リットルの滅菌濾過培地を、バッファーA:20mMのイミダゾール、10mMのCaCl
2、50mMのNaCl、0.02%のトゥイーン(Tween)80、pH=7.5、流量15ml/分で平衡にしたCapto MMCカラム(1.6×12cm)(GE Healthcare, Sweden)に移送した。カラムを75mlのバッファーAで洗浄し、続いて1.5MのNaClを含有する75mlのバッファーAで洗浄した。20mMのイミダゾール、10mMのCaCl
2、0.02%のトゥイーン80、2.5MのNaCl、8Mのエチレングリコール、pH=7.5、流量1ml/分を用い、タンパク質を溶出させた。8mlの画分を収集し、第VIII因子活性(CoA-テスト)についてアッセイした。第VIII因子含有画分をプールし、通常は約50mlのプール容量を得た。
【0060】
第VIII因子に対するモノクローナル抗体が開発されている(Kjalke Eur J Biochem 234 773)。エピトープマッピングにより(結果は示さず)、この抗体F25がアミノ酸残基725〜740の重鎖の遠くのC末端配列を認識することが見出された。F25抗体を、本質的に製造者により記載されているようにして、ゲル1ml当たり2.4mgの密度で、NHS-活性化セファロース4FF(GE Healthcare, Bio-Sciences AB, Uppsala, Sweden)にカップリングさせた。先の工程からのプールを、20mMのイミダゾール、10mMのCaCl
2、0.02%のトゥイーン80、pH=7.3を用いて10倍に希釈し、20mMのイミダゾール、10mMのCaCl
2、150mMのNaCl、0.02%のトゥイーン80、1Mのグリセロール、pH=7.3、流量0.5ml/分で平衡にしたF25セファロースカラム(1.6×9.5cm)に充填した。UVシグナルが一定になるまで、カラムを平衡バッファーで洗浄し、ついでUVシグナルが再度一定になるまで、20mMのイミダゾール、10mMのCaCl
2、0.65MのNaClで洗浄した。20mMのイミダゾール、10mMのCaCl
2、0.02%のトゥイーン80、2.5MのNaCl、50%のエチレングリコール、pH=7.3、流量1ml/分を用い、第VIII因子を溶出させた。1mlの画分を収集し、第VIII因子活性(CoA-テスト)についてアッセイした。第VIII因子含有画分をプールし、通常は約25mlのプール容量を得た。
【0061】
バッファーA:20mMのイミダゾール、10mMのCaCl
2、0.02%のトゥイーン80、1Mのグリセロール、pH=7.3、及びバッファーB:20mMのイミダゾール、10mMのCaCl
2、0.02%のトゥイーン80、1Mのグリセロール、1MのNaCl、pH=7.3を、イオン交換工程用に調製した。Macro-Prep 25Q Support(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)のカラム(1×10cm)を、85%のバッファーA/15%のバッファーB、流量2ml/分で平衡化した。先の工程からのプールを、バッファーAを用いて10倍に希釈し、流量2ml/分でカラムに移送した。85%のバッファーA/15%のバッファーB、流量2ml/分でカラムを洗浄し、15%のバッファーB〜70%のバッファーBの直線状勾配、120ml超、流量2ml/分にて、第VIII因子を溶出させた。2mlの画分を収集し、第VIII因子活性(CoA-テスト)についてアッセイした。第VIII因子含有画分をプールし、通常は約36mlのプール容量を得た。
【0062】
先の工程からのプールを、平衡化されたスーパーデックス200、prepグレード(GE Healthcare, Bio-Sciences AB, Uppsala, Sweden)カラム(2.6×60cm)に充填し、20mMのイミダゾール、10mMのCaCl
2、0.02%のトゥイーン80、1Mのグリセロール、150mMのNaCl、pH=7.3を用い、1ml/分で溶出させた。3mlの画分を収集し、第VIII因子活性(CoA-テスト)についてアッセイした。第VIII因子含有画分をプールし、通常は約57mlのプール容量を得た。第VIII因子を含有するプールを−80℃で保存した。
【0063】
上述の4工程の精製手順を使用して、CoA活性及びELISA測定により判定して約15%の総収率が得られた。
【0064】
N8の製造に使用される細胞株は、F8-500タンパク質をコードするcDNAを含む挿入断片を有するpTSV7発現ベクターからなるpTSV7中の発現プラスミド#814 F8-500を安定して形質移入した組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である。ここで「N8」は、配列番号2に列挙のアミノ酸配列を有するタンパク質に相当することを意味する。N末端から出発し、F8-500タンパク質(N8)は、FVIIIシグナルペプチド(アミノ酸−19〜−1)、続いてBドメインを有さないFVIII重鎖(アミノ酸1−740)、21のアミノ酸リンカー(SFSQNSRHPSQNPPVLKRHQR)、及びFVIII軽鎖(野生型ヒトFVIIIのアミノ酸1649−2332)からなる。21のアミノ酸リンカーの配列は、FVIII Bドメインから誘導され、全長FVIIIのアミノ酸741−750及び1638−1648からなる。
【0065】
CHO細胞を、814 F8-500を用いてpTSV7に形質移入し、動物成分を含有しない培地で培養したクローン懸濁産生細胞に最終的に至るジヒドロ葉酸還元酵素システムを用いて選択した。生産工程を、機能している細胞バンクバイアルを解凍することにより開始させ、生産用バイオリアクターに移動させるまでに、細胞を増殖させる。同様に化学的に定まった動物成分を含有しない培地を全ての播種増殖工程に使用する。生産用バイオリアクターへの移動後、生成物の濃度を増加させる成分を、培地に補填する。生産用バイオリアクターにおいて、細胞を、3日間のサイクルタイムの繰り返しバッチプロセスで培養する。収集時、培養用量の80−90%を収集用タンクに移動させる。ついで、最初の細胞密度にするために、残った培養液を新鮮培地で希釈し、新たな増殖期間を開始させる。収集バッチを、遠心分離及び濾過により浄化し、精製工程を開始する前に、貯蔵タンクに移動させる。貯蔵タンク中の細胞を含有しない収集物にバッファーを添加し、pHを安定化させる。
【0066】
実施例2
組換えBドメイン切断型O-グリコシル化第VIII因子のペグ化:
実施例1で得られた組換え第VIII因子分子を、次の手順を使用し、ポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートさせる。
【0067】
実施例1で得られた組換え第VIII因子分子のグリコペグ化を効率的にするには、FVIII濃度>5mg/mlであることが好ましい。FVIIIは、通常はその濃度で可溶性ではないために、選択されたバッファー組成物のスクリーニングを実施した(表1におけるこれらの結果のいくつかを参照)。
【0068】
これらの考慮に基づき、50mMのMES、50mMのCaCl2、150mMのNaCl、20%のグリセロール、pH6.0を含むバッファーが適切な反応バッファーであることが分かった。
【0069】
【0070】
上述したように精製された組換えFVIIIを、Sartorius Vivaspin(PES)フィルター、10KDaカット-オフ又はAmicon 10kDa MWCO PESフィルターで、段階的溶出を使用してのPoros 50HQカラムでのイオン交換により、6−10mg/mL濃度まで反応バッファー中で濃縮した。第VIII因子(BDD)(最終的に〜4.7mg/mL)を、シアリダーゼ(A. urifaciens)(159mU/mL)、CMP-SA-グリセロール-PEG-40kDa(5mol当量)、及びMBP-ST3Gal1(540mU)と、反応バッファー(50mMのMES、50mMのCaCl2、150mMのNaCl、20%のグリセロール、0.5mMのアンチパイン、pH6.0)中で混合することにより、FVIIIのグリコペグ化を開始させた。全体的に〜20−30%の転換収率になるまで、反応混合物をインキュベートした。
【0071】
インキュベート後、試料をバッファーA(25mMのトリス、5mMのCaCl
2、20mMのNaCl、20%のグリセロール、pH7.5)で希釈し、ソース15Qカラム(内径1cm×6cm、4.7mL、1mL/分、280nm)に充填した。結合した物質をバッファーAで洗浄し、バッファーB(25mMのトリス、5mMのCaCl
2、1MのNaCl、20%のグリセロール、pH7.5)の段階勾配を用いて溶出させた。〜25%のバッファーBで、カラムから、グリコペグ化された第VIII因子-(O)-SA-グリセロール-PEG-40kDaを溶出させた。
図2は、ソース15Qでの反応混合物のイオン交換クロマトグラフィーを示す。
【0072】
シアリダーゼ処理中にN-グリカンに暴露された遊離のガラクトース部分をブロックするために、第VIII因子-SA-グリセロール-PEG-40kDa(最終的に1.0mg/mL)のプール化画分を、反応バッファー50mMのMES、20mMのCaCl2、150mMのNaCl、10mMのMnCl2、20%のグリセロール、pH6.0中において、CMP-SA(2000mol当量)及びMBP-SBD-ST3Gal3(400mU/mL)と混合し、32℃で11時間インキュベートした。
【0073】
得られたキャッピングされたグリコペグ化第VIII因子-SA-グリセロール-PEG-40kDaを、50mMのMES、50mMのCaCl2、150mMのNaCl、10%のグリセロール、pH6.0;流量0.25mL/分で平衡化されたスーパーデックス200カラム(内径10cm×300mm;280nm)でゲル濾過することにより、CMP-SA及びST3GalIIIから分離した。生成物第VIII因子-SA-グリセロール-PEG-40kDaを、38分溶出させる。
図3は、スーパーデックス200サイズ排除クロマトグラフィーを使用するキャップ生成物の精製を示す。ピーク画分を収集し、一定分量に分割し、次の分析を施した。
【0074】
キャッピング手順の目的は、結合型第VIII因子分子のインビボクリアランスを低下させることにある。
【0075】
実施例3
発色性FVIII活性アッセイにおけるO-グリカンペグ化rFVIIIの活性
実施例2で得られたO-グリコペグ化rFVIIIの活性を、次のようにして、コアテスト(Coatest)SP試薬(Chromogenix)を使用する発色性FVIIIアッセイで評価した:rFVIII試料及びキャリブレーター(NIBSCからの第7国際FVIII標準品)を、コアテストアッセイ用バッファー(50mMのトリス、150mMのNaCl、1%のBSA、pH7.3、保存料を含有)に希釈した。50μlの試料、標準品、及びバッファーネガティブのコントロールを、2通りの96-ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)に添加した。コアテストSPキットからの第IXa因子/第X因子試薬、リン脂質試薬、及びCaCl
2を、5:1:3(容量:容量:容量)で混合し、この75μlをウェルに添加した。室温でインキュベートして15分後、50μlの第Xa因子基質S-2765/トロンビンインヒビターI-2581混合物を添加し、25μlの1Mクエン酸、pH3を添加する前に、室温で10分、反応物をインキュベートした。参照波長として使用される620nmでの吸光度と共に、415nmでの吸光度を、スペクトラマックス(Spectramax)マイクロタイタープレートリーダー(Molecular Devices)で測定した。ネガティブコントロールについての値を全ての試料から引き、FVIII濃度に対してプロットされた吸光度値の直線回帰により、較正曲線を作成した。比活性を、HPLCクロマトグラムでの軽鎖ピークを積分し、サイズ排除HPLCで定量されたタンパク質濃度で、試料の活性を割ることにより算出した。すなわちPEG部分は含めなかった。表2のデータは、発色比活性がO-グリコペグ化rFVIII化合物に対して維持されていることを証明しており、これは、第VIII因子の活性がペグ化変異体において保持されていると思われることを意味する。
【0076】
【0077】
実施例4
FVIII凝固活性アッセイにおけるO-グリカンペグ化rFVIIIの活性
O-グリコペグ化rFVIIIの活性をFVIII凝固アッセイでさらに評価した。rFVIII試料をHBS/BSA(20mMのヘペス(hepes)、150mMのNaCl、pH7.4、1%のBSAを含有)において、約10U/mlに希釈し、ついで、VWFを含むFVIII欠損血漿(Dade Behring)で10倍希釈した。続いて、試料及び較正された血漿標準品(HemosIL Calibration Plasma from Instrumentation Laboratory)を、HBS/BSA中で4(試料)又は6(キャリブレーター)の異なる濃度に希釈した。単一ファクタープログラムを使用し、ACL9000機器(Instrumentation laboratory)で凝固時間を測定し、試料/標準品を、VWF(Dade Behring)、カルシウム、及びaPTT試薬と共に、同容量のFVIII欠失血漿と混合し、凝固時間を測定した。試薬として、以下のものを使用した:シンタシル(Synthasil)(HemosIL, Instrumentation Laboratory)、アクチンFS(活性化PTT試薬、Dade Behring)、スタゴ(Stago)(STA(登録商標)PTT-A、Stago)、及びdAPPTin(DAPPTIN(登録商標)TC、Technoclone)。試料の活性を、キャリブレーターの濃度に対する凝固時間の片対数プロットに基づき算出した。
【0078】
O-グリコペグ化rFVIII化合物(それぞれ、コントロール、10、40、及び80kDAのPEG)の凝固活性(
図4)は、使用したPEGサイズ及びaPTT試薬に応じて、様々な度合いで減少した。aPTT試薬として、シンタシル又はdAPPTinを使用すると、PEGサイズに伴い、凝固活性が徐々に低減する結果となった。スタゴのaPTT試薬を用いると、評価した3つ全てのO-グリコペグ化N8化合物について、凝固比活性の50%低下が観察された。aPTT試薬としてアクチンFSを使用した場合、約10000IU/mgの凝固比活性が維持された。データは、PEG部分の存在により、aPTTアッセイが影響を受けることを示しているが、選択されたaPTT試薬、例えばアクチンFSを使用すると、rFVIIIの凝固比活性は、O-グリコペグ化では損なわれない。
【0079】
実施例5:
補因子活性及びFVIII活性化の速度に対するrFVIIIのO-結合ペグ化の影響
FIXa-FVIIIa複合体への活性化FVIIIの導入により、FIXa触媒されたFX活性化の触媒効率は5桁高められ(van Dieijenら (1981) J Biol Chem
256:3433)、FIXa-FVIIIa複合体アセンブリ及びFX活性化動態の特徴付けは、FVIIIa分子の機能的統合性の高感度な指標である。トロンビン-活性化rFVIII又はPEG-rFVIIIの補因子活性は、リン脂質及びトロンビン-活性化rFVIII又はPEG-rFVIIIの存在下、FIXa-触媒されたFX活性化の動態パラメータを測定することにより特徴付けられる。FVIIIa活性アッセイ(FIXa-補因子活性アッセイ)を使用して、それぞれ固定濃度(0.1nM)のrFVIIIa又はFIXaに対して、FIXa及びFVIIIaの相互滴定を実施し、rFVIIIa(K
1/2FIXa)の見かけの親和性及び機能的FVIIIa濃度を得た。FX活性化のミカエリス定数(k
m)と回転数(k
cat)を、固定濃度のFIXa-FVIIIa複合体の固定濃度に対して、FXを滴定することから得た。
【0080】
FIXa-補因子活性アッセイは、次のようにして実施した:トロンビン-活性化rFVIII及びPEG-rFVIII変異体を、rFVIII(通常、0.7nM、1U/mL)と5nMのヒトα-トロンビンを、正確には37℃で30秒インキュベートすることにより、各試験毎に新たに調製した。その後、FX活性化の速度を、FIXa、リン脂質小胞(Rossix [Molndal, Sweden]からのリン脂質TGT)、ヒルジン、ペファブロック(Pefabloc)Xa及びCaCl
2の調製混合物に、上述した活性化反応体をサブサンプリングすることにより定量した;FX活性化を、FXを添加することにより開始させ、放置し、37℃で30秒又は60秒続行させた。EDTAを含む氷冷バッファーにFX活性化反応物を希釈することにより、活性化を停止させた。FXaに特異的な発色基質を使用し、ELISAリーダーで405nMの吸光度を読むことにより、FXaの濃度を定量化した。精製されたFXaを用いて調製された参照曲線を使用し、吸光度をFXa濃度に転換した。活性化rFVIII又はPEG-rFVIII変異体から組み立てられたFIXa-rFVIIIa複合体の回転数を使用し、FX活性化の速度を、rFVIIIa濃度に転換した。
【0081】
トロンビン触媒されたrFVIII活性化の速度を、0.7nMのrFVIII又はPEG-rFVIII及び0.13nMのヒトα-トロンビンを含有する混合物において、rFVIIIaの初期(0〜3分)形成を定量化することにより測定した。FVIIIaの形成は、時間について線形であった。FVIIIa活性化の速度は、形成したrFVIIIaのモル/分/最初に存在したrFVIIIのモル(v/[rFVIII]
0)として表した。
【0082】
rFVIIIのO-結合グリコペグ化は、活性化rFVIIIの存在下での、FXのFIXa触媒された活性化のk
m又はk
cat、又はトロンビン触媒されたrFVIII活性化の速度に影響を与えなかった(表3を参照)。さらに、O-結合したグリコペグ化は、rFVIIIa-FIXa相互作用(K
1/2FIXa)の見かけK
dにも影響を与えなかった。
【0083】
図4は、種々のaPTT試薬を使用するO-グリコペグ化rFVIIIの凝固活性を表す。データは、凝固活性と発色活性との間の比率(A)として、又は凝固比活性(B)として示される。3つの独立した実験からの値の平均及び標準偏差を示す。
【0084】
【0085】
実施例6
FVIII KOマウスとvWF KOマウスにおけるグリコペグ化Bドメイン欠失型(BDD)-FVIIIの薬物動態
様々なPEGサイズでグリコペグ化されたBDD-FVIIIの薬物動態を、FVIII KOマウスへの、280IU/kgの静脈投与後に研究した。
【0086】
次の化合物を研究した:BDD-FVIII、BDD-FVIII-10K PEG(O-グリカン、0129-0000-1005)、BDD-FVIII-40K PEG(O-グリカン、0129-0000-1003)、BDD-FVIII-2×40K PEG(O及びN-グリカン、0129-0000-1008-1A)、BDD-FVIII-80K PEG(N-グリカン、0129-0000-1012、O-グリカン、0129-0000-1009)。
【0087】
動物研究の設計:
第VIII因子ノックアウト(FVIII KO)マウスを、C57B1/6バックグラウンドにおいて、エクソン16KOに基づき、タコニック(Taconic)M&Bで飼育した。約25gの体重で、19−26週の範囲の年齢のオスとメスの混合体を使用した。マウスは十分な戻し交配はしなかった。FVIIIはこのマウス系統では検出されなかった。
【0088】
マウスに、上に列挙した化合物を用いて尾部静脈に280IU/kgの単一静脈注射を与えた。マウスに静脈周囲投与がなされた場合は、マウスを他のマウスと交換した。投与後、非被覆キャピラリーガラスチューブを使用し、投与前から投与後64時間まで、眼窩神経叢の血液試料を収集した。各マウスから3つの試料を取り出し、各時点で、2、3又は4の試料を収集した。クエン酸ナトリウム(9:1)で血液を安定化させ、FVIII COA SPバッファー(1:4)に希釈し、4000gで5分間遠心分離した。希釈した血液から得られた血漿を−80℃に維持されたドライアイスで凍結させた後、FVIII発色活性及び/又はFVIII抗原分析により定量分析した。
【0089】
定量的血漿分析:
FVIII発色活性を、コアテストSPキット(Chromogenix)からの試薬を使用して測定した。希釈した血漿試料、コアテストSP-バッファーにおけるキャリブレーター(ILS calibration plasma)、及びバッファーネガティブコントロール(50μl)を、2通りの96-ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)に添加した。コアテストSPキットからの第IXa因子/第X因子試薬、リン脂質試薬、及びCaCl2を、5:1:3(容量:容量:容量)で混合し、この75μlをウェルに添加した。室温でインキュベートして15分後、50μlの第Xa因子基質S-2765/トロンビンインヒビターI-2581混合物を添加し、25μlの2%クエン酸を添加する前に、室温で10分、反応物をインキュベートした。405nmでの吸光度を、スペクトラマックスマイクロタイタープレートリーダー(Molecular Devices)で測定した。血漿試料におけるFVIII活性を、較正された国際血漿標準品(ILS)を希釈することにより作成された較正曲線から算出した。
【0090】
FVIII抗原アッセイは、ヒトFVIIIの軽鎖に対する2つのモノクローナル抗体を使用する、Diagnostica Stago (Asserachrom VIII:CAg)から商業的に入手可能なELISAキットであった。キャリブレーター(化合物の希釈)又は血漿試料をキットにより提供されたコアテストSP希釈バッファーで少なくとも50倍に希釈し、プレコートされたウェルに適用し、製造者の使用説明書に従ってELISAを実施した。薬物動態研究を報告するのに使用した値は、化合物自体から作成した標準曲線に基づく。
【0091】
薬物動態パラメータの推定:
薬物動態分析を、キャリブレーターとしてILSを使用し(発色活性に基づくデータ)、キャリブレーターとして化合物自体を使用する(ELISAに基づくデータ)データの非コンパートメント法(NCA)により実施した。データから、次のパラメータを推定した:Cmax(静脈投与後の最大濃度、これは最初のサンプリング時点である)、Tmax(静脈投与後の最大濃度の時間、これは最初の時点である)、AUO0-∞(時間0から無限大までの曲線下の面積)、T
1/2(終末半減期)、CL(クリアランス)、及びVss(定常状態での分布容量)。全ての計算は、WinNonlin Pro version 4.1を使用して実施した。
【0092】
280IU/KgのBDD-FVIII、BDD-FVIII-10KDa PEG、BDD-FVIII-40KDa PEG、BDD-FVIII-2×40KDa PEG、及びBDD-FVIII-80KDa PEGを、FVIII KOマウスに静脈注射した後、7.8時間(BDD-FVIII)〜15−16時間、PEGサイズの増加に伴い、半減期が増加したが(表4)、これは2倍の増加に相当する。同様に、クリアランスは低下し、MRTはPEGサイズの増加に伴い増加した(表4)。
【0093】
【0094】
結論:
280IU/kgをFVIII KOマウスに静脈投与した後、BDD-FVIIIと比較して、グリコペグ化BDD-FVIIIでは、T
1/2が1.3−2.1倍増加していた。PEG基のサイズが10KDaから80KDa PEGまでの範囲で増加する場合、T
1/2の増加も観察された。
【0095】
実施例7
血友病AマウスにおけるFeCl3誘発傷害モデルでのアドベイトと比較した40K-PEG-[O]-N8の長期間にわたる止血効果
組換えFVIII(アドベイト)に対する40K-PEG-[O]-N8の作用の持続時間を、血友病A(F8-KO)マウスのFeCl3誘発傷害モデルで研究した。
マウスに麻酔をかけ、体温を維持するために加熱パッド(37℃)に配した。頸動脈を暴露させ、超音波で血流を測定するフロープローブ(0.5PSB、ナノプローブ)を動脈周囲に配した。10%のFeCl3溶液に軽く浸した濾紙(2×5mm)を、暴露された頸動脈周囲に適用することにより、傷害(鉄媒介性の化学的酸化)を誘発させた。3分後に濾紙を除去した。ついで、0.9%のNaClを用いて動脈を3回洗浄し、フロープローブ中の空気を置換し、血流の最適化された測定を担保するために、最後にサーギルーブ(Surgilube)(音響カプラ)を適用した。FeCl3で飽和した濾紙を除去した後、25分間、血流(ml/分)を記録し、FeCl3で飽和した濾紙を除去してから、血流が0ml/分になるまでの時間(分)を測定することにより、閉塞までの時間を決定した。閉塞が25分後に生じなかった場合、観察期間中に閉塞が生じなくても、閉塞時間は25分と報告した。F8-KOマウス(n=6-10)をアドベイト(280U/kg)、40K-PEG-[O]-N8(280U/kg)、又はビヒクルで処置した。投与の5分(急性効果)、又は24、48、60、72時間後に、FeCl3誘発傷害となった。FeCl3の除去後25分間、血流(ml/分)を記録し、続いて、閉塞までの時間を決定した。
【0096】
ビヒクルで処置されたF8-KOマウスには閉塞は生じなかったが、40KDa-PEG-[O]-N8及びアドベイトで処置された全てのマウスでは、投与5分後(急性効果)に閉塞が生じ、閉塞時間の平均は、それぞれ4.3±0.4分と5.2±0.7分であった。40KDa-PEG-[O]-N8で処置されたF8-KOマウスにおいて、平均閉塞時間は、投与72時間後に、13.8±3.4分まで増加した。これに対し、アドベイトで処置されたF8-KOマウスは、24及び48時間後に、それぞれ13.0±3.4分及び15.9±2.9分の閉塞時間を有していた。重要なことには、アドベイトの投与後60及び72時間では、閉塞は観察されなかった。40KDa-PEG-[O]-N8で処置された全てのマウスにおいて、投与の24時間後に閉塞が観察されたが、アドベイトで処置されたマウスの67%のみに閉塞が生じた。40KDa-PEG-[O]-N8で処置されたマウスの63%では、72時間後も閉塞が見られたが、アドベイト投与の60及び72時間後には、閉塞は観察されなかった。
【0097】
F8-KOマウスにおける40KDa-PEG-[O]-N8の長期間にわたる効果
280IU/kgの40KDa-PEG-[O]-N8、280IU/kgのアドベイト、又はビヒクル投与の5分(急性効果)、又は24、48、60、72時間後に、FeCl3誘発傷害となった。FeCl3の除去後25分間、血流(ml/分)を記録し、続いて、閉塞までの時間を決定した。投与の60及び72時間後、アドベイトが投与されたマウスには、閉塞は生じなかった。グループ当たり6−10匹のマウスの平均及びSEMを示す。異なるグループ間の閉塞までの時間を、ダンポストテスト(Dunn’s post test)を含むクラスカル-ワリス検定を使用して比較した。*:p<0.05;**:p<0.01。
結論として、F8-KOマウスにおけるFeCl3誘発性傷害モデルでは、40KDa-PEG-[O]-N8の止血効果は、アドベイトと比較してかなり長い。