(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933510
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】MEMS加速度計
(51)【国際特許分類】
G01P 15/13 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
G01P15/13 C
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-239546(P2013-239546)
(22)【出願日】2013年11月20日
(62)【分割の表示】特願2009-232409(P2009-232409)の分割
【原出願日】2009年10月6日
(65)【公開番号】特開2014-55976(P2014-55976A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2013年11月20日
【審判番号】不服2015-11605(P2015-11605/J1)
【審判請求日】2015年6月19日
(31)【優先権主張番号】12/247,921
(32)【優先日】2008年10月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ダブリュー・ドワイヤー
【合議体】
【審判長】
森 竜介
【審判官】
関根 洋之
【審判官】
堀 圭史
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5425583(JP,B2)
【文献】
特開平9−243658(JP,A)
【文献】
特開平7−43377(JP,A)
【文献】
特開平10−335675(JP,A)
【文献】
特開2002−350459(JP,A)
【文献】
特表2003−519797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/13
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小電気機械システム(MEMS)加速度計(40)であって、
ヒンジタイプの屈曲部により吊るされるプルーフマス(42)と、
前記プルーフマス上に位置する、少なくとも1つの平面コイル(46、48)と、
前記コイルの平面に対して約30°から約60°の間の範囲の磁束角度で、磁束場が前記少なくとも1つのコイルを通るように位置決めされる少なくとも1つの磁石(50、52)と、を有する、MEMS加速度計。
【請求項2】
請求項1に記載のMEMS加速度計であって、前記少なくとも1つの磁石は、
前記プルーフマスの第1側部側に位置決めされる第1環状磁石(50)と、
前記プルーフマスの第2側部側に位置決めされる第2環状磁石(52)と、を有し、
前記第2環状磁石は、前記第1環状磁石の内側直径よりも小さな内側直径、および、前記第1環状磁石の外側直径よりも小さな外側直径を有する、MEMS加速度計。
【請求項3】
請求項1に記載のMEMS加速度計であって、さらに、前記少なくとも1つの磁石に連結される磁気戻り経路構造(41)を有し、磁気戻り経路構造は、前記プルーフマスの第1側部から前記プルーフマスの第2側部まで延びる、MEMS加速度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMEMS加速度計に関する。
【背景技術】
【0002】
コイルを備えるパドルタイプのプルーフマスを有する微小電気機械システム(Micro Electro-Mechanical System, MEMS)加速度計の典型的な構成は、大きな磁気抵抗値を備える磁気回路構成を有する。一般に、前述のコイルおよび磁気回路の構成は、磁場がらせんコイルの平面に平行に通るように構成される。磁場は、穴を用いて、プルーフマスを貫通する戻り経路を励起する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この構成における磁気戻り経路のギャップは、コイルの直径により画定され、従って、対応する磁気回路の大きな磁気抵抗に対して比較的大きく、高いスケールファクターとなる。このタイプのコイル構成は、加速度計をサーボするための電流レベルを必要とし、これが加熱効果を発生させて性能を低下させる非線形性を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、感度が改良され、大きな信号対雑音比、および低電力要求の、微小電気機械システム(MEMS)加速度計および加速度検出方法に関する。MEMS加速度計の一例は、少なくとも1つのヒンジタイプの屈曲部に吊るされたプルーフマス、プルーフマス上に位置する少なくとも1つの平面コイル、および、磁束場がコイル面に対して約30°から約60°の間で少なくとも1つの平面コイルを通過するように位置決めされる少なくとも1つの磁石、を有する。例示的な実施形態において、この角度は約45°である。
【0005】
本発明の一側面によれば、少なくとも1つの磁石は少なくとも1つの環状磁石を含む。
本発明のさらなる側面によれば、少なくとも1つの磁石は、プルーフマスの第1の側部上に位置決めされる第1環状磁石、および、プルーフマスの第2の側面上に位置決めされる第2環状磁石を含む。この第2環状磁石は、第1環状磁石の内側直径よりも小さな内側直径を備え、また、第1環状磁石の外側直径よりも小さい外側直径を備える。
【0006】
本発明の他の側面によれば、少なくとも1つの平面コイルは、プルーフマスの第1側部上に位置する第1平面コイルと、プルーフマスの第2側部上に位置する第2平面コイルと、を有する。
【0007】
本発明のさらなる側面によれば、本発明の方法は,MEMS加速度計のピックオフのキャパシタンスを検出し、検出したキャパシタンスに基づいて平面コイルに電流を通じることでMEMS加速度計を再度平衡させるステップを有する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態および代替実施形態が以下に図面とともに詳細に説明される。図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態により形成される微小電気機械システム(MEMS)加速度計のブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態により形成されるMEMS加速度計の断面側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態により形成されたプルーフマスの断面上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態により形成される微小電気機械システム(MEMS)加速度計システム20のブロック図である。MEMS加速度計システム20は、加速度計22および制御ユニット24を含む。制御ユニット24は、検出電子機器26および駆動電子機器28を含み、両者はMEMS加速度計22と信号通信できる。また、制御ユニット24は、制御装置30を含み、制御装置30は、検出電子機器部品26および駆動電子機器部品28と信号通信する。一般に、加速度計22は、少なくとも1つのヒンジタイプの屈曲部によりハウジング内に吊るされるプルーフマスを含み、また、少なくとも1つのヒンジタイプの屈曲部についてプルーフマスを再平衡させるための磁気再平衡要素を含む。磁気再平衡要素は、プルーフマス上に位置する少なくとも1つの平面コイルに電流を流すことにより加速度計22をサーボ駆動するためにローレンツ力を用い、プルーフマスは磁束場内に位置し、磁束場はコイル平面に対して約30°から約60°の間の角度で少なくとも1つの平面コイルを通過する。マルチセンサ環境における使用のためのいくつかの実施形態においては、加速度計22および/または加速度計システム20の周りに磁場シールドが存在してもよい。例示的な加速度計22のさらなる詳細は
図2とともに議論される。
【0011】
図2は、本発明の一実施形態により形成されるMEMS加速度計40の断面側面図である。加速度計40は、磁気戻り経路ハウジング構造41を含む。プルーフマス42は、ヒンジタイプの屈曲部44により吊るされ、屈曲部44は磁気戻り経路ハウジング構造41内の支持手段により支持される。第1コイル46は、プルーフマス42の第1側部上に位置する。第2コイル48は、プルーフマス42の第2側部上に位置する。第1コイル46および第2コイル48は平面であり、共通の軸を中心とする円形コイルである。第1コイル46は、第1コイル内側直径、第1コイル外側直径を備え、これらはそれぞれ第2コイル内側直径および第2コイル外側直径よりも大きい。例示的な実施形態において、第1コイル46および第2コイル48の各々は約10回巻であり、それぞれ約45ミクロン幅であり、各巻の間の空間は約15ミクロンであり、厚さが約0.5ミクロンである。しかし、いくつかの実施形態において、長円形または矩形のらせん構成のような他のコイル構成を用いてもよく、また、異なる巻数を用いてもよく、異なる寸法を用いてもよい。第1環状磁石50が、磁気戻り経路ハウジング構造41の頂部部品51の内側表面で、第1コイル46の上に位置する。第2環状磁石52が、磁気戻り経路ハウジング構造41のベース部品53の内側表面上で、第2コイル48の下に位置する。第1磁石50および第2磁石52は、たとえばサマリウムコバルト(SmCo)磁石とすることができる。磁気戻り経路ハウジング構造41は、第1磁石50の上の頂部部品51から、側壁リング55を通じて、第2磁石52の下の位置のベース部品53のところまで延びる。側壁リング55は、頂部部品51およびベース部品53の両者に取り付けられる。磁気戻り経路ハウジング構造41は、たとえば合金39のような合金で形成することができる。磁性を持ち、温度変化によるワーピング(warping)を最小化するシリコンに匹敵するよい熱膨張係数を備えるので合金39を挙げたが、他の実施形態において他の材料を用いることもできる。第1容量性ピックオフ58および第2容量性ピックオフ60がそれぞれプルーフマスの上および下に位置する。
【0012】
第1磁石50および第2磁石52は、第1および第2のコイル46、48の平面に対して約45度の磁束角度62で破線矢印により示される方向に、第1コイル46および第2コイル48を通る磁束場が形成されるように配置される。磁束場はいくつかの湾曲部を備えてもよいが、好ましくは、磁束場は第1および第2のコイル46、48の平面を通じてほぼ直線的である。磁場は、第1コイル46および第2コイル48の平面内の第1成分に対して説明することができ、また、第1コイル46および第2コイル48の平面に直交する第2成分に対して説明することができる。コイル46、48の平面内の第1成分は、プルーフマスの平面に垂直なサーボ方向における有効な力を提供するために、コイル46、48を通る電流に関連させて用いられる。コイル46、48を通る電流に関連する第2成分は、コイル46、48に半径方向の力を付与し、これはコイル46、48およびプルーフマス42により支持される。いくつかの実施形態において、磁石50、52および磁気戻り経路ハウジング構造41が取り付けられる前に、加速度計40のいくつかの部品をシールするために、第1および/または第2の磁石50、52をプルーフマス42およびコイル46、48から隔離するためにパイレックス(Pyrex)(登録商標)の層(図示せず)を用いることができる。
【0013】
第1磁石50および第2磁石52は、第1および第2のコイル46、48に面する磁石50、52の表面に対して約45°の角度のほぼ線形の磁束角度を生じさせるように磁荷が与えられる。例示的な一実施形態において、磁石50、52は、第1コイル46および第2コイル48のそれぞれ面する各磁石50、52の表面に対して約90°の角度で、環状磁石50、52の中心軸について半径方向内側に磁荷が与えられる。約45°の磁束角度を形成するように磁石50に磁荷が与えられる方向は、例示的な一実施形態において、磁石および磁石の互いに対する位置、および加速度計40の他の部品に対する位置、の有限要素解析モデルを用いて決定することができる。第1磁石50および第2磁石52は、各磁石50、52の磁束線の方向ベクトルが符号するように、頂部部品51およびベース部品53に接続される。第1コイル46および第2コイル48の中心軸に垂直な方向における磁束場の成分は、加速度計40のプルーフマス42をサーボするために用いられる。例示的な一実施形態において、これは、典型的な構成と比較して、加熱効果を低減するのを助ける。これは、第1および第2のコイル46、48を通る電流と、コイル46、48の中心軸に垂直な磁束場の成分のベクトル積が、典型的な構成におけるものよりも多くの磁束および少ない電流から構成されるからである。磁石50、52は異なる半径で示されているが、他の実施形態において、ほぼ等しい内側径および外側径を備える磁石を用いることもできる。このような実施形態において、望ましい45°の磁束角度62がコイル46、48を通るように、磁石の磁荷の角度は、約90°ではなく約45°とすることができる。
【0014】
例示的な一実施形態において、第1コイル46および第2コイル48は、
図1に示される駆動電子機器28のような駆動要素に電気的に接続されている。第1および第2の容量性ピックオフ58、60は、
図1に示される検出電子機器26のような検出要素と信号通信する。加速度計40を取り囲むセンサパッケージのような他の要素(明確さのために図示しない)を含むこともできる。
【0015】
加速度計40は、プルーフマス42の平面に垂直な成分を備える加速度に対して感度がある。この加速度は、第1および第2の容量性ピックオフ58、60に接続された検出電子機器26により検出される。いくつかの実施形態において、微分キャパシタンスが検出される。検出したキャパシタンスに基づいて加速度計40を再平衡させる力を発生させるために、駆動電子機器28により、適切な電流が第1および第2のコイル46、48に流される。制御装置30は、所定のキャリブレーションおよび検出したキャパシタンスに基づいて、駆動信号を駆動電子機器28に送る。プルーフマス42の平面に垂直な加速度の成分は、プルーフマス42を再平衡させるのに必要な電流レベルに基づいて決定される。
【0016】
図3は、本発明の例示的な一実施形態により形成される
図2に示されるプルーフマス42の断面上面図である。第1コイル46、ヒンジタイプの屈曲部44、および容量性ピックオフ58の第1パッド58−1が図示されている。
【0017】
一般に、加速度計22、40は、シリコンウェハから始まり、パターン形成およびエッチングにより、支持構造に取り付けられたヒンジタイプの屈曲部を備えるいくつかのぶらさがったプルーフマス素子により形成される。このウェハは、金属配線を支持するために誘電体層を生成するために酸化される。さらにパターン化および金属配線のステップは、微分容量性ピックオフを形成し、また平面らせんコイルのための基本素子を形成する。コイルの内側の輪郭は、らせんコイルに渡って誘電体層を配置することを介して形成され、これに第2の金属配線ステップが続く。シリコンウェハと同じ直径を備えるガラスウェハがパターン化され、エッチングされ、金属配線されて、微分容量性ピックオフの第2プレートとして機能しさらに制御装置の減衰を制御するように機能する表面に凹部を生成する。第1ガラスウェハは、シリコンウェハに整列され、陽極接続されて下容量プレートを形成する。このアセンブリは、第2ガラスウェハに陽極接続され、微分容量ピックオフのための上のキャパシタを形成する。シリコンおよびガラスのウェハアセンブリは、ダイシングされ、個別のセンサにアクセスできるようになる。下の磁石は、磁気戻り経路ハウジング構造のベース部品に取り付けられ、戻り経路ハウジング構造の側壁リング部品がベース部品に取り付けられ、ウェハアセンブリからのセンサが側壁リング内に配置され、ベース部品に取り付けられ、上磁石が戻り経路ハウジング構造の頂部部品に取り付けられ、頂部部品が側壁リングに取り付けられる。これらの磁石は、らせんコイルの平面を約45°で通る磁束場を生成する所定の方向に磁荷が与えられる。代替的に、磁石の一方または両方は、磁気戻り経路ハウジング構造に取り付ける前に磁荷が与えられる。これらの磁石は、これらの磁石がらせんコイルに相互作用する磁場を生成するために、コイルの上および下に配置されるように、戻り経路構造に取り付けられる。ここで、ウェハアセンブリ、磁石および磁気戻り経路ハウジング構造を含む加速度計は、パッケージ、試験、および加速度計システムへの統合のための準備ができている。1つのコイルだけが言及されたが、
図2で説明した第2コイルのような追加のコイルを上述のコイルと同様の手法で追加できることを理解されたい。
【0018】
例示的な一実施形態において、
図1、2の加速度計22および40は、パターンを酸化し、プルーフマスおよび少なくとも1つのヒンジタイプの屈曲部をシリコンウェハ上に深堀り反応性イオンエッチングにより形成することにより形成される。次に、らせんコイルおよびピックオフを、プルーフマス上に金属で形成する。らせんコイルおよびピックオフはたとえば金により形成できる。その後、絶縁層をコイルの部分にわたってスパッタリングにより形成する。追加的なトレースを絶縁層にわたって金属配線し、コイルの内側部分への接続部を形成する。その後、たとえばホウケイ酸塩パイレックスのようなガラスで形成できる第1ハウジング部分をエッチングして、キャパシタおよびプルーフマス上のトレースへのアクセスのための貫通穴のための凹部を生成する。その後、第1ハウジング部分は金属で形成されて、容量性ピックオフの一部を形成する。同様の方法で、第2ハウジング部分がエッチングされて金属で形成される。第1および第2のハウジング部分は、たとえばハウジング部分をウェハ層に陽極接続することにより、プルーフマスを含むウェハ層に取り付けられる。いくつかの実施形態において、極部品および/または戻り経路構造のための穴を形成するために、貫通穴をウェハアセンブリ内で超音波加工できる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態が上述のように図示および説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの変更が可能である。たとえば、2つの環状磁石を用いるのではなく、いくつかの実施形態において、複数の個別的な磁石をプルーフマスの両側において使用してもよい。さらに、所定角度で極性が与えられる磁石を用いるのではなく、コイルを通る所望の角度に磁束場を向けるために、1つまたはそれ以上の極部品を用いてもよい。また、単一の磁気戻り経路構造を用いるのではなく、特に、環状磁石ではなく複数の磁石が用いられる実施形態においては、複数の戻り経路構造を用いてもよい。単一層のコイルだけが説明されたが、いくつかの実施形態においては1つ以上の層を備えるコイルを用いてもよい。本発明は添付の特許請求の範囲により完全に決定される。