【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、プロテアソームの1以上のペプチダーゼ活性の有効な阻害剤である化合物を提供する。これらの化合物は、インビトロおよびインビボでプロテアソーム活性を阻害するために有用であり、種々の細胞増殖性疾患の治療に特に有用である。
【0014】
本発明の化合物は、一般式(I):
【化1】
を有するもの、またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物であり、式中:
Aは、0、1、または2であり;
Pは、水素またはアミノ基ブロッキング部分であり;
各R
a2は独立して、水素、C
1〜6脂肪族、C
1〜6フルオロ脂肪族、−(CH
2)
m−CH
2−R
B、−(CH
2)
m−CH
2−NHC(=NR
4)NH−Y、−(CH
2)
m−CH
2−CON(R
4)
2、−(CH
2)
m−CH
2−N(R
4)CON(R
4)
2、−(CH
2)
m−CH(R
6)N(R
4)
2、−(CH
2)
m−CH(R
5)−OR
5、または−(CH
2)
m−CH(R
5)−SR
5であり;
各Yは独立して、水素、−CN、−NO
2、または−S(O)
2−R
10であり;
各R
Bは独立して、置換もしくは非置換の単環式または二環式環系であり;
各R
4は独立して、水素あるいは置換もしくは非置換の脂肪族、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロサイクリル基であるか;または同じ窒素原子上の2個のR
4は、窒素原子と一緒になって、窒素原子に加えて、N、O、およびSから独立して選択される0〜2個の環ヘテロ原子を有する置換もしくは非置換4〜8員ヘテロサイクリル環を形成し;
各R
5は独立して、水素あるいは置換もしくは非置換の脂肪族、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロサイクリル基であり;
各R
6は独立して、置換もしくは非置換の脂肪族、アリール、またはヘテロアリール基であり;
各R
10は独立して、C
1〜6脂肪族、C
1〜6アリール、または−N(R
4)
2であり;
mは、0、1、または2であり;そして
Z
1およびZ
2は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、もしくはアルアルコキシであるか;またはZ
1およびZ
2は、一緒になって、ボロン酸錯化剤から誘導される部分を形成する。
【0015】
特に明確に記載しない限り、「プロテアソーム」という用語は、構成的プロテアソーム、免疫プロテアソーム、または両者を指すことが意図される。
【0016】
「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書中で用いられる場合、置換もしくは非置換の直鎖、分枝、または環状C
1〜12炭化水素であって、完全に飽和しているか、または1以上の不飽和単位を含有するが、芳香族でないものを意味する。例えば、好適な脂肪族基としては、置換もしくは非置換の直線状、分枝、または環状アルキル、アルケニル、あるいはアルキニル基およびそのハイブリッド、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルが挙げられる。種々の実施形態において、脂肪族基は、1〜12、1〜8、1〜6、1〜4、または1〜3個の炭素を有する。
【0017】
「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、単独で、またはさらに大きな部分の一部として用いられる場合、1〜12個の炭素原子を有する直線状または分枝状鎖脂肪族基を指す。本発明に関して、「アルキル」という用語は、脂肪族基を分子の残りに結合させる炭素原子が飽和炭素原子である場合に用いられる。しかし、アルキル基は、他の炭素原子で不飽和を含み得る。したがって、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、アリル、プロパルギル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明に関して、「アルケニル」という用語は、脂肪族基を分子の残りに結合させる炭素原子が炭素−炭素二重結合の部分を形成する場合に用いられる。アルケニル基としては、ビニル、1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、および1−ヘキセニルが挙げられるが、これら限定されない。
【0019】
本発明に関して、「アルキニル」という用語は、脂肪族基を分子の残りに結合させる炭素原子が炭素−炭素三重結合の部分を形成する場合に用いられる。アルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、1−ペンチニル、および1−ヘキシニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
「脂環式」という用語は、単独で、またはさらに大きな部分の一部として用いられる場合、3〜約14員飽和または部分不飽和環状脂肪族環系を指し、ここで、脂肪族環系は、場合によって置換されている。いくつかの実施形態において、脂環式とは、3〜8個または3〜6個の環炭素原子を有する単環式炭化水素である。非限定的例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、およびシクロオクタジエニルが挙げられる。いくつかの実施形態において、脂環式とは、6〜12、6〜10、または6〜8個の環炭素原子を有する架橋または縮合二環式炭化水素であり、ここで、二環式環系における任意の個々の環は3〜8員を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、脂環式環上の2個の隣接する置換基は、介在する環原子と一緒になって、O、N、およびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を有する、場合によって置換された縮合5〜6員芳香族または3〜8員非芳香族環を形成する。したがって、「脂環式」という用語は、1以上のアリール、ヘテロアリール、またはヘテロサイクリル環と縮合した脂肪族環を包含する。非限定的例としては、インダニル、5,6,7,8-テトラヒドロ-キノキサリニル、デカヒドロナフチル、またはテトラヒドロナフチルが挙げられ、ここで、ラジカルまたは結合点は脂肪族環上にある。
【0022】
「アリール」および「アル−」という用語は、単独で、または例えば「アルアルキル」、「アルアルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」などのさらに大きな部分の一部として用いられる場合、1〜3個の環であって、そのそれぞれが場合によって置換されたものを含むC
6〜C
14芳香族炭化水素を指す。好ましくは、アリール基はC
6〜10アリール基である。アリール基としては、フェニル、ナフチル、およびアントラセニルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、アリール環上の2個の隣接する置換基は、介在する環原子と一緒になって、O、N、およびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を有する、場合によって置換された縮合5〜6員芳香族または4〜8員非芳香族環を形成する。したがって、「アリール」という用語は、本明細書中で用いられる場合、アリール環が1以上のヘテロアリール、脂環式、またはヘテロサイクリル環と縮合している基を包含し、ここで、ラジカルまたは結合点は芳香族環上にある。縮合環系の非限定的例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、フルオレニル、インダニル、フェナンスリジニル、テトラヒドロナフチル、インドリニル、フェノキサジニル、ベンゾジオキサニル、およびベンゾジオキソリルが挙げられる。アリール基は、単環式、二環式、三環式、または多環式であり得、好ましくは単環式、二環式、または三環式であり得、さらに好ましくは単環式または二環式であり得る。「アリール」という用語は、「アリール基」、「アリール部分」および「アリール環」という用語と交換可能に用いることができる。
【0023】
「アルアルキル」または「アリールアルキル」基は、アルキル基に共有結合したアリール基を含み、そのいずれも、独立して場合によって置換されている。好ましくは、アルアルキル基は、C
6〜10アリール(C
1〜6)アルキル、C
6〜10アリール(C
1〜4)アルキル、またはC
6〜10アリール(C
1〜3)アルキル、例えばこれらに限定されるものではないが、ベンジル、フェネチル、およびナフチルメチルである。
【0024】
「ヘテロアリール」および「ヘテロアル−」という用語は、単独で、または例えば、ヘテロアルアルキルもしくは「ヘテロアルアルコキシ」などのさらに大きな部分の一部として用いられる場合、5〜14個の環原子、好ましくは、5、6、9、もしくは10個の環原子を有し;環状アレイ中で共有される6、10、もしくは14個のπ電子を有し;そして炭素原子に加えて、1〜4個のヘテロ原子を有する基を指す。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、または硫黄を指し、窒素または硫黄の任意の酸化形態、および塩基性窒素の任意の四級化形態を包含する。したがって、ヘテロアリールの環原子に関連して用いられる場合、「窒素」という用語は、酸化窒素(ピリジンN−オキシドにおいてなど)を包含する。5員ヘテロアリール基のある窒素原子はまた、以下でさらに定義するように、置換可能である。ヘテロアリール基としては、これらに限定されるものではないが、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、インドリジン、ナフチリジン、プテリジン、ピロロピリジン、イミダゾピリジン、オキサゾロピリジン、チアゾロピリジン、トリアゾロピリジン、ピロロピリミジン、プリン、およびトリアゾロピリミジンから誘導されるラジカルが挙げられる。本明細書中で用いられる場合、「〜から誘導されるラジカル」という語句は、親ヘテロ芳香族環系から水素ラジカルを除去することによって生じる一価ラジカルを意味する。ラジカル(すなわち、分子の残りへのヘテロアリールの結合点)は、親ヘテロアリール環系の任意の環上の任意の置換可能な位置で生成される可能性がある。
【0025】
いくつかの実施形態において、ヘテロアリール上の2個の隣接する置換基は、介在する環原子と一緒になって、O、N、およびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を有する、場合によって置換された縮合5〜6員芳香族または4〜8員非芳香族環を形成する。したがって、「ヘテロアリール」および「ヘテロアル−」という用語は、本明細書中で用いられる場合、ヘテロ芳香族環が1以上のアリール、脂環式、またはヘテロサイクリル環と縮合している基も包含し、ここで、ラジカルまたは結合点はヘテロ芳香族環上にある。非限定的例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H−キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3−b]−1,4−オキサジン−3(4H)−オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式、または多環式であり得、好ましくは単環式、二環式、または三環式であり得、さらに好ましくは単環式または二環式であり得る。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、または「ヘテロアリール基」という用語と交換可能に用いることができ、そのいずれも、場合によって置換された環を包含する。「ヘテロアルアルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキル基を指し、ここで、アルキルおよびヘテロアリール部分は、独立して、場合によって置換されている。
【0026】
本明細書中で用いられる場合、「芳香族環」および「芳香族環系」という用語は、0〜6個、好ましくは0〜4個の環ヘテロ原子を有し、そして環状アレイで共有される6、10、または14個のπ電子を有する、場合によって置換された単環式、二環式、または三環式基を指す。したがって、「芳香族環」および「芳香族環系」という用語は、アリールおよびヘテロアリール基の両方を包含する。
【0027】
本明細書中で用いられる場合、「複素環」、「ヘテロサイクリル」、「複素環ラジカル」および「複素環」という用語は、交換可能に用いられ、安定な3〜7員単環式、または前記定義のように、飽和もしくは部分不飽和のいずれかであり、炭素原子に加えて1以上の、好ましくは1〜4個のヘテロ原子を有する縮合7〜10員もしくは架橋6〜10員二環式複素環部分を指す。複素環の環原子に関連して用いられる場合、「窒素」という用語は、置換窒素を包含する。一例として、酸素、硫黄または窒素から選択される1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロサイクリル環において、窒素は、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおいてなど)、NH(ピロリジニルにおいてなど)、または
+NR(N−置換ピロリジニルにおいてなど)であり得る。複素環を任意のヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基に結合させることができ、その結果、安定な構造が得られ、環原子のいずれも場合によって置換されている可能性がある。そのような飽和または部分不飽和複素環式ラジカルの例としては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびキヌクリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態において、複素環上の2個の隣接する置換基は、介在する環原子と一緒になって、O、N、およびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を有する、場合によって置換された縮合5〜6員芳香族または3〜8員非芳香族環を形成する。したがって、「複素環」、「ヘテロサイクリル」、「ヘテロサイクリル環」、「複素環基」、「複素環部分」、および「複素環ラジカル」という用語は、本明細書中で交換可能に用いられ、ヘテロサイクリル環が1以上のアリール、ヘテロアリール、または脂環式環と縮合した基、例えば、インドリニル、3H−インドリル、クロマニル、フェナンスリジニル、またはテトラヒドロキノリニルが挙げられ、ここで、ラジカルまたは結合点はヘテロサイクリル環上にある。ヘテロサイクリル基は、単環、二環、三環、または多環であり得、好ましくは、単環、二環、または三環であり、さらに好ましくは単環または二環である。「ヘテロサイクリルアルキル」という用語は、ヘテロサイクリルで置換されたアルキルを指し、ここで、アルキルおよびヘテロサイクリル部分は、独立して場合によって置換されている。
【0029】
本明細書中で用いられる場合、「部分不飽和」とは、環原子間に少なくとも1つ二重または三重結合を含む環部分を指す。「部分不飽和」という用語は、複数の不飽和部位を有する環を包含することが意図されるが、本明細書中で定義されるような、アリールまたはヘテロアリール部分を含むことは意図されない。
【0030】
「ハロ脂肪族」、「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」という用語は、脂肪族、アルキル、アルケニルまたはアルコキシ基を指し、これは、場合によっては、1以上のハロゲン原子で置換されている。本明細書中で用いられる場合、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。「フルオロ脂肪族」という用語は、過フッ素化脂肪族基をはじめとする、ハロゲンがフルオロであるハロ脂肪族を指す。フルオロ脂肪族基の例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1,1,2−トリフルオロエチル、1,2,2−トリフルオロエチル、およびペンタフルオロエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「リンカー基」または「リンカー」は、化合物の2つの部分を連結する有機部分を意味する。リンカーは、典型的には、酸素または硫黄などの原子、−NH−、−CH
2−、−C(O)−、−C(O)NH−などの単位、またはアルキレン鎖などの原子の鎖を含む。リンカーの分子量は、典型的には、約14〜200の範囲、好ましくは14〜96の範囲であり、約6原子までの長さである。いくつかの実施形態において、リンカーはC
1〜6アルキレン鎖である。
【0032】
「アルキレン」という用語は、二価アルキル基を指す。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち−(CH
2)
x−であり、式中、xは正の整数であり、好ましくは1〜6、1〜4、1〜3、1〜2、または2〜3である。置換アルキレン鎖は、1以上のメチレン水素原子が置換基で置換されているポリメチレン基である。好適な置換基としては、置換脂肪族基について後述するものが挙げられる。アルキレン鎖はさらに、1以上の位置で、脂肪族基または置換脂肪族基で置換されていてもよい。
【0033】
アルキレン鎖はさらに、場合によって官能基により中断されている可能性がある。内部メチレン単位が官能基で置換されている場合に、アルキレン鎖は官能基によって「中断される」。好適な「中断」官能基の非限定的例としては、−C(R
*)=C(R
*)−、−C≡C−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)
2−、−S(O)
2N(R
+)−、−N(R
*)−、−N(R
+)CO−、−N(R
+)C(O)N(R
+)−、−N(R
+)C(=NR
+)−N(R
+)−、−N(R
+)−C(=NR
+)−、−N(R
+)CO
2−、−N(R
+)SO
2−、−N(R
+)SO
2N(R
+)−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)N(R
+)−、−C(O)−、−CO
2−、−C(O)-N(R
+)−、−C(O)−C(O)−、−C(=NR
+)−N(R
+)−、−C(NR
+)=N−、−C(=NR
+)−O−、−C(OR
*)=N−、−C(Ro)=N−O−、または−N(R
+)−N(R
+)−が挙げられる。各R
+は独立して、水素または場合によって置換された脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロサイクリル基であるか、あるいは同じ窒素原子上の2個のR
+は、窒素原子と一緒になって、窒素原子に加えて、N、O、およびSから選択される0〜2個の環ヘテロ原子を有する5〜8員芳香族または非芳香族環を形成する。各R
*は独立して、水素または場合によって置換された脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロサイクリル基である。
【0034】
−O−で「中断」されたC
3〜6アルキレン鎖の例としては、例えば、−CH
2OCH
2−、−CH
2O(CH
2)
2−、−CH
2O(CH
2)
3−、−CH
2O(CH
2)
4−、−(CH
2)
2OCH
2−、−(CH
2)
2O(CH
2)
2−、−(CH
2)
2O(CH
2)
3−、−(CH
2)
3O(CH
2)−、−(CH
2)
3O(CH
2)
2−、および−(CH
2)
4O(CH
2)−が挙げられる。官能基で「中断」されたアルキレン鎖の他の例としては、−CH
2ZCH
2−、−CH
2Z(CH
2)
2−、−CH
2Z(CH
2)
3−、−CH
2Z(CH
2)
4−、−(CH
2)
2ZCH
2−、−(CH
2)
2Z(CH
2)
2−、−(CH
2)
2Z(CH
2)
3−、−(CH
2)
3Z(CH
2)−、−(CH
2)
3Z(CH
2)
2−、および−(CH
2)
4Z(CH
2)−(ここで、Zは前述の「中断」官能基のうちの1つである)が挙げられる。
【0035】
当業者は、中断を有するアルキレン鎖が官能基に結合している場合、ある組み合わせが製薬学的用途に関して十分に安定でないことを認識するであろう。同様に、T
1およびR
2c、またはT
2およびR
2dのある組み合わせは、製薬学的用途に関して十分に安定でない。安定または化学的に実現可能な化合物だけが本発明の範囲内に含まれる。安定または化学的に実現可能な化合物は、患者に対する治療的または予防的投与に有用であるために十分な期間、その完全性を維持するものである。好ましくは、化学構造造は、水分または他の化学的に反応性の条件の非存在下で少なくとも1週間、−70℃未満、−50℃未満、−20℃未満、0℃未満、または20℃未満の温度で維持される場合に、実質的に変更されない。
【0036】
「置換された」という用語は、本明細書中で用いられる場合、指定された部分の水素ラジカルが特定の置換基のラジカルで置換されていることを意味する。ただし、この置換の結果、安定または化学的に実現可能な化合物が得られるものとする。「置換可能な」という用語は、指定された原子に関連して用いられる場合、原子に結合しているのが水素ラジカルであり、これを好適な置換基のラジカルで置換することができることを意味する。
【0037】
「1以上の置換基」という語句は、本明細書中で用いられる場合、利用可能な結合部位の数に基づいて可能な、1個から最大数までの置換基に相当する複数の置換基を指す。ただし、安定性および化学的実行可能性の前記条件が満たされるものとする。別段の指定がない限り、場合によって置換された基は、その基の各置換可能な位置で置換基を有し得、その置換基は、同じかまたは異なるかのいずれかであり得る。
【0038】
本明細書中で用いられる場合、「独立して選択される」という用語は、同一または異なる値を、単一の化合物中の所定の変数の複数の例について選択することができることを意味する。
【0039】
アリール(アルアルキル、アルアルコキシ、アリールオキシアルキルなどにおけるアリール部分を包含する)またはヘテロアリール(ヘテロアルアルキルおよびヘテロアルアルコキシなどのヘテロアリール部分を包含する)基は、1以上の置換基を含有し得る。アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の好適な置換基の非限定的例としては、−ハロ、−NO
2、−CN、−R
*、−C(R
*)=C(R
*)
2、−C≡C−R
*、−OR
*、−SRo、−S(O)Ro、−SO
2Ro、−SO
3R
*、−SO
2N(R
+)
2、−N(R
+)
2、−NR
+C(O)R
*、−NR
+C(O)N(R
+)
2、−N(R
+)C(=NR
+)−N(R
+)
2、−N(R
+)C(=NR
+)−Ro、−NR
+CO
2Ro、−NR
+SO
2Ro、−NR
+SO
2N(R
+)
2、−O−C(O)R
*、−O−CO
2R
*、−OC(O)N(R
+)
2、−C(O)R
*、−CO
2R
*、−C(O)−C(O)R
*、−C(O)N(R
+)
2、−C(O)N(R
+)−OR
*、−C(O)N(R
+)C(=NR
+)−N(R
+)
2、−N(R
+)C(=NR
+)−N(R
+)−C(O)R
*、−C(=NR
+)−N(R
+)
2、−C(=NR
+)−OR
*、−N(R
+)−N(R
+)
2、−C(=NR
+)−N(R
+)−OR
*、−C(Ro)=N−R
*、−P(O)(R
*)
2、−P(O)(OR
*)
2、−O−(O)−OR
*、および−P(O)(NR
+)−N(R
+)
2が挙げられ、ここで、Roは、場合によって置換された脂肪族、アリール、またはヘテロアリール基であり、R
+およびR
*は、前記定義のとおりであるか、または2個の隣接する置換基は、それらの介在する原子と一緒になって、N、O、およびSからなる群から選択される0〜3個の環原子を有する5〜6員不飽和または部分不飽和環を形成する。
【0040】
脂肪族基または非芳香族複素環は、1以上の置換基で置換されていてもよい。非芳香族複素環の脂肪族基の飽和炭素上の好適な置換基の例としては、アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素について前述したもの、および以下のもの:=O、=S、=C(R
*)
2、=N−N(R
*)
2、=N−OR
*、=N−NHC(O)R
*、=N−NHCO
2Ro、=N−NHSO
2Ro、または=N−R
*(ここで、各R
*およびRoは前記定義のとおりである)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
ヘテロアリールまたは非芳香族複素環の置換可能な窒素原子上の好適な置換基としては、これらに限定されるものではないが、−R
*、−N(R
*)
2、−C(O)-R
*、−CO
2R
*、−C(O)−C(O)R
*−C(O)CH
2C(O)R
*、−SO
2R
*、−SO
2N(R
*)
2、−C(=S)N(R
*)
2、−C(=NH)−N(R
*)-
2、および−NR
*SO
2R
*が挙げられ;ここで、各R
*は前記定義のとおりである。ヘテロアリールまたは非芳香族複素環の環窒素原子はまた、酸化されて対応するN−ヒドロキシまたはN−オキシド化合物を形成することができる。酸化環窒素原子を有するそのようなヘテロアリールの非限定的例はN−オキシドピリジルである。
【0042】
「約」という用語は、本明細書中で用いられる場合、およそ、周辺、大体、または前後を意味する。「約」という用語が数値範囲と関連して用いられる場合、それは、記載された数値の上下に境界を拡大することによって範囲を修飾する。一般的に、「約」という用語は、本明細書において、10%の差異により表示された値の上下で数値範囲を修飾する。
【0043】
本明細書中で用いられる場合、「含む」という用語は、「包含するが、限定されない」ことを意味する。
【0044】
本発明のある化合物が互変異性形態で存在し得、化合物のそのような互変異性形態はすべて本発明の範囲内に含まれることは、当業者には明らかであろう。特に別段の記載がない限り、本明細書中で示される構造はまた、全ての幾何学的(または立体配置的)異性体、すなわち、(Z)および(E)二重結合異性体ならびに(Z)および(E)立体配置的異性体、ならびに構造の全立体化学的形態;すなわち、各不斉中心についてRおよびS配置を包含することも意味する。したがって、1つの立体化学的異性体ならびに本発明の化合物のエナンチオマーおよびジアステレオマー混合物は本発明の範囲内に含まれる。混合物が1つの立体異性体を別の立体異性体に対して多く含む場合、混合物は、少なくとも50%、75%、90%、99%、または99.5%過剰のエナンチオマーを含有し得る。
【0045】
特に別段の記載がない限り、本明細書中で示される構造はさらに、1以上の同位体的に濃縮された原子の存在によってのみ異なる化合物を含むことも意味する。例えば、重水素またはトリチウムによって水素原子が置換されているか、または
13C−もしくは
14C−濃縮炭素によって炭素原子が置換されている以外は本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0046】
式(I)の化合物において、変数Pは水素またはアミノ基ブロッキング部分である。アミノ基ブロッキング部分の非限定的例は、P.G.M. Wuts and T.W. Greene, Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(4
th ed.), John Wiley & Sons, NJ(2007)で見出すことができ、例えば、アシル、スルホニル、オキシアシル、およびアミノアシル基が挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態において、Pは、R
c−C(O)−、R
c−O−C(O)−、R
c−N(R
4c)−C(O)−、R
c−S(O)
2−、またはR
c−N(R
4c)−S(O)
2−であり、ここで、R
cは、C
1〜6脂肪族、C
1〜6フルオロ脂肪族、−R
D、−T
1−R
D、および−T
1−R
2cからなる群から選択され、変数T
1、R
D、R
2c、およびR
4cは後述される値を有する。
【0048】
変数R
4は、水素、C
1〜4アルキル、C
1〜4フルオロアルキル、またはC
6〜10アル(C
1〜4)アルキルであり、そのアリール部分は置換されているかまたは置換されていない。いくつかの実施形態において、R
4cは、水素またはC
1〜4アルキルである。ある特定の実施形態において、R
4cは水素である。
【0049】
変数T
1は、0〜2個の独立して選択されるR
3aまたはR
3bで置換されたC
1〜6アルキレン鎖であり、ここで、アルキレン鎖は、場合によって、−C(R
5)=C(R
5)−、−C≡C−、または−O−によって中断されている。各R
3aは独立して、−F、−OH、−O(C
1〜4アルキル)、−CN、−N(R
4)
2、−C(O)(C
1〜4アルキル)、−CO
2H、−CO
2(C
1〜4アルキル)、−C(O)NH
2、および−C(O)−NH(C
1〜4アルキル)からなる群から選択される。各R
3bは独立して、場合によってR
3aまたはR
7で置換されたC
1〜3脂肪族である。各R
7は、置換または非置換芳香族基である。いくつかの実施形態において、T
1はC
1〜4アルキレン鎖である。
【0050】
変数R
2cは、ハロ、−OR
5、−SR
6、−S(O)R
6、−SO
2R
6、−SO
2N(R
4)
2、−N(R
4)
2、−NR
4C(O)R
5、−NR
4C(O)N(R
4)
2、−NR
4CO
2R
6、−N(R
4)SO
2R
6、−N(R
4)SO
2N(R
4)
2、−O−C(O)R
5、−OC(O)N(R
4)
2、−C(O)R
5、−CO
2R
5、または−C(O)N(R
4)
2であり、ここで:
各R
4は独立して、水素または場合によって置換された脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロサイクリル基であるか;あるいは同じ窒素原子上の2個のR
4は、窒素原子と一緒になって、窒素原子に加えて、N、O、およびSから独立して選択される0〜2個の環ヘテロ原子を有する場合によって置換された4〜8員ヘテロサイクリル環を形成し;
各R
5は独立して、水素または場合によって置換された脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロサイクリル基であり;そして
各R
6は独立して、場合によって置換された脂肪族、アリール、またはヘテロアリール基である。
【0051】
変数R
Dは、置換または非置換芳香族、ヘテロサイクリル、または脂環式環であり、そのいずれも、場合によって、置換もしくは非置換の芳香族、ヘテロサイクリルまたは脂環式環に縮合している。R
D中の各飽和環炭素原子は、置換されていないか、または=O、R
d、もしくはR
8dで置換されている。R
D中の各不飽和環炭素は置換されていないか、またはR
dもしくはR
8dで置換されている。R
D中の各置換可能な環窒素原子は、置換されていないか、あるいは−C(O)R
5、−C(O)N(R
4)
2、−CO
2R
6、−SO
2R
6、−SO
2N(R
4)
2、C
1〜4脂肪族、置換もしくは非置換のC
6〜10アリール、またはC
6〜10アル(C
1〜4)アルキルで置換され、そのアリール部分は置換されているかまたは置換されていない。
【0052】
いくつかの実施形態において、R
D中の1または2個の飽和環炭素原子は=Oで置換され;R
D中の残りの置換可能な環炭素原子は、0〜2個のR
dおよび0〜2個のR
8dで置換され;そしてR
D中の各置換可能な環窒素原子は、置換されていないか、あるいは−C(O)R
5、−C(O)N(R
4)
2、−CO
2R
6、−SO
2R
6、−SO
2N(R
4)
2、C
1〜4脂肪族、置換もしくは非置換のC
6〜10アリール、またはC
6〜10アル(C
1〜4)アルキルで置換され、そのアリール部分は置換されているかまたは置換されていない。
【0053】
各R
dは独立して、C
1〜6脂肪族、C
1〜6フルオロ脂肪族、ハロ、−R
1d、−R
2d、−T
2−R
1d、および−T
2−R
2dからなる群から選択され、ここで、変数T
2、R
1d、R
2d、およびR
8dは、後述する値を有する。
【0054】
T
2は、0〜2個の独立して選択されるR
3aまたはR
3bで置換されたC
1〜6アルキレン鎖であり、ここで、アルキレン鎖は場合によって、−C(R
5)=C(R
5)−、−C≡C−、または−O−によって中断されている。変数R
3aおよびR
3bは前述の値を有する。
【0055】
各R
1dは独立して、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、または脂環式環である。
【0056】
各R
2dは独立して、−NO
2、−CN、−C(R
5)=C(R
5)
2、−C≡C−R
5、−OR
5、−SR
6、−S(O)R
6、−SO
2R
6、−SO
2N(R
4)
2、−N(R
4)
2、−NR
4C(O)R
5、−NR
4C(O)N(R
4)
2、−N(R
4)C(=NR
4)−N(R
4)
2、−N(R
4)C(=NR
4)-R
6、−NR
4CO
2R
6、−N(R
4)SO
2R
6、−N(R
4)SO
2N(R
4)
2、−O-C(O)R
5、−OC(O)N(R
4)
2、−C(O)R
5、−CO
2R
5、−C(O)N(R
4)
2、−C(O)N(R
4)−OR
5、−C(O)N(R
4)C(=NR
4)−N(R
4)
2、−N(R
4)C(=NR
4)−N(R
4)−C(O)R
5、または−C(=NR
4)−N(R
4)
2である。
【0057】
各R
8dは独立して、C
1〜4脂肪族、C
1〜4フルオロ脂肪族、ハロ、−OH、−O(C
1〜4脂肪族)、−NH
2、−NH(C
1〜4脂肪族)、および−N(C
1〜4脂肪族)
2からなる群から選択される。
【0058】
いくつかの実施形態において、R
Dは、フラニル、チエニル、ピロリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フェニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、インドリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、プリニル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノキサリニル、オキソジヒドロインドリル、オキソジヒドロベンゾキサジニル、およびジヒドロベンゾキサジニルからなる群から選択される置換もしくは非置換の単環式または二環式環系である。いくつかの実施形態において、R
Dは、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ナフチル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノキサリニル、オキソジヒドロインドリル、オキソジヒドロベンゾキサジニル、およびジヒドロベンゾキサジニルからなる群から選択される置換もしくは非置換の単環式または二環式環系である。いくつかの実施形態において、R
Dは、フェニル、ピリジニル、ピラジニル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソキノリニル、テトラヒドロキノキサリニル、オキソジヒドロインドリル、オキソジヒドロベンゾキサジニル、およびジヒドロベンゾキサジニルからなる群から選択される置換もしくは非置換の単環式または二環式環系である。
【0059】
いくつかの実施形態において、R
Dは、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、インデノピリジル、ベンゾフロピリジル、ベンゾチエノピリジル、ベンゾフロピラジニル、S,S−ジオキソジベンゾチオフェニル、キサンテニル、ジベンゾ−1,4−ジオキシニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、ピリドインドリル、アクリジニル、およびフェナンスリジニルからなる群から選択される置換または非置換三環式環系である。いくつかの実施形態において、R
Dは、ベンゾフロピリジル、ピリドインドリル、およびベンゾフロピラジニルからなる群から選択される置換または非置換三環式環系である。いくつかの実施形態において、R
Dは、置換または非置換ベンゾフロピリジルである。
【0060】
いくつかの実施形態において、R
D中の1または2個の飽和環炭素原子は=Oで置換され、R
D中の残りの置換可能な環炭素原子は、0〜1個のR
dおよび0〜2個のR
8dで置換され、ここで:
各R
dは独立して、C
1〜6脂肪族、C
1〜6フルオロ脂肪族、ハロ、−R
1d、−R
2d、−T
2−R
1d、および−T
2−R
2dからなる群から選択され;
T
2は、置換されていないか、またはR
3aもしくはR
3bで置換されたC
1〜3アルキレン鎖であり;
各R
1dは独立して、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、または脂環式環であり;そして
各R
2dは独立して、−OR
5、−SR
6、−S(O)R
6、−SO
2R
6、−SO
2N(R
4)
2、−N(R
4)
2、−NR
4C(O)R
5、−NR
4C(O)N(R
4)
2、−O−C(O)R
5、−OC(O)N(R
4)
2、−C(O)R
5、−CO
2R
5、または−C(O)N(R
4)
2である。
【0061】
いくつかの実施形態において、変数R
dは式−Q−R
Eを有し、式中、Qは−O−、−NH−、−S(O)−、−S(O)
2−、−C(O)−、または−CH
2−であり、R
Eは、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、または脂環式環である。いくつかの実施形態において、R
Eは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリル、ピペリジニル、ピペラジニル、またはモルホリニル環である。
【0062】
いくつかの実施形態において、変数R
dは式−Q−R
Eを有し、式中、Qは結合であり、R
Eは置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、または脂環式環である。いくつかの実施形態において、R
Eは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリル、ピペリジニル、ピペラジニル、またはモルホリニル環である。いくつかの実施形態において、R
Eは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、またはモルホリニル環である。
【0063】
いくつかの実施形態において、Pは式R
c−C(O)−を有し、式中、R
cはC
1〜4アルキル、C
1〜4フルオロアルキル、またはC
6〜10アル(C
1〜4)アルキルであり、そのアリール部分は置換されているかまたは置換されていない。あるそのような実施形態では、Pは、アセチル、トリフルオロアセチル、およびフェニルアセチルからなる群から選択される。
【0064】
いくつかの他の実施形態において、Pは式R
D−C(O)−を有し、式中、R
Dは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、またはキノキサリニルである。ある実施形態において、Pは式R
D−C(O)−を有し、式中、R
Dは、0〜1個のR
dおよび0〜2個のR
8dで置換されたフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ナフチル、キノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、またはジヒドロベンゾキサジニルである。ある特定の実施形態において、Pは式R
D−C(O)−を有し、式中、R
Dは、0〜1個のR
dおよび0〜2個のR
8dで置換されたフェニル、またはピラジニルである。ある特定の実施形態において、Pは式R
D−C(O)−を有し、式中、R
Dは、式−O−R
Eの置換基で置換されたピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり、R
Eは置換または非置換フェニルである。ある他の特定の実施形態において、Pは式R
D−C(O)−を有し、式中、R
Dは式−O−R
Eの置換基で置換されたフェニルであり、そしてR
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルである。
【0065】
いくつかの他の実施形態において、Pは式R
c−SO
2−を有し、式中、R
cは、−R
Dまたは−T
1−R
Dであり、ここで、T
1はC
1〜4アルキレンであり、R
Dは、0〜1個のR
dおよび0〜2個のR
8dで置換されたフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、オキソジヒドロインドリル、オキソジヒドロベンゾキサジニル、またはジヒドロベンゾキサジニルである。いくつかの実施形態において、Pは式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、オキソジヒドロインドリル、オキソジヒドロベンゾキサジニル、またはジヒドロベンゾキサジニルである。ある実施形態において、Pは式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、0〜1個のR
dおよび0〜2個のR
8dで置換されたフェニル、ピリジニル、ピラジニル、イソキノリニル、ベンゾチアゾリル、インドリル、オキソジヒドロインドリル、オキソジヒドロベンゾキサジニル、またはジヒドロベンゾキサジニルである。ある特定の実施形態において、Pは式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、式−O−R
Eの置換基で置換されたピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり、R
Eは置換または非置換フェニルである。ある他の特定の実施形態において、Pは式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、式−O−R
Eの置換基で置換されたフェニルであり、R
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、またはインドリルである。
【0066】
各変数R
a2は独立して、C
1〜6脂肪族、C
1〜6フルオロ脂肪族、−(CH
2)
m−CH
2−R
B、−(CH
2)
m−CH
2-NHC(=NR
4)NH−Y、−(CH
2)
m−CH
2−CON(R
4)
2、−(CH
2)
m−CH
2−N(R
4)CON(R
4)
2、−(CH
2)
m−CH(R
6)N(R
4)
2、−(CH
2)
m−CH(R
5)−OR
5、または−(CH
2)
m−CH(R
5)−SR
5であり、ここで、変数R
4、R
5、およびR
6は、前述の値を有し、変数R
Bおよびmは後述の値を有する。
【0067】
各R
Bは独立して、置換もしくは非置換の単環式または二環式環系である。いくつかの実施形態において、各R
Bは独立して、置換または非置換フェニル、ピリジル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ナフチル、キノリニル、キノキサリニル、またはイソキノリニル環である。ある実施形態において、R
Bは、置換または非置換フェニル環である。
【0068】
変数mは、0、1、または2である。いくつかの実施形態において、mは0または1である。
【0069】
いくつかの実施形態において、各R
a2は独立して、C
1〜6脂肪族、C
1〜6フルオロ脂肪族、または−(CH
2)
m−CH
2−R
Bであり、mは0または1である。いくつかのそのような実施形態において、R
Bは置換または非置換フェニルである。ある実施形態において、R
a2はイソプロピル、ベンジル、またはフェネチルである。
【0070】
変数Aは0、1、または2である。いくつかの実施形態において、Aは0または1である。ある実施形態において、Aは0である。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明は、式(I−A):
【化2】
によって特徴づけられる式(I)の化合物またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物に関し、式中、変数P、R
a2、A、Z
1、およびZ
2のそれぞれは、式(I)について前述された値および好ましい値を有する。
【0072】
ある実施形態において、本発明は、式(I−B):
【化3】
によって特徴づけられる式(I)の化合物またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物に関し、式中、変数P、R
a2、A、Z
1、およびZ
2のそれぞれは、式(I)について前述された値および好ましい値を有する。
【0073】
ある特定の実施形態において、本発明は、式(II):
【化4】
によって特徴づけられる式(I)の化合物またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物に関し、式中、変数P、Z
1、およびZ
2のそれぞれは、式(I)について前述された値および好ましい値を有する。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明は、式(II)の化合物に関し、ここで、Pは式R
D−C(O)−を有し、式中、R
Dは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、またはキノキサリニルである。ある実施形態において、Pは式R
D−C(O)−を有し、式中、R
Dは、0〜1個のR
dおよび0〜2個のR
8dで置換されたフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ナフチル、キノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、またはジヒドロベンゾキサジニルである。ある特定の実施形態において、Pは式R
D−C(O)−を有し、式中、R
Dは、0〜1個のR
dおよび0〜2個のR
8dで置換されたフェニル、またはピラジニルである。いくつかのそのような実施形態において、R
dは、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、または脂環式環であり、各R
8dは独立して、C
1〜4脂肪族、C
1〜4フルオロ脂肪族、またはハロである。
【0075】
ある特定の実施形態において、Pは式R
D−C(O)−を有し、式中、R
Dは、式−O−R
Eの置換基で置換されたピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり、R
Eは置換または非置換フェニルである。ある他の特定の実施形態において、Pは式R
D−C(O)−を有し、式中、R
Dは、式−O−R
Eの置換基で置換されたフェニルであり、そしてR
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルである。
【0076】
いくつかの他の実施形態において、本発明は式(II)の化合物に関し、ここで、Pは式R
c−SO
2−を有し、式中、R
cは−R
Dまたは−T
1−R
Dであり、ここで、T
1はC
1〜4アルキレンであり、R
Dは、0〜1個のR
dおよび0〜2個のR
8dで置換されたフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、オキソジヒドロインドリル、オキソジヒドロベンゾキサジニル、またはジヒドロベンゾキサジニルである。いくつかの実施形態において、Pは式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、オキソジヒドロインドリル、オキソジヒドロベンゾキサジニル、またはジヒドロベンゾキサジニルである。ある実施形態において、Pは式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、0〜1個のR
dおよび0〜2個のR
8dで置換されたフェニル、ピリジニル、ピラジニル、イソキノリニル、ベンゾチアゾリル、インドリル、オキソジヒドロインドリル、オキソジヒドロベンゾキサジニル、またはジヒドロベンゾキサジニルである。いくつかのそのような実施形態において、R
dは、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、または脂環式環であり、各R
8dは独立して、C
1〜4脂肪族、C
1〜4フルオロ脂肪族、またはハロである。ある実施形態において、Pは式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、0〜1個のR
dで置換されたフェニルであり、R
dは、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、または脂環式環である。あるそのような実施形態では、Pは式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、1個のR
dで置換されたフェニルであり、そしてR
dは、置換もしくは非置換のオキサゾリル、チアゾリル、またはイミダゾリルであり;置換されている場合、R
dは1個のR
ddで置換され;そしてR
ddは、メチル、エチル、トリフルオロメチル、クロロ、またはフルオロである。
【0077】
ある特定の実施形態において、Pは、式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、ピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり、これは式−O−R
Eの置換基で置換され、R
Eは置換または非置換フェニルである。ある他の特定の実施形態において、Pは、式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、式−O−R
Eの置換基で置換されたフェニルであり、そしてR
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、またはインドリルである。あるそのような実施形態では、R
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、またはインドリルであり;置換されている場合、R
Eは、1〜2個のR
ddで置換されている。いくつかのそのような実施形態において、各R
ddは独立して、C
1〜4脂肪族、C
1〜4フルオロ脂肪族、またはハロである。あるそのような実施形態では、R
Eは、置換または非置換ピリジニルであり;置換されている場合、R
Eは、1個のR
ddで置換されている。いくつかのそのような実施形態において、R
ddは、メチル、エチル、トリフルオロメチル、クロロ、またはフルオロである。
【0078】
ある特定の実施形態において、Pは、式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、式−C(O)−R
Eの置換基で置換されたフェニルであり、そしてR
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルである。あるそのような実施形態では、R
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり;置換されている場合、R
Eは、1〜2個のR
ddで置換されている。いくつかのそのような実施形態において、各R
ddは独立して、C
1〜4脂肪族、C
1〜4フルオロ脂肪族、またはハロである。あるそのような実施形態では、R
Eは、置換または非置換ピリジニルであり;置換されている場合、R
Eは、1個のR
ddで置換されている。いくつかのそのような実施形態において、R
ddは、メチル、エチル、トリフルオロメチル、クロロ、またはフルオロである。
【0079】
ある他の特定の実施形態において、Pは、式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは式−S(O)−R
Eの置換基で置換されたフェニルであり、そしてR
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルである。ある他の特定の実施形態において、Pは、式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、式−S(O)
2−R
Eの置換基で置換されたフェニルであり、そしてR
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルである。ある他の特定の実施形態において、Pは、式R
D−SO
2−を有し、式中、R
Dは、式−NH−R
Eの置換基で置換されたフェニルであり、そしてR
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルである。
【0080】
ある実施形態において、本発明は式(II):
【化5】
によって特徴付けられる式(I)の化合物またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物に関し、式中、変数Z
1およびZ
2のそれぞれは、式(I)について本明細書中で記載する値および好ましい値を有し;
Pは、R
D−SO
2−であり;
R
Dは、0〜1個のR
dで置換されたフェニルであり;そして
R
dは、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、または脂環式環である。
【0081】
あるそのような実施形態では:
R
Dは1個のR
dで置換されたフェニルであり;
R
dは、置換もしくは非置換のオキサゾリル、チアゾリル、またはイミダゾリルであり;
置換されている場合、R
dは1個のR
ddで置換され;そして
R
ddは、メチル、エチル、トリフルオロメチル、クロロ、またはフルオロである。
【0082】
ある実施形態において、本発明は式(II):
【化6】
によって特徴付けられる式(I)の化合物またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物に関し、式中、変数Z
1およびZ
2のそれぞれは、式(I)について本明細書中で記載する値および好ましい値を有し;
Pは、R
D−SO
2−であり;
R
Dは、−O−R
Eで置換されたフェニルであり;
R
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、またはインドリルであり;
置換されている場合、R
Eは、1〜2個のR
ddで置換され;そして
各R
ddは独立して、C
1〜4脂肪族、C
1〜4フルオロ脂肪族、またはハロである。
【0083】
あるそのような実施形態では:
R
Eは、置換または非置換ピリジニルであり;
置換されている場合、R
Eは1つのR
ddで置換され;そして
R
ddは、メチル、エチル、トリフルオロメチル、クロロ、またはフルオロである。
【0084】
ある実施形態において、本発明は、式(II):
【化7】
によって特徴付けられる式(I)の化合物またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物に関し、式中、変数Z
1およびZ
2のそれぞれは、式(I)について本明細書中で記載する値および好ましい値を有し;
PはR
D−SO
2−であり;
R
Dは、−C(O)−R
Eで置換されたフェニルであり、
R
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり;
置換されている場合、R
Eは、1〜2個のR
ddで置換され;そして
各R
ddは、独立して、C
1〜4脂肪族、C
1〜4フルオロ脂肪族、またはハロである。
【0085】
あるそのような実施形態では:
R
Eは、置換または非置換ピリジニルであり;
置換されている場合、R
Eは1つのR
ddで置換され;そして
R
ddは、メチル、エチル、トリフルオロメチル、クロロ、またはフルオロである。
【0086】
式(I)の化合物の代表例を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0087】
前記表1の化合物は、以下の化学名によって同定することもできる:
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【0088】
化合物1〜33のそれぞれの対応するピナンジオールエステル、マンニトールエステル、およびクエン酸エステルを下記表2に記載する。例えば、化合物1−Aは、化合物1の対応するピナンジオールエステルであり;化合物1−Bは、化合物1の対応するマンニトールエステルであり;化合物1−Cは、化合物1の対応するクエン酸エステルであるなど。ピナンジオールエステルおよびマンニトールエステルは、下記実験の節で概説される手順によって合成することができる。クエン酸エステルは、参照により本明細書中に組み込まれる、Elliottらの国際公開第09/154737号パンフレットで記載される手順によって合成することができる;
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【0089】
本明細書中で用いられる場合、「ボロン酸」という用語は、−B(OH)
2部分を含有する化合物を指す。いくつかの実施形態において、ボロン酸化合物は、ボロン酸部分の脱水によってオリゴマー無水物を形成し得る。例えば、Snyder et al., J. Am. Chem. Soc. 80:3611(1958)は、オリゴマーアリールボロン酸を報告している。
【0090】
本明細書中で用いられる場合、「ボロン酸無水物」という用語は、ボロン酸化合物の2以上の分子を組み合わせ、1以上の水分子が失われることによって形成される化合物を指す。水と混合すると、ボロン酸無水物化合物は水和されて、遊離ボロン酸化合物を放出する。種々の実施形態において、ボロン酸無水物は、2、3、4、またはそれ以上のボロン酸単位を含み得、環状または直線状構造を有し得る。本発明のペプチドボロン酸化合物のオリゴマーボロン酸無水物の非限定的例は以下のとおりである:
【化8】
【0091】
直前の式(1)および(2)において、変数nは、0〜約10、好ましくは0、1、2、3、または4の整数である。いくつかの実施形態において、ボロン酸無水物化合物は、式(2)の環状トリマー(「ボロキシン」)を含み、式中、nは1である。変数Wは、式(3):
【化9】
(式中、変数P、A、およびR
a2は、式(I)について前述の値および好ましい値を有する)を有する。
【0092】
いくつかの実施形態において、ボロン酸無水物化合物中に存在するボロン酸の少なくとも80%は、単一のオリゴマー無水物形態で存在する。いくつかの実施形態において、ボロン酸無水物化合物中に存在するボロン酸の少なくとも85%、90%、95%、または99%は、単一のオリゴマー無水物形態で存在する。ある好ましい実施形態において、ボロン酸無水物化合物は、式(3)を有するボロキシンから構成されるか、または本質的に構成される。
【0093】
ボロン酸無水物化合物は、好ましくは、これらに限定されるものではないが、再結晶、凍結乾燥をはじめとする脱水条件への暴露、熱への暴露、および/または乾燥剤への暴露によって、対応するボロン酸から調製することができる。好適な再結晶溶媒の非限定的例としては、酢酸エチル、ジクロロメタン、ヘキサン、エーテル、アセトニトリル、エタノール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0094】
いくつかの実施形態において、Z
1およびZ
2は、一緒になって、ボロン酸錯化剤から誘導される部分を形成する。本発明の目的に関して、「ボロン酸錯化剤」という用語は、少なくとも2個の官能基であって、そのそれぞれがホウ素と共有結合を形成することができる官能基を有する任意の化合物を指す。好適な官能基の非限定的例としては、アミノ、ヒドロキシル、およびカルボキシルが挙げられる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの官能基はヒドロキシル基である。「ボロン酸錯化剤から誘導される部分」という用語は、ボロン酸錯化剤の2個の官能基から水素原子を除去することによって形成される部分を指す。
【0095】
本明細書中で用いられる場合、「ボロネートエステル」および「ボロン酸エステル」という用語は、交換可能に用いられ、−B(Z
1)(Z
2)部分を含有する化合物を指し、ここで、Z
1またはZ
2の少なくとも1つはアルコキシ、アルアルコキシ、もしくはアリールオキシであるか;あるいはZ
1およびZ
2は、一緒になって、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するボロン酸錯化剤から誘導される部分を形成する。
【0096】
式(I)、(I−A)、(I−B)、および(II)の化合物において、Z
1およびZ
2は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、もしくはアルアルコキシであるか;またはZ
1およびZ
2は、一緒になって、ボロン酸錯化剤から誘導される部分を形成する。いくつかの実施形態において、Z
1およびZ
2は、それぞれヒドロキシである。いくつかの他の実施形態において、Z
1およびZ
2は一緒になって、鎖または環中で少なくとも2連結原子によって分離された少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物から誘導される部分を形成し、前記鎖または環は炭素原子および、場合によって、N、S、もしくはOであり得るヘテロ原子(複数可)を含み、ここで、それぞれの場合でホウ素に結合した原子は、酸素原子である。
【0097】
本明細書中で用いられる場合、「少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物」という用語は、2以上のヒドロキシル基を有する任意の化合物を指す。本発明の目的に関して、2個のヒドロキシル基は、好ましくは、少なくとも2個の連結原子、好ましくは約2〜約5個の連結原子、さらに好ましくは2または3個の連結原子によって分離されている。便宜上、「ジヒドロキシ化合物」という用語は、前記定義の少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物を指して用いることができる。したがって、本明細書中で用いられる場合、「ジヒドロキシ化合物」という用語は、2個のヒドロキシル基しか有さない化合物に限定されることを意図しない。少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物由来の部分は、そのヒドロキシル基のうちの任意の2個の酸素原子によってホウ素に結合することができる。好ましくは、ホウ素原子、ホウ素に結合する酸素原子、および2個の酸素原子に結合する原子は、一緒になって、5または6員環を形成する。
【0098】
本発明に関して、ボロン酸錯化剤は、好ましくは、薬剤的に許容され、すなわち、ヒトへの投与に好適である。いくつかの好ましい実施形態において、ボロン酸錯化剤は、例えば、Plamondonらの国際公開第02/059131号パンフレットおよびGuptaらの国際公開第02/059130号パンフレットで記載されるような糖である。「糖」という用語は、モノサッカライド、ジサッカライド、ポリサッカライド、糖アルコールおよびアミノ糖をはじめとする任意のポリヒドロキシ炭水化物部分を包含する。いくつかの実施形態において、糖は、モノサッカライド、ジサッカライド、糖アルコール、またはアミノ糖である。好適な糖の非限定的例としては、グルコース、スクロース、フルクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、グルコサミン、およびN−メチルグルコサミンが挙げられる。ある実施形態において、糖は、マンニトールまたはソルビトールである。したがって、糖がマンニトールまたはソルビトールである実施形態では、Z
1およびZ
2は、一緒になって、式C
6H
12O
6の部分を形成し、ここで、2つの脱プロトン化ヒドロキシル基の酸素原子は、ホウ素と共有結合を形成して、ボロネートエステル化合物を形成する。ある特定の実施形態において、Z
1およびZ
2は一緒になって、D−マンニトールから誘導される部分を形成する。
【0099】
いくつかの他の好ましい実施形態において、ボロン酸錯化剤は、例えば、参照により本明細書中に組み込まれる、Elliottらの国際公開第09/154737号パンフレットで記載される、アルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸である。いくつかのそのような実施形態において、ボロン酸錯化剤は、グリコール酸、リンゴ酸、ヘキサヒドロマンデル酸、クエン酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、マンデル酸、乳酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、ベータ−ヒドロキシイソ吉草酸、サリチル酸、酒石酸、ベンジル酸、グルコヘプトン酸(glucoheptonic acid)、グルコン酸、ラクトビオン酸、ガラクタル酸、エンボン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、および3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸からなる群から選択される。あるそのような実施形態では、ボロン酸錯化剤はクエン酸である。
【0100】
ある実施形態において、アルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸がクエン酸である場合、一般式(I)の化合物は、式(III−A)または(III−B):
【化10】
によって特徴付けられるか、またはその混合物であり、式中、変数P、A、およびR
a2は、本明細書中で記載する値を有する。
【0101】
ある実施形態において、アルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸がクエン酸である場合、一般式(I)の化合物は、式(IV−A)または(IV−B):
【化11】
によって特徴付けられるか、またはその混合物であり、式中、変数Pは、本明細書中で記載する値を有する。
【0102】
ある実施形態において、アルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸がクエン酸である場合、一般式(I)の化合物は、式(IV−A)または(IV−B):
【化12】
によって特徴付けられるか、またはその混合物であり、式中:
Pは、R
D−SO
2−であり;
R
Dは、0〜1個のR
dで置換されたフェニルであり;そして
R
dは、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、または脂環式環である。
【0103】
あるそのような実施形態では:
R
Dは1個のR
dで置換されたフェニルであり;
R
dは、置換もしくは非置換のオキサゾリル、チアゾリル、またはイミダゾリルであり;
置換されている場合、R
dは1個のR
ddで置換され;そして
R
ddは、メチル、エチル、トリフルオロメチル、クロロ、またはフルオロである。
【0104】
ある実施形態において、アルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸がクエン酸である場合、一般式(I)の化合物は、式(IV−A)または(IV−B):
【化13】
によって特徴付けられるか、またはその混合物であり、式中:
Pは、R
D−SO
2−であり;
R
Dは、−O−R
Eで置換されたフェニルであり;
R
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、またはインドリルであり;
置換されている場合、R
Eは、1〜2個のR
ddで置換され;そして
各R
ddは、独立して、C
1〜4脂肪族、C
1〜4フルオロ脂肪族、またはハロである。
【0105】
あるそのような実施形態では:
R
Eは、置換または非置換ピリジニルであり;
置換されている場合、R
Eは1つのR
ddで置換され;そして
R
ddは、メチル、エチル、トリフルオロメチル、クロロ、またはフルオロである。
【0106】
ある実施形態において、アルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸がクエン酸である場合、一般式(I)の化合物は、式(IV−A)または(IV−B):
【化14】
によって特徴付けられるか、またはその混合物であり、式中:
Pは、R
D−SO
2−であり;
R
Dは、−C(O)−R
Eで置換されたフェニルであり;
R
Eは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり;
置換されている場合、R
Eは、1〜2個のR
ddで置換され;そして
各R
ddは、独立して、C
1〜4脂肪族、C
1〜4フルオロ脂肪族、またはハロである。
【0107】
あるそのような実施形態では:
R
Eは、置換または非置換ピリジニルであり;
置換されている場合、R
Eは1個のR
ddで置換され;そして
R
ddは、メチル、エチル、トリフルオロメチル、クロロ、またはフルオロである。
【0108】
一般的合成法
式(I)の化合物は、当業者に公知の方法によって調製することができる。例えば、Adamsらの米国特許第5,780,454号明細書;Pickersgillらの国際公開第05/097809号パンフレットを参照のこと。N−アシル−ペプチジルボロン酸本発明の化合物(P=R−C(O)−)への例示的合成経路を下記スキーム1に記載する。
スキーム1
【化15】
【0109】
化合物iをN保護されたアミノ酸iiとカップリングし、続いてN末端脱保護して、式iiiの化合物を得る。好適な保護基(PG)の例としては、アシル保護基、例えばホルミル、アセチル(Ac)、スクシニル(Suc)、およびメトキシスクシニル;ならびにウレタン保護基、例えばtert−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、およびフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドカップリング反応は、化合物iiのカルボン酸部分を活性化エステル、例えばO−(N−ヒドロキシスクシンイミド)エステルに事前に変換し、続いて化合物iで処理することによって行うことができる。別法として、活性化エステルは、化合物iiのカルボン酸をペプチドカップリング試薬と接触させることによってその場で生成させることができる。好適なペプチドカップリング試薬の例としては、カルボジイミド試薬、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)または1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC);ホスホニウム試薬、例えばベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(BOP);およびウラニウム試薬、例えばO−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
化合物iiiを次いでカルボン酸(R
cCO
2H)とカップリングして、化合物ivを得る。化合物iおよびiiについて前述したペプチドカップリング条件は、化合物iiiをR
cCO
2Hとカップリングするのにも好適である。ボロン酸部分の脱保護によって次いで化合物vが得られる。脱保護ステップは、好ましくは、ボロン酸エステル化合物iv、有機ボロン酸アクセプター、低級アルカノール、C
5〜8炭化水素溶媒、および水性鉱酸を含む二相性混合物におけるエステル交換によって達成される。
スキーム2
【化16】
【0111】
別法として、カップリング反応の順序は、スキーム2で示されるように、逆にすることができる。したがって、O保護アミノ酸viをまず置換安息香酸(ArCO
2H)とカップリングさせ、続いてエステル加水分解を行って、化合物viiを形成する。スキーム1について前述のように、化合物iとのカップリングおよびその後のボロン酸脱保護を次いでおこなって、化合物vを得る。
【0112】
本発明のN−スルホニル−ペプチジルボロン酸化合物(P=R
c−S(O)
2−)の調製についての例示的合成経路を下記スキーム3に記載する:
スキーム3
【化17】
【0113】
スキーム1について前述したようにして調製した化合物iiiを、ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下に塩化スルホニルで処理して、化合物viを得る。ボロン酸部分の脱保護をスキーム1について前述したようにしておこなって、化合物viiを得る。化合物viiの調製に関する反応の順序は、スキーム2と同様に逆にすることができる。
スキーム4
【化18】
【0114】
viiiから式(I)の化合物(式中、Z
1およびZ
2は一緒になってアルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸から誘導される部分である)への変換、は、酢酸エチルなどの溶媒中、およそ少なくとも1モル当量のアルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸を用いるエステル化条件を用い、約40℃〜約80℃の温度で達成することができる。この変換についての他の好適な溶媒の例としては、メチルイソブチルケトン、アセトン、アセトニトリル、2−メチルテトラヒドロフラン、アニソール、酢酸イソプロピル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、トルエン、ヘプタン、メチル−シクロヘキサン、tert−ブチルメチルエーテル、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒の選択は、使用されるアルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸の溶解度に一部依存するであろう。viiiから式(I)の化合物への変換のために選択される温度は、使用される溶媒または溶媒混合物の沸点に一部依存するであろう。
【0115】
viiiから式(I)の化合物(式中、Z
1およびZ
2は一緒になってアルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸から誘導される部分である)への変換は、これらに限定されるものではないが、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、コリジン、2,6−ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジ−tertブチルピリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクル[4.3.0]ノン−5−エン、N,N’ジイソプロピルエチルアミン、またはそれらの混合物などの有機アミン塩基によって触媒され得る。
【0116】
式viiiの化合物およびアルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸を一緒に最適の溶媒中である時間加熱する。この期間の後、反応混合物をある期間冷却させ、冷却によって沈殿する式(I)の化合物をろ過によって集める。冷却は制御することができないか、または冷却装置の使用によって制御することができる。反応混合物をこの冷却期間中に撹拌してもよい。別法として、式(I)の化合物はまた、冷却し、続いて溶媒を蒸発させることによって、反応混合物から単離することもできる。沈殿させるために、反応混合物を式(I)の化合物の結晶で播種することができる。
【0117】
これらに限定されるものではないが、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、トルエン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、またはそれらの混合物などの共溶媒を冷却期間中に添加することができる。共溶媒の添加後、反応混合物を冷却すると、式(I)の化合物の沈殿がさらに得られる。別法として、一旦、共溶媒を添加すると、反応混合物を次いで再度加熱して、均一溶液を生成させることができ、これを次いで冷却すると、式(I)の化合物の沈殿が得られる。沈殿させるために、反応混合物を式(I)の化合物の結晶で播種することができる。
【0118】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物(式中、Z
1およびZ
2は一緒になって、アルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸から誘導される部分である)は結晶形態で単離される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は実質的に結晶の形態で単離される。いくつかの他の実施形態において、式(I)の化合物はアモルファス形態で単離される。
【0119】
式(I)の化合物(式中、Z
1およびZ
2は一緒になって、アルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸から誘導される部分である)は、化合物viiiおよびアルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸の共凍結乾燥によって生成させることもできる。これは、式viiiの化合物および1モル過剰のアルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸を含む水溶液を凍結乾燥手順に付すことによって達成される。いくつかの実施形態において、水溶液は、水混和性共溶媒をさらに含む。好適な共溶媒の例としては、tert−ブチルアルコール、メタノール、エタノール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。共凍結乾燥の結果、式(I)の化合物および過剰のアルファ−ヒドロキシカルボン酸またはベータ−ヒドロキシカルボン酸を含有する組成物が得られる。
【0120】
使用、処方、および投与
本発明は、プロテアソームの強力な阻害剤である化合物を提供する。化合物は、プロテアソームによって媒介されるペプチド加水分解またはタンパク質分解を阻害するそれらの能力についてインビトロまたはインビボで分析することができる。
【0121】
したがって、別の態様において、本発明は、細胞中のプロテアソームの1以上のペプチダーゼ活性を阻害するための方法であって、プロテアソーム阻害が望まれる細胞を、本明細書中に記載される化合物、またはその薬剤的に許容される塩、ボロン酸エステル、もしくはボロン酸無水物と接触させることを含む方法を提供する。
【0122】
本発明はさらに、細胞増殖を阻害するための方法であって、そのような阻害が望まれる細胞を、本明細書中に記載される化合物と接触させることを含む方法を提供する。「細胞増殖を阻害する」という語句は、阻害剤と接触しない細胞と比較して、接触した細胞において細胞数または細胞増殖を阻害する本発明の化合物の能力を示すために用いられる。細胞増殖の評価は、細胞計数器を使用して細胞を計数することによるか、または細胞生存アッセイ、例えば、MTTもしくはWSTアッセイによっておこなうことができる。細胞が充実性増殖(例えば、固体腫瘍または器官)にある場合、細胞増殖のそのような評価は、例えばキャリパーで増殖を測定し、そして接触細胞の増殖のサイズを非接触細胞と比較することによっておこなうことができる。
【0123】
好ましくは、阻害剤と接触した細胞の増殖は、非接触細胞の増殖と比較して、少なくとも約50%遅れる。種々の実施形態において、接触細胞の細胞増殖は、非接触細胞と比較して、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%阻害される。いくつかの実施形態において、「細胞増殖を阻害する」という表現は、非接触細胞と比較して、接触細胞の数の減少を包含する。したがって、接触細胞において細胞増殖を阻害するプロテアソーム阻害剤は、接触細胞が増殖遅延、増殖停止、プログラムされた細胞死(すなわち、アポトーシス)、または壊死細胞死を起こすことを誘発することができる。
【0124】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物、またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物、および薬剤的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0125】
本発明の化合物の薬剤的に許容される塩をこれらの組成物において利用する場合、塩は、好ましくは、無機もしくは有機酸または塩基から誘導される。好適な塩の概説については、例えば、Berge et al, J. Pharm. Sci. 66:1-19(1977)およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., ed. A. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000を参照のこと。
【0126】
好適な酸付加塩の非限定的例としては、以下のものが挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ルコヘプタン酸塩(lucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニル−プロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩。
【0127】
好適な塩基付加塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばリチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩;他の多価金属塩、例えば亜鉛塩;ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、およびコリンなどの有機塩基との塩;ならびにアルギニン、リシンなどのアミノ酸との塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、薬剤的に許容される塩は、式(I)(式中、Z
1およびZ
2はどちらもヒドロキシである)のボロン酸化合物の塩基付加塩である。
【0128】
「薬剤的に許容される担体」という用語は、本明細書中で用いられる場合、レシピエント対象者、好ましくはほ乳類、さらに好ましくはヒトに対して適合性であり、薬剤の活性を終了させることなく標的部位へ活性剤を送達するのに好適である物質を指す。担体と関連した毒性または副作用は、もしあるならば、好ましくは活性剤の意図される使用について妥当なリスク/利益比に相応する。
【0129】
「担体」、「アジュバント」または「ビヒクル」という用語は、本明細書中では交換可能に用いられ、所望の特定の投与形態に適したありとあらゆる溶媒、希釈剤、および他の液体ビヒクル、分散助剤もしくは懸濁助剤、界面活性剤、pH修飾剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、防腐剤、固体バインダー、潤滑剤などが挙げられる。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., ed. A. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000は、薬剤的に許容される組成物を処方するために用いられる種々の担体、およびそれらの調製について公知の技術を開示している。望ましくない生物学的効果を生むか、または他の方法で薬剤的に許容される組成物の他の成分(複数可)と有害な様式で相互作用することによるなどで、任意の通常の担体媒体が本発明の化合物と不適合である場合を除いて、その使用は本発明の範囲内に含まれることが想定される。薬剤的に許容される担体として機能することができる物質の数例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、炭酸塩、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、パイロジェンフリー水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、水素リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、および亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、羊毛脂、糖、例えばラクトース、グルコース、スクロース、およびマンニトール、デンプン、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプン、セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース、粉末状トラガカント;麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤、例えばカカオ脂および坐剤ワックス、油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油,グリコール、例えばプロピレングリコールおよびポリエチレングリコール、エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル、寒天、アルギン酸、等張性生理食塩水、リンゲル液、アルコール、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、およびグリセロール、シクロデキストリン、例えばヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン、潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、石油炭化水素、例えば鉱油およびペトロラタムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、調味料および香料、防腐剤および酸化防止剤も、配合者の判断にしたがって、組成物中に存在し得る。
【0130】
本発明の医薬組成物は、とりわけ通常の造粒、混合、溶解、カプセル化、凍結乾燥、または乳化プロセスなどの当該技術分野で周知の方法によって製造することができる。組成物は、顆粒、沈殿、または微粒子、粉末、たとえば凍結乾燥、ロータリー乾燥または噴霧乾燥粉末、アモルファス粉末、錠剤、カプセル、シロップ、坐剤、注射、エマルジョン、エリキシル、懸濁液または溶液をはじめとする種々の形態で製造することができる。
【0131】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、ほ乳類、好ましくはヒトへの薬剤投与のために処方される。本発明のそのような医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、経頬的に、経膣的に、または埋込型リザーバーから投与することができる。「非経口」という用語は、本明細書中で用いられる場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、肝内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を包含する。好ましくは、組成物を経口、静脈内、または皮下投与する。本発明の処方は、短時間作用性、急速放出性、または長時間作用性となるように設計することができる。またさらに、化合物を全身性手段ではなくむしろ腫瘍部位での投与(例えば、注射による)などの局所手段で投与することができる。
【0132】
経口投与用液体投与形態としては、薬剤的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。活性化合物に加えて、液体投与形態は、当該技術分野で通常用いられる不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、シクロデキストリン、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有し得る。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、調味料、および香料等のアジュバントも含み得る。
【0133】
注射可能な製剤、例えば、無菌注射可能水性または油性懸濁液を公知技術にしたがって、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて処方することができる。無菌注射可能製剤はまた、例えば、1,3−ブタンジオール中溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射可能溶液、懸濁液またはエマルジョンであり得る。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌不揮発性油を、通常、溶媒または懸濁媒として用いる。このために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無菌不揮発性油を用いることができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注射可能薬物の調製において用いられる。注射可能な処方は、例えば、細菌保持フィルター(bacterial-retaining filter)を通したろ過によるか、または使用前に無菌水もしくは他の無菌注射可能媒体中に溶解または分散させることができる無菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み入れることによって、滅菌することができる。非経口投与用に処方された組成物を、ボーラス注射によるか、もしくはタイムドプッシュ(timed push)によって注射することができるか、または持続注入によって投与することができる。
【0134】
経口投与用固体投与形態としては、カプセル、錠剤、ピル、粉末、および顆粒が挙げられる。そのような固体投与形態において、活性化合物を少なくとも1つの不活性な薬剤的に許容される賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムおよび/またはa)フィラーもしくは増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)バインダー、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシア、c)保湿剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば寒天−−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、あるケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば第4アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイトクレイ、ならびにi)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物と混合する。カプセル、錠剤およびピルの場合、投与形態は、リン酸塩または炭酸塩などの緩衝剤も含み得る。
【0135】
類似した種類の固体組成物も、軟および硬ゼラチンカプセルにおいて、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、フィラーとして用いることができる。錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、および顆粒の固体投与形態は、腸溶コーティングおよび医薬製剤技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。それらは場合によって、乳白剤を含んでもよく、活性成分(複数可)を、腸管のある部分でのみ、または腸管のある部分で優先的に、場合によって遅延した方法で放出する組成のものであり得る。使用することができる埋込組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。類似した種類の固体組成物も、例えば、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟および硬ゼラチンカプセルにおいてフィラーとして用いることができる。
【0136】
活性化合物はさらに、前述の1以上の賦形剤を用いたマイクロカプセル化形態であり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、および顆粒の固体投与形態は、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび製薬調剤技術で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。そのような固体投与形態において、活性化合物を少なくとも1つ不活性希釈剤、例えばスクロース、ラクトースまたはデンプンと混合することができる。そのような投与形態はさらに、通常の慣行どおりに、不活性希釈剤以外のさらなる物質、例えば錠剤化潤滑剤および他の錠剤化助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロースも含み得る。カプセル、錠剤およびピルの場合、投与形態は緩衝剤も含み得る。それらは場合によって乳白剤を含み得、活性成分(複数可)を、腸管のある部分でのみ、または腸管のある部分で優先的に、場合によって遅延した方法で放出する組成のものであり得る。使用することができる埋込組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0137】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための投与形態としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性成分を滅菌条件下で薬剤的に許容される担体および任意の必要な防腐剤または必要ならば緩衝液と混合する。眼科用処方、点耳剤、および点眼剤もまた、本発明の範囲内に含まれることが想定される。さらに、本発明は、化合物の身体への制御送達を提供するというさらなる利点を有する経皮パッチの使用を想定する。そのような投与形態は、化合物を適切な媒体中に溶解または分配することによって作製することができる。吸収促進剤を使用して、皮膚を越える化合物の流れを増大させることもできる。速度制御膜を提供することによるか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させるかのいずれかによって、速度を制御することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物を静脈内投与する。いくつかのそのような実施形態において、Z
1およびZ
2が一緒になってボロン酸錯化剤から誘導される部分を形成する式(I)の化合物は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれるPlamondonらの国際公開第02/059131号パンフレットで記載されるように、凍結乾燥粉末の形態に調製することができる。いくつかの実施形態では、凍結乾燥粉末は遊離ボロン酸錯化剤も含む。好ましくは、遊離ボロン酸錯化剤および式(I)の化合物は、約0.5:1〜約100:1、さらに好ましくは約5:1〜約100:1の範囲のモル比の混合物で存在する。種々の実施形態において、凍結乾燥粉末は遊離ボロン酸錯化剤および対応するボロネートエステルを約10:1〜約100:1、約20:1〜約100:1、または約40:1〜約100:1の範囲のモル比で含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥粉末は、ボロン酸錯化剤および式(I)の化合物を含み、他の成分は実質的に含まない。しかし、組成物は、1以上の他の薬剤的に許容される賦形剤、担体、希釈剤、フィラー、塩、緩衝液、充填剤、安定剤、可溶化剤、および当該技術分野で周知の他の物質をさらに含み得る。これらの物質を含む薬剤的に許容される処方の調製は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., ed. A. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000、または最新版で記載されている。いくつかの実施形態で、医薬組成物は、式(I)の化合物、充填剤、および緩衝液を含む。
【0140】
式(I)の化合物を含む凍結乾燥粉末は、Plamondonらの国際公開第02/059131号パンフレットで記載されている手順にしたがって調製することができる。したがって、いくつかの実施形態において、凍結乾燥粉末を調製するための方法は、(a)Z
1およびZ
2がそれぞれヒドロキシである式(I)のボロン酸化合物と、ボロン酸錯化剤とを含む水性混合物を調製し;そして(b)混合物を凍結乾燥することを含む。
【0141】
凍結乾燥粉末は、好ましくは、薬剤投与のために好適な水性溶媒を添加することによって再構成される。好適な再構成溶媒の例としては、水、生理食塩水、およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、凍結乾燥粉末は通常の(0.9%)生理食塩水で再構成される。再構成により、ボロネートエステル化合物と対応する遊離ボロン酸化合物との間に平衡が確立される。いくつかの実施形態において、平衡は、水性媒体の添加後急速に、例えば10〜15分以内に達成される。平衡で存在するボロネートエステルおよびボロン酸の相対濃度は、溶液のpH、温度、ボロン酸錯化剤の性質、および凍結乾燥粉末中に存在するボロン酸錯化剤とボロネートエステル化合物との比などのパラメータに依存する。
【0142】
本発明の医薬組成物を、好ましくは、プロテアソームによって媒介される障害にかかっているか、または発症するかもしくは再発を経験する危険性のある患者へ投与するために処方する。「患者」という用語は、本明細書中で用いられる場合、動物、好ましくはほ乳類、さらに好ましくはヒトを意味する。本発明の好ましい医薬組成物は、経口、静脈内、または皮下投与用に処方されたものである。しかし、治療有効量の本発明の化合物を含有する前記投与形態はいずれも、十分に通常の実験の範囲内に含まれ、したがって、十分に本発明の範囲内に含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、別の治療剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、そのような他の治療剤は、治療される疾患または状態を有する患者に通常投与されるものである。
【0143】
「治療有効量」とは、プロテアソーム活性またはプロテアソームによって媒介される障害の重症度において検出可能な減少を引き起こすために十分な量を意味する。必要なプロテアソーム阻害剤の量は、所定の細胞種についての阻害剤の有効性および障害を治療するために必要な時間の長さに依存するであろう。当然のことながら、任意の特定の患者についての特定の投薬量および治療レジメンは、用いられる特定の化合物の活性、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別、および食事、投与時間、排出率、複合薬、治療する医師の判断、ならびに治療される特定の疾患の重症度をはじめとする種々の因子に依存するであろう。本発明の組成物中に存在するさらなる治療剤の量は、典型的には、唯一の活性剤としてその治療剤を含む組成物で通常投与される量以下である。好ましくは、さらなる治療剤の量は、その薬剤を唯一の治療活性剤として含む組成物中に通常存在する量の約50%〜約100%の範囲である。
【0144】
別の態様において、本発明は、プロテアソームによって媒介される障害に罹っているか、または発症するかもしくは再発を経験する危険性がある患者を治療するための方法を提供する。本明細書中で用いられる場合、「プロテアソームによって媒介される障害」という用語は、プロテアソーム発現もしくは活性の増加によって引き起こされるか、もしくは特徴付けられるか、またはプロテアソーム活性を必要とする任意の障害、疾患または状態を包含する。「プロテアソームによって媒介される障害」という用語はまた、プロテアソーム活性の阻害が有益である任意の障害、疾患または状態も包含する。
【0145】
例えば、本発明の化合物および医薬組成物は、プロテアソーム活性によって調節されるタンパク質(例えば、NFκB、p27
Kip、p21
WAF/CIP1、p53)によって媒介される障害の治療において有用である。関連する障害としては、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨関節炎、皮膚病(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬))、血管増殖性障害(例えば、アテローム性動脈硬化症、再狭窄),増殖性眼性障害(例えば、糖尿病性網膜症)、良性増殖性障害(例えば、血管腫)、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症、組織および臓器拒絶反応)、ならびに感染に関連する炎症(例えば、免疫応答)、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患、神経障害性疼痛、トリプレットリピート病、星状細胞腫、およびアルコール性肝疾患の結果としての神経変性)、虚血傷害(例えば、卒中)、およびカヘキシー(例えば、種々の生理学的および病理学的状態(例えば、神経損傷、飢餓、熱、アシドーシス、HIV感染、ガンの苦痛、およびある内分泌障害)を伴う加速された筋タンパク質分解)が挙げられる。
【0146】
本発明の化合物および医薬組成物は、ガンの治療に特に有用である。本明細書中で用いられる場合、「ガン」という用語は、無制御または非調節細胞増殖、細胞分化の減少、周囲組織に浸潤する不適切な能力、および/または異所で新生物を確立する能力によって特徴付けられる細胞障害を指す。「ガン」という用語は、固体腫瘍および血液媒介腫瘍を包含するが、これらに限定されない。「ガン」という用語は、皮膚、組織、器官、骨、軟骨、血液、および血管の疾患を包含する。「ガン」という用語は、原発性および転移性ガンをさらに包含する。いくつかの実施形態において、したがって、本発明は、ガンの治療で使用される、式(I)の化合物、またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、式(I)の化合物、またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物を含む、ガンの治療のための医薬組成物(前述のとおり)を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、ガンの治療のための医薬組成物(前述のとおり)を調製するための、式(I)の化合物、またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、有効量の式(I)の化合物、またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物の、ガンの治療のための使用を提供する。
【0147】
酵素反応動力学、すなわち、種々のプロテアソーム阻害剤間の解離半減期における差異は、種々の阻害剤の組織分布における差異をもたらす可能性があり、これは安全性および有効性プロフィールの差異に至る可能性がある。例えば、緩慢可逆および不可逆性阻害剤を用いると、かなりの割合の分子が、赤血球、血管内皮、および十分灌流した器官、例えば肝臓中のプロテアソーム(すなわち、近位区画で最も「直ちに利用可能な」プロテアソーム)と結合する可能性がある。これらの部位は、これらの薬剤の「シンク」として有効に作用する可能性があり、分子と急速に結合し、固体腫瘍中の分布に影響を及ぼし得る。
【0148】
理論によって拘束されることを望まないが、本発明者らは、プロテアソームからさらに急速に解離する化合物が、腫瘍に対してさらに有効に分布し、改善された抗腫瘍活性に至ると考える。いくつかの実施形態において、本発明は、ガンの患者を治療するための方法であって、患者に、式(I)、(I−A)、(I−B)、(II)のいずれか1つの化合物を投与することを含む方法に関し、ここで、化合物は60分未満の解離半減期を示す。いくつかの実施形態において、化合物は、10分未満の解離半減期を示す。
【0149】
開示されたプロテアソーム阻害剤で治療することができる固体腫瘍の非限定的例としては、膵臓ガン;膀胱ガン;結腸直腸ガン;乳ガン、例えば転移性乳ガン;前立腺ガン、例えばアンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性前立腺ガン;腎臓ガン、例えば転移性腎細胞ガン;肝細胞ガン;肺ガン、例えば非小細胞肺ガン(NSCLC)、細気管支肺胞上皮ガン(BAC)、および肺腺癌;卵巣ガン、例えば進行性上皮ガンまたは原発性腹膜ガン;子宮頸癌;胃ガン;食道ガン;頭頸部ガン、例えば頭頸部の扁平上皮ガン;黒色腫;神経内分泌ガン、例えば転移性神経内分泌腫瘍;脳腫瘍、例えばグリオーマ、未分化希突起グリオーマ、成人性多形神経膠芽腫、および成人性未分化星状細胞腫;骨ガン;ならびに軟部組織肉腫が挙げられる。
【0150】
開示されたプロテアソーム阻害剤で治療することができる血液学的悪性腫瘍の非限定的例としては、急性骨髄性白血病(AML);慢性骨髄性白血病(CML)、例えば加速型CMLおよびCML急性転化期(CML−BP);急性リンパ芽球性白血病(ALL);慢性リンパ性白血病(CLL);ホジキン病(HD);非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば濾胞性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫;B細胞リンパ腫;T細胞リンパ腫;多発性骨髄腫(MM);アミロイドーシス;ワルデンストレームマクログロブリン血症;骨髄異形成症候群(MDS)、例えば不応性貧血(RA)、環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)、(過剰芽球を伴う不応性貧血(RAEB)、および環状鉄赤芽球を伴う不応性貧血(RAEB−T);ならびに骨髄増殖性症候群が挙げられる。
【0151】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物または組成物は、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、アミロイドーシス、頭頸部ガン、軟部組織肉腫、非小細胞肺ガン、および前立腺ガンからなる群から選択されるガンに罹っているか、または発症するかもしくは再発を経験する危険性のある患者を治療するために用いられる。いくつかの実施形態において、本発明の化合物または組成物を用いて、多発性骨髄腫およびマントル細胞リンパ腫からなる群から選択されるガンに罹っているか、または発症するかもしくは再発を経験する危険性のある患者を治療する。
【0152】
いくつかの実施形態において、本発明のプロテアソーム阻害剤を別の治療剤とともに投与する。他の治療剤も、プロテアソームを阻害することができるか、または異なる機構によって機能することができる。いくつかの実施形態において、他の治療剤は、治療される疾患または状態を有する患者に対して通常投与されるものである。本発明のプロテアソーム阻害剤は、他の治療剤とともに、単一投与形態で、または別個の投与形態として投与することができる。別個の投与形態として投与される場合、他の治療剤は、本発明のプロテアソーム阻害剤の投与前、投与と同時、または投与後に投与することができる。
【0153】
いくつかの実施形態において、式(I)のプロテアソーム阻害剤、またはその薬剤的に許容される塩もしくはボロン酸無水物を抗ガン剤とともに投与する。本明細書中で用いられる場合、「抗ガン剤」という用語は、ガンを有する対象者に、ガンを治療する目的で投与される任意の薬剤を指す。
【0154】
DNA傷害化学療法剤の非限定的例としては、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシンおよびその類似体または代謝産物、ならびにドキソルビシン);トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、およびダウノルビシン);アルキル化剤(例えば、メルファラン、クロランブシル、ブスルファン、チオテパ、イフォスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、デカルバジン(decarbazine)、メトトレキサート、マイトマイシンC、およびシクロホスファミド);DNAインターカレーター(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン);DNAインターカレーターおよびフリーラジカル発生剤、例えばブレオマイシン;ならびにヌクレオシド模倣剤(例えば、5−フルオロウラシル、カペシチビン(capecitibine)、ゲムシタビン、フルダラビン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、およびヒドロキシ尿素)が挙げられる。
【0155】
細胞複製を損なう化学療法剤としては:パクリタキセル、ドセタキセル、および関連する類似体;ビンクリスチン、ビンブラスチン、および関連する類似体;サリドマイド、レナリドマイド、および関連する類似体(例えば、CC−5013およびCC−4047);タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブおよびゲフィチニブ);プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ);NF−κB阻害剤、例えばIκBキナーゼの阻害剤;ガンで過剰発現されたタンパク質と結合し、それにより細胞複製を下方制御する抗体(例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、およびベバシズマブ);ならびにガンにおいて上方制御されるか、過剰発現されるか、または活性化されることが知られ、その阻害が細胞複製を下方制御するタンパク質または酵素の他の阻害剤が挙げられる。
【0156】
本発明をさらに十分に理解するために、以下の調製例および試験例を記載する。これらの実施例は、特定の化合物を作製または試験する方法を示し、いかなる形であれ本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。