【実施例】
【0050】
実施例
本開示は、以下の例示的な実施形態の詳細な説明および実施例を参照することにより、より容易に理解されうる。本明細書中に開示された詳細な説明および実施例を考慮して、他の実施形態が当業者にとって明らかとなろうことが理解される。
【0051】
実施例1
6000RPM(毎分回転数)の速度で、80ÅのMoO
3が予め被覆されたインジウム錫酸化物(ITO)基板上にスピンコートされたSQ:PC
70BM(重量濃度で1:6である)薄膜のX線回折(XRD)パターンを、Rigaku回折装置を使用して、θ−2θ法で、40kVのCuKα線源を用いることによって得た。クロロホルム中で20mg/mlの濃度の溶液から製膜されたSQ:PC
70BM(1:6)混合物の厚みは、Woolam VASE偏光解析器を用いて決定され、680Åであった。
【0052】
原子間力顕微鏡法(AFM)画像は、タッピングモードのNanoscope III AFMで収集した。溶媒アニールによるサンプルとして、SQ:PC
70BM(1:6)バルクフィルムを1mLのジクロロメタン(DCM)入りの密閉されたガラスバイアル中に収め、6分から30分の間で時間を変化させてアニールした。熱的にアニールしたサンプルとして、SQ:PC
70BM(1:6)フィルムを50℃、70℃、110℃および130℃で10分間、N
2グローブボックス中のホットプレート上でアニールした。
【0053】
次に、クロロホルム溶媒から製膜した直後のSQ:PC
70BM(1:6)フィルムのDCM溶媒アニールを、以下の構造を有する太陽電池について行った:ITO/MoO
3(80Å)/SQ:PC
70BM(1:6 680Å)/LiF(8A)/Al(1000Å)。デバイスを熱的に蒸発させたC
60層で被覆し、ITO/MoO
3(80Å)/SQ:PC
70BM(1:6 680Å)/C
60(40A)/BCP(10Å)/LiF(8Å)/Al(1000Å)の構造とした。ここで、基準圧力を10
−7torrとした真空系中でMoO
3をITO表面上に熱的に蒸発させた。デバイス面積を7.9×10
−3cm
2とするシャドーマスクを介して8Åの厚みのLiFおよび1000Åの厚みのAlカソードを熱的に蒸発させて、デバイスを完成させた。Oriel 150W ソーラーシミュレータおよびNREL校正標準Si検出器を用いて、AM1.5Gフィルターを備えたXeアークランプから照射することにより、デバイスの電流密度−電圧(J−V)特性およびη
pを測定した。測定および太陽光スペクトルの収集は、標準的な方法を用いて行った。EQEは、400Hzで遮断した(chopped)Xeランプからの単色光を、デバイスの活性領域に焦点を合わせることで測定した。
【0054】
図1Aにおいて示されるように、50℃、70℃、110℃および130℃で10分間熱的にアニールしたSQ:PC
70BM(1:6)バルク太陽電池には、XRDピークが現れず、これは、アモルファス特性であることを示している。対照的に、12分よりも長くDCM溶媒アニールを行った後のものは、(001)および(002)ピークに帰属されうる二つのSQのXRDピークが現れている。溶媒アニール後のSQ:PC
70BM(1:6)混合物におけるSQピークが比較的弱く表れているため、いかなる特定の理論に縛られることなく、SQおよびPC
70BMのアモルファスセグメント間で、SQが整列した/結晶性ドメインを形成していると考えられる。製膜直後(
図1B)、および四つの熱的にアニールしたサンプルのAFM画像の粗度は、平均して約0.58±0.12nmであり、SQおよびPC
70BM相の明らかな相分離の差は観察されず、このような結果は、XRDの結果と一致するものであった。PC
70BMがSQ分子の会合を妨害しうるものであり、製膜直後のSQ:PC
70BMフィルム(
図1A)においてその結晶性を低下させると考えられる。対照的に、溶媒アニール後のSQ:PC
70BMフィルムの粗度は、約0.58±0.12nm(製膜直後)から約5.6±1.2nm(DCMで8分−
図1C)までといったように、一桁増加することが明らかとなった。DCMによるアニール時間をより長くして12分とすると、SQ:PC
70BM(1:6)混合物の粗度は2倍となり(
図1D)、より多くのSQクラスターが多結晶化し、激しい相分離が生じていることが示唆された。したがって、製膜直後のアモルファスのSQ:PC
70BM(1:6)フィルムをDCMアニールすることで、SQ相のナノ結晶の形態を与えたと考えられる。
【0055】
クロロホルム溶媒から製膜された直後のものを、温度範囲を50℃から130℃として熱的にアニールすることにより得たSQ:PC
70BM(1:6)バルクセルの曲線因子を、
図2Aに示す。熱的にアニールする工程は、曲線因子を改善させないことが現れており、この結果は、
図1AのXRDデータと一致し、熱的アニールは、大きな結晶性の発達を生じさせることが示唆された。クロロホルム溶媒から製膜された後、DCMによる溶媒アニール工程を行った、SQ:PC
70BM(1:6)デバイスの結果を
図2Bに示す。図に示されるように、DCMアニール時間が6分であるものの、1sun照明における曲線因子が改善されていることが明らかとなった。DCB溶媒から製膜したSQ:PC
70BM(1:6)デバイス(
図2C)において、曲線因子は急速に減少している。対照的に、10分間継続してDCMアニールされたデバイスの曲線因子は、1sunでの照射において徐々に増加していることが示された。
図1Aに示されるように、DCM溶媒アニールの継続時間が長いほど、混合物におけるSQ相の結晶性が増大し、SQ:PC
70BM(1:6)混合物においてDCMアニール時間を延長するほど、曲線因子が改善され、このようなことは、少なくとも、SQ相の会合/結晶性含有物が増加することに起因していると考えられる。
【0056】
図3A中の、溶媒から製膜された直後のSQ:PC
70BM(1:6)バルク電池と、溶媒アニールされたSQ:PC
70BM(1:6)バルク電池の外部量子効率(EQE)により、300nmから750nmまでにおいて、幅広く、かつ良好なスペクトル感度が得られることが示されている。λ=約350nmおよび約500nmに中心があるピークは、PC
70BM吸収に由来すると考えられる一方で、λ=約690nmにおけるEQEピークは、SQ吸収によるものであると考えられる。DCM溶媒アニール時間が10分であるものについて、EQEピークの増大およびカーブシフトという結果から、DCM溶媒アニール工程後では、励起子の解離および電荷回収がより均衡した状態であることが示唆される。
【0057】
DCB溶媒から製膜されたSQ:PC
70BM(1:6)バルク電池の、1sun照射におけるJ−V特性を
図3Bに示す。その後にDCM溶媒アニールしたものは、短絡電流密度が増加し、J−V曲線の形状が変化したことが現れており、デバイスがより導電性となったことが示唆される。10分間DCMアニールしたSQ:PC
70BM(1:6)バルクデバイスのFFは、製膜直後のデバイスと比較して、高い電力強度において、比較的高い値を示しており、バルクフィルムの内部で、より良好なキャリア電荷輸送を示すことを示唆している。
図3Cは、DCM溶媒アニールしたデバイスが、電力強度に対するη
pにおいてもまた明らかな増大を示すことを意味している。これらの結果は、
図2Aおよび2Bにおいて示される、熱および溶媒アニールされたデバイスの挙動と一致していると思われる。
【0058】
実施例2
1000RPM(毎分回転数)の低速で、80ÅのMoO
3が予め被覆されたインジウム錫酸化物(ITO)基板上に30秒間1000rpmでスピンコートされたSQ:PC
70BM(相対重量濃度で1:6である)薄膜のX線回折(XRD)パターンを、Rigaku回折装置を使用して、θ−2θ法で、40kVのCuKα線源を用いることによって得た。12時間ホットプレート上で加熱された1,2−ジクロロベンゼン(DCB)中で42mg/mlの濃度の溶液から製膜されたSQ:PC
70BM(1:6)混合物の厚みは、Woolam VASE偏光解析器を用いて決定され、780Åであった。
【0059】
原子間力顕微鏡法(AFM)画像は、タッピングモードのNanoscope III AFMで収集した。溶媒アニールによるサンプルとして、SQ:PC
70BM(1:6)バルクフィルムを1mLのジクロロメタン(DCM)入りの密閉されたガラスバイアル中に収め、6分から30分の間で時間を変化させてアニールした。透過電子顕微鏡法(TEM)による研究のため、80ÅのMoO
3がコートされたITO基板上のSQ:PC
70BM(1:6)フィルムを脱イオン(DI)水中に1時間浸漬させた。次に、MoO
3を水中で溶解させ、有機層をDI水の表面に浮かせた。その後、製膜直後、および溶媒アニールしたSQ:PC
70BM(1:6)フィルムを、Cuグリッドがコートされたホーリーカーボン(holy carbon)フィルム上に転写した。200 kV JEOL 2010F分析電子顕微鏡を用いてTEM画像を得た。
【0060】
製膜直後のもの、および四つのDCMアニールした石英基板上のフィルムの吸収スペクトルを、Perkin-Elmer Lambda 1500 UV-NIR分光計を用いて計測した。励起波長λ=600nmとしてフォトルミネッセンス(PL)を測定した。太陽電池の構造は、以下の構造とした:ITO/MoO
3(80Å)/SQ:PC
70BM(1:6 780Å)/C
60(40Å)/BCP(10Å)/Al(1000Å)。ここで、基準圧力を10
−7torrとした真空系中でMoO
3をITO表面上に熱的に蒸発させた。スピンキャスト堆積および溶媒アニールに続いて、デバイス面積を8×10
−3cm
2とするシャドーマスクを介して8Åの厚みのLiFおよび1000Åの厚みのAlカソードを熱的に蒸発させて、デバイスを完成させた。Oriel 150W ソーラーシミュレータおよびNREL校正標準Si検出器を用いて、AM1.5Gフィルターを備えたXeアークランプから照射することにより、デバイスの電流密度−電圧(J−V)特性および電力変換効率(η
p)を測定した。測定および太陽光スペクトルの収集は、標準的な方法を用いて行った。EQEは、200Hzで遮断したXeランプからの単色光を、デバイスの活性領域に焦点を合わせることで測定した。
【0061】
室温下、超高純度窒素で満たされたグローブボックス中に収められ、密閉されたガラスバイアル中で、6分から30分の間、DCM蒸気にフィルムを接触させてSQ:PC
70BM(1:6)混合物のアニールを行った。
図4に示されるように、堆積した直後のSQ:PC
70BMフィルムは、X線回折(XRD)ピークがなく、これはアモルファス構造であることを示唆している。対照的に、10分アニールした後、2θ=約7.80±0.08°において、アニール時間を30分まで延長した際にその強度が増大するピークが現れている。このピークはSQの(001)反射であり、約11.26±0.16Åの分子間隔に相当する。DCMに30分間接触させた後、(002)反射に相当する第2ピークが現れ、順を追って継続的に増加していることを示唆している。12分および30分間アニールした混合物中のSQの平均結晶サイズは、それぞれ2.0±0.2nmおよび51±4nmと推定され、シェラー法を用いたXRDピークのブロード化により推定される。
【0062】
製膜直後のフィルムのAFM画像(
図5A)から得られる二乗平均平方根粗さは、約0.8±0.1nmである。対照的に、12分間溶媒アニールした後の混合物の粗さは、約8.4±1.2nm(
図5B)まで増加し、これは、混合物中におけるSQの多結晶成長に起因して、実質的な粗面化が生じていることを示唆している。さらに30分までアニール時間を長くしても、さらに粗面化して12.0±1.4nm(
図5C)となっていることから示されているように、SQおよびPC
70BMの相分離は継続する。この粗面化は、相分離のためであると考えられ、透過型電子顕微鏡(TEM)画像(
図5C)およびAFM(
図5Cの挿入図)により測定された表面相画像においてもまた観測される。XRDの線幅の拡大から上述したように、平均結晶ドメインサイズもまた、粗面化に伴って増大しているように見える。
【0063】
製膜直後、および四つのDCM溶媒アニールした石英基板上のSQ:PC
70BM混合物のフィルムの可視吸収スペクトルを、
図6Aに示す。アニール時間が8分となるまでは、観測したスペクトル幅の全体にわたってSQの吸収係数が増大したが、さらに時間を長くすると、かような変化は飽和したように見える。結晶性の混合物フィルム(DCM12分)のλ=680nmの吸収ピークは、アモルファスフィルムよりもはっきりしないこともまた示されている。
【0064】
フィルムのフォトルミネッセンス(PL)強度は、光生成ドナー励起子からアクセプター分子への電荷輸送が生じるとクエンチされる(quenched)(
図6B)。したがって、SQ:PC
70BM混合物における有意なPLクエンチは、界面間(間隔L
D)での光誘起生成(Photogeneration)に起因して励起子が効率的に解離することを示唆している。上述のように、関連する長さスケールは、SQについては1.6nm、PC
70BMについては20nmから40nmである。10分のものは最もPL強度のクエンチが大きく、続いて、アニール時間がさらに長くなると、クエンチは小さくなる。本明細書におけるL
Dおよび平均結晶サイズδは、いかなる特定の理論に縛られることなく理解されうる。およそ10〜12分間アニールした後、L
D〜δ〜2nmであるとき、PLクエンチが最も強く表れる。さらなるアニールは、δ>>L
Dである点において、結晶としてのさらなる相分離の開始を引き起こすことが示されており、したがって、励起子はもはや解離したヘテロ界面へ効率的に輸送されなくなる。
【0065】
図6C中の、製膜された直後および溶媒アニールされた太陽電池のEQEは、吸収スペクトルに類似して、幅広なスペクトル応答を示しており、λ=300nmからλ=750nmまでの波長に広がっている。EQEピークは、約26±2%(製膜された直後のもの)から約60±1%(10分間アニールしたもの)まで増大している。12分間アニールした後、EQEピークは、全波長範囲にわたって40%未満(<40%)まで減少している。これらの結果は、吸収において得られた結果と類似しており、さらに、L
Dに相当するサイズが最適化されることにより、電池効率が結晶サイズに強く依存していることを示唆しており、したがって、SQおよびPC
70BM間の解離したドナー/アクセプター界面への励起子拡散を最大にする。
【0066】
図6D中に示される、AM1.5G疑似太陽放射で、1sunにおいて測定されたJ−V特性により、短絡電流密度(J
sc)が約6.9mA/cm
2(製膜された直後のもの)から約12.0mA/cm
2(10分間溶媒アニールしたもの)まで増大し、DCMに12分間接触させた後に、約8.3mA/cm
2まで減少していることが示唆されている。FFの結果は、アニール時間に対して同様の依存性を示しており、分子パッキングが改良された結晶性有機材料であることが予想され、配向がそろうこと(extended order)により直列抵抗を下げることが示唆される。改良されたダイオード方程式を用いてJ−Vカーブにフィッティングすることにより、特定の直列抵抗、R
SAが得られる。製膜直後の電池は、約35.2±1.0Ω・cm
2のR
SAを有しており、アニール時間が12分であるとき、徐々に約5.0±0.5Ω・cm
2まで減少する。しかしながら、DCMアニール時間をさらに増加させると、活性層および接触物間のピンホール密度を増加させる可能性があり、ダイオードを短絡させうると考えられる。
【0067】
アニールによる光学的および電気的な変化は、η
pを増大させることが
図7Aにおいて示されている。ここで、製膜された直後の電池のη
pは、電力強度に伴い、わずかに増加しているように見えるが、1sunにおいて、約2.4±0.1%にまで次第に小さくなり、これに伴い、FFは、同時に約0.40±0.02(0.002sunにおいて)から約0.36±0.01(1sun)まで減少する(
図7B参照)。対照的に、10分間アニールした電池は、それに応じてη
pが1.5±0.1%から5.2±0.3%(1sun)まで増加することが示され、これらの群では電池のピーク測定値が5.5%であると同時に、FFが約0.42±0.01(0.002sun)から約0.50±0.01(1sun)まで増加している(J
SC=12.0mA/cm
2、FF=0.5およびV
oc=0.92V)。最終的には、12分アニールした電池は、η
pが約3.2±0.1%に低下し、これは、EQEおよびFFの減少に起因しうる。
【0068】
実施例3
バルク太陽電池を有する二層構造と比較するため、SQ/C
60平面電池を対照(control)電池として製造した。デバイス性能に対して結晶性が与える影響を調べるため、製膜された直後のSQ薄層を、50℃から130℃までの温度でアニールした。
図8Aに示されるように、110℃および130℃でアニールされたSQフィルムは、(001)および(002)ピークを示し、これは、結晶性であることを示唆している。平面セルのEQE(
図8B)により、110℃までアニール温度を昇温させると、光応答性が改善されたことが示されている。130℃のアニール温度では、約650nmおよび約760nmの、SQフィルムに帰属される二つのピークがあり、これは、アニール温度の上昇に伴い、SQモノマーが二量化反応を起こしていることが示唆される。110℃でアニールされた電池は、効率(η
p)では約4.6%にピークを与え、1sun照明においてFF=0.59、V
oc=0.76VおよびJ
sc=10.05mA/cm
2であり、FFは、低強度において約0.70近辺にまで達する。アニール温度を約130℃まで昇温すると、V
ocが0.46Vまで低下するため、η
pが2.9%にまで低下している(
図9A〜B参照)。
図8Aに示されるように、アニール温度を130℃にすると、結晶性が増大し、高い電力強度において、FFが0.67まで上昇する。
【0069】
SQ:PC
70BM(1:6)バルクヘテロ接合を実施例2に記載の方法と同様にして作製した。50℃、70℃、110℃および130℃で10分間アニールしたSQ:PC
70BM(1:6)バルク太陽電池は、XRDピークは現れず、これは、アモルファス特性であることを示している。いかなる特定の理論に縛られることなく、PC
70BMがSQ分子の会合を阻害し、その結晶性を損ねていると考えられる。製膜直後、および四つの熱的にアニールしたサンプルのAFM画像の粗度は、平均して約0.579±0.06nmであり、SQおよびPC
70BM相の明らかな相分離の差は観察されず、このような結果は、XRDの結果と一致するものであった。熱的アニールによるSQおよびPC
70BMの成分再構成をXPS(
図10)によってもまた研究した。結合エネルギーが402eVであるN 1sピークは、PC
70BM分子(C
82H
14O
2)においてN原子は存在しないため、SQ:PC
70BMフィルムの表面上でSQ(C
32H
44N
2O
6)会合が存在していることを示唆している。SQおよびPC
70BMに帰属されると思われるC 1sおよびO 1sの強いピークがある。五つのサンプルの表面上におけるSQおよびPC
70BMの組成物を、XPS測定(
図10A)から得られたO/C原子比率を用いて評価した。Nピークは非常に弱いため、組成物のC/NまたはO/N原子比率は決定できなかった。
図10Bにおいて示されるように、種々のSQ:PC
70BMサンプル表面から得られた濃度は、AFM測定と一致しており、熱的にアニールした後の明らかな重量比変化は見られなかった。したがって、XRD、AFMおよびXPS測定より、熱工程のみを経たスピン製膜サンプルにおいて、形態または結晶性の変化は見られなかった。
【0070】
5つのデバイスのデバイス性能を、
図11に示す。70℃でアニールしたSQ:PC
70BM(1:6)バルク電池について、AM1.5G照明で0.02sun(2mW/cm
2)においてその効率は約5.3%、FF=0.48であり、1sunにおいて約4.0%、FF=0.37に低下した。このFFの低下は、バルク太陽電池が抵抗性を残しており、それぞれの電極への二つの連続的な電荷輸送経路の欠如を示すことを示唆しており、これは同様に、自由なキャリアの抽出を抑制しうる。
【0071】
製膜された直後のフィルムにおけるSQおよびPC
70BMの形態変化および結晶性をさらに制御するため、溶媒および熱的なアニールの組み合わせを探求した。溶媒アニール時間は、空気中でスピンコートした後、フィルムを直ちに蓋つきのガラス瓶中で保持することにより制御される。当該瓶は、1mlのジクロロメタン(DCM)で満たされている。当該瓶は、溶媒が急速に蒸発するのを防止するため、蓋によって覆われている。その後、製膜された直後、および四つのアニールされたフィルムを、DCM溶媒を除去するために50℃でアニールするため、N
2グローブボックス中のホットプレート上に載置した。
図12に示されるように、SQ:PC
70BMフィルムの粗度は、約0.83nm(
図12A−製膜された後、溶媒または熱的にアニールされていないもの)から、約8.4nm(
図12C−DCM溶媒アニールを30分間行い、次いで50℃で熱的にアニールしたもの)まで、一桁増大した。
図12Bおよび12Dの結果は、熱的なアニールのみ行ったものの結果である。XRDデータ(
図12E−種々の溶媒アニール時間で晒され、次いで50℃で熱的にアニールされたフィルム)は、より長時間アニールされたSQ:PC
70BMフィルムでは、(001)SQピークがあることを明確に示しており、これは、DCMアニール溶媒の溶解性および揮発性によって、DCM蒸気相が確かにSQ:PC
70BM混合物のナノスケール相分離を促進することを示唆している。この結果は、アニール溶媒の溶解性および蒸気圧によって、SQ:PC
70BMバルク太陽電池の分散状態および分子秩序が、制御されうることを示唆している。
【0072】
種々の時間においてDCM溶媒アニールにさらされた後、50℃で熱的にアニールされたデバイスの性能を、
図13に記載する。6分アニールされたサンプルについて、約5.3%という最も高い効率が達成され、AM1.5G照明で0.02sunにおいてFF=0.47であり、1sunにおいて効率はゆっくりと約4.4%に低下し、FF=0.39であった。製膜直後のデバイスと比較して、6分間DCMアニールしたSQ:PC
70BMバルクデバイスのFFは、高い電力強度においてより高い値を有することが示され、これは、バルクフィルム内で、より良好なキャリア電荷輸送が生じていることを示唆している。混合物中におけるSQの結晶特性は、ホール電荷輸送を促進させうるようにSQ分子が秩序だって会合していることを示唆している。ある程度において、DCM溶媒アニールは、熱的アニールのみによって生じるデバイス特性を低下させる電荷の不均衡を減少させることが示されている。FFは、DCMアニールしたデバイスについては0.50よりも依然として低く、ナノスケールにおけるSQおよびPC
70BM混合物の良好に制御された相分離について、種々の溶媒やアニール時間を経てさらに調査されうる。
図14は、
図13に記載された、作製された直後のデバイスのEQE応答を示しており、約300nmから約750nmまでのスペクトル応答性を示している。
【0073】
実施例以外、または、特に指摘しない場合において、本明細書および特許請求の範囲で用いる配合量、反応条件等を表わす全ては、「約」の語によって全ての具体例において変更し得るものと解釈される。したがって、特に反対のことを指摘しない限り、明細書および添付の特許請求の範囲で規定される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化させ得る概略値である。最低限でも、特許請求の範囲の範囲と同等の規定に本発明を制限することを意図しないものとして、各数値パラメータは、有効数字および通常の四捨五入方法に照らして解釈すべきである。
【0074】
広い範囲の開示である数値範囲およびパラメータは概算ではあるものの、特に指摘しない限りは、特定の実施例で規定した数値はできる限り正確に報告される。いかなる数値も、しかしながら、各試験測定での標準偏差の不可避の結果、本質的にある誤差を含んでいる。
【0075】
本明細書中で用いられる、「その」、「一つの」または「一の」の語は、「少なくとも一つの」を意味し、特に反対の明示的な記載がない限り、「唯一の」に限定されるべきではない。したがって、たとえば、「一つの層」は、「少なくとも一つの層」を意味すると解されるべきである。