(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933552
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】排気ターボ過給機
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20160602BHJP
F02B 39/14 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
F02B39/00 R
F02B39/00 D
F02B39/14 D
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-526000(P2013-526000)
(86)(22)【出願日】2011年8月18日
(65)【公表番号】特表2013-536369(P2013-536369A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】US2011048219
(87)【国際公開番号】WO2012027184
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年2月26日
(31)【優先権主張番号】102010035282.9
(32)【優先日】2010年8月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ホルンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・コナー
【審査官】
寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−065829(JP,A)
【文献】
実開昭61−192522(JP,U)
【文献】
特表2004−512453(JP,A)
【文献】
特開2008−208732(JP,A)
【文献】
特開平06−212990(JP,A)
【文献】
実開平03−006028(JP,U)
【文献】
特開平11−062600(JP,A)
【文献】
実開昭61−092724(JP,U)
【文献】
実開昭59−154829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00 − 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ターボ過給機(1)であって、
圧縮機ホイール(3)およびタービンホイール(4)がその上に配設されるシャフト(2)を有し、
タービン側ラジアル軸受ブッシング(6)を有し、かつ前記タービン側ラジアル軸受ブッシング(6)とタービン側軸受筐体端部領域(8)との間に配設された油収集チャンバ(7)を有する軸受筐体(5)を有し、
前記シャフト(2)は、半径方向(R)で外向きに前記油収集チャンバ(7)の中へ延在し、前記油収集チャンバ(7)のラジアル軸受側の第1の区切り壁(10)とともにギャップ(11)を区切る肩部(9)を有し、
前記油収集チャンバの前記第1の区切り壁(10)、上部壁(12)、および第2の区切り壁(13)が、機械加工されてなり、
前記油収集チャンバ(7)と前記軸受筐体端部領域(8)内に配設されたピストンリング密封(14)との間で、前記シャフト(2)の外側周囲表面(16)と軸受筐体内側周囲表面(17)との間にピストンリング密封ギャップ(15)が配設される、
排気ターボ過給機(1)。
【請求項2】
前記上部壁(12)が前記第2の区切り壁(13)へと傾斜して下がる、請求項1に記載の排気ターボ過給機。
【請求項3】
前記油収集チャンバ(7)が、前記軸受筐体(5)の油チャンバ(18)に接続される、請求項1または2に記載の排気ターボ過給機。
【請求項4】
前記油収集チャンバ(7)が、前記油チャンバ(18)内への漏斗形状出口(19)を有する、請求項3に記載の排気ターボ過給機。
【請求項5】
ガセットのような流れ案内要素(20)が、前記漏斗形状出口(19)内に配設される、請求項4に記載の排気ターボ過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1のプリアンブルによる排気ターボ過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
前記タイプの排気ターボ過給機は、独国特許出願公開第102007027869A1号明細書から既知である。タービン内への油の損失を最小限にする手段が前記ターボ過給機に実装されてもなお、本発明の状況内で実行された試験は、前記手段は不十分であることを示してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、特許請求項1のプリアンブルに特定されたタイプの、実質的にタービン内への油の損失を回避することを可能にする、排気ターボ過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的は、請求項1の特徴の手段によって達成される。
【0005】
本発明は、流れを制御された油の排出をともなうタービン側の動的密封の概念を提案し、タービン側ラジアル軸受ブッシングのタービン側における油は、狭いギャップを介して導かれ、内側を機械加工され、および/または平滑化された油収集チャンバ内へ、好適には外側へ向けることによって、半径方向に導入される。油の前記油収集チャンバ内への導入の後、シャフトの高い回転速度、およびシャフト肩部と油収集チャンバのラジアル軸受側の区切り壁との間の狭いギャップの手段により、油は遠心力により、タービン側の方向により小さくなる油収集チャンバの外径へと進むように導かれ、好適には流れ案内要素を備える油チャンバまたは油中子内へと導入される。
【0006】
従属請求項は、本発明の有利な改良に関する。
【0007】
流れ案内要素(「ガセット」とも呼ばれる)が提供される場合、油収集チャンバ内のこの画定された油案内は、乱れの形成ならびに油の泡および/または油のミストの形成を少なくすることができる効果を有する。
【0008】
さらに、前記手段により、目標とされるやり方で油が排出され、油収集チャンバとピストンリング密封との間にあるピストンリング密封ギャップから離れて保持される。
【0009】
油収集チャンバの切り抜き部分、外を向けられた部分を取り囲むことにより、および外を向いた部分の下側への鋳造中子、または油収集チャンバ中子の接続により、ピストンリング密封ギャップは、長くすることができる。これによって、結果的に砂中子の最少壁厚さを除去し、鋳造の許容誤差を改善する。
【0010】
軸受筐体およびシャフトの肩部とロータジャーナルとの間の狭いギャップにより、ラジアル軸受からタービン側への油の処理能力は減少する。軸受点間の改善された油排出により、油中子の改造により、既知の設計に対してタービン側軸受ブロックを短くすることも可能になる。
【0011】
本発明のさらなる詳細、有利点、および特徴は、図面に基づく以下の例示的な実施形態の記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による、排気ターボ過給機の概略的に若干単純化した図を示す。
【
図2】タービン側ラジアル軸受ブッシングの領域内の排気ターボ過給機の軸受筐体の部分の拡大図を示す。
【
図3】
図2に関連して、
図2に示した領域のさらに拡大した図を示す。
【
図4】油収集チャンバの油チャンバへ出口の領域の、軸受筐体の概略的に高度に単純化した図を示す。
【
図5】排気ターボ過給機の軸受筐体の油チャンバを形成するための砂中子の図を示す。
【
図6】排気ターボ過給機の軸受筐体の油チャンバを形成するための砂中子の図を示す。
【
図7】収集チャンバを生産するためのさらなる中子に関連して
図5および
図6による砂中子の部分図を示す。
【
図8】収集チャンバを生産するためのさらなる中子に関連して
図5および
図6による砂中子の部分図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明による、シャフト2と、圧縮機ホイール3と、シャフトの反対側の端部に取り付けられたタービンホイール4とを備える、排気ターボ過給機1を図示する。圧縮機ホイール3とタービンホイール4との間に、タービン側軸受配列またはラジアル軸受ブッシング6、および圧縮機側軸受配列またはラジアル軸受ブッシング30も有する、軸受筐体5が図示される。
【0014】
排気ターボ過給機1、または軸受筐体5も、軸受筐体端部領域8内に油収集チャンバ7およびピストンリング密封14を有する。
【0015】
排気ターボ過給機1は、圧縮機筐体およびタービン筐体、ならびに過給機のタイプに応じて提供される他の構成要素も自明的に有するが、これらは本発明の原理を説明するためには必要とされないので、前記構成要素は
図1には図示されない。
【0016】
図2および
図3の並置から、排気ターボ過給機1のシャフト2が、半径方向Rで外向きに油収集チャンバ7内へ延在する肩部9を有することが明らかになる。半径方向Rは、過給機軸Lと垂直な方向矢印として、
図1および
図3の両方に図示される。肩部9は、ロータジャーナルとも呼ばれる場合があり、その半径方向外向きに向けられた広がりの理由で、好適にはごく狭い設計であるギャップ11を、油収集チャンバ7のラジアル軸受側の第1の区切り壁10とともに区切る。
【0017】
油収集チャンバ7は、油収集チャンバ7の第1の区切り壁10、上部壁12、および第2の区切り壁13などの外を向いたチャンバとして形成され、滑らかな表面を有するように機械加工される。これは、ギャップ11の前記狭い設計を達成するために好ましい。
【0018】
特に
図3から見ることができるように、上部壁12は第1の区切り壁10から第2の区切り壁13へと傾斜して下がり、すなわち、ピストンリング密封の側において、大きい直径領域から小さい直径領域へ、第1の区切り壁10から第2の区切り壁13へと続く。
【0019】
図3は、長い設計が好ましく、シャフト2の外側周囲表面16と軸受筐体内側周囲表面17との間に形成されるピストンリング密封ギャップ15の提供も示す。前記ピストンリング密封ギャップ15は、油収集チャンバ7と軸受筐体端部領域8内に配設されるピストンリング密封14との間に配設される。
【0020】
図4は、軸受筐体5、シャフト2、および油収集チャンバ7の概略的に高度に単純化された端面図を示し、滑らかな遷移Ueを介して、油Oeを、油収集チャンバ7内で上向きに、および前記油が漏斗形状出口19を介して流れて出るのを可能にするように引っ張る空気の流れLUが説明されるはずであり、ここで、軸受筐体5の油チャンバ18内に流れ案内要素20が配設される。流案内要素20は、
図4の図式的な図から見ることができるように、ガセットまたは切頭円錐の様式で形成される。これは、シャフト2の高い回転速度と協働して、目標とする油の流れOeSを生み出す。
【0021】
軸受筐体5内に油チャンバ18を形成することを可能にするために、
図5および
図6に図示される砂中子22が提供されてもよい。既知の設計と比較して短くなったタービン側軸受ブロック21(
図2を参照のこと)を製造することを可能にするために、砂中子22は、表面23およびそれから軸方向に離間された表面24を有し、これらの表面は、完全に鋳造された状態で、
図2に示される表面S1およびS2に対応する。
【0022】
砂中子22は、切り欠き27を区切る突起25および26も有し、これは、完全に鋳造された状態で、
図4に図示された流れ案内要素20を生み出す。
【0023】
図7および
図8は、その突起25および26の領域内の砂中子22、および、特に、油収集チャンバ7の形成29も可能にする機械加工28のモデルも示す。ここで、突起25および26は、外を向いた部分の下側、または油収集チャンバ7への中子の接続を形成する。
【0024】
上記の開示を補足するために、
図1〜
図8において本発明の図式的な図示の参照が明示的に行われる。
【符号の説明】
【0025】
1 排気ターボ過給機
2 シャフト
3 圧縮機ホイール
4 タービンホイール
5 軸受筐体
6 タービン側ラジアル軸受ブッシング
7 油収集チャンバ
8 軸受筐体端部領域
9 肩部/シャフト肩部/ロータジャーナル
10 第1の区切り壁
11 ギャップ
12 上部壁
13 第2の区切り壁
14 ピストンリング密封
15 ピストンリング密封ギャップ
16 シャフト2の外側周囲表面
17 軸受筐体内側周囲表面
18 軸受筐体5の油チャンバ
19 漏斗形状出口
20 流れ案内要素/ガセット
21 タービン側軸受ブロック
22 砂中子
23 表面
24 表面
25 突起
26 突起
27 凹部
28 機械加工のモデル
29 油収集チャンバの外を向いた部分
30 圧縮機側ラジアル軸受ブッシング
L 過給機軸
R 半径方向
LU 空気の流れ
Ue 滑らかな接線方向の遷移
Oe 油
OeS 油の流れ
S1 表面
S2 表面