特許第5933554号(P5933554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5933554光学活性のあるピラゾリルアミノキナゾリン及びその医薬組成物及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933554
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】光学活性のあるピラゾリルアミノキナゾリン及びその医薬組成物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/12 20060101AFI20160602BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20160602BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160602BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160602BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20160602BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20160602BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20160602BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20160602BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   C07D403/12CSP
   A61K31/517
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P13/12
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61K47/34
【請求項の数】33
【全頁数】110
(21)【出願番号】特願2013-527249(P2013-527249)
(86)(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公表番号】特表2013-536854(P2013-536854A)
(43)【公表日】2013年9月26日
(86)【国際出願番号】US2011049902
(87)【国際公開番号】WO2012030917
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年8月19日
(31)【優先権主張番号】61/379,280
(32)【優先日】2010年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/379,286
(32)【優先日】2010年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508278239
【氏名又は名称】アムビト ビオスシエンセス コルポラチオン
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マルク ダブリュー.ホルラダイ
(72)【発明者】
【氏名】エドウアルド セトトイ
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0038023(US,A1)
【文献】 特表2006−515846(JP,A)
【文献】 特表2010−538004(JP,A)
【文献】 特表2010−521487(JP,A)
【文献】 特表2011−513295(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/077560(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/033977(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02388596(GB,A)
【文献】 特表2005−521652(JP,A)
【文献】 特表2008−546736(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/099379(WO,A1)
【文献】 Jiang, He, et al.,Asymmetric hydrogenation of aromatic ketones catalyzed by RuCl2[(S)-P-Phos]-[(S)-DAIPEN],Wuli Huaxue Xuebao,2010年,26(3),675-678
【文献】 KHAN AHSAN Y,SINGLE ENANTIOMER DRUGS: SHOULD THEY BE DEVELOPED?,ESSENTIAL PSYCHOPHARMACOLOGY,2006年 1月 1日,V7 N1,P15-23
【文献】 Kiss, Robert, et al.,Recent developments on JAK2 inhibitors: a patent review,Expert Opinion on Therapeutic Patents,2010年,20(4),471-495
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくは水和物。
【請求項2】
前記化合物が塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記塩が塩酸塩である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
前記塩がエシル酸塩である、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
10%以上の鏡像体過剰率を有する、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
95%以上の鏡像体過剰率を有する、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が、少なくとも70%の純度を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が、少なくとも90%の純度を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、JAK2を選択的に阻害する、請求項1〜8のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、JAK3よりもJAK2を選択的に阻害する、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物、及び医薬として許容し得る賦形剤を含有する、医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、経口、経鼻、経気管支、又は局所投与のために製剤化される、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、単回剤形として製剤化される、請求項11又は12記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物が、経口、非経口、経鼻、経呼吸器、肺内、又は静脈内剤形として製剤化される、請求項1113のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記経口剤形が、錠剤又はカプセル剤である、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬として許容し得る賦形剤が、PEG 400である、請求項1115のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬として許容し得る賦形剤が、水である、請求項1116のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物が、静脈内投与のために製剤化される、請求項16又は17記載の医薬組成物。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物、又は請求項1118のいずれか一項記載の医薬組成物を含む、対象における増殖性疾患の1つ以上の症状を治療、予防、又は改善する医薬組成物。
【請求項20】
前記増殖性疾患が癌である、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記増殖性疾患が、白血病である、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記増殖性疾患が、炎症疾患である、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項23】
請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物、又は請求項1118のいずれか一項記載の医薬組成物を含む、対象におけるJAK-媒介性状態、障害、又は疾患の1つ以上の症状を治療、予防、又は改善するための医薬組成物であって、該JAK-媒介性状態、障害、又は疾患が、骨髄増殖性疾患、白血病、リンパ増殖性疾患、癌又は炎症疾患である、前記医薬組成物
【請求項24】
前記JAK-媒介性状態、障害、又は疾患が癌である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記JAK-媒介性状態、障害、又は疾患が白血病である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記JAK-媒介性状態、障害、又は疾患が炎症疾患である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項27】
請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物、又は請求項1118のいずれか一項記載の医薬組成物の有効量を含む、対象における細胞の増殖を阻害する医薬組成物。
【請求項28】
前記細胞が、癌性細胞である、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物、又は請求項1118のいずれか一項記載の医薬組成物の有効量を含む、対象におけるJAKキナーゼの活性を阻害するための、医薬組成物。
【請求項30】
前記キナーゼが構成的に活性化されている、請求項29記載の医薬組成物。
【請求項31】
ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールをキラルクロマトグラフィーにより分割することを含む、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物の製造方法。
【請求項32】
(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンを、キラル触媒の存在下で、水素化する工程を含む、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物の製造方法。
【請求項33】
前記キラル触媒が、[(R)-P-Phos RuCl2 (R)-DAIPEN]である、請求項32記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2010年9月1日に出願された米国特許仮出願第61/379,286号、及び2010年9月1日に出願された米国特許仮出願第61/379,280号の優先権の利益を主張するものであり、それら各々の開示は、全体として引用により本明細書中に組み込まれている。
【0002】
(技術分野)
本明細書において、光学活性のあるピラゾリルアミノキナゾリン及びその医薬組成物を提供する。また本明細書において、JAK-媒介性状態、障害、又は疾患の1つ以上の症状を治療、予防、又は改善する方法を提供する。本明細書において、増殖性疾患、炎症疾患、又は腎疾患の1つ以上の症状を治療、予防、又は改善する方法を更に提供する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
JAKキナーゼファミリーは、メンバーJAK1、JAK2、JAK3、及びTYK2を含む、細胞質型プロテインキナーゼファミリーである。JAKキナーゼを動員する増殖因子又はサイトカインの受容体は、インターフェロン受容体、インターロイキン受容体(サイトカインIL-2からIL-7、IL-9からIL-13、IL-15、IL-23の受容体)、様々なホルモン受容体(エリスロポエチン(Epo)受容体、トロンボポエチン(Tpo)受容体、レプチン受容体、インスリン受容体、プロラクチン(PRL)受容体、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体、成長ホルモン受容体、受容体タンパク質チロシンキナーゼ(EGFR及びPDGFRなど)、及び他の増殖因子(白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、IFNα/β/γ、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、及びカルディオトロフィン-1(CT-1))の受容体を含む。Rane及びReddyの文献、Oncogene, 2000, 19, 5662-5679を参照されたい。
【0004】
リン酸化された受容体は、転写因子のSTATファミリー、Srcファミリーキナーゼ、MAPキナーゼ、PI3キナーゼ、及びタンパク質チロシンホスファターゼなどの、JAKと相互作用する他のSH-2ドメインを含むシグナル伝達分子の結合部位として働く(Rane及びReddyの文献、Oncogene, 2000, 19, 5662-5679)。潜在的な(latent)細胞質型転写因子であるSTATのファミリーは、JAKに関して最も良く特徴付けられた下流側基質である。STATタンパク質は、それらのSH2ドメインを介して、リン酸化されたサイトカイン受容体に結合し、JAKによりリン酸化され始め、このことはそれらの二量体化、放出、及び最終的な核への移行につながり、核でこれらは遺伝子転写を活性化する。これまでに同定されているSTATの様々なメンバーは、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5(STAT5a及びSTAT5bを含む)、及びSTAT6である。
【0005】
JAKキナーゼは、そのような受容体を介して重要なシグナル伝達の役割を果たし得るので、脂肪代謝の障害、成長障害及び免疫系の障害は全て、治療標的となる可能性がある。
【0006】
JAKキナーゼ及びJAK2変異は、骨髄増殖障害、血行性腫瘍及び固形腫瘍を含む癌に関与している。障害の例は、慢性骨髄性白血病(CML)、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)、慢性好酸球性白血病(CEL)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)及び全身性肥満細胞症(SM)がある。骨髄増殖障害は、JAKそれ自身への機能獲得型の変異、又はJAK2経路を特異的に活性化する腫瘍性タンパクBCR-ABLによる活性化のいずれかから生じると考えられる。いくつかの文献報告が、様々な障害におけるJAK2変異の役割を説明している。Samantaらの文献、Cancer Res. 2006, 66, 6468-6472;Sawyersらの文献、Cell, 1992, 70, 901-910;Tefferiの文献、N. Eng. J. Med. 2007, 356, 444-445;Baxterらの文献、Lancet 2005, 365, 1054-1056;Jonesらの文献、Blood, 2005, 106, 2162-2168;Levineらの文献、Blood, 2006, 107, 4139-4141;Campbellらの文献、Blood, 2006, 107, 2098-2100;Scottらの文献、N. Eng. J. Med. 2007, 356, 459-468;Mercherらの文献、Blood, 2006, 108, 2770-2778;Lacroniqueらの文献、Science, 1997, 278, 1309-1312;Lacroniqueらの文献、Blood, 2000, 95, 2535-2540;Griesingerらの文献、Genes Chromosomes Cancer, 2005, 44, 329-333;Bousquetらの文献、Oncogene, 2005, 24, 7248-7252;Schwallerらの文献、Mol. Cell. 2000 6, 693-704;及び、Zhaoらの文献、EMBO 2002, 21, 2159-2167を参照されたい。
【0007】
文献は、JAKはまた、アンドロゲン-抵抗性前立腺癌を含む前立腺癌の標的としても働くことを指摘している。Bartonらの文献、Mol. Canc. Ther. 2004, 3, 11-20;Blume-Jensenらの文献、Nature, 2001, 411, 355-356;Brombergの文献、J. Clin. Invest. 2002, 109, 1139-1142;及び、Raneの文献、Oncogene, 2000, 19, 5662-5679を参照されたい。サイトカインシグナル伝達経路の卓越したメディエーターとしてのJAKは、炎症及び移植拒絶反応の治療標的であると考えられる。Borieらの文献、Transplantation, 2005, 79, 791-801;及び、Miliciらの文献、Arthritis Research, 2008, 10, 1-9を参照されたい。
【0008】
数多くの疾患がJAKシグナル伝達の異常調節に起因するとして、多くのJAKの小型の分子阻害剤が現在開発されている。前臨床開発段階にある化合物の例としてTG101209(TargeGen)が挙げられ、臨床試験において研究中の化合物の例として、INCB018424(Incyte)、XL019(Exelixis)、及びTG101348(TargeGen)が挙げられる。Pardananiらの文献、Leukemia, 2007, 21, 1658-1668;及び、Pardanaiの文献、Leukemia, 2008, 22, 23-20を参照されたい。
【0009】
しかし、治療へ適用するためのJAKキナーゼ阻害剤として有用である化合物の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0010】
(開示の概要)
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグを、本明細書において提供する。
【0011】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグ;並びに、医薬担体、賦形剤、又は希釈剤を含有する医薬組成物を、本明細書において提供する。
【0012】
特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの治療有効量を対象へ投与することを含む、該対象における増殖性疾患、炎症疾患、又は腎疾患の1つ以上の症状を治療、予防、又は改善する方法を、本明細書において更に提供する。
【0013】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの治療有効量を対象へ投与することを含む、該対象におけるJAK-媒介性状態、障害、又は疾患の1つ以上の症状を治療、予防、又は改善する方法を、本明細書において更に提供する。
【0014】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグと細胞を接触させることを含む、該細胞の増殖を阻害する方法を、本明細書において更に提供する。
【0015】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの有効量を対象へ投与することを含む、該対象において細胞の増殖を阻害する方法を、本明細書において更に提供する。
【0016】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグとJAKキナーゼを接触させることを含む、該JAKキナーゼの活性を調節する方法を、本明細書において更に提供する。
【0017】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの有効量を対象へ投与することを含む、該対象においてJAKキナーゼの活性を調節する方法を、本明細書において更に提供する。
【0018】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの治療有効量を対象へ投与することを含む、該対象におけるアデノシンA3受容体-媒介性状態、障害、又は疾患の1つ以上の症状を予防、治療、又は改善する方法を、本明細書において提供する。
【0019】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの治療有効量を対象へ投与することを含む、該対象において緑内障又は高眼圧症の1つ以上の症状を予防、治療、又は改善する方法を、本明細書において提供する。
【0020】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの有効量をアデノシンA3受容体と接触させることを含む、該アデノシンA3受容体の活性を調節する方法を、本明細書において提供する。
【0021】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの有効量をアデノシンA3受容体と接触させることを含む、該アデノシンA3受容体の活性をダウンレギュレーションする方法を、本明細書において提供する。
【0022】
一実施態様において、ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールをキラルクロマトグラフィーにより分割することを含む、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグを調製する方法を、本明細書において提供する。
【0023】
一実施態様において、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンを、キラル触媒の存在下で水素化する工程を含む、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグを調製する方法を、本明細書において提供する。特定の実施態様において、このキラル触媒は、[(R)-P-Phos RuCl2 (R)-DAIPEN]である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、RegisCellキラルカラム上で、ヘキサン/イソプロパノール85:15で溶出する、キラル高速液体クロマトグラフィーによる、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの2つの鏡像体の分割のためのLCクロマトグラムを示す。
【0025】
図2図2は、光学活性のある(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール(R)-(-)-カンファースルホン酸塩のX線結晶構造を示す。
【0026】
図3図3は、光学活性のある(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールのX線結晶構造を示す。
【0027】
図4図4は、(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールに関するラセミ体と比較したカプランマイヤー生存率解析の結果を例示している。
【0028】
図5図5は、(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールに関するラセミ体と比較したカプランマイヤー生存率解析の結果を例示している。
【0029】
図6図6は、イソプロピルアルコールとの10%及び20%DMSO(v/v)共溶媒を使用し、60℃、水素圧5bar、及び触媒ローディングS/C 4000/1での、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンの水素化に対する水素取込みの比較を提供する。
【0030】
図7図7は、イソプロピルアルコールとの10%DMSO(v/v)共溶媒を使用し、70℃、水素圧5bar、及び触媒ローディングS/C 4000/1での、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンの水素化の時間に対する水素取込みを提供する。
【0031】
図8図8は、イソプロピルアルコールとの10%DMSO(v/v)共溶媒を使用し、70℃、水素圧5bar、及び触媒ローディングS/C 10,000/1での、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンの水素化の時間に対する水素取込みを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(詳細な説明)
本明細書に示す開示を理解しやすくするために、多くの用語を以下に定義する。
【0033】
一般に、本明細書で使用される命名法、並びに本明細書で説明される有機化学、薬品化学、物理化学、生化学、生物学、薬理学などにおける実験室の手法は、当技術分野で周知且つ通常用いられるものである。別に指定しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、一般に、本開示が属する技術分野の業者によって通常理解されるものと同一の意味を有する。
【0034】
用語“腫瘍”、“新生物”及び“腫瘍性障害又は疾患”とは、本明細書では区別なく使用し、多細胞生物の1以上の細胞サブセットの望ましくない細胞増殖を指すことを意味し、これは、多細胞生物に害(すなわち、不快感、又は平均寿命の短縮)をもたらす。特定の実施態様において、腫瘍は、良性(非侵襲性)か悪性(侵襲性)であり得る。
【0035】
用語“癌”とは、悪性新生物を指すことを意味し、これは、細胞がそれらの正常な調節制御を失った(そうでなければ、細胞増殖の速度を左右する)制御されない細胞増殖が特徴である。これらの調節できない分裂する細胞は、身体中に広がり、“転移”と呼ばれるプロセスで正常な組織に侵入することができる。
【0036】
用語“対象”とは、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット又はマウスを含むが、これらに限定されない動物をいう。用語“対象”及び“患者”は、本明細書の言及では区別なく使用し、例えば、ヒト対象等の哺乳動物対象(一実施態様においては、ヒト)に使用する。
【0037】
用語“治療する(treat)”、“治療すること(treating)”及び“治療”とは、障害、疾患若しくは状態の、又は該障害、疾患若しくは状態に関連する1以上の症状の緩和若しくは抑止を;或いは、該障害、疾患若しくは状態それ自身の原因の緩和若しくは根絶を含むことを意味する。
【0038】
用語"予防する(prevent)"、"予防すること(preventing)"及び"予防"とは、障害、疾患、又は状態、及び/又はその随伴症状の発症を遅延及び/又は排除する方法;対象が障害、疾患、又は状態を獲得することを防ぐ方法;或いは、障害、疾患、又は状態を獲得する対象のリスクを低下する方法を含むことを意味する。
【0039】
用語“接触すること(contacting)”及び“接触する(contact)”とは、このような接触の結果として、生理学的及び/又は化学的作用が生じるように、治療薬と細胞若しくは組織をくっつけることをいう。接触することは、インビトロ、エクスビボ、又はインビトロで行うことができる。一実施態様において、治療薬は、細胞培養(インビトロ)で細胞と接触し、該細胞上の該治療薬の作用を決定する。他の実施態様において、治療薬と細胞又は組織の接触は、接触される細胞又は組織を有する対象に治療薬を投与することを含む。
【0040】
用語“治療有効量”とは、投与時に、治療される障害、疾患若しくは状態の1以上の症状の進行を防ぐ、又はある程度緩和するのに十分な化合物の量を含むことを意味する。また、用語“治療有効量”とは、研究者、獣医、医師又は臨床医が必要とする、生体分子(例えば、タンパク質、酵素、RNA若しくはDNA)、細胞、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的反応を誘導するのに十分な化合物の量もいう。
【0041】
用語"IC50"又は"EC50"とは、そのような反応を測定するアッセイにおいて、最大反応を50%阻害するのに必要とされる化合物の量、濃度、又は用量をいう。
【0042】
用語“医薬として許容し得る担体”、“医薬として許容し得る賦形剤”、“生理学的に許容し得る担体”、又は“生理学的に許容し得る賦形剤”とは、液状若しくは固形の充填物、希釈剤、溶媒、又は封入材料等の医薬として許容し得る物質、組成物、又はビヒクルをいう。一実施態様において、各成分は、医薬製剤の他の成分と適合し、且つ合理的な利益/危険の比と相応して、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、又は他の問題若しくは合併症なしで、ヒト及び動物の組織若しくは器官と接触して使用するのに適するという意味で“医薬として許容し得る”。Remingtonの文献:「薬学の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)」、第21版、Lippincott Williams & Wilkins: フィラデルフィア, PA, 2005;Roweら編集の文献:「医薬賦形剤のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)」、第6版、The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association: 2009;Ash及びAsh編集の文献:「医薬添加剤のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Additives)」、第3版、Gower Publishing Company: 2007;及び、Gibson編集の文献:「医薬の予備処方と処方(Pharmaceutical Preformulation and Formulation)」、第2版、CRC Press LLC: ボカラトン, FL, 2009を参照されたい。
【0043】
用語“約”又は“およそ”とは、当業者によって決定される特定の値の許容し得る誤差を意味し、その値がどのように測定されるか又は決定されるかに一部依存する。特定の実施態様において、用語“約”又は“およそ”とは、標準偏差が1、2、3又は4以内を意味する。特定の実施態様において、用語“約”又は“およそ”とは、所定の値又は範囲の50%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%又は0.05%以内を意味する。
【0044】
用語“有効成分”及び“活性物質”とは、状態、障害、若しくは疾患の1以上の症状を治療、予防若しくは改善するために、対象に、単独で、又は1以上の医薬として許容し得る賦形剤と併用して投与される化合物をいう。本明細書において使用される“有効成分”及び“活性物質”は、本明細書に記載される化合物の光学活性のある異性体であってよい。
【0045】
用語“薬剤”、“治療薬”及び“化学療法薬”とは、状態、障害若しくは疾患の1以上の症状を治療、予防若しくは改善するために、対象に投与される化合物又はその医薬組成物をいう。
【0046】
用語“溶媒和物”とは、例えば本明細書に提供される化合物のような溶質の1以上の分子と、化学量論的量又は非化学量論的量で存在する溶媒の1以上の分子により形成される複合体又は凝集体をいう。好適な溶媒は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及び酢酸を含むが、これらに限定されるものではない。特定の実施態様において、溶媒は医薬として許容し得る。一実施態様において、この複合体又は凝集体は、結晶形態である。別の実施態様において、この複合体又は凝集体は、非晶質形態である。この溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物である。水和物の例は、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物、及び五水和物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0047】
用語“自然発生型の”又は“未変性の”とは、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞等の生体物質に関連して使用する場合、自然界でみられ、人間によって操作されていない物質をいう。同様に、“非自然発生型の”又は“未変性でない”とは、自然界でみられず、人間によって構造上改変されたか、又は合成された物質をいう。
【0048】
用語"JAK"又は"ジャストアナザーキナーゼ(Just Another Kinase)"とは、ヤヌス(Janus)キナーゼ又はその変種をいい、これはヤヌスキナーゼ1(JAK1)、ヤヌスキナーゼ2(JAK2)、ヤヌスキナーゼ3(JAK3)、及びチロシンキナーゼ2(TYK2)を含むが、これらに限定されるものではない。JAK変種は、未変性のJAKと実質的に相同のタンパク質、すなわち未変性のJAKのアミノ酸配列と比べて、1以上の自然発生型又は非自然発生型のアミノ酸の欠失、挿入又は置換を有するタンパク質(例えば、JAK誘導体、相同体及び断片)を含む。JAK変種のアミノ酸配列は、未変性のJAKと少なくとも約80%同一、少なくとも約90%同一、又は少なくとも約95%同一である。
【0049】
用語"JAK-媒介性状態、障害又は疾患"及び"JAKにより媒介された状態、障害、又は疾患"とは、異常な又は調節不能なJAK活性、例えば正常よりもより大きいJAK活性を特徴とする状態、障害、又は疾患をいう。異常なJAK機能活性は、細胞におけるJAKの過剰発現の結果、通常はJAKを発現しない細胞におけるJAKの発現の結果、又は例えばJAKの変異により引き起こされる構成的活性化に起因した異常調節の結果として生じ得る。JAK-媒介性状態、障害、又は疾患は、不適切なJAK活性により完全に又は部分的に媒介されることがある。特に、JAK-媒介性状態、障害、又は疾患は、JAK活性の調節が、基礎をなす状態、障害、若しくは疾患に対し何らかの作用を生じるものであり、例えばJAK阻害剤は、治療される患者の少なくとも一部において何らかの改善を生じる。
【0050】
用語"アデノシンA3受容体"又は"A3AR"とは、未変性のアデノシンA3受容体又はそれらの変種をいう。A3AR変種は、未変性のA3ARと実質的に相同のタンパク質、すなわち未変性のA3ARのアミノ酸配列と比べて、1以上の自然発生型又は非自然発生型のアミノ酸の欠失、挿入又は置換を有するタンパク質(例えば、A3AR誘導体、相同体及び断片)を含む。A3AR変種のアミノ酸配列は、未変性のA3ARと少なくとも約80%同一、少なくとも約90%同一、又は少なくとも約95%同一である。
【0051】
用語"アデノシンA3-媒介性状態、障害又は疾患"及び"A3ARにより媒介される状態、障害、又は疾患"とは、異常な又は調節不能なA3AR活性、例えば正常よりもより大きいA3AR活性を特徴とする状態、障害、又は疾患をいう。異常なA3AR機能活性は、細胞におけるA3ARの過剰発現の結果、通常はA3ARを発現しない細胞におけるA3ARの発現の結果、又は例えばA3ARの変異により引き起こされる構成的活性化に起因した異常調節の結果として生じ得る。A3AR-媒介性状態、障害、又は疾患は、不適切なA3AR活性により完全に又は部分的に媒介されることがある。特に、A3AR-媒介性状態、障害、又は疾患は、A3AR活性の調節が、基礎をなす状態、障害、若しくは疾患に対し何らかの作用を生じるものであり、例えばA3ARアンタゴニストは、治療される患者の少なくとも一部において何らかの改善を生じる。
【0052】
用語"光学活性のある"及び"鏡像異性的に活性のある"とは、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.8%以上、又は約99.9%以上の鏡像体過剰率を有する分子の集合をいう。特定の実施態様において、光学的又は鏡像異性的に活性のある化合物の鏡像体過剰率は、約90%以上、約95%以上、約98%以上、又は約99%以上である。
【0053】
光学活性のある化合物について説明する際に、接頭語RとSは、そのキラル中心周辺の分子の絶対配置を表示するのに使用する。(+)及び(-)は、該化合物の旋光度、すなわち、偏光面が、光学活性のある化合物よって回転する方向を表示するのに使用する。接頭語(-)は、該化合物が左旋性であること、すなわち、該化合物が、偏光面を左又は反時計回りに回転させることを示す。接頭語(+)は、該化合物が右旋性であること、すなわち、該化合物が、偏光面を右又は時計回りに回転させることを示す。しかしながら、旋光性の記号(+)及び(-)は、分子の絶対配置R及びSと関係がない。
【0054】
用語"光学的に純粋"及び"鏡像異性的に純粋"とは、約80%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.8%以上、又は約99.9%以上の鏡像体過剰率(ee)を有する分子の集合をいう。特定の実施態様において、光学的又は鏡像異性的に純粋な化合物に関する鏡像体過剰率は、約90%以上、約95%以上、約98%以上、又は約99%以上である。化合物の鏡像体過剰率は、光学活性のある固定相を使用するキラル光学(chiroptical)クロマトグラフィー(ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、及び薄層クロマトグラフィー)、同位体希釈、電気泳動、熱量測定、旋光分析、キラル誘導体によるNMR分割法、及びキラル溶媒和剤(chiral solvating agent)又はキラルシフト試薬によるNMR法を含むが、これらに限定されるものではない、当業者により使用されるいずれか標準の方法により決定することができる。
【0055】
用語"実質的に純粋"及び"実質的に均一"とは、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、核磁気共鳴(NMR)、及び質量分析(MS)を含むが、これらに限定されるものではない、当業者により使用される標準の分析方法により決定した場合、容易に検出可能な不純物を含まないことが明らかであるのに十分に均一であること;或いは、更なる精製が、該物質の物理的特性、化学的特性、生物学的特性、並びに/又は酵素活性及び生物活性などの薬理学特性を検出可能に変更しないように、十分に純粋であることを意味する。特定の実施態様において、"実質的に純粋"又は"実質的に均一"とは、分子の少なくとも約50重量%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5%が、標準の分析方法により決定した場合、化合物の単独の立体異性体である分子の集合をいう。
【0056】
用語"同位体変種"とは、そのような化合物を構成する1種以上の原子で同位体を天然でない割合で含む化合物をいう。特定の実施態様において、化合物の"同位体変種"は、水素(1H)、重水素(2H)、トリチウム(3H)、炭素-11(11C)、炭素-12(12C)、炭素-13(13C)、炭素-14(14C)、窒素-13(13N)、窒素-14(14N)、窒素-15(15N)、酸素-14(14O)、酸素-15(15O)、酸素-16(16O)、酸素-17(17O)、酸素-18(18O)、フッ素-17(17F)、フッ素-18(18F)、リン-31(31P)、リン-32(32P)、リン-33(33P)、イオウ-32(32S)、イオウ-33(33S)、イオウ-34(34S)、イオウ-35(35S)、イオウ-36(36S)、塩素-35(35Cl)、塩素-36(36Cl)、塩素-37(37Cl)、臭素-79(79Br)、臭素-81(81Br)、ヨウ素-123(123I)、ヨウ素-125(125I)、ヨウ素-127(127I)、ヨウ素-129(129I)、及びヨウ素-131(131I)を含むが、これらに限定されるものではない1種以上の同位体を天然でない割合で含む。特定の実施態様において、化合物の"同位体変種"は、安定した形態、すなわち非放射性である。特定の実施態様において、化合物の"同位体変種"は、水素(1H)、重水素(2H)、炭素-12(12C)、炭素-13(13C)、窒素-14(14N)、窒素-15(15N)、酸素-16(16O)、酸素-17(17O)、酸素-18(18O)、フッ素-17(17F)、リン-31(31P)、イオウ-32(32S)、イオウ-33(33S)、イオウ-34(34S)、イオウ-36(36S)、塩素-35(35Cl)、塩素-37(37Cl)、臭素-79(79Br)、臭素-81(81Br)、及びヨウ素-127(127I)を含むが、これらに限定されるものではない1種以上の同位体を天然でない割合で含む。特定の実施態様において、化合物の"同位体変種"は、不安定な形態、すなわち放射性である。特定の実施態様において、化合物の"同位体変種"は、トリチウム(3H)、炭素-11(11C)、炭素-14(14C)、窒素-13(13N)、酸素-14(14O)、酸素-15(15O)、フッ素-18(18F)、リン-32(32P)、リン-33(33P)、イオウ-35(35S)、塩素-36(36Cl)、ヨウ素-123(123I)、ヨウ素-125(125I)、ヨウ素-129(129I)、及びヨウ素-131(131I)を含むが、これらに限定されるものではない1種以上の同位体を天然でない割合で含む。本明細書に提供される化合物において、当業者の判断に従い実現可能である場合は、任意の水素は例として2Hであることができ、或いは、任意の炭素は例として13Cであることができ、或いは任意の窒素は例として15Nであることができ、並びに任意の酸素は18Oであることができることは理解されるであろう。特定の実施態様において、化合物の"同位体変種"は、天然でない割合の重水素を含む。
【0057】
語句"その同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグ"は、語句"そこで言及された化合物の同位体変種;又は、そこで言及された化合物若しくはそこで言及された化合物の同位体変種の医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ"と同じ意味を有する。
【0058】
本明細書において使用される任意の保護基、アミノ酸及び他の化合物に関する略語は、別に指示しない限りは、文献J. Org. Chem. 2007, 72, 23A-24Aにおいて認められる略号又は「IUPAC-IUB生化学命名委員会(IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature)」において確立された略語(Biochem. 1972, 11, 942-944)を含むそれらの一般に使用又は認知された略号と一致する。
【0059】
(光学活性のあるピラゾリルアミノキナゾリン)
一実施態様において、式Iの構造を有する、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグを、本明細書において提供する:
【化1】
。(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、旋光分析により、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(-)異性体であると決定した。
【0060】
式Iの化合物の対応するラセミ混合物は、JAKキナーゼ阻害剤として同定されている。式Iの化合物の対応するラセミ混合物は、その開示の全体が引用により本明細書中に組み込まれている、現在US 2010/0317659として公開されている、2010年2月26日に出願された米国特許出願第12/714,323号に従い調製することができる。
【0061】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを実質的に含まない。別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約10%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約20%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約30%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約40%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約50%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約60%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約70%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約80%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約90%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約91%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約92%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約93%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約94%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約95%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約96%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約97%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約98%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約99%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約99.1%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約99.2%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約99.3%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約99.4%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約99.5%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約99.6%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約99.7%以上の鏡像体過剰率を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約99.8%以上の鏡像体過剰率を有する。また別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約99.9%以上の鏡像体過剰率を有する。
【0062】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約0.5以上、約1以上、約1.5以上、約2以上、約2.5以上、約3以上、約3.5以上、約4以上、約4.5以上、又は約5以上の比旋光度を有する。別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約0.5以上の比旋光度を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約1以上の比旋光度を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約1.5以上の比旋光度を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約2以上の比旋光度を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約2.5以上の比旋光度を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約3以上の比旋光度を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約3.5以上の比旋光度を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約4以上の比旋光度を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約4.5以上の比旋光度を有する。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、約5以上の比旋光度を有する。特定の実施態様において、式Iの化合物の比旋光度は、米国薬局方(USP 31)(2003)の方法781に従い測定する。特定の実施態様において、式Iの化合物の比旋光度は、メタノール中において、米国薬局方(USP 31)(2003)の方法781に従い測定する。特定の実施態様において、式Iの化合物の比旋光度は、温度約22℃で、米国薬局方(USP 31)(2003)の方法781に従い測定する。
【0063】
特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約80重量%以上、及び(R)-異性体を約20重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約90重量%以上、及び(R)-異性体を約10重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約91重量%以上、及び(R)-異性体を約9重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約92重量%以上、及び(R)-異性体を約8重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約93重量%以上、及び(R)-異性体を約7重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約94重量%以上、及び(R)-異性体を約6重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約95重量%以上、及び(R)-異性体を約5重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約96重量%以上、及び(R)-異性体を約4重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約97重量%以上、及び(R)-異性体を約3重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約98重量%以上、及び(R)-異性体を約2重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約99重量%以上、及び(R)-異性体を約1重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約99.5重量%以上、及び(R)-異性体を約0.5重量%を超えないよう含む。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの(S)-異性体を約99.9重量%以上、及び(R)-異性体を約0.1重量%を超えないよう含む。
【0064】
特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、実質的に純粋である。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、少なくとも約50重量%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5%の純度を有する。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、少なくとも約50重量%の純度を有する。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、少なくとも約70重量%の純度を有する。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、少なくとも約80重量%の純度を有する。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、少なくとも約90重量%の純度を有する。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、少なくとも約95重量%の純度を有する。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、少なくとも約98重量%の純度を有する。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、少なくとも約99重量%の純度を有する。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、少なくとも約99.5重量%の純度を有する。
【0065】
一実施態様において、式Iの化合物は、JAKキナーゼのモジュレーターである。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK1キナーゼのモジュレーターである。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK2キナーゼのモジュレーターである。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK3キナーゼのモジュレーターである。特定の実施態様において、式Iの化合物は、TYK2キナーゼのモジュレーターである。
【0066】
特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK2キナーゼに対して選択的なモジュレーターである。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK3キナーゼよりもJAK2キナーゼに対して選択的なモジュレーターである。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK3キナーゼに対し、JAK2キナーゼに対するよりも、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、約5倍、約10倍、約20倍、約25倍、約50倍、約75倍、又は約100倍より高い解離定数(Kd)で結合する。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK1キナーゼよりもJAK2キナーゼに対して選択的なモジュレーターである。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK1キナーゼに対し、JAK2キナーゼに対するよりも、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、約5倍、約10倍、約20倍、約25倍、又は約50倍より高い解離定数(Kd)で結合する。特定の実施態様において、式Iの化合物は、TYK2キナーゼよりもJAK2キナーゼに対して選択的なモジュレーターである。特定の実施態様において、式Iの化合物は、TYK2キナーゼに対し、JAK2キナーゼに対するよりも、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、約5倍、約10倍、約20倍、約25倍、又は約50倍より高い解離定数(Kd)で結合する。
【0067】
別の実施態様において、式Iの化合物は、JAKキナーゼの阻害剤である。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK1キナーゼの阻害剤である。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK2キナーゼの阻害剤である。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK3キナーゼの阻害剤である。特定の実施態様において、式Iの化合物は、TYK2キナーゼの阻害剤である。
【0068】
特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK2キナーゼに対し選択的な阻害剤である。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK3キナーゼよりも、JAK2キナーゼに対し選択的な阻害剤である。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK3キナーゼを、JAK2キナーゼよりも、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、約5倍、約10倍、約20倍、約25倍、約50倍、約75倍、又は約100倍より高い阻害定数(Ki)で阻害する。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK1キナーゼよりも、JAK2キナーゼに対し選択的な阻害剤である。特定の実施態様において、式Iの化合物は、JAK1キナーゼを、JAK2キナーゼよりも、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、約5倍、約10倍、約20倍、約25倍、又は約50倍より高い阻害定数(Ki)で阻害する。特定の実施態様において、式Iの化合物は、TYK2キナーゼよりも、JAK2キナーゼに対し選択的な阻害剤である。特定の実施態様において、式Iの化合物は、TYK2キナーゼを、JAK2キナーゼよりも、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、約5倍、約10倍、約20倍、約25倍、又は約50倍より高い阻害定数(Ki)で阻害する。
【0069】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを本明細書において提供する。
【0070】
別の実施態様において、(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの光学活性のある同位体変種、又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグを、本明細書において提供する。特定の実施態様において、光学活性のある重水素化された(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグを、本明細書において提供する。薬物動態("PK")、薬力学("PD")、及び/又は毒性のプロファイルを改善するための治療薬の同位体濃縮(例えば重水素化)が、一部の薬物のクラスでこれまでに明らかにされている。例えば、Lijinskyらの文献、Food Cosmet. Toxicol., 1982, 20, 393;Lijinskyらの文献、J. Nat. Cancer Inst. 1982, 69, 1127;Mangoldらの文献、Mutation Res. 1994, 308, 33;Gordonらの文献、Drug Metab. Dispos. 1987, 15, 589;Zelloらの文献、Metabolism 1994, 43, 487;Gatelyらの文献、J. Nucl. Med. 1986, 27, 388;及び、Wadeの文献、Chem. Biol. Interact. 1999, 117, 191を参照されたい。薬物の同位体濃縮は、例えば、(1)望ましくない代謝産物を減少又は排除するため、(2)親薬物の半減期を延長するため、(3)所望の作用を達成するのに必要な投与回数を減少するため、(4)所望の作用を達成するのに必要な投与量を減少するため、(5)もし形成されるのであれば、活性代謝産物の形成を増大するため、並びに/又は(6)特定の組織において有害な代謝産物の生成を減少するか、及び/若しくは、併用療法が意図されるかどうかに拘わらず、該併用療法のためのより有効な薬物及び/又はより安全な薬物を作製するために使用することができる。
【0071】
更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの医薬として許容し得る塩、又はその医薬として許容し得る溶媒和物若しくは水和物を、本明細書において提供する。
【0072】
医薬として許容し得る塩の製造に使用する適切な酸は、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アシル化アミノ酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ホウ酸、(+)-樟脳酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、D-グルクロン酸、L-グルタミン酸、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、過塩素酸、リン酸、L-ピログルタミン酸、サッカリン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、及び吉草酸を含むが、これらに限定されない。
【0073】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの医薬として許容し得る塩は、塩酸塩、又はその医薬として許容し得る溶媒和物若しくは水和物である。別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの医薬として許容し得る塩は、臭化水素酸塩、又はその医薬として許容し得る溶媒和物若しくは水和物である。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの医薬として許容し得る塩は、カンファースルホン酸塩、又はその医薬として許容し得る溶媒和物若しくは水和物である。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの医薬として許容し得る塩は、R-カンファースルホン酸塩、又はその医薬として許容し得る溶媒和物若しくは水和物である。更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの医薬として許容し得る塩は、S-カンファースルホン酸塩、又は医薬として許容し得る溶媒和物若しくは水和物である。
【0074】
更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの医薬として許容し得る溶媒和物を、本明細書において提供する。
【0075】
更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの水和物を、本明細書において提供する。
【0076】
更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの医薬として許容し得るプロドラッグを、本明細書において提供する。プロドラッグは、親化合物、例えば式Iの化合物の機能性誘導体であり、且つインビボにおいて親化合物へ容易に変換可能である。プロドラッグは、場合によっては、親化合物よりも投与が容易であるので、有用であることが多い。例えばプロドラッグは、経口投与により生体利用可能であるのに対し、親化合物はそうではないことがある。プロドラッグはまた、医薬組成物において、親化合物よりも増強された溶解度を有することもある。プロドラッグは、酵素的プロセス及び代謝的加水分解を含む様々な機構により、親薬物へ変換され得る。Harperの文献、Progress in Drug Research, 1962, 4, 221-294;Morozowichらの文献、「プロドラッグと類縁体による生物薬剤の特性のデザイン(Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs)」;Roche編集, APHA Acad. Pharm. Sci.: 1977;Gangwarらの文献、Des. Biopharm. Prop. Prodrugs Analogs, 1977, 409-421;Bundgaardの文献、Arch. Pharm. Chem. 1979, 86, 1-39;Farquharらの文献、J. Pharm. Sci. 1983, 72, 324-325;Wernuthの文献、「薬物設計:現実と理想(Drug Design: Fact or Fantasy)」;Jollesら編集;Academic Press社:ロンドン, 1984; pp 47-72;「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)」;Bundgaardら編集;Elsevier:1985;Fleisherらの文献、Methods Enzymol. 1985, 112, 360-381;Stellaらの文献、Drugs 1985, 29, 455-473;「薬物設計、理論及び応用における薬物の生体可逆性担体(Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design, Theory and Application)」;Roche編集;APHA Acad. Pharm. Sci.:1987;Bundgaardの文献、Controlled Drug Delivery 1987, 17, 179-96;Wallerらの文献、Br. J. Clin. Pharmac. 1989, 28, 497-507;Balantらの文献、Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet. 1990, 15, 143-53;Freemanらの文献、J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1991, 875-877;Bundgaardの文献、Adv. Drug Delivery Rev. 1992, 8, 1-38;Nathwani及びWoodの文献、Drugs 1993, 45, 866-94;Friis及びBundgaardの文献、Eur. J. Pharm. Sci. 1996, 4, 49-59;Fleisherらの文献、Adv. Drug Delivery Rev. 1996, 19, 115-130;Sinhababu及びThakkerの文献、Adv. Drug Delivery Rev. 1996, 19, 241-273;Taylorの文献、Adv. Drug Delivery Rev. 1996, 19, 131-148;Gaignaultらの文献、Pract. Med. Chem. 1996, 671-696;Browneの文献、Clin. Neuropharmacol. 1997, 20, 1-12;Valentino及びBorchardtの文献、Drug Discovery Today 1997, 2, 148-155;Paulettiらの文献、Adv. Drug. Delivery Rev. 1997, 27, 235-256;Mizenらの文献、Pharm. Biotech. 1998, 11, 345-365;Wiebe及びKnausの文献、Adv. Drug Delivery Rev. 1999, 39, 63-80;Tanらの文献、Adv. Drug Delivery Rev. 1999, 39, 117-151;Balimane及びSinkoの文献、Adv. Drug Delivery Rev. 1999, 39, 183-209;Wangらの文献、Curr. Pharm. Design 1999, 5, 265-287;Hanらの文献、AAPS Pharmsci. 2000, 2, 1-11;Asgharnejadの文献、「医薬系における輸送プロセス(Transport Processes in Pharmaceutical Systems)」;Amidonら編集;Marcell Dekker: 2000; pp 185-218;Sinhaらの文献、Pharm. Res. 2001, 18, 557-564;Anandらの文献、Expert Opin. Biol. Ther. 2002, 2, 607-620;Raoの文献、Resonace, 2003, 19-27;Sloanらの文献、Med. Res. Rev. 2003, 23, 763-793;Pattersonらの文献、Curr. Pharm. Des. 2003, 9, 2131-2154;Huの文献、IDrugs 2004, 7, 736-742;Robinsonらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2004, 101, 14527-14532;Erionらの文献、J. Pharmacol. Exp. Ther. 2005, 312, 554-560;Fangらの文献、Curr. Drug Discov. Technol. 2006, 3, 211-224;Stanczakらの文献、Pharmacol. Rep. 2006, 58, 599-613;Sloanらの文献、Pharm. Res. 2006, 23, 2729-2747;Stellaらの文献、Adv. Drug Deliv. Rev. 2007, 59, 677-694;Gomesらの文献、Molecules 2007, 12, 2484-2506;Krafzらの文献、ChemMedChem 2008, 3, 20-53;Rautioらの文献、AAPS J. 2008, 10, 92-102;Rautioらの文献、Nat. Rev. Drug. Discov. 2008, 7, 255-270;Pavanらの文献、Molecules, 2008, 13, 1035-1065;Sandrosらの文献、Molecules 2008, 13, 1156-1178;Singhらの文献、Curr. Med. Chem. 2008, 15, 1802-1826;Onishiらの文献、Molecules, 2008, 13, 2136-2155;Huttunenらの文献、Curr. Med. Chem. 2008, 15, 2346-2365;及び、Serafinらの文献、Mini Rev. Med. Chem. 2009, 9, 481-497を参照されたい。
【0077】
特定の実施態様において、いずれかの理論に結びつけられるものではないが、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグは、プロドラッグである。特定の実施態様において、いずれかの理論に結びつけられるものではないが、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、対象において対応する(R)-異性体へと変換される。特定の実施態様において、対象は、哺乳動物である。特定の実施態様において、哺乳動物はヒトである。
【0078】
本明細書に提供される化合物は、特定の構造異性体が指定されない限りは、全ての可能性のある構造異性体を包含することが意図される。構造異性体に互換性がある場合、その化合物は、単一の互変異性体又は互変異性体の混合物として存在し得る。これは、例えば、イミノ基、ケト基、若しくはオキシム基を含む化合物においてプロトン互変異性の形態;又は、芳香族部分を含む化合物においていわゆる原子価互変異性の形態をとることができる。これは、単独の化合物が2つ以上の異性型を示すことができることに従う。
【0079】
(合成方法)
本明細書に提供される式Iの化合物は、適切な光学的に純粋な前駆体からの合成、アキラル出発物質からの不斉合成、又はラセミ体若しくは鏡像体の混合物の分割、例えばキラルクロマトグラフィ、再結晶、分割、ジアステレオマー塩の形成、若しくは、ジアステレオマー付加物への誘導とその後の分離を含むが、これらに限定されるものではない、当業者に公知の任意の方法により、調製、単離、又は入手することができる。
【0080】
一実施態様において、キラルクロマトグラフィーによる、ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの分割を含む、式Iの化合物の調製方法を、本明細書において提供する。特定の実施態様において、スキームIに示したように、2種の個別の鏡像体を、キラルカラムを用いて分離し、ここで固定相は、トリス-(3,5-ジメチルフェニル)カルバモイルセルロースなどのキラル選択剤によりコーティングされたシリカゲルである。
【0081】
別の実施態様において、キラル触媒の存在下で、アキラルケトン1を水素で還元する工程を含む、式Iの化合物の調製方法を、本明細書で提供する。スキームIIに示すように、ケトン1を、"A型"又は"B型"のキラル還元システムにより、主に単独の鏡像体生成物に還元し、ここでA型とB型は、単に反対のキラリティーのキラル補助基を有することにより、互いに異なる。特定の実施態様において、このキラル触媒は、[(R)-P-Phos RuCl2 (R)-DAIPEN]である。
【化2】
【0082】
特定の実施態様において、キラル触媒の存在下での、アキラルケトン1の還元は、溶媒としてイソプロピルアルコール中で実行される。特定の実施態様において、キラル触媒の存在下での、アキラルケトン1の還元は、溶媒としてイソプロピルアルコールと水の混合液中で実行される。特定の実施態様において、イソプロピルアルコール及び水は、1:1、8:1又は9:1の比で使用される。一実施態様において、DMSOは、この反応の共溶媒として使用される。一実施態様において、DMSOは、イソプロピルアルコールと水の混合液の総量を基に、10、20又は30%で使用される。特定の実施態様において、イソプロピルアルコール、DMSO及び水は、1:1:1、4:4:0.5、8:1:1、47:47:6、41:58:1、44:50:6、又は18:79:3の比で使用される。特定の実施態様において、イソプロピルアルコール、DMSO及び水は、41:58:1の比で使用される。特定の実施態様において、イソプロピルアルコール及びDMSOは、1:1の比で使用される。特定の実施態様において、還元は、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシドなどの塩基の存在下で実行される。特定の実施態様において、この塩基は、2〜15mol%で、一実施態様において2mol%、5mol%、10mol%、12.5mol%又は15mol%で使用される。特定の実施態様において、還元は、温度40〜80℃で、一実施態様において40℃、50℃、60℃、70℃又は80℃で実行される。特定の実施態様において、還元は、温度70℃で実行される。特定の実施態様において、還元は、圧力4bar〜30barで、一実施態様において4、5、10、15、20、25又は30barで実行される。特定の実施態様において、還元は、圧力4barで実行される。特定の実施態様において、この反応における触媒ローディングは、100/1、250/1、500/1、1000/1、2000/1、3000/1、4000/1、5000/1、7000/1、10,0000/1又は20,000/1である。特定の実施態様において、この反応における触媒ローディングは、2000/1又は4000/1である。
【0083】
更に別の実施態様において、アキラルケトン1をケトレダクターゼ(例えばアルコールデヒドロゲナーゼ)で還元する工程を含む、式Iの化合物の調製方法を、本明細書において提供する。Mooreらの文献、Acc. Chem. Res. 2007, 40, 1412-1419;Daussmannらの文献、Engineering in Life Sciences, 2006, 6, 125-129;Schlummer及びStolleの文献、Specialty Chemicals Magazine, 2008, 28, 48-49;Osswaldらの文献、Chimica Oggi, 2007, 25(Suppl.), 16-18;及び、Kambourakis及びRozzellの文献、PharmaChem, 2006, 5(9), 2-5を参照されたい。
【0084】
更に別の実施態様において、アキラルケトン1を、キラル触媒の存在下で、還元剤(例えばボラン又は水素化ホウ素試薬)により還元する工程を含む、式Iの化合物の調製方法を、本明細書において提供する。特定の実施態様において、この還元剤は、ボラン又は水素化ホウ素試薬である。特定の実施態様において、キラル触媒は、キラルのオキサザボロリジンである。Coryらの文献、Tetrahedron Letters 1996, 37, 5675;及び、Choの文献、Chem. Soc. Rev. 2009, 38, 443を参照されたい。
【化3】
【0085】
更に別の実施態様において、アキラルケトン1を、不斉ヒドロシリル化を経由して還元する工程を含む、式Iの化合物の調製方法を、本明細書において提供する。その開示の全体が引用により本明細書中に組み込まれている、米国特許出願公開第2008/0269490号を参照されたい。
【0086】
また別の実施態様において、アキラルケトン1を、イリジウム錯体により触媒される水素移動を経由して還元する工程を含む、式Iの化合物の調製方法を、本明細書において提供する。Malaceaらの文献、Coordination Chemistry Reviews 2010, 254, 729-752を参照されたい。
【0087】
本明細書に提供される式Iの化合物の合成において使用する出発物質は、市販されているか、又は当業者に公知の方法により調製することができるかのいずれかである。例えば、ケトン1は、その開示の全体が引用により本明細書中に組み込まれている、2010年2月26日に出願された米国特許出願第12/714,323号に説明された方法に従い調製することができる。
【0088】
(医薬組成物)
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグ;及び、医薬として許容し得るビヒクル、担体、希釈剤、若しくは賦形剤、又はそれらの混合物を含有する医薬組成物を、本明細書において提供する。
【0089】
別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグ;並びに、PEG 400及び水を含有する医薬組成物を、本明細書において提供する。特定の実施態様において、PEG 400対水の重量比は、3:1である。特定の実施態様において、本医薬組成物は、静脈内投与される。
【0090】
好適な賦形剤は、当業者に周知であり、且つ好適な賦形剤の非限定的例を本明細書に提供する。特定の賦形剤を医薬組成物又は剤形へ混入するのに適しているかどうかは、投与方法を含むが、これらに限定されるものではない、当該技術分野において周知の様々な要因によって決まる。例えば、錠剤などの経口剤形は、非経口剤形における使用に適さない賦形剤を含んでよい。特定の賦形剤の好適性はまた、その剤形中の具体的な有効成分により決まる。例えば、一部の有効成分の分解は、ラクトースなどのいくつかの賦形剤によるか、又は水への曝露により促進される。第一級又は第二級アミンを含む有効成分は、そのような促進分解に特に適している。結果的に、ラクトース又は他の単糖若しくは二糖を、もし含んだとしても極わずかに含む、医薬組成物及び剤形を、本明細書において提供する。本明細書において使用される用語"ラクトース非含有"とは、もし存在するとしても、存在するラクトースの量が、有効成分の分解速度を実質的に増大するには不充分であることを意味する。一実施態様において、ラクトース非含有組成物は、本明細書に提供される有効成分、結合剤/充填剤、及び滑沢剤を含有する。別の実施態様において、ラクトース非含有剤形は、有効成分、微晶質セルロース、α化澱粉、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0091】
本明細書に提供される光学活性のある式Iの化合物は、単独で、又は本明細書に提供される1種以上の他の化合物と組合せて投与することができる。本明細書に提供される式Iの活性化合物を含有する医薬組成物は、経口、非経口、及び局所投与のための様々な剤形で製剤化することができる。これらの医薬組成物はまた、遅延放出型剤形、延長放出剤形、持続放出剤形、徐放性剤形、パルス放出型剤形、制御放出型剤形、促進放出剤形、高速放出型剤形、標的指向放出型剤形、プログラム放出型剤形(programmed-release dosage form)、及び胃内滞留剤形を含む、放出制御型剤形として製剤化することもできる。これらの剤形は、当業者に公知の従来法及び従来技術によって調製することができる(Remingtonの文献:「薬学の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)」(前掲);「放出制御ドラッグデリバリー技術(Modified-Release Drug Deliver Technology)」、第2版、Rathboneら編集、Marcel Dekker社、ニューヨーク, NY, 2008参照)。
【0092】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグ;及び、1種以上の医薬として許容し得るビヒクル、担体、希釈剤、又は賦形剤を含有する、経口投与のための剤形で、医薬組成物を提供する。
【0093】
別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグ;及び、1種以上の医薬として許容し得るビヒクル、担体、希釈剤、又は賦形剤を含有する、非経口投与のための剤形で、医薬組成物を提供する。
【0094】
更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグ;及び、1種以上の医薬として許容し得るビヒクル、担体、希釈剤、又は賦形剤を含有する、局所投与のための剤形で、医薬組成物を提供する。特定の実施態様において、局所投与は、経鼻、経呼吸器、又は肺内投与である。
【0095】
本明細書で提供される医薬組成物は、単位剤形又は反復剤形で提供することができる。本明細書において使用される単位剤形とは、ヒト及び動物の対象への投与に適し、且つ当技術分野で公知のように、個別に包装した、物理的に分離したユニットをいう。それぞれの単位用量は、必要とする医薬担体若しくは賦形剤と共同して、所望の治療作用を奏するのに十分な所定量の有効成分を含む。単位剤形の例は、アンプル、シリンジ、並びに個別に包装した錠剤及びカプセル剤を含む。単位剤形は、その一部で、又は複数で投与してもよい。反復剤形は、分離した単位剤形で投与するべく、単一の容器内に包装した複数の同一の単位剤形である。反復剤形の例は、バイアル、錠剤若しくはカプセル剤の瓶、又はパイント瓶若しくはガロン瓶を含む。
【0096】
本明細書で提供される医薬組成物は、1回、又は時間間隔を置いて複数回で投与することができる。正確な用量及び治療期間は、治療される患者の年齢、体重、及び状態によって変化し、公知の試験プロトコールを経験的に使用して、或いはインビボ試験若しくはインビトロ試験若しくは診断データからの推定によって、決定することができることが理解される。更に、特定の個体において、個々の必要性、及び製剤の投与若しくは該投与を監督する人の専門的な判断によって、具体的投薬計画を時間を追って調整する必要があることが理解される。
【0097】
特定の実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、各々、本明細書に提供される光学活性のある式Iの化合物を約0.1mg〜約2,000mg、約10mg〜約1,000mg、約20mg〜約500mg、又は約25mg〜約250mg含有する。特定の実施態様において、本明細書に提供される医薬単位剤形は、1単位剤形当たり本明細書に提供される光学活性のある式Iの化合物を約1mg〜約2,000mg、約10mg〜約1,000mg、約20mg〜約500mg、又は約25mg〜約250mg含有する。特定の実施態様において、この医薬単位剤形は、本明細書に提供される光学活性のある式Iの化合物を約10mg、約20mg、約25mg、約50mg、約100mg、約250mg、約500mg、約1,000mg、又は約2,000mg含有する。
【0098】
特定の実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、所望の治療作用を損なわない他の有効成分の1種以上と、又は所望の作用を補助する物質と同時製剤化される。
【0099】
(A. 経口投与)
経口投与のための本明細書に提供される医薬組成物は、固体剤形、半固体剤形、若しくは液状剤形で提供することができる。また本明細書において使用される経口投与は、口腔内投与、舌投与及び舌下投与も含む。適切な経口投与剤形は、錠剤、ファストメルト(fasetmelt)、咀嚼錠剤、カプセル剤、丸剤、ストリップ剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、香錠、カシェ剤、ペレット剤、薬用チューインガム、バルク散剤、発泡性或いは非発泡性散剤若しくは顆粒剤、口腔ミスト剤、液剤、乳剤、懸濁剤、ウエハ、スプリンクル剤(sprinkle)、エリキシル剤、及びシロップ剤を含むが、これらに限定されない。該医薬組成物は、有効成分に加え、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、流動促進剤、着色剤、色素移動阻止剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁化剤と分散剤、保存剤、溶剤、非水性液体、有機酸、及び二酸化炭素供給源を含むが、これらに限定されない、1以上の医薬として許容し得る担体若しくは賦形剤を含むことができる。
【0100】
結合剤又は造粒剤は、錠剤に粘着性を付与し、確実に錠剤を圧縮後無傷に維持する。適切な結合剤又は造粒剤は、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、及びα化澱粉(例えば、STARCH 1500)等の澱粉;ゼラチン;ショ糖、グルコース、デキストロース、糖蜜、及びラクトース等の糖;アラビアゴム、アルギン酸、アルギン酸塩、チャカ(Irish moss)の抽出物、パンワールガム、ガッティガム、イサゴール殻皮の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビーガム、カラマツアラビノガラクタン、トラガカント末、及びグアーゴムのような天然若しくは合成ゴム;エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース;AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC社、マーカスフック、PA)等の微結晶性セルロース;及びこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。適切な充填剤は、タルク、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、澱粉、α化澱粉、及びこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。本明細書で提供される医薬組成物の結合剤又は充填剤の量は、製剤の型によって変化し、当業者に容易に認識することができる。結合剤又は充填剤は、本明細書で提供される医薬組成物の約50〜約99重量%で存在することができる。
【0101】
適切な希釈剤は、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、ソルビトール、ショ糖、イノシトール、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥澱粉、及び粉糖を含むが、これらに限定されない。マンニトール、ラクトース、ソルビトール、ショ糖、及びイノシトール等の特定の希釈剤は、十分な量で存在する場合、咀嚼によって口中で崩壊することが可能な圧縮錠剤に特性を付与することができる。このような圧縮錠剤は、咀嚼錠剤として使用することができる。本明細書で提供される医薬組成物中の希釈剤の量は、製剤の型によって変化し、当業者に容易に認識することができる。
【0102】
適切な崩壊剤は、寒天;ベントナイト;メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等のセルロース;木製品;海綿;陽イオン交換樹脂;アルギン酸;グアーゴム及びビーガムHV等のゴム;柑橘類の果肉;クロスカルメロースのような架橋セルロース;クロスポビドンのような架橋ポリマー;架橋澱粉;炭酸カルシウム;グリコール酸ナトリウム澱粉のような微結晶性セルロース;ポラクリリンカリウム;トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、タピオカ澱粉、及びα化澱粉等の澱粉;粘土;アライン(align);及びこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。本明細書で提供される医薬組成物中の崩壊剤の量は、製剤の型によって変化し、当業者に容易に認識することができる。本明細書で提供される医薬組成物は、約0.5〜約15重量%、又は約1〜約5重量%の崩壊剤を含み得る。
【0103】
適切な滑沢剤は、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;鉱油;軽油;グリセリン;ソルビトール;マンニトール;ベヘン酸グリセロール、及びポリエチレングリコール(PEG)等のグリコール;ステアリン酸;ラウリル硫酸ナトリウム;タルク;落花生油、綿実油、ヒマワリ油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油を含む、水素化植物油;ステアリン酸亜鉛;オレイン酸エチル;ラウリン酸エチル;寒天;澱粉;リコポジウム;AEROSIL(登録商標)200(W.R. Grace社、ボルチモア, MD)、及びCAB-O-SIL(登録商標)(Cabot社、ボストン, MA)等のシリカ若しくはシリカゲル;及びこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。本明細書で提供される医薬組成物は、約0.1〜約5重量%の滑沢剤を含み得る。
【0104】
適切な流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素、CAB-O-SIL(登録商標)(Cabot社、ボストン、MA)、及び石綿を含まないタルクを含むが、これらに限定されない。適切な着色剤は、承認、保証されたいずれかの水溶性FD&C色素、アルミナ水和物で懸濁した水不溶性FD&C色素、レーキ顔料、及びこれらの混合物を含む。レーキ顔料は、重金属の水和酸化物への水溶性色素の吸着による組み合わせであり、色素の不溶性形態を生ずる。適切な香味剤は、果実のような植物から抽出した天然香料、並びにペパーミント及びサリチル酸メチル等の快適な味覚を生じる化合物の合成混合物を含むが、これらに限定されない。適切な甘味料は、ショ糖、ラクトース、マンニトール、シロップ、グリセリン、並びにサッカリン及びアスパルテーム等の人工甘味料を含むが、これらに限定されない。適切な乳化剤は、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカントゴム、ベントナイト、並びにポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(TWEEN(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート80(TWEEN(登録商標)80)、及びオレイン酸トリエタノールアミン等の界面活性剤を含むが、これらに限定されない。適切な懸濁化剤及び分散剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカントゴム、ビーガム、アラビアゴム、カルボメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンを含むが、これらに限定されない。適切な保存剤は、グリセリン、メチルパラベン及びプロピルパラベン、安息香酸付加物(benzoic add)、安息香酸ナトリウム、並びにアルコールを含むが、これらに限定されない。適切な湿潤剤は、プロピレングリコールモノステアラート、ソルビタンモノオレアート、ジエチレングリコールモノラウラート、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルを含むが、これらに限定されない。適切な溶剤は、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール、及びシロップを含むが、これらに限定されない。エマルジョンで利用する適切な非水性液体は、鉱油及び綿実油を含むが、これらに限定されない。適切な有機酸は、クエン酸及び酒石酸を含むが、これらに限定されない。適切な二酸化炭素の供給源は、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。
【0105】
多くの担体及び賦形剤が、同じ製剤内であっても、幾つかの機能に有用であり得ることは理解されるべきである。
【0106】
経口投与のための本明細書に提供される医薬組成物は、圧縮錠剤、粉薬錠剤、咀嚼ロゼンジ剤、速溶性錠剤、多重圧縮錠剤、又は腸溶性錠剤、糖衣錠若しくはフィルムコート錠として提供することができる。腸溶性錠剤は、胃酸の作用に耐えるが、腸内で溶解若しくは崩壊する物質でコーティングした圧縮錠剤であり、このため、胃の酸性環境から有効成分を保護する。腸溶コーティングは、脂肪酸、脂肪、サリチル酸フェニル、ワックス、セラック、アンモニア化セラック、及び酢酸フタル酸セルロースを含むが、これらに限定されない。糖衣錠は、糖衣に囲まれた圧縮錠剤であり、不快な味或いは臭いを隠し、酸化から錠剤を保護するのに有用であり得る。フィルムコート錠は、水溶性物質の薄層又はフィルムで覆われている圧縮錠剤である。フィルムコーティングは、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、及び酢酸フタル酸セルロースを含むが、これらに限定されない。フィルムコーティングは、糖衣と同じ一般的性質を付与する。多重圧縮錠剤は、2つ以上の圧縮サイクルによって作製した圧縮錠剤であり、層状の錠剤、及びプレスコーティング又はドライコーティング錠剤を含む。
【0107】
錠剤の剤形は、単独で、又は結合剤、崩壊剤、制御放出ポリマー、滑沢剤、希釈剤、及び/若しくは着色剤を含む、本明細書に記載される1以上の担体若しくは賦形剤と組合せて、粉末、結晶若しくは顆粒形態の有効成分から調製することができる。香味剤及び甘味剤は、咀嚼錠剤及びロゼンジ剤の形成に特に有用である。
【0108】
経口投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、軟カプセル剤又は硬カプセル剤として提供することができ、ゼラチン、メチルセルロース、澱粉、又はアルギン酸カルシウムから作製することができる。乾燥充填カプセル(DFC)としても公知の硬ゼラチンカプセル剤は、2つの部分から成り、一方が他方の上に滑り込み、このため、有効成分を完全に包囲する。軟カプセル剤(SEC)は、ゼラチンシェル等の、柔軟で、球状のシェルであり、グリセリン、ソルビトール、又は類似したポリオールの添加によって可塑化される。ソフトゼラチンシェルは、微生物の増殖を防止する保存剤を含み得る。適切な保存剤は、本明細書に記載されているとおりであり、メチルパラベン、プロピルパラベン、及びソルビン酸を含む。本明細書で提供される液状剤形、半固体剤形、及び固体剤形は、カプセルに封入してもよい。適切な液状剤形及び半固体剤形は、プロピレンカーボネート、植物油、若しくはトリグリセリド中の液剤及び懸濁剤を含む。このような液剤を含むカプセルは、米国特許第4,328,245号、第4,409,239号、及び第4,410,545号に記載されているとおりに調製することができる。また、該カプセルは、有効成分の溶解を改変又は維持するために、当業者に公知のコーティングをしてもよい。
【0109】
経口投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、液状剤形及び半固体剤形で提供することができ、乳剤、液剤、懸濁剤、エリキシル剤、及びシロップを含む。乳剤は、二相系であり、一方の液体は、他方の液体全体にわたって小球の形態で分散し、水中油型又は油中水型であり得る。乳剤は、医薬として許容し得る非水性液体若しくは溶剤、乳化剤、及び保存剤を含み得る。懸濁剤は、医薬として許容し得る懸濁化剤及び保存剤を含み得る。水性のアルコール性溶液は、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール(例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタール)等の医薬として許容し得るアセタール;並びに、プロピレングリコール及びエタノール等の1個以上の水酸基を有する水混和性溶媒を含み得る。エリキシル剤は、透明で、甘い、水アルコール性溶液である。シロップは、糖(例えば、ショ糖)の濃縮水溶液であり、保存剤も含み得る。液状剤形については、投与に都合の良いように測定されるよう、例えば、十分量の医薬として許容し得る液状担体(例えば、水)でポリエチレングリコールの溶液を希釈してもよい。
【0110】
他の有用な液状剤形及び半固体剤形は、本明細書で提供される有効成分、及び1,2-ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテル(ここで、350、550及び750とは、ポリエチレングリコールの概算の平均分子量をいう)を含むジアルキル化モノ-若しくはポリ-アルキレングリコールを含有するものを含むが、これらに限定されない。これらの製剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオジプロピオン酸とそのエステル、及びジチオカーバメート等の抗酸化剤を1種以上更に含み得る。
【0111】
また、経口投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、リポソーム、ミセル、マイクロスフィア、若しくはナノシステムの形態でも提供することができる。ミセル剤形は、米国特許第6,350,458号に記載されているとおりに調製することができる。
【0112】
経口投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、液状剤形に再構成される、非発泡性或いは発泡性顆粒剤及び散剤として提供することができる。該非発泡性顆粒剤若しくは散剤に使用する医薬として許容し得る担体及び賦形剤は、希釈剤、甘味料、及び湿潤剤を含み得る。該発泡性顆粒剤若しくは散剤に使用する医薬として許容し得る担体及び賦形剤は、有機酸、及び二酸化炭素の給源を含み得る。
【0113】
着色剤及び香味剤は、上述の全ての剤形に使用することができる。
【0114】
経口投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、即時放出型剤形、又は遅延放出型剤形、徐放性剤形、パルス放出型剤形、制御放出型剤形、標的指向放出型剤形、及びプログラム放出型剤形を含む、放出制御型剤形として製剤化することができる。
【0115】
(B. 非経口投与)
本明細書で提供される医薬組成物は、局所投与若しくは全身投与のための、注射、注入、又は植込によって、非経口的に投与することができる。本明細書において使用される非経口投与は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、脳室内投与、尿道内投与、胸骨内投与、頭蓋内投与、筋肉内投与、滑液包内投与、膀胱内投与、及び皮下投与を含む。
【0116】
非経口投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、液剤、懸濁剤、エマルジョン、ミセル、リポソーム、マイクロスフェア、ナノシステムを含む非経口投与に適した任意の剤形、及び注射前に液体中の液剤若しくは懸濁剤とするのに適した固体形態で製剤化することができる。このような剤形は、製薬科学の分野の業者に公知の従来法によって製造することができる(Remingtonの文献:「薬学の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)」、前掲参照)。
【0117】
非経口投与を意図した医薬組成物は、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の増殖に対する抗微生物剤若しくは保存剤、安定剤、溶解促進剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔薬、懸濁化剤及び分散剤、湿潤剤若しくは乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖剤若しくはキレート剤、凍結防止剤、リオプロテクタント、増粘剤、pH調整剤、並びに不活性ガスを含むが、これらに限定されない、1種以上の医薬として許容し得る担体及び賦形剤を含み得る。
【0118】
適切な水性ビヒクルは、水、食塩水、生理食塩水若しくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、注射用滅菌水、デキストロース及び乳酸加リンゲル注射液を含むが、これらに限定されない。適切な非水性ビヒクルは、植物由来の不揮発性油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、ハッカ油、ベニバナ油、胡麻油、大豆油、水素化植物油、水素化大豆油、並びにやし油及びパームシード油の中鎖トリグリセリドを含むが、これらに限定されない。適切な水混和性ビヒクルは、エタノール、1,3-ブタンジオール、液体ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300、及びポリエチレングリコール400)、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシドを含むが、これらに限定されない。
【0119】
適切な抗微生物剤又は保存剤は、フェノール、クレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル及びp-ヒドロキシ安息香酸プロピル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム(例えば、塩化ベンゼトニウム)、メチルパラベン及びプロピルパラベン、並びにソルビン酸を含むが、これらに限定されない。適切な等張剤は、塩化ナトリウム、グリセリン、及びデキストロースを含むが、これらに限定されない。適切な緩衝剤は、リン酸塩及びクエン酸塩を含むが、これらに限定されない。適切な抗酸化剤は、本明細書に記載されているものであり、亜硫酸水素塩及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む。適切な局所麻酔薬は、塩酸プロカインを含むが、これに限定されない。適切な懸濁化剤及び分散剤は、本明細書に記載されているものであり、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンを含む。適切な乳化剤は、本明細書に記載されているものであり、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート80、及びオレイン酸トリエタノールアミンを含む。適切な金属イオン封鎖剤若しくはキレート剤は、EDTAを含むが、これに限定されない。適切なpH調整剤は、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、及び乳酸を含むが、これらに限定されない。適切な錯化剤は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル7-β-シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標)、CyDex社、レネクサ、KS)を含んだデキストリンを含むが、これらに限定されない。
【0120】
本明細書で提供される医薬組成物が、反復投与用量で製剤化される場合、この反復用量非経口製剤は、静菌濃度又は静真菌濃度の抗微生物剤を含む必要がある。全ての非経口製剤は、当技術分野において、公知であり且つ実施されるように、滅菌する必要がある。
【0121】
一実施態様において、非経口投与のための該医薬組成物を、そのまま使用可能な状態の滅菌溶液として提供する。別の実施態様において、該医薬組成物を、使用前にビヒクルで再構成する、凍結乾燥粉末及び皮下注射用錠剤を含む、滅菌乾燥可溶性製品として提供する。更に別の実施態様において、該医薬組成物を、そのまま使用可能な状態の滅菌懸濁液として提供する。更に別の実施態様において、該医薬組成物を、使用前にビヒクルで再構成する、滅菌乾燥不溶性製品として提供する。更に別の実施態様において、該医薬組成物を、そのまま使用可能な状態の滅菌エマルジョンとして提供する。
【0122】
非経口投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、即時放出型剤形、又は遅延放出型剤形、徐放性剤形、パルス放出型剤形、制御放出型剤形、標的指向放出型剤形、及びプログラム放出型剤形を含む、放出制御型剤形として製剤化することができる。
【0123】
非経口投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、植込み式デポー製剤として投与するための、懸濁剤、固体、半固体、又はチキソトロピック液体(thixotropic liquid)として製剤化することができる。一実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、固形状の内側マトリクス中に分散され、該内側マトリクスは、体液に不溶であるが、該医薬組成物の有効成分を拡散させる、外側高分子膜に囲まれる。
【0124】
適切な内側マトリクスは、ポリメチルメタクリラート、ポリブチル-メタクリラート、可塑化若しくは非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネート共重合体、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲル等の親水性ポリマー、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、並びに架橋部分的加水分解ポリ酢酸ビニルを含むが、これらに限定されない。
【0125】
適切な外側高分子膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルとの塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、並びにエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体を含むが、これらに限定されない。
【0126】
(C. 局所投与)
本明細書で提供される医薬組成物は、皮膚、開口部、又は粘膜に局所的に投与することができる。本明細書で使用される局所投与は、皮膚(皮内)投与、結膜投与、角膜投与、眼内投与、眼投与、耳介投与、経皮投与、経鼻投与、膣内投与、経尿道投与、経呼吸器投与、肺内投与及び直腸投与を含む。
【0127】
本明細書で提供される医薬組成物は、局所若しくは全身作用のための局所投与に適した任意の剤形で製剤化することができ、乳剤、液剤、懸濁剤、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、軟膏剤、粉剤、包帯剤、エリキシル剤、ローション、懸濁剤、チンキ剤、泥膏、泡剤、フィルム、エアゾール剤、灌注剤、噴霧剤、坐薬、絆創膏、及び皮膚パッチを含む。また、本明細書で提供される医薬組成物の局所製剤は、リポソーム、ミセル、マイクロスフィア、ナノシステム、及びこれらの混合物も含む。
【0128】
本明細書で提供される局所製剤に使用するのに適した医薬として許容し得る担体及び賦形剤は、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の増殖に対する抗微生物剤若しくは保存剤、安定剤、溶解促進剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔薬、懸濁化剤及び分散剤、湿潤剤若しくは乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖剤若しくはキレート剤、浸透促進剤、凍結防止剤、リオプロテクタント、増粘剤、並びに不活性ガスを含むが、これらに限定されない。
【0129】
また、該医薬組成物は、電気穿孔、イオントフォレーシス、フォノフォレーシス、ソノフォレーシス、又はPOWDERJECT(商標)(Chiron Corp社、エメリービル、CA)及びBIOJECT(商標)(Bioject Medical Technologies社、チュアラティン、OR)等の極微針若しくは無針注射によって、局所的に投与することができる。
【0130】
本明細書で提供される医薬組成物は、軟膏、クリーム、及びゲルの形態で提供することができる。適切な軟膏のビヒクルは、豚脂、安息香豚脂、オリーブ油、綿実油、及び他の油類、白色ワセリンを含む、油性若しくは炭化水素のビヒクル;親水性ワセリン、ヒドロキシステアリンスルフェート、及び脱水ラノリン等の乳化性ビヒクル若しくは吸収性ビヒクル;親水軟膏等の水除去可能なビヒクル;種々の分子量のポリエチレングリコールを含む水溶性軟膏ビヒクル;セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ラノリン、及びステアリン酸を含む、油中水型(W/O)エマルジョン又は水中油型(O/W)エマルジョンのいずれかの、エマルジョンビヒクルを含む(Remingtonの文献:「薬学の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)」前掲参照)。これらのビヒクルは、緩和剤であるが、一般に抗酸化剤及び保存剤の添加を必要とする。
【0131】
適切なクリーム基剤は、水中油型又は油中水型であり得る。適切なクリームのビヒクルは、水洗い可能であり、油相、乳化剤、及び水相を含み得る。また、該油相は、“内”相とも呼ばれ、一般に、ワセリン、及びセチルアルコール若しくはステアリルアルコール等の脂肪族アルコールからなる。該水相は通常、必ずではないが、該油相より容積が大きく、一般に、保湿剤を含む。クリーム製剤の乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、両性界面活性剤であり得る。
【0132】
ゲルは、半固体の懸濁型の系である。単相ゲルは、液体担体の全体にわたって実質的に均一に分散した有機高分子を含む。適切なゲル化剤は、カルボマー、カルボキシポリアルキレン、及びCARBOPOL(商標)等の架橋アクリル酸ポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリビニルアルコール等の親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメチルセルロース等のセルロースポリマー;トラガカントゴム及びキサンタンゴム等のゴム;アルギン酸ナトリウム;並びにゼラチンを含むが、これらに限定されない。均一なゲルを調製するために、アルコール若しくはグリセリン等の分散剤を添加することができ、また、ゲル化剤は、トリチュレーション、機械的な混合、及び/または撹拌によって分散することができる。
【0133】
本明細書で提供される医薬組成物は、坐薬、ペッサリー、ブジー剤、湿布若しくはパップ剤、泥膏、散剤、包帯剤、クリーム、硬膏、避妊薬、軟膏、液剤、乳剤、懸濁剤、タンポン、ゲル、泡剤、噴霧剤、又は浣腸の形態で、直腸に、尿道に、経膣的に、又は膣周囲に(perivaginally)、投与することができる。これらの剤形は、Remingtonの文献:「薬学の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)」(前掲参照)に記載されている従来法を用いて、製造することができる。
【0134】
直腸、尿道、及び膣の坐薬は、身体の開口部に挿入するための固形物であり、常温で固体であるが、体温で融解又は軟化し、該開口部の内部で有効成分を放出する。直腸及び膣用坐薬で利用する医薬として許容し得る担体は、本明細書で提供される医薬組成物と製剤化される場合、体温に近い温度で融点を生ずる、硬化剤等の基剤若しくはビヒクル;並びに、亜硫酸水素塩及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含めた本明細書に記載される抗酸化剤を含む。適切なビヒクルは、カカオバター(カカオ脂)、グリセリン-ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、鯨蝋、パラフィン、白ろう及び黄ろう、脂肪酸のモノ-、ジ-、及びトリグリセリドの適切な混合物、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びポリアクリル酸等のヒドロゲルを含むが、これらに限定されない。また、種々のビヒクルの組み合わせを使用することもできる。直腸及び膣用坐薬は、圧縮又は成形によって製造してもよい。直腸及び膣用坐薬の一般的な重量は、約2〜約3gである。
【0135】
本明細書で提供される医薬組成物は、液剤、懸濁剤、軟膏、エマルジョン、ゲル形成溶液、溶液のための粉末、ゲル、眼内挿入物、及び植込剤の形態で、眼科的に投与することができる。
【0136】
本明細書で提供される医薬組成物は、鼻腔内で、又は気道への吸入によって投与することができる。該医薬組成物は、加圧容器、ポンプ、スプレー、電気流体力学を用いて微細なミストを作るアトマイザーのようなアトマイザー、又はネブライザーを使用して、単独で、又は1,1,1,2-テトラフルオロエタン、若しくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン等の適切な噴霧剤と併用して、送達用のエアゾール若しくは溶液の形態で提供することができる。また、該医薬組成物は、単独で、又はラクトース若しくはリン脂質のような不活性担体と組合せて、吹送のための乾燥粉末として;及び点鼻剤として提供することもできる。鼻腔内の使用において、粉末は、キトサン若しくはシクロデキストリンを含む生体付着剤(bioadhesive agent)を含み得る。
【0137】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、若しくはネブライザーで使用する液剤若しくは懸濁剤は、エタノール、水性エタノール、又は本明細書で提供される有効成分の分散、可溶化、若しくは延長放出のための適切な代替的な薬剤;溶媒としての噴霧剤;及び/又はトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、若しくはオリゴ乳酸等の界面活性剤を含み得るよう、製剤化することができる。
【0138】
本明細書で提供される医薬組成物は、約50マイクロメートル以下、若しくは約10マイクロメートル以下等の、吸入による送達に適したサイズに微細化することができる。このようなサイズの粒子は、スパイラル式ジェットミル、流動床ジェットミル、ナノ粒子を形成する超臨界流体処理、高圧ホモジナイゼーション、若しくは噴霧乾燥等の当業者に公知の粉砕法を用いて、調製することができる。
【0139】
吸入器若しくは吹送器で使用するカプセル、ブリスター、及びカートリッジは、本明細書で提供される医薬組成物の粉末混合物;ラクトース若しくは澱粉等の適切な粉末基剤;及びl-ロイシン、マンニトール、若しくはステアリン酸マグネシウム等の性能改良剤を含むように、製剤化することができる。ラクトースは、無水、又は一水和物の形態であり得る。他の適切な賦形剤若しくは担体は、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、ショ糖、及びトレハロースを含むが、これらに限定されない。吸入投与/鼻腔内投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、メントール及びレボメントール等の適切なフレーバ;並びに/又は、サッカリン及びサッカリンナトリウム等の甘味料を更に含み得る。
【0140】
局所投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、即時放出、又は遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的指向放出、及びプログラム放出を含む放出制御のために、製剤化される。
【0141】
(D. 放出制御)
本明細書で提供される医薬組成物は、放出制御型剤形として製剤化することができる。本明細書において使用される用語“放出制御”とは、同じ経路で投与した場合、有効成分の放出の速度若しくは場所が、即時放出型剤形とは異なる剤形をいう。放出制御型剤形は、遅延放出型剤形、延長放出剤形、持続放出剤形、徐放性剤形、パルス放出型剤形、制御放出型剤形、促進放出型剤形、高速放出型剤形、標的指向放出型剤形、プログラム放出型剤形、及び胃内滞留剤形を含むが、これらに限定されない。放出制御型剤形における該医薬組成物は、マトリクス制御放出デバイス、浸透圧制御放出デバイス、多粒子制御放出デバイス、イオン交換樹脂、腸溶コーティング、多層コーティング、マイクロスフィア、リポソーム、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、当業者に公知の種々の制御放出デバイス及び方法を使用して製造することができる。また、有効成分の放出速度は、該有効成分の粒子サイズ、及び多形を変えることによっても改変することができる。
【0142】
制御放出の例は、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;第4,008,719号;第5,674,533号;第5,059,595号;第5,591,767号;第5,120,548号;第5,073,543号;第5,639,476号;第5,354,556号;第5,639,480号;第5,733,566号;第5,739,108号;第5,891,474号;第5,922,356号;第5,958,458号;第5,972,891号;第5,980,945号;第5,993,855号;第6,045,830号;第6,087,324号;第6,113,943号;第6,197,350号;第6,248,363号;第6,264,970号;第6,267,981号;第6,270,798号;第6,375,987号;第6,376,461号;第6,419,961号;第6,589,548号;第6,613,358号;第6,623,756号;第6,699,500号;第6,793,936号;第6,827,947号;第6,902,742号;第6,958,161号;第7,255,876号;第7,416,738号;第7,427,414号;第7,485,322号;Bussemerらの文献、Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 2001, 18, 433-458;「放出制御型薬物送達技術(Modified-Release Drug Delivery Technology)」、第2版;Rathboneら編集;Marcel Dekker AG: 2005;Maroniらの文献、Expert. Opin. Drug Deliv. 2005, 2, 855-871;Shiらの文献、Expert Opin. Drug Deliv. 2005, 2, 1039-1058;「薬物送達における高分子(Polymers in Drug Delivery)」、Ijeomaらの編集;CRC Press LLC: ボカラトン, FL, 2006;Badawyらの文献、J. Pharm. Sci. 2007, 9, 948-959;「放出制御型薬物送達技術(Modified-Release Drug Delivery Technology)」、前掲;Conwayの文献、Recent Pat. Drug Deliv. Formul. 2008, 2, 1-8;Gazzanigaらの文献、Eur. J. Pharm. Biopharm. 2008, 68, 11-18;Nagarwalらの文献、Curr. Drug Deliv. 2008, 5, 282-289;Gallardoらの文献、Pharm. Dev. Technol. 2008, 13, 413-423;Chrzanowskiの文献、AAPS PharmSciTech. 2008, 9, 635-638;Chrzanowskiの文献、AAPS PharmSciTech. 2008, 9, 639-645;Kalantziらの文献、Recent Pat. Drug Deliv. Formul. 2009, 3, 49-63;Saigalらの文献、Recent Pat. Drug Deliv. Formul. 2009, 3, 64-70;及び、Royらの文献、J. Control Release 2009, 134, 74-80に説明されたものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0143】
(1. マトリクス制御放出デバイス)
放出制御型剤形における本明細書で提供される医薬組成物は、当業者に公知のマトリクス制御放出デバイスを使用して製造することができる。Takadaらの文献、「制御ドラッグデリバリーの専門事典(Encyclopedia of Controlled Drug Delivery)」、第2巻、Mathiowitz編集、Wiley, 1999を参照されたい。
【0144】
特定の実施態様において、放出制御型剤形における本明細書で提供される医薬組成物は、合成ポリマー、並びに多糖及びタンパク質等の天然ポリマー及び誘導体を含むがこれに限定されない水膨潤性、侵食性若しくは可溶性ポリマーである、侵食性マトリクスデバイスを使用して製剤化される。
【0145】
侵食性マトリクスを形成するのに有用な物質は、キチン、キトサン、デキストラン、及びプルラン;アガーガム、アラビアゴム、カラヤガム、ローカストビーンガム、トラガカントゴム、カラゲナン、ガッティガム、グアーガム、キサンタンガム、及びスクレログルカン;デキストリン及びマルトデキストリン等の澱粉;ペクチン等の親水コロイド;レシチン等のリン脂質;アルギン酸塩;アルギン酸プロピレングリコール;ゼラチン;コラーゲン;エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMEC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸セルロース(CA)、プロピオン酸セルロース(CP)、酪酸セルロース(CB)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、CAP、CAT、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP、HPMCAS、トリメリト酸酢酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAT)、及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)等のセルロース化合物;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニル;グリセロール脂肪酸エステル;ポリアクリルアミド;ポリアクリル酸;エタクリル酸若しくはメタクリル酸の共重合体(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm社(America, Inc., ピスカタウェイ, NJ));ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート);ポリ乳酸;L-グルタミン酸とL-グルタミン酸エチルの共重合体;分解性乳酸-グリコール酸共重合体;ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸;並びに、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸(2-ジメチルアミノエチル)、及びメタクリル酸(トリメチルアミノエチル)クロリドのホモ重合体及び共重合体等の他のアクリル酸誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0146】
特定の実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、非侵食性マトリクスデバイスによって製剤化される。有効成分は、不活性マトリクスに溶解又は分散し、一旦投与されると、該不活性マトリクスを通じた拡散によって最初に放出される。非侵食性マトリクスデバイスとして使用するのに適した物質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリラート、ポリブチルメタクリラート、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、酢酸ビニルとの塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、エチレン/ビニルオキシエタノール共重合体、ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、及びシリコーンカーボネート共重合体等の不溶性プラスチック;エチルセルロース、酢酸セルロース、クロスポビドン、及び架橋部分的加水分解ポリ酢酸ビニル等の親水性ポリマー;並びにカルナウバワックス、微結晶性ワックス、及びトリグリセリド等の脂肪族化合物を含むが、これらに限定されない。
【0147】
マトリクス制御放出系において、例えば、使用するポリマーの型、ポリマーの粘性、ポリマー及び/又は有効成分の粒子サイズ、有効成分対ポリマーの比、並びに組成物の他の賦形剤若しくは担体によって、所望の放出速度を制御することができる。
【0148】
放出制御型剤形における本明細書で提供される医薬組成物は、直接圧縮、圧縮前の乾式若しくは湿式造粒法、及び圧縮前の溶融造粒を含む、当業者に公知の方法によって調製することができる。
【0149】
(2. 浸透圧制御放出デバイス)
放出制御型剤形における本明細書で提供される医薬組成物は、一室系、二室系、非対称膜技術(AMT)、及び押出コアシステム(ESC)を含むが、これらに限定されない浸透圧制御放出デバイスを使用して製造することができる。一般に、このような装置には、少なくとも2つの構成部分がある:(a)有効成分を収容するコア部;及び(b)該コア部を封入し、少なくとも1つの送達ポートを具備する半透膜。該半透膜は、該送達ポートを通る押し出しによって薬物放出を引き起こす、使用時の水性環境からコア部への水の流入を制御する。
【0150】
有効成分に加え、該浸透圧デバイスのコア部は、浸透物質を任意に含み、使用時の水性環境から該デバイスのコア部への水の輸送の駆動力を作り出す。浸透物質の一つの分類である水膨潤性親水性ポリマーは、“オスモポリマー(osmopolymer)”及び“ヒドロゲル”ともいう。浸透物質としての適切な水膨潤性親水性ポリマーは、親水性ビニル及びアクリルポリマー、多糖であり、例えば、アルギン酸カルシウム、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ(2-ヒドロキシメタクリル酸エチル)、ポリ(アクリル)酸、ポリ(メタクリル)酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA/PVP共重合体、メタクリル酸メチル及び酢酸ビニル等の疎水性モノマーとのPVA/PVP共重合体、大きなPEOブロックを含む親水性ポリウレタン、クロスカルメロースナトリウム、カラゲナン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びカルボキシエチルセルロース(CEC)、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィル、ゼラチン、キサンタンゴム、並びにグリコール酸ナトリウム澱粉等を含むが、これらに限定されない。
【0151】
浸透物質の他の分類は、オスモゲン(osmogen)であり、これは、水を吸収して、周囲のコーティングの障壁を横断する浸透圧勾配に影響することが可能である。適切なオスモゲンは、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、及び硫酸ナトリウム等の無機塩類;デキストロース、フルクトース、グルコース、イノシトール、ラクトース、マルトース、マンニトール、ラフィノース、ソルビトール、ショ糖、トレハロース、及びキシリトール等の糖類;アスコルビン酸、安息香酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、セバシン酸、ソルビン酸、アジピン酸、エデト酸、グルタミン酸、p-トルエンスルホン酸、コハク酸、及び酒石酸等の有機酸;尿素;並びにこれらの混合物を含むが、これらに制限されない。
【0152】
種々の溶出速度の浸透物質は、どれくらい速く有効成分が初期に剤形から送達されるかについて影響を及ぼすのに使用することができる。例えば、MANNOGEM(商標)EZ(SPI Pharma社、ルイス, DE)等の非晶形の糖を使用して、最初の2、3時間で速い送達を提供し、速やかに所望の治療効果を奏し、且つ長期間にわたって、所望のレベルの治療効果若しくは予防効果を維持する残量を徐々に連続して放出することができる。この場合、有効成分は、代謝及び排出された有効成分の量を補充するような割合で放出される。
【0153】
また、コア部は、本明細書に記載される多種多様な他の賦形剤及び担体も含み、剤形の性能を促進するか、或いは安定性若しくは加工を促進する。
【0154】
半透膜を形成するのに有用な材料は、生理学上関連性のあるpHで透水性及び非水溶性であるか、或いは架橋等の化学変成によって非水溶性にされやすい、種々の等級のアクリル系、ビニル系、エーテル系、ポリアミド系、ポリエステル系、及びセルロース系誘導体を含む。コーティングを形成するのに適切なポリマーの例は、可塑化された、可塑化されない及び強化された酢酸セルロース(CA)、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸CA、硝酸セルロース、酢酸酪酸セルロース(CAB)、カルバミン酸エチルCA、CAP、カルバミン酸メチルCA、コハク酸CA、トリメリト酸酢酸セルロース(CAT)、ジメチルアミノ酢酸CA、炭酸エチルCA、クロロ酢酸CA、シュウ酸エチルCA、スルホン酸メチルCA、スルホン酸ブチルCA、p-トルエンスルホン酸CA、酢酸寒天、三酢酸アミロース、酢酸βグルカン、三酢酸βグルカン、ジメチル酢酸アセトアルデヒド、ローカストビーンガムのトリアセテート、ヒドロキシル化エチレン-酢酸ビニル、EC、PEG、PPG、PEG/PPG共重合体、PVP、HEC、HPC、CMC、CMEC、HPMC、HPMCP、HPMCAS、HPMCAT、ポリ(アクリル)酸とエステル、ポリ(メタクリル)酸とエステル、及びこれらの共重合体、澱粉、デキストラン、デキストリン、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ポリアルケン、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルエステルとエーテル、天然ワックス、並びに合成ワックスを含む。
【0155】
また、半透膜は、疎水性微孔膜であり、米国特許第5,798,119号に開示されているように、その孔は、実質的にガスで充填され、水性媒体によって湿っていないが、水蒸気に対して透過性である。このような疎水性であるが水蒸気透過性の膜は典型的には、ポリアルケン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリハロゲン化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルエステルとエーテル、天然ワックス、並びに合成ワックス等の疎水性ポリマーからなる。
【0156】
該半透膜の送達ポートは、機械穿孔又はレーザードリルによって、コーティング後に形成することができる。また、送達ポートは、水溶性物質のプラグの浸食、又は該コア部の窪みの上の膜の比較的薄い部分の破断によって、インサイチューで形成することもできる。加えて送達ポートは、米国特許第5,612,059号及び第5,698,220号に開示されている型の非対称膜コーティングの事例のように、コーティング工程時に形成することができる。
【0157】
放出される有効成分の全量、及び放出速度は、該半透膜の厚さ及び多孔度、コア部の組成、送達ポートの数、サイズ及び位置によって実質的に調整することができる。
【0158】
浸透圧制御放出型剤形中の医薬組成物は、本明細書に記載される追加の従来の賦形剤若しくは担体を更に含み、製剤の性能若しくは加工を促進する。
【0159】
該浸透圧制御放出型剤形は、当業者に公知の従来法及び従来技術によって調製することができる(Remingtonの文献:「薬学の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)」前掲;Santus及びBakerの文献:J. Controlled Release 1995, 35, 1-21;Vermaらの文献:Drug Development and Industrial Pharmacy, 2000, 26, 695-708;及び、Vermaらの文献、J. Controlled Release 2002, 79, 7-27を参照されたい)。
【0160】
特定の実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、AMT制御放出型剤形として製剤化され、該剤形は、有効成分と他の医薬として許容し得る賦形剤若しくは担体とを含むコアをコーティングする非対称浸透膜を具備する。米国特許第5,612,059号及び国際公開公報第2002/17918号を参照されたい。該AMT制御放出型剤形は、直接圧縮法、乾式造粒法、湿式造粒法、及びディップコーティング法を含む、当業者に公知の従来法及び従来技術によって調製することができる。
【0161】
特定の実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、ESC制御放出型剤形として製剤化され、該剤形は、有効成分、ヒドロキシエチルセルロース、及び他の医薬として許容し得る賦形剤若しくは担体を含むコアをコーティングする浸透膜を具備する。
【0162】
(3. 多粒子制御放出デバイス)
放出制御型剤形における本明細書で提供される医薬組成物は、多粒子制御放出デバイスとして製造することができ、これは、直径約10μm〜約3mm、約50μm〜約2.5mm、若しくは約100μm〜約1mmの多数の粒子、顆粒、もしくはペレット含む。このような多粒子は、乾式及び湿式造粒法、押出/球状化、ローラー圧縮、溶融-凝固を含む当業者に公知の工程によって、及びスプレーコーティングシードコア(spray-coating seed core)によって、作製することができる。例えば、「多粒子経口ドラッグデリバリー(Multiparticulate Oral Drug Delivery)」;Ghebre-Sellassie編集;Marcel Dekker: 1994;及び、「医薬品ペレット化技術(Pharmaceutical Pelletization Technology)」;Ghebre-Sellassie編集;Marcel Dekker: 1989を参照されたい。
【0163】
本明細書に記載される他の賦形剤若しくは担体は、該医薬組成物と混合することができ、多粒子の加工と形成に有用であり得る。生じる粒子はそれら自身、多粒子デバイスを構成することができるか、或いは、腸溶ポリマー、水膨張性ポリマー、及び水溶性ポリマー等の種々のフィルム形成材料によってコーティングすることができる。更に、該多粒子は、カプセル剤又は錠剤として加工することができる。
【0164】
(4. 標的指向送達)
また、本明細書で提供される医薬組成物を製剤化して、リポソーム-、再封赤血球-、及び抗体-ベースの送達システムを含む、治療対象の特定の組織、受容体、若しくは身体の他の領域を標的とすることもできる。例は、米国特許第5,709,874号;第5,759,542号;第5,840,674号;第5,900,252号;第5,972,366号;第5,985,307号;第6,004,534号;第6,039,975号;第6,048,736号;第6,060,082号;第6,071,495号;第6,120,751号;第6,131,570号;第6,139,865号;第6,253,872号;第6,271,359号;第6,274,552号;第6,316,652号;及び、第7,169,410号に開示されたものを含むが、これらに限定されない。
【0165】
(使用方法)
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの治療有効量を対象へ投与することを含む、該対象の増殖性疾患、炎症疾患、又は腎疾患の1以上の症状を治療、予防、又は改善する方法を、本明細書に提供する。
【0166】
別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの治療有効量を対象へ投与することを含む、該対象の増殖性疾患、炎症疾患、又は腎疾患を治療、予防、又は改善する方法を、本明細書に提供する。
【0167】
特定の実施態様において、増殖性疾患は、真性赤血球増加症(PCV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)、慢性好酸球性白血病(CEL)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、全身性肥満細胞症(SM)、及び特発性骨髄線維症(IMF)を含むが、これらに限定されるものではない、骨髄増殖性疾患である。特定の実施態様において、増殖性疾患は、骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、イマチニブ-耐性CML、急性骨髄性白血病(AML)、及び急性巨核芽球性白血病(AMKL)を含むが、これらに限定されるものではない、白血病である。特定の実施態様において、増殖性疾患は、骨髄腫を含むが、これに限定されるものではない、リンパ増殖性疾患である。特定の実施態様において、増殖性疾患は、頭頸部癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、脳腫瘍、膵臓癌、及び腎臓癌を含むが、これらに限定されるものではない、癌である。特定の実施態様において、炎症疾患又は障害は、免疫機能障害、免疫不全、免疫修飾、自己免疫疾患、組織移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、創傷治癒、腎疾患、多発性硬化症、甲状腺炎、1型糖尿病、サルコイドーシス、乾癬、アレルギー性鼻炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)、全身性紅斑狼瘡(SLE)、関節炎、変形性関節炎、関節リウマチ、骨粗鬆症、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)、並びにドライアイ症候群(又は乾性角結膜炎(KCS))を含むが、これらに限定されるものではない。特定の実施態様において、腎疾患は、糖尿病性神経障害である。
【0168】
更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの治療有効量を対象へ投与することを含む、該対象におけるJAK-媒介性状態、障害、又は疾患の1以上の症状を治療、予防、又は改善する方法を、本明細書に提供する。
【0169】
別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの治療有効量を対象へ投与することを含む、該対象におけるJAK-媒介性状態、障害、又は疾患を治療、予防、又は改善する方法を、本明細書に提供する。
【0170】
特定の実施態様において、JAK-媒介性状態、障害、又は疾患は、真性赤血球増加症(PCV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)、慢性好酸球性白血病(CEL)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、全身性肥満細胞症(SM)、及び特発性骨髄線維症(IMF)を含むが、これらに限定されるものではない、骨髄増殖性疾患である。特定の実施態様において、JAK-媒介性状態、障害、又は疾患は、骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、イマチニブ-耐性CML、急性骨髄性白血病(AML)、及び急性巨核芽球性白血病(AMKL)を含むが、これらに限定されるものではない、白血病である。特定の実施態様において、JAK-媒介性状態、障害、又は疾患は、骨髄腫を含むが、これに限定されるものではない、リンパ増殖性疾患である。特定の実施態様において、JAK-媒介性状態、障害、又は疾患は、頭頸部癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、脳腫瘍、膵臓癌、及び腎臓癌を含むが、これらに限定されるものではない、癌である。特定の実施態様において、JAK-媒介性状態、障害、又は疾患は、免疫機能障害、免疫不全、免疫修飾、自己免疫疾患、組織移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、創傷治癒、腎疾患、多発性硬化症、甲状腺炎、1型糖尿病、サルコイドーシス、乾癬、アレルギー性鼻炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)、全身性紅斑狼瘡(SLE)、関節炎、変形性関節炎、関節リウマチ、骨粗鬆症、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)、並びにドライアイ症候群(又は乾性角結膜炎(KCS))を含むが、これらに限定されるものではない、炎症疾患又は障害である。
【0171】
特定の実施態様において、増殖性疾患又はJAK-媒介性状態、障害、若しくは疾患は、真性赤血球増加症(PCV)、本態性血小板血症、特発性骨髄線維症(IMF)、及び過好酸球増加症候群(HES)を含むが、これらに限定されるものではない骨髄増殖性疾患;骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、イマチニブ-耐性CML、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び急性巨核芽球性白血病(AMKL)を含むが、これらに限定されるものではない白血病;骨髄腫を含むが、これに限定されるものではない、リンパ増殖性疾患;頭頸部癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、脳腫瘍、膵臓癌、胃癌、甲状腺癌、腎臓癌、カポジ肉腫、キャッスルマン病、及び黒色腫を含むが、これらに限定されるものではない癌から選択される。特定の実施態様において、炎症疾患又はJAK-媒介性状態、障害、若しくは疾患は、非限定的に、組織移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、創傷治癒、腎疾患、糖尿病性神経障害、自己免疫疾患、多発性硬化症、甲状腺炎、1型糖尿病、サルコイドーシス、乾癬、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)、全身性紅斑狼瘡(SLE)、関節炎、変形性関節炎、関節リウマチ、骨粗鬆症、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)、結膜炎、ドライアイ症候群(又は乾性角結膜炎(KCS))、ブドウ膜炎、虹彩炎、強膜炎、鼻炎、静脈洞炎、気管支炎、心筋炎、虚血再灌流障害、全身性炎症反応症候群(SIRS)、及び敗血症を含む、免疫機能障害、免疫不全又は免疫修飾に関連する疾患から選択されるが、これらに限定されるものではない。特定の実施態様において、腎疾患又はJAK-媒介性状態、障害、又は疾患は、糖尿病性神経障害を含む。
【0172】
特定の実施態様において、JAK-媒介性疾患及び障害は、再狭窄、線維症、及び強皮症を含むが、これらに限定されるものではない。特定の実施態様において、JAK-媒介性疾患は、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、肝炎(B型肝炎又はC型肝炎)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトTリンパ球指向性ウイルス1型(HTLV-1)、水痘-帯状疱疹ウイルス、及びヒトパピローマウイルス(HPV)等のウイルス性疾患を含むが、これらに限定されるものではない。
【0173】
特定の実施態様において、本明細書に提供される式Iの化合物は、約0.01〜約1,000mg/kg、約0.1〜約500mg/kg、約0.1〜約250mg/kg、又は約0.1〜約100mg/kgの範囲の量で対象へ投与する。
【0174】
特定の実施態様において、本明細書に提供される式Iの化合物は、約0.01〜約1,000mg/kg/日、約0.1〜約500mg/kg/日、約0.1〜約250mg/kg/日、又は約0.1〜約100mg/kg/日の範囲の量で対象へ投与する。特定の実施態様において、本明細書に提供される式Iの化合物は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約50、約60、約70、約75、約80、約90、約100、約105、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約750、約800、約900、又は約1,000mg/kg/日の量で対象へ投与する。
【0175】
また本明細書に提供される式Iの化合物の投与量は、単位“mg/kg/日”以外の単位で表すこともできる。例えば、非経口投与の用量は、“mg/m2/日”で表すことができる。当業者は、所与の対象の身長若しくは体重のいずれか、又はこれらの両方に対するmg/kg/日からmg/m2/日への用量の変換方法を容易に理解するであろう(www.fda.gov/cder/cancer/animalframe.htm参照)。例えば、65kgのヒトの1mg/kg/日の用量は、およそ38mg/m2/日に等しい。
【0176】
治療される疾患及び対象の状態によって、本明細書に提供される式Iの化合物を、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、CIV、嚢内注射若しくは注入、皮下注射、又は植込)、吸入、経鼻、経膣、経直腸、舌下、又は局所(例えば、経皮的若しくは局部的)の投与経路によって、投与することができる。本明細書で提供される式Iの化合物は、単独で、又はそれぞれの投与経路に適切な医薬として許容し得る賦形剤、担体、補助薬、及びビヒクルと一緒に、適切な単位剤形で製剤化することができる。
【0177】
本明細書で提供される式Iの化合物を、例えば、単回ボーラス注射、又は経口錠剤若しくは丸剤等の単回投与として;又は例えば、長期の連続注入、若しくは長期の分割したボーラス投与等で長期にわたって、送達することができる。
【0178】
本明細書で提供される式Iの化合物を、1日1回(QD)投与するか、又は1日2回(BID)、1日3回(TID)、及び1日4回(QID)等の1日複数回投与に分けることができる。加えて該投与は、連続的(すなわち、毎日)、又は断続的にすることができる。本明細書において使用される用語“断続的な”又は“断続的に”は、規則的又は不規則的な間隔のいずれかで停止する及び開始することを意味することが意図される。例えば、本明細書で提供される式Iの化合物の断続的な投与は、週1〜6日の投与、周期(例えば、連続した2〜8週の毎日投与、その後、1週以内の投与しない休薬期間)での投与、又は隔日での投与である。
【0179】
特定の実施態様において、本明細書に提供される式Iの化合物の投与頻度は、大体毎日投与から大体毎月投与の範囲である。特定の実施態様において、本明細書に提供される式Iの化合物の投与は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日おきに1回、週2回、毎週1回、2週毎に1回、3週毎に1回、又は4週毎に1回である。一実施態様において、本明細書で提供される式Iの化合物を、1日1回投与する。別の実施態様において、本明細書で提供される式Iの化合物を、1日2回投与する。更に別の実施態様において、本明細書で提供される式Iの化合物を、1日3回投与する。更なる別の実施態様において、本明細書で提供される式Iの化合物を、1日4回投与する。
【0180】
特定の実施態様において、該対象は哺乳動物である。特定の実施態様において、該哺乳動物はヒトである。
【0181】
一実施態様において、該増殖性疾患は腫瘍である。別の実施態様において、該増殖性疾患は固型腫瘍である。特定の実施態様において、該固型腫瘍は進行性固型腫瘍である。特定の実施態様において、該固型腫瘍は転移性固型腫瘍である。更に別の実施態様において、該増殖性疾患は癌である。更に別の実施態様において、該増殖性疾患は進行癌である。特定の実施態様において、該固型腫瘍は転移癌である。
【0182】
特定の実施態様において、本明細書に提供される方法により治療可能である癌は、(1)急性白血病、急性リンパ性白血病、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球性、単球等の急性骨髄性白血病、赤白血病、及び骨髄異形成症候群若しくはその症状(貧血、血小板減少症、好中球減少、二血球減少症、若しくは汎血球減少症等)、不応性貧血(RA)、環状鉄芽球を伴うRA(RARS)、芽球増加を伴うRA(RAEB)、移行期RAEB(RAEB-T)、前白血病、及び慢性骨髄単球性白血病(CMML)を含むが、これらに限定されない白血病;(2)慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、及び毛様細胞性白血病を含むが、これらに限定されない慢性白血病;(3)真性赤血球増加症;(4)ホジキン病及び非ホジキン病を含むが、これらに限定されないリンパ腫;(5)くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤発性形質細胞腫、及び髄外性形質細胞腫を含むが、これらに限定されない多発性骨髄腫;(6)ワルデンストレームマクログロブリン血症;(7)重症度が不明の単クローン性γグロブリン血症;(8)良性単クローン性γグロブリン血症;(9)重鎖病;(10)骨肉腫、骨原性肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨繊維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(血管内皮腫)、繊維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、転移癌、神経鞘腫、横紋筋肉腫、及び滑膜肉腫を含むが、これらに限定されない、骨及び結合組織の肉腫;(11)神経膠腫、星状細胞腫、脳幹部グリオーマ、上衣細胞腫、希突起膠腫、非神経膠腫瘍(nonglial tumor)、聴覚神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽細胞腫、及び原発性脳リンパ腫を含むが、これらに限定されない脳腫瘍;(12)腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、乳房髄様癌、粘液性乳癌、乳腺管状癌、乳頭状乳癌、原発性癌、パジェット病、及び炎症性乳癌を含むが、これらに限定されない乳癌;(13)褐色細胞腫及び副腎皮質癌を含むが、これらに限定されない副腎癌;(14)甲状腺乳頭癌若しくは濾胞性甲状腺癌、髄様甲状腺癌、及び甲状腺未分化癌を含むが、これらに限定されない甲状腺癌;(15)インシュリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、及び類癌腫若しくは島細胞腫を含むが、これらに限定されない膵臓癌;(16)クッシング症候群、プロラクチン分泌腫瘍、先端肥大症、及び尿崩症を含むが、これらに限定されない下垂体癌;(17)虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、及び毛様体黒色腫等の眼球黒色腫、並びに網膜芽細胞腫を含むが、これらに限定されない眼癌;(18)扁平上皮癌、腺癌及び黒色腫を含むが、これらに限定されない膣癌;(19)扁平上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、及びパジェット病を含むが、これらに限定されない外陰部癌;(20)扁平上皮癌及び腺癌を含むが、これらに限定されない子宮頸癌;(21)子宮内膜癌及び子宮肉腫を含むが、これらに限定されない子宮癌;(22)卵巣上皮悪性腫瘍、境界型腫瘍、生殖細胞腫瘍、及び間質腫瘍を含むが、これらに限定されない卵巣癌;(23)扁平上皮癌 、腺癌、腺様嚢胞癌、粘液性類表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣状癌、及び燕麦細胞(小細胞)癌を含むが、これらに限定されない食道癌;(24)腺癌、菌状(ポリープ様)、潰瘍化、表在拡大型、びまん性、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、繊維肉腫、及び癌肉腫を含むが、これらに限定されない胃癌;(25)結腸癌;(26)直腸癌;(27)肝細胞癌及び肝芽細胞腫を含むが、これらに限定されない肝臓癌;(28)腺癌を含むが、これに限定されない胆嚢癌;(29)乳頭状、結節性、及びびまん性を含むが、これらに限定されない胆管癌;(30)非小細胞肺癌、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌、及び小細胞肺癌を含むが、これらに限定されない肺癌;(31)胚腫瘍、精上皮腫、未分化、古典型(典型的)、精母細胞性、非精上皮腫、胎生期癌、奇形腫、及び絨毛膜癌腫(卵黄嚢腫瘍)を含むが、これらに限定されない精巣癌;(32)腺癌、平滑筋肉腫、及び横紋筋肉腫を含むが、これらに限定されない前立腺癌;(33)陰茎癌(penal cancer);(34)扁平上皮癌を含むが、これに限定されない口腔癌;(35)基底癌;(36)腺癌、粘液性類表皮癌、及び腺様嚢胞癌を含むが、これらに限定されない唾液腺癌;(37)扁平上皮細胞癌及び疣贅性癌を含むが、これらに限定されない咽頭癌;(38)基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、及び末端性黒子型黒色腫を含むが、これらに限定されない皮膚癌;(39)腎細胞癌、腺癌、副腎腫、繊維肉腫、及び移行細胞癌(腎盂及び/又は尿管(uterer))を含むが、これらに限定されない腎臓癌;(40)ウィルムス腫瘍;(41)移行上皮癌、扁平上皮細胞癌、腺癌、及び癌肉腫を含むが、これらに限定されない膀胱癌;並びに、粘液肉腫、骨原性肉種、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽細胞腫、上皮性悪性腫瘍、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、及び乳頭腺癌を含むが、これらに限定されない他の癌を含むが、これらに限定されない(Fishmanらの文献:1985,「医学(Medicine)」第2版、J. B. Lippincott社, フィラデルフィア;及びMurphyらの文献;1997, 「詳細な説明を受けた上での決断:癌診断、治療及び回復の完全本(Informed Decisions:The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery)」Viking Penguin, Penguin Books U.S.A., Inc., 米国を参照)。
【0183】
特定の実施態様において、本明細書で提供される方法によって治療可能な癌は、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌(例えば、結腸直腸癌)、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、神経膠腫(例えば、膠芽細胞腫)、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌(例えば、小細胞及び非小細胞肺癌)、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、肉腫(例えば、骨肉腫)、皮膚癌(例えば、扁平上皮癌)、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、及び子宮癌を含むが、これらに限定されない。
【0184】
特定の実施態様において、本明細書で提供される方法によって治療可能な癌は、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌(例えば、結腸直腸癌)、子宮内膜癌、胃癌、神経膠腫(例えば、膠芽細胞腫)、頭頸部癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、及び前立腺癌を含むが、これらに限定されない。
【0185】
特定の実施態様において、該癌は頭頸部癌である。特定の実施態様において、該癌は肺癌である。特定の実施態様において、該癌は肺腺癌である。特定の実施態様において、該癌は、食道又は上部消化管癌である。
【0186】
特定の実施態様において、本明細書で提供される方法のうちの1つで治療される対象は、抗癌治療で治療されていない。特定の実施態様において、本明細書で提供される方法のうちの1つで治療される対象は、抗癌治療で治療されている。
【0187】
本明細書で提供される方法は、一部の疾患又は障害が、特定の年齢のグループにより一般的である場合があるが、患者の年齢にかかわらず、対象を治療することを包含する。問題の疾患又は状態を治療しようとして手術を受けた対象に加え、該手術を受けていない対象の治療方法を更に提供する。癌を有する対象には、種々雑多な臨床症状があり、且つ該対象は臨床結果が変化するので、特定の対象に行う治療は、その人の予後に応じて変更してもよい。
【0188】
特定の実施態様において、本明細書に提供される各方法において、式Iの化合物は、第二の治療薬と併用、又は組合せて使用される。本明細書において使用される用語 "併用"は、2つ以上の治療(例えば、1つ以上の予防薬及び/又は治療薬)の使用を含む。しかしながら、用語“併用”の使用は、状態、障害、又は疾患を伴う対象に治療(例えば、予防薬及び/又は治療薬)を投与する順序を限定しない。第一の治療(例えば、本明細書で提供される化合物等の予防薬又は治療薬)を、第二の治療(例えば、予防薬又は治療薬)の対象への投与の前に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、又は12週前に)、投与と同時に、或いは投与の後に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、又は12週後に)、投与することができる。また、本明細書において、3剤併用療法も企図する。
【0189】
本明細書において使用される用語"相乗性"は、本明細書に提供される式Iの化合物と、状態、障害、又は疾患の予防、治療又は管理に使用されたか、又は現在使用されている別の治療(例えば、予防薬又は治療薬)との組合せを含み、これはこれらの治療の相加作用よりもより有効である。併用療法(例えば予防薬又は治療薬の組合せ)の相乗作用は、これらの治療の1つ以上のより少ない用量の使用、及び/又は状態、障害又は疾患を伴う対象への該治療のより少ない投与頻度を可能にする。治療(例えば予防薬又は治療薬)のより少ない用量を利用する能力及び/又は該治療をより少ない頻度で投与する能力は、状態、障害、又は疾患の予防、治療、又は管理における該治療の有効性を低下することなく、対象への該治療の投与に関連した毒性を軽減する。加えて、相乗作用は、状態、障害、又は疾患の予防、治療、又は管理において、薬剤の改善された有効性を生じることができる。最後に、併用治療(例えば、予防薬又は治療薬の組合せ)の相乗作用は、いずれかの単独治療の使用に関連した有害な又は望ましくない副作用を回避するか又は軽減することができる。
【0190】
本明細書に提供される式Iの化合物は、別の治療薬と併用して又は交互に投与することができる。併用療法において、2種以上の薬剤の有効量は、一緒に投与されるのに対し、交互若しくは逐次過程療法は、各薬剤の有効量は、連続して又は逐次的に投与される。投与される用量は、薬物の吸収、不活化、及び排泄の速度に加え、当業者に公知の他の要因によって左右されるであろう。また用量値は、軽減されるべき状態の重症度によっても変動することも留意されるべきである。いずれか特定の対象に関して、具体的な投薬計画及びスケジュールは、個人の必要性及び該組成物を投与するか又は投与を監督する専門家の判断に従い、時間を追って調節されなければならないことが更に理解されるべきである。
【0191】
特定の実施態様において、第二の治療薬は、化学療法薬、抗増殖薬、抗炎症薬、免疫修飾薬、又は免疫抑制薬である。一実施態様において、第二の治療薬は抗癌剤である。一実施態様において、抗癌剤は、シタラビン(シトシンアラビノシド又はAra-Cとしても公知)、フルダラビン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、HDAC(高用量シタラビン)、6-メルカプトプリン、メトトレキセート、及びペメトレキセドを含むが、これらに限定されるものではない代謝拮抗薬である。別の実施態様において、抗癌剤は、ビンカ・アルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン)並びにタキサン(例えば、パクリタキセル、アルブミン-結合型パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))、及びドセタキセル)を含むが、これらに限定されるものではない、微小管阻害剤である。更に別の実施態様において、抗癌剤は、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、フルダラビン、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、及びニトロソ尿素(例えば、ビスクロロエチルニトロ尿素、ヒドロキシ尿素、カルムスチン、及びロムスチン)を含むが、これらに限定されるものではない、アルキル化剤である。更に別の実施態様において、抗癌剤は、カルボプラチン、CI-973、シスプラチン、オキサリプラチン、及びサトラプラチン(JM-216)を含むが、これらに限定されるものではない、白金製剤である。更に別の実施態様において、抗癌剤は、アドリアマイシン、ダウノルビシン、及びドキソルビシンを含むが、これらに限定されるものではない、アントラサイクリンである。更に別の実施態様において、抗癌剤は、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ダウノマイシン(ダウノルビシンとしても公知)、ドキソルビシン、イダルビシン、及びマイトマイシンを含むが、これらに限定されるものではない、抗腫瘍抗生物質である。更に別の実施態様において、抗癌剤は、カンプトテシン、エトポシド、イリノテカン、及びトポテカンを含むが、これらに限定されるものではない、トポイソメラーゼ阻害剤である。更に別の実施態様において、抗癌剤は、エルロチニブ及びイマチニブを含むが、これらに限定されるものではない、キナーゼ阻害剤である。更に別の実施態様において、抗癌剤は、ゲムシタビンを含むが、これに限定されるものではない、ヌクレオシドである。更に別の実施態様において、抗癌剤は、SUTENT(登録商標)、ソラフェニブ、及びベバシズマブを含むが、これらに限定されるものではない、血管新生阻害剤である。更に別の実施態様において、抗癌剤は、リン酸エストラムスチン及びプレドニムスチンを含むが、これらに限定されるものではない、細胞傷害性薬剤である。更に別の実施態様において、抗癌剤は、ホルモン又はホルモンのアゴニスト、アンタゴニスト、部分アゴニスト若しくは部分アンタゴニストである。更に別の実施態様において、抗癌剤は、酵素(アスパラギナーゼ)、ホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、及びメゲストロール)、ヒドロキシ尿素、インターフェロン、及びオブリメルセンからなる群から選択される。また別の実施態様において、抗癌剤は、ベバシズマブ及びセツキシマブを含むが、これらに限定されるものではない、モノクローナル抗体である。最新の癌治療のより包括的な考察については、http://www.nci.nih.gov/、FDA承認の癌治療薬の一覧http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htm、及び「メルクマニュアル(The Merck Manual)」、第17版、1999を参照されたい(これらの全体の内容は、引用により本明細書中に組み込まれている)。
【0192】
別の実施態様において、第二の治療薬は、メトトレキセート、マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤、前炎症性サイトカインの阻害剤(例えば、抗-TNF分子、TNF可溶性受容体、及びIL1)、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、プロスタグランジンシンターゼ阻害剤(例えば、コリンマグネシウムサリチル酸及びサリチルサリチル酸)、COX-1及び/又はCOX-2阻害剤、及び糖質コルチコイド受容体アゴニスト(例えば、コルチコステロイド、メチルプレドニソン、プレドニソン、及びコルチゾン)を含むが、これらに限定されるものではない、抗炎症薬である。
【0193】
本明細書に提供される式Iの化合物の投与経路は、第二の治療の投与経路からは独立している。一実施態様において、本明細書に提供される式Iの化合物は、経口投与される。別の実施態様において、本明細書に提供される式Iの化合物は、静脈内投与される。結果的に、これらの実施態様に従い、本明細書に提供される式Iの化合物を、経口又は静脈内投与し、且つ第二の治療を、経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、経直腸、経口腔、鼻腔内、経リポソーム、吸入、肺内、経膣、眼内、カテーテル若しくはステントによる局所送達、皮下、脂肪内、関節内、髄腔内、又は緩徐放出型剤形により投与することができる。一実施態様において、本明細書に提供される式Iの化合物及び第二の治療は、経口又はIVにより同じ投与様式により投与する。別の実施態様において、本明細書に提供される式Iの化合物は、例えば経口などの1つの投与様式で投与し、第二の薬剤(抗癌剤)は、例えばIVなどの別の投与様式により投与する。
【0194】
本明細書に提供される化合物若しくは組成物、又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物は、前記薬剤の1種以上の投与と同時に、前に、又は後に投与することができる。
【0195】
本明細書に提供される化合物と併用することができる他の治療又は抗癌剤は、手術、放射線治療、内分泌療法、生体応答修飾物質(例えば、インターフェロン、インターロイキン、及び腫瘍壊死因子(TNF))、温熱療法及び寒冷療法、並びに有害作用を減弱する薬剤(例えば制吐薬)を含む。
【0196】
更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの有効量を、細胞と接触させることを含む、該細胞の増殖を阻害する方法を、本明細書に提供する。
【0197】
更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの有効量を、対象に投与することを含む、該対象において細胞の増殖を阻害する方法を、本明細書に提供する。
【0198】
特定の実施態様において、該細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施態様において、該哺乳動物はヒトの細胞である。特定の実施態様において、該細胞は腫瘍細胞である。特定の実施態様において、該細胞は哺乳動物の腫瘍細胞である。特定の実施態様において、該細胞はヒト腫瘍細胞である。特定の実施態様において、該細胞は癌細胞である。特定の実施態様において、該細胞は哺乳動物の癌細胞である。特定の実施態様において、該細胞はヒトの癌細胞である。
【0199】
特定の実施態様において、本明細書で提供される方法によって治療することができる癌細胞は、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌(例えば、結腸直腸癌)、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、神経膠腫(例えば、膠芽細胞腫)、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌(例えば、小細胞及び非小細胞肺癌)、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、肉腫(例えば、骨肉腫)、皮膚癌(例えば、扁平上皮癌)、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、及び子宮癌の細胞を含むが、これらに限定されない。
【0200】
特定の実施態様において、該細胞は、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌(例えば、結腸直腸癌)、子宮内膜癌、胃癌、神経膠腫(例えば、膠芽細胞腫)、頭頸部癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、又は前立腺癌の細胞である。
【0201】
細胞増殖の阻害は、例えば、関心対象の化合物に接触された細胞の数を計測すること、該細胞の増殖を該化合物と接触させないこと以外は同一の細胞と比較すること、又は該細胞を包含する腫瘍のサイズを測定することによって、評価することができる。細胞数、及び細胞のサイズは、当技術分野で公知の方法(例えば、トリパンブルー排除法、及び細胞計測、細胞の新生DNAへの3H-チミジンの取込みの測定)を使用して、容易に評価することができる。
【0202】
更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグを、JAKキナーゼと接触させることを含む、JAKキナーゼの活性を調節する方法を、本明細書に提供する。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグを、JAKキナーゼと接触させることを含む、JAKキナーゼの活性を阻害する方法を、本明細書に提供する。特定の実施態様において、JAKキナーゼは、構成的に活性化される。特定の実施態様において、JAKキナーゼは変異される。
【0203】
更に別の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの有効量を対象へ投与することを含む、該対象においてJAKキナーゼの活性を調節する方法を、本明細書に提供する。特定の実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの有効量を対象へ投与することを含む、該対象においてJAKキナーゼの活性を阻害する方法を、本明細書に提供する。特定の実施態様において、JAKキナーゼは、構成的に活性化される。特定の実施態様において、JAKキナーゼは変異される。
【0204】
一実施態様において、光学活性のある(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール若しくはその同位体変種;又は、それらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、若しくはプロドラッグの治療有効量を対象へ投与することを含む、該対象においてアデノシンA3-媒介性状態、障害、又は疾患の1以上の症状を予防、治療、又は改善する方法を、本明細書に提供する。
【0205】
特定の実施態様において、アデノシンA3-媒介性状態、障害、又は疾患は、真性赤血球増加症(PCV)、本態性血小板血症及び特発性骨髄線維症(IMF)等の骨髄増殖性疾患;慢性骨髄性白血病(CML)、CMLのイマチニブ-耐性型、急性骨髄性白血病(AML)、及びAMLの亜型を含む骨髄性白血病、急性巨核芽球性白血病(AMKL)等の白血病;骨髄腫等のリンパ球増殖性疾患;頭頸部癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、脳腫瘍、膵臓癌及び腎臓癌を含む癌;並びに、免疫機能障害、免疫不全、免疫修飾、自己免疫疾患、組織移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、創傷治癒、糖尿病性神経障害を含む腎疾患、多発性硬化症、甲状腺炎、1型糖尿病、サルコイドーシス、乾癬、アレルギー性鼻炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎(UC)を含む炎症性腸疾患、全身性紅斑狼瘡(SLE)、関節炎、変形性関節炎、関節リウマチ、骨粗鬆症、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)並びにドライアイ症候群(又は乾性角結膜炎(KCS))に関連した炎症疾患又は障害を含むが、これらに限定されるものではない。
【0206】
特定の実施態様において、真性赤血球増加症(PCV)、本態性血小板血症及び特発性骨髄線維症(IMF)及び過好酸球増加症候群(HES)等の骨髄増殖性疾患;慢性骨髄性白血病(CML)、CMLのイマチニブ-耐性型、急性骨髄性白血病(AML)を含む骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及びAMLの亜型、急性巨核芽球性白血病(AMKL)等の白血病;骨髄腫等のリンパ球増殖性疾患;頭頸部癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、脳腫瘍、膵臓癌、胃癌、甲状腺癌、腎臓癌、カポジ肉腫、キャッスルマン病、黒色腫を含む癌;並びに、組織移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、創傷治癒、腎疾患等の免疫機能障害、免疫不全又は免疫修飾に関連した炎症疾患又は障害;多発性硬化症、甲状腺炎、1型糖尿病、サルコイドーシス、乾癬、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重症筋無力症、クローン病及び潰瘍性大腸炎(UC)を含む炎症性腸疾患、全身性紅斑狼瘡(SLE)、関節炎、変形性関節炎、関節リウマチ、骨粗鬆症、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)、結膜炎、ブドウ膜炎、虹彩炎、強膜炎を含む目の炎症疾患、鼻炎及び静脈洞炎等の上気道を含む気道の炎症疾患、並びに、気管支炎を含む下気道の炎症疾患等の自己免疫疾患;心筋炎等の炎症性筋疾患、卒中又は心停止等の炎症性虚血事象に関連した虚血再灌流障害等の他の炎症疾患、並びに全身性炎症反応症候群(SIRS)及び敗血症等の他の炎症状態から選択された疾患又は障害を治療、予防、又は改善するために、開示された化合物及び組成物、又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物を使用する方法を、本明細書に提供する。
【0207】
特定の実施態様において、アデノシンA3-媒介性疾患及び障害は、再狭窄、線維症及び強皮症を含む。特定の実施態様において、アデノシンA3-媒介性疾患は、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、肝炎(B型肝炎又はC型肝炎)ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトTリンパ球指向性ウイルス1型(HTLV-1)、水痘-帯状疱疹ウイルス、及びヒトパピローマウイルス(HPV)等のウイルス性疾患を含む。
【0208】
特定の実施態様において、アデノシンA3-媒介性状態、障害、又は疾患は、虚血性心疾患を含むが、これらに限定されるものではない、心臓血管疾患である。特定の実施態様において、アデノシンA3-媒介性状態、障害、又は疾患は、肺外傷である。特定の実施態様において、アデノシンA3-媒介性状態、障害、又は疾患は、腎不全である。特定の実施態様において、アデノシンA3-媒介性状態、障害、又は疾患は、緑内障及び高眼圧症を含むが、これらに限定されるものではない、眼疾患である。特定の実施態様において、アデノシンA3-媒介性状態、障害、又は疾患は、緑内障又は高眼圧症である。
【0209】
本明細書に提供される式Iの化合物は、当業者に周知の包装材料を使用して、一製品としても提供することができる。例えば、米国特許第5,323,907号、第5,052,558号、及び第5,033,252号を参照されたい。医薬包装材料の例は、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、並びに選択した処方と投与及び治療の意図した方式に適切な任意の包装材料を含むが、これらに限定されない。
【0210】
また、本明細書において、開業医が使用する場合に、対象への有効成分の適量の投与を簡略化することができる、キットを提供する。特定の実施態様において、本明細書で提供されるキットは、容器と、本明細書で提供される式Iの化合物の剤形とを含む。
【0211】
特定の実施態様において、該キットは、1個以上の容器内に、本明細書で提供される式Iの化合物の剤形を含んだ容器を備える。
【0212】
本明細書で提供されるキットは、有効成分を投与するのに使用するデバイスを更に含み得る。このようなデバイスの例は、シリンジ、無針注射器、ドリップバッグ、パッチ、及び吸入器を含むが、これらに限定されない。また、本明細書で提供されるキットは、有効成分投与のためのコンドームも含み得る。
【0213】
本明細書で提供されるキットは、1以上の有効成分を投与するのに使用することができる、医薬として許容し得るビヒクルを更に含み得る。例えば、有効成分を、非経口投与のために再構成する必要がある固形で提供する場合、該キットは、その中に有効成分が溶解し、非経口投与に適切な粒子を含まない滅菌溶液を形成することができる、適切なビヒクルの密封容器を含む。医薬として許容し得るビヒクルの例は、次のものを含むが、これらに限定されない:米国薬局方注射水、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、及び乳酸加リンゲル注射液を含むが、これらに限定されない水性ビヒクル;エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールを含むが、これらに限定されない水混和性ビヒクル;並びにトウモロコシ油、綿実油、落花生油、胡麻油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルを含むが、これらに限定されない非水性ビヒクル。
【0214】
(生物活性の評価)
野生型及び変異型JAKキナーゼを含む、JAKキナーゼに対する式Iの化合物の生物活性を決定するために、標準の生理学的、薬理学的、及び生化学的手法が利用可能である。そのようなアッセイは、例えば、結合アッセイ(Fabianらの文献、Nature Biotechnology 2005, 23,329-336参照)などの生化学アッセイ、放射性物質取込みアッセイ、加えて様々な細胞ベースのアッセイを含む。
【0215】
細胞ベースのアッセイの例は、例えばELISAによる、STAT5リン酸化の測定;又は、例えば、BrdU取込みによるか、蛍光染色によるか又は転写因子STAT5により活性化されたレポーターアッセイによる、TF-1又はHEL-2等の白血病細胞株の増殖の測定を含む。これらのアッセイにおいて有用な細胞は、TF-1等の野生型JAK、又はV617F変異を保有する構成的に活性のあるJAK2を発現しているHEL-2細胞株などの変異型JAKを持つ細胞を含む。適切な細胞は、患者試料からの細胞培養を通して誘導された細胞に加え、例えば、レトロウイルス形質導入、トランスフェクション、変異誘発等の慣習的分子生物学技術を用いて誘導された細胞を含む。
【0216】
本開示は、次の非限定的な実施例によって更に理解される。
【実施例】
【0217】
(実施例)
本明細書において、これらのプロセス、スキーム及び実施例に使用される記号及び慣習は、特定の略語が具体的に定義されるかどうかに拘わらず、例えば、the Journal of the American Chemical Society又はthe Journal of Biological Chemistry等の現代の科学文献において使用されるものと一致する。また、文献J. Org. Chem. 2007, 72(1), 23A-24Aを参照されたい。具体的には、以下の略号を、非限定的に、実施例において及び本明細書を通じて使用することができる:g(グラム);mg(ミリグラム);mL(ミリリットル);μL(マイクロリットル);L(リットル);mM(ミリモル);μM(マイクロモル);Hz(ヘルツ);MHz(メガヘルツ);mmol(ミリモル);eq(当量);hr又はhrs(時間);min(分);psi(ポンド/平方インチ);MS(質量分析);NMR(核磁気共鳴);ESI(エレクトロスプレーイオン化);EI(電子イオン化);HPLC(高速液体クロマトグラフィー又は高圧液体クロマトグラフィー);ACN(アセトニトリル);CDCl3(重水素化クロロホルム);DCM(ジクロロメタン);DMF(N,N-ジメチルホルムアミド);DMSO(ジメチルスルホキシド);DMSO-d6(重水素化ジメチルスルホキシド);EtOAc(酢酸エチル);Et2O(ジエチルエーテル);EtOH(エタノール);MeOH(メタノール);iPrOH又はIPA(イソプロパノール);tBuOH(tert-ブタノール);PE(石油エーテル);THF(テトラヒドロフラン);DIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン);TEA(トリエチルアミン);HOAc(酢酸);TFA(トリフルオロ酢酸);Me(メチル);Et(エチル);iPr(イソプロピル);tBu(tert-ブチル);Boc(tert-ブトキシカルボニル);Bn(ベンジル);Ph(フェニル);DAIPEN(1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-3-メチル-1,2-ブタンジアミン);P-Phos(2,2',6,6'-テトラメトキシ-4,4'-ビス(ジ(3,5-キシリル)ホスフィノ)-3,3'-ビピリジン);及び、FBS(ウシ胎仔血清)。
【0218】
一般にプロトン核磁気共鳴(1HNMR)スペクトルは、Bruker Avance 300MHz NMR分光計上で記録した。化学シフトは、テトラメチルシランに対し低磁場側のppm(δ)として記録する。別に指定しない限りは、低分解能質量分析(MS)は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析として得、これは逆相条件(アセトニトリル/水、0.05%酢酸)を用い、Shimadzu HPLC/MS装置において記録した。キラルHPLC分析は、別に指定しない限りは、7:3のヘキサン/EtOHで溶出するPhenomenex Lux Cellurose-2カラムを用いて実行した。
【0219】
下記実施例において、鏡像体(1)は、(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールをいい、鏡像体(2)は、(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールをいう。
【0220】
下記の特定の実施例において、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの一方の鏡像体の調製に関して説明された合成手法は、キラル触媒を置き換えることにより他方の鏡像体の調製に関して変えることができる。例えば、[(S)-P-Phos RuCl2 (S)-DAIPEN]触媒を使用する(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの調製手法は、[(R)-P-Phos RuCl2 (R)-DAIPEN]触媒を使用する、(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの調製に同様に使用することができる。
【0221】
下記実施例全てに関して、当業者に公知の標準の後処理法及び精製法を利用することができる。別に指定しない限りは、温度は全て℃(摂氏度)で表している。全ての反応は、別に注記しない限りは、室温で実行する。本明細書の合成法は、具体的実施例の使用を通じ適用可能な化学を例示することを意図するものであり、本開示の範囲を示すものではない。
【0222】
(実施例1 (4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの鏡像体の分離)
ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの2つの鏡像体を、REGISCELL1(商標)カラム(25cm×4.6mm、5μ)(Regis Technologies社、モートングローブ, IL)を使用するキラルLCにより分離した。ラセミ体試料の濃度は、500ng/mLであった。分離は、ヘキサン/イソプロパノール(85:15)により定組成で(isocratically)、流量1.75mL/分及び外界温度で、9.5分間かけて、350/332Da親イオン質量/断片イオン質量転移をモニタリングすることにより、実行した。
【0223】
図1に示したように、S-鏡像体(最初の溶出ピーク)は、保持時間6.03分でピーク面積49.8%を有し、R-鏡像体(第二の溶出ピーク)は、保持時間7.16分でピーク面積50.2%を有した。
【0224】
(実施例2 (S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの調製)
【化4】
式Iの化合物は、スキームIに示したように調製した。
【0225】
工程A。(4-クロロキナゾリン-2-イル)(4-フルオロフェニル)メタノン12の調製。THF(6mL)中の4-クロロキナゾリン-2-カルボン酸エチル11(0.6g, 2.53mmol)の溶液へ、-40℃で、THF中の臭化4-フルオロフェニルマグネシウムの溶液(1M, 3mL, 3.0mmol, 1.2当量)を滴加した。この反応混合物を、-40℃で4時間攪拌した。この反応を、0.5N HCl(5mL)の添加によりクエンチし、且つこの混合物を、EtOAc(2×10mL)により抽出した。一緒にした有機層をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥し、且つ濃縮した。粗生成物を、EtOAc/ヘキサンで溶出する、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物12を明黄色固形物(440mg, 60%)として得た。
【化5】
【化6】
【0226】
工程B。(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノン1の調製。DMF(3mL)中の化合物12(84mg, 0.30mmol)の溶液へ、室温で、DIPEA(0.103mL, 0.6mmol)及び5-メチル-1H-ピラゾール-3-アミン(88mg, 0.9mmol)を添加した。この反応混合物を、40℃で一晩加熱した。水を添加し、黄色沈殿物を濾過により収集し、水で洗浄した。この固形物を、DCM/MeOHで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物1(30mg, 29%)を生じた。
【化7】
【0227】
工程C。(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール(I)の調製。化合物1(418mg, 1.2mmol)と(R)-P-Phos RuCl2 (R)-DAIPEN(5.4mg, 0.0048mmol)の室温での攪拌混合物に、窒素による40psiまでの加圧を5サイクル施し、その後減圧した。次にi-PrOH/H2Oの9:1(4mL)中のKOtBu/tBuOH(1M, 14.4μL, 0.0144mmol)を添加し、この混合物に窒素による40psiまでの加圧を5サイクル施し、その後減圧した。次にこの攪拌混合物に、水素による435psiまでの加圧を10サイクル施し、その後減圧した。次にこの混合物を、水素(435psi)下、50℃で18時間、900rpmで攪拌した。この混合物を室温まで冷やし、慎重に通気した。MeOH(8mL)を添加し、且つ試料(0.2mL)を、0.1%HOAc水溶液中のCH3CNの勾配で溶出し、キラルHPLC及びLCMS(Phenomenex Luna C18)により分析した。前記手法を、更に12回の試行で、同様の様式で実行した。必要とされる規格の試料(鏡像体過剰率>98%、>95%)を一緒にし、且つセライトを通して濾過し、MeOHで洗浄した。濾液を乾固するまで濃縮し、更に高真空下で一晩乾燥し、化合物Iを帯黄白色固形物(4.48g, 12.8mmol)として得た。
【化8】
キラルHPLCによる分析は、先に溶出する鏡像体の鏡像体過剰率96.7%を示した。
【0228】
式Iの化合物の光学活性を、米薬局方(USP 31)(2003)の方法781に従い、Perkin Elmer 241旋光計を用い、大規模でこの手法を用い調製した試料を用いて決定した。この試料は、比旋光度([α]D22)約+4.976(c=6.029mg/mL、メタノール)を有することがわかった。
【0229】
(実施例3 (S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール塩酸塩の調製)
1:1のCH3CN/H2O(100mL)中の(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール(4.33g)の懸濁液に、1N HCl(15.5mL, 15.5mmol)を添加した。この溶液を冷凍し、且つ凍結乾燥させ、(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール塩酸塩を固形物として4.9g得た。
【化9】
キラルHPLC分析は、このHCl塩は、鏡像体過剰率約100%を有することを示した。
【0230】
(実施例4 (S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールI合成の大規模化)
(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノン(16.66g, 48mmol)と[(R)-P-Phos RuCl2 (R)-DAIPEN](217mg, 0.192mmol)の室温での攪拌混合物に、窒素による40psiまでの加圧を5サイクル施し、その後減圧した。次にi-PrOH/H2Oの9:1(4mL)中の1M KOtBu/tBuOH(576μL, 0.0576mmol)を添加し、この混合物に窒素による40psiまでの加圧を5サイクル施し、その後減圧した。次にこの攪拌混合物に、水素による435psiまでの加圧を10サイクル施し、その後減圧した。次にこの混合物を、水素(435psi)下、40℃で18時間、900rpmで攪拌した。この混合物を室温まで冷やし、その後慎重に通気した。得られた沈殿物を濾過により収集し、冷MeOH(100mL)により洗浄し、(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを白色固形物(13.8g)として得た。キラルHPLCは、最初に溶出する鏡像体の鏡像体過剰率>99%を示した。
【0231】
前記手法を96mmolスケールで繰り返し試行し、(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの30.5gを白色固形物として得、これに関してキラルHPLCは、最初に溶出する鏡像体の鏡像体過剰率>99%を示した。
【0232】
(実施例5 (R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール R-(-)-カンファースルホン酸塩の調製)
(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを、ケトン還元時に[(R)-P-Phos RuCl2 (R)-DAIPEN]の代わりに[(S)-P-Phos RuCl2 (S)-DAIPEN]を使用する以外は、(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールについて説明された手法に従い合成した。(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの光学活性を、米薬局方(USP 31)(2003)の方法781に従い、Perkin Elmer 241旋光計を用い、決定した。この(R)-異性体は、比旋光度([α]D22)約-4.688(c=6.079mg/mL、メタノール)を有することがわかった。
【0233】
EtOH(10mL)中の(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール(100mg, 0.29mmol)へ、EtOH(10mL)中のR-(-)-カンファースルホン酸(67mg, 0.29mmol)の溶液を添加した。均一な溶液を、EtOAc(約50mL)により希釈し、粘稠な残渣にまで濃縮した。EtOAc(約5mL)中の残渣に、溶液が濁るまでジエチルエーテルを添加し、この混合物を室温で、時にはこすりとったり激しく攪拌したりしながら、静置した。24時間後、黄色固形物が形成された。この混合物を、氷上で冷却し、この固形物を濾過により収集し、冷ジエチルエーテルで洗浄し、(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールR-(-)-カンファースルホン酸塩を黄色固形物(133mg, 80%)として得た。
【化10】
【0234】
得られた塩を、単結晶X線により分析し、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの絶対配置をRであると決定した(図2)。
【0235】
(実施例6 R鏡像体のX線結晶構造解析)
(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンのキラル還元を、[(S)-P-Phos RuCl2 (S)-DAIPEN]の存在下で、実施例5に従い、実行した。この固形生成物(4.58g, 13mmol)を、1:1のCH3CN/H2O(100mL)中に溶解し、1N HCl(16mL, 16mmol)で処理した。この溶液を冷凍し、且つ凍結乾燥させ、塩酸塩固形物を得た。この塩酸塩のキラルHPLC分析(85:15ヘキサン/イソプロパノールで溶出したRegisCellカラム)は、より早く溶出した鏡像体のより遅く溶出する鏡像体に対する比2:98を示した。この塩酸塩の試料を、イソプロパノール、エタノール、及びHCl水溶液の混合液から晶出し、黄色結晶を得た。黄色結晶のX線結晶学分析は、プロトン化された(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの構造を示した。黄色結晶の分離された試料のキラルHPLC分析(85:15のヘキサン/i-プロパノールで溶出するRegisCellカラム)は、より早く溶出した鏡像体のより遅く溶出する鏡像体に対する比4:96を示した。この証拠の優越性は、より遅く溶出する異性体は、(R)絶対配置を有するという結論を裏付けた。
【0236】
(実施例7 JAKキナーゼ阻害剤の結合定数(Kd)を決定するための競合結合アッセイ)
本明細書において使用した競合結合アッセイは、Fabianらの文献(Nature Biotechnology 2005, 23,329-336)において説明されたように、開発され、検証され且つ実施された。キナーゼは、T7ファージへの融合物として作製されるか(Fabianらの文献又はWO04/015142参照)、或いは、キナーゼは、HEK-293細胞において発現し、引き続きPCR検出のためにDNAでタグ付けした(WO08/005310参照)。本結合アッセイに関して、ストレプトアビジン-コートされた磁気ビーズを、ビオチニル化した親和性リガンドで、室温で30分間処理し、親和性樹脂を作製した。リガンド化されたビーズを、過剰なビオチンでブロックし、且つブロッキング緩衝液(SeaBlock(Pierce社)、1%BSA、0.05%Tween20、1mM DTT)で洗浄し、未結合のリガンドを除去し、非特異的結合を減少させた。結合反応物は、1×結合緩衝液(20%SeaBlock、0.17×PBS、0.05%Tween20、6mM DTT)中に、キナーゼ、リガンド化された親和性ビーズ、及び被験化合物を一緒にすることにより集成した。被験化合物は、DMSO中に100×ストック液として調製し、これを水性環境に迅速に希釈した。DMSOを、被験化合物を含まない対照アッセイに添加した。相互作用の一次スクリーニングを、ポリプロピレン製の384-ウェルプレートにおいて最終容積34μLで行い、他方でKd決定を、ポリスチレン製96-ウェルプレートにおいて最終容積135μLで行った。これらのアッセイプレートを、振盪しながら室温で、結合反応が平衡に達するのに十分な長さである1時間インキュベーションし、且つ親和性ビーズを、過剰な洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20)で洗浄し、未結合のタンパク質を除去した。次にこれらのビーズを、溶出緩衝液(1×PBS、0.05%Tween 20、2μMビオチニル化されない親和性リガンド)中に再浮遊させ、振盪しながら室温で30分間インキュベーションした。この溶出液中のキナーゼ濃度を、定量的PCRにより測定した。各キナーゼは、各化合物に対し個別に試験した。Kdは、11の連続閾値希釈を用いて決定した。酵素のパネルに対する化合物の選択性の定量的測定である選択性スコアを、試験した酵素の総数により、化合物が設定された判定基準(例えば、結合定数100nM以下)に合致する酵素の数を除算することにより、化合物について計算することができる。キナーゼ選択性スコアS10を、例えば、典型的には359又は386キナーゼである変異体変種を除いた試験した個別のキナーゼの数により、ある濃度(例えば10μM)の化合物が阻害剤を含まない陰性対照(DMSOのみ)と比較して90%以上の阻害を示すキナーゼの数を除算することにより、各化合物について計算する。
【0237】
ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール並びにその(R)-及び(S)-鏡像体に関するKd値を、表1にまとめている。
【表1】
【0238】
(実施例8 csTF-1細胞-ベースのレポーターアッセイ)
csTF-1細胞を、GM-CSFに依存して増殖させ且つインタクトのGM-CSFR/JAK2/STAT5経路を有したヒト赤白血病細胞株から誘導した。この細胞株は、活性化された転写因子STAT5により認識された調節因子1(irf 1)反応エレメントの制御下で、安定して組み込まれたβ-ラクタマーゼレポーター遺伝子を含んだ。csTF-1細胞(Invitrogen K1219)を、アッセイ培地(97%OPTIMEM/0.5%透析したFBS/0.1mM非必須アミノ酸/1mMピルビン酸ナトリウム/ペニシリン/ストレプトマイシン)で洗浄し、且つT150フラスコ内の同じ培地中に5×105個細胞/mLで播種した。16時間インキュベーションした後、細胞を、Costar社製透明底の96-ウェルアッセイプレートへ、容積50μL中に2×105個細胞/ウェルで播種した。連続希釈した化合物を、最終DMSO濃度0.5%及びGM-CSFの2ng/mLでプレートへ添加し、次にこれらのプレートを、30℃及び5%CO2で4時間インキュベーションした。これらのプレートを室温に戻し、その後製造業者のプロトコール(Invitrogen社、カタログ番号K1085)に従い、基質混合物を添加した。これらの基質混合物を含むアッセイプレートを、暗所、室温で2時間インキュベーションした。青色及び緑色の蛍光を、Spectra Max Gemini EMを使用し、励起光409nm及び発光460nm(青色に関して)並びに励起光409nm及び発光530nm(緑色に関して)で測定した。この細胞株において、本ラセミ体は、GM-CSFで刺激されたレポーター活性を、EC50値70nMで阻害した。個々の鏡像体は、GM-CSF刺激したレポーター活性を、(S)(+)及び(R)(-)に関して各々、EC50値38nM及び75nMで阻害した。
【0239】
(実施例9 TEL-JAK細胞アッセイ)
各JAKファミリーメンバーに対する化合物の細胞活性を比較するために、構成的に活性化された状態で4種のJAKタンパク質の各々を外因性に発現するBa/F3細胞株を作製した。これは、タンパク質TELの二量体ドメインの、個々のJAKタンパク質のキナーゼドメインとの融合により実現した。発現された場合、これらの融合タンパク質は二量体化し、それらの会合したキナーゼドメインの交差活性化(cross-activation)を引き起こし、このことは特定のキナーゼに応じて他のSTATタンパク質の中でもSTAT5のリン酸化につながる。各細胞株を、組み換え融合タンパク質遺伝子のレトロウイルス形質導入、及び引き続きの得られた各細胞株の単細胞クローニングにより作製した。
【0240】
化合物による細胞の抗-JAK活性を決定するために、構成的STAT5リン酸化の阻害を、各細胞株において決定した。細胞は、0.5μg/mLピューロマイシン(Clontech社)を含むRPMI 1640(Thermo Scientific社)+10%FBSにおいて維持し、該融合タンパク質遺伝子の発現を維持した。本アッセイに関して、細胞を洗浄し、培地+0.5%FBS(ピューロマイシン非含有)中に再浮遊させ、且つU字型底の96-ウェルプレート(BD Biosciences社)内に、1×105個細胞/ウェルで蒔いた。連続希釈した化合物を、これらの細胞に添加し、37℃で2時間インキュベーションした。その後細胞を、冷PBSで洗浄し、プロテアーゼ及びホスファターゼの阻害剤カクテル(Roche Applied Science社)を含有する氷冷した溶解緩衝液(Cell Signaling Technology社)の50μL/ウェルで15分間溶解した。溶解液中のリン酸化されたSTAT5レベルの評価は、ホスホ-STAT5a,bキット(Meso Scale Discovery(MSD)社)を製造業者の指示に従い使用し、決定した。簡単に述べると、プレートを、MSD洗浄緩衝液(TBS+0.02%Tween 20)中の3%ブロッカーAで1時間ブロックし、且つBioTek社ELx405プレート洗浄機上で洗浄した。細胞溶解液を25μL/ウェルで添加し、且つ室温で2時間インキュベーションした。プレートを洗浄し、且つSULFO-TAG抗-総STAT5a,b抗体を含有する検出溶液を、25μL/ウェルで添加した。1時間インキュベーションした後、プレートを洗浄し、MSDリード緩衝液の150μL/ウェルを添加し、その後Sector Imager 6000装置(MSD社)上でプレートを読み取った。
【0241】
(実施例10 アデノシンA3受容体放射性リガンドの結合アッセイ)
アデノシンA3受容体は、A3AR又はADORA3としても公知であるが、これはGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを、Jacobsonらの文献(Neuropharmacology 1997, 36, 1157-1165)に説明された手法に従い、アデノシンA3受容体GTPγS結合アッセイにおいてアンタゴニストフォーマットで、ヒトアデノシンA3受容体を発現しているヒトCHO-K1細胞株において、試験した。アッセイ中の最終のDMSO濃度は、約0.4%であった。本化合物1μM、0.1μM、及び10nMでのインキュベーションを、インキュベーション緩衝液(20mM HEPES、pH7.4、100mM NaCl、10mM MgCl2、1mM DTT、及び1mM EDTA)中で、30℃3fで30分間、2つ組みで実行した。アッセイを、2-Cl-IB-MECA反応に対して結合した[35S]GTPγSの量を測定することにより、定量した。アデノシンA3に対するラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールのIC50は、62.9nMであると決定した。
【0242】
(実施例11 アデノシンA3受容体の放射性リガンド結合アッセイ)
(R)-及び(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを、ヒトアデノシンA3受容体を発現しているヒト組み換えCHO-K1細胞において、Olahらの文献(Mol. Pharmacol. 1994, 45, 978-982)及びSalvatoreらの文献(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1993, 90, 10365-10369)に説明された手法に従い、放射性リガンド結合アッセイにおいて試験した。濃度範囲のある各化合物のインキュベーションを、25mM HEPES、pH7.4、5mM MgCl2、1mM CaCl2、0.1%BSA中で、0.5nM[125I]AB-MECAの存在下で、25℃で1時間、2つ組みで実行した。非-特異的結合を、1μM IB-MECAの存在下で決定した。Ki値を、Cheng及びPrussofの式(Chengらの文献、Biochem. Pharmacol. 1973, 22, 3099-3108)を用い、化合物の観察されたIC50、アッセイに使用した放射性リガンドの濃度、及び該放射性リガンドの既存の(historical)Kdを使って計算した。結果を、表2にまとめている。
【表2】
【0243】
(実施例12 アデノシンA3受容体アンタゴニストの細胞ベースのアッセイ)
アデノシンA3受容体に対する化合物のアンタゴニスト活性を決定するために、DiscoveRxにより2つのアッセイを利用した。PathHunter β-アレスチンアッセイは、機能性レポーターとしてβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)を補充した酵素断片を利用し、組み換えによりタグ付けしたGPCRの活性化をモニタリングする。β-アレスチンアッセイに関して、ヒトADORA3-発現しているPathHunter細胞株を、標準手法に従い増殖させ、且つアッセイ前に選択的増殖培地において維持した。細胞を、384-ウェルマイクロプレートに、総容積20μLで、1ウェル当たり細胞5000個の密度で播種し、一晩接着させ且つ回収し、その後化合物を添加した。2-Cl-IB-MECAアゴニスト用量曲線は、その後のアンタゴニスト化合物試験に使用するEC80値を決定するプロファイリングのモニタリングを実行した。アンタゴニスト決定に関して、細胞を、(R)-又は(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールアンタゴニスト又はラセミ体アンタゴニストのいずれかと一緒にプレインキュベーションし(細胞へ添加した5×化合物5μL、37℃で30分間)、引き続き2-Cl-IB-MECAアゴニストチャレンジをEC80濃度で行った(6×EC80アゴニストの5μLを37℃で90分間インキュベーションした)。アッセイシグナルを、室温で1時間のPathHunter Detection試薬カクテル15μLの添加により発生させた。マイクロプレートを、化学発光シグナル検出のためのPerkin Elmer Envision装置で読み取った。阻害百分率を、下記式を用いて計算した:%阻害率=100%×(1-(被験試料の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU)/(EC80対照の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU))。(R)-及び(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールは、各々、IC50 212.5nM及び28.5nMを有すると算出された。これらのラセミ混合物は、IC50 26.2nMを有すると算出された。
【0244】
(実施例13 ホスホジエステラーゼPDE4の阻害)
ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを、Cortijoらの文献(Br. J. Pharmacol. 1993, 108, 562-568)及びNicholsonらの文献(Trends Pharmacol. Sci. 1991, 12, 19-27)に説明された手法に従い、ホスホジエステラーゼPDE4阻害アッセイにおいて試験した。このアッセイにおいて、ヒトU937細胞を使用した。アッセイにおける最終DMSO濃度は、約1%であった。アッセイは、インキュベーション緩衝液(50mMトリス-HCl、pH7.5、5mM MgCl2)中で、25℃で15分間プレインキュベーションし、その後25℃で20分間インキュベーションした。[3H]アデノシン量を測定することにより、アッセイを定量した。ホスホジエステラーゼPDE4に対するラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールのIC50は、2.53μMであると決定した。
【0245】
(実施例14 ホスホジエステラーゼPDE5の阻害)
ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを、Hidaka及びAsanoの文献(Biochem. Biophys. Acta 1976, 429, 485-497)及びNicholsonらの文献(Trends Pharmacol. Sci. 1991, 12, 19-27)に説明された手法に従い、ホスホジエステラーゼPDE5阻害アッセイにおいて試験した。このアッセイにおいて、ヒト血小板を使用した。アッセイにおける最終DMSO濃度は、約1%であった。アッセイは、インキュベーション緩衝液(50mMトリス-HCl、pH7.5、5mM MgCl2)中で、25℃で15分間プレインキュベーションし、その後25℃で20分間インキュベーションした。[3H]グアノシンの量を測定することにより、アッセイを定量した。ホスホジエステラーゼPDE5に対するラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールのIC50は、9.34μMであると決定した。
【0246】
(実施例15 メラトニンMTに関する放射性リガンド結合アッセイ)
ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを、Beresfordらの文献(Biochem. Pharmacol. 1998, 56, 1167-1174)に説明された手法に従い、メラトニンMT、GTPγS結合アッセイにおいて試験した。このアッセイにおいて、ヒトCHO-K1細胞、チャイニーズハムスター卵巣を使用した。アッセイにおける最終DMSO濃度は、約0.4%であった。アッセイ混合物を、インキュベーション緩衝液(20mM HEPES、pH7.4、100mM NaCl、10mM MgCl2、1mM DTT、及び1mM EDTA)中で、30℃で30分間インキュベーションした。2-ヨードメラトニン反応に関連して結合した[35S]GTPγS量を測定することにより、アッセイを定量した。メラトニンに対するラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールのIC50は、9.75μMであると決定した。
【0247】
(実施例16 (S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール塩酸塩のサルへの投与)
雄のカニクイザルに、(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを、経口投与した。薬物動態パラメータを決定するために、24時間の時間経過にわたり、血漿を採取した。
【0248】
3匹の雄のカニクイザルは、一晩及び投薬後4時間を通じて絶食させた。経口製剤の100μLアリコートを2回、予備投薬した。3匹のサルには、Pharmatek#6中に製剤化された被験化合物10mg/kgの単回強制投与量を与え、引き続き強制チューブで水道水流れおよそ10.0mLを与えた。血液試料(およそ1.0mL)を、指定された時点(15分、30分、1、2、4、6、及び24時間)で、K3EDTAの入ったチューブに収集した。収集した試料を、少し溶けた氷/氷塊上に配置し、15分以内に血漿を処理した。各試料に関して、血漿を分離し、分析のためにドライアイスに入れて出荷されるまで、およそ-20℃3fで凍結保存した。
【0249】
血漿試料、校正標準、及び品質管理標準(75μL)を、内部標準(25ng/mL N-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(ジフルオロ(4-フルオロフェニル)メチル)キナゾリン-4-アミン)を含有するアセトニトリルの5容量で抽出し、Regis RegisCell 5μmカラム(4.6×250mm)上でLC-MS/MS(Sciex 4000 Qtrap)を用いて分析し、ヘキサン/イソプロピルアルコール(85:15)により定組成で、流量1.75mL/分で9.5分間かけて溶出し、且つ350/332Da親イオン質量/断片イオン質量転移をモニタリングした。各鏡像体のピーク面積を、個別に積分し、R-及びS-鏡像体レベルを定量した。
【0250】
次に薬物動態パラメータを、正規化したLC-MS/MSピーク面積から、WinNonlinソフトウェア(v5.2, Pharsight社, マウンテンビュー, CA)を使用し、非コンパートメントモデル及び線形台形概算法を用い、計算した。
【0251】
S-異性体の経口投与後、両方の鏡像体が、血漿中にほぼ等しい割合で存在し、且つR/S比は、約0.8であった。注目すべきことに、R-異性体は、S-異性体製剤中の不純物(約2%)として存在したが、この不純物レベルでは、恐らくこの知見を説明しないであろう。
【0252】
ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール塩酸塩の薬物動態の特性を、ラセミ化合物の投与後に決定した。またラセミ化合物の2つの鏡像体の薬物動態の特性も決定した。結果を表3にまとめている。本ラセミ化合物の経口投与に関して、ラセミ化合物は、Cmax 2.1μM、AUC0-∞ 8.52μM・時、及び半減期(t1/2)1.2時間を有した。本ラセミ化合物中のS-異性体は、Cmax 0.49μM、AUC0-∞ 1.84μM・時、及びt1/2 1.4時間を有し、且つR-異性体は、Cmax 1.66μM、AUC0-∞ 6.50μM・時、及びt1/2 1.2時間を有した。本ラセミ化合物のIV投与に関して、ラセミ化合物は、クリアランス(Cl)37.27mL/分/kg、分布容積(Vd)2.88L/kg、AUC0-∞ 1.29μM・時、及び半減期0.9時間を有した。ラセミ化合物中のS-異性体は、AUC0-∞ 0.38μM・時及び半減期0.5時間を有するのに対し、R-異性体は、AUC0-∞ 0.88μM・時及び半減期1.0時間を有した。
【0253】
(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール塩酸塩の薬物動態特性を、S-異性体の投与後に決定した。結果を表4にまとめている。本S-異性体の経口投与に関して、S-異性体は、Cmax 1.03μM、AUC0-∞ 2.20μM・時、及びt1/2 1.1時間を有した。本S-異性体のIV投与に関して、S-異性体は、クリアランス40.55mL/分/kg、分布容積(Vd)2.10L/kg、AUC0-∞ 1.18μM・時、及びt1/2 0.6時間を有した。
【表3】
【表4】
【0254】
(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール塩酸塩の薬物動態特性を、R-異性体の投与後に決定した。結果を表4にまとめている。本R-異性体の経口投与に関して、R-異性体は、Cmax 3.01μM、AUC0-∞ 10.90μM・時、及びt1/2 1.3時間を有した。本R-異性体のIV投与に関して、R-異性体は、クリアランス21.17mL/分/kg、分布容積(Vd)2.86L/kg、AUC0-∞ 2.29μM・時、及びt1/2 1.6時間を有した。
【0255】
血漿試料、校正標準、及び品質管理標準(75μL)を、内部標準(25ng/mL N-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(ジフルオロ(4-フルオロフェニル)メチル)キナゾリン-4-アミン)を含有するアセトニトリルの5容量で抽出し、Regis RegisCell 5μmカラム(4.6×250mm)上でLC-MS/MS(Sciex 4000 Qtrap)を用いて分析し、ヘキサン/イソプロピルアルコール(85:15)により定組成で、流量1.75mL/分で9.5分間かけて溶出し、且つ350/332Da親イオン質量/断片イオン質量転移をモニタリングした。各鏡像体のピーク面積を、個別に積分し、R-及びS-鏡像体レベルを定量し、他方で両方のピークを、単独の積分として一緒に積分し、ラセミ化合物のレベルを定量した。
【0256】
次に薬物動態パラメータを、正規化したLC-MS/MSピーク面積から、WinNonlinソフトウェア(v5.2, Pharsight社, マウンテンビュー, CA)を使用し、非コンパートメントモデル及び線形台形概算法を用い、計算した。
【0257】
ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール塩酸塩及びその鏡像体の薬物動態特性を決定した。結果を表5にまとめている。
【0258】
本ラセミ化合物のIV投与に関して、ラセミ化合物は、クリアランス(Cl)21.27mL/分/kg、分布容積(Vd)5.41L/kg、及び半減期(t1/2)2.9時間を有した。本ラセミ化合物の経口投与に関して、ラセミ化合物は、Cmax 5.76μM、AUC0-∞ 46.92μM・時を有した。このラセミ化合物の生物学的利用能は、>100%と算出され、これは非線形の薬物動態を示している。
【表5】
【0259】
本S-異性体のIV投与に関して、S-異性体は、クリアランス(Cl)46.49mL/分/kg、分布容積(Vd)8.77L/kg、及び半減期(t1/2)2.3時間を有した。本S-異性体の経口投与に関して、S-異性体は、Cmax 1.89μM、AUC0-∞ 9.93μM・時を有した。このS-異性体の生物学的利用能は、89%と計算された。
【0260】
本R-異性体のIV投与に関して、R-異性体は、クリアランス(Cl)15.17mL/分/kg、分布容積(Vd)7.09L/kg、及び半減期(t1/2)4.3時間を有した。本R-異性体の経口投与に関して、R-異性体は、Cmax 8.11μM、及びAUC0-∞ 83.07μM・時を有した。このR-異性体の生物学的利用能は、>100%と計算された。
【0261】
(実施例17 (4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール塩酸塩並びにそのR-及びS-鏡像体のサルにおける薬物動態試験)
雄のカニクイザルに、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール、又はそのR-若しくはS-鏡像体を、単剤クロスオーバーデザインにおいて、経口又は静脈内に投与した。薬物動態パラメータを決定するために、24時間の時間経過にわたり、血漿を採取した。
【0262】
3匹の雄のカニクイザルは、一晩及び投薬後4時間を通じて絶食させた。各投薬製剤の100μLアリコートを2回、予備投薬した。3匹のサルには、被験化合物10mg/kgの単回強制投与量を与え、引き続き強制チューブで水道水流れおよそ10.0mLを与えた。1週間のウォッシュアウト期間の後、3匹のサルのうち2匹は、末梢静脈中に、被験化合物1mg/kgの単回IVボーラス量を受け取り、引き続き食塩水流れ約1.0mLを受け取った。血液試料(およそ1.0mL)を、指定された時点(5分(IVのみ)、15分、30分、1、2、4、6、及び24時間)で、K3EDTAの入ったチューブに収集した。収集した試料を、少し溶けた氷/氷塊上に配置し、15分以内に血漿を処理した。各試料に関して、血漿を分離し、分析のためにドライアイスに入れて出荷されるまで、およそ-20℃で凍結保存した。
【表6】
【0263】
キラル分析を使用し、ラセミ化合物、R-異性体、又はS-異性体の投薬後の、血漿中の各個々の鏡像体のレベルを決定した。結果を表6にまとめている。ラセミ化合物の投与後、R-異性体が、経口又は静脈内の両経路について支配的な種であった。本R-異性体は、ラセミ化合物について決定されたCmax及びAUC値の85%以上を説明した。
【0264】
本R-異性体の経口又は静脈内投与後に、極わずかなS-異性体が血漿中に存在し、R-異性体のAUCに対しわずかに約6%であり、その一部は、R-異性体製剤中の不純物としての、S-異性体(約3%)の存在を説明している。
【0265】
本S-異性体の経口投与後、両方の鏡像体が、ほぼ等しい割合で血漿中に存在し、類似したAUC値及びCmax値を有した。注目すべきことに、R-異性体は、S-異性体製剤中に不純物(約2%)として存在したが、この不純物のレベルでは、恐らくこの知見を説明することはないであろう。
【0266】
(実施例18 CYP450阻害)
(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールのR及びS鏡像体のシトクロムP450(CYP)の共通薬物代謝アイソフォームを阻害する能力を、以下のアイソフォームに対して評価した:CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、及びCYP3A4。これらの化合物は、CYPアイソフォーム特異的プローブ基質(フェナセチン、ブプロピオン、タキソール、ジクロフェナク、メフェニトイン、デキストロメトルファン、テストステロン)の存在下、ヒト肝臓ミクロソーム(0.25又は0.50mg/mL)及びNADPH(1mM)と共に、Kmで、37℃で10〜20分間、8つの被験化合物濃度(最終DMSO濃度0.20%)を2つ組みでインキュベーションした。選択的CYPアイソフォーム阻害剤(フラフリン、チクロピジン、ケルセチン、スルファフェナゾール、チクロピジン、キニジン、ケトコナゾール)を、陽性対照として、被験化合物と平行してスクリーニングした。IC50値のまとめを、表7に示している。
【表7】
【0267】
(実施例19 マウスTELJAKマウスモデルにおけるインビボ有効性試験)
この有効性試験は、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールのR及びS鏡像体の腫瘍の進行及び生存に対する作用を決定するために行った。このJak2依存型マウス腫瘍学モデルにおいて、SCIDマウスに、BaF3/TEL-JAK細胞を接種し、白血球カウント及び塊状脾腫により測定される高い末梢腫瘍量を発症させ、エンドポイント(致死)までの時間の中央値は11日であった。
【0268】
CB17 SCIDマウス(Harlan Laboratories社)に、0日目に、5×105個のBaF3/TEL-JAK細胞を尾静脈を介して接種した。細胞を、この動物において確立させ、且つ3日目に、以下のように投薬を開始した:第一群へは、ビヒクル(Pharmatek#6)50μLを、BIDで投与し、第二群、第三群及び第四群には、Pharmatek #6中に調製したラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを、各々、120mg/kg/日、40mg/kg/日及び10mg/kg/日、全てBIDで投与し、第五群、第六群及び第七群には、Pharmatek #6中に調製した(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを、各々、120mg/kg/日、40mg/kg/日及び10mg/kg/日、全てBIDで投与し、並びに第八群、第九群及び第十群には、Pharmatek #6中に調製した(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを、各々、120mg/kg/日、40mg/kg/日及び10mg/kg/日、全てBIDで投与した。各処置群(1群に動物16匹)は、2週間の期間、1日2回投薬を受け取った。13匹の動物の未処置群を、対照とした。図4は、ラセミ体と比較した(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールのカプランマイヤー生存率解析の結果を示している。図5は、ラセミ体と比較した(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールのカプランマイヤー生存率解析の結果を示している。ビヒクル処置した動物に対する各化合物の生存期間の延長率(%ILS)を、表8に示している。
【表8】
【0269】
(実施例20 ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの第I相臨床試験)
ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールHBr塩の第I相臨床試験を、志願者において、二重盲検プラセボ比較3パート試験で行い、ここで、パート1においては、対象は、ラセミ体60〜750mg/日の範囲を単回経口投与量で受け取り、パート2においては、対象は、ラセミ体240〜720mg/日の範囲をQD投与量で14日間連続して受け取り、並びにパート2試験の1つのコホートにおいては、ラセミ体360mgのBID投与量を14日間連続して受け取り(総量720mg/日)、並びにパート3においては、単回投与後のランダム化オープンラベル2-配列2-期間クロスオーバーで食品の作用を試験した。そのR及びS鏡像体のキラル分析を含む、ラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールに関して、本試験の全てのパートについて、PKパラメータは血漿中で評価し、且つパート1及び2においては尿中で評価した。以下のPKパラメータを、血漿濃度データからコンピュータで算出した:0時から最後の定量可能な濃度までの血漿濃度-時間曲線下面積(AUC0-τ)、0時から無限までの血漿濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞38)、観測された最大血漿濃度(Cmax)、Cmax到達時間(tmax)、終末相消失速度定数(λz)、終末相半減期(t1/2)、血管外投与後の見かけのクリアランス(CL/F)、及び血管外投与後の終末相の見かけの分布容積(Vz/F)。尿について収集したデータに関して、以下のパラメータを計算した:0時から48時間までに尿中に排泄された薬物の総量(Ae0-48)、及び尿中排泄された薬物の割合(Fe)。また、ヒト対象に対するラセミ体(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールの単回及び反復経口投与量の、安全性、忍容性及び薬力学的作用を評価する試験をデザインした。薬力学的作用は、JAK2及びJAK1を介したサイトカインシグナル伝達によるエクスビボ刺激後の、STATリン酸化レベルの測定を基にした。また本試験のパート2についてのみ、フローサイトメトリーを行い、細胞型特異的細胞表面マーカーにより同定される細胞サブセットの有病率(prevalence)を決定した。
【0270】
(実施例21 触媒スクリーニング及び最適化)
高いエナンチオ選択性(例えば>95%ee)を伴う必要とされる転位(transformation)における完全な変換を得るための様々な条件下で、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンのいくつかの不斉水素移動反応及び水素化反応を行った。これらの生成物の変換及びキラル純度を、EtOH/ヘキサン(30/70)で溶出する、順相Phenomenex Lux 5μ Cellulose-2カラムを用いて決定した。また変換データは、逆相C-18により及びLCMSにより裏付けた。下記実施例において、"基質"及び"ケトン"は、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンをいい、並びに"アルコール"は、(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールをいう。この基質は、本明細書の別所記載の方法及び米国特許公開第US 2010/0317659号(その全体は引用により本明細書中に組み込まれている)において説明された方法を含む、当業者に公知の方法により調製することができる。
【0271】
下記分析方法を、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)-メタノンの水素化に関する変換率(%)の決定に使用した。(HPLC):カラム:Phenomenex Luna C-18 (2) 100A、150×4.6mm、5μ;温度:30℃;移動相A:MeCN、及び移動相B:H2O+0.1%AcOH;流量:1mL/分;UV検出:254nm;注入容量:5μL;試料溶媒:MeOH。使用した溶媒プログラムは、表9にまとめている。アルコール及びケトンに関する保持時間tアルコール及びtケトンは、各々、8.6分及び11.8分であった。
【0272】
下記分析方法を、水素化された生成物のキラル純度の決定に使用した。(HPLC):カラム:Phenomenex Lux 5μ Cellulose-2−250mm×4.6mm;温度:40℃;溶媒系:70%ヘキサン、30%EtOH;流量:1mL/分;UV検出:254nm;注入容量:5μL;試料溶媒:EtOH;及び、試行時間:20分間。アミノアルコール(t1及びt2)並びにケトンに関する保持時間は、各々、5.4分、14.4分、及び6.6分であった。
【表9】
【0273】
(A. ルテニウム触媒的水素移動反応のスクリーニング)
触媒[(S,S)-MsDPEN RuCl(p-シメン)](Noyoriらの文献、Org. Biomol. Chem., 2006, 4, 393;Willsらの文献、Tetra. Asymm., 1999, 10, 2045)及び[(R,R)-Teth-TsDPEN RuCl](Willsらの文献、J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 7318)による水素移動反応のスクリーニングを、以下のように、HCOOH/Et3N(10当量)を含むDMF及びDCE中で、基質対触媒(S/C)のモル比50/1で行った:Radley回転反応器において、基質87mg(0.25mmol)、触媒2mol%(0.05mmol)、及び10当量のHCOOH/Et3Nを、溶媒3mL中で、50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表10に提示している。
【表10】
【0274】
(B. 溶媒スクリーニング)
[(S,S)-MsDPEN RuCl(p-シメン)]による更なるスクリーニングを、様々な溶媒中で、2つの異なるH-給源(10当量)により、S/C 50/1のローディング、50℃で行った。各反応は、以下のように実行した:Radley回転反応器において、基質87mg(0.25mmol)、触媒2mol%(0.05mmol)、及び10当量のHCOOH/Et3Nを、溶媒3mL中で、50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表11に提示している。
【表11】
【0275】
(C. インサイチュ触媒によるスクリーニング)
更なる水素移動反応のスクリーニングを、50℃で、1:1のHCOOH/Et3N(10当量)を含む、THF中において、S/C 50/1でインサイチュで形成された触媒により、以下のように実行した:Radley回転反応器において、溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、触媒2mol%(0.05mmol)、及び10当量のHCOOH/Et3Nを、50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表12に提示している。
【表12】
【0276】
(D. テザー型水素移動反応触媒)
追加の水素移動反応は、テザー型水素移動反応触媒により、THF中、S/C 50/1のローディングで、以下のように実行した:Radley回転反応器において、溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、触媒2mol%(0.05mmol)、及び10当量のHCOOH/Et3Nを、50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表13に提示している。
【表13】
【0277】
(E. ルテニウム触媒のスクリーニング)
選択されたルテニウム触媒のスクリーニングを、BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内のMeOH中で、触媒ローディング50/1で、以下の反応条件を使用し実行した:溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、及び触媒2mol%(0.005mmol)を、65℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表14に提示している。
【表14】
【0278】
(F. ロジウム触媒のスクリーニング)
ロジウム触媒のスクリーニングを、BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内のMeOH中及びH2の30barで、触媒ローディング50/1で、以下の反応条件を使用し実行した:溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、及び触媒2mol%(0.005mmol)を、65℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表15に提示している。
【表15】
【0279】
(G. BoPhozリガンドによる触媒スクリーニング)
触媒スクリーニングを、BoPhozリガンド及び[Rh(COD)2]BF4により、BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内のMeOH又はTHF中で、触媒ローディングS/Cの100/1、H2 30barで、以下の反応条件を使用し実行した:溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、及び触媒1mol%(0.0025mmol)を、65℃で18時間加熱した。これらの場合全てにおいて、基質は、溶解度の問題(すなわち、ストック溶液は、後で添加するように調製することができない)のために、触媒形成時に存在した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表16に提示している。
【表16】
【0280】
(H. THF中のロジウム触媒)
THF中の特定のロジウム触媒を、触媒ローディングS/C 50/1、H2の30barで、BIOTAGE ENDEAVOR(商標)反応器内で、以下の反応条件で使用した:溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、及び触媒2mol%(0.005mmol)を、65℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表17に提示している。
【表17】
【0281】
(I. ルテニウム野依型触媒)
スクリーニングを、IPA中の野依型ビス-ホスフィンルテニウムジアミン触媒(Noyoriらの文献、Angew. Chem. Int. Ed., 1998, 37, 1703;Noyoriらの文献、Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1)、tBuOH中の1M KOtBu(20%)により、触媒ローディング50/1、H2 30barで、BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内で、以下の反応条件を使用し実行した:溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、触媒2mol%(0.005mmol)、及びtBuOH中の1M KOtBu(20%)を、65℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表18に提示している。
【表18】
【0282】
(J. 溶媒スクリーニング)
様々な溶媒中の[(S)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]、及びtBuOH中の1M KOtBu(20%)、S/C 100/1及びH2 30barでのスクリーニングを、以下のように実行した:BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内で、溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、触媒1mol%(0.0025mmol)、及びtBuOH中の1M KOtBu(20%)を、65℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表19に提示している。
【表19】
【0283】
(K. 生成物の安定性)
反応媒体内での経時的なキラル中心のエピマー化に関する生成物の安定性又は選択性の喪失を、表18からの2つの反応(エントリー番号3及び4)を使用し、決定した。自然蒸発から得た残渣を、IPA中に再溶解し、70℃で24時間以上加熱した。結果を表20に提示している。
【表20】
【0284】
(L. [(S)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]を使用する最適化)
先に[(S)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]により得られた結果に従い、温度、圧力及び塩基濃度のスクリーニングを、IPA中、触媒ローディングS/C 100/1、tBuOH中の1M KOtBuの5〜100%、50〜65℃及びH2 10〜30barで、以下のように実行した:BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内で、溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、触媒1mol%(0.0025mmol)、及びtBuOH中の1M KOtBu(5〜100%)を、65℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表21に提示している。
【表21】
【0285】
(M. 温度スクリーニング)
一連の反応を、温度に関する反応の限界を決定するために、IPA中、S/C 100/1、tBuOH中の1M KOtBuの5%又は10%、及びH2 30barで、以下のように実行した:BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内で、溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、触媒1mol%(0.0025mmol)、及びtBuOH中の1M KOtBu(5%又は10%)を、25〜50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表22に提示している。
【表22】
【0286】
(N. 塩基スクリーニング)
この反応における塩基の役割を、IPA中、S/C 100/1、tBuOH中の1M KOtBuの0〜5%、及びH2 30barで調べた。また反応は、10%の溶媒添加物トルエン及びH2O(表23のエントリー番号6及び7)でも行った。これらの反応は、以下のように実行した: BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内で、溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、触媒1mol%(0.0025mmol)、及びtBuOH中の1M KOtBu(0%又は5%)を、50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表23に提示している。
【表23】
【0287】
その後エントリー番号2〜7の試料を一緒にし、蒸発乾固させ、得られた固形物をHPLCにより再分析した。これは、報告された結果は、特に変換に関して正確であることを確認した(単離された固形物:出発物質(SM)1%、93.5%eeの生成物99%)。
【0288】
(O. 触媒ローディング及び塩基濃度のスクリーニング)
一連の反応を、IPA中、PPhos RuCl2 DAIPENの様々な触媒ローディングにより、tBuOH中の1M KOtBuの1〜5%、H2 30barで実行した。これらの反応は、以下のように実行した: BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内で、溶媒3mL、基質87mg(0.25mmol)、触媒0.4から1mol%、及びtBuOH中の1M KOtBu(1〜5%)を、50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表24に提示している。
【表24】
【0289】
(P. 基質濃度のスクリーニング)
基質濃度を、IPA中、触媒ローディング250/1で[(S)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]を用い、tBuOH中の1M KOtBuの0.8%、H2 30barで調べた。これらの反応は、以下のように実行した: BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内で、溶媒4mL、基質0.2から1.2mmol、触媒0.4mol%、及び触媒を基にtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表25に提示している。
【表25】
【0290】
(Q. 触媒ローディング)
いくつかの反応を、IPA/H2O(9:1)中、触媒ローディングS/C 500/1及び1000/1で[(S)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]を用い、触媒に対してtBuOH中の1M KOtBuの3当量、H2 30barで行った。これらの反応は、以下のように実行した:BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内で、溶媒4mL、基質0.2から1.2mmol、触媒0.1mol%、及び触媒を基にtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表26に提示している。
【表26】
【0291】
(R. 触媒ローディング500/1での反応)
反応を、BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内で、[PPhos RuCl2 DAIPEN]の異なる異性体全てを用い、出発物質の新たなバッチでのそれらの性能を決定するために、IPA/H2O(9:1)中、触媒ローディングS/C 500/1、触媒に対してtBuOH中の1M KOtBuの3当量、H2 30barで行った。これらの反応は、以下のように実行した:BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内で、溶媒4mL、基質1.2mmol、触媒0.2mol%、及び触媒を基にtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表27に提示している。
【表27】
【0292】
(S. 触媒ローディング250/1での反応)
一連の平行反応を、基質420mg(1.2mmol)を用い、IPA/H2O(9:1)の4mL中、触媒ローディングS/C 250/1で、触媒に対してtBuOH中の1M KOtBuの3当量、及びH2 30barで行った。これらの反応は、以下のように実行した:BIOTAGE ENDEAVOR(商標)内で、溶媒4mL、基質1.2mmol、触媒0.4mol%、及び触媒を基にtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表28に提示している。
【表28】
【0293】
各バイアルを、変換及び選択性について個別に分析し、その後最終物質を生じるために一緒にした。全ての場合において、分析及び固形物の移動について最大溶解を確実にするために、洗浄溶媒としてMeOHを使用した。
【0294】
(T. 25mL Parr容器での反応)
a) [(S)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]との反応
2つの反応を、25mL Parr容器において、IPA/H2O(9:1)中、S/C 500/1又は1000/1で[(S)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]を用い、触媒に対してtBuOH中の1M KOtBuの3当量、及びH2 30barで行った。これらの反応は、以下のように実行した:溶媒4mL、基質0.2〜1.2mmol、触媒0.4mol%、及び触媒を基にtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、50℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表29に提示している。
【表29】
【0295】
選択性の若干の喪失が認められ、これは恐らく、反応容器のデザインの違いによる、BIOTAGE ENDEAVOR(商標)からParr容器へと移す際の内部温度調節の差異に起因するであろう。更なる実験を、独立型Parrオートクレーブを用い、大規模化及び最適化について実行した。
【0296】
b) [(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]との反応
一連の反応を、25mL Parr容器において、IPA/H2O(9:1)中、S/C 500/1又は1000/1で[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]を用い、tBuOH中の1M KOtBu(0.0036M)、及びH2 30barで行った。これらの反応は、以下のように実行した:溶媒8mL、基質2.4mmol、触媒0.1mol%、及びtBuOH中の1M KOtBuの0.0036Mを、40℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表30に提示している。
【表30】
【0297】
2つの実験において、粗物質の再結晶を試みた。回転蒸発器により、溶媒を除去し、その後最早固形物が残存しなくなるまで、純正IPAを還流しながら添加した(〜35mL/g)。
【0298】
c) [(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]及びtBuOH中の1M KOtBuの3当量との反応
反応を、25mL Parr容器において、IPA/H2O(1:1)中、S/C 250/1〜1000/1で[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]を用い、触媒に対してtBuOH中の1M KOtBuの3当量、及びH2 30barで行った。これらの反応は、以下のように実行した:溶媒8mL、基質2.4mmol、触媒0.1mol%、及び触媒に対しtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、40℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表31に提示している。
【表31】
【0299】
d) 温度スクリーニング
一連の反応を、25mL Parr容器において、IPA/H2O(9:1)中、S/C 250/1で[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]を用い、触媒に対してtBuOH中の1M KOtBuの3当量、及びH2 30barで行った。これらの反応は、以下のように実行した:溶媒8mL、基質2.4mmol、触媒0.1mol%、及び触媒に対しtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、30〜40℃で18〜70時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表32に提示している。
【表32】
【0300】
e) 100mL Parr容器での反応
反応を、100mL Parr容器において、IPA/H2O(9:1)中、S/C 250/1及び1000/1で[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]を用い、触媒に対してtBuOH中の1M KOtBuの3当量、及びH2 30barで行った。これらの反応は、以下のように実行した:溶媒40mL、基質12mmol、触媒0.1mol%、及び触媒に対しtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、40℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表33に提示している。
【表33】
【0301】
f) Parr容器内の圧力のスクリーニング
反応を、25mL Parr容器において、IPA/H2O(9:1)中、S/C 250/1で[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]を用い、触媒に対してtBuOH中の1M KOtBuの3当量、及びH2 5〜30barで行った。これらの反応は、以下のように実行した:溶媒8mL、基質2.4mmol、触媒0.1mol%、及び触媒に対しtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、40℃で24時間にわたり加熱した。全ての反応は、個々の反応の圧力値までパージした。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表34に提示している。
【表34】
【0302】
g) Parr容器における追加加熱時間のスクリーニング
反応を、25mL Parr容器において、IPA/H2O(9:1)中、S/C 250/1で[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]を用い、触媒に対してtBuOH中の1M KOtBuの3当量、40℃、及びH2 30barで加熱18時間、追加加熱6時間で加熱した。これらの反応は、以下のように実行した:溶媒8mL、基質2.4mmol、触媒0.1mol%、及び触媒を基にtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、40℃で18時間加熱した。追加加熱6時間は、60℃で実行した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表35に提示している。
【表35】
【0303】
h) Parr容器内でS/C 1000/1での追加加熱時間
反応を、25mL Parr容器において、IPA/H2O(1:1)中、S/C 1000/1で[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]を用い、触媒に対してtBuOH中の1M KOtBuの3当量、40℃、及びH2 30barで、18時間にわたり加熱し、60℃で6時間追加加熱した。これらの反応は、以下のように実行した:溶媒8mL、基質2.4mmol、触媒0.1mol%、及び触媒を基にtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、40℃で18時間加熱した。追加加熱6時間は、60℃で実行した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表36に提示している。
【表36】
【0304】
i) [(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]触媒による25mL Parr容器内でのスクリーニング
反応を、25mL Parr容器において、IPA/H2O(9:1又は1:1)中、S/C 250/1で[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]を用い、1M KOtBuの3当量で、以下のように実行した:溶媒8mL、基質2.4mmol、触媒0.1mol%、及び触媒を基にtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、30〜35℃及びH2 30barで18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表37に提示している。
【表37】
【0305】
j) [(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]触媒による100mL Parr容器内のスクリーニング
反応を、100mL Parr容器において、IPA/H2O(9:1又は1:1)中、S/C 250/1で[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]を用い、tBuOH中の1M KOtBuの3当量で、以下のように実行した:溶媒40mL、基質12mmol、触媒0.4mol%、及び触媒を基にtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、40℃及びH2 30barで18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表38に提示している。
【表38】
【0306】
k) [(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]及び[(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]による300mL Parr容器内のスクリーニング
反応を、300mL Parr容器において、IPA/H2O(9:1)中、S/C 250/1で[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]及び[(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]を用い、tBuOH中の1M KOtBuの3当量で、以下のように実行した:溶媒160mL、基質48mmol、触媒0.4mol%、及び触媒を基にtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、40℃及びH2 30barで18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表39に提示している。
【表39】
【0307】
l) [(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]及び[(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]による600mL Parr容器内のスクリーニング
反応を、600mL Parr容器において、IPA/H2O(9:1)中、S/C 250/1で[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]及び[(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]を用い、触媒に対してtBuOH中の1M KOtBuの3当量で、40℃、H2 30barで18時間加熱した。反応は、以下のように実行した:溶媒320mL、基質96mmol、触媒0.4mol%、及び触媒を基にtBuOH中の1M KOtBuの3当量を、40℃で18時間加熱した。変換率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)を、HPLCにより決定した。結果を表40に提示している。
【表40】
【0308】
(実施例22 アキラル還元)
この反応において、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンの触媒的アキラル還元を、水素移動条件下で操作するよう、不均一Pd/C触媒により、実行した。
【化11】
【0309】
この反応は、NH4COOH(10当量)を含むIPA/H2O(9:1)中で、10重量%の5%Pd/C型374を用い、還流温度で1時間かけて実行した。1時間後の反応物の試料採取は完全な変換を示し、その後この反応物を、触媒を効率的に除去することができるようまだ熱い間に濾過し、且つ生成物をH2Oにより濾液から沈殿させた。単離された生成物は、変換>99%及び単離された収率>98%である、白色固形物であった。
【0310】
(実施例23)
実施例20に説明したスクリーニング反応を基に、以下の条件を、ベンチマークに適するものとして選択した。
【0311】
(A. ベンチマーク手法)
Parr容器に、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノン(1.67g, 4.8mmol)、(R)-PPhos RuCl2(R)-DAIPEN(5.4mg, S/C 1,000/1)及びi-PrOH-H2O(9:1v/v, 16mL)の溶液を投入した。この容器を密封し、N2で3barまで1分間充填することによりパージし、その後通気し、攪拌しながら(1500rpm)更に5回のパージを行った。i-PrOH-H2O(9:1v/v, 1mL)中のt-BuOK/t-BuOH(1M, 14μL)の溶液を添加し、先の順番に従い反応物をN2でパージした。次にこの容器を、H2で30barまで1分間充填することによりパージし、通気し、攪拌しながら(1500rpm)更に5回のパージを行った。次にこの反応物を40℃まで加熱し、この温度及び圧力で16時間維持した。
【0312】
ベンチマーク反応条件を最初に試験したが、反応手法の詳細を以下に示す。その後多くの実験的変更を比較し、反応変換について分析した。粗反応物スラリーを、THFで希釈し、分析のための均一溶液を得た。
【0313】
下記表41は、(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN又は(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPENプレ-触媒(pre-catalyst)のスクリーニング条件に関するデータを提供する。
【0314】
(B. 溶解度を増大する条件のスクリーニング)
基質の溶解度の増大を試み、下記条件を変更した:反応温度の上昇(40℃、対、60℃)、反応容積の増加、改善された溶解度のための溶媒系の調節、及び反応器の断続的振盪。これらの反応条件及び結果を、表42にまとめている。表42に関する注意点:a.変換は、生成物、対、出発物質に関するピーク面積率(%)として計算した、(生成物/生成物+出発物質)×100、254nmでのHPLC分析(逆相法)を使用する、210nmでのピーク面積;b.不完全な変換は、最初の鏡像体と出発物質の部分的重複を生じ、これはee測定における若干の誤差をもたらし、括弧内の数字は主要ピークを意味し、1=初期溶出、2=後期溶出である;c. i-PrOH-H2O(9:1v/v, 1mL)及びt-BuOK/t-BuOH中の(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPENの溶液を、N2下で50℃で10分間加熱し、その後反応物に添加した;d. 触媒に対する当量;e. 圧力は、H2消費のために反応の経過にわたり低下した;f. 反応スラリーから採取した試料;並びに、g. 基質に対するmol%。
【0315】
反応器の様々な位置での反応物の採取の結果は、下記表43により詳細に示している。表43に関する注意点:a. 変換は、生成物、対、出発物質に関するピーク面積率(%)として計算した、(生成物/生成物+出発物質)×100、254nmでのHPLC分析(逆相法)を使用する、210nmでのピーク面積;b. 不完全な変換は、最初の鏡像体と出発物質の部分的重複を生じ、これはee測定における若干の誤差をもたらし、括弧内の数字は主要ピークを意味し、1=初期溶出、2=後期溶出である;c. i-PrOH-H2O(9:1v/v, 1mL)及びt-BuOK/t-BuOH中の(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPENの溶液を、N2下で50℃で10分間加熱し、その後反応物に添加した;d. 触媒に対する当量。
【0316】
(C. 水素圧)
変換及び選択性に対する圧力(5bar及び30bar)並びに触媒ローディング(2,000/1、4,000/1、5,000/1及び10,000/1)の作用を明らかにするために、実験を行った。結果は、下記表44に示している。表44に関する注意点:a. 変換は、生成物、対、出発物質に関するピーク面積率(%)として計算した、(生成物/生成物+出発物質)×100、254nmでのHPLC分析(逆相法)を使用する、210nmでのピーク面積;b. 不完全な変換は、最初の鏡像体と出発物質の部分的重複を生じ、これはee測定における若干の誤差をもたらし、括弧内の数字は主要ピークを意味し、1=初期溶出、2=後期溶出である;c. i-PrOH-H2O(9:1v/v, 1mL)及びt-BuOK/t-BuOH中の(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPENの溶液を、N2下で50℃で10分間加熱し、その後反応物に添加した;d. 触媒に対する当量;e. 圧力は、H2消費のために反応の経過にわたり低下した;f. 反応スラリーから採取した試料;並びに、g. 基質に対するmol%。
【0317】
(D. 混合効率)
反応最適化の過程において、反応容器内のバッフルの長さのわずかな違いが、混合効率の変動を引き起こすことが観察された。バッフル位置によって左右される変換において観察された差異は、効率的攪拌がより高い変換に必要とされることを示している。結果は、表45に提示している。
【0318】
(E. 共溶媒の作用)
共溶媒の比較を、より高い基質溶解度により反応性が増加するよう行った。比較のために、標準溶媒混合物(IPA-H2O, 9:1)を使用する低い変換を生じる条件を選択した。反応混合物を、60℃で16時間加熱し、且つ触媒ローディング4000/1 S/Cを使用した。結果は、表45に提示している。
【表41】
【表42】
【表43】
【表44】
【表45】
【0319】
表45の注意点:a. 変換は、生成物、対、出発物質に関するピーク面積率(%)として計算した、(生成物/生成物+出発物質)×100、254nmでのHPLC分析(逆相法)を使用する、210nmでのピーク面積;b. 不完全な変換は、最初の鏡像体と出発物質の部分的重複を生じ、これはee測定における若干の誤差をもたらし、括弧内の数字は主要ピークを意味し、1=初期溶出、2=後期溶出である;c. 基質としてTHF中の懸濁液は溶解度不良を有したので、HPLC試料は、粗反応混合物から採取した;d. 単離された固形物のHPLCから測定されたee;e. 圧力を更に24時間5barにリセットする前に、最初の16時間以内に消費された利用可能な水素;f. ビュレットを介した水素給源;g. フローメーター(flow metre)を介した水素供給;h. L/Sは、より長い又はより短いバッフルの使用を意味する。
【0320】
10%及び20%DMSO(v/v)共溶媒に関する水素取込みの比較は、図6に示している。
【0321】
(F. 溶解度試験)
溶解度試験は、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-4H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンを少量ずつ、多数の溶媒へ、固形物が浮遊し続けるまで、添加することにより、実行した。多数の溶媒は、本反応に関する共溶媒としてのそれらの適合性を基に、本試験のために選択した。結果は、表46に提示している。
【表46】
【0322】
(G. 減少した触媒ローディング(50mL Parr))
更に触媒ローディングを減少する試みを、50mL Parr容器において行った。S/C 20,000/1の触媒ローディングを、圧力30barで使用した。先のS/C 10,000/1のローディングでの結果を、比較のために表47に含んでいる。表47の注意点:a. 変換は、生成物、対、出発物質に関するピーク面積率(%)として計算した、(生成物/生成物+出発物質)×100、254nmでのHPLC分析(逆相法)を使用する、210nmでのピーク面積;b. 不完全な変換は、最初の鏡像体と出発物質の部分的重複を生じ、これはee測定における若干の誤差をもたらし、括弧内の数字は主要ピークを意味し、1=初期溶出、2=後期溶出である;c. 基質としてTHF中の懸濁液は溶解度不良を有したので、HPLC試料は、粗反応混合物から採取した;d. 単離された固形物のHPLCから測定されたee;e. 圧力を更に24時間5barにリセットする前に、最初の16時間以内に消費された利用可能な水素;f. ビュレットを介した水素給源;g. フローメーターを介した水素供給;h. L/Sは、より長い又はより短いバッフルの使用を意味する。
【0323】
(H. 反応後処理法)
前述のスクリーニング実験の過程において、THFで希釈し且つ全ての固形物を溶解するために加熱した後、粗反応物の分析を行った。数多くの反応物に、典型的後処理及び単離手法を施した。最初に溶媒を減圧下で除去し、粗固形物をi-PrOH:H2O混合液9:1又は1:1のいずれかに溶かし、次にこのスラリーを60〜70℃まで加熱し、その後室温まで冷却し且つ濾過した。結果は、表48に提示している。表48の注意点:a. 変換は、生成物、対、出発物質に関するピーク面積率(%)として計算した、(生成物/生成物+出発物質)×100、254nmでのHPLC分析(逆相法)を使用する、210nmでのピーク面積;b. 不完全な変換は、最初の鏡像体と出発物質の部分的重複を生じ、これはee測定における若干の誤差をもたらし、括弧内の数字は主要ピークを意味し、1=初期溶出、2=後期溶出である。
【0324】
(I. 300mL Parr反応器でのスケールアップ反応)
300mL Parr反応器において反応のスケールアップを行った。様々な機械的問題点に遭遇し、結果的にこれらの結果は真に代表するものではなかった。機械的問題点を解決した後に、別の実験を行った。改善された結果が得られたが、生成物eeは、50mL Parr容器における先の結果と比較して、依然相対的に低かった。より大きい600mL Parr容器において、より良い結果が得られたので、この容器を使用した更なる実験は行わなかった。
【表47】
【表48】
【表49】
【0325】
(J. 600mL Parr反応器におけるスケールアップ反応)
共溶媒としてDMSO(10%v/v)を使用する反応条件を、反応速度の利点が先に明らかにされていたので、使用した。600mL Parr容器には、効率的攪拌のために、混合用羽根車(intermig impeller)を装着した。
【0326】
触媒ローディング4,000/1 S/C:図7に認められるようにおよそ20時間後に取込み曲線は平坦化したように見えるので、総反応時間は22時間であった。単離された生成物中には、少量のケトンのみが認められた。単離された生成物は、良いエナンチオ純度(enantiopurity)(99.1%ee)を有した。単離された収率89%は、50mL及び300mL容器において小規模で得られた結果と同等であった。結果は、表49に提示している。
【0327】
触媒ローディング10,000/1 S/C:またこの容器を用い、減少した触媒ローディングを使用する反応を試みた。DMSO(10%v/v)共溶媒を使用した。水素の取込みが平坦になるまで、かなり長い反応時間が必要であった(112時間、図8参照)。恐らく容器内の混合効率の違いのために、より小規模(50mL Parr)でこれらの条件を用い、より短い反応時間が得られた。単離された生成物は、少量のケトン(HPLCにより3.4%)を含んだが、この生成物は、良好なee(98.6%)で単離された。結果は、表49に提示している。
【0328】
(K. ルテニウム含量)
ルテニウム含量の分析を、触媒ローディングと比較して実行した。触媒ローディングと比較して推定された最大ルテニウム含量及び実際の結果は、表50に示している。
【表50】
【0329】
(実施例24 600mL Parr容器におけるスケールアップ反応の例)
600mL Parr容器に、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノン(80.16g, 231mmol)、(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN(65.3mg, S/C 4,000/1)、i-PrOH-H2O(9:1v/v, 324mL)及びDMSO(36mL)の溶液を投入した。この容器を密封し、N2で3barまで1分間充填することによりパージし、その後通気し、攪拌しながら(1500rpm)更に5回のパージを行った。i-PrOH-H2O(9:1v/v, 10mL)中のt-BuOK/t-BuOH(1M, 348μL)の溶液を添加し、先の順番に従い反応物をN2でパージした。次にこの容器を、H2で5barまで2分間充填することによりパージし、通気し、攪拌しながら(1500rpm)更に3回のパージを行った。次にこの反応物を70℃まで加熱し、この温度及び圧力で指定された時間維持した。
【0330】
この容器を、室温まで冷却し、その後窒素でパージした。この反応スラリーをH2O(260mL)で希釈し、濾過した。固形物をi-PrOH-H2O(1:1v/v)(2×100mL)で洗浄し、高真空下で、一定質量に達するまで乾燥した。この反応は71.75g及び単離された収率89.0%を生じた。HPLC分析は、生成物99.5%及び出発物質0.5%を示した。遅れて溶出する鏡像体が好ましく、生成物の鏡像体過剰率99.1%であった。
【0331】
(実施例25)
(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンの2つのバッチを、触媒ローディングS/C 500/1及び2000/1での変換についてスクリーニングした。バッチ1は、〜15モル%(%molar)Et(i-Pr)2N、ヒューニッヒ塩基及び2モル%AcOEtを含んだ。バッチ2は、〜11モル%(3%w/w)AcOEtを含んだ。反応は、BIOTAGE ENDEAVOR(商標)反応器において、IPA/H2O/DMSO(8:1:1, v/v/v)中、基質1.13g、0.3mol% t-BuOKで、70℃及び水素5barにおいて、16時間行った。触媒[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]及び[(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]の様々なバッチを使用した。
【0332】
バッチ1は、両方のローディングで完全変換を生じた。バッチ2は、S/C 500/1では完全変換を生じたが、S/C 2000/1では変換しなかった。15mol%アミン塩基の添加は、バッチ2の変換のわずかな増加に繋がった。回収された未反応の材料を反応において再使用した場合、改善された変換が得られた。
【0333】
これらの反応の結果は、塩基の添加と組み合わせた出発物質の精製は、バッチ2の低い反応性を解決し得ることを示唆した。
【0334】
バッチ2で、3つの基本的精製手法を使用した(表51、エントリー番号5〜7)。使用した基質バッチを示すために、表51の第2列の基質番号を下記実施例において使用している。
【表51】
【0335】
(a. 反応の均一性)
出発物質、生成物及びそれらの混合物の70℃での溶解度の試験を行った。これらの実験の目的は、試薬を溶解し且つ均一な反応混合物を作製するのに必要なDMSOの最小量を見つけることであった。第一のチューブは出発物質を含み、第二のチューブは、反応が半分完了した状況をシミュレートするために出発物質と生成物の混合物(1/1)を、並びに第三のチューブは生成物を含んだ。実験は、前記混合物がどれも70℃で溶解しないIPA/DMSO/水(8/1/1)5mL中で開始した。次にDMSOを、完全溶解度に到達するまで滴加した。更に5mLのDMSOの添加時に、生成物は完全溶解度に到達するのに対し、出発物質と生成物の混合物は、7mLのDMSOの添加時に溶解することがわかった。これらの条件で、出発物質は依然一部溶解しなかった。この実験を使用し、(IPA及び水の当初の量を維持しつつ)均一な反応混合物を作製するために必要なDMSO量を決定した。材料1.113g及び70℃での溶解度試験の結果を、表52に提示している。
【0336】
表52において、ケトンは、(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノンをいい、アルコールは、(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール又は(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールをいう。
【表52】
【0337】
(b. 精製された基質の反応性)
精製された基質の反応を、Endeavor内において、[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]の触媒ローディング2000/1で、様々な量のt-BuOK(t-BuOH中のt-BuOKの1M溶液として使用)について試行した。反応は、IPA/DMSO/水(8/1/1)5mL中、H2 5bar及び70℃で、16時間かけて、触媒のローディング2000/1を用い、3.33mmolスケールで実行した。精製は有益であることがわかった。塩基及び精製の作用の結果を、表53に提示している。この実験で使用した基質は、実施例25、表51に記載されたように入手した。
【表53】
【0338】
(実施例26 BIOTAGE ENDEAVOR(商標)反応器(3.33mmolスケール)における反応)
BIOTAGE ENDEAVOR(商標)バイアルに、基質(1.113g, 3.33mmol)を投入した。IPA(1mL)、DMSO(0.5mL)及び水(0.5mmol)を連続して添加した。このバイアルを、BIOTAGE ENDEAVOR(商標)に配置し、このシステムを、窒素で3barまで加圧することによりパージし、且つ圧力を開放した。[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN](5.4mg, 0.005mmol)をIPA(12mL)中に溶解し、且つt-BuOH中のt-BuOKの溶液(典型的には5mol%について666mL)を添加することにより調製した触媒ストック液3mLを、各BIOTAGE ENDEAVOR(商標)反応器に注入し、且つ反応混合物を窒素(5×)及び水素(5×)でパージした。反応混合物を、4〜5bar(表54参照)及び70℃で16時間攪拌した。この反応混合物を冷却させ、減圧し、且つ反応バイアルの内容物を、THF 70mLを使って、100mLエレンマイヤーフラスコへ移した。これは典型的には、透明な黄色溶液を生じた。場合によっては、溶けていない固形物を伴うオレンジ色の溶液を得、これは、低い/不完全な変換を示している。試料を採取し、反応物の変換及びeeを、HPLCにより決定した。結果を、表54に提示している。この実験で使用した基質は、実施例25、表51に記載されたように入手した。
【0339】
(実施例27)
A. Parrオートクレーブ反応(20mmolスケール)
Parrオートクレーブに、基質(6.68g, 20mmol)を投入し、且つ蓋をした。注入口を通して、IPA(12mL)、DMSO(3mL)及び水(3mmol)を連続して添加した(オートクレーブは、窒素で5×パージした)。IPA(11mL)中に[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]又は[(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN](5.4mg, 0.005mmol)を溶解し且つt-BuOH中のt-BuOKの溶液(典型的には5mol%について1mL)を添加することにより調製した触媒溶液を、添加した。この反応器を、窒素(5×)及び水素(5×)でパージした。反応混合物を、5bar及び70℃で16時間攪拌した。反応混合物を冷却し、減圧し、且つ反応器の内容物を水30mLが入った100mLエレンマイヤーフラスコへ移した。沈殿物を濾過し、IPA/水(15mL, 9/1)で洗浄し、真空で乾燥し、対応するアルコールを生じた。試料を調製し、反応物の変換及びeeを、HPLCにより決定した。結果を、下記表55に提示している。この実験で使用した基質は、実施例25、表51に記載されたように入手した。
【0340】
B. Parrオートクレーブ反応(10mmolスケール)−均一システム
Parrオートクレーブに、基質(3.34g, 10mmol)を投入し、且つ蓋をした。注入口を通して、IPA(7mL)、DMSO(14mL)及び水(2mL)を連続して添加した(オートクレーブは、窒素で少なくとも5回パージした)。IPA(13mL)中に[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]又は[(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN](5.4mg, 0.005mmol)を溶解し且つt-BuOH中のt-BuOKの溶液(5mol%について1mL)を添加することにより調製した触媒溶液7mLを、添加した。この反応器を、窒素(5×)及び水素(5×)でパージした。反応混合物を、4bar及び70℃で16時間攪拌した。反応混合物を冷却し、減圧した。試料を採取し、反応物の変換及びeeを、HPLCにより決定した。反応器の内容物を水30mLが入った100mLエレンマイヤーフラスコへ激しく攪拌しながら滴加した。直ちに粘稠な白色沈殿物が形成された。この沈殿物を濾過し、水(15mL)で洗浄し、真空で乾燥し、対応するアルコールを生じた。結果を、下記表55に提示している。この実験で使用した基質は、実施例25、表51に記載されたように入手した。
【0341】
(実施例28 4barでのスケールアップ反応)
(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノン10g及び[(S)-PPhos RuCl2 (S)-DAIPEN]又は[(R)-PPhos RuCl2 (R)-DAIPEN]を使用し、(R)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノール及び(S)-(4-フルオロフェニル)(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールを調製するためのスケールアップ反応を、実施例27Bに記載の手法に類似した手法を使用し、70℃及びH2 4barで行った。下記表56及び表57は、手法及び結果をまとめている。下記表56及び表57において、R-鏡像体は(R)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールをいい、S-鏡像体は(S)-(4-フルオロフェニル)(4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)キナゾリン-2-イル)メタノールをいう。
【0342】
表53の最後の3つのエントリー番号に関して、下記の手法を後処理に使用した。最終反応塊の溶液を、0〜5℃で攪拌しながら、IPA/水混合液に投入し、生成物を沈殿させた。10ミクロン上で濾過した後、湿った生成物を、IPA及び水で洗浄した。このアッセイデータによれば、母液は典型的には、材料約10%及び洗浄液約1%を含んだ。50℃で乾燥を行った。
【0343】
(エシル酸塩の形成)
表56の最後の3つのエントリー番号の生成物を、エシル酸塩の形成に使用した。全てのエシル酸塩形成反応は、EtSO3H量1当量により、表57に記載された条件下で試行し、反応時間は還流温度で30分間であり、且つ生成物単離のために、その塊を5℃まで冷却した。
【0344】
上で説明した実施例は、当業者にどのように主張される実施態様を作製及び使用するかについての完全な開示及び説明を提供し、本明細書に開示される範囲を限定することは意図されない。当業者に明らかな改良は、次の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。本明細書で引用される全ての出版物、特許、及び特許出願は、引用により組み込まれるものとしてこのようなそれぞれの出版物、特許、及び特許出願が、具体的及び個々に示されているように、引用により本明細書中に組み込まれる。
【表54】
【表55】
【表56】
【表57】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8