特許第5933557号(P5933557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5933557高流束中空繊維限外濾過膜及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933557
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】高流束中空繊維限外濾過膜及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/68 20060101AFI20160602BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20160602BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20160602BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20160602BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20160602BHJP
   B01D 71/42 20060101ALI20160602BHJP
   B01D 71/28 20060101ALI20160602BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20160602BHJP
   B01D 71/44 20060101ALI20160602BHJP
   D01F 1/08 20060101ALI20160602BHJP
   D01F 6/76 20060101ALI20160602BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20160602BHJP
   C08L 33/20 20060101ALI20160602BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   B01D71/68
   B01D63/02
   B01D61/14
   B01D69/08
   B01D71/40
   B01D71/42
   B01D71/28
   B01D69/12
   B01D71/44
   D01F1/08
   D01F6/76 D
   C08L81/06
   C08L33/20
   C08L25/08
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-528777(P2013-528777)
(86)(22)【出願日】2011年9月13日
(65)【公表番号】特表2013-543429(P2013-543429A)
(43)【公表日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】IB2011002124
(87)【国際公開番号】WO2012035402
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年9月9日
(31)【優先権主張番号】2178/DEL/2010
(32)【優先日】2010年9月14日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】597037245
【氏名又は名称】カウンスル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レディー、アラムル、ヴェンクタラミ
(72)【発明者】
【氏名】レイ、パラミタ
(72)【発明者】
【氏名】シン、プヤム、ソビーンドロ
(72)【発明者】
【氏名】カレム、パラシュラム
(72)【発明者】
【氏名】マウリャ、サンディプクマール
(72)【発明者】
【氏名】トリヴェディ、ジテンドラ、ジャイデブプラサド
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−050506(JP,A)
【文献】 特開平03−161033(JP,A)
【文献】 特開昭58−132111(JP,A)
【文献】 特表2012−507393(JP,A)
【文献】 特開平06−248180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
C08L 33/20
C08L 81/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
96:4から99.5:0.5(w/w)の間の範囲の比のポリスルホン(PSF)とコポリマーとのブレンドを含み、コポリマーが、ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)(PANMA)、又は陽イオン交換樹脂(CXR)としてのスルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーから選択される、高流束中空繊維限外濾過ポリマー膜。
【請求項2】
前記膜が、ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)(PANMA)を含む、請求項1に記載の高流束中空繊維限外濾過ポリマー膜。
【請求項3】
前記膜が、水の浄化、再利用及び除菌に用いられる、請求項1及び2に記載の高流束中空繊維限外濾過ポリマー膜。
【請求項4】
繊維の外側及び内側直径が、それぞれ、1000から1100マイクロメートル、及び700から750マイクロメートルの範囲にある、請求項1に記載の高流束中空繊維限外濾過膜。
【請求項5】
繊維壁厚が、125から175マイクロメートルの範囲にある、請求項1に記載の高流束中空繊維限外濾過膜。
【請求項6】
外側及び内側スキン層の厚さが、1.7から2μmの範囲にある、請求項1に記載の高流束中空繊維限外濾過膜。
【請求項7】
100NTU以下の供給水からの、ネフェロ分析濁度単位(NTU)低下百分率が、98〜99.5%の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の高流束中空繊維限外濾過膜。
【請求項8】
前記膜のバクテリア減少log値が、4から6の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の高流束中空繊維限外濾過膜。
【請求項9】
分画分子量(MWCO)が、ポリエチレングリコールの分離に基づき、20から50kDaの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の高流束中空繊維限外濾過膜。
【請求項10】
純水流束が80から250l/m.hの範囲にあり、破裂圧力が45から50psiの範囲にあり、流束回復率が80から95の範囲にあり、20kDaのポリエチレングリコールの分離効率が60から90の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の高流束中空繊維限外濾過膜。
【請求項11】
純水透過性が、20から25psiで、50〜200リットル/m.hrの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の高流束中空繊維限外濾過膜。
【請求項12】
a)80℃から100℃の範囲の温度で、3から4時間の範囲の時間、1400から1600rpmの範囲の速度での一定の撹拌下に、19〜20%w/wのポリスルホン、2〜5%w/wのポリビニルピロリドン及び0.2から0.8%w/wのコポリマーを、70〜80%w/wの極性有機溶媒に溶解し、その後、17から20psiの窒素圧で押して、透明な紡糸ドープを調製するステップと、
b)ステップ(i)において得られた紡糸ドープを、2重オリフィス紡糸金口の外側オリフィスを通して、30から100g/分の範囲に押出速度を保ち、押し出すステップと、
c)流量を20から50ml/分の範囲に保ちながら、水を、2重オリフィス紡糸金口の内側オリフィスに通して流すステップと、
d)3から4時間の範囲の時間、ポリマー押出速度を35から42メートル/分の範囲に保つステップと、
e)押し出された中空繊維の外側表面を、25から30℃の範囲の温度に保たれた水浴中でゲル化させ、その後、水洗し、4から5時間の範囲の時間、メタノールに浸漬して、中空繊維限外濾過ポリマー膜を得るステップと
を含む、高流束中空繊維限外濾過ポリマー膜の調製方法。
【請求項13】
用いられるコポリマーが、ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)、又は陽イオン交換樹脂(CXR)としてのスルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーから選択される、請求項12のステップ(a)に記載の方法。
【請求項14】
用いられる有機溶媒が、ジメチルホルミアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)又はジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される、請求項12のステップ(a)に記載の方法。
【請求項15】
膜が、1バッチあたり8,400から10,800メートルの長さの生産率で紡糸された、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載の中空繊維限外濾過膜を含む水濾過ユニット。
【請求項17】
前記水濾過ユニットが、3メートルの高さの高架タンクからの蛇口に取り付けた場合に電気を必要とせずに150〜300ml/minの生産水を生産する、請求項16に記載の水濾過ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)、ポリスルホン+ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)及びポリスルホン+イオン交換樹脂(スルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)ブレンドから調製される高流束中空繊維限外濾過膜に関する。
【0002】
本発明は、さらに、望ましい速度で、すなわち、50〜200リットル/m.hで、生物学的に純粋な水を送り出す中空繊維限外濾過膜の開発に関する。
【0003】
本発明は、さらに、それからの、水の浄化及び除菌のためのユースポイント(point−of−use)(POU)水濾過ユニットに関する。約3メートルの高さの高架タンクからの蛇口に取り付けられた場合に150〜300ml/minの生産水を生産する、電気を必要としない、簡単で、小型で安価なデバイスであるユースポイント水濾過ユニットを、中空繊維膜を用いることにより開発した。
【背景技術】
【0004】
飲用水における微生物汚染に起因する水系感染症は、世界中の主要な健康上の問題であり、一般の人に安全な飲用水を提供することは、この世紀の主要な努力目標の1つとして持ち上がっている。水を濾過し、浄化して、安全な飲用水を得るための逆浸透、ナノ濾過、限外濾過、電気透析のような、膜による方法を用いる水浄化システムが市販されている。これらの膜による方法の中で、限外濾過による方法は、特に、懸濁粒子、病原体及び他の有害な微生物を含有する不浄な濁水の処理において、その高い水透過性のために、生産性の点で、最も効率的な方法である。水の限外濾過法に関する様々な膜の種類が、市場に存在し、これらの1つは、ポリマー中空繊維に基づいている。
【0005】
特許JP 2006088148を参照でき、この特許には、水処理に用いられるポリスルホン限外濾過中空繊維膜の製造方法が開示されている。この中空繊維は、内側表面に10〜220ミクロンの細孔径を、外側表面に0.01〜5ミクロンの細孔径を有するスポンジ構造を有する。
【0006】
特許EP927572−Aを参照でき、この特許には、内側穴(bore)形成用液体として、無機塩、ジエチレングリコール及び水の混合物を、並びに外側凝固用液体として、水、又はDEG/CaClを含む水を用い、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン及び有機溶媒を含む紡糸ドープから中空繊維膜を製造する方法が開示されている。これらの繊維は、12400g/molの分子量を有するシトクロム−Cの分離に適する細孔径を有している。
【0007】
特許US2004026315−A1を参照でき、この特許は、溶融紡糸法を用い、ポリスルホン、親水性ポリビニルピロリドン及び溶媒の混合物から、透析に利用される約200ミクロンの繊維直径を有するポリスルホン中空微細繊維膜を製造する方法を開示している。
【0008】
特許CN1557532−A;CN1261197−Cを参照でき、これらの特許には、水道処理に用いられる0.7から2.0mmの内側直径を有する繊維が得られる、乾式及び湿式防止法による、ポリスルホン及びポリビニルピロリドンの混合物からのポリスルホン繊維製造の方法が開示されている。
【0009】
特許EP 0568045 Alを参照でき、この特許には、50℃での押出により、内側スキン層におけるPVP含有量が外側スキン層より大きく、体液処理に適用される280ミクロンの繊維直径を有する、ポリスルホン−PVP系中空繊維膜が開示されている。
【0010】
特許JP 09052028を参照でき、この特許には、PAN繊維の紡糸安定性を向上させるために、室温を超える温度で紡糸ドープを脱気し、不活性ガスでパージした後、ポリアクリロニトリル中空繊維を紡糸することが開示されている。
【0011】
雑誌「分離及び精製技術(Separation and Purification Technology)」2006、52(2)、380〜387を参照でき、この中で、Yu,D−G等は、ドライ−ジェット(dry−jet)湿式紡糸法により紡糸されるPAN繊維によるポリアクリロニトリル(PAN)中空繊維膜の製造を報告し、繊維特性へのドロー比の影響を示した。
【0012】
雑誌「膜科学誌(Journal of Membrane Science)」1997、132(1)、63〜71を参照でき、この中で、Yang,M.−C.とTong,J.H.は、PAN中空繊維の紡糸、並びに、中空繊維の表面に、ポリアクリル酸の薄い層(約12000〜16000g/molの分子量を有するミオグロビン及びシトクロム−Cを阻止する)を形成する、表面加水分解による修飾を報告した。
【0013】
特許CN 1110625を参照でき、この特許では、溶液キャスティング及び蒸発法によって、ポリアクリロニトリル及びポリスルホンのブレンドから、フラットシート膜が開発された。
【0014】
先行技術は多くの欠点を有する。例えば、先行技術のポリスルホン繊維は、疎水性であり、このため、結果として、流束が一層小さくなり、運転中にファウリング(fouling)が一層起こりやすくなり得る。親水性であり、表面が滑らかで、相対的により柔軟であるPAN繊維は、乾燥状態で収縮し、脆い傾向があり、その結果、取扱い及び長期保存が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の主たる目的は、水の浄化及び除菌のための高流束限外濾過ポリマー中空繊維膜を調製することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、ホモポリマーから製造される中空繊維の欠点を除くために、ブレンド中空繊維限外濾過膜を調製することである。
【0017】
本発明の別の目的は、抗ファウリング性、表面平滑性及び柔軟性のような繊維特性、並びに膜流束及び阻止(すなわち分離)効率のような膜性能を向上させるために、ポリスルホンとポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)のブレンド繊維を調製することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、ポリスルホン又はポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)のいずれか一方よりも特性が向上した、ポリスルホンとポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)コポリマーのブレンド繊維を調製することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)を組み入れることによって、ポリスルホン膜の純水流束を向上させることである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、懸濁固体、濁り、バクテリア及び他の病原体を水から除去する際の分離効率を向上させるために、ポリスルホンとポリ(アクリロニトリル−メタクリル酸)のブレンド膜を調製することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、弾性/柔軟性を増加させて、より耐久性のある膜を製造するために、ポリスルホンとポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)のブレンド膜を調製することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、結果的に耐ファウリング性を向上させる表面平滑性を高めるために、ポリスルホンとポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)のブレンド膜を調製することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、膜の寿命を延ばすために、外→内、又は内→外の方式のいずれでも機能するように、内側及び外側表面の両方に活性(active)スキン層を有する、ポリスルホンとポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)のブレンド膜を調製することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、膜流束を低下させることなく、良好な機械的強度のために、2層スポンジ構造を有する、ポリスルホンとポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)のブレンド膜を調製することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、分離効率、耐ファウリング性及び生産水流束を向上させるために、ポリスルホンと陽イオン交換樹脂(スルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)のブレンド膜を調製することである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、ブレンド繊維又は表面修飾ブレンド繊維と比較して膜性能を評価するために、ポリスルホン又はポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)のいずれかに基づく中空繊維膜を調製することである。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、ユースポイント水濾過ユニットとして中空繊維を用いることである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
したがって、本発明は、96:4から99.5:0.5(w/w)の間の範囲の比のポリスルホン(PSF)とコポリマーとのブレンドを含み、コポリマーが、ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)(PANMA)、又は陽イオン交換樹脂(CXR)としてのスルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーから選択される、高流束の中空繊維限外濾過ポリマー膜を提供する。
【0029】
本発明の実施形態において、前記膜は、任意選択として、ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)(PANMA)を含む。
【0030】
本発明の別の実施形態において、前記膜は、水の浄化、再利用及び除菌に有用である。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態において、繊維の外側及び内側直径は、それぞれ、1000から1100マイクロメートル、及び700から750マイクロメートルの範囲にある。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態において、繊維壁厚は、250から350マイクロメートルの範囲にある。
【0033】
本発明のさらに別の実施形態において、外側及び内側スキン層の厚さは、1.7から2μmの範囲にある。
【0034】
本発明のさらに別の実施形態において、100NTU以下の供給水からの、ネフェロ分析濁度単位(Nephelometric Turbidity Unit、NTU)低下百分率は、98〜99.5%の範囲にある。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態において、前記膜のバクテリア減少log値は、4から6の範囲にある。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態において、分画分子量(molecular weight cut−off、MWCO)は、ポリエチレングリコールの分離に基づき、20から50kDaの範囲にある。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態において、純水流束は、80から250l/m.hの範囲にあり、破裂圧力は、45から50psiの範囲にあり、流束回復率(relux recovery ratio)は、80から95の範囲にあり、また、20kDaのポリエチレングリコールの分離効率は、60から90の範囲にある。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態において、純水透過性は、20から25psiで、50〜200リットル/m.hrの範囲にある。
【0039】
別の実施形態において、高流束の中空繊維限外濾過ポリマー膜の調製方法は、
・1400から1600rpmの範囲の速度での一定の撹拌下に、80から100℃の範囲の温度で、3から4時間の範囲の時間、19〜20%w/wのポリスルホン、2〜5%w/wのポリビニルピロリドン及び0.2から0.8%w/wのコポリマーを、70〜80%w/wの極性有機溶媒に溶解して、透明な紡糸ドープを調製するステップと、
・ステップ(i)において得られる紡糸ドープを、2重オリフィス紡糸金口の外側オリフィスを通して、17から20psiの窒素圧で押すことによって30から100g/分の範囲に押出速度を保ち、押し出すステップと、
・水を、2重オリフィス紡糸金口の内側オリフィスを通して、流量を20から50ml/分の範囲に保ち、流すステップと、
・3から4時間の範囲の時間、押出速度を35から42メートル/分の範囲に保つステップと、
・押し出された中空繊維の外側表面を、25から30℃の範囲の温度に保たれた水浴中でゲル化させ、その後、水で洗い、4から5時間の範囲の時間、メタノールに浸漬して、中空繊維限外濾過ポリマー膜を得るステップと
を含む。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態において、用いられるコポリマーは、ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)、又は陽イオン交換樹脂(CXR)としてのスルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーから選択される。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態において、用いられる有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)又はジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される。
【0042】
本発明のさらに別の実施形態において、膜は、1バッチあたり3000から10,800メートルの長さの生産率で紡糸された。
【0043】
本発明のさらに別の実施形態において、水濾過ユニットが、上記中空繊維限外濾過膜を用い、製造された。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態において、簡単で、小型で安価であり、約3メートルの高さの高架タンクからの蛇口に取り付けられた時、電気を必要とせずに150〜300ml/minの生産水を生産する、水濾過ユニットが製造された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】典型的な中空繊維紡糸ユニットの概略図である。中空繊維紡糸ユニットの詳細は、図1に概略的に示されている。HF紡糸ラインは、i)ポリマー溶液タンク、ii)計量ポンプ、iii)溶液安定化容器、iv)環状紡糸金口、v)ゲル化浴、vi)繊維延伸ロール、及びvii)繊維巻取りロール、からなる。
図2】中空繊維膜に基づくユースポイント(POU)水浄化デバイスを示す写真である。
図3】それらのモルホロジーを示す、中空繊維の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)、ポリスルホン+ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)及びポリスルホン+イオン交換樹脂(スルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)のブレンドから調製される、飲用水の浄化及び水の再利用のための中空繊維膜の開発に関する。この膜は、汚染水から、微生物、濁りなどを物理的に排除することによって、安全な飲用水を生産できる。ブレンド中空繊維膜は、ポリスルホン又はポリ(アクリロニトリル−メタクリル酸)から製造される繊維に比べて、相対的に、より柔軟であり、取り扱い易く、耐久性があり、より耐ファウリング性があり、高流束である。分離効率における向上は、より小さい細孔径及び表面電荷を有する、酸基により表面修飾されたブレンド膜によって実現できる。ここで開発されたこのような中空繊維膜は、簡単で、小型で、安価であり、電気を必要としない、ユースポイント水濾過ユニットとして利用できる。他の注目すべき特徴は、i)膜は、柔軟な作業設計及び間欠的な洗浄により膜の寿命を延ばすために、外→内、又は内→外方式のいずれでも機能するように、内側及び外側表面の両方に活性スキン層を有する;(ii)膜は、2層スポンジ微細構造を有し、その構造の各々の層は、付加的強度及び高流束のために、図3に示されるように、マクロボイド(macrovoid)を含むスポンジ層によるクッションを備える高密度のスキン層を含む。
【0047】
開発された膜は、汚染水から効果的に病原体及び他のバクテリアを阻止すると同時に、水は通過させて、生物学的に純粋な飲用水を生産する細孔径を有する活性層を有する。本発明は、望ましい速度で、すなわち50〜200リットル/m.hの速度で、生物学的に純粋な水を送り出す中空繊維限外濾過膜を提供する。流束及び阻止係数に関する膜の性能は、ポリマー材料の種類及び表面特性に依存する。ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)、ポリスルホン+ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)及びポリスルホン+イオン交換樹脂(スルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)から調製される、相互貫入構造を有する中空繊維膜は、耐久性、強度、弾性、平滑性、流束、分離効率、耐ファウリング性の特性に関して、ポリスルホン単独又はコポリマー単独のいずれから製造される膜も凌ぐ利点がある。より小さい細孔径及び表面電荷を有する、酸基により表面修飾されたブレンド膜は、分離効率における、さらなる向上を示す。
【0048】
本発明では、次の用語は、以下の通りに用いられた。
膜流束:1時間当たりに1mの膜を透過する(通り抜ける)水の容積を示す(l/m.h)。
NTU(ネフェロ分析濁度単位):この単位は、液体溶液からの微粒子物質に対する膜の阻止を示すために用いられる。
MWCO(分画分子量)値:ポリマー又は何らかの溶質の溶液を用いて試験した時に、膜が90%を超える阻止を示す、そのポリマー又は溶質の最低分子量を示す。単位はkDa(キロダルトン)又はDa(ダルトン)である。
破裂圧力:ある加圧状態下に、空気/液体を、繊維に通過させた時の、繊維の破裂強度(許容)を示す。
分離効率:様々な溶質の溶液を用いて試験した時に、それらを阻止する膜の効率を示す。
水透過性:膜流束(上に記載された)と同様である。
【0049】
本発明は、さらに、水の浄化及び除菌のための、それによるユースポイント濾過ユニット(水濾過ユニット)に関する。このユニットでは、中空繊維限外濾過膜は、繊維の両末端が、「U」の形のように一緒に同じ側にあり、キャップに固定されるような仕方で、ポッティング接着材により一緒に束ねられ、このキャップホールダ−は、水の入口及び出口への連結部並びにキャップを固定する円柱状容器を有する(図2)。
【0050】
中空繊維膜を用い、簡単で、小型で安価なデバイスであり、電気を必要としないユースポイント水濾過ユニットが開発されて、約3メートルの高さの高架タンクからの蛇口に取り付けられた時、150〜300ml/minの生産水を生産した。
【0051】
中空繊維紡糸ユニットの詳細が、概略的に図1に示されている。HF紡糸ラインは、i)ポリマー溶液タンク、ii)計量ポンプ、iii)溶液安定化容器、iv)環状紡糸金口、v)ゲル化浴、vi)繊維延伸ロール、及びvii)繊維巻取りロール、からなる。
【0052】
中空繊維紡糸方法において、ポリマー溶液は、最初、清浄で乾燥したポリマー溶液タンクに移され、次に、このタンクは、窒素ガスシリンダーに接続された。ポリマー溶液は、約20psiの窒素圧で、ポンプに向かって押され、次には、ポンプが、溶液を2重オリフィス紡糸金口(これは、0.5、1.0、1.5mmの環状の穴(hole)を有する)に送り出す。ポリマー溶液は、33〜35g/minの速度で外側オリフィスを通して押し出され、同時に、RO水が、24〜25ml/minの速度で、紡糸金口の中央オリフィスを通して流された。これは、結果として、ポリマー溶液の相転換方法(理由;水はポリマーに対する非溶媒である)によって、繊維の内側に内孔(lumen)を形成する。中空繊維膜の外側表面は、25℃の水浴における相転換方法によってゲル化させた。4kgのポリマー溶液バッチで、紡糸は、約100分間続き、こうして、3300〜3500mの長さの中空繊維を製造した。次いで、中空繊維は、水で十分に洗われ、メタノール中に2時間浸漬された。こうして得られた中空繊維は、10%のグリセロール及び1%のホルマリンを含有するRO水中で保存された。
【0053】
【表1】
【0054】
上の表において、ポリスルホン膜は、低い水流束を示すが、いくらか大きい分離効率を示し、PANMA膜は、非常に大きな水流束を示すが、低い分離効率を示すことを、データが示す。PSF−PANMA及びPSF−CXRのブレンド膜は、高い阻止、さらには、PSF単独より大きいがPANMAよりいくらか小さい流束を示す。その上、これらの膜は、また、PSF単独に比べて、より高い耐ファウリング性も示す。
【実施例】
【0055】
これらの例は、例示として与えられており、そのため、これらは、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0056】
(例1)
(ポリスルホンのみから調製されるUF膜)
ポリスルホン(20%、w/w)及びポリビニルピロリドン(2%、w/w)の混合物を、80℃の温度で4時間、1400rpmの一定の撹拌速度下に、ジメチルホルムアミド(78%、w/w)に溶解して、透明な紡糸ドープを調製した。紡糸ドープを、窒素環境下に、2重オリフィス紡糸金口を通して押し出した。25ml/分の速度で紡糸金口の内側ノズルを通して流した水が、ポリスルホン中空繊維の内側部分に相転換を引き起こすことによって、穴形成剤として働く。押出速度は、4時間の間、35メートル/分に保ち、押し出された中空繊維の外側表面もまた、23℃の温度に保った水浴中でゲル化させた。9Lのドープ溶液からこうして得た8400mの長さの中空繊維は、水で十分に洗い、メタノール中に4時間浸漬した。次いで、中空繊維は、10%のグリセロール及び1%のホルマリンを含有するRO水中に保存した。表2は、中空繊維の特徴及び性能を示す。
【表2】
【0057】
(例2)
(ポリスルホンのみから調製されるUF膜)
ポリスルホン(22%、w/w)及びポリビニルピロリドン(2%、w/w)の混合物を、80℃の温度で4時間、1400rpmの一定の撹拌下に、ジメチルホルムアミド(76%、w/w)に溶解して、透明な紡糸ドープを調製した。紡糸ドープを、窒素環境下に、2重オリフィス紡糸金口を通して押し出した。25ml/分の速度で紡糸金口の内側ノズルを通して流した水が、ポリスルホン中空繊維の内側部分に相転換を引き起こすことによって、内孔形成剤として働く。押出速度は、2時間の間、35メートル/分に保ち、押し出された中空繊維の外側表面もまた、25℃の温度に保った水浴中でゲル化させた。4.5Lのドープ溶液からこうして得た4200mの長さの中空繊維は、水で十分に洗い、メタノール中に4時間浸漬した。次いで、中空繊維は、10%のグリセロール及び1%のホルマリンを含有するRO水中に保存した。表3は、中空繊維の特徴及び性能を示す。
【表3】
【0058】
(例3)
(ポリスルホンのみから調製されるUF膜)
ポリスルホン(24%、w/w)及びポリビニルピロリドン(4%、w/w)の混合物を、80℃の温度で4時間、1400rpmの一定の撹拌下に、ジメチルホルムアミド(72%、w/w)に溶解して、透明な紡糸ドープを調製した。紡糸ドープを、窒素環境下に、2重オリフィス紡糸金口を通して押し出した。25ml/分の速度で紡糸金口の内側ノズルを通して流した水が、ポリスルホン中空繊維の内側部分に相転換を引き起こすことによって、穴形成剤として働く。押出速度は、1時間の間、35メートル/分に保ち、押し出された中空繊維の外側表面もまた、27℃の温度に保った水浴中でゲル化させた。2Lのドープ溶液からこうして得た2100mの長さの中空繊維は、水で十分に洗い、メタノール中に4時間浸漬した。次いで、中空繊維は、10%のグリセロール及び1%のホルマリンを含有するRO水中に保存した。表4は、中空繊維の特徴及び性能を示す。
【表4】
【0059】
(例4)
(ポリスルホンのみから調製されるUF膜)
ポリスルホン(24%、w/w)及びポリビニルピロリドン(8%、w/w)の混合物を、80℃の温度で4時間、1400rpmの一定の撹拌下に、ジメチルホルムアミド(68%、w/w)に溶解して、透明な紡糸ドープを調製した。紡糸ドープを、窒素環境下に、2重オリフィス紡糸金口を通して押し出した。25ml/分の速度で紡糸金口の内側ノズルを通して流した水が、ポリスルホン中空繊維の内側部分に相転換を引き起こすことによって、穴形成剤として働く。押出速度は、1時間の間、35メートル/分に保ち、押し出された中空繊維の外側表面もまた、25℃の温度に保った水浴中でゲル化させた。2Lのドープ溶液からこうして得た2100mの長さの中空繊維は、水で十分に洗い、メタノール中に4時間浸漬した。次いで、中空繊維は、10%のグリセロール及び1%のホルマリンを含有するRO水中に保存した。表5は、中空繊維の特徴及び性能を示す。
【表5】
【0060】
(例5)
(ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)のみから調製されるUF膜)
ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)(18%、w/w)の混合物を、80℃の温度で4時間、1600rpmの一定の撹拌下に、ジメチルホルムアミド(82%、w/w)に溶解して、透明な紡糸ドープを調製した。紡糸ドープを、窒素環境下に、2重オリフィス紡糸金口を通して押し出した。25ml/分の速度で紡糸金口の内側ノズルを通して流した水が、ポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)中空繊維の内側部分に相転換を引き起こすことによって、穴形成剤として働く。押出速度は、4時間の間、30メートル/分に保ち、押し出された中空繊維の外側表面もまた、25℃の温度に保った水浴中でゲル化させた。7.5Lのドープ溶液からこうして得た7200mの長さの中空繊維は、水で十分に洗い、メタノール中に4時間浸漬した。次いで、中空繊維は、10%のグリセロール及び1%のホルマリンを含有するRO水中に保存した。表6は、中空繊維の特徴及び性能を示す。
【表6】
【0061】
(例6)
(ポリスルホンとポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)とのブレンドから調製されるUF膜)
ポリスルホン(19.5%、w/w)及びポリビニルピロリドン(2%、w/w)及びポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)(0.5%、w/w)の混合物を、80℃の温度で4時間、1400rpmの一定の撹拌速度下に、ジメチルホルムアミド(78%、w/w)に溶解して、透明な紡糸ドープを調製した。紡糸ドープを、窒素環境下に、2重オリフィス紡糸金口を通して押し出した。40ml/分の速度で紡糸金口の内側ノズルを通して流した水が、ポリスルホン中空繊維の内側部分に相転換を引き起こすことによって、穴形成剤として働く。押出速度は、4時間の間、40メートル/分に保ち、押し出された中空繊維の外側表面もまた、27℃の温度に保った水浴中でゲル化させた。10Lのドープ溶液からこうして得た9600mの長さの中空繊維は、水で十分に洗い、メタノール中に4時間浸漬した。こうして得た中空繊維は、10%のグリセロール及び1%のホルマリンを含有するRO水中に保存した。繊維の特徴を表7に示す。
【表7】
【0062】
(例7)
(ポリスルホンとポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)とのブレンドから調製されるUF膜)
ポリスルホン(19.2%、w/w)及びポリビニルピロリドン(2%、w/w)及びポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)(0.8%、w/w)の混合物を、80℃の温度で4時間、1400rpmの一定の撹拌速度下に、ジメチルホルムアミド(78%、w/w)に溶解して、透明な紡糸ドープを調製した。紡糸ドープを、窒素環境下に、2重オリフィス紡糸金口を通して押し出した。40ml/分の速度で紡糸金口の内側ノズルを通して流した水が、ポリスルホン中空繊維の内側部分に相転換を引き起こすことによって、穴形成剤として働く。押出速度は、4時間の間、35メートル/分に保ち、押し出された中空繊維の外側表面もまた、25℃の温度に保った水浴中でゲル化させた。9Lのドープ溶液からこうして得た8400mの長さの中空繊維は、水で十分に洗い、メタノール中に4時間浸漬した。次いで、中空繊維は、10%のグリセロール及び1%のホルマリンを含有するRO水中に保存した。表8は、中空繊維の特徴及び性能を示す。
【表8】
【0063】
(例8)
(ポリスルホンとポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)のブレンドから調製されるUF膜)
ポリスルホン(19.8%、w/w)及びポリビニルピロリドン(2%、w/w)及びポリ(アクリロニトリル−co−メタクリル酸)(0.2%、w/w)の混合物を、80℃の温度で4時間、1400rpmの一定の撹拌速度下に、ジメチルホルムアミド(78%、w/w)に溶解して、透明な紡糸ドープを調製した。紡糸ドープを、窒素環境下に、2重オリフィス紡糸金口を通して押し出した。50ml/分の速度で紡糸金口の内側ノズルを通して流した水が、ポリスルホン中空繊維の内側部分に相転換を引き起こすことによって、穴形成剤として働く。押出速度は、4時間の間、42メートル/分に保ち、押し出された中空繊維の外側表面もまた、27℃の温度に保った水浴中でゲル化させた。11.5Lのドープ溶液からこうして得た10080mの長さの中空繊維は、水で十分に洗い、メタノール中に4時間浸漬した。次いで、中空繊維は、10%のグリセロール及び1%のホルマリンを含有するRO水中に保存した。表9は、中空繊維の特徴及び性能を示す。
【表9】
【0064】
(例9)
(ポリスルホンと陽イオン交換樹脂(スルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)のブレンドから調製されるUF膜)
ポリスルホン(20%、w/w)及びポリビニルピロリドン(2%、w/w)及び陽イオン交換樹脂(スルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)(0.4%、w/w)の混合物を、80℃の温度で4時間、1400rpmの一定の撹拌速度下に、ジメチルホルムアミド(77.6%、w/w)に溶解して、透明な紡糸ドープを調製した。紡糸ドープを、窒素環境下に、2重オリフィス紡糸金口を通して押し出した。25ml/分の速度で紡糸金口の内側ノズルを通して流した水が、ポリスルホン中空繊維の内側部分に相転換を引き起こすことによって、穴形成剤として働く。押出速度は、4時間の間、35メートル/分に保ち、押し出された中空繊維の外側表面もまた、27℃の温度に保った水浴中でゲル化させた。9Lのドープ溶液からこうして得た8400mの長さの中空繊維は、水で十分に洗い、メタノール中に4時間浸漬した。次いで、中空繊維は、10%のグリセロール及び1%のホルマリンを含有するRO水中に保存した。表10は、中空繊維の特徴及び性能を示す。
【表10】
【0065】
(例10)
(ポリスルホンと陽イオン交換樹脂(スルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)のブレンドから調製されるUF膜)
ポリスルホン(20%、w/w)及びポリビニルピロリドン(2%、w/w)及び陽イオン交換樹脂(スルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)(0.6%、w/w)の混合物を、80℃の温度で4時間、1400rpmの一定の撹拌速度下に、ジメチルホルムアミド(77.4%、w/w)に溶解して、透明な紡糸ドープを調製した。紡糸ドープを、窒素環境下に、2重オリフィス紡糸金口を通して押し出した。25ml/分の速度で紡糸金口の内側ノズルを通して流した水が、ポリスルホン中空繊維の内側部分に相転換を引き起こすことによって、穴形成剤として働く。押出速度は、4時間の間、35メートル/分に保ち、押し出された中空繊維の外側表面もまた、25℃の温度に保った水浴中でゲル化させた。9Lのドープ溶液からこうして得た8400mの長さの中空繊維は、水で十分に洗い、メタノール中に4時間浸漬した。次いで、中空繊維は、10%のグリセロール及び1%のホルマリンを含有するRO水中に保存した。表11は、中空繊維の特徴及び性能を示す。
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0066】
中空繊維膜は、12000から91000Daの範囲の溶質分画値を示し、様々な種類の溶液の処理に有用である。それらは、4〜6のlogバクテリア阻止を示し、有害な病原体の除去のために、飲用水の除菌に有用である。中空繊維におけるメタクリル酸官能基の存在は、負電荷、さらには膜の親水性を増し、このため、水及び他の汚染水の処理に耐ファウリング性を付与する。繊維は、ユースポイント家庭用水浄化ユニット、さらには大規模な浄化プラントに使用できる。親水性官能基の存在のせいで、繊維は、10〜25の運転圧力で、非常に大きな水流束を示すので、それらは、約4メートルの高さの高架タンクからの水の蛇口に直接連結し、こうしてポンプ及び電気を不要にすることによって、家庭用ユースポイントシステムに適したものとなる。
図1
図2
図3