(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933581
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】船壁のための封止障壁
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20160602BHJP
F17C 3/04 20060101ALI20160602BHJP
B65D 90/04 20060101ALI20160602BHJP
B65D 90/02 20060101ALI20160602BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
F17C13/00 302E
F17C3/04 A
B65D90/04 E
B65D90/02 B
B63B25/16 F
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-541399(P2013-541399)
(86)(22)【出願日】2011年10月21日
(65)【公表番号】特表2014-503762(P2014-503762A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】FR2011052470
(87)【国際公開番号】WO2012072906
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年9月26日
(31)【優先権主張番号】1059952
(32)【優先日】2010年12月1日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】カンレ、ジェリー
(72)【発明者】
【氏名】マンジェ、アモリー
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−020897(JP,A)
【文献】
特開平08−026381(JP,A)
【文献】
特開2010−048421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
B63B 25/16
B65D 90/02
B65D 90/04
F17C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水障壁のための平坦な支持面を有する熱絶縁障壁(5)の上に、金属薄片(8)と、前記支持面に接続され前記支持面から突出した細長い溶接フランジ(9)と、を交互に備えた繰り返し構造を設けて、前記溶接フランジ(9)が前記金属薄片(8)の長さ方向の少なくとも一部と平行に走り、前記金属薄片の前記支持面に対して上向きの上向き側縁部(20)が隣接する前記溶接フランジに接して設けられるステップと、
前記溶接フランジの両側に設けられた第一と第二の隣接する前記金属薄片のそれぞれに対して、前記金属薄片の第一長手方向部分に沿って前記支持面と平行な直線状溶接継ぎ目(26、27)を用いて、前記金属薄片の前記上向き側縁部(20)を溶接フランジに対して防水態様で溶接し、前記直線状溶接継ぎ目(26、27)は毎度それぞれの前記金属薄片の前記上向き側縁部の上部縁コーナー(32、41、43)の下に設けるステップと、
前記上向き側縁部の前記上部縁コーナー(32、41、43)の方向に前記支持面に対して逸脱して、前記上向き側縁部の前記上部縁コーナー(32、41、43)まで溶接継ぎ目の端部(28、29)を形成するように、前記溶接継ぎ目(26)を毎度連続させるステップと、
前記第一の金属薄片の上向き側縁部(20)の上部縁コーナーと前記金属薄片の第二長手方向部分に沿った隣接する前記第二の金属薄片の上向き側縁部(20)の上部縁コーナーとの間に防水態様の縁コーナー溶接継ぎ目(31)を形成して、縁コーナー溶接継ぎ目(31)が防水態様で二つの前記金属薄片のそれぞれの前記溶接継ぎ目(26)の前記端部(28、29)と交わるようにしたステップとで構成された、防水熱絶縁タンクの壁に防水障壁(6)を形成する方法。
【請求項2】
前記直線状溶接継ぎ目が、前記上向き側縁部(20)に沿って2つの隣接する前記金属薄片(8)の上に載って移動する溶接機を用いて形成され、前記溶接機は回転式電極車輪と前記上向き側縁部(20)を把持可能な駆動ロールを有し、前記駆動ロールは前記溶接機の金属薄片と垂直な進行方向前方に向かって傾いた軸を有していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶接継ぎ目の端部が、前記溶接機の軌道が前記上向き側縁部の前記上部縁コーナー(32、41、43)の方向から逸脱することによって形成されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記軌道が前記上向き側縁部の前記上部縁コーナーの方向から逸脱するために、前記溶接機が金属薄片に設けられた傾斜面(40)に沿って走行することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
溶接機の電極が前記上向き側縁部の前記上部縁コーナーに達した時に、電極間の間隔を維持するために、前記上部縁コーナーの上に保護板(37、38)が設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶接継ぎ目の前記端部(28、29)が前記上向き側縁部の前記上部縁コーナー(32)の下で止まり、そして前記溶接継ぎ目の最上部の上に位置する前記上向き側縁部の上部(41、43)が除去されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記上向き側縁部の前記上部は、前記金属薄片の局部切断(41)によって除去され、前記溶接継ぎ目の最上部は、前記局部切断の底部に実質的に位置することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記溶接継ぎ目の前記端部は、前記溶接フランジ(9)の長手方向端部(11)の前方に設けられ、
前記上向き側縁部の前記上部縁コーナー(32)を越えて延在する前記溶接フランジの上部(25、33)が、前記溶接継ぎ目の前記端部(28、29)が形成された後に除去され、前記溶接フランジの前記上部(25、33)が、前記溶接継ぎ目の前記端部(28、29)と前記溶接フランジの前記長手方向端部(11)の間に位置する長さにわたって除去されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
耐力壁(1)を備えた耐力構造の内側に設けられた防水熱絶縁タンクであって、前記タンクは、前記耐力壁に沿って設けられたタンク壁を備え、前記タンク壁は防水障壁(6)と前記防水障壁と前記耐力壁の間に設けられた熱絶縁障壁(5)とを備え、前記熱絶縁障壁は前記防水障壁のための平坦な支持面を有し、前記防水障壁(6)は、前記支持面上に設けられた金属薄片と、前記支持面に接続され前記支持面から突出し前記金属薄片の長さ方向の少なくとも一部と平行に走る細長い溶接フランジ(9)と、を交互に備えた繰り返し構造を有し、前記金属薄片が、隣接する前記溶接フランジに接して設けられた前記支持面に対して上向きの上向き側縁部(20)を備え、
前記溶接フランジの両側に設けられた二枚の前記金属薄片のそれぞれが、
それぞれの前記金属薄片の前記上向き側縁部(20)が前記支持面と平行な直線状溶接継ぎ目(26、27)によって防水態様で前記溶接フランジ(9)に溶接される第一長手方向部分を備え、
前記直線状溶接継ぎ目(26、27)のそれぞれは、それぞれの前記金属薄片の前記上向き側縁部の上部縁コーナー(32、41、43)の下に設けられ、
前記溶接フランジの両側に設けられた二枚の前記金属薄片のそれぞれが、さらに
前記上向き側縁部(20)が縁コーナー溶接(31)によって防水態様で隣接する金属薄片の上向き側縁部(20)に溶接される第二長手方向部分と、
前記第二長手方向部分の前記縁コーナー溶接(31)と前記第一長手方向部分の直線状溶接継ぎ目(26,27)が防水態様で接続される中間部分と、を備え、
前記それぞれの金属薄片の前記中間部分において、前記溶接継ぎ目が、上部縁コーナー(32,41、43)の方向に前記支持面に対して逸脱して、前記上向き側縁部(20)の前記上部縁コーナー(32,41、43)と交わる端部(28、29)を有し、
前記縁コーナー溶接(31)が二枚の前記金属薄片のそれぞれの前記溶接継ぎ目の前記端部(28、29)と防水態様の接合を形成するように二枚の前記金属薄片のそれぞれの前記中間部分に連続していることを特徴とするタンク。
【請求項10】
前記金属薄片の前記上向き側縁部(20)の前記上部縁コーナー(32,43)が、前記金属薄片の前記中間部分において直線状で前記支持面と平行であることを特徴とする請求項9に記載のタンク。
【請求項11】
前記第二長手方向部分における前記上向き側縁部(20)の名目上の高さ(32)が、前記第一長手方向部分における前記上向き側縁部(20)の高さと等しいことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のタンク。
【請求項12】
前記第二長手方向部分における前記上向き側縁部(20)の名目上の高さ(43)が、前記第一長手方向部分における前記上向き側縁部(20)の高さより低いことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のタンク。
【請求項13】
前記上向き縁部の前記上部縁コーナーを低くするために、前記上向き側縁部が前記金属薄片の前記中間部分に切断部分(41)を有し、
前記縁コーナー溶接が、前記切断部分の底部(42)で前記溶接継ぎ目の逸脱した端部と交わることを特徴とする請求項9に記載のタンク。
【請求項14】
前記タンクが、引張荷重に対向するための、前記耐力壁(1)の一端に沿って設けられ、前記耐力構造と接続された保持用補強部材(15)をさらに備え、
前記保持用補強部材が、前記耐力壁から幾分離れた前記タンクの壁の境界領域に設けられた平坦な接続部材(15)を備え、前記熱絶縁障壁(5)が前記平坦な接続部材と耐力壁(1)の間を通過することを許容し、
前記金属薄片(12)が、前記タンクの前記壁の前記境界領域(10)で前記接続部材と溶接される長手方向端縁部(13)を備え、
前記金属薄片の前記第二長手方向部分が、前記長手方向端縁部と前記溶接フランジ(9)の一端との間に延在する境界部分(12)を備え、
前記金属薄片(12)の前記境界部分の前記上向き側縁部(16)の前記上部縁コーナー(17)が前記長手方向端縁部から前記第二長手方向部分の名目上の高さ(32、43)に向かって漸進的に立ち上がっていることを特徴とする請求項9ないし請求項13のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項15】
二重船体構造(72)と前記二重船体構造に設けられた請求項9ないし請求項14のいずれか一項に記載のタンク(71)とを有する、冷たい液状産物を輸送するための船(70)。
【請求項16】
冷たい液状産物が、浮遊式の又は海岸基地所属の貯蔵設備(77)から船のタンク(71)に向かって、又は船のタンク(71)から浮遊式の又は海岸基地所属の貯蔵設備(77)に向かって絶縁パイプ(73、79、76、81)を通って運ばれることを特徴とする前記船(70)に積荷する又は前記船(70)から出荷するための請求項15に記載の船(70)の使用。
【請求項17】
冷たい液状産物を輸送するためのシステムであって、
請求項15に記載の船(70)と、
前記船の船体に据え付けられたタンク(71)と浮遊式の又は海岸基地所属の貯蔵設備(77)とを接続するように設けられた絶縁パイプ(73、79、76、81)と、
浮遊式の又は海岸基地所属の貯蔵設備から船のタンクに向かって、又は船のタンクから浮遊式の又は海岸基地所属の貯蔵設備に向かって前記絶縁パイプを通って冷たい液状産物の流れを駆動するためのポンプと、を備えていることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に熱い液体や冷たい液体の貯蔵と輸送のための防水熱絶縁タンクの分野に関し、特に低温液化ガスタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば仏国特許出願公開第2798358号明細書(FR−A−2798358)、仏国特許出願公開第2709725号明細書(FR−A−2709725)、仏国特許出願公開第2549575号明細書(FR−A−2549575)、仏国特許出願公開第2398961号明細書(FR−A−2398961)などの文献には、各防水障壁、特にタンクに収容された産物と接触する第一防水障壁が、溶接フランジの各辺で変形可能な蛇腹を形成する上向き(turned−up)縁部によって防水態様で互いに接合された薄い金属薄板からなる低温液化ガスの貯蔵や輸送用タンクが開示されている。
【0003】
溶接フランジの全長にわたって上向き縁部によって金属薄板を接合した防水溶接継ぎ目を形成するために、例えば仏国特許出願公開第2172837号明細書(FR−A−2172837)や仏国特許出願公開第2140716号明細書(FR−A−2140716)に記載されているような電気溶接機を用いることができる。比較的重いこのような溶接機は、金属薄板に対して保持され押圧されながら溶接ラインに沿って移動し、金属薄板の上向き縁部が共に溶接される。この保持は、機械の駆動ロールの軸を機械の進行方向前面に向かって傾けることで得られる。このようにして、金属薄板層に対して常にしっかりと押圧されながら、溶接機はタンクのすべての壁に沿って溶接することができ、たとえ垂直な壁や屋根であっても溶接し、上向き縁部は共に溶接される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の種類のタンクにおいて、例えばタンクのコーナー近くの壁の端部など、金属薄板の上向き縁部と溶接フランジの間に溶接継ぎ目を形成する溶接機の進行が妨げられる領域が存在する。熱収縮や海上での耐力構造の変形及び/又は例えば波による海上での貨物の移動によって生じる大きな引張応力に防水障壁が晒されることから、このような領域において、金属膜の連続性を確保する問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施例によれば、本発明は防水熱絶縁タンクの壁、特にタンクの底壁に防水障壁を形成する方法を提供し、この方法は、防水障壁のための平坦な支持面を有する熱絶縁障壁の上に、金属薄片と、前記支持面に接続され前記支持面から突出した細長い溶接フランジと、を交互に備えた繰り返し構造を設けて、前記溶接フランジが前記金属薄片の長さ方向の少なくとも一部と平行に走り、前記金属薄片の前記支持面に対して上向きの上向き側縁部が隣接する前記溶接フランジに接して設けられるステップと、前記金属薄片の第一長手方向部分に沿って前記支持面と平行な直線状溶接継ぎ目を用いて、前記上向き側縁部を溶接フランジに対して防水態様で溶接するステップと、前記上向き側縁部の上部縁コーナーの方向に前記支持面に対して逸脱して、前記上向き側縁部の前記上部縁コーナーまで溶接継ぎ目の端部を形成するように、前記直線状溶接継ぎ目を延長するステップと、前記金属薄片の上向き側縁部の上部縁コーナーと前記金属薄片の第二長手方向部分に沿って隣接する前記金属薄片の上向き側縁部の上部縁コーナーとの間に防水態様の縁コーナー溶接継ぎ目を形成して、縁コーナー溶接継ぎ目が防水態様で前記溶接継ぎ目の前記端部と交わるようにしたステップとで構成されている。
【0006】
この方法の実施例は、以下の特徴の一つ以上を備えている。
【0007】
一つの実施例によれば、前記直線状溶接継ぎ目が、前記上向き側縁部に沿って2つの隣接する前記金属薄片の上に載って移動する溶接機を用いて形成され、前記溶接機は回転式電極車輪と前記上向き側縁部を把持可能な駆動ロールを有し、前記駆動ロールは前記溶接機の金属薄片と垂直な進行方向前方に向かって傾いた軸を有している。
【0008】
一つの実施例によれば、前記溶接継ぎ目の端部が、前記溶接機の軌道が前記上向き側縁部の前記上部縁コーナー(32、41、43)の方向から逸脱することによって形成される。
【0009】
一つの実施例によれば、前記軌道が前記上向き側縁部の前記上部縁コーナーの方向から逸脱するために、前記溶接機が金属薄片に設けられた傾斜面に沿って走行する。
【0010】
一つの実施例によれば、前記溶接継ぎ目の端部は、前記溶接機が前記上向き側縁部の前記上部縁コーナーの方向にある溶接機のフレームに対して逸脱することによって形成される。そうするために、溶接トーチが搭載された溶接機を用いて、それが溶接機のフレームに対して動くように、例えば枢軸回りに、又は溶接機の進行方向と垂直な軸方向に、又はタンクの壁と垂直な方向にスライドして、動くようになっている。形成方法のこのような実施例は、逸脱した端部を金属薄膜の上向き縁部から機械を切り離すことなく形成することを可能にし、溶接継ぎ目がタンクの垂直壁又は天井にある場合に好ましい。
【0011】
一つの実施例によれば、溶接機の電極が前記上向き側縁部の前記上部縁コーナーに達した時に、電極間の間隔を維持するために、前記上部縁コーナーの上に保護板が設けられている。このような保護板は、二つの隣接する上向き側縁部とその間に介在する溶接フランジの総厚に略等しい厚さを有する。
【0012】
一つの実施例によれば、前記溶接継ぎ目の前記端部が前記上向き側縁部の前記上部縁コーナーの下で止まり、そして前記溶接継ぎ目の最上部の上に位置する前記上向き側縁部の上部が除去される。
【0013】
一つの実施例によれば、前記上向き側縁部の前記上部は、前記金属薄片の局部切断(41)によって除去され、前記溶接継ぎ目の最上部は、前記局部切断の底部に実質的に位置する。このような局部切断は、丸形状を有している。
【0014】
一つの実施例によれば、前記上向き側縁部の前記上部は、前記金属薄片の前記第二長手方向部分に沿って除去される。
【0015】
一つの実施例によれば、前記溶接継ぎ目の前記端部は、前記溶接フランジの長手方向端部の前方に設けられ、前記上向き側縁部の前記上部縁コーナーを越えて延在する前記溶接フランジの上部が、前記溶接継ぎ目の前記端部が形成された後に除去され、前記溶接フランジの前記上部が、前記溶接継ぎ目の前記端部と前記溶接フランジの前記長手方向端部の間に位置する長さにわたって除去される。
【0016】
一つの実施例によれば、前記溶接機の前記電極が前記溶接継ぎ目の前記端部の前記上部縁コーナーに達した時に、前記電極間の間隔を維持するために、それぞれの保護板が前記上向き縁部の前記上部縁コーナー上の前記溶接フランジの各側面に設けられている。例えば、各保護板は前記金属薄片の一つの上向き縁部の厚さに略等しい厚さを有することができる。
【0017】
一つの実施例によれば、本発明は、耐力壁を備えた耐力構造の内側に設けられた防水熱絶縁タンクであって、前記タンクは、前記耐力壁に沿って設けられたタンク壁を備え、前記タンク壁は防水障壁と前記防水障壁と前記耐力壁の間に設けられた熱絶縁障壁とを備え、前記熱絶縁障壁は前記防水障壁のための平坦な支持面を有し、前記防水障壁は、前記支持面上に設けられた金属薄片と、前記支持面に接続され前記支持面から突出し少なくとも前記金属薄片の長さ方向の一部と平行に走る細長い溶接フランジと、を交互に備えた繰り返し構造を有し、前記金属薄片が隣接する前記溶接フランジに対向して設けられた前記支持面に対して上向き側縁部を備え、前記金属薄片の一つが、前記上向き側縁部が前記支持面と平行な直線状溶接継ぎ目によって防水態様で前記溶接フランジに溶接される第一長手方向部分と、前記上向き側縁部が縁コーナー溶接によって防水態様で隣接する金属薄片の上向き側縁部に溶接される第二長手方向部分と、前記第二長手方向部分の前記縁コーナー溶接と前記第一長手方向部分の直線状溶接継ぎ目が防水態様で接続される中間部分と、を備え、前記溶接継ぎ目が、上部縁コーナーの方向に前記支持面に対して逸脱して、前記金属薄片の前記中間部分において前記上向き側縁部の前記上部縁コーナーと交わる端部を有し、前記縁コーナー溶接が前記溶接継ぎ目の前記端部と防水態様の接合を形成するように前記中間部分に連続していることを特徴とするタンクを提供する。
【0018】
一つの実施例によれば、前記金属薄片の前記上向き側縁部の前記上部縁コーナーが、前記金属薄片の前記中間部分において直線状で前記支持面と平行である。
【0019】
一つの実施例によれば、前記第二長手方向部分における前記上向き側縁部の名目上の高さが、前記第一長手方向部分における前記上向き側縁部の高さと等しい。
【0020】
別の実施例によれば、前記第二長手方向部分における前記上向き側縁部の名目上の高さが、前記第一長手方向部分における前記上向き側縁部の高さより低い。
【0021】
一つの実施例によれば、前記上向き縁部の前記上部縁コーナーを低くするために、前記上向き側縁部が前記金属薄片の前記中間部分に切断部分を有し、前記縁コーナー溶接が、前記切断部分の底部で前記溶接継ぎ目の逸脱した端部と交わる。
【0022】
タンクのコーナー構造を形成するための例として適切な一つの実施例によれば、前記タンクが、引張荷重に対向するための、前記耐力壁の一端に沿って設けられ、前記耐力構造と接続された保持用補強部材をさらに備え、前記保持用補強部材が、前記耐力壁から幾分離れた前記タンクの壁の境界領域に設けられた平坦な接続部材を備え、前記熱絶縁障壁が前記平坦な接続部材と耐力壁の間を通過することを許容し、前記金属薄片が、前記タンクの前記壁の前記境界領域で前記接続部材と溶接される長手方向端縁部を備え、前記金属薄片の前記第二長手方向部分が、前記長手方向端縁部と前記溶接フランジの一端との間に延在する境界部分を備え、前記金属薄片の前記境界部分の前記上向き側縁部の前記上部縁コーナーが前記長手方向端縁部から前記第二長手方向部分の名目上の高さに向かって漸進的に立ち上がっている。
【0023】
一つの実施例によれば、前記金属薄片と前記溶接フランジは、インバー材(invar)で作られている。
【0024】
このようなタンクは、例えばLNGを貯蔵するための、海岸基地所属の貯蔵設備の一部を形成し、又は特にメタン・タンカー、浮遊式貯蔵と再ガス化ユニット(FSRU)、浮遊式生産貯蔵出荷設備(FPSO)等の、海岸線近傍又は深海上の浮遊構造に据付けられる。
【0025】
一つの実施例によれば、冷たい液状産物を輸送するための船が、二重船体構造と前記二重船体構造に設けられた前述のタンクとを備えている。
【0026】
一つの実施例によれば、本発明は、冷たい液状産物が、浮遊式の又は海岸基地所属の貯蔵設備から船のタンクに向かって、又は船のタンクから浮遊式の又は海岸基地所属の貯蔵設備に向かって絶縁パイプを通って運ばれることを特徴とする前述の船に積荷する又は船から荷降ろしするための方法を提供する。
【0027】
一つの実施例によれば、本発明は、冷たい液状産物を輸送するためのシステムであって、前述の船と、前記船の船体に据え付けられたタンクと浮遊式の又は海岸基地所属の貯蔵設備とを接続するように設けられた絶縁パイプと、浮遊式の又は海岸基地所属の貯蔵設備から船のタンクに向かって、又は船のタンクから浮遊式の又は海岸基地所属の貯蔵設備に向かって前記絶縁パイプを通って冷たい液状産物の流れを駆動するためのポンプと、を備えていることを特徴とするシステムも提供する。
【0028】
本発明の基本的な発想は、一方が防水障壁の支持面と平行に進む機械によって溶接継ぎ目が形成可能な領域と、他方が上向き縁部の縁コーナーに防水態様の溶接継ぎ目が形成される領域との間の上向き側縁部を備えた金属板からなる薄膜の防水性を形成又は再確立することである。本発明の基本的なもう一つの発想は、金属薄膜の堅牢性と耐久性を維持しながら、同時にこの防水性を形成することである。本発明の一定の様相は、回避するように設計された経路を追従するように溶接機を駆動する発想から導出されている。
【0029】
限定されない添付図面を参照して与えられる本発明の幾つかの特定の実施例の以下の記述によって、本発明がより理解され、他の目的や詳細や特徴や長所が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施例が利用可能な防水熱絶縁タンクを切り落とした部分斜視図である。
【
図2】
図1のII−IIの箇所のタンク壁の防水薄膜の詳細を示す平面図である。
【
図3】第一実施例に係る防水薄膜を形成する方法の連続的な工程を示す図である。
【
図6】第二実施例に係る防水薄膜を形成する方法の連続的な工程を示す図である。
【
図7】第三実施例に係る防水薄膜を形成する方法の連続的な工程を示す図である。
【
図8】
図1の防水薄膜の端部領域を示す部分斜視図である。
【
図9】防水薄膜の中央領域を示す部分斜視図である。
【
図10】メタン・タンカーの防水熱絶縁タンクとこのタンクへの積荷/降荷のためのターミナルを切り落とした概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、金属薄片と、前記支持面に接続され前記支持面から突出した細長い溶接フランジと、を交互に備えた繰り返し構造を有する防水障壁に関して記載する。前記溶接フランジが少なくとも前記金属薄片の長さ方向の一部と平行に走り、前記金属薄片の前記支持面に対して上向き側縁部が隣接する前記溶接フランジに対向して設けられる。
【0032】
例えば、出願人が販売するNO96タイプのメタン・タンカーのタンクに、このような構造が用いられる。
図1はこのようなタンクの防水絶縁壁の底壁と横壁の間のコーナーを切り落とした部分斜視図である。
【0033】
ここでのタンクの耐力構造は、二重船体構造船の内部船体で構成され、その底壁は参照符号1で示され、その横方向仕切り壁2は、船の内部船体における仕切りを形成する。耐力構造の各壁に対して、タンクの対応する壁は、二次絶縁層3と二次防水障壁4と一次絶縁層5と一次防水障壁6とを連続的に重ねることで形成している。二つの壁のコーナーで、二つの壁の二次防水障壁4と、二つの壁の一次防水障壁6は、四角いチューブ状をして熱収縮や海での船体の変形や貨物の移動による張力荷重を吸収可能な接続リング15によって接続されている。接続リング15の一つの可能な構造は、より詳細には仏国特許出願公開第2549575号明細書(FR−A−2549575)に記載されている。
【0034】
第二及び第一防水障壁4,6は、それぞれインバー製の細長い溶接支持部9と交互に設けられた上向き縁部を備えた、一連の平行なインバー製の条板8で構成されている。溶接支持部9は、それぞれ横たわった絶縁層上で、例えば絶縁材で満たされた箱からなる覆い板に形成された溝7に収容されて保持される。この交互構造は、壁の全表面にわたって形成され、非常に長い長さを伴うことができる。これらの長い長さにわたって、条板の上向き縁部とその間に介在する溶接支持部との間に防水溶接継ぎ目が、導入部で記載した溶接機を用いて壁と平行な直線状の溶接継ぎ目の形状で得られる。
【0035】
タンクの底壁において、コーナー近傍の第二及び第一防水障壁4,6の末端部は、中央部とは異なる態様で形成される。この端部10は
図8でより明確に見ることができ、
図8では一次防水障壁6自身を簡単のために示している。
【0036】
上向き縁部を備えた条板8は、直接は接続リング15と接続されない。一連のインバー製蓋板12がそれらの間に介在する。一枚の蓋板12は、引張荷重と対抗するために接続リング15の一つのフランジと連続的に溶接された端縁部13を有している。蓋板12の上向き縁部16は、複雑な輪郭を有しており、端縁部13から条板8の方向に漸進的に立ち上がる傾斜部17と、条板8の上向き縁部20と等しい高さの水平部18とを備えている。蓋板12は上向き縁部16の上部縁コーナーのところで、互いに連続的に防水態様で突き合わせ溶接されている。この縁部コーナー溶接は、非消耗電極を採用したTIGアーク溶接法を用いて、手作業で形成することができる。
【0037】
蓋板12の上向き縁部16が条板8の上向き縁部20を包み込んだ状態で、蓋板12の縁部13と対向する縁部22が条板8に連続的に防水態様で溶接されて、重なり領域21のところで蓋板12は条板8と接続される。蓋板12の縁コーナーのところの防水溶接継ぎ目は、この領域にまで連続し、そして溶接支持部9の方向に条板8の上向き縁部20の上部縁コーナーに続く。
【0038】
2枚の条板8の間に介在する溶接支持部9は、重なり領域21のところで又はこの領域のわずかに手前で終端する。しかし、終点11から始まるこの溶接支持部9の上部25は平坦で、溶接支持部9の高さが上向き縁部20の高さと等しく、それらの間に防水縁コーナー溶接継ぎ目を形成し易くしている。
【0039】
タンク壁の中央部分全体にわたって、そして端部領域10の近傍に至るまで、条板8の上向き縁部20と溶接支持部9の間の防水接続が、溶接支持部9の両側の上向き縁部20のおよそ中間の高さに延在する直線状溶接継ぎ目26を用いて実施される。これらの溶接継ぎ目26は、防水障壁が載っている支持面に厳密に平行に走っている。なぜなら、これらを実行する溶接機は、この支持面に沿って進み、この支持面にしっかり押圧しているからである。しかし、空間が不足しているので、電極車輪を備えた溶接機は、タンクのコーナーに達する手前で停止なければならない。従って、タンクの中央側に位置する溶接継ぎ目26と蓋板12と重なり領域21に形成された縁コーナー溶接継ぎ目の間に防水接続を確立する必要がある。
【0040】
そうするために、一つの可能な技術は、局所的に溶接継ぎ目の端部28と一致した部分の条板8の上向き縁部20を切断して、それらの上部縁コーナーを溶接継ぎ目26と一致するまで低くすることである。それから、溶接継ぎ目26との連続的な接合が得られるまで縁コーナー溶接継ぎ目をこの切断部の底に連続させることが可能になる。しかし、溶接継ぎ目26が上向き縁部20のおよそ中ほどの高さにあることを考慮すると、この局所的な切断は、応力が集中し、疲労により早期破断しそうな条板8の上向き縁部20のかなり弱い領域を構成する。
【0041】
好ましい技術を、
図2に示す。
図1、8と同じ要素には同じ参照符号を用いている。溶接継ぎ目26の端部は、ここではタンク中央部に形成された継ぎ目から連続する直線部27と、それに続く支持面に対して立ち上がり、上向き縁部20の上部縁コーナー32と交わる又はかすめ通る逸脱部28と、それに続く点30で終端する最終直線部29で構成されている。縁コーナー溶接継ぎ目31は、重なり領域21から溶接継ぎ目の最終直線部29まで延在して、領域35における防水接合をもたらしている。
【0042】
逸脱部
28と最終部29を形成するための一つの可能な技術は、
図8に示すように、上向き縁部20の両側の条板8の上に傾斜面40を設けることで、これにより溶接機はこれら傾斜面に沿って進む。傾斜面40は、得られる溶接継ぎ目の逸脱部28と最終部29と同じ輪郭を有している。
【0043】
図3に、防水障壁の端部10における条板の防水接合方法の第一実施例を示す。
【0044】
第一ステップにおいて、直線部27、逸脱部28、最終部29からなる溶接継ぎ目26が先に述べた溶接機によって、溶接支持部9の上部25が存在する領域に形成される。溶接支持部9は、溶接機が上向き縁部20の上部縁コーナー32に達した時に、溶接機の溶接電極が短絡するのを防止する。第二ステップにおいて、線33で示されるように、溶接継ぎ目の逸脱部28と最終部29に一致させて、溶接支持部9の上部25が平坦化される。これにより、上部25の終点は符号11で示した位置から符号19で示した位置に変化する。第三ステップにおいて、縁コーナー溶接継ぎ目31が溶接継ぎ目の最終部29と交わるまで連続する。
【0045】
図4にこの方法の変形例を示す。第一ステップは、2枚の保護金属板37を用い、溶接支持部9の両側に1枚ずつ配置されて、溶接機がその進行の最後に上向き縁部20から離れても、短絡の危険性無しに電極車輪が溶接支持部9の高さを超えてより長い進行を可能にする。他のステップは、上の場合と変わらない。保護金属板37の厚さは、条板8の厚さにすることができる。
【0046】
図5にこの方法の別の変形例を示す。第一ステップは、溶接支持部9が欠損しているか、すでに平坦化された領域で実施される。上向き縁部20の上部縁コーナー32の上に設けられた保護板38が、逸脱部28の形成の最後のところで、溶接電極を短絡から保護する。保護板38の厚さは、溶接支持部9と2枚の上向き縁部20を組み合わせた厚さにすることができる。
【0047】
図6に、防水障壁の端部10における条板の防水接合方法の第二実施例を示す。
【0048】
第一ステップにおいて、直線部27、逸脱部28、最終部29からなる溶接継ぎ目26が先に述べた溶接機によって形成される。逸脱部28は、ここでは溶接支持部9の上部25の終点11の後ろに形成される。変形例として、
図3に示すように逸脱部28を上部25の存在する位置に形成して、その後平坦化することもできる。溶接継ぎ目26の最終部29は、上向き縁部20の上部縁コーナー32の下に、そこから間隔39だけ離れて形成される。この間隔39は、最終部29形成時に、溶接機の電極車輪が上向き縁部20と係合した状態を維持することを確実にし、それらが短絡するのを防止する。
【0049】
第二ステップにおいて、丸い切断部41が上向き縁部20の上部に形成されて、上部縁コーナー32を溶接継ぎ目26の最終部29と交わるまで、局所的に低くする。第三ステップにおいて、縁コーナー溶接継ぎ目31が丸い切断部41の底部42のところで溶接継ぎ目26の最終部29と交わるまで延長される。切断部41は、好ましくは浅い深さで、上向き縁部20の四分の一の高さを超過せず、著しく上向き縁部20を弱くしすぎないようになっている。
【0050】
図7は、防水障壁の端部10における条板の防水接合方法の第三実施例を示す。第一ステップは、
図6の方法のものと同じである。第二ステップにおいて、上向き縁部20の上部が、線43で示すように、間隔39よりわずかに大きく平坦化されて、溶接継ぎ目26の最終部29に交わるようになっており、かつ、条板8と蓋板12の重なり領域21から溶接継ぎ目26の逸脱部28を越えて位置する切込み45まで延長した長さを越えて平坦化されている。従って線43は、上向き縁部20の上部の新しい位置を示しており、それに沿って縁コーナー溶接継ぎ目31が防水態様で溶接継ぎ目26の最終部29と交わるまで延長して形成されている。
【0051】
図3と
図7の方法は、上向き縁部20の平坦な領域において、縁コーナー溶接継ぎ目31と溶接継ぎ目26の間の防水接合を得ることを可能にしており、幾何学的に応力集中が起き難くなっている。
【0052】
これらの方法は、一次及び/又は二次防水薄膜をタンクのコーナー部で形成するために用いることができるが、補修のために用いることもできる。溶接機による溶接継ぎ目と共に防水態様の手作業縁コーナー溶接が必要な補修は、タンクの様々な位置、特に底壁の中央部分でも実行することができる。このような修理の一例を、
図9を参照して記載する。
【0053】
図9に、
図1のタンクの一次薄膜6の一部で、底壁の中央領域のものを示す。同じ参照符号は同じ要素を示す。図の中央の条板8が局所領域で損傷を受けていると仮定する。この領域での薄膜の補修のために、実行すべき多くの作業が存在する。
−補修領域50上の溶接支持部9の上部及び上向き縁部20を、例えば50cm程度平坦化する。補修領域50は、補修すべき条板8の一部を包含し、両側にさらに延びている。
−上向き縁部20の曲がった部分に位置する2本の横断線と2本の長手線に沿って条板8を切断して、損傷部分を除去する。
−端部45と46に残った条板と長手方向に重ね合わせるために、除去した部分より寸法の大きな条板47の新しい部分を設置する。
−端部45と46に残った条板に、条板47の新しい部分を防水態様で溶接する。
−溶接支持部9に対向して条板47の新しい部分の上向き縁部20を設置し、補修領域50の全長にわたって上部縁コーナーに沿って防水縁コーナー溶接継ぎ目31を形成する。
−そして、位置を維持した状態の縁コーナー溶接継ぎ目31と条板8の溶接継ぎ目26との間の防水接続を形成する。そうするために、
図9の詳細図に示すように、溶接機は既存の溶接継ぎ目26に沿って再び走行し、例えば傾斜面を使用して、縁コーナー溶接継ぎ目31と交わる逸脱部28を形成する。好ましくは、縁コーナー溶接継ぎ目31とのある程度の重なり領域35を形成するために、溶接継ぎ目26の最終部29は、上向き縁部20の上部縁コーナー32と略平行に形成される。
【0054】
変形実施例において、傾斜面40を用いる代わりに、例えば揺動を加えることによって、鋭く溶接機の進路を逸脱させて、溶接機を上向き縁部20の上部にまで動かすことで、溶接継ぎ目26の逸脱部28を形成する。
【0055】
タンクの底壁に設けられた薄膜を記載するために、ここまで用語「上部」「底部」「上の」「下の」を用いてきた。しかし、タンクの他の壁、特に側壁や天井壁に設けられた薄膜も、同様に形成又は補修することができる。従って、用語「上部」「底部」「上の」「下の」は、地球の重力場に対してではなく、各壁の位置に対して用いられることを理解されたい。
【0056】
防水薄膜を形成するための上述の技術は、例えば海岸基地所属の設備又はメタン・タンカーのような浮遊装置に設けられたLNG貯蔵器の一次防水薄膜及び/又は二次防水薄膜を形成するための、様々な種類の貯蔵器に用いることができる。
【0057】
図10に、船の二重船体72に設けられた全体的にプリズム状の防水絶縁タンク71を備えたメタン・タンカー70の一部を切り落とした図を示す。タンク71の壁は、タンクに収容されたLNGと接触することを意図した一次防水障壁と、この一次防水障壁と船の二重船体72との間に設けられた二次防水障壁と、それぞれ一次防水障壁と二次防水障壁の間と、二次防水障壁と二重船体72の間に設けられた二枚の絶縁障壁とを備えている。
【0058】
周知の方法において、船の上部甲板に設けられた積荷/降荷パイプ73が、適切なコネクタを用いて、海上ターミナル又は港湾ターミナルと接続して、LNG積荷をタンク71から又はタンク71へ移動可能である。
【0059】
図10は、積荷及び降荷ステーション75と、海中パイプ76と、海岸基地設備77を備えた海上ターミナルの一例を示す。積荷及び降荷ステーション75は、可動アーム74と可動アーム74を支持するタワー78を備えた、固定された沖合の設備である。可動アーム74は、積荷/降荷パイプ73と接続可能な一群の絶縁可撓性ホース79を動かす。方向付け可能な可動アーム74は、あらゆる寸法のメタン・タンカーに適合可能である。図示しない接続パイプが、タワー78の内側で上向きに延びている。積荷及び降荷ステーション75は、メタン・タンカー70が海岸基地設備77から積荷し、海岸基地設備77へ荷降ろしするのを可能にしている。海岸基地設備77は、液化ガス貯蔵タンク80と海中パイプ76によって積荷及び降荷ステーション75と接続された接続パイプ81とを備えている。海中パイプ76は、液化ガスが積荷及び降荷ステーション75と海岸基地設備77の間を長い距離にわたって、例えば5km、移送されるのを可能にし、これはメタン・タンカー70が積荷及び降荷作業中に海岸線から長い距離を保って離れることができることを意味する。
【0060】
液化ガスを移送するために必要な圧力を生成するために、メタン・タンカー70の船上ポンプ及び/又は海岸基地設備77に装備されたポンプ及び/又は積荷及び降荷ステーション75に装備されたポンプが用いられる。
【0061】
多数の特定の実施例と共に本発明が記載されたが、それによって限定されることなく、本発明の範囲内での技術的に等価なものや組み合わせが含まれることは、まったく自明である。
【0062】
用語「を備えた」「を伴う」又は「を含む」及びそれらを抱合したもの使用は、請求項に使われたもの以外の他の要素又は他のステップの存在を除外するものではない。一つの要素又はステップを記載する時の不定冠詞「an」「a」又は「one」の使用は、特に明示しない限り、複数の要素又は複数のステップを除外するものではない。
【0063】
請求項において、括弧で挟まれた参照符号は、請求項を限定するものと解釈してはならない。